JP6355259B2 - 押釦スイッチ - Google Patents

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Description

本発明は押釦スイッチに関する。
押釦スイッチは電子機器や電気機器の電気信号の入り切りを手動で切り替えるために用いられる。使用環境によっては、防塵、防水といった耐環境性が要求されている。
従来の押釦スイッチについて図面を用いて説明する。図3,4は、従来の押釦スイッチを示す断面図である。
図3,4に示すように、第1ハウジング11は、主に熱可塑性樹脂などによる絶縁合成樹脂材料を成形加工して、略矩形に形成される。
第1固定接点12は、金属平板を切断・折り曲げ加工して略L字状に形成され、接点部12aと、端子部12bとを有している。そして、この第1固定接点12は、第1ハウジング11にインサート成形され、接点部12aは、第1ハウジング11の凹部の中央部に表面が露出した状態で配設され、端子部12bは、第1ハウジング11の側面から側壁に沿って下方に突出して配設されている。
第2固定接点13は、金属平板を切断・折り曲げ加工して略L字状に形成し、接点部13aと、端子部13bとを有している。そして、この第2固定接点13は、第1ハウジング11にインサート成形され、接点部13aは、第1ハウジング11の凹部の中央部に表面が露出した状態で配設された前記第1固定接点12の接点部12aを挟むように凹部の内周縁部に近接し、且つ、表面が露出した状態で配設され、端子部13bは、第1ハウジング11の側面から側壁に沿って下方に突出して配設されている。
可動接点14は、弾性金属平板を切断・押し出し加工にて、ドーム状に形成されている。この可動接点14は、第1ハウジング11の凹部内に配置され、可動接点14の周縁部は、第2固定接点13の接点部13aに当接され、且つ、可動接点14は、第1固定接点12の接点部12aを覆うような状態で配置されている。
第1ハウジング11と第2ハウジング18の間にはインシュレータ16と防水部材17が配置されている。インシュレータ16は、例えば、ポリイミド樹脂材料などからシート状で形成されている。防水部材17は、例えば、EPDM材料などのゴム材料からシート状で形成されている。この2つがハウジング間に挟み込まれており、ハウジング間からの水の浸入を防いでいる。
ステムは第1ステム15と第2ステム19に分かれている。第2ステム19を押圧した際、インシュレータ16及び防水部材17を介して第1ステム15が押圧され、ドーム状の可動接点14を下方に押圧する。そして、可動接点14が押圧されると可動接点14が反転して可動接点14の裏面が第1固定接点12の接点部 12aに当接される。この接点部12aへの当接によって、第1固定接点12と第2固定接点13とは、可動接点14を介して導通されて押釦スイッチは、オンの状態となる。
従来の押釦スイッチの場合、主に防水が必要とされるのは第1ハウジング11と第2ハウジング18の接合部であった。例えば、特許文献1には、第2ハウジングの外周部を変形させることによって、第1ハウジングと第2ハウジングの隙間からの水の浸入を防ぐ押釦スイッチが記載されている。
しかしながら、第1ハウジング11と第2ハウジング18の接合部からの水の浸入を防いだ場合であっても、固定接点と第1ハウジングの間に隙間が生じた場合、この隙間より水が浸入し金属表面が腐食することによって導通不良が発生し押釦スイッチの機能に支障をきたす問題があった。
一般的に熱可塑性樹脂で押釦スイッチを製造する場合、固定接点と第1ハウジングを一体化させる方法として、前記の通り熱可塑性樹脂と固定接点のインサート成形を行う方法が使用されている。インサート成形で製造した場合、射出成形工程において、熱可塑性樹脂が固定接点へ押圧されて作成されるため、隙間が空きにくく防水機能が高いとされているためである。
しかしながら、通常の方法でインサート成形を行った場合でも、熱可塑性樹脂と固定接点の種類によっては隙間が発生し防水機能が満たせないことがある。また、成形直後に防水機能を満たした場合でも、長期に渡って使用している間に隙間が発生し、水の浸入によって押釦スイッチ機能が損なわれることがあった。この原因を解析したところ、長期間の使用中に高温環境と低温環境に繰り返し晒されることによって、線膨張係数の小さな固定接点と、線膨張係数の大きな熱可塑性樹脂の間に歪が発生し隙間が発生することが分かった。そのため、通常の方法でインサート成形を行った場合では防水機能を確保することは困難であるという問題があった。
これらの問題に対し、固定接点と熱可塑性樹脂との密着性を向上させて防水機能を付与したインサート成形技術として、いくつかの方法が知られている。例えば、インサートする樹脂に含まれる無機フィラーの量を少なくすることで収縮時の異方性なくし隙間を発生させにくくした方法(特許文献2)が開示されている。
しかしながら、この方法では一般的に使用される無機フィラー量の樹脂に対して適用することができないため、強度が必要とされる製品には使用できなかった。さらに、無機フィラー量が少なくなることによって、金属と樹脂との熱膨張係数の差は大きくなるため、異方性の影響が少ない形状では、却って隙間が発生しやすくなる問題もあった。
特開2000−67687 特開2013−188888
上記のように、温度範囲が広い使用環境下では固定接点と第1ハウジングの間に隙間は発生し押釦スイッチの機能が損なわれるという課題があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされた発明であり、その目的は、温度範囲が広い温度環境でも、固定接点と第1ハウジングの間に隙間が発生せず水の浸入を防ぐ押釦スイッチを提供することにある。
本発明者は、上記課題に対し、クロロスルホン化ポリエチレン組成物からなる密着層を形成した金属端子をインサート成形することによって、クロロスルホン化ポリエチレン組成物が金属端子、熱可塑性樹脂と強固に接着することにより高い密着性が得られ、この密着層が水の浸入を防ぐことを見出し、この手法で作られた押釦スイッチが高湿環境でも長期間正常に作動することを見出した。
すわなち、本発明は以下のものを提供する。
請求項1へ記載の金属製の接点部と、端子部から構成される固定接点と、熱可塑樹脂で形成されたハウジングを有する押釦スイッチであって、固定接点の端子部におけるハウジングが覆う部分にクロロスルホン化ポリエチレン組成物からなる密着層を有することを特徴とした押釦スイッチであり、
請求項2へ記載の固定接点とハウジングを結合させる方法として、射出成形金型に金属製固定接点を配置し、型締めしてキャビティ内に熱可塑性樹脂をインサート成形する方法を用いる押釦スイッチの製造方法であって、射出成形前に予め固定接点におけるハウジングが覆う部分へクロロスルホン化ポリエチレン組成物からなる密着層を形成し、密着層がキャビティ内に配置されるように固定接点を射出成形金型へ装着してインサート成形を行うことを特徴とする押釦スイッチの製造方法であり、
請求項3へ記載の請求項2記載の押釦スイッチの製造方法において、予めクロロスルホン化ポリエチレン組成物を有機溶剤を用いて溶液化し、クロロスルホン化ポリエチレン組成物の溶液を固定接点の端子部におけるハウジングが覆う部分の全体もしくは一部へ塗布した後に乾燥させて密着層を形成することを特徴とする押釦スイッチの製造方法である。
ここで、ハウジングが覆う部分とは、ハウジングによって、固定接点の端子部が固定される部分であり、端子部の外周部をハウジングで包埋する部分を示す。
本発明によれば、密着層はクロロスルホン化ポリエチレン組成物からなる。このクロロスルホン化ポリエチレンは耐熱性、耐寒性に優れた合成ゴムであるため、使用温度範囲が広い使用環境でも弾性を有するクロロスルホン化ポリエチレン組成物からなる密着層は金属端子と熱可塑性樹脂の線膨張係数の差による歪を吸収し隙間が発生することを防ぎ、防水機能の高い押釦スイッチを提供することができる。
本発明の実施の形態の押釦スイッチを示す断面図である 本発明の実施の形態の押釦スイッチを示す断面図である 従来の押釦スイッチを示す断面図である 従来の押釦スイッチを示す断面図である
以下、本発明に係る実施形態の一例を、添付図面を参照しながら説明をする。
本実施形態の押釦スイッチは図1、2に示す第1ハウジング1、第2ハウジング18およびインシュレータ16、防水部材17、第1ステム15、第2ステム19から成る。図1に示すように第1ハウジング1は第1固定接点2、第2固定接点3を熱可塑性樹脂でインサート成形した略矩形のインサート成形品である。第1ハウジング1によって第1固定接点2、第2固定接点3が覆われる部分には、密着層4が形成されている。
本実施形態で使用する第1固定接点2、第2固定接点3は、図1に示すように、接点部と端子部から成る略L字状のものを使用している。接点部と端子部は同一部として形成されていても良いし、独立した部品を接合しても構わない。第1固定接点2、第2固定接点3は、角形状や丸形状、単純な板状や複雑な折り曲げ形状など、使用目的に合わせてどのような形状であっても構わない。また、固定接点の素材は銅または銅合金などの導電性金属材料を用いる。さらに、使用目的に応じてニッケル下地の金メッキや、錫メッキ、ニッケルメッキ等が施されていても構わない。
本実施形態に使用される第1固定接点2、第2固定接点3は第1ハウジング1で覆われる部分へ、射出成形前に予め密着層4の形成を行う。本発明の密着層は、その端部が第1ハウジングからはみ出した状態になってもよいし、第1ハウジングよりも内方に位置させて第1ハウジングで覆われた状態になってもよい。何れの場合でも、第1固定接点、第2固定接点と第1ハウジングとが密着層に良好に密着する。
本実施形態に使用される密着層4は、クロロスルホン化ポリエチレン(以下、CSMという)と、加硫剤、加硫促進剤、受酸材などの添加剤との混合物であるCSM組成物から形成される膜である。さらに、CSM組成物は密着層をいる効果的に作用させる為に、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、加工助剤、軟化剤、樹脂、金属導電体に対する濡れ性を改善する濡れ性改善剤などが必要に応じて添加される。
本実施形態に使用されるクロロスルホン化ポリエチレンは、ポリエチレン、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体等へ塩素と亜硫酸ガスとを反応させ、塩素化とクロロスルホン化を行う事によってゴム状にしたものである。
本実施形態に使用される加硫剤は、例えば、酸化マグネシウム、N,N’−m−フェニレンジマレイミド等のマレイミド化合物、ジクミルペルオキシド等の有機酸化物などを用いることができる。
本実施形態に使用される加硫促進剤は、例えば、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド等のチウラム化合物、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2、2,2,4−トリメチルキノリン、ジブチルジチオカルバミン酸、2−メルカプトベンズイミダゾール等を用いることができる。
本実施形態に使用される受酸剤は、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属酸化物や金属水酸化物、ハイドロタルサイト等を用いることができる。
本実施形態に使用される密着層4は、CSM組成物を有機溶剤へ溶解させた有機溶液を第1固定接点2、第2固定接点3の前述した位置に塗布し乾燥させることによって形成する。有機溶媒に、CSM組成物を投入して均質になるまで攪拌して有機溶液にする。均質に溶解させるためにCSM組成物の混錬工程を追加しても構わない。
CSMを溶解する有機溶媒としては、CSMに対して溶解性を示す不活性な有機溶媒を用いる。具体的には、例えば、トルエン、キシレン、塩化メチレン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、メチルエチルケトンなどを用いることができる。
CSM、加硫剤、加硫促進剤、受酸剤及び酸化防止剤をより均質に混合することを目的に、予めCSM及び添加剤をロール混錬機、ニーダー、バンバリーミキサー等で添加剤が均一に混ざるまで混錬してCSM組成物固体を作製する。このCSM組成物固体を有機溶媒に溶かすと、より均質な有機溶液が作製できる
有機溶液の塗布方法は、第1固定接点2、第2固定接点3が第1ハウジング1に覆われる部分へ塗布できる方法であれば限定されるものではなく、はけ塗り法、エアーブラシ法、浸漬法などの塗装方法、または、パット印刷法、シルク印刷、インクジェット印刷などの印刷方法などの塗布方法を用いることができる。また、1度の塗布で目的の膜厚を確保することが望ましいが、膜厚の均一性や厚い膜厚が必要な場合は複数回塗布してもかまわない。さらに、塗布領域に関しては、第1ハウジング1で包埋される部分全体であっても一部であっても防水機能が満たせれば構わない。
密着層4の乾燥方法は、自然乾燥、加熱乾燥のいずれかの方法が適宜選択され、乾燥時間は有機溶媒が蒸発すれば限定されないが、CSM組成物の加硫が起こらない乾燥条件で行う。また、乾燥後の第1固定接点2、第2固定接点3は密着層4の加硫が起こらない温度であれば、長期間保管しても構わない。
本実施形態に使用される密着層4の膜厚は、第1ハウジング1への第1固定接点2、第2固定接点3のインサート方法、形状、使用される第1固定接点2、第2固定接点3と熱可塑性樹脂の線膨張係数の差などによって適宜選択する必要があるが、5μm以上100μm以下の範囲が好ましい。密着層の膜厚が薄いと、温度範囲が広い際に密着効果が低く、防水効果を十分に保つことができない。また、膜厚が厚いと、インサート成形工程で密着層が押し流され、押し流された密着層が異物となったり、金型汚染の原因となったりする。さらに好ましくは10μm以上60μm以下であれば、防水機能を良好に保ち、かつインサート成形時に押し流されない膜の密着膜を形成できる
有機溶液の濃度は、使用する有機溶媒、第1固定接点2、第2固定接点3への塗布方法、目的とする膜厚によって有機溶媒100重量部に対して、CSM組成物を10重量部以上70重量部以下の範囲で作成される。有機溶液のCSM組成物の濃度が10重量部未満では、密着層の膜厚は薄くなり、温度範囲が広い際に密着効果が小さく防水効果が低くなる。対して、有機溶液のCSM組成物の濃度が70重量部より高いと、膜厚が厚くなりすぎて異物や金型汚染の原因となるため好ましくない。そのため、有機溶液を塗装工程により塗布する場合は、有機溶液のCSM組成物の濃度は、有機溶媒100重量部に対し、CSM組成物を30重量部以上70重量部以下で調整することが好ましい。また、有機溶液を印刷工程により塗布する場合は、有機溶液のCSM組成物の濃度は、有機溶媒100重量部に対し、CSM組成物を10重量部以上50重量部以下の範囲で調整することが好ましい。
本実施形態に使用される第1ハウジング1を形成するために使用される熱可塑性樹脂は、通常の射出成形法に用いられる樹脂が選択される。特に、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリマー、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ナイロン系樹脂は寸法精度が高く耐熱性が高いため好ましい。
本実施形態で使用される射出成型用金型は、溶融し液化した熱可塑性樹脂が注入されるキャビティ部と固定端子が保持される空間を有する一般的なインサート成形用途の金型である。CSM組成物の密着層を形成した第1固定接点2、第2固定接点3を上述の射出成形用金型に配置し、一般的な射出成形機を用いてインサート成形を行う。
以上のように、本実施形態の押釦スイッチは、第1ハウジング1と第1固定接点2、第2固定接点3との間に密着層4を形成しているため、第1ハウジング1を構成する熱可塑性樹脂と第1固定接点2、第2固定接点3とを密着層4を介して良好に密着させることができる。その結果、押釦スイッチの第1ハウジング1と第1固定接点2、第2固定接点3とは密着層4を介することにより長期使用を行なっても良好な密着性を有し、確実な防水・防塵機能が得られる。
尚、本発明に係る押釦スイッチおよびその製造方法は、上記記述および図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて種々の変更を施すことが可能である。
本発明の押釦スイッチは、電子機器や車載部品などの分野で使用することが出来る。特に、防水・防塵が必要とされる使用環境下で高い信頼性を有する。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない
製造例
(固定接点)
本実施例および比較例に使用した第1固定接点2、第2固定接点3は、錫メッキ処理を行った銅を用いた。
(CSM組成物の作成)
クロロスルホン化ポリエチレン(TOSO−CSM(商標登録) CM−1500:東ソー株式会社製)100重量部に対し、
加硫剤および受酸材として酸化マグネシウム(キョーワマグ150(商標登録):協和化学工業株式会社製)4重量部、
加硫促進剤としてジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(ノクセラー(商標登録)TRA:大内新興化学工業株式会社製)2重量部、
酸化防止剤としてペンタエリスリトール(ノイライザー(商標登録)P:日本合成化学株式会社製)3重量部の割合で添加して、加工温度80℃のロール混錬機で15分間混錬することによりCSM組成物を得た。
(有機溶液の作成)
トルエン(和光純薬工業株式会社製・1級)100重量部に対し、上記CSM組成物40重量部の割合で投入し、スターラーを用いて4時間撹拌し有機溶液を得た。
(密着層の形成)
第1固定接点2、第2固定接点3へはけ塗りによって有機溶液を塗布し、室温25℃の環境下で16時間自然乾燥して密着層4を得た。乾燥後に膜厚を測定したところ、15〜30μmであった。
(成形材料)
本実施例および比較例に使用した押釦スイッチを形成するための成形材料は市販のポリフェニレンサルファイド(以下、PPS樹脂という)、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBT樹脂という)を用意し、それぞれ140℃の乾燥機で3時間以上乾燥したものを用いた。それぞれの商品名に関しては表1に記載する。
(押釦スイッチの作成)
図示しない射出成形機、金型によって、インサート成形を行い図1に示す第1ハウジングを作成した。主な成形条件は表1に示す。その後、図1に示す可動接点14、第1ステム15、インシュレータ16、防水材17、第2ハウジング18、第2ステム19を一般的な組立工程で組立て押釦スイッチを作成した。
評価方法
(インサート成形品の防水機能評価)
得られた押釦スイッチを1日間室温で保管した後、水深1mの水中で30分水没させた。その後、動作確認を行い作動不良の有無の確認を行った。
(ヒートサイクル試験後の防水機能評価)
得られた押釦スイッチを1日間室温で保管した後、表1に示す温度環境下でヒートサイクル試験を行った。その後、この押釦スイッチを上記防水機能評価と同様の方法で評価を行った。
[実施例1]
有機溶液を第1固定接点2、第2固定接点3へ塗布・乾燥し密着層4を得た。この密着層4を形成し第1固定接点2、第2固定接点3へPPS樹脂をインサート成形して押釦スイッチを得た。得られた押釦スイッチ10個に対して防水機能評価を行ったところ、動作不良は1つも確認されなかった。さらにヒートサイクル試験後の押釦スイッチ10個に対して防水機能評価を行なったところ、動作不良は1つも確認されなかった。実施例1により、CSM組成物を密着層4として形成した第1固定接点2、第2固定接点3にPPS樹脂をインサート成形して得られた押釦スイッチは、第1固定接点2、第2固定接点3と熱可塑性樹脂の密着状態は良好であり、防水機能を有することを確認した。
[実施例2]
インサート成形する樹脂をPBT樹脂に変更する点以外、実施例1と同様に押釦スイッチを成形した。得られた押釦スイッチ10個に対して防水機能評価を行ったところ、動作不良は1つも確認されなかった。さらにヒートサイクル試験後の押釦スイッチ10個に対して防水機能評価を行なったところ、動作不良は1つも確認されなかった。実施例2により、CSM組成物を密着層4として形成した第1固定接点2、第2固定接点3にPBT樹脂をインサート成形して得られた押釦スイッチは、第1固定接点2、第2固定接点3と熱可塑性樹脂の密着状態は良好であり、防水機能を有することを確認した。
[比較例1]
密着層4を形成しない第1固定接点2、第2固定接点3へPPS樹脂をインサート成形して押釦スイッチを得た。得られた押釦スイッチ10個に対して防水機能評価を行ったところ、動作不良は1つも確認されなかった。さらにヒートサイクル試験後の押釦スイッチ10個に対して防水機能評価を行なったところ、10個中3個動作不良が確認された。比較例1により、密着層4を形成していない第1固定接点2、第2固定接点3にPPS樹脂をインサート成形して得られた押釦スイッチは、高温環境と低温環境に繰り返し晒されることによって密着状態が悪化し、防水機能が損なわれることを確認した。
[比較例2]
密着層4を形成しない第1固定接点2、第2固定接点3へPBT樹脂をインサート成形して押釦スイッチを得た。得られた押釦スイッチ10個に対して防水機能評価を行ったところ、動作不良は1つも確認されなかった。さらにヒートサイクル試験後の押釦スイッチ10個に対して防水機能評価を行なったところ、10個中4個動作不良が確認された。比較例2により、密着層4を形成していない第1固定接点2、第2固定接点3にPBT樹脂をインサート成形して得られた押釦スイッチは、高温環境と低温環境に繰り返し晒されることによって密着状態が悪化し、防水機能が損なわれることを確認した。
実施例1、2および比較例1、2の評価結果を表2に示す。
以上の各実施例および比較例の結果から、固定接点とハウジングとの間にクロロスルホン化ポリエチレン組成物からなる密着層を付与する事により、防水が要求される使用環境において、長期にわたって確実な防水機能が得られる押釦スイッチが作成されることを確認した。CSM組成物を密着層として形成することによって、PPS樹脂、PBT樹脂を成形樹脂としたインサート成形時に優れた密着性の改善効果があることが確認された。
1 第1ハウジング
2 第1固定接点
3 第2固定接点
4 密着層

11 第1ハウジング
12 第1固定接点
13 第2固定接点
14 可動接点
15 第1ステム
16 インシュレータ
17 防水部材
18 第2ハウジング
19 第2ステム

Claims (3)

  1. 金属製の接点部と端子部から構成される固定接点と、熱可塑樹脂で形成されたハウジングを有する押釦スイッチであって、
    固定接点の端子部におけるハウジングが覆う部分にクロロスルホン化ポリエチレン組成物からなる密着層を有することを特徴とした押釦スイッチ
  2. 固定接点とハウジングを結合させる方法として、射出成形金型に金属製固定接点を配置し、型締めしてキャビティ内に熱可塑性樹脂をインサート成形する方法を用いる押釦スイッチの製造方法であって、
    射出成形前に予め固定接点の端子部におけるハウジングが覆う部分へクロロスルホン化ポリエチレン組成物からなる密着層を形成し、密着層がキャビティ内に配置されるように固定接点を射出成形金型へ装着して射出成形を行うことを特徴とする押釦スイッチの製造方法。
  3. 請求項2記載の押釦スイッチの製造方法において、
    予めクロロスルホン化ポリエチレン組成物を有機溶剤を用いて溶液化し、クロロスルホン化ポリエチレン組成物の溶液を固定接点の端子部におけるハウジングが覆う部分へ塗布した後に乾燥させて密着層を形成することを特徴とする押釦スイッチの製造方法。
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