JP6340725B2 - 緑化構造体及び緑化壁 - Google Patents

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本発明は、壁面等を緑化する緑化構造体及び緑化壁に関する。
近年、都市部におけるヒートアイランド現象の緩和や大気の浄化、アメニティ空間の創出などを目的として、植物を植栽した緑化基盤を建物の壁面に設置する壁面緑化が行われている。壁面緑化の技術には、施工性の良さや、維持管理の簡素化などが求められている。
そこで、繊維製のマットを植栽用の基材とし、土壌が含まれる植栽マットを壁面の緑化に使用することが提案されている(特許文献1)。
特許文献1に記載の植栽マットは、容易に組み立てることができ、また、植栽マットを組み立てて得た緑化構造体は壁面に容易に固定され、植物の栽培が可能になる。さらに、植物枯れ死後には、植栽マットをのみを取り外して廃棄し、植栽マットを取り換えれば、長期にわたってグリーンカーテンを楽しめる、とされている。
特開2014−33632号公報
しかし、特許文献1に記載の植栽マットを建物の壁面の前面に設置した緑化構造体においては、含水量が不均一になる傾向にあった。具体的には、緑化構造体の上部では水分が不足し、緑化構造体の下部では水分が過多となることがあった。これにより、植物の成長が不均一になり、さらに、緑化構造体の上部においては水分不足により植物が枯れてしまうことがあり、緑化構造体の下部においては水分過多により植物が根腐れして枯れてしまうことがあった。したがって、特許文献1に記載の植栽マットでは、植物育成の管理が煩雑であり、緑化状態の維持が容易ではなかった。
本発明は、植物の育成管理が簡便であり、緑化状態を容易に維持できる緑化構造体及び緑化壁を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を有する。
[1]多孔質セラミックスからなる複数個の植栽用基盤と、該植栽用基盤を固定する固定用部材とを備え、該植栽用基盤が間隔を空けて鉛直方向に複数段配置されている緑化構造体であって、前記植栽用基盤は、鉛直方向の水の拡散速度よりも水平方向の水の拡散速度が速い、緑化構造体。
[2]前記植栽用基盤の内部に、鉛直方向に沿う方向の長さが植栽用基盤の鉛直方向の最小長さの90%以上である孔が形成されていない、[1]に記載の緑化構造体。
[3]前記植栽用基盤の内部には、水平方向に沿って孔径1mm超の孔が複数形成されている、[2]に記載の緑化構造体。
[4]水平方向に沿って形成された孔径1mm超の孔は、水平方向の孔径が鉛直方向の孔径よりも長い扁平状である、[3]に記載の緑化構造体。
[5]前記植栽用基盤は、上面視において矩形状の平板体であり、その厚み方向が鉛直方向に沿うように配置され、該植栽用基盤の内部には、植栽用基盤の長手方向に沿って孔径1mm超の孔が複数形成されている、[2]に記載の緑化構造体。
[6]前記植栽用基盤は、その上面が斜め前方又は斜め後方に傾斜しており、その傾斜角が水平方向に対して0°超30°以下である、[5]に記載の緑化構造体。
[7]前記植栽用基盤の上面には、植物を植栽するための凹部が形成されている、[1]〜[6]のいずれかに記載の緑化構造体。
[8][1]〜[7]のいずれかに記載の緑化構造体を備えた緑化壁。
本発明の緑化構造体及び緑化壁は、植物の育成管理が簡便であり、緑化状態を容易に維持できる。
本発明の緑化構造体の一実施形態を示す正面図である。 図1のI−I’断面図である。 図1,2の緑化構造体の上面図である。 給水手段の他の形態を部分的に拡大して示す断面図である。 給水手段の他の形態を部分的に拡大して示す断面図である。 植栽用基盤が前方に傾斜した形態を示す断面図である。 植栽用基盤が後方に傾斜した形態を示す断面図である。 植栽用基盤が前方に傾斜した形態を示す断面図である。 植栽用基盤が後方に傾斜した形態を示す断面図である。
<緑化構造体>
本発明の緑化構造体の一実施形態について説明する。図1、図2及び図3に、本実施形態の緑化構造体を示す。本実施形態の緑化構造体1は、植物が植栽される複数個の植栽用基盤10と、植栽用基盤10を固定する固定用部材20と、植栽用基盤10に給水する給水手段30と、余剰水排出部40とを備える。
(固定用部材)
本実施形態における固定用部材20は、鉛直方向に沿って設けられた複数本の縦フレーム21と、水平方向に沿って設けられた複数本の横フレーム22と、横フレーム22に取り付けられた棚板23と、複数本の縦フレーム21の最上部を架け渡すように設けられた天板24とを備える。
複数本の縦フレーム21は、一定間隔で配置されている。複数本の横フレーム22は鉛直方向に一定間隔で複数段配置され、縦フレーム21に取り付けられている。これにより、縦フレーム21と横フレーム22とによって格子状フレームを形成している。横フレーム22の縦フレーム21への取り付けは、取り付け具を用いる方法が挙げられる。
棚板23は、その上面に植栽用基盤10が置かれる板である。棚板23には、水を通過させるための透水用貫通孔23aと、植栽用基盤10を固定するボルトを挿入するためのボルト用貫通孔23bとが各々複数形成されている。本実施形態では、植栽用基盤10の下面の全面を受けるように棚板23が設けられている。棚板23の上に植栽用基盤10を配置した際には、横フレーム22は植栽用基盤10の後方に配置される。
(植栽用基盤)
本実施形態における植栽用基盤10は、上面視において矩形状で且つ平板状であり、その厚み方向が鉛直方向に沿うように固定用部材20に固定されている。また、植栽用基盤10は、その長手方向が横フレーム22に沿って配置されると共に、鉛直方向に一定間隔で複数段配置されるように固定用部材20に固定されている。
本実施形態における植栽用基盤10は、多孔質セラミックス成形体からなり、鉛直方向の水の拡散速度よりも水平方向の水の拡散速度が速いものである。
植栽用基盤10において鉛直方向の水の拡散速度よりも水平方向の水の拡散速度が速いことを定性的に確認する方法としては、下記の方法が挙げられる。
すなわち、縦130mm、横450mm、厚さ30mmの乾燥した植栽用基盤10を、上面及び下面が水平になるように配置する。次いで、ビュレットに入れた水10mlを、植栽用基盤10の上面に対して10mmの高さから滴下速度1.8ml/分で滴下する。その際、植栽用基盤の上面への水の滴下位置は、植栽用基盤10の切断面(側面)から5mm以内とする。滴下終了後、速やかに(10秒以内に)、水を含んで濡れた部分を目視により観察する。そして、植栽用基盤10における水平方向への水の拡散距離(水平方向において、滴下位置から最も遠くに拡散した位置までの距離)を測定する。植栽用基盤10の側面にて、鉛直方向への水の拡散距離(鉛直方向において、滴下位置から最も遠くに拡散した位置までの距離)を測定する。水平方向への水の拡散距離が鉛直方向への水の拡散距離より長ければ、水平方向の水の拡散速度が鉛直方向の水の拡散速度よりも速いことを意味する。
なお、鉛直方向の水の拡散速度及び水平方向の水の拡散速度の好ましい範囲は、緑化構造体の用途、緑化構造体が設置される場所の環境条件、多孔質セラミックスの作製方法、植栽する植物の種類等に応じて異なる。
本実施形態では、植栽用基盤10の鉛直方向の水の拡散速度よりも水平方向の水の拡散速度を速くするために、植栽用基盤10として、その内部に、鉛直方向に沿う方向の長さが植栽用基盤の鉛直方向の最小長さの90%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは40%以上である孔が形成されていない多孔質セラミックスを用い、その植栽用基盤10を、その長手方向が水平方向に沿うように固定用部材20に固定する。なお、後述する植栽用基盤10のボルト用貫通孔23bは、ボルトが挿入されるため、「鉛直方向に沿う方向の長さが植栽用基盤の鉛直方向の最小長さの90%以上の孔」には包含されない。また、植栽用基盤10の凹部10bも、「鉛直方向に沿う方向の長さが植栽用基盤の鉛直方向の最小長さの90%以上の孔」に包含されない。
また、植栽用基盤10の内部には、鉛直方向に沿う方向の長さが植栽用基盤の鉛直方向の最小長さの90%以上である孔であって、水平方向に沿う方向の長さが5mm以上の孔が形成されていないことが好ましい。
さらに、鉛直方向の水の拡散速度よりも水平方向の水の拡散速度を速くするためには、植栽用基盤10は、その長手方向に沿って孔径1mm超の孔が複数形成されているものが好ましい。植栽用基盤10の長手方向に沿って、より好ましくは孔径5mm以上、さらに好ましくは孔径10mm以上の孔が形成されているとよい。長手方向に沿って形成された孔径1mm超の孔は扁平孔であることが好ましい。
本実施形態では、2枚の多孔質セラミックス板状物(上段板状物12、下段板状物11)を重ねて植栽用基盤10としている。
なお、植栽用基盤10に形成された孔は、孔径が一定である必要はなく、むしろ不均一である。植栽用基盤10の長手方向に沿って形成された孔は、直線的な孔に限らず、曲がりくねった孔も含まれる。
植栽用基盤10は具体的に下記のように固定用部材20に固定される。
すなわち、まず、予め、下段板状物11と上段板状物12を積層した状態で固定用ボルトが挿入されるボルト用貫通孔10aが2つ形成されるように、下段板状物11及び上段板状物12を穿孔しておく。その際、2つのボルト用貫通孔10a,10a同士の間隔を、棚板23に形成したボルト用貫通孔23b,23b同士の間隔と同一にする。次いで、棚板23の上に、下段板状物11及び上段板状物12を積層した植栽用基盤10を載せ、固定用ボルト25を植栽用基盤10のボルト用貫通孔10a及び棚板23のボルト用貫通孔23bに取り付ける。これにより、植栽用基盤10を棚板23に固定する。
このように固定用部材20に固定した植栽用基盤10は、鉛直方向の水の拡散速度よりも水平方向の水の拡散速度が速くなる。
植栽用基盤10の内部に、鉛直方向に沿う方向の長さが植栽用基盤の鉛直方向の最小長さの90%以上である孔の孔が形成されていない植栽用基盤10を製造する方法としては、例えば、後述する多孔質セラミックス板状物の製造方法において、混合工程にて得た混合物を、成形工程にて、押出、延伸及び圧延のいずれかによって成形する方法が挙げられる。押出、延伸及び圧延では一方向への配向が生じやすいため、配向した孔を形成しやすい。配向した孔が水平方向に配置される多孔質セラミックス板状物とすればよい。
また、上記植栽用基盤10の製造方法によれば、植栽用基盤10の長手方向に沿って孔径1mm超の孔が複数形成された植栽用基盤10も製造できる。
また、本実施形態における植栽用基盤10の上面には、植物を植栽するための有底の凹部10bが形成されている。本実施形態では、上段板状物12に円形に開口した凹部形成用の貫通孔が形成され、下段板状物11には凹部形成用の貫通孔が形成されていない。このような上段板状物12と下段板状物11とを重ねることにより有底の凹部10bを形成することができる。すなわち、下段板状物11の上面が凹部10bの底面となる。
本実施形態における凹部10bは円形の開口部で内径が一定の形状となっているが、凹部10bの形状は特に限定されるものではない。
凹部10bに植物を植栽する場合には、植物と共に、土壌、多孔質セラミックスの粒状物及びこれらの混合物等を凹部10bに充填させてもよい。凹部10bに土壌等を充填すると、繊維マットを構成する繊維の隙間に土壌を充填させたものに比べ、水と共に土壌等が流出すること、乾燥した際に土壌が飛散することを抑制できる。そのため、植栽用基盤に土壌を補充するメンテナンス作業を減らすことができる。また、土壌を保持しやすくなったことで、緑化構造体1を使用する際の環境の制限が少なくなる。
植栽用基盤10に植栽される植物として、ヘデラヘリックス、フィカスプミラ、ワーヤープランツ、トマト、トウガラシ、セダム、バラ、グミノキ、ハーブ、スプラウト、オリーブ等などが挙げられる。しかし、植栽用基盤に植栽できれば植物の種類に特に制限はなく、任意の植物を植栽することができる。
(多孔質セラミックス板状物)
植栽用基盤10を構成する多孔質セラミックス板状物には、多数の孔が形成されている。ただし、多孔質セラミックス板状物の内部に、鉛直方向に沿う方向の長さが植栽用基盤の鉛直方向の最小長さの90%以上である孔が形成されていない。
多孔質セラミックス板状物に形成されている孔は、例えば、孔径10〜1000nmのナノメートルオーダーの気孔であってもよいし、孔径1μm超1000μm以下のマイクロメートルオーダーの気孔であってもよいし、孔径1mm超500mm以下のミリメートルオーダーの気孔であってもよいし、これらの気孔が混在していてもよい。なかでも、ミリメートルオーダーの気孔とマイクロメートルオーダーの気孔とナノメートルオーダーの気孔が混在することが好ましい。ミリメートルオーダーの気孔とマイクロメートルオーダーの気孔とナノメートルオーダーの気孔が混在し、かつ、連通していると、保水量が増加すると共に、水の蒸発を適度に抑制し、長期にわたって空気の冷却性能を発揮できる。
また、植栽用基盤10を構成する多孔質セラミックス板状物には、その長手方向に沿って孔径1mm超の孔が複数形成されていることが好ましく、植栽用基盤10の長手方向に沿って、より好ましくは孔径5mm以上、さらに好ましくは孔径10mm以上の孔が形成されているとよい。
気孔の孔径は、原料の種類や、焼成条件を組み合わせることにより調節できる。
なお、気孔の孔径とは、特に断りのない限り、孔の長径を指す。ミリメートルオーダーの孔の孔径は、多孔質セラミックス板状物を厚さ方向に対し垂直に切断し、スケールを用いて測定した横長の孔の長径である。ナノメートルオーダー及びマイクロメートルオーダーの孔の孔径は、多孔質セラミックス板状物を切断し、電子顕微鏡を用いて測定した孔の長径である。
本発明における扁平孔とは、水平方向の孔径が鉛直方向の孔径より長い孔である。扁平孔であれば、二次元的に水を拡散させやすい。
多孔質セラミックス板状物は、飽和含水率が30質量%以上、好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であるとよい。ここで、飽和含水率は、試料を水に60分間浸漬し、板状物の横から水がこぼれないように板状物の面が水平方向になるように水から取り出し、表面の水滴を除去する程度に布に接触させた後、質量(飽和状態質量)を測定し、下記式(1)で求められる値である。
飽和含水率(質量%)=[(飽和状態質量−絶乾状態質量)/絶乾状態質量]×100・・・(1)
多孔質セラミックス板状物の飽和含水率が前記下限値未満であると、雨が降らない期間が長期にわたったり、室内において長期にわたって灌水せずにいると、多孔質セラミックス板状物の内部の水がほとんど蒸発してしまい、植栽した植物が枯れたり、周囲の空気の温度を低下させることができなくなるおそれがある。したがって、水の頻繁な供給が必要となり、頻繁なメンテナンスが必要となってしまうおそれがある。
一方、多孔質セラミックス板状物の飽和含水率は100質量%以下である。飽和含水率が100質量%を超えると、多孔質セラミックス板状物を板状物として用いる場合に、強度が不足し、施工中などに板状物が割れるおそれがある。また、水の蒸発速度が速くなり、飽和含水率が小さい場合と同様に、植物が枯れたり、周囲の空気の温度を長期間低下させることができなくなって、水の供給手段や頻繁なメンテナンスが必要となるおそれがある。
多孔質セラミックス板状物の飽和含水率を調整する方法としては、例えば、後述する製造方法において配合する成分や各成分の比率を調整する方法、また、焼成温度を調整する方法等が挙げられる。
多孔質セラミックス板状物は、特に限定されるものではないが、長辺が15cm以上100cm以下、短辺が3cm以上30cm以下、厚みが1cm以上10cm以下が、植物の育成の容易化、施工性、外観の観点より好ましい。より好ましくは、長辺が30cm以上80cm以下、短辺が5cm以上20cm以下、厚みが1cm以上7cm以下がよい。
多孔質セラミックス板状物の上面には、研削加工が施されていることが好ましい。研削加工が施されていない多孔質セラミックス板状物の上面においては、気孔の開口部が気孔の本来の開口径よりも狭くなっていたり、ガラス化し、さらに閉塞したりしていることがある。研削加工が施されていると、ガラス化部分を削除し、また、狭くなっていた気孔の開口部を拡げることができる。そのため、多孔質セラミック板状物の表面の吸水速度が向上し、素早く水を吸収すると共に、保持している水の蒸発速度が向上する。これにより、潅水時の上段から落下してくる水を素早く吸収し、水の跳ねを抑えることができ、緑化構造体を設置した空間の冷却効果も向上させることができる。
また、本発明の多孔質セラミックス板状物は、pF値2.7以下の水分量が5体積%以上であるとよい。より好ましくは15体積%以上、さらに好ましくは30体積%以上がよい。上限は80体積%程度である。多孔質セラミックスのpF値2.7以下の水分量が上記下限値を下回ると、多孔質セラミックに大量の水が含まれていたとしても、植物が吸収できる水が少ないため、植物の育成に適さないか若しくは頻繁な灌水が必要となるおそれがある。
また、植物の育成の観点からpF値1.5超2.7以下の水分量が1.0体積%以上がよい。より好ましくは2.0体積%、さらに好ましくは3.0体積%がよい。上限は30体積%程度である。
なお、pF値1.5超2.7以下の範囲における水分量は、以下の式にて求めることができる。
pF値1.5超2.7以下の範囲における水分量(体積%)=(pF1.5の遠心処理後の試料の質量(g)−pF2.7の遠心処理後の試料の質量(g))/100ml×100
各pF値の水分量(体積%)は、「土壌標準分析・測定法」(博友社)に記載の保水性 C 遠心法 100ml筒用水平ロータに準じて各pF値の水分量が測定される。ただし、「土壌標準分析・測定法」(博友社)では、加圧板法でpF値3.2まで測定が終わった試料を用いることになっているが、本発明では、水中に1時間浸漬した後の飽和含水状態のものを試料として用いる。また、試験に際しては、多孔質セラミックス板状物をその面方向が遠心時の遠心軸に対し平行になるように配置する。
[多孔質セラミックス板状物の製造方法]
多孔質セラミックス板状物の製造方法としては、例えば、原料を混合して混合物(以下、単に「混合物」ということがある)とし(混合工程)、混合物を板状に成形して成形体とし(成形工程)、成形体を焼成して多孔質セラミックス板状物を得る(焼成工程)方法等が挙げられる。
混合工程は、粘土を含む原料を混合して混合物を得る工程である。
混合物としては、例えば、スラグ、有機汚泥、珪藻土、フィラーからなる群から選択される少なくとも1種と、粘土とを含むものが好ましく、スラグ、有機汚泥及び粘土を含むものがより好ましい。スラグを用いることで大きなミリメートルオーダーの気孔を形成することができ、珪藻土を用いることでマイクロメートルオーダーの気孔を形成することができる。また、有機汚泥を用いることでマイクロメートルオーダーの気孔と、さらに小さな気孔を形成することができる。飽和含水率などの保水能の向上と気孔の大きさがミリメートルオーダーの扁平孔を形成する観点からは、スラグと有機汚泥と粘土とを含むもの、もしくはスラグと珪藻土と粘土とを含むものが好ましく、強度の向上と飽和含水率などの保水能の向上の観点からは、有機汚泥と珪藻土と粘土とを含むものが好ましい。保水能と扁平孔とをよりバランスよくするためには、スラグ、有機汚泥、珪藻土及び粘土を含むものが好ましい。このような混合物を焼成して得られた多孔質セラミックス板状物は、多くの連通した気孔を有するものとなる。
スラグは、特に限定されず、例えば、金属精錬時に発生する高炉スラグ、都市ゴミの溶融時に発生する都市ゴミ溶融スラグ、下水汚泥の溶融時に発生する下水汚泥溶融スラグ、ダクタイル鋳鉄等の鋳鉄時に発生する鋳鉄スラグ等のガラス質スラグ等が挙げられる。中でも、組成が安定しているため安定した発泡状態が得られると共に、他のスラグに比べ1.5〜2倍程度の発泡率である鋳鉄スラグがより好ましい。また、鋳鉄スラグを用いると、扁平状でミリメートルオーダーの気孔を複数平行に形成することが容易になり、多孔質セラミックス板状物の透水性や保水性をより高められる。
混合物中のスラグの配合量は、混合物の成形性を勘案して決定することができ、例えば、80質量%以下が好ましく、30〜70質量%がより好ましく、40〜60質量%がさらに好ましい。上記範囲内であれば、混合物の成形性を損なわず、かつ円滑に成形できると共に、多孔質セラミックス板状物の見掛け密度を好適な範囲にすることができる。
スラグの代わりに、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、炭酸マグネシウムなどの焼成時に発泡する発泡物を用いてもよいし、スラグと併用してもよい。
有機汚泥は、主成分として有機物を含有する汚泥である。有機汚泥は、任意のものを用いることができ、下水や工場等の排水処理に由来する活性汚泥が特に好ましい。活性汚泥は、活性汚泥法を用いた排水処理設備から、凝集・脱水工程を経て排出される。このような有機汚泥を用いることで、マイクロメートルオーダーの気孔を効率的に形成でき、さらに、ナノメートルオーダーの気孔を形成できる。ナノメートルオーダーの気孔が形成されることで、保水性高めるとともに、水の揮発を程よく抑え多孔質セラミックス板状物から灌水の頻度を抑制し、植物の手入れが容易である。さらに、廃棄物の位置付けであった排水処理由来の活性汚泥を原料として再度利用することができる。
有機汚泥の含水率は、例えば、3〜90質量%が好ましく、60〜90質量%がより好ましく、65〜85質量%がさらにより好ましい。上記範囲内であれば、均質な混合物が得られると共に、良好な成形性を維持しやすい。
有機汚泥の含水率は、「産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法」、公布日:昭和48年02月17日、環境庁告示13号、第一の表の備考の規定に準じて行われる。
有機汚泥中の有機物の含有量は、特に限定されないが、例えば、有機汚泥の固形分中の有機物の含有量(有機物含有量)として70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。前記有機物含有量が多いほど、マイクロメートルオーダーの気孔を容易に形成でき、さらに、ナノメートルオーダーの気孔を形成できる。なお、有機物含有量は、乾燥後の汚泥をJIS M8812−1993に準じ、炭化温度700℃で灰分(質量%)を測定し、下記(2)式により求められる値である。
有機物含有量(質量%)=100(質量%)−灰分(質量%) ・・・(2)
有機汚泥の平均粒子径は、好ましくは1〜5μm、より好ましくは1〜3μmとされる。有機汚泥は、焼成により焼失し、その部分に気孔を形成するため、平均粒子径が小さいほど、マイクロメートルオーダーの気孔を容易に形成でき、さらに、ナノメートルオーダーの気孔を形成できる。なお、平均粒子径は、粒度分布測定装置(LA−920、株式会社堀場製作所製)により測定される体積基準のメディアン径(体積50%径)である。
混合物中の有機汚泥の含有量(汚泥に含まれている水の質量も含む)は、混合物の成形性等を勘案して決定することができ、例えば、1〜60質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。上記範囲内であれば混合物は適度な流動性と可塑性とを備え、成形性が向上し、成形装置を閉塞することなく円滑に成形できる。
珪藻土は、珪藻の遺骸からなる堆積物であり、マイクロメートルオーダーの気孔を有する多孔質である。珪藻土を用いることで、珪藻土に由来する微細な気孔を多孔質セラミックス板状物に形成できる。
珪藻土としては、特に限定されず、従来、耐火断熱煉瓦、濾過材等に使用されていたものと同様のものを用いることができる。例えば、狭雑している粘土鉱物(モンモリロナイト等)や石英、長石等を分別精製する必要はなく、これらの含有率を認識した上で、混合物への配合量を調整することができる。また、珪藻土を用いて製造され廃棄された耐火断熱煉瓦、濾過材、コンロなどを粉砕して用いると、廃棄物を削減できるため、好ましい。
珪藻土の含水率は特に限定されず、例えば、自然乾燥状態での含水率が20〜60質量%が好ましく、30〜50質量%がより好ましく、35〜45質量%がさらに好ましい。
上記範囲内であれば、含水率を認識しながら、混合の際に狭雑物中の粗粒子分を除去して使用することで、成形性が良好な混合物を得られるためである。
なお、含水率は、乾燥減量方式である下記仕様の赤外線水分計を用い、試料を乾燥(200℃、12分)し、下記(3)式により求めた値である。
・赤外線水分計の仕様
測定方式:乾燥減量法(加熱乾燥・質量測定方式)、
最小表示:含水率;0.1質量%、
測定範囲:含水率;0.0〜100質量%、
乾燥温度:0〜200℃、
測定精度:試料質量5g以上で、含水率±0.1質量%、
熱源:赤外線ランプ;185W
含水率(質量%)=[(m−m)/(m−m)]×100 ・・・(3)
:乾燥前の容器の質量と乾燥前の試料の質量との合計質量(g)、
:乾燥後の容器の質量と乾燥後の試料の質量との合計質量(g)、
:乾燥後の容器の質量(g)
混合物中の珪藻土の含有量は、多孔質セラミックス板状物に求める飽和含水率や強度等を勘案して決定でき、例えば、55質量%以下が好ましく、1〜45質量%がより好ましい。上記上限値以下であれば、混合物の成形性が良好であり、上記下限値以上であれば、所望の飽和含水率の多孔質セラミックス板状物や、所望の強度の多孔質セラミックス板状物が得られやすい。
本発明における粘土は、一般的に窯業原料として用いられる粘土状の性状を示す鉱物材料であり、珪藻土以外のものである。
粘土としては、セラミックス板状物に用いられる公知のものを用いることができ、石英、長石、粘土系等の鉱物組成で構成されており、その構成鉱物はカオリナイトを主とし、ハロイサイト、モンモリロナイト、イライト、ベントナイト、パイロフィライトを含むものが好ましい。中でも、焼結時のクラックの進展を抑え、多孔質セラミックス板状物の破壊を防ぐ観点から粒子径が500μm以上の石英の粗粒を含むものがより好ましい。また、前記石英の粗粒の粒子径は、5mm以下が好ましい。このような粘土としては、例えば、蛙目粘土等が挙げられる。粘土は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合できる。
混合物中の粘土の含有量は、多孔質セラミックス板状物に求める強度や成形性等を勘案して決定でき、例えば、5〜60質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%がさらに好ましい。上記範囲内であれば混合物の成形性を損なわず、かつ円滑に成形できると共に、多孔質セラミックス板状物の強度を十分なものにできる。
本発明におけるフィラーとしては、例えば、溶融温度が900℃以上の高融点ガラスの粒子等の粒子状フィラー;炭素繊維、バサルト繊維、ロックウール等の繊維状フィラーが挙げられ、中でも、高融点ガラスの粒子、繊維状フィラーが好ましく、高融点ガラスの粒子がより好ましい。高融点ガラスの粒子を用いることで、多孔質セラミックス板状物の強度をより向上でき、良好な成形性が得られる。
例えば、高融点ガラスの粒子をフィラーとして含む原料を焼結すると、高融点ガラスの粒子は、部分的に溶融し、フィラー同士で融着したり、前記粘土類や珪藻土等のバインダーとして機能したりし、多孔質セラミックス板状物の強度をより向上することができる。
あるいは、繊維状フィラーは、多孔質セラミックス板状物に取り込まれることで、多孔質セラミックス板状物の強度をより向上させることができる。
混合物中の高融点ガラスの粒子の含有量は、フィラー以外の原料の合計100質量部に対し、10〜40質量部が好ましく、15〜40質量部がより好ましい。上記下限値未満であると、多孔質セラミックスの強度を十分に向上できないおそれがあり、上記上限値超であると、混合物の成形性が損なわれるおそれがある。
混合物中の繊維状フィラーの含有量は、0.01〜20質量部が好ましく、0.01〜10質量部がより好ましく、0.05〜5質量部がさらに好ましく、0.1〜2質量部が特に好ましい。上記下限値未満では、多孔質セラミックス板状物の強度を十分に向上できないおそれがあり、上記上限値超では、成形性が損なわれるおそれがある。
混合物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、任意成分を含有してもよい。任意成分としては、例えば、マイティ2000WH(商品名、花王株式会社製)等のナフタリン系の流動化剤、メルメントF−10(商品名、昭和電工株式会社製)等のメラミン系の流動化剤、ダーレックススーパー100pH(商品名、グレースケミカルズ株式会社製)等のポリカルボン酸系の流動化剤、銀、銅、亜鉛等の抗菌剤、塩化アンモニウム、塩化亜鉛等の消臭剤、ゼオライト、アパタイト等の吸着剤、金属アルミニウム等が挙げられる。
混合物に任意成分を配合する場合、任意成分の配合量は、例えば、5〜10質量%の範囲で決定することが好ましい。
また、混合物の流動性の調整等を目的として、適宜、水を配合してもよいが、有機汚泥が好適な配合比で配合されている場合には、混合工程にて水を添加しなくてもよい。
混合工程に用いられる混合装置は特に限定されず、公知の混合装置を用いることができる。
混合装置としては、例えば、ミックスマラー(東新工業株式会社製)等の混練機や、ニーダー(株式会社モリヤマ製)、混合機(日陶科学株式会社製)等が挙げられる。
混合工程における混合時間は、原料の配合比、混合物の流動性等を勘案して決定することができ、混合物が可塑状態となるような混合時間を決定することが好ましい。混合時間は、例えば、15〜45分の範囲とすることが好ましく、25〜35分の範囲とすることがより好ましい。
混合工程における温度は特に限定されず、原料の配合比や含水率等を勘案して決定することができ、例えば、40〜80℃の範囲とすることが好ましく、50〜60℃の範囲とすることがより好ましい。
成形工程は、混合工程で得られた混合物を成形する工程である。
成形方法は、公知の成形方法を用いることができ、混合物の性状や所望する成形体の形状を勘案して決定することができる。成形方法は、例えば、成形機を用いて板状の成形体を得る方法、混合物を任意の形状の型枠に充填して板状の成形体を得る方法、あるいは、混合物を押し出し、延伸又は圧延した後、任意の寸法に切断する方法等が挙げられる。多孔質セラミックス板状物の長手方向に沿った扁平孔が複数形成しやすい点からは、多孔質セラミックス板状物の成形においては、押し出し、延伸及び圧延のいずれかを適用することが好ましい。
成形機としては、真空土練成形機、平板プレス成形機、平板押出し成形機等が挙げられ、中でも、真空土練成形機が好ましい。
焼成工程は、成形工程で得られた成形体を乾燥し(乾燥操作)、乾燥した成形体を焼成し(焼成操作)、珪藻土又は粘土等を焼結してセラミックス板状物を得る工程である。
乾燥操作は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、成形体を自然乾燥してもよいし、50〜220℃の熱風乾燥炉で任意の時間処理して乾燥してもよい。乾燥後の成形体の含水率は、特に限定されないが、例えば、5質量%未満が好ましく、1質量%未満がより好ましい。
成形体の含水率は、有機汚泥の含水率と同様に、「産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法」、公布日:昭和48年02月17日、環境庁告示13号、第一の表の備考の規定に準じて行われる。
焼成操作は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、ローラーハースキルン等の連続式焼結炉、シャトルキルン等の回分式焼結炉を用い、任意の温度で焼成する方法が挙げられる。中でも、焼成操作には、生産性の観点から連続式焼結炉を用いることが好ましい。
焼成温度は、混合物の性状等に応じて決定でき、例えば、900℃〜1200℃とされる。焼成温度が上記下限値以上であれば、有機汚泥由来の臭気成分が熱分解され解消されると共に、有機汚泥中の有機物の大部分が揮発して減量する。焼成温度が上記上限値超であると、セラミックス板状物の組織全体のガラス化が進み、成形体が破損したり、気孔が閉塞するおそれがある。
焼成工程の後、必要に応じて、任意の大きさに多孔質セラミックス板状物を切断してもよい。
また、多孔質セラミックス板状物の表面を研削する研削加工工程を施すことができる。
研削加工を施す面は、多孔質セラミックス板状物の形態等を勘案して決定できる。例えば、多孔質セラミックス板状物においては、緑化構造体として設置した際に上面として露出する面に研削加工を施すことが好ましい。研削加工に用いる用具としては、バーチカルミーリングマシーンPVシリーズ(アミテックス株式会社製)等の切削機、グラインダー、サンドペーパー等が挙げられる。
研削加工の程度は、多孔質セラミックス板状物の性状や大きさ等を勘案して決定され、例えば、多孔質セラミックス板状物の表面から0.5〜5mm程度の深さとされる。深さが上記下限値未満では、研削加工を施した効果が得られにくく、上記上限値超では、研削加工後の多孔質セラミックス板状物の強度が低くなるおそれがある。
研削加工を施すと、多孔質セラミックス板状物は、板状物の状態で、長期にわたって優れた吸水速度を維持することができ、素早く雨水を吸収し、多孔質セラミックス板状物内に水を取り入れることができる。また、保持している水の蒸発速度も向上し、緑化構造体の周囲の空気をより冷やすことができる。
(給水手段)
本実施形態における給水手段30は、鉛直方向に沿って配置された鉛直給水管31と、鉛直給水管31から分岐され、水平方向に沿って配置された水平給水管32とを備える。本実施形態では、水平給水管32は、一段おきの植栽用基盤10の上方に設置されているが、各段の植栽用基盤10の上方に配置してもよい。水平給水管32には、植栽用基盤10に向けて水を吐出させる位置に吐出孔が複数形成されている。吐出孔の間隔は一定であることが好ましいが、一定である必要はなく、植物を適切に育成できる位置に吐出孔を形成すればよい。
鉛直給水管31及び水平給水管32としては、金属管、樹脂管、樹脂ホースを用いることができる。
給水手段30は、水を吐出することによって、植栽用基盤10に給水できるようになっている。植栽用基盤10に供給された水は、多孔質セラミックスの飽和含水量を超えると、植栽用基盤10に形成されたボルト用貫通孔10a及び植栽用基盤10の側面を流下し、また、植栽用基盤10の内部を浸透し、植栽用基盤10の下面から浸み出して、棚板に達する。棚板23に達した水は棚板23に形成された貫通孔23a及びボルト用貫通孔23bから、その下に位置する植栽用基盤10に落下する。そのため、水平給水管32が一段おきの植栽用基盤10の上方に設置されても、全ての植栽用基盤10に水を供給することができる。
また、貫通孔23a及びボルト用貫通孔23bより下方に位置する植栽用基盤10に水を誘導するため、貫通孔23aやボルト用貫通孔23bにひもや鎖を取り付け、下に垂らしてもよい。
(余剰水排出部)
本実施形態における余剰水排出部40は、最下段の植栽用基盤10から落下した水を受ける受け部41と、受け部41に落下した水を排出する排出管42とを備える。
この余剰水排出部40では、最下段の植栽用基盤10から落下した余剰の水を受け部41で受けた後、排出管42に通して排出することにより、植物の育成に使用されなかった余剰水を緑化構造体1から排除するようになっている。
(作用効果)
上記緑化構造体1における植栽用基盤10は、鉛直方向の水の拡散速度よりも水平方向の水の拡散速度が速いため、植栽用基盤10の上面に供給した水は植栽用基盤10の内部で水平方向に拡散しやすく、重力によって植栽用基盤10の下面から水が流出することを抑制できる。そのため、各植栽用基盤10は水を充分に保持できるから、緑化構造体1では、上部の植栽用基盤10の含水率と下部の植栽用基盤10の含水率との差を小さくでき、均一に植物を育成できる。さらに、上部の植栽用基盤10への給水の頻度を減らすことができる。
また、各植栽用基盤10においては、水平方向に水が充分に拡散するため、植栽用基盤10の下面から流出する前に水平方向に水を充分に行き渡らせることができ、各植栽用基盤10内での植物の育成のばらつきも抑制できる。
植栽用基盤10を構成する多孔質セラミックスは、適度に高い飽和含水率及びpF値を有するため、植物の栽培に適し、植栽することにより植物を容易に育成することができる。
したがって、緑化構造体1によれば、植物育成の管理が簡便であり、緑化状態を容易に維持できる。
また、緑化構造体1では、植栽用基盤10が鉛直方向に間隔を空けて配置されているため、鉛直方向で隣り合う植栽用基盤10,10の間に風及び光(太陽光又は照明光)を通過させることができ、程よい採光性と目隠し性を有したものとなる。また、緑化構造体1を通過する空気は、植栽用基盤10あるいは植物に含まれる水の蒸発潜熱によって冷やされる。そのため、緑化構造体1に空気が通過する場合には、緑化構造体1よりも風下の空間に、冷えた空気を供給することができる。
また、緑化構造体1を屋外に設置した場合には、植栽用基盤10が雨等の水を十分捕捉でき、潅水の頻度あるいは水の供給量をより減らすことができる。
<緑化壁>
本発明の緑化壁は、上記緑化構造体を1以上備えたものである。
また、緑化壁は、上記緑化構造体を、既に施工済みの建物の外壁に直接固定したもの、上記緑化構造体を、連結具を用いて外壁の外側に固定したもの、上記緑化構造体を、アンカーボルトを用いて地面に固定したもの、上記緑化構造体を、吊り具を用いて天井から吊り下げたものが挙げられる。
また、上記緑化構造体に脚を設け、建物の壁等の前面に取り付け自在の外壁又は内壁としてもよい。脚は、自立させるためのものでもよいし、さらに脚にキャスターを取り付けて移動可能にしてもよい。
緑化壁を外壁とした場合には、植物緑化によって外観を向上させることができる。また、植物及び多孔質セラミックス成形体に含まれる水分の気化により、建物の表面温度上昇を抑制できるため、建物内部の空調コストを抑制でき、都市のヒートアイランド現象を抑制することができる。
緑化壁を内壁とした場合には、植物緑化によって室内空間の美観を向上させることができる。また、植物及び多孔質セラミックス成形体に含まれる水分の気化により、室内の温度上昇を抑制でき、建物内部の空調コストを抑制することができる。
緑化壁においては、複数の緑化構造体が、横フレーム同士や縦フレーム同士が同一直線状や互い違いに配置するように配列した状態で、ボルト等の連結具で連結されてもよい。
また、上記緑化壁を間仕切り壁として用いることもできる。上記緑化壁を間仕切り壁として使用した場合、植物緑化によって室内空間の美観を向上させることができる。また、植物及び多孔質セラミックス成形体に含まれる水分の気化により、室内の温度上昇を抑制できると共に、程よい目隠し効果を有しつつも空気及び光を透過させることができ、より快適な空間を提供することが可能である。緑化壁を間仕切り壁として用いる場合には、移動を容易にする点では、上記のように、緑化構造体に脚とキャスターとを取り付けたものが好ましい。
また、掃除道具の設置場所、自転車置き場、自動販売機あるいは空調の室外機等を隠すように緑化壁を配置してもよい。この場合、美観を向上でき、自動販売機あるいは空調の室外機等に近接して緑化壁を設置すると、自動販売機あるいは室外機の温度上昇を抑制することもできる。
また、緑化壁は、窓の開口部の近傍に設置されて、目隠しとして使用されてもよい。
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。
例えば、上記実施形態では、多孔質セラミックスの板状物を組み合わせて植栽用基盤を作製したが、混合工程、成形工程及び焼成工程によって多孔質セラミックス成形体を直接作製し、これを使用してもよい。
本発明においては、植栽用基盤が上面視において矩形状で且つ平板状の形状である必要はなく、任意の形状とすることができる。ただし、植栽用基盤が平板状でない場合には、植栽用基盤の内部に、植栽用基盤の内部に鉛直方向に沿う方向の長さが植栽用基盤の鉛直方向の最小長さの90%以上である孔が形成されていないことが好ましく、さらに、水平方向に沿って孔径1mm超の孔が複数形成されていることがより好ましい。
ここで、水平方向に沿って形成された孔とは、水平方向と平行な方向のみに限らない。植栽用基盤を鉛直方向に沿って任意の位置で切断した際の断面を見た際に、各孔において最大孔径を示す直線が水平方向に対して±30°、好ましくは±15°、より好ましくは±10°の範囲内の角度にあれば、水平方向に沿って形成された孔と定義する。また、上面とは、植栽用基盤を上から見た際に視認できる面の全てのことであり、下面とは、植栽用基盤を下から見た際に視認できる面の全てのことである。
本発明における固定用部材は、縦フレームと横フレームとを備える格子状フレームとする必要はなく、例えば、縦フレームを備え、横フレームを備えないものでも構わない。
固定部用材における棚板は、植栽用基盤の下面の一部を受けるように設けられてもよい。また、棚板は、縦フレームに取り付けられてもよい。
植栽用基盤をフレームに直接固定した場合には、棚板は省略することができる。
本発明において、給水手段は、水平給水管が植栽用基盤の上方に配置されていなくてもよい。例えば、2枚の多孔質セラミックス板状物を積層して植栽用基盤を形成している場合には、図4に示すように、上段板状物12の幅方向の長さを短くして下段板状物11の上方且つ上段板状物12の後方に空間を形成し、その空間に水平給水管32を配置してもよい。また、図5に示すように、下段板状物11の幅方向の長さを短くして上段板状物12の下方且つ下段板状物11の後方に空間を形成し、その空間に水平給水管32を配置してもよい。ただし、図4に示す形態及び図5に示す形態のいずれの場合でも、植栽用基盤10に向けて水が吐出されるように吐出孔32aが水平給水管32に形成されているとよい。図4及び図5に示す形態によれば、緑化構造体をその前方から見た際に、植栽用基盤10の後方に水平給水管32を隠すことができる。
雨水のみで植物育成のための水分を賄えるのであれば、給水手段は不要である。また、じょうろや水差し等を用いて植栽用基盤に給水する場合も給水手段は不要である。給水手段がない場合には、余剰水排出部がなくても構わない。
上面視において矩形状で且つ平板状の多孔質セラミックス製植栽用基盤は、図6,8に示すように、その上面10cが斜め前方に傾斜しても構わないし、図7,9に示すように、その上面10cが斜め後方に傾斜しても構わない。植栽用基盤10が傾斜した場合の傾斜角θは水平方向に対して0°超30°以下であることが好ましい。傾斜角θが30°を超えると、植物の落下を招くおそれがあり、また、植栽用基盤10の側面から水が漏れ出て保水性が低下するおそれがある。
植栽用基盤の傾斜は、植栽用基盤ごと、縦フレームごと、横フレームごと、棚板ごと、緑化構造体ごと、などで傾斜角を任意に変えてもよい。
上記のように植栽用基盤を傾斜させることにより、風、雨、光、埃、視界などを遮蔽できるため、目的に応じた様々な個所で使用することができる。
上面視において矩形状で且つ平板状の多孔質セラミックス製植栽用基盤を傾斜させても、植栽用基盤に供給された水を水平方向に拡散させる性能は維持されるため、植物育成の均一性はほとんど低下しない。
なお、上面視において矩形状で且つ平板状の多孔質セラミックス製植栽用基盤を、植栽用基盤の長手方向を水平方向に対して傾斜させた場合、植栽用基盤内に水は拡散するものの、傾斜した植栽用基盤の上部では水分量が少なくなり、下部では水分量が多くなるため、好ましくない。傾斜した植栽用基盤の上部で水分量が少なくなり、下部で水分量が多くなると、傾斜した植栽用基盤の上部に植栽された植物と下部に植栽された植物とで育成差が生じることがある。また、植栽用基盤の下部の含水分が多くなると、下部のみに苔が生えやすくなり、緑化が不均一になり、意匠性を損ねるおそれがある。また、傾斜した植栽用基盤の上部の含水率を保つようにするためには、頻繁な灌水が必要となり、煩雑である。
上面視において矩形状で且つ平板状の多孔質セラミックス製植栽用基盤を、その長手方向が横フレームに沿うように配置し、植栽用基盤の上面を斜め前方又は斜め後方に傾斜させた場合にも、傾斜した植栽用基盤の上部では水分量が少なくなり、下部では水分量が多くなる傾向はある。しかし、この場合の植栽用基盤の奥行き方向の長さは短いため、上部と下部の水分量の差は小さく、植物の育成差は殆ど生じない。さらに、植栽用基盤の上面を斜め前方に傾斜させた場合には、植栽用基盤の下部に苔が生えたとしても、緑化構造体をその前方から見た際には、植栽用基盤の長手方向にわたって苔が生えるため、意匠性をむしろ向上させることができる。
1 緑化構造体
10 植栽用基盤
10a ボルト用貫通孔
10b 凹部
11 下段板状物
12 上段板状物
20 固定用部材
21 縦フレーム
22 横フレーム
23 棚板
24 天板
25 固定用ボルト
30 給水手段
31 鉛直給水管
32 水平給水管
40 余剰水排出部
41 受け部
42 排出管

Claims (11)

  1. 多孔質セラミックスからなる複数個の植栽用基盤と、該植栽用基盤を固定する固定用部材とを備え、該植栽用基盤が間隔を空けて鉛直方向に複数段配置されている緑化構造体であって、
    前記植栽用基盤は、上面視において矩形状の平板体であり、前記植栽用基盤の長手方向が水平方向に沿うように配置され、前記植栽用基盤の内部には、水平方向に沿って孔径1mm超の孔が複数形成され、
    前記植栽用基盤は、鉛直方向の水の拡散速度よりも水平方向の水の拡散速度が速い、緑化構造体。
  2. 前記植栽用基盤の内部に、鉛直方向に沿う方向の長さが植栽用基盤の鉛直方向の最小長さの90%以上である孔が形成されていない、請求項1に記載の緑化構造体。
  3. 水平方向に沿って形成された孔径1mm超の孔は、水平方向の孔径が鉛直方向の孔径よりも長い扁平状である、請求項1又は2に記載の緑化構造体。
  4. 前記植栽用基盤は、その厚み方向が鉛直方向に沿うように配置されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の緑化構造体。
  5. 前記植栽用基盤は、その上面が斜め前方又は斜め後方に傾斜しており、その傾斜角が水平方向に対して0°超30°以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の緑化構造体。
  6. 前記多孔質セラミックスは、pF値2.7以下の水分量が5体積%以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の緑化構造体。
  7. 前記多孔質セラミックスは、pF値1.5超2.7以下の水分量が1.0体積%以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の緑化構造体。
  8. 前記植栽用基盤は、長辺が15cm以上100cm以下、短辺が3cm以上30cm以下、厚みが1cm以上10cm以下の板状物を用いて構成されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の緑化構造体。
  9. 前記多孔質セラミックスは、飽和含水率が30体積%以上である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の緑化構造体。
  10. 前記植栽用基盤の上面には、植物を植栽するための凹部が形成されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の緑化構造体。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の緑化構造体を備えた緑化壁。
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