JP2016082882A - プランター及びそれを用いた植物の育成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上方に開口し、内部に用土が収納される容器10で構成されるプランター1であって、前記容器10の少なくとも一部に、飽和含水率が20%以上であり、かつ連通した複数の気孔を有する多孔質セラミックスが用いられ、前記気孔は、孔径がミリメートルオーダーかつ扁平状であり、平行に形成された気孔を複数含むプランター1及びそれを用いた植物の育成方法。
【選択図】図1
Description
近年、地球温暖化現象が進行して、気温が以前より上昇し、植物の育成に悪影響を与えていることが知られている。特にコンクリートやアスファルトなどで舗装された屋上やベランダ、舗道ではさらに気温が上昇しやすく、これらの上に設置したプランターに植えられた植物はさらに厳しい環境にさらされており、植物の育成に悪影響を与えている。
そこで、本発明は、高温環境下であっても植物の育成に適したプランター及びそれを用いた植物の育成方法を提供することを目的とする。
[1] 上方に開口し、内部に用土が収納される容器で構成されるプランターであって、前記容器の少なくとも一部に、飽和含水率が20%以上であり、かつ連通した複数の気孔を有する多孔質セラミックスが用いられ、前記気孔は、孔径がミリメートルオーダーかつ扁平状であり、平行に形成された気孔を複数含む、プランター。
[2] 前記気孔は、孔径がナノメートルオーダーの気孔と、孔径がマイクロメートルオーダーの気孔と、孔径がミリメートルオーダーの気孔とを含む、[1]に記載のプランター。
[3] 前記容器の深さが5cm以上である、[1]または[2]に記載のプランター。
[4] 前記容器が、両端が開口している中空状の胴部と、該胴部の一端を閉塞する底部とからなり、該底部に前記多孔質セラミックスが用いられている、[1]〜[3]のいずれか1つに記載のプランター。
[5] 前記容器が、両端が開口している中空状の胴部と、該胴部の一端を閉塞する底部とからなり、該胴部の少なくとも一部に前記多孔質セラミックスが用いられている、[1]〜[4]のいずれか1つに記載のプランター。
[6] 前記胴部の全面及び底部に前記多孔質セラミックスが用いられている、[4]または[5]に記載のプランター。
[7] 前記容器が球体の上部を切り取った形状であり、該容器の球面の少なくとも一部に前記多孔質セラミックスが用いられている、[1]〜[3]のいずれか1つに記載のプランター。
[8] 前記容器の球面の全面に前記多孔質セラミックスが用いられている、[7]に記載のプランター。
[9] [1]〜[8]のいずれか1つに記載のプランターに用土を入れて植物を栽培する、植物の育成方法。
本発明のプランターは、上方に開口し、内部に用土が収納される容器で構成され、容器の少なくとも一部に、後述する多孔質セラミックスが用いられる。
以下、本発明のプランターの一実施形態について、図1、2を参照して説明を行う。なお、図1、2及び後述する図3、4において、説明の便宜上、寸法比は実際のものと異なったものである。また、図2及び後述する図3、4において、図1と同じ構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図1に示すプランター1は、4つの多孔質セラミックスの板状物11で構成された、両端が開口している中空状の胴部10aと、1つの多孔質セラミックスの板状物11で構成された、胴部10aの一端を閉塞する底部10bとからなる容器10で構成されている。
多孔質セラミックスの板状物11同士は、接着剤、ボルトなどで接合されていてもよいし、金属製等のフレームなどにはめ込んで接合されていてもよい。
容器10の大きさは特に限定されるものではないが、容器10の深さ(胴部10aの一端から他端までの長さ)Dは、容器10内に収納される用土の温度上昇をより抑制しやすく、しかも植物の成長を阻害しにくい観点から、5cm以上であるとよく、より好ましくは10cm以上であり、さらに好ましくは20cm以上である。容器10の深さDの上限は特に限定されず、植物の種類によっても異なるが、おおよそ1m以下である。
図1に示す容器10に用いられる多孔質セラミックスは、表裏一対の第一の面11aと第二の面11bとを有する板状物である。以下、第一の面及び第二の面を総称して、「板状物の表面」ともいう。
多孔質セラミックスは、飽和含水率が20%以上であり、かつ連通した複数の気孔(図示略)を有する。
気孔は、孔径がミリメートルオーダーかつ扁平状であり、平行に形成された気孔を複数含む。以下、扁平状の気孔を「扁平孔」という。
また、「平行に形成された気孔」とは、複数の扁平孔が互いに平行になるように形成されていることを意味する。ここで、「平行」とは、正確に平行を維持するもののみを意味するのではなく、例えば図2に示すように、複数の扁平孔hが多孔質セラミックスの板状物11の厚さ方向(図2中のz方向)に並んでいればよい。
また、扁平孔hは、孔径(長径)の向きが多孔質セラミックスの板状物11の表面に対して平行(図2中のx方向およびy方向)となるように形成されている。
平行に形成されている扁平孔h同士は、互いに連通していてもよいし、後述する他の大きさの気孔を介して連通していてもよい。
多孔質セラミックス中の気孔同士が連通していることで、水の通りが高まり、透水性に優れるものと考えられる。加えて、気孔同士が連通していると、多孔質セラミックスの保水量が高まるので、保水性にも優れるものと考えられる。しかも、気孔が、互いに平行で、多孔質セラミックスの板状物11の表面に対しても平行に形成されたミリメートルオーダーの扁平孔を複数含むため、水が多孔質セラミックスの板状物11の厚さ方向へ拡散する速度よりも、面方向へ拡散する速度の方が速い。そのため、多孔質セラミックスの板状物11の内部で水が面方向に充分に拡散しやすい。また、厚さ方向よりも面方向の方が水の拡散距離が長いため、水の保持時間が長くなる。よって、保水性が高まるものと考えられる。
なお、気孔が平行に形成されたミリメートルオーダーの扁平孔を含まない場合は、透水性及び保水性の少なくとも一方の性能が低下しやすくなる傾向にある。
また、ミリメートルオーダーの扁平孔の短径は5mm未満が好ましく、より好ましくは3mm以下である。ミリメートルオーダーの扁平孔の短径が5mm未満であれば、多孔質セラミックスの強度を維持しながら、より優れた保水性を発現できる。
ミリメートルオーダーの扁平孔には、直線的に扁平にした気孔はもちろんのこと、屈曲した扁平状の気孔も含まれる。
また、多孔質セラミックスに形成されている気孔は、ミリメートルオーダーの扁平孔以外にも、孔径が1nm以上1000nm未満のナノメートルオーダーの気孔、孔径が1μm以上1000μm未満のマイクロメートルオーダーの気孔、孔径が1mm以上1000mm未満のミリメートルオーダーの気孔を含んでいてもよい。特に、保水性及び透水性がより向上する観点から、ミリメートルオーダーの扁平孔を含むミリメートルオーダーの気孔と、マイクロメートルオーダーの気孔と、ナノメートルオーダーの気孔が混在していることが好ましい。また、多孔質セラミックスの保水量が増加すると共に、水の気化を適度に抑制し、長期にわたって空気の冷却性能を発揮できることから、これらの気孔の少なくとも一部が連通していることが好ましい。
なお、気孔の孔径とは、気孔の長径を指す。ミリメートルオーダーの気孔の孔径は、多孔質セラミックスの板状物を厚さ方向に対し垂直に切断し、スケールを用いて気孔の長径を測定した値である。ナノメートルオーダー及びマイクロメートルオーダーの気孔の孔径は、多孔質セラミックスの板状物を切断し、電子顕微鏡を用いて気孔の長径を測定した値である。
また、本発明に用いる多孔質セラミックスは、飽和含水率が20質量%以上であり、かつ気孔が連通しているので、独立気孔の多孔質セラミックスに比べ、用土の温度上昇をより抑制し、また、長期に温度上昇をより抑制することができる。
一方、多孔質セラミックスの飽和含水率は100質量%以下であることが好ましい。飽和含水率が100質量%を超えると、プランターとして用いる場合に、強度が不足するおそれがある。
飽和含水率(質量%)=[(飽和状態質量−絶乾状態質量)/絶乾状態質量]×100 ・・・(1)
多孔質セラミックスの製造方法としては、例えば、原料を混合して混合物(以下、単に「混合物」ということがある。)とし(混合工程)、混合物を成形して板状等の成形体とし(成形工程)、成形体を焼成して多孔質セラミックスを得る(焼成工程)方法などが挙げられる。
混合物としては、例えば、スラグ、有機汚泥、珪藻土、フィラーからなる群から選択される少なくとも1種と、粘土とを含むものが好ましく、スラグ、有機汚泥及び粘土を含むものがより好ましい。スラグを用いることで大きなミリメートルオーダーの気孔を形成することができ、珪藻土を用いることでマイクロメートルオーダーの気孔を形成することができる。また、有機汚泥を用いることでマイクロメートルオーダーの気孔と、さらに小さな気孔を形成することができる。飽和含水率などの保水能の向上とミリメートルオーダーの扁平孔を形成する観点からは、スラグと粘土とを含むものが好ましく、長期にわたり用土の温度上昇を抑制する観点からは、スラグと有機汚泥と粘土とを含むもの、もしくはスラグと珪藻土と粘土とを含むものが好ましく、強度の向上と飽和含水率などの保水能の向上の観点からは、有機汚泥と珪藻土と粘土とを含むものが好ましい。保水能の向上と扁平孔の形成とをよりバランスよくするためには、スラグ、有機汚泥、珪藻土及び粘土を含むものが好ましい。このような混合物を焼成して得られた多孔質セラミックスは、多くの連通した気孔を有するものとなる。
有機汚泥の含水率は、例えば、1〜90質量%が好ましく、5〜90質量%がより好ましく、65〜85質量%がさらにより好ましい。有機汚泥の含水率が上記範囲内であれば、均質な混合物が得られると共に、良好な成形性を維持しやすい。
有機汚泥の含水率は、「産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法」、公布日:昭和48年02月17日、環境庁告示13号、第一の表の備考の規定に準じて行われる。
有機物含有量(質量%)=100(質量%)−灰分(質量%) ・・・(2)
珪藻土としては特に限定されず、従来、耐火断熱煉瓦、濾過材等に使用されていたものと同様のものを用いることができる。例えば、狭雑している粘土鉱物(モンモリロナイト等)や石英、長石等を分別精製する必要はなく、これらの含有率を認識した上で、混合物への配合量を調整することができる。また、珪藻土を用いて製造され廃棄された耐火断熱煉瓦、濾過材、コンロなどを粉砕して用いると、廃棄物を削減できるため、好ましい。
なお、含水率は、乾燥減量方式である下記仕様の赤外線水分計を用い、試料を乾燥(200℃、12分)し、下記式(3)により求めた値である。
・測定方式:乾燥減量法(加熱乾燥・質量測定方式)、
・最小表示:含水率;0.1質量%、
・測定範囲:含水率;0.0〜100質量%、
・乾燥温度:0〜200℃、
・測定精度:試料質量5g以上で、含水率±0.1質量%、
・熱源:赤外線ランプ;185W
m1:乾燥前の容器の質量と乾燥前の試料の質量との合計質量(g)、
m2:乾燥後の容器の質量と乾燥後の試料の質量との合計質量(g)、
m0:乾燥後の容器の質量(g)
粘土としては、セラミックスに用いられる公知のものを用いることができ、石英、長石、粘土系等の鉱物組成で構成されており、その構成鉱物はカオリナイトを主とし、ハロイサイト、モンモリロナイト、イライト、ベントナイト、パイロフィライトを含むものが好ましい。中でも、焼結時のクラックの進展を抑え、多孔質セラミックスの破壊を防ぐ観点から粒子径が500μm以上の石英の粗粒を含むものがより好ましい。また、前記石英の粗粒の粒子径は、5mm以下が好ましい。このような粘土としては、例えば、蛙目粘土等が挙げられる。粘土は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合できる。
例えば、高融点ガラスの粒子をフィラーとして含む原料を焼結すると、高融点ガラスの粒子は、部分的に溶融し、フィラー同士で融着したり、前記粘土類や珪藻土等のバインダーとして機能したりし、多孔質セラミックスの強度をより向上することができる。
あるいは、繊維状フィラーは、多孔質セラミックスに取り込まれることで、多孔質セラミックスの強度をより向上させることができる。
混合物に任意成分を配合する場合、任意成分の配合量は、例えば、5〜10質量%の範囲で決定することが好ましい。
また、混合物の流動性の調整等を目的として、適宜、水を配合してもよいが、有機汚泥が好適な配合比で配合されている場合には、混合工程にて水を添加しなくてもよい。
混合装置としては、例えば、ミックスマラー(東新工業株式会社製)等の混練機や、ニーダー(株式会社モリヤマ製)、混合機(日陶科学株式会社製)等が挙げられる。
混合工程における温度は特に限定されず、原料の配合比や含水率等を勘案して決定することができ、例えば、40〜80℃の範囲とすることが好ましく、50〜60℃の範囲とすることがより好ましい。
成形方法としては公知の成形方法を用いることができ、混合物の性状や所望する成形体の形状を勘案して決定することができる。成形方法としては、例えば、成形機を用いて、ペレットなどを含めた板状、粒状又は柱状等の成形体を得る方法、混合物を任意の形状の型枠に充填して成形体を得る方法、あるいは、混合物を押し出し、延伸又は圧延した後、任意の寸法に切断する方法などが挙げられる。互いに平行で、多孔質セラミックスの板状物11の表面に対しても平行な扁平孔を複数形成しやすい観点からは、押し出し、延伸及び圧延の1つ以上を適用することが好ましく、平板状または帯への押し出し、延伸及び圧延の1つ以上を適用することがより好ましい。
成形機としては、真空土練成形機、平板プレス成形機、平板押出し成形機などが挙げられ、中でも真空土練成形機が好ましい。
乾燥操作としては特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、成形体を自然乾燥してもよいし、50〜220℃の熱風乾燥炉で任意の時間処理して乾燥してもよい。乾燥後の成形体の含水率は特に限定されないが、例えば、5質量%未満が好ましく、1質量%未満がより好ましい。
成形体の含水率は、有機汚泥の含水率と同様に、「産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法」、公布日:昭和48年02月17日、環境庁告示13号、第一の表の備考の規定に準じて行われる。
焼成温度は、混合物の性状等に応じて決定でき、例えば、900℃〜1200℃とされる。焼成温度が上記下限値以上であれば、有機汚泥由来の臭気成分が熱分解され解消されると共に、有機汚泥中の有機物の大部分が揮発して減量する。焼成温度が上記上限値超であると、セラミックスの組織全体のガラス化が進み、成形体が破損したり、気孔が閉塞したりするおそれがある。
また、多孔質セラミックスの板状物11の第一の面11aおよび第二の面11bの少なくとも一方を研削する研削加工工程を施すことができる。
研削加工を施す面は、多孔質セラミックスの板状物11の形態等を勘案して決定できる。例えば、多孔質セラミックスの板状物11を製造する場合、多孔質セラミックスの板状物11の第一の面11aおよび第二の面11bの少なくとも一方、好ましくは両方に研削加工を施すことが好ましい。研削加工に用いる用具としては、バーチカルミーリングマシーンPVシリーズ(アミテックス株式会社製)等の切削機、グラインダー、サンドペーパーなどが挙げられる。
研削加工を施すと、多孔質セラミックスは、板状物の状態で、長期にわたって優れた吸水速度、排水速度を維持することができ、素早く雨水や灌水した水を吸収すると共に、過剰な水を排水することができる。また、保持している水の蒸発速度も向上し、用土の温度上昇をより抑制することができる。
以上説明した第一の実施形態のプランター1は、上述した特定の多孔質セラミックスの板状物11で構成された胴部10aと底部10bとからなる容器10で構成されているので、保水性に優れる。そのため、外気温が高くなると多孔質セラミックス内の水を気化させることで、容器10内に収納された用土の温度上昇を抑制することができる。さらに、用土中の水分を多孔質セラミックスが吸収し気化させることもできるため、プラスチック製や素焼き製のプランターに比べ、より温度上昇を抑制する効果を発揮できる。
よって、本発明の第一の実施形態のプランター1は、高温環境下であっても植物の育成に適している。
図3に示すプランター2は、多孔質セラミックスの角柱状物12を複数積層した積層物を4つ組み合わせて構成された、両端が開口している中空状の胴部10aと、1つの多孔質セラミックスの板状物11で構成された、胴部10aの一端を閉塞する底部10bとからなる容器10で構成されている。
一方、図3に示す第二の実施形態のプランター2の場合、多孔質セラミックスの角柱状物12を複数積層した積層物を4つ組み合わせることで直方体状の容器10の胴部10aを形成し、1つの多孔質セラミックスの板状物11で容器10の底部10bを形成している。また、この例の多孔質セラミックスの角柱状物12は、角柱状になるように多孔質セラミックスの板状物11を厚さ方向に切断したものであり、その切断面12aが容器10の胴部10aの側面となるような向きで、複数の多孔質セラミックスの角柱状物12が積層されている。また、多孔質セラミックスの板状物11の表面が、容器10の底部10bの底面となっている。
多孔質セラミックスの角柱状物12同士は、接着剤、ボルトなどで接合されていてもよいし、金属製等のフレームなどにはめ込んで接合されていてもよい。
また、多孔質セラミックスについても、第一の実施形態と同様である。
以上説明した第二の実施形態のプランター2は、上述した特定の多孔質セラミックスの角柱状物12で構成された胴部10aと、多孔質セラミックスの板状物11で構成された底部10bとからなる容器10で構成されているので、保水性に優れる。そのため、外気温が高くなると多孔質セラミックス内の水を気化させることで、容器10内に収納された用土の温度上昇を抑制することができる。さらに、用土中の水分を多孔質セラミックスが吸収し気化させることもできるため、プラスチック製や素焼き製のプランターに比べ、より温度上昇を抑制する効果を発揮できる。
よって、本発明の第二の実施形態のプランター2は、高温環境下であっても植物の育成に適している。
本発明のプランターは、上述したものに限定されない。図1に示すプランター1及び図3に示すプランター2は、直方体状の容器10から構成されているが、容器10の形状は、五角柱や六角中等の多角柱状、円柱状、上方に向かって面積が広くなるような逆テーパー形状や、その反対のテーパー形状などであってもよい。また、胴部10aの側面の形状についても、図1,3に示すような長方形に限定されず、例えば、台形や三角形、5角形や6角形などであってもよい。
図4に示す容器10は、多孔質セラミックスの半球状物13からなるものであり、該半球状物13は中がくり抜かれている。この例では、容器10の球面の全面に多孔質セラミックスが用いられているが、容器10の球面の少なくとも一部に多孔質セラミックスが用いられていてもよい。水の透水性および保水性、用土の温度上昇の抑制などによる植物の育成性を考慮すると、容器10の球面の全面に多孔質セラミックスが用いられていることが好ましい。
なお、図4に示すような多孔質セラミックスの半球状物13は、例えばサッカーボールのように正五角形と正六角形のパネルを複数組み合わせて球体とし、該球体を半分に切断することで得られる。このとき、複数のパネルの1枚以上に上述した多孔質セラミックスの板状物を用いる。また、多孔質セラミックスの板状物を複数組み合わせて半球に近い形状とし、角を削って表面を滑らかにすることで、多孔質セラミックスの半球状物13を製造してもよい。
水抜きのための穴を設ける場合には、穴の上などに玉石等を置いて、用土の流出を防いでもよい。
また、意匠性を向上させるために、本発明のプランターを木製やプラスチック製のカバーで覆うことも可能である。ただし、カバーで覆う場合は、用土の温度上昇を抑制する観点から、本発明のプランターとカバーとの間に隙間を設け、プランターを構成する多孔質セラミックスから水が蒸発しやすい環境としておくことが好ましい。
本発明の植物の育成方法では、上述した本発明のプランターに用土を入れて植物を栽培する。
用土としては、プランターに植える植物が育成できるものであれば特に限定されるものではない。
また、プランターに用土を入れる前に、プランターの底に玉石等を敷いてもよいが、本発明のプランターに用いる多孔質セラミックスは透水性に優れるため、玉石等を敷かなくても植物の根腐れ等を抑制することができる。
以下に、実施例及び比較例で使用した原料と、各種測定・評価方法を示す。
<有機汚泥>
有機汚泥としては、染色工場(小松精練株式会社)の活性汚泥法による排水処理設備から凝集・脱水工程を経て排出された活性汚泥を用いた。この活性汚泥の有機物含有量(対固形分)は83質量%、含水率は85質量%であった。
粘土としては、蛙目粘土(産地:岐阜県)を用いた。
発泡剤としては、鋳鉄スラグを用いた。この鋳鉄スラグは、SiO2、Al2O3、CaO、Fe2O3、FeO、MgO、MnO、K2OおよびNa2Oを主成分とするダクタイル鋳鉄スラグである。
珪藻土としては、能登地区産の耐火煉瓦の原料で、含水率が珪藻土の全体質量に対して5質量%の粉末状の珪藻土を用いた。
<飽和含水率の測定>
多孔質セラミックスの板状物を水に60分間浸漬し、該板状物の横から水がこぼれないように板状物の面が水平方向になるように水から取り出し、表面の水滴を除去する程度に布に接触させた後、質量(飽和状態質量)を測定し、下記式(1)により求めた。なお、下記式(1)中の「絶乾状態質量」とは、多孔質セラミックスの板状物を120℃で24時間乾燥した後の質量のことである。
飽和含水率(質量%)=[(飽和状態質量−絶乾状態質量)/絶乾状態質量]×100 ・・・(1)
多孔質セラミックスの板状物を厚さ方向に対し垂直に切断し、当該断面から目視で確認できるミリメートルオーダーの扁平な気孔を扁平孔と認定した。
また、多孔質セラミックスの板状物を切断し、電子顕微鏡を用いてナノメートルオーダー及びマイクロメートルオーダーの気孔を確認した。
多孔質セラミックスにおける気孔同士の連通の有無の確認は、多孔質セラミックスの板状物を粉砕して粒径が5mm程度の粒状にしたものを水に浸漬し、充分に吸水させた後に潰し、その潰れたものを観察することで確認した。多孔質セラミックスを潰したものに満遍なく水分が分布されている場合、気孔同士が連通していると判断した。多孔質セラミックスを潰したものに満遍なく水分が行き渡っていない場合には、個々の気孔または孔隙が独立しており、気孔同士が連通していないまたは連通が不充分であると判断した。
<多孔質セラミックスの板状物の製造>
スラグ55質量%と、有機汚泥10質量%と、粘土30質量%と、珪藻土5質量%とをミックスマラー(新東工業株式会社製)にて混合し、可塑状態の混合物を得た(混合工程)。
次いで、得られた混合物を真空土練成形機(高浜工業株式会社製)にて押し出し、圧延成形し、幅60cm、厚さ2cmの帯状の一次成形体を得た。この一次成形体を任意のピッチと幅で切断して、厚さ2cmの略正方形の板状の成形体を得た(成形工程)。
得られた多孔質セラミックスの端部を厚さ方向に切断し、さらに表面を研削し、タテ50cm、ヨコ50cm、厚さ3cmの板状物を得た。
また、得られた多孔質セラミックスの板状物の飽和含水率は50質量%であった。
得られた多孔質セラミックスの板状物を厚さ方向に、それぞれ所望の大きさとなるように切断した、5枚の多孔質セラミックスの板状物を準備した。これらを用い、図1に示すような、胴部10aの全面及び底部10bが多孔質セラミックスの板状物11で構成された、内径でタテLが17cm、ヨコWが44cm、深さDが19cmの容器10を作製し、これをプランター1とした。
多孔質セラミックスの板状物11同士は、接着剤で固定した。また、得られたプランター1には水抜きのための穴は設けなかった。
得られたプランター1に、用土としてアイリスオーヤマ株式会社製の「培養土 園芸用」をプランター1の上面から2cm下まで入れ、床面がコンクリートの屋上(屋外)に放置した。
雨が降った直後から、用土の表面から5cm及び10cmの深さの位置の用土の温度と、外気温の測定を24時間にわたり行なった。なお、温度測定を行っている24時間は、雨は降らず、潅水も行なわなかった。
用土の温度と外気温の最高温度及び最低温度を表1に示す。
また、トレニアを引き抜くときの力の強さでトレニアの根の張り方を評価した。トレニアを引き抜くのに強い力が必要である場合を「○」、簡単にトレニアを引き抜くことができた場合を「×」と評価した。
これらの結果を表1に示す。
アップルウェアー株式会社製のプラスチック製プランター(内径:タテ17cm、ヨコ59cm、深さ(底のネットの部分除く)14cm)を用いた以外は、実施例1と同様にして用土の温度と外気温の測定を24時間にわたり行った。
用土の温度と外気温の最高温度及び最低温度を表1に示す。
これらの結果を表1に示す。
また、実施例1の場合、比較例1よりもトレニアが発育しており、根がしっかりと張っていた。
このように、実施例1のプランターを用いれば、用土の温度の上昇及び1日の温度の変動を抑制することにより、植物が温度で受けるストレスを抑制し、育成が阻害されることを抑制することができることが示された。
<プランターの製造>
実施例1と同様にして、タテ50cm、ヨコ50cm、厚さ3cmの多孔質セラミックスの板状物を作製した。該板状物を厚さ方向に切断し、長辺21cm、短辺3cm、厚さ3cmの多孔質セラミックスの角柱状物を得た。得られた多孔質セラミックスの角柱状物を用い、切断面(複数の扁平孔が平行に形成されていることが観察される面)が外側から観察できるように複数積層した積層物を4つ組み合わせ、図3に示すような、胴部10aの全面が多孔質セラミックスの角柱状物12で構成された、内径:タテ18cm、ヨコ18cm、深さ27cm(外径:タテ24cm、ヨコ24cm、高さ27cm)であり、両端が開口している中空状の胴部10aを作製した。
別途、実施例1と同様にして多孔質セラミックスを作製し、その端部を厚さ方向に切断し、タテ24cm、ヨコ24cm、厚さ3cmの板状物を得た。得られた多孔質セラミックスの板状物を用いて胴部10aの一端を閉塞し、多孔質セラミックスの板状物11で構成された底部10bを形成して容器10を得た。これをプランター2とした。
多孔質セラミックスの角柱状物12同士、及び多孔質セラミックスの角柱状物12と多孔質セラミックスの板状物11は、それぞれ接着剤で固定した。また、得られたプランター2には水抜きのための穴は設けなかった。
得られたプランター2に、用土としてアイリスオーヤマ株式会社製の「培養土 園芸用」をプランター1の上面から2cm下まで入れビニールハウス内に設置した。
用土の表面から10cmの深さの位置の用土の温度と、ビニールハウス内の気温の測定を1週間にわたり行なった。潅水は1日2回午前6時と午後6時に行った。
午前6時〜午後6時までの用土の平均温度、及びビニールハウス内の平均温度を求めた。結果を表2に示す。
実施例2で製造したプランター2と内径がほぼ同様のプラスチック製プランターを用いた以外は、実施例2と同様にして用土の温度とビニールハウス内の気温の測定を1週間にわたり行った。
午前6時〜午後6時までの用土の平均温度、及びビニールハウス内の平均温度を表2に示す。
このように、実施例2のプランターを用いれば、用土の温度の上昇を抑制することにより、植物が温度で受けるストレスを抑制し、育成が阻害されることを抑制することができることが示された。
10 容器
10a 胴部
10b 底部
11 多孔質セラミックスの板状物
11a 第一の面
11b 第二の面
12 多孔質セラミックスの角柱状物
12a 切断面
13 多孔質セラミックスの半球状物
h 扁平孔
D 深さ
L タテ
W ヨコ
S1 長辺
S2 短辺
T 厚さ
Claims (9)
- 上方に開口し、内部に用土が収納される容器で構成されるプランターであって、
前記容器の少なくとも一部に、飽和含水率が20%以上であり、かつ連通した複数の気孔を有する多孔質セラミックスが用いられ、
前記気孔は、孔径がミリメートルオーダーかつ扁平状であり、平行に形成された気孔を複数含む、プランター。 - 前記気孔は、孔径がナノメートルオーダーの気孔と、孔径がマイクロメートルオーダーの気孔と、孔径がミリメートルオーダーの気孔とを含む、請求項1に記載のプランター。
- 前記容器の深さが5cm以上である、請求項1または2に記載のプランター。
- 前記容器が、両端が開口している中空状の胴部と、該胴部の一端を閉塞する底部とからなり、該底部に前記多孔質セラミックスが用いられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプランター。
- 前記容器が、両端が開口している中空状の胴部と、該胴部の一端を閉塞する底部とからなり、該胴部の少なくとも一部に前記多孔質セラミックスが用いられている、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプランター。
- 前記胴部の全面及び底部に前記多孔質セラミックスが用いられている、請求項4または5に記載のプランター。
- 前記容器が球体の上部を切り取った形状であり、該容器の球面の少なくとも一部に前記多孔質セラミックスが用いられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプランター。
- 前記容器の球面の全面に前記多孔質セラミックスが用いられている、請求項7に記載のプランター。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載のプランターに用土を入れて植物を栽培する、植物の育成方法。
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JP2013220048A (ja) * | 2012-04-13 | 2013-10-28 | Komatsu Seiren Co Ltd | 緑化材およびその使用方法、緑化構造体 |
-
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- 2014-10-23 JP JP2014216181A patent/JP2016082882A/ja active Pending
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