(詳細な説明)
用語集
(0036)用語「活性」は、本明細書で使用するとき、意図した治療効果に関与する本発明の組成物の成分、構成成分又は構成要素を指す。用語「活性成分」(「AI」、「医薬品有効成分」、「API」、又は「原体活性」)は、薬物中の薬学的に活性な物質である。本明細書で使用するとき、句「追加活性成分」は、記載された組成物の化合物以外の、薬理学的、又は任意のその他の有益活性を示す薬剤を指す。
(0037)本明細書で使用するとき、組成物の「質量%」又は「質量パーセント」又は「質量百分率」は、それに反する記載が特にない限り、パーセンテージとして表した、構成成分の質量のその構成成分が包含される組成物の総質量に対する比を指す。
(0038)用語「相加効果」は、本明細書で使用するとき、各薬剤を単独で与えたときの効果の合計に等しい2種の化学物質の組合せ効果を指す。
(0039)「混和物」又は「ブレンド」は、本明細書で一般的に、2種以上の異なる構成成分の物理的組み合わせを指すために用いられる。ポリマーの場合、混和物、又は用語「投与する」は、与える又は適用することを意味する。
(0040)用語「投与する」は、本明細書で使用するとき、インビボ投与、並びに組織への直接的なエクスビボ投与を包含する。一般的に、組成物は、従来の非毒性の薬学的に許容可能な担体、アジュバント、及び所望される場合にはビヒクルを含有する単位用量製剤で、経口投与、口腔投与、非経口投与、局所投与、吸入又は通気による(すなわち、口又は鼻を通した)投与、又は直腸投与のいずれかで全身投与されてもよく、又は注入、移植、グラフト、局所適用、又は非経口等であるがこれらに限定されない手段によって局所投与されてもよい。
(0041)用語「薬剤」は、本明細書において、長期作用性製剤の中又は上に含有される化合物を一般的に指すために用いられる。薬剤は、抗体若しくは核酸又は賦形剤を包含してもよく、より一般的には、長期作用性製剤中の任意の添加剤を包含してもよい。「薬剤」は、単一のそのような化合物を包含し、複数のそのような化合物を包含することも意図する。
(0042)用語「作動薬」は、本明細書で使用するとき、薬理学的応答を誘発するために受容体を活性化することのできる化学物質を指す。受容体は内因性又は外因性作動薬及び拮抗薬によって活性化又は不活性化することができ、その結果生物学的応答が刺激又は阻害される。生理学的作動薬は、同一の身体的応答を引き起こすが、同一の受容体に結合しない物質である。特定の受容体の内因性作動薬は、その受容体に結合してその受容体を活性化する、身体が自然に産生する化合物である。スーパー作動薬は、標的受容体の内因性作動薬よりも大きい最大応答を生じることができる化合物であり、従って効力が100%を超える。これは、スーパー作動薬が内因性作動薬よりも強力であることを必ずしも意味するのではなく、むしろ、受容体結合後に細胞の内部で生じ得る可能な最大応答の比較である。完全作動薬は、受容体に結合して受容体を活性化し、その受容体で完全な効力を示す。部分作動薬も所定の受容体に結合して受容体を活性化するが、完全作動薬と比較して部分的な効力しかその受容体で有さない。逆作動薬は、その受容体の作動薬と同じ受容体結合部位に結合し、受容体の構成的活性を逆転させる薬剤である。逆作動薬は、受容体作動薬と反対の薬理学的作用を示す。不可逆的作動薬は、受容体が永久に活性化されるような方法で受容体に永久に結合する作動薬の一種である。作動薬の受容体に対する会合が可逆的であるのに対し、不可逆的作動薬の受容体に対する結合は不可逆的であると考えられるという点で、不可逆的作動薬は単なる作動薬とは異なる。これは化合物に作動薬活性の短時間のバーストを生じさせ、続いて受容体の脱感作及び内部移行が起こり、長期的治療に用いると、より拮抗薬に類似した作用が生じる。選択的作動薬は、1つの特定の種類の受容体に特異的である。
(0043)用語「吻合」及び「吻合類」は互換可能に用いられ、血管の間の相互接続を意味する。この相互接続は、脳の血管供給の一部が損なわれるときに、脳を保護する。ウィリス動脈輪において、2つの前大脳動脈は前交通動脈によって接続され、後大脳動脈は後交通動脈によって内頸動脈に接続される。他の重要な吻合としては、眼窩による眼動脈と外頸動脈の枝との間の接続、及び脳表面における中大脳動脈、前大脳動脈、及び後大脳動脈の枝の間の接続が挙げられる(Principles of Neural Sciences,2d Ed.,Eric R.Kandel及びJames H.Schwartz,Elsevier Science Publishing Co.,Inc.,New York,pp.854−56(1985))。
(0044)用語「血管造影血管攣縮」は、本明細書で使用するとき、コンピュータ断層撮影、磁気共鳴又はカテーテル血管造影が含まれるがこれらに限定されない血管造影検査で検出できる血管サイズの減少を指し、クモ膜下出血後の患者の約67%に生じる。一方、用語「臨床血管攣縮」又は「遅発性脳虚血(DCI)」は、本明細書で使用するとき、脳実質への血流量の減少を伴う錯乱及び意識水準低下の症候群を指し、患者の30%に生じ、現在DCIとして定義されている。
(0045)用語「拮抗薬」は、本明細書で使用するとき、他の物質の作用を妨げる物質を指す。2つの物質が同じ生理機能について逆の作用を生じるときに機能的又は生理学的な拮抗が起こる。化学的拮抗又は不活性化は、それらの作用を中和する2つの物質間の反応である。配置拮抗は、標的に到達する薬剤が少なくなるか又はその場所での残留性が低減される、物質の配置(その吸収、生体内変換、分配、又は排泄)の変化である。物質の受容体における拮抗は、同じ部位に対して競合する適切な拮抗薬による拮抗薬の作用の遮断を伴う。
(0046)用語「運動失調」は、本明細書で使用するとき、随意運動の間に筋肉活動を調整することができないことを指す。
(0047)用語「生物活性剤」は、本明細書で使用するとき、何らかの形の治療効果を提供するか又は何らかの種類の生物学的応答若しくは活性を誘発するために、薬学的又は医学的目的で使用される医薬製剤又は剤形の中又は上に含有される対象化合物を包含する。「生物活性剤」は、単一のそのような剤を包含し、複数の生物活性剤、例えば、2種以上の生物活性剤の組合せを包含することも意図する。
(0048)用語「生体適合性」は、本明細書で使用するとき、レシピエントに対して一般的に無毒であり、被験者に対し有意な有害作用を有さず、更に、その材料のいかなる代謝産物又は分解生成物も被験者に対して無害である材料を指す。一般的に「生体適合性」である物質は、生体組織に対して臨床的に意義のある組織刺激、損傷、中毒反応、又は免疫反応を引き起こさない。
(0049)用語「生分解性」は、本明細書で使用するとき、侵食されて可溶性種になる材料、又は生理学的条件下で、それ自体が被験者に対して無毒(生体適合性)であり、且つ被験者によって代謝、排除、又は排泄され得る更に小さい単位若しくは化学腫へと分解する材料を指す。
(0050)用語「大脳動脈」又はその多数の文法的形態は、特に、前通信動脈、中大脳動脈、内頸動脈、前大脳動脈、眼動脈、前脈絡叢動脈、後交通動脈、脳底動脈、及び椎骨動脈を意味する。脳の基部のウィリス動脈輪は、脳の主動脈吻合幹である(図7参照)。血液は、主に椎骨動脈及び内頸動脈を介してウィリス動脈輪に達し;吻合は、大脳半球にわたって及び種々の孔を通って頭蓋を貫通する頭蓋外動脈を介してウィリス動脈輪の動脈枝間で起こる。ウィリス動脈輪は、内頸動脈、脳底動脈、前大脳動脈、前交通動脈、後大脳動脈、及び後交通動脈の間の吻合によって形成される。内頸動脈は、前大脳動脈及び中大脳動脈内で終端する。その終端部付近で、内頸動脈は後交通動脈を生じ、これは末端で後大脳動脈と接合する。前大脳動脈は、前交通動脈を介して接続する。
(0051)大脳皮質への血液供給は、主に、前大脳、中大脳、及び後大脳動脈の皮質枝を介し、これらの皮質枝は軟膜内の皮質に達する。(Correlative Neuroanatomy&Functional Neurology,18th Ed.,p.50,1982)。
(0052)それぞれの大脳半球の外側面は、主に中大脳動脈によって供給される。大脳半球の内側面及び下面は、前大脳及び後大脳動脈によって供給される。
(0053)内頸動脈の終枝である中大脳動脈は、外側大脳裂に進入し、隣接した前頭葉、側頭葉、頭頂葉、及び後頭葉に供給する皮質枝に分かれる。レンズ核線条体動脈である小貫通動脈は、中大脳動脈の基部から生じ、内包及び隣接構造に供給する。
(0054)前大脳動脈は、内頸動脈を起点として大脳縦裂に入り、脳梁膝まで内側に延在し、そこで脳梁に近接して後方に曲がる。前大脳動脈は、内側前頭葉及び頭頂葉並びにこれらの葉の内側面に沿って隣接する皮質への枝となる。
(0055)後大脳動脈は、その吻端において、通常は中脳の高さで脳底動脈から生じ、大脳脚の周辺で背方に曲がり、側頭葉の内側面及び下面並びに内側後頭葉に枝を送る。枝には、鳥距動脈並びに後視床及び視床腹部への穿通枝が含まれる。
(0056)脳底動脈は、椎骨動脈の接合によって形成される。脳底動脈は、短い傍正中枝、短回旋枝、及び長回旋枝を介して脳幹上部に供給する。
(0057)脳からの静脈排出路は、主として、硬膜の頑丈な構造内に位置する脈管である硬膜静脈洞に入る。硬膜静脈洞は弁を含有せず、大部分は三角形である。上縦洞は、大脳鎌内にある。
(0058)用語「脳血管攣縮」は、本明細書で使用するとき、クモ膜下出血後の脳底における大容量動脈の狭窄の遅発性出現を指し、しばしば、影響を受けた血管に遠位の領域の灌流減弱を伴う。脳血管攣縮は、動脈瘤の破裂後いつでも発生し得るが、血液が身体に吸収される場合、最も一般的には出血後7日目にピークに達し、たいていは14日以内におさまる。
(0059)用語「キラル」は、互いに鏡像であるために重ね合わせることができず、従って、キラリティーの特性を有する非対称分子を記述するために用いられる。このような分子は、鏡像異性体とも呼ばれ、光学活性によって特徴づけられる。
(0060)用語「キラリティー」は、その鏡像に重ね合わせることができない剛性物体の幾何学的特性(又は点若しくは原子の空間配置)を意味し;このような物体は第二種の対称要素を欠く(鏡面、σ=S1、反転中心、i=S2、回映軸、S2n)。物体をその鏡像に重ね合わせることができる場合、その物体はアキラルと記述される。
(0061)用語「キラリティー軸」は、鏡像に重ね合わせることができない空間配置になるように、1組のリガンドをその周辺に有する軸を指す。例えば、アレンabC=C=Ccdの場合、キラル軸はC=C=C結合によって定義され;オルト置換ビフェニルC−1、C−1’、C−4及びC−4’はキラル軸上に位置する。
(0062)用語「キラリティー中心」は、その鏡像に重ね合わせることができない空間配置で1組のリガンドを有する原子を意味する。キラリティー中心は、不斉炭素の概念を、任意の元素の中心原子まで一般化して拡大したものと考えてもよい。
(0063)用語「キロプティック」又は「キロプティカル」は、キラル物質を調査するための(異方照射の反射、吸収又は放出を用いた)光学的技法である(例えば、固定波長における旋光、光回転散乱(ORD)、円二色性(CD)及び円偏光(CPL))。
(0064)用語「キロトピック」は、キラル環境内にある原子(又は、分子モデルにおける点、群、面等)を指す。アキラル環境内にある場合は、アキロトピックと呼ばれる。
(0001)用語「槽(cistern)」又は「槽(cisterna)」は、本明細書で使用するとき、リザーバとして機能する空洞又は密閉空間を意味する。
(0065)用語「本発明の化合物」は、特記のない限り、ニモジピンの結晶形態I及び形態II、並びにニモジピンのアモルファス形態を指す。
(0066)用語「合併症」は、本明細書で使用するとき、疾患の主要部分でない障害の間に起こる病理過程又は病理事象を指し、その障害から生じることも独立の原因から生じることもある。遅発性合併症は、トリガー効果の後の何らかの時点で発生する合併症である。クモ膜下出血に伴う合併症としては、血管造影血管攣縮、微小血栓塞栓、及び皮質拡延性虚血が挙げられるが、これらに限定されない。
(0067)用語「症状」は、本明細書で使用するとき、種々の健康状態を指し、任意の基本的機序若しくは障害、又は損傷によって引き起こされる障害又は疾患を含むことを意味する。
(0068)用語「接触」及びその全ての文法的形態は、本明細書で使用するとき、密接な物理的接触による少なくとも1つの物質の別の物質に対する曝露の一事例を指す。
(0069)用語「制御放出」は、製剤からの薬物放出の方法及びプロファイルが調節されている任意の薬物含有製剤を指すことを意図する。これは非即時放出製剤だけでなく即時放出製剤も意味し、非即時製放出剤としては持続放出性及び遅延放出性製剤が挙げられるがこれらに限定されない。
(0070)用語「皮質拡延性脱分極」又は「CSD」は、本明細書で使用するとき、細胞膜を挟んだ受動的カチオン流入がATP依存性ナトリウム及びカルシウムポンプ活性を超える時に刺激される脳におけるほぼ完全なニューロン脱分極及びニューロン腫脹の波動を指す。カチオン流入後、水流入及び細胞外空間の約70%収縮が続く。正常なイオンホメオスタシスがナトリウム及びカルシウムポンプ活性の追加補充によって回復しない場合、細胞腫脹は潜在的に遅延細胞内カルシウムサージ及びミトコンドリア脱分極による細胞死につながることから、細胞腫脹が保持され、プロセスはその場合「細胞毒性浮腫」と呼ばれる。CSDは、健康な組織の抵抗血管の拡張を誘発し;従って、局所脳血流量がニューロン脱分極相の間に増大する(Dreier,J.P.et al.,Brain 132:1866−81(2009)。
(0071)用語「皮質拡延性虚血」若しくは「CSI」、又は「逆血液動態学的反応」は、ニューロン脱分極相に結合する重度の微小血管攣縮を指す。結果として生じる拡延性灌流障害はニューロン脱分極を延長し[細胞外直流(DC)電位の長期にわたる負のシフトによって反映されるように]、細胞内ナトリウム及びカルシウムは急増する。低灌流は、ニューロンエネルギーの需要と供給の間に不適合を生じるのに十分に重大である(同書)。
(0072)本明細書で使用するとき、用語「結晶質形態」又は「結晶形態」は、特定の材料が明確な形状及び構造単位の秩序的配列を有し、それが固定された幾何学的パターン又は格子状に配列されていることを意味する。
(0073)用語「遅発性脳虚血」又は「DCI」は、本明細書で使用するとき、局所神経障害(例えば片側不全麻痺、失語症、失行、半盲、又はネグレクト)の発生、又はグラスゴーコーマスケール(全スコア又はその個々の構成要素[開眼、両側の運動、発語]の1つ)の低下を意味する。これは、少なくとも1時間持続してもしなくてもよく、動脈瘤閉塞の直後は明白でなく、脳の臨床評価、CT又は磁気共鳴画像(MRI)スキャン、及び適切な実験室研究によって他の原因に帰することができない。血管造影脳血管攣縮は、放射線学的検査(CT血管造影[CTA]、MR血管造影[MRA]MRA又はカテーテル血管造影[CA])の記述であり、DCIの原因であり得る。
(0074)用語「遅延放出」は、本明細書においてその一般的な意味で用いられ、製剤の投与とその製剤からの薬物の放出の間に時間の遅れがある薬物製剤を指す。「遅延放出」は、長時間にわたる薬物の徐放を伴っても伴わなくてもよく、従って「持続放出」であってもなくてもよい。
(0075)用語「ジアステレオ異性」は鏡像異性以外の立体異性を意味する。ジアステレオ異性体(又はジアステレオマー)は、鏡像として関連づけされない立体異性体である。ジアステレオ異性体は、物理的特性の違い、並びにアキラル及びキラル試薬に対する化学的挙動の多少の違によって特徴づけられる。ジアステレオマーは同じファミリーに属することから、類似の化学的特性を有する。ただし、その化学的特性は同一ではない。ジアステレオマーは異なる物理的特性を有し:異なる融点、沸点、所与の溶媒への溶解度、密度、屈折率等を有する。ジアステレオマーは比旋光度も異なり;旋光度の符号が同じものも反対のものもあり、いくつかは不活性の場合もある。2個のキラル中心が存在すると、4種の立体異性体が存在し得る。3個のキラル中心を含有する化合物の場合、8種の立体異性体が存在し得る;4個のキラル中心を含有する化合物の場合、16種の立体異性体が存在し得る等となる。存在し得る立体異性体の最大数は、2nに等しく、式中nはキラル中心の数である。用語「ジアステレオトピック」は、対称関係にない、構造的に等価の原子又は分子群を意味する。2つのジアステレオトピックな原子又は群の1つを交換すると、1組のジアステレオ異性体が形成される。例えば、メチレン基の2個の水素原子
はジアステレオトピックである。
(0076)用語「疾患」又は「障害」は、本明細書で使用するとき、健康を損なうこと又は異常機能の症状を意味する。
(0077)用語「分散」は、本明細書で使用するとき、1つの相が第2の相中に液滴として分配されている2相系、又は連続相を意味する。これらの系において、分散相はしばしば不連続相又は内部相と呼ばれ、連続相は外部相と呼ばれ、連続するプロセス媒体を含む。例えば、粗大分散(course dispersion)では、粒径は0.5μmである。コロイド分散では、分散粒子の粒径は約1nm〜0.5μmの範囲にある。分子分散は、分散相が個々の分子からなる分散であり;分子がコロイドサイズよりも小さい場合、得られるのは真溶液である。
(0078)用語「配置された」は、本明細書で使用するとき、特定の方法で配置、配列又は分配されることを指す。
(0079)用語「薬物」は、本明細書で使用するとき、疾患の予防、診断、緩和、治療、又は治癒に用いられる食品以外の治療剤又は任意の物質を指す。
(0080)用語「有効量」は、所望の生物的効果を実現するために必要又は十分な量を指す。
(0081)用語「エマルション」は、本明細書で使用するとき、2つの不混和性液体担体を組み合わせることによって調製される2相系を指し、その一方が他方の全体に均一に分配され、最も大きいコロイド粒子の直径以上の直径を有する小球からなる。小球のサイズは重要であり、系が最大安定性を達成するようなサイズでなければならない。通常、第3の物質である乳化剤が組み込まれない限り、2相の分離が生じる。従って、基本的なエマルションは、少なくとも3つの成分(2つの不混和性液体担体及び乳化剤)、並びに活性成分を含有する。大部分のエマルションは、水相を非水相に(又はその逆)組み込む。しかしながら、基本的に非水性のエマルション、例えば、非水性不混和系グリセリン及びオリーブ油のアニオン性及びカチオン性界面活性剤のエマルションを調製することが可能である。
(0082)用語「鏡像異性体」は、本明細書で使用するとき、その分子配置が左手及び右手(キラル)配置を有する1つ以上の不斉炭素(C*)を含有する一組の光学異性体を指す。鏡像異性体は、偏光面の回転方向以外は同一の物理的特性を有する。例えば、グリセルアルデヒド及びその鏡像体は、重ね合わせることができず、一方は平面偏光を右に回転させるが、他方は左に同じ回転量で回転させることを除いて、同じ融点、沸点、密度、屈折率、及びその他の測定し得る任意の物理定数を有する。
(0083)X線回折ピークに関連した用語「本質的に同じ」は、典型的なピーク位置及び強度変動性を考慮に入れることを意味する。例えば、当業者は、ピーク位置(2Θ)が、多少の装置間変動(一般的には0.2°)を示すことを理解するであろう。更に、当業者は、相対的なピーク強度は装置間変動並びに結晶化度、好ましい配向、調製試料表面、及びその他の当業者に既知の要因による変動を示し、定性的測定としてのみ考える必要があることを理解するであろう。
(0084)用語「賦形剤」は、本明細書において、生物活性剤ではない長期作用性製剤に含有されてもよい任意の他の薬剤又は化合物を包含するために用いられる。従って、賦形剤は薬学的又は生物学的に許容可能又は適切である必要がある(例えば、賦形剤は一般的に被験者に対して無毒である必要がある)。「賦形剤」は、単一のそのような化合物を包含し、複数のそのような化合物を包含することも意図する。
(0085)用語「流動性」は、本明細書で使用するとき、相対位置の連続変化によって流れて又は流れているかのように運動できるものを指す。
(0086)用語「ヒドロゲル」は、本明細書で使用するとき、ゼラチン状又はゼリー様の塊を作製するために必要な水性構成成分を含有する固体、半固体、擬塑性、又は塑性構造をもたらす物質を意味する。
(0087)用語「高血圧」は、本明細書で使用するとき、高い全身血圧;心臓血管の損傷又は他の悪い結果を誘導する可能性の高いレベルへの体血圧の一時的又は持続的上昇を指す。
(0088)用語「低血圧」は、本明細書で使用するとき、正常以下の全身動脈圧;いかなる種類の低圧又は圧力低下も指す。
(0089)用語「移植する」は、本明細書で使用するとき、物質、組成物、又はデバイスを組織内の予め決められた位置にグラフト、埋め込み又は挿入することを指す。用語「インプラント」は、本明細書で使用するとき、制御放出性の予備成形された微視的デバイスを一般的に指す。
(0090)用語「含浸する」は、その種々の文法的形態において本明細書で使用するとき、全体への注入又は浸透を引き起こすこと;隙間を物質で充満することを指す。
(0091)句「近接する」は、本明細書で使用するとき、クモ膜下腔において脳損傷の部位から又は脳損傷の部位に近接する血管内へ約0.001mm〜約10mm、約0.010mm〜約10mm、約0.020mm〜約10mm、約0.030mm〜約10mm、約0.040mm〜約10mm、0.050mm〜約10mm、約0.060mm〜約10mm、約0.070mm〜約10mm、約0.080mm〜約10mm、約0.090mm〜約10mm、約0.1mm〜約10mm、約0.2mm〜約10mm、約0.3mm〜約10mm、約0.4mm〜約10mm、約0.5mm〜約10mm、約0.6mm〜約10mm、約0.7mm〜約10mm、約0.8mm〜約10mm、約0.9mm〜約10mm、約1.0mm〜約10mm、約1.1mm〜約10mm、約1.2mm〜約10mm、約1.3mm〜約10mm、約1.4mm〜約10mm、約1.5mm〜約10mm、約1.6mm〜約10mm、約1.7mm〜約10mm、約1.8mm〜約10mm、約1.9mm〜約10mm、約2.0mm〜約10mm、約2.1mm〜約10mm、約2.2mm〜約10mm、約2.3mm〜約10mm、約2.4mm〜約10mm、約2.5mm〜約10mm、約2.6mm〜約10mm、約2.7mm〜約10mm、約2.8mm〜約10mm、約2.9mm〜約10mm、約3.0mm〜約10mm、約3.1mm〜約10mm、約3.2mm〜約10mm、約3.3mm〜約10mm、約3.4mm〜約10mm、約3.5mm〜約10mm、約3.6mm〜約10mm、約3.7mm〜約10mm、約3.8mm〜約10mm、約3.9mm〜約10mm、約4.0mm〜約10mm、約4.1mm〜約10mm、約4.2mm〜約10mm、約4.3mm〜約10mm、約4.4mm〜約10mm、約4.5mm〜約10mm、約4.6mm〜約10mm、約4.7mm〜約10mm、約4.8mm〜約10mm、約4.9mm〜約10mm、約5.0mm〜約10mm、約5.1mm〜約10mm、約5.2mm〜約10mm、約5.3mm〜約10mm、約5.4mm〜約10mm、約5.5mm〜約10mm、約5.6mm〜約10mm、約5.7mm〜約10mm、約5.8mm〜約10mm、約5.9mm〜約10mm、約6.0mm〜約10mm、約6.1mm〜約10mm、約6.2mm〜約10mm、約6.3mm〜約10mm、約6.4mm〜約10mm、約6.5mm〜約10mm、約6.6mm〜約10mm、約6.7mm〜約10mm、約6.8mm〜約10mm、約6.9mm〜約10mm、約7.0mm〜約10mm、約7.1mm〜約10mm、約7.2mm〜約10mm、約7.3mm〜約10mm、約7.4mm〜約10mm、約7.5mm〜約10mm、約7.6mm〜約10mm、約7.7mm〜約10mm、約7.8mm〜約10mm、約7.9mm〜約10mm、約8.0mm〜約10mm、約8.1mm〜約10mm、約8.2mm〜約10mm、約8.3mm〜約10mm、約8.4mm〜約10mm、約8.5mm〜約10mm、約8.6mm〜約10mm、約8.7mm〜約10mm、約8.8mm〜約10mm、約8.9mm〜約10mm、約9.0mm〜約10mm、約9.1mm〜約10mm、約9.2mm〜約10mm、約9.3mm〜約10mm、約9.4mm〜約10mm、約9.5mm〜約10mm、約9.6mm〜約10mm、約9.7mm〜約10mm、約9.8mm〜約10mm、又は約9.9mm〜約10mmの範囲内を意味する。
(0092)用語「体内の」、「空隙容積」、「切除ポケット」、「陥凹」、「注入部位」、「沈着部位」又は「インプラント部位」又は「送達部位」は、本明細書で使用するとき、身体の全ての組織を制限なく包含することを意味し、その非限定的な例として、疾患若しくは病状に対する臨床評価、治療又は生理的反応の作用によって、注入、外科的切開、腫瘍若しくは組織除去、組織損傷、膿瘍形成からそこに形成された空間、又はそのようにして形成された他の同様の空洞、空間、又はポケットを指す場合がある。
(0093)用語「損傷」は、本明細書で使用するとき、物理的でも化学的でもよい外部の薬剤又は力によって引き起こされる身体の構造又は機能に対する損傷又は損害を指す。
(0094)用語「単離された分子」は、本明細書で使用するとき、実質的に純粋で、自然又はインビボ系で通常見出される他の物質を、実用的で意図する用途に適した適切な程度で含まない分子を意味する。
(0095)用語「異性体」は、本明細書で使用するとき、同じ数及び種類の原子を有し、従って同じ分子量を有するが、化学構造が異なる2つ以上の分子の1つを意味する。異性体は、原子の結合性が異なる場合(構造異性体)もあれば、同じ原子結合性を有するが空間内の原子の配列又は配置のみが異なる場合(立体異性体)もある。立体異性体としては、限定するものではないが、LIZ二重結合異性体、鏡像異性体、及びジアステレオマーが挙げられる。適切に置換された場合に立体異性を付与できる構造部位としては、限定するものではないが、オレフィン、イミン又はオキシム二重結合;四面体炭素、硫黄、窒素、又はリン原子;アレン基が挙げられる。鏡像異性体は、重ね合わせることができない鏡像である。1つの化合物の光学形態の等部数の混合物はラセミ混合物又はラセミ化合物として知られる。ジアステレオマーは、鏡像ではない立体異性体である。本発明は、本明細書に記載の化合物のいずれかの純粋な立体異性体のそれぞれを提供する。そのような立体異性体としては、鏡像異性体、ジアステレオマー、又はE体若しくはZ体アルケン、イミン又はオキシム異性体が挙げられる。本発明は、ラセミ混合物、ジアステレオマー混合物、又はE/Z異性体混合物等の立体異性体混合物も提供する。立体異性体は純粋な形態で合成することができ(Nogradi,M.;Stereoselective Synthesis,(1987)VCH 編者Ebel,H.及びAsymmetric Synthesis,Volumes 3−5(1983)Academic Press,編者Morrison,J.)、あるいは、結晶化及びクロマトグラフィー法のような種々の方法によって分割することができる(Jaques,J.;Collet,A.;Wilen,S.;Enantiomer,Racemates,and Resolutions,1981,John Wiley and Sons及びAsymmetric Synthesis,Vol.2,1983,Academic Press,編者Morrison,J)。更に、本発明の化合物は、鏡像異性体、ジアステレオマー(diasteriomer)、異性体として存在してもよく、2種以上の化合物が存在してラセミ混合物又はジアステレオマー混合物を形成してもよい。
(0096)句「局所投与」は、本明細書で使用するとき、局所的な薬理学的作用又は拡散薬理学的作用を生じ得る体内の特定の位置への治療剤の投与を意味する。器官、細胞又は組織等の位置への生物活性剤の局所送達は、生物活性剤がこれらの位置から分配、代謝、及び排出される経路が一般的な体循環に送達される生物活性剤の薬物動態学的持続を定める経路と異なることから、これらの局所部位又は組織において治療的に有用な、長期持続的な生物活性剤の存在という結果をもたらす。本発明は、体中の任意の種々の部位、位置、器官、細胞、又は組織に送達できる。一態様において、この送達は、歴史的に投与製剤の量が限られている位置、すなわち、少量の製剤量しか投与できていない位置への送達である。この態様としては、限定するものではないが、局所送達、関節と関節の間等の関節間送達、整形外科的部位(骨、骨欠損、関節等)、CNS位置(例えば、脊髄、脳脊髄若しくは髄腔内送達又は脳への送達若しくは脳周辺の特定部位の送達)、皮内、腫瘍内、腫瘍周辺、又は眼球送達(眼に隣接する部位への送達、眼球上の部位への送達、眼組織内の部位への送達、又は眼の内部の硝子体内送達)が挙げられる。
(0097)句「局所的な薬理学的作用」は、本明細書で使用するとき、特定位置に限定された、すなわち特定の位置、場所、領域又は部位の近接における薬理学的作用を意味する。句「主に局所的な薬理学的作用」は、本明細書で使用するとき、全身投与と比較して少なくとも1〜3桁の大きさで特定の位置に限定された、局所的な投与で達成される薬物の薬理学的作用を意味する。
(0098)本発明の方法は、生物活性剤放出、生物学的利用能、薬物動態学、薬力学的作用又はプロファイルのような、生物活性剤を長期化又は延長するために生物活性剤の送達に使用できる任意の種類の長期作用性製剤又は剤形を包含する。
(0099)用語「長期」放出は、本明細書で使用するとき、治療レベルの活性成分を少なくとも7日間、潜在的には最大で約30〜約60日間送達するように構成及び配置されたインプラントを意味する。「長期作用性」、「持続放出性」又は「制御放出」等の用語は、製剤、剤形、デバイス又はその他の種類の技術、例えば、当該技術分野において被験者に対する生物活性剤の長期化又は延長した放出又は生物学的利用能を達成するために使用される技術を記述するために一般的に使用される;これらの用語は、全身循環若しくは被験者又は(これらに限定されないが)細胞、組織、器官、関節、領域等の被験者の局所的作用部位に生物活性剤の長期化又は延長した放出又は生物学的利用能を提供する技術を指す場合もある。更に、これらの用語は、製剤又は剤形からの生物活性剤の放出を長期化又は延長するために使用される技術を指す場合もあり、又は被験者に対する生物活性剤の生物学的利用能若しくは薬物動態学又は作用持続性を長期化又は延長するために使用される技術を指す場合もあり、又は製剤によって誘発される薬力学的作用を延長又は長期化するために使用される技術を指す場合もある。「長期作用性製剤」、「持続放出性製剤」又は「制御放出製剤」(等)は、被験者に対する生物活性剤の長期作用性放出を提供するために使用される医薬製剤、剤形、又その他の技術である。
(00100)一般的に、長期作用性又は持続放出性製剤は、1つの方法又は別の方法で、生体適合性ポリマーに組み込み又は会合される生物活性剤又は薬剤(例えば抗体又は核酸、ステロイド、又はニモジピン等)である。長期作用性製剤の調製に一般的に使用されるポリマーとしては、限定するものではないが、生分解性ポリマー(ポリエステルポリ(ラクチド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシブチラート)等)及び非分解性ポリマー(エチレン酢酸ビニル(EVA)、シリコーンポリマー等)が挙げられる。薬剤は、ポリマー又はポリマーマトリックス全体に均質にブレンドされてもよく、又は薬剤はポリマー又はポリマーマトリックス全体に不均一に(又は不連続若しくは不均質に)分配されてもよい(マイクロカプセル、ナノカプセル、被覆若しくはカプセル化インプラント等の場合のように、ポリマーリッチなコーティング又はポリマー壁形成材料によって囲まれた生物活性剤負荷コアの場合のように)。剤形は、粒子、フィルム、繊維、フィラメント、円筒形インプラント、非対称形インプラント、又は繊維網目(織物状又は不織材料;フェルト;ガーゼ;スポンジ等)の物理的形状であってもよい。粒子形態の場合、製剤は、微小粒子、ナノ粒子、ミクロスフェア、ナノスフェア、マイクロカプセル又はカプセル、及び粒子全般、並びにこれらの組み合わせの形態であってもよい。従って、本発明の長期作用性(又は持続放出性)製剤は、当該技術分野で記述、使用又は実用されている種々の種類又は設計のいずれも包含してもよい。
(00101)生物活性剤を含有する長期作用性製剤を使用して、これらの薬剤を体循環に送達することができ、又は投与部位の近傍に位置する細胞、組織、器官、骨等への局所的又は部位特異的な送達を達成することができる。更に、製剤を使用して、生物活性剤の全身送達及び/又は生物活性剤の局所送達を達成することができる。製剤は、注入(例えば、針、注射器、外套針、カニューレ等による)又は移植によって送達することができる。送達は、医学、臨床、外科目的で一般に使用される任意の多様な投与経路によって実施することができ、その例としては、限定するものではないが、髄腔内、心臓内、骨内(骨髄)等の特定位置への送達(局所送達等)、定位誘導送達、注入送達、CNS送達、定位投与送達、整形外科送達(例えば、関節、骨中、骨欠損中等への送達)、心血管送達、眼間及び眼内及び眼球近傍(硝子体内及び強膜及び眼球後及びテノン嚢下送達等を含む)、任意の多数の他の部位、場所、器官、組織等への任意の送達に加えて、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、皮内、輸液及びカテーテル内送達(等)が挙げられる。
(00102)従って、一態様において、本発明の方法は、例えば、以下に記載の技術等であるがこれらに限定されない、非経口投与経路の分野で使用される(又は使用が予見され得る)任意の技術の利用を予見する:Maindares及びSilva,Curr Drug Targets,5(5),449(2004);又は、Degim及びCelebi,Curr Pharm Des,13(1),99(2007);又は、Encyclopedia of Pharmaceutical Technology,James Swarbrick及びJames Boylan(編者),Marcel Dekker,New York(2004);又は、Encyclopedia of Controlled Drug Delivery,Edith Mathiowitz(編者);John Wiley & Sons,New York(1999);又はControlled Release Veterinary Drug Delivery,Robert Gurny及びMichael J.Rathbone(編者);Elsevier Science B.V.,Amsterdam,The Netherlands(2000);又はEncyclopedia of Nanoscience and Nanotechnology,James Schwarz,Cristian Contescu,Karol Putyera(編者),Marcel Dekker,Inc.,New York(2004);又はEncyclopedia of Biomaterials and Biomedical Engineering,Gary Wnek及びGary Bowlin(編者),Marcel Dekker,Inc.,New York(2004);又は、Malik,Baboota,Ahuja,及びHassan,Curr Drug Deliv.,4(2),141(2007);又はNair及びLaurencin,Adv Biochem Eng Biotechnol,102,47(2006);等。上記参考文献の全てを、その教示の全て並びに非経口経路の技術方法の特異的教示に関する本参照により本明細書に援用する。
(00103)一態様において、本発明の方法は、針、注入、輸液、移植(臨床的又は外科的のいずれかで実施される)等によって投与できる長期作用性製剤を包含する。
(00104)用語「髄膜」は、脳及び脊髄を包囲及び保護する3つの異なる結合組織膜を指し;(外層から内層に)硬膜、クモ膜、及び軟膜と名付けられている。
(00105)硬膜は、脳及び脊髄を覆う緻密な線維構造である。硬膜は、内側の髄膜層及び外側の骨膜層又は骨内膜層を有する。脳を覆う硬膜層は、一般的には、硬膜層が分離して静脈洞の空間を提供する部分及び内層が脳部分の間に隔壁を形成する部分を除いて融合している。外層は、頭蓋骨の内面に固着し、血管及び線維拡張を骨自体に送り込む。大後頭孔(頭蓋腔から脊椎腔までの通路を形成する頭蓋の基部にある大きな開口部)の辺縁周辺で、外層は骨に密着し、脊髄硬膜に続く。硬膜は、頭蓋の空洞を一連の自由に連通する区画に分ける4つの突起を内部に送り込み、更に脳の異なる部分を保護する。頭蓋の空洞に突き出ている脳硬膜の突起は、膜の内側の(又は髄膜)層の二重化によって形成される。これらの突起には、(1)大脳鎌、(2)小脳テント、(3)小脳鎌、及び(4)鞍隔膜が含まれる。
(00106)大脳鎌は、大脳半球の間の縦裂内に垂直に下降する鎌様の形態を有する強力な弓形の突起である。大脳鎌は、鶏冠(篩骨の三角形の正中突起)で篩骨(頭蓋の基部及び鼻の根元の骨)に付着している前方では狭く、小脳テントの上面(小脳の上面を覆っている硬膜の弓形のひだ)と結合している後方では広い。その上部辺縁は、凸形であり、内部の後頭隆起まで遡って、正中線の頭蓋の内面に付着しており、その上部辺縁は、上矢状静脈洞を含有する。その下部辺縁は、固定されておらず凹形であり、下矢状静脈洞を含有する。
(00107)小脳テントは、弓形の薄膜であり、中央で上昇し、外周に向かって下向きに傾いている。小脳テントは、小脳の上面を覆い、脳の後頭葉を支えている。その前縁は固定されておらず凹形であり、大脳脚(正中線のそれぞれの側面上の中脳の腹側面を縦方向に通過する皮質投射神経線維の巨大な束)だけでなく上行性知覚線維及び自律神経線維並びに他の線維束の通過のために楕円形の大きい開口部(テント切痕)に囲まれている。小脳テントは、後方でその凸形の縁によって後頭骨の内面上の横走隆線に付着し、横静脈洞を取り囲み、前方でいずれかの側面上の側頭骨の錐体部の上角に付着し、上錐体静脈洞を取り囲んでいる。側頭骨の錐体部の尖部で、固定されていない縁と付着した縁が接触し、互いに交差し、前方に続いて、それぞれ、前及び後床突起に固定される。大脳鎌の後縁は、その上面の正中線に付着している。直静脈洞は、大脳鎌と小脳テントの接合部に位置する。
(00108)小脳鎌は、2つの小脳半球を分離する硬膜の小さい三角形の突起である。その基部は、上方でテントの下部及び後部に付着しており、辺縁は、後頭骨の内面上の垂直稜の下方区分に付着している。小脳鎌は、下降するにつれて、大後頭孔の側面上で失われる2つの更に小さいひだに分かれることがある。
(00109)鞍隔膜は、トルコ鞍(中頭蓋窩内に位置してそれを二等分する、頭蓋の蝶形骨の上面上の鞍様の突出物)を屋根のように覆い、下垂体(脳下垂体)をほぼ完全に覆う小さい円形の水平なひだであり、可変寸法の中央開口部を漏斗部(下垂体を脳の基部に結合する視床下部の漏斗状の延長部)が通る。
(00110)硬膜の動脈は多数ある。前篩骨動脈及び後篩骨動脈の硬膜枝並びに内頸動脈の硬膜枝、並びに中硬膜動脈からの枝は、前頭蓋窩の硬膜に供給する。内顎動脈の中硬膜動脈及び副硬膜動脈、破裂孔を通って頭蓋に進入する上行性咽頭動脈からの枝、内頸動脈からの枝、並びに涙腺動脈からの反回枝は、中頭蓋窩の硬膜に供給する。1つが頸静脈孔を通って、もう1つが乳突孔を通って頭蓋に進入する後頭動脈からの硬膜枝;椎骨動脈からの後硬膜動脈;頸静脈孔及び舌下神経管を通って頭蓋に進入する上行性咽頭動脈からの偶発的な硬膜枝;並びに中硬膜動脈からの枝は、後頭蓋窩の硬膜に供給する。
(00111)脳硬膜から血液を戻す静脈は、板間静脈と吻合しているか又は種々の静脈洞で終わる。硬膜静脈の多くは、静脈洞に直接開口していないが、静脈裂孔と呼ばれる一続きの膨大部を通って間接的に開口している。硬膜静脈は、上矢状静脈洞のいずれかの側面上、特にその中間部付近で見られ、たいていはその中にクモ膜顆粒が陥入している;硬膜静脈は、横静脈洞及び直静脈洞付近にも存在する。硬膜静脈は、下に横たわる大脳静脈と連通し、板間静脈及び導出静脈とも連通している。
(00112)脳硬膜の神経は、三叉神経節、舌咽神経節、迷走神経節、第二及び第三脊髄神経節、翼口蓋神経節、耳神経節、並びに上頸神経節に由来する線維であり、無髄及び有髄の知覚及び自律神経線維を供給する。
(00113)中間の髄膜層であるクモ膜は、軟膜と硬膜との間に横たわる繊細な無血管膜である。クモ膜は、硬膜下腔によって上層の硬膜から分離され、脳脊髄液を含有するクモ膜下腔によって下層の軟膜から分離されている。
(00114)クモ膜は、低い立方中皮の外部細胞層からなる。脳脊髄液で満たされた可変厚の空間が存在し、その中を小柱並びにコラーゲン細線維及び線維芽細胞に類似した細胞からなる膜が横断する。内層及び小柱は、所々で平坦な舗装形式になり、内部の深い層上で軟膜の細胞と融合する、やや低い形式の立方中皮によって覆われている。クモ膜は、更に、三叉神経、顔面神経、及び副頭蓋神経の運動根に由来する神経叢を含有する。
(00115)クモ膜の頭蓋部(脳クモ膜)は、脳を緩く包囲し、大脳縦裂並びにいくつかの他のより大きな溝及び裂溝を例外として、脳回(脳表面の隆起したひだ又は上昇部)間の溝(脳表面の陥没又は裂溝)にも、裂溝にも入り込まない。クモ膜は、脳上面上では薄く透明であり、基部の方が厚い。クモ膜は、脳の中心部に向かってわずかに不透明であり、そこでは、橋と脳との間にかなりの空間を残すように橋の前方の2つの側頭葉の間に広がっている。
(00116)クモ膜は、脳神経と脊髄神経を包囲し、これらの神経が頭蓋から出る点まで緩い鞘で取り囲んでいる。
(00117)クモ膜絨毛は、硬膜の髄膜層を通って突き出る軟膜クモ膜の房状の延長部であり、薄い境界膜を有する。硬膜静脈洞を貫通する多数のクモ膜絨毛から構成され、静脈系への脳脊髄液の移送をもたらす軟膜クモ膜の房状の延長部は、クモ膜顆粒と呼ばれる。
(00118)クモ膜絨毛は、クモ膜による硬膜の侵入を表し、この侵入によってクモ膜中皮細胞は、大硬膜静脈洞の血管内皮の真下に直接置かれる。それぞれの絨毛は、以下の部分からなる:(1)内側の、絨毛がクモ膜に付着される狭い茎を通って全クモ膜下組織の網目構造に続く、クモ膜下組織の中核、(2)この組織周囲の、クモ膜下組織を制限して取り囲むクモ膜の層、(3)外側の、潜在的な硬膜下腔に対応し、それに続く潜在的空間によってクモ膜から分離される小窩の薄い壁、及び(4)絨毛が矢状静脈洞に突き出る場合には、洞の非常に薄い壁(これは、内皮のみからなる場合もある)によって覆われる。クモ膜下腔に注入された流体は、これらの絨毛に入り込む。そのような流体は、絨毛から、絨毛が中に付き出している静脈洞内へと進む。
(00119)軟膜は、脳及び脊髄の表面を覆う薄い結合組織膜である。軟膜は、脳神経のための鞘を形成する。脳に供給する血管は、軟膜を通って脳に進む。軟膜は、マジャンディ孔及び2つのルシュカ孔では不在であり、全ての血管が神経系に入るとき又は神経系から出るときに全ての血管によって穿孔されるために、不完全な膜と見なされる。血管周囲腔において、軟膜は、その腔の外面の中皮裏層として進入するように見え;外側から不定の距離で、これらの細胞は、認識不可能となり、欠如して神経膠要素で置き換えられるように見える。血管周囲腔の内壁は、同様に、ある特定の距離を中皮細胞によって覆われるように見え、これらの脈管がクモ膜下腔を横断する際にこれらの脈管が覆っているクモ膜から血管が反転される。
(00120)脳軟膜(軟脳膜;脳の軟膜)は、脳の全表面を包囲し、大脳回と小脳薄膜との間に入り、陥入されて第三脳室の脈絡膜、並びに側脳室及び第三脳室の脈絡叢を形成する。脳軟膜は、第四脳室蓋上を通過するとき、第四脳室の脈絡膜及び脈絡叢を形成する。小脳上で、膜はより繊細であり、その深面からの血管はより短く、皮質との関係は、それほど密接ではない。
(00121)用語「微小粒子組成物」は、本明細書で使用するとき、微小粒子製剤及び薬学的に許容可能な担体を含む組成物を指し、その微小粒子製剤が治療剤及び複数の微小粒子を含む。
(00122)用語「マイクロカプセル化」及び「カプセル化」は、本明細書において、形状又は設計にかかわらず、あらゆる種類の長期作用性製剤又は技術に組み込まれる生物活性剤を一般的に指すために使用される;従って、「マイクロカプセル化」又は「カプセル化」された生物活性剤は、粒子若しくは微小粒子等に組み込まれた生物活性剤を包含してもよく、又は固体インプラント等に組み込まれた生物活性剤を包含してもよい。
(00123)「変性生物活性剤」等の用語は、本明細書において、共有結合的手段又は非共有結合的手段によって変性された生物活性剤を一般的に指すために使用される。この用語は、生物活性剤のプロドラッグ形態を包含するためにも使用され、このプロドラッグ形態は、ポリマープロドラッグでも非ポリマープロドラッグでもあり得る。ポリマーを用いて実施される変性は、合成ポリマー(ポリエチレングリコール、PEG;ポリビニルピロリドン、PVP;ポリエチレンオキシド、PEO;プロピレンオキシド、PPO;これらのコポリマー等)又はバイオポリマー(特に、多糖、タンパク質、ポリペプチド等)又は合成若しくは変性バイオポリマー用いて実施できる。
(00124)用語「調節する」は、本明細書で使用するとき、特定の手段又は割合に制御、変更、適応、又は調整することを意味する。
(00125)用語「旋光」は、偏光が1個以上の不斉炭素原子又はキラリティー中心を含有する分子を通過するときに、偏光面の方向が右又は左のいずれかに変ることを指す。回転の方向は、右の場合にはプラス記号(+)又はd−のいずれかで表示され;左の場合にはマイナス(−)又はl−で表示される。右手型の立体配置(D)を有する分子は、通常は右旋性D(+)であるが、左旋性L(−)の場合もある。左手型の立体配置(L)を有する分子は、通常は左旋性L(−)であるが、右旋性D(+)の場合もある。この特性を有する化合物は、光学的に活性であると言われ、光学異性体と呼ばれる。偏光面の回転の量は、分子によって変動するが、いずれの2つの異性体でも同じであり、ただし方向が反対である。
(00126)用語「非経口」は、本明細書で使用するとき、注入による体内への導入(すなわち、注入による投与)を指し、例えば、皮下(すなわち、皮膚の下への注入)、筋肉内(すなわち、筋肉内の注入);静脈内(すなわち、静脈への注入)、髄腔内(すなわち、脊髄周辺又は脳のクモ膜下の空間への注入)、胸骨内注入、又は輸液技術を包含する。非経口投与組成物は、針、例えば、外科用針を用いて送達される。
(00127)用語「粒子」は、本明細書で使用するとき、本明細書に記載の少なくとも1つの治療剤を全体的又は部分的に含有し得るきわめて小さい構成要素、例えば、ナノ粒子又は微小粒子)を指す。用語「微小粒子」は、本発明において、約10nm〜2000ミクロン(2ミリメートル)のサイズを有する種々の実質的な構造を一般に指すために用いられ、マイクロカプセル、ミクロスフェア、ナノ粒子、ナノカプセル、ナノスフェア並びに約2000ミクロン(2ミリメートル)未満の粒子全般を包含する。粒子は、コーティングによって囲まれたコアの中に治療剤を含有してもよい。治療剤は、粒子全体に分散されてもよい。治療剤は、微小粒子内に吸着されてもよい。粒子は、ゼロ次放出、一次放出、二次放出、遅延放出、持続放出、即時放出等、及びこれらの組み合わせを包含する任意の次数の放出動態であってもよい。粒子は、治療剤に加えて、侵食性、非侵食性、生分解性、若しくは非生分解性材料又はこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない、製薬及び医学の分野で日常的に使用される材料のいずれも包含してもよい。粒子は、電位開口型カルシウムチャネル拮抗薬を溶液又は半固体状態で含有するマイクロカプセルであってもよい。粒子は、事実上いかなる形状であってもよい。
(00128)用語「医薬組成物」は、本明細書において、標的症状又は疾患を予防、強度軽減、治癒又はその他の方法で治療するために用いられる組成物を指すために使用される。
(00129)本明細書で使用するとき、句「薬学的に許容可能な担体」は、その中で本発明の製品が安定性及び生物学的利用能を維持すると予想される、本発明の組成物の製剤及び投与に有用な任意の実質的に無毒の担体を指す。薬学的に許容可能な担体は、十分に高純度であり、且つ治療する哺乳類への投与に適するのに十分に低毒性でなければならない。薬学的に許容可能な担体は更に、活性剤の安定性及び生物学的利用能を維持する必要がある。薬学的に許容可能な担体は液体であることも固体であることもでき、計画した投与方法を考慮して、活性剤及び所与の組成物の他の構成成分と組み合わせたときに、所望の容積、粘稠度等を提供するように選択される。用語「薬学的に許容可能な塩」は、健全な医学的判断の範囲内で、ヒト及び下等動物の組織との接触使用において過度の毒性、刺激、アレルギー反応等を起こすことなく好適であり、妥当なベネフィット/リスク比に相応する塩を意味する。
(00130)用語「薬理学的作用」は、本明細書で使用するとき、活性剤への曝露の結果又は帰結を指す。
(00131)本明細書で使用するとき、用語「多形体」は、同じ化学組成を有するが、結晶を形成する分子、原子、及び/又はイオンの空間配置が異なる結晶形態を指す。
(00132)用語「ラセミ化合物」は、本明細書で使用するとき、互いの光学作用を中和し、従って光学的に不活性な2つの光学活性構成成分の等モル混合物を指す。
(00133)用語「放出」及びその種々の文法的形態は、次のプロセスの組み合わせによる活性薬物成分の溶解及び溶解若しくは可溶化した種の拡散を意味する:(1)マトリックスの水和、(2)マトリックスへの溶液の拡散;(3)薬物の溶解;及び(4)溶解した薬物のマトリックスからの拡散。
(00134)用語「低減する」又は「低減」は、本明細書で使用するとき、障害を生じるリスクがある個体における障害の程度、強度、範囲、サイズ、量、密度、数又は発生の縮小、減少、減弱、制限又は寛解を意味する。
(00135)用語「クモ膜下腔(subarachnoid cavity)」又は「クモ膜下腔(subarachnoid space)」は、クモ膜及び軟膜の外部細胞層の間の空間で、繊細な結合組織の小柱からなる組織及び脳脊髄液を含有する相互連通チャネルによって占有されている。この空洞は、脳の半球の表面上では小さく、それぞれの脳回の頂点では軟膜及びクモ膜は密に接触しているが、軟膜は溝に入り込むのに対し、クモ膜は溝をまたいで脳回から脳回まで架橋することから、脳回の間の溝に三角形の空間が残され、そこにクモ膜下小柱組織が見られる。脳の基部の特定の部分では、クモ膜は、広い間隔で軟膜から分離されており、この間隔は互いに自由に連通し、クモ膜下槽と名付けられている;これらの槽のクモ膜下組織は、あまり豊富ではない。
(00136)クモ膜下槽(subarachnoid cisternae)(クモ膜下槽(cisternae subarachnoidales))は、小脳延髄槽、橋槽、脚間層、交叉槽、大脳外側窩槽、大脳大静脈槽を包含する。
(00137)小脳延髄槽(大槽)は、矢状断面が三角形であり、延髄と小脳の半球の下面との間の空間に架橋するクモ膜に起因し、小脳延髄槽は、大後頭孔の高さで脊髄のクモ膜下腔に続いている。
(00138)橋槽は、橋の腹側面上のかなりの範囲の空間である。橋槽は、脳底動脈を含有し、橋の後方で脊髄のクモ膜下腔及び小脳延髄槽に続き、橋の前方で脚間槽に続いている。
(00139)脚間槽(基底槽)は、クモ膜が2つの側頭葉の間全体に広がる広い空洞である。脚間槽は、大脳脚及び脚間窩に含まれる構造を取り囲み、ウィリス動脈輪を含有する。前方で、脚間槽は、視交叉を超えて前方に延び、交叉槽を形成し、脳梁の上面まで続く。クモ膜は、一方の大脳半球からもう一方へ大脳鎌の自由縁の直下へ広がるため、前大脳動脈が含有される空間を残す。大脳外側窩槽は、外側溝全体に架橋するクモ膜によって、いずれかの側頭葉の前方で形成される。この空洞は、中大脳動脈を含有する。大脳大静脈槽は、脳梁の膨大部と小脳の上面との間の間隔を占有し、大脳大静脈槽は、第三脳室の脈絡膜の層間に延在し、大大脳静脈を含有する。
(00140)クモ膜下腔は、3つの開口部によって脳の全脳室腔と連通し;開口部の1つは、マジャンディ孔で、第四脳室蓋の下部の正中線にあり;他の2つ(ルシュカ孔)は、その脳室の外側陥凹の先端(上方の舌咽神経根の後方)にある。
(00141)用語「クモ膜下出血」又は「SAH」は、本明細書において、血液がクモ膜の下に集まる症状を指すために用いられる。クモ膜下腔と呼ばれるこの領域は、一般的に脳脊髄液を含有する。このクモ膜下腔内に血液が蓄積すると、脳卒中、発作、及び他の合併症を招くことがある。更に、SAHは、永久的な脳損傷及び脳内に多くの有害な生化学的事象を引き起こし得る。SAHの原因には、脳動脈瘤からの出血、血管形成異常、外傷、及び一次脳内出血からのクモ膜下腔内への拡大が含まれる。SAHの徴候としては、例えば、急激で激しい頭痛、悪心及び/又は嘔吐、髄膜刺激の徴候(例えば、頸部硬直、腰背痛、両脚痛)、羞明及び視覚変化、及び/又は意識喪失が挙げられる。SAHは、しばしば、頭部損傷又は動脈瘤として知られる血管障害に続発する。ある場合には、SAHは血管攣縮を誘発し、それが次に虚血性脳卒中を招く場合がある。SAHの共通の症状発現は、CSF内に血液が存在することである。SAHを罹患している被験者は、多くの徴候によって識別され得る。例えば、SAHを有する被験者は、クモ膜下に血液が存在する。SAHを有する被験者は、少なくとも破裂動脈瘤からの実際の出血がある間の平均動脈圧を近似する頭蓋内圧によって、脳灌流圧の降下によって、又は突然の激しい頭痛、突然の一過性意識喪失(時には辛い頭痛が先行する)、突然の意識喪失又は場合によっては突然の虚脱及び死亡によっても識別され得る。およそ半分の症例で、被験者は身体運動に伴う激しい頭痛がある。クモ膜下出血と関連のある他の徴候には、悪心、嘔吐、記憶損失、片側不全麻痺及び失語症が挙げられる。SAHを有する被験者は、そのCSF内にクレアチンキナーゼBBイソ酵素活性が存在することによっても識別され得る。この酵素は脳内に多いが、普通はCSF内には存在しない。従って、CSF内に存在することは、脳からクモ膜下腔内への「漏出」を示す。CSF内のクレアチンキナーゼBBイソ酵素活性の分析はCoplinらによって記載されている(Coplin et al 1999 Arch Neurol 56,1348−1352)。更に、脊椎穿刺又は腰椎穿刺を用いて、クモ膜下出血の強力な指標であるCSF内の血液の有無が実証される場合がある。頭蓋CTスキャン又はMRIもクモ膜下領域内の血液の確認に使用できる。血管造影法を用いて、出血が起こったか否かだけでなく、出血の位置も決定できる。クモ膜下出血は、一般的に頭蓋内嚢状動脈瘤の破裂又は脳内の動静脈系の奇形の結果として生じる。従って、SAHのリスクがある被験者には、嚢状動脈瘤を有する被験者だけでなく動静脈系の奇形を有する被験者が含まれる。嚢状動脈瘤の一般的部位は、前交通動脈領域、内頚動脈からの後交通動脈の起点、中大脳動脈、脳底動脈の頂部及び脳底動脈と上小脳動脈又は前下小脳動脈との接合部である。SAHを有する被験者は、目の検査によって確認されてもよく、その場合硝子体液への出血又は緩徐な眼球運動が脳損傷を示唆し得る。嚢状動脈瘤を有する被験者は、日常的な医学的画像処理技術、例えばCT及びMRIによって確認されてもよい。嚢状動脈瘤又は脳動脈瘤は、キノコ様又は漿果様形状(「首のあるドーム」形状と呼ばれることもある)を形成する。
(00142)用語「被験者」又は「個体」又は「患者」は互換可能に用いられ、ヒトを含む哺乳類起源の動物種の一員を指す。
(00143)句「微小血栓塞栓を有する被験者」は、本明細書で使用するとき、微小血栓塞栓と関連する診断マーカーを示す被験者を指す。診断マーカーとしては、限定するものではないが、CSF中の血液の存在、SAHの最近の病歴及び/又はSAHの1〜14日後の神経学的悪化の発生で、その神経学的悪化が、診断され得る他の原因(発作、水頭症、頭蓋内圧の上昇、感染、頭蓋内出血又は他の全身的因子が挙げられるが、これらに限定されない)によるものでない場合が挙げられる。他の診断マーカーは、大きい伝導性大脳動脈の経頭蓋ドップラー超音波で検出される塞栓信号であってもよい。微小血栓塞栓関連の徴候としては、限定するものではないが、体の片側の麻痺、発語不能又は話し言葉若しくは書かれた言葉の理解不能、及び空間分析を要する課題の実施不能が挙げられる。このような徴候は、数日にわたって発症する場合もあれば、その出現が変動する場合もあり、徴候が不意に現れる場合もある。
(00144)句「皮質拡延性虚血を有する被験者」は、本明細書で使用するとき、皮質拡延性虚血と関連する診断マーカーを示す被験者を意味する。診断マーカーとしては、限定するものではないが、CSF中の血液の存在、SAHの最近の病歴及び/又はSAHの1〜14日後の神経学的悪化の発生で、その神経学的悪化が、診断され得る他の原因(発作、水頭症、頭蓋内圧の上昇、感染、頭蓋内出血又は他の全身的因子が挙げられるが、これらに限定されない)によるものでない場合が挙げられる。他の診断マーカーは、皮質脳波検査によって検出される血管収縮による伝播脱分極波の検出であってもよい。皮質拡延性虚血関連徴候としては、限定するものではないが、体の片側の麻痺、発語不能又は話し言葉若しくは書かれた言葉の理解不能、及び空間分析を要する課題の実施不能が挙げられる。このような徴候は、数日にわたって発症する場合もあれば、その出現が変動する場合もあり、徴候が不意に現れる場合もある。
(00145)DCI、微小血栓塞栓、皮質拡延性虚血、又は血管造影血管攣縮のリスクのある被験者は、これらの症状の発生に1つ以上の素因を有する被験者である。素因としては、SAHの存在が挙げられるが、これに限定されない。最近SAHを経験した被験者は、最近SAHを経験していない被験者よりも血管造影血管攣縮及びDCIの発症のリスクが有意に高い。MR血管造影術、CT血管造影術及びカテーテル血管造影術を用いてDCI、微小血栓塞栓、皮質拡延性虚血又は血管造影血管攣縮の少なくとも1つを診断できる。血管造影術は、造影剤を血流に導入して、血流及び/又は動脈を調べる技術である。造影剤が必要とされるのは、血流及び/又は動脈が定型的なMRスキャン、CTスキャン又はカテーテル血管造影用X線フィルムに弱くしか現れない場合があるからである。適切な造影剤は、使用する画像処理法によって異なる。例えば、MRスキャンに用いられる造影剤としてガドリニウムが一般に用いられる。他のMRに適した造影剤も当該技術において知られている。
(00146)本明細書で使用するとき、特定の多形形態に関する用語「実質的に純粋な」は、その多形形態が、化合物の他の物理的形態を30質量%未満、25質量%未満、20質量%未満、15質量%未満、10質量%未満、5質量%未満、4質量%未満、3質量%未満、2質量%未満、1質量%未満包含することを意味する。
(00147)「十分な量」及び「十分な時間」は、所望の結果を得るため、例えばポリマーの一部を溶解させるために、必要な量及び時間を意味する。
(00148)用語「界面活性剤」又は「表面活性剤」は、本明細書で使用するとき、通常は、少なくとも部分的に両親媒性である、すなわち、典型的には疎水性の尾基及び親水性の極性頭基を含有する有機化合物である薬剤を指す。
(00149)用語「外科用針」は、本明細書で使用するとき、選択された解剖学的構造への流体(すなわち、流動可能な)組成物の送達に適合した任意の針を指す。注射用製剤、例えば無菌の注射用水性又は油性懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて、既知の技術に従って配合されてもよい。
(00150)用語「持続放出性」(「徐放性」とも呼ばれる)は、本明細書においてその従来の意味で用いられ、長期間にわたる薬物の漸進的な放出を提供し、必ずしも必要ではないが好ましくは、長期にわたって薬物の実質的に一定の血中レベルをもたらす薬物製剤を指す。あるいは、非経口投与された薬物形態の遅延吸収が、薬物を油性ビヒクルに溶解又は懸濁することによって達成される。持続放出性生分解性ポリマーの非限定例としては、ポリエステル、ポリエステルポリエチレングリコールコポリマー、ポリアミノ由来バイオポリマー、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、SAIB、光重合性バイオポリマー、タンパク質ポリマー、コラーゲン、多糖、キトサン、及びアルギナートが挙げられる。
(00151)用語「症候群」は、本明細書で使用するとき、何らかの疾患又は症状を示す徴候のパターンを意味する。
(00152)用語「治療効果」は、本明細書で使用するとき、治療の結果で、望ましく且つ有益であると判断される結果を指す。治療効果は、直接又は間接に、疾患症状発現の停止、低減、又は排除を包含してもよい。治療効果は、直接又は間接に、疾患症状発現の進行の停止、低減又は排除も包含してもよい。
(00153)1つ以上の活性剤の「治療有効量」、「有効量」、又は「有効な量」という用語は、意図した治療利益を与えるのに充分な量である。本明細書で提供される教示と組み合わせると、種々の活性化合物及び重み付け因子、例えば効力、相対的生物学的利用能、患者の体重、副作用の重症度及び好ましい投与方法を選択することによって、実質的な毒性を生じず、更に特定の被験者を治療するのに効果的である有効な予防的又は治療的な治療レジメンが計画できる。使用可能な活性剤の治療有効量は、一般的には0.1mg/kg体重〜約50mg/kg体重の範囲である。任意の特定の適用についての治療有効量は、治療する疾患又は症状、投与される具体的なカルシウムチャネル阻害薬、カルシウムチャネル拮抗薬、一過性受容器電位タンパク質拮抗薬、又はエンドセリン拮抗薬、被験者のサイズ、又は疾患若しくは症状の重症度等の因子によって変動し得る。当業者は、過度の実験を必要とすることなく、具体的な阻害剤及び/又は他の治療剤の有効量を経験的に決定してもよい。一般的には、最大用量、すなわち、何らかの医学的判断に従う最高安全用量が用いられることが好ましい。「用量」及び「投薬量」は、本明細書において互換可能に用いられる。
(00154)用語「治療剤」は、本明細書で使用するとき、治療効果を与える薬物、分子、核酸、タンパク質、組成物又は他の物質を意味する。用語「治療剤」及び「活性剤」は互換可能に使用される。
(00155)治療剤は粒子の形で提供されてもよい。用語「粒子」は、本明細書で使用するとき、本明細書に記載のカルシウムチャネル阻害薬、カルシウムチャネル拮抗薬、又はその他の治療剤、例えば、限定するものではないが、エンドセリン拮抗薬及び一過性受容器電位タンパク質拮抗薬を全体的に又は部分的に含有してもよいナノ粒子又は微小粒子(又は場合によってはそれよりも大きい)を意味する。粒子は、コーティングによって囲まれたコア内に治療剤を含有してもよい。治療剤は、粒子全体に分散されてもよい。治療剤は、粒子に吸着されてもよい。粒子は、ゼロ次放出、一次放出、二次放出、遅延放出、持続放出、即時放出等、及びこれらの任意の組み合わせを含む、任意の次数の放出動態であってもよい。粒子は、治療剤に加えて、侵食性、非侵食性、生分解性、若しくは非生分解性の材料又はこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない、薬学及び医学の技術分野において日常的に使用される材料のいずれも包含してもよい。粒子は、溶液又は半固体状態でカルシウムチャネル拮抗薬を含有するマイクロカプセルであってもよい。粒子は事実上いかなる形状でもよい。
(00156)用語「治療コンポーネント」は、本明細書で使用するとき、母集団の一定の割合において特定の疾患症状発現の進行を排除、低減又は予防する治療に有効な投薬量(すなわち、投与の用量及び頻度)を指す。一般に用いられる治療コンポーネントの例はED50で、これは母集団の50%において特定の疾患症状発現に対して治療的に有効である用量を具体的な投薬量で記載する。
(00157)用語「治療効果」は、本明細書で使用するとき、治療の結果で、望ましく且つ有益であると判断される結果を指す。治療効果は、直接又は間接に、疾患症状発現の停止、低減、又は排除を包含してもよい。治療効果は、直接又は間接に、疾患症状発現の進行の停止、低減又は排除も包含してもよい。
(00158)用語「局所的」は、適用点、又はその直下に部位特異的配置を提供するように組成物を投与することを指す。句「局所的に適用する」は、上皮表面を包含する1つ以上の表面上への適用を表す。局所投与は、経皮投与と対照的に、一般的に全身的効果よりも局所的効果を与える。
(00159)用語「治療」又は「治療する」は、疾患、症状又は障害の進行を停止、実質的阻害、遅延又は逆転すること、症状の臨床的又は審美的徴候を実質的に寛解すること、疾患、症状、又は障害の臨床的若しくは審美的徴候の出現を実質的に予防すること、及び有害若しくは不快な徴候から保護することを包含する。治療は、更に以下の1つ以上を達成することを指す:(a)障害の重症度を軽減すること;(b)治療されている障害に特有の徴候の発症を制限すること;(c)治療されている障害に特有の徴候の悪化を制限すること;(d)過去に障害があった患者において障害の再発を制限すること;及び(e)過去に障害が無症候であった患者において徴候の再発を制限すること。
(00160)用語「血管攣縮」は、本明細書で使用するとき、血流量の減少を引き起こす動脈の壁内の平滑筋の収縮から生じるが、一般的に全身血管抵抗は増大しない、大脳動脈の内径の減少を指す。血管攣縮によって、脳血流量の減少及び脳血管抵抗の増大が生じる。理論によって制限されないが、一般的に、血管攣縮は、血管に対する局所的損傷、例えばアテローム性動脈硬化症及びその他の構造損傷(外傷性頭部外傷等、動脈瘤SAH及びその他のSAHの原因等)の結果生じる損傷によって引き起こされると考えられる。脳血管攣縮は自然に発生する血管収縮で、動脈瘤の破裂後又は外傷性頭部損傷後に一般的に起こるCSF中の血液の存在も引き金となり得る。脳血管攣縮は、最終的には、血液供給が妨害されることにより、脳虚血及び梗塞形成の形で脳細胞損傷につながり得る。用語「脳血管攣縮」は、本明細書で使用するとき、クモ膜下出血後の脳底における大容量動脈の狭窄の遅発性出現を指し、しばしば、影響を受けた血管に遠位の領域の灌流減弱を伴う。脳血管攣縮は、動脈瘤の破裂後いつでも発生し得るが、血液が身体に吸収される場合、最も一般的には出血後7日目にピークに達し、たいていは14日以内におさまる。血管造影血管攣縮は、SAHの結果であるが、血液をクモ膜下腔に沈着させるいかなる症状の後にも起こり得る。より具体的には、用語「血管造影脳血管攣縮」は、クモ膜下腔内への出血後の脳底における大容量動脈(すなわち、大脳動脈)の狭窄を指し、これは遠位脳領域の灌流低下につながる。
ポリマー及び賦形剤
(00161)長期作用性製剤の調製に使用するポリマーは、任意の生体適合性ポリマーとすることができる。当業者は、所望の効果(一態様では、上述のように、生物活性剤がその効果をもたらすことを可能にし、次いで、生物活性剤がその効果を生じるのとほぼ同じ又はその後の適切な時間に長期作用性製剤からの生物活性剤の放出を段階的に行うこと)を達成するために、過度の実験を行うことなく適切なポリマー組成物を選択する方法がわかるであろう。一態様においては、ポリマーは、遊離薬剤がその効果を生じた後のある時点まで生物活性剤の放出を遅延させ、それによって全効果期間を延長するように選択される。このようなポリマーの選択は、例えば、ポリマーの種類、ポリマー又はコポリマーの選択、コポリマーに使用するコモノマーの種類、コポリマーに使用するモノマーの種類の比、ポリマーの分子量、微小粒子のサイズ、及び微小粒子の放出プロファイルを制御するために当業者が使用する任意の他の判断基準等の判定基準を包含し得る。
(00162)制限することを意図するものではないが、例として、当該技術分野においてで使用される任意の生体適合性ポリマーが挙げられる。例えば、ポリアクリラート;エチレン酢酸ビニルポリマー、EVA;酢酸セルロース;アシル置換酢酸セルロース;非分解性ポリウレタン;ポリスチレン;ポリ塩化ビニル;ポリフッ化ビニル;ポリ(ビニルイミダゾール);シリコーン系ポリマー(例えば、Silastic(登録商標)等)、クロロスルホナートポリオレフィン;ポリエチレンオキシド;又はそのブレンド若しくはコポリマー等の、生体適合性非分解性ポリマーを使用することができる。ポリ(ラクチド);ポリ(グリコリド);ポリ(ラクチド−コ−グリコリド);ポリ(乳酸);ポリ(グリコール酸);ポリ(乳酸−コ−グリコール酸);ポリ(カプロラクトン);ポリ(オルトエステル);ポリ酸無水物;ポリ(ホスファゼン);ポリヒドロキシアルカノアート;ポリ(ヒドロキシブチラート);合成誘導されたポリ(ヒドロキシブチラート);生物学的に誘導されたポリ(ヒドロキシブチラート);合成誘導されたポリエステル;生物学的に誘導されたポリエステル;ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン);ポリ(ラクチド−コ−グリコリド−コ−カプロラクトン);ポリカーボネート;チロシンポリカーボネート;ポリアミド(合成及び天然ポリアミド、ポリペプチド、ポリアミノ酸等を含む);ポリエステルアミド;ポリエステル;ポリ(ジオキサノン);ポリ(アルキレンアルキラート);ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール、PEG及びポリエチレンオキシド、PEO等);ポリビニルピロリドン又はPVP;ポリウレタン;ポリエーテルエステル;ポリアセタール;ポリシアノアクリラート;ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー;ポリアセタール、ポリケタール;ポリホスファート;(リン含有)ポリマー;ポリホスホエステル;ポリヒドロキシバレラート;ポリアルキレンオキサラート;ポリアルキレンスクシナート;ポリ(マレイン酸);他の生体適合性多糖の中でも特にキチン、キトサン、変性キトサン等のバイオポリマー若しくは変性バイオポリマー;又は本明細書の生体適合性ポリマー(ブロックコポリマー又はランダムコポリマーを包含する);又は本明細書の任意のポリマーの組合せ若しくは混合物若しくは混和物が挙げられるが、これらに限定されない生体適合性生分解性ポリマーを使用することができる。使用できるコポリマーの例としては、親水性又は水溶性ポリマーのブロック(ポリエチレングリコール、PEG、又はポリビニルピロリドン、PVP等)と他の生体適合性又は生分解性ポリマー(例えば、ポリ(ラクチド)若しくはポリ(ラクチド−コ−グリコリド若しくはポリカプロラクトン又はこれらの組合せ)のブロックとを含有するブロックコポリマーが挙げられる。
(00163)更に、本発明は、ラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド及びこれらの組合せを包含する)若しくはヒドロキシブチラート若しくはカプロラクトンのモノマー又はこれらの組合せで構成されるコポリマーから調製される長期作用性製剤;及びDL−ラクチド、グリコリド、ヒドロキシブチラート及びカプロラクトンのモノマーで構成されるコポリマーから調製される長期作用性製剤、及びDL−ラクチド若しくはグリコリド若しくはカプロラクトン若しくはヒドロキシブチラートのモノマー又はこれらの組合せで構成されるコポリマーから調製される長期作用性製剤にも関する。更に、本発明は、とりわけ、上記のコポリマー(DL−ラクチド若しくはグリコリド若しくはカプロラクトン若しくはヒドロキシブチラート又はこれらの組合せを含む)を、ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)若しくはポリ(DL−ラクチド)若しくはPHA等の他の生分解性ポリマーと共に含有する混和物から調製される長期作用性製剤にも関する。本発明は、更に、とりわけ、ポリエーテル(ポリエチレングリコール、PEG;ポリエチレンオキシド、PEO;ポリプロピレンオキシド、PPO及びこれらの組合せを含むブロックコポリマー等)又はポリビニルピロリドン(PVP)、多糖、複合多糖、脂肪酸複合多糖等の変性多糖、ポリラクチド、ポリエステルのような、疎水性又は親水性の生体適合性ポリマー又はバイオポリマー又は生分解性ポリマーのブロックで構成されたブロックコポリマーから調製される長期作用性製剤を包含し得る。
(00164)生物活性剤の送達と生物活性剤の長期作用性製剤の送達との組み合わせのような本明細書の態様の実施によって、長期作用性製剤に必要とされる生物活性剤により、ポリマー材料(及びいくつかの態様においては、賦形剤材料)システムの質量が低減される。
組成物
(00165)一般的に、本明細書に開示する半固体の生分解性生体適合性送達システムのような開示される制御放出システムは、ポリマー又はポリマーマトリックスを含み、このポリマーマトリックスは第1ポリマー及び第1ポリマーと異なる第2ポリマー;並びに該ポリマー又はポリマーマトリックス中にカプセル化された生物活性剤を含む。用語「ポリマーマトリックス」は、本明細書で使用するとき、ポリマー混合物を含む制御放出システムの一部(又は全て)を指すことを意図する。ポリマーマトリックスは、架橋した又は絡み合ったポリマー鎖を、必ずではないが含み得る。一態様において、ポリマーマトリックスはポリマー組成物であって、このポリマー組成物は生物活性剤をカプセル化する。更なる態様において、ポリマーマトリックスの一部は、第1及び第2ポリマーのうちの1つのみを含み得る。従って、制御放出システムのポリマーマトリックスは、均質である必要はないが、別の態様において、ポリマーマトリックスは均質であり得る。
(00166)ポリマーマトリックスの第1及び第2ポリマーは、制御放出システム内に所望の比で存在することができ、その比は第1ポリマー対第2ポリマーの重量比である。一態様において、第1ポリマー対第2ポリマーの比は約90:10〜約40:60であり、特に約85:15、80:20、70:30、75:25、65:35、及び50:50の比を含むがこれらに限定されない。更に、ブレンド内に2種を超えるポリマー、例えば3、4、5種、又はそれ以上のポリマーが存在できる。
(00167)一態様において、第1及び第2ポリマーは、少なくとも1つの異なる特性を有する。制御放出システムに所望される分解プロファイルに応じて、化学組成、粘度(例えば、固有粘度)、分子量、ガラス転移温度(Tg)等の熱特性、ポリマー内の非繰り返し単位(例えば、末端基)の化学組成、分解速度、親水性、多孔性、密度、又はこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、多種多様な特性がポリマー間で異なり得る。一態様において、第1ポリマーと第2ポリマーは水性媒体中で異なる分解速度を有する。一態様において、制御放出システムの分解プロファイルを選択し、組み合わせたときに選択した分解プロファイルを達成すると考えられる特性を有するポリマーの組み合わせを用いて、制御放出システムを作製する。
(00168)一態様において、第1ポリマー及び第2ポリマーは、1つ以上の異なる非繰り返し単位(例えば末端基)又はポリマーの骨格内の非反繰り返し単位を有する。更なる態様において、ポリマーマトリックスの第1ポリマー及び第2ポリマーは、1個以上の異なる末端基を有する。例えば、第1ポリマーは、第2ポリマーの1個以上の末端基よりも極性の高い末端基を有することができる。従って、この態様において、第1ポリマーは、第2のポリマー(より極性の低い末端基を有する)のみを含む制御放出システムと比較して、通常はより親水性であり、従って水の取込みがより速くなる。特定の態様において、第1ポリマーは1個以上のカルボン酸末端基を有することができ、第2ポリマーは1個以上のエステル末端基を有することができる。別の態様において、より高速での水の取り込み又はより制御された放出システムに対する要求に応じて、単一ポリマーが1個以上のエステル又はカルボキシル末端基を有することができる。
(00169)別の態様において、ポリマーマトリックスの第1ポリマーと第2ポリマーは異なる分子量を有する。一態様において、第1ポリマーは、第2ポリマーの分子量よりも少なくとも約3000ダルトン大きい分子量を有する。分子量は、種々の態様において、制御放出システムに所望される特性に応じて、任意の適切な値を有することができる。例えば、高い機械的強度を有する制御放出システムが所望される場合、ポリマーのうち少なくとも1つは高分子量を有することができる。この例において、制御放出システムが短期放出能(例えば、約2週間未満)を有することも所望される場合、より低分子量のポリマーを前記高分子量ポリマーと組み合わせることができる。この態様において、高分子量ポリマーは、典型的には、制御放出システムに対して良好な構造的完全性を提供し、同時に、より低分子量のポリマーは短期放出能を提供することができる。
(00170)制御放出送達システムの一部として使用するか又は制御放出送達システムに使用するポリマーマトリックスに使用するポリマーの非限定例としては、ポリエステル、ポリヒドロキシアルカノアート、ポリヒドロキシブチラート、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシバレラート、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリホスファート、ポリホスホエステル、ポリジオキサノン、ポリホスホエステル、ポリホスファート、ポリホスホナート、ポリホスファート、ポリヒドロキシアルカノアート、ポリカーボネート、ポリアルキルカーボネート、ポリオルトカーボネート、ポリエステルアミド、ポリアミド、ポリアミン、ポリペプチド、ポリウレタン、ポリアルキレンアルキラート、ポリアルキレンオキサラート、ポリアルキレンスクシナート、ポリヒドロキシ脂肪酸、ポリアセタール、ポリシアノアクリラート、ポリケタール、ポリエーテルエステル、ポリエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリペプチド、多糖、又はポリビニルピロリドンが挙げられる。他の非生分解性であるが耐久性のポリマーとしては、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、他の好適な非生分解性ポリマーとしては、シリコーン及びポリウレタンが挙げられるが、これらに限定されない。
(00171)更なる態様において、ポリマーは、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ヒドロキシブチラート)又はポリ(ヒドロキシブタラート)含有コポリマー、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキラート)、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、生分解性ポリウレタン、ポリ(アミノ酸)、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステル、ポリアセタール、ポリシアノアクリラート、ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー、ポリアセタール、ポリケタール、ポリホスホエステル、ポリヒドロキシバレラート又はポリヒドロキシバレラート含有コポリマー、ポリアルキレンオキサラート、ポリアルキレンスクシナート、ポリ(マレイン酸)、及びこれらのコポリマー、ターポリマー、組合せ、又はブレンドであることができる。
(00172)なお更なる態様において、有用な生体適合性ポリマーは、乳酸、グリコール酸、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、ヒドロキシブチラート、ヒドロキシバレラート、ジオキサノン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上の残基を含むポリマーである。なお更なる態様において、有用な生体適合性ポリマーは、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上の残基を含むポリマーである。
(00173)一態様において、有用な生分解性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、又はポリビニルピロリドン(PVP)を含むがこれらに限定されない親水性又は水溶性ポリマーの1つ以上のブロックを、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、又はこれらの組み合わせを含む別の生体適合性(biocompabible)又は生分解性ポリマーの1つ以上のブロックと組み合わせて含むポリマーである。
(00174)特定の態様において、生分解性ポリマーは、1個以上のラクチド残基を含むことができる。そのために、ポリマーは、L−ラクチド、D−ラクチド、及びD,L−ラクチド、又はこれらの混合物を含むがこれらに限定されない、ラクチドの全てのラセミ体及び立体特異体を含む、任意のラクチド残基を含むことができる。ラクチドを含む有用なポリマーとしては、限定するものではないが、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D−ラクチド)、及びポリ(DL−ラクチド);並びにポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、例えばポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(D−ラクチド−コ−グリコリド)、及びポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド);又はこれらのコポリマー、ターポリマー、組み合わせ、若しくはブレンドが挙げられる。ラクチド/グリコリドポリマーは、ラクチド及びグリコリドモノマーの開環を通じた溶融重合によって、好都合に作製することができる。更に、ラセミ型のDL−ラクチド、L−ラクチド、及びD−ラクチドポリマーは市販されている。L−ポリマーは、DL−ポリマーよりも結晶性が高く、再吸収が遅い。グリコリドとDL−ラクチド又はL−ラクチドとを含むコポリマーに加えて、L−ラクチドとDL−ラクチドとのコポリマーが市販されている。ラクチド又はグリコリドのホモポリマーも市販されている。
(00175)生分解性ポリマーが、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ラクチド)、又はポリ(グリコリド)である場合、ポリマー中のラクチド及びグリコリドの量は変化し得る。更なる態様において、生分解性ポリマーは、0〜100モル%、40〜100モル%、50〜100モル%、60〜100モル%、70〜100モル%、又は80〜100モル%のラクチド及び0〜100モル%、0〜60モル%、10〜40モル%、20〜40モル%、又は30〜40モル%のグリコリドを含有し、その際ラクチド及びグリコリドの量は100モル%である。更なる態様において、生分解性ポリマーは、ポリ(ラクチド)、95:5のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、85:15のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、75:25のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、65:35のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、又は50:50のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)であることができ、前記比はモル比である。
(00176)特定の態様において、第1及び第2ポリマーは、いずれもポリ(ラクチド−コ−グリコリド)ポリマーである。更なる特定の態様において、ラクチド対グリコリドの比は、約90:10〜約40:60である。なお更なる態様において、ラクチド対グリコリドの比は、約85:15〜約50:50である。
(00177)更なる態様において、ポリマー又はポリマーマトリックスの第1及び第2ポリマーは、ポリ(カプロラクトン)又はポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)であることができる。一態様において、ポリマーはポリ(ラクチド−カプロラクトン)であることができ、種々の態様において、95:5のポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、85:15のポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、75:25のポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、65:35のポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、又は50:50のポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)であることができ、前記比はモル比である。
(00178)上記の生分解性ポリマーの任意の組み合わせ、例えば、限定するものではないが、これらのコポリマー、これらの混合物、又はこれらのブレンドを使用できることが理解される。同様に、生分解性ポリマーの残基が開示されている場合、開示される残基を含む任意の好適なポリマー、コポリマー、混合物、又はブレンドも開示されているとみなされることが理解される。そのために、多数の残基が個々に開示されている(すなわち、別のものとの組み合わせではない)場合、その個々の残基の任意の組み合わせを使用できると理解される。
(00179)開示される制御放出システムに使用するためのポリマー混合物の非限定的な具体例、及びその標的送達プロファイルとして、表1に記載の混合物が挙げられる。
(00181)以下の例は、表1でポリマーに用いた命名法を定義する。ポリマー(8515 DLG 4.5E)は、ポリ(D−ラクチド−コ−グリコリド)で、そのラクチド対グリコリドのモル比が85:15であり、該コポリマーが0.45dL/gの固有粘度を示し、該コポリマーがエステル(E)末端基を含むことを意味する。略号(A)は、酸(例えば、カルボン酸)末端基を表す。ポリマー2000MW DLPLは、約2000ダルトンの分子量を有するポリ(D,L−ラクチド)を表す。ポリマーの分子量は、測定された値、又は商業的供給元によって提供された値であることができる。従って、分子量はポリマーの分子量に近いものにすぎない場合があることが理解される。
(00182)従って、一態様において、本明細書に開示されるのは、8515 DLG6A、8515 DLG 5A、8515 DLG 4.5E、88515 DLG 5E、515 DLG 7A、7525 DLG 7A、7525 DLG 7E、7525 DLG 5E、6535 DLG 5E、6353 DLG 2E、6535 DLG 4A、5050 DLG 4A、5050 DLG 2A、及び2000 MW DLPLが挙げられるがこれらに限定されない、本明細書に開示される制御放出システムに使用するためのポリマーである。理論に束縛されることを望むものではないが、一般的に、ポリマーの分子量が大きいほど、ポリマーはより粘稠であると理解される。粘度が増大するにつれ、より純粋なポリマー形態の選択性が増大する。
(00183)開示されるプロセスに有用な溶媒としては、「ハロゲン化溶媒」及び「非ハロゲン化溶媒」が挙げられる。非ハロゲン化溶媒の非限定例としては:ジメチルスルホキシド(DMSO)、トリアセチン、N−メチルピロリドン(NMP)、2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ミグリオール、ミリスチン酸イソプロピル、クエン酸トリエチル、プロピレングリコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、氷酢酸、ポリエチレングリコール(200)、ポリエチレングリコール(400)、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、グリセロール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、グリム、ジグリム、n−ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン(全異性体)等が挙げられる。ハロゲン化溶媒の非限定例としては、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン(すなわち、ジクロロメタン、DCM)、クロロエタン、1,1−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、及び1,2−ジクロロエタンが挙げられる。従って、一態様において、本明細書に開示されるポリマー溶液並びに開示される方法及びプロセスに使用するポリマー溶液は、生物活性剤と、例えば、酢酸エチル又は塩化メチレンのような溶媒とを含むことができる。使用するポリマーによっては、ジクロロメタン(dichloromethoane)から酢酸エチルへと移ることにより、最終生成物の純度を増大することができることが理解される。
(00184)一態様において、開示された微小粒子は、凍結乾燥又は窒素気流下のような当該技術分野において既知の任意の従来方法によって乾燥できる。一般的に、乾燥速度が遅いほど最終生成物の純度が高くなる。更に、乾燥速度を更に遅くすると、最も安定な形態の多形体の選択性が増大する。例えば、凍結乾燥は一般的に、試料を12〜14時間乾燥する。試料上に窒素を通過させるだけ又は放置して空気乾燥することで乾燥を遅くすることによって(乾燥時間24〜48時間)、より安定な構造が選択される。一般的に、凍結乾燥は高速乾燥プロセスであるのに対し、窒素気流はより低速なプロセスであるが、これは変動し得る。従って、一態様において、乾燥時間は4〜12時間、4〜16時間、4〜24時間、4〜48時間、4〜60時間、12〜14時間、16〜24時間、又は24〜48時間であり得る。窒素気流の場合、乾燥速度は、0.2mL/分〜10リットル/分(LPM)、0.1〜5.0LPM、0.2〜3.0LPM、0.2〜2.0LPM、又は0.2〜1.0LPMであり得る。従って、一態様において、微小粒子の乾燥速度は0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、又は10LPMであることができる。
(00185)本明細書に記載される方法とともに、多種多様な生物活性剤を用いることができる。一態様において、生物活性剤は、放出可能な生物活性剤、すなわち制御放出システムから被験者の隣接組織又は体液内に放出できる生物活性剤であることができる。特定の態様において、生物活性剤は、制御放出システム内又は制御放出システム上にあることができる。
(00186)種々の形態の生物活性剤を使用することができ、それを制御放出システムから隣接組織又は体液内に放出することができる。そのために、液体又は固体の生物活性剤を本明細書に記載される制御放出システム内に組み込むことができる。生物活性剤は、少なくともごくわずかに水溶性であり、好ましくは中程度に水溶性である。生物活性剤は、活性成分の塩を包含できる。従って、生物活性剤は、酸性、塩基性、又は両性塩であることができる。生物活性剤は、水素結合可能な非イオン性分子、極性分子、又は分子複合体であることができる。生物活性剤は、例えば、無電荷分子、分子複合体、塩、エーテル、エステル、アミド、ポリマー薬物複合体の形態、又は有効な生物学的若しくは生理学的活性を与える別の形態で組成物に包含することができる。
(00187)本明細書のシステム内に組み込まれる生物活性剤の例としては、限定するものではないが、ペプチド、タンパク質(例えば、ホルモン、酵素、抗体等)、核酸(例えば、アプタマー、iRNA、DNA、RNA、アンチセンス核酸等)、アンチセンス核酸類似体等、低分子量化合物、又は高分子量化合物が挙げられる。開示される移植可能な複合体への使用が検討される生物活性剤としては、タンパク質同化剤、制酸剤、抗喘息薬、抗コレステロール剤及び抗脂質剤、抗凝固剤、抗痙攣薬、止瀉薬、鎮吐薬、抗菌剤及び抗微生物剤を含む抗感染薬、抗炎症薬、抗躁病薬、代謝拮抗剤、抗催吐剤、抗新生物薬、抗肥満薬、解熱薬及び鎮痛薬、鎮痙薬、抗血栓薬、鎮咳薬、抗尿酸血剤、抗狭心症薬、抗ヒスタミン剤(例えば、テルフェナジン)、食欲抑制剤、生物製剤、脳血管拡張薬、冠動脈拡張薬、気管支拡張薬、細胞毒性薬、鬱血除去薬、利尿薬、診断用薬剤、赤血球生成剤、去痰薬、胃腸鎮静剤、血糖上昇剤、睡眠薬、血糖降下剤、免疫調節剤、イオン交換樹脂、緩下剤、ミネラルサプリメント、粘液溶解薬、神経筋薬、末梢血管拡張剤、向精神薬、鎮静剤、刺激剤、甲状腺薬及び抗甲状腺薬、組織増殖剤、子宮弛緩薬、ビタミン、又は抗原性物質が挙げられる。
(00188)他の生物活性剤としては、アンドロゲン阻害剤、多糖、増殖因子(例えば、血管内皮細胞増殖因子−VEGF)、ホルモン、抗血管新生因子、デキストロメトルファン、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、ノスカピン、クエン酸カルベタペンタン、塩酸クロフェジアノール、マレイン酸クロルフェニラミン、酒石酸フェニンダミン、マレイン酸ピリラミン、コハク酸ドキシラミン、クエン酸フェニルトロキサミン、塩酸フェニレフリン、塩酸フェニルプロパノールアミン、塩酸プソイドエフェドリン、エフェドリン、リン酸コデイン、硫酸コデインモルヒネ、ミネラルサプリメント、コレスチラミン、N−アセチルプロカインアミド、アセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン、塩酸フェニルプロパノールアミン、カフェイン、グアイフェネシン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、インターフェロン、サイトカイン、及びワクチンが挙げられる。
(00189)制御放出システムに生物活性剤として使用できる代表的な薬剤としては、限定するものではないが、ペプチド薬、タンパク質薬、脱感作物質、抗原、抗感染薬(例えば抗生物質、抗微生物剤、抗ウイルス物質、抗菌性物質、抗寄生虫物質、抗真菌性物質、及びこれらの組み合わせ等)、抗アレルギー薬、アンドロゲン性ステロイド、鬱血除去剤、睡眠薬、ステロイド性抗炎症剤、抗コリン剤、交感神経様作用薬、鎮静剤、縮瞳薬、精神賦活剤、精神安定剤、ワクチン、エストロゲン、黄体ホルモン剤、体液性剤、プロスタグランジン、鎮痛剤、鎮痙薬、抗マラリア薬、抗ヒスタミン剤、心臓作用薬、非ステロイド性抗炎症剤、抗パーキンソン病薬、抗高血圧薬、β−アドレナリン遮断薬、栄養剤、並びにベンゾフェナントリジンアルカロイドが挙げられる。薬剤は、更に、刺激剤、鎮静剤、睡眠薬、鎮痛剤、抗痙攣薬等として作用できる物質であることができる。
(00190)制御放出システムは、多数の生物活性剤を単独で又は組み合わせて含むことができる。他の生物活性剤としては、限定するものではないが、例えばアセトアミノフェン、アセチルサリチル酸等の鎮痛剤;リドカイン、キシロカイン等の麻酔薬;デキサドリン、酒石酸フェンジメトラジン等の食欲減退薬、メチルプレドニゾロン、イブプロフェン等の抗関節炎薬;硫酸テルブタリン、テオフィリン、エフェドリン等の抗喘息薬;スルフィソキサゾール、ペニシリンG、アンピシリン、セファロスポリン系、アミカシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、クリンダマイシン、イソニアジド、リファンピン等の抗生物質;アンホテリシンB、ナイスタチン、ケトコナゾール等の抗真菌剤;アシクロビル、アマンタジン等の抗ウイルス剤;シクロホスファミド、メトトレキサート、エトレチナート等の抗癌剤;ヘパリン、ワルファリン等の抗凝固剤;フェニトインナトリウム、ジアゼパム等の抗痙攣薬;イソカルボキサジド、アモキサピン等の抗うつ剤;ジフェンヒドラミンHCl、クロルフェニラミンマレイン酸塩等の抗ヒスタミン剤;インシュリン、プロゲスチン、17−α−カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、イソ−アロプレグナノロンテストステロン、プレドニゾロン(prenisolone)、プレドニゾン、デキサメタゾンエストロゲン(例えば、エストラジオール)、コルチコイド、糖質コルチコイド、アンドロゲン等のホルモン;ソラジン、ジアゼパム、クロルプロマジンHCl、レセルピン、クロルジアゼポキシドHCl等の精神安定剤;ベラドンナアルカロイド、ジサイクロミン塩酸塩等の鎮痙薬;必須アミノ酸、カルシウム、鉄、カリウム、亜鉛、ビタミンB12等のビタミン及びミネラル;プラゾシンHCl、ニトログリセリン、プロプラノロールHCl、ヒドララジンHCl、パンクレリパーゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ等の心血管作動薬;LHRH、ソマトスタチン、カルシトニン、成長ホルモン、グルカゴン様ペプチド、成長放出因子、アンジオテンシン、FSH、EGF、骨形態形成タンパク質(BMP)、エリスロポエチン(erythopoeitin)(EPO)、インターフェロン、インターロイキン、コラーゲン、フィブリノゲン、インシュリン、第VIII因子、第IX因子、ENBREL(登録商標)、RITUXAM(登録商標)、HERCEPTIN(登録商標)、α−グルコシダーゼ、Cerazyme/CEREDOSE(登録商標)、バソプレシン、ACTH、ヒト血清アルブミン、γ−グロブリン、構造タンパク質、血液製剤タンパク質、複合タンパク質、酵素、抗体、モノクローナル抗体等のペプチド及びタンパク質;プロスタグランジン;核酸;炭水化物;脂肪;モルヒネ、コデイン等の麻薬、精神治療剤;抗マラリア薬、L−ドーパ、フロセミド、スピノラクトン等の利尿薬;塩酸ラニチジン(rantidine)HCl、シメチジンHCl等の抗潰瘍薬、並びにニモジピン等のカルシウムチャネル拮抗薬、ルメファントリン、シレンジタイド、ロバスタチン等のような3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素Aレダクターゼ阻害剤が挙げられる。
(00191)用語「血管収縮」は、本明細書で使用するとき、血管の筋肉壁の収縮から生じる血管の狭窄を指す。血管が収縮するときに、血流は制限されるか又は遅くなる。用語「血管拡張」は、血管収縮の逆であり、本明細書で使用するとき、血管の拡幅化を意味する。用語「血管収縮薬」、「血圧上昇剤」又は「昇圧薬」は、本明細書で使用するとき、血管収縮を引き起こす因子を指す。血管収縮は、通常は血圧の上昇をもたらし、軽微な場合も激しい場合もある。血管収縮は、疾患、薬物治療、又は心理状態から生じることがある。血管収縮を引き起こす薬剤としては、限定するものではないが、カテコールアミン、抗ヒスタミン薬、鬱血除去薬、メチルフェニダート、感冒薬、プソイドエフェドリン、及びカフェインが挙げられる。
(00192)血管拡張薬は、血管の平滑筋を弛緩させて血管を拡張させる薬剤又は化学薬品である。動脈血管(主に細動脈)の拡張は、血圧の低下につながる。平滑筋の弛緩は、収縮のための刺激の除去に依存し、これは主に細胞内カルシウムイオン濃度及びミオシン軽鎖(MLC)のリン酸化に左右される。従って、血管拡張は、主に1)細胞内カルシウム濃度を下げるか、又は2)MLCの脱リン酸化(ミオシンL鎖ホスファターゼの刺激並びにカルシウムシンポーター及びアンチポーター(細胞内コンパートメントからカルシウムイオンをポンピングする)の誘導を含む)いずれかによって働く。交換体を経た平滑筋の筋小胞体へのイオンの再取込み及び原形質膜全体のイオンの放出も血管拡張の達成を助ける。これらの作用を達成する特定の機序は、血管拡張薬ごとに異なり、内因性及び外因性として分類され得る。用語「内因性」は、本明細書で使用するとき、内部から進行するか若しくは内部的に誘導されること、又は外部的に生じるのではなく生物体内の状態から生じることを意味する。「外因性」は、本明細書で使用するとき、外部に由来するか、外部的に誘導されるか、又は生物体内の状態から生じるのではなく外部的に引き起こされることを意味する。
(00193)血管拡張は、平均動脈圧と心拍出量の関係及び全末梢抵抗(TPR)に直接影響を及ぼす。心拍出量は、心拍数(拍動/分)と1回拍出量(収縮期中に放出される血液量)を乗算することによって計算してもよい。TPRは、血管の長さ、血液の粘度(ヘマトクリットによって定量される)、及び血管の直径が含まれるがこれらに限定されないいくつかの因子によって決まる。血管径は、抵抗の定量において最も重要な変数である。心拍出量又はTPRのいずれかの上昇が平均動脈圧の増大を引き起こす。血管拡張が働いて、大動脈及びより小さい動脈の中膜層内の平滑筋細胞の弛緩によってTPR及び血圧を低下する。
(00194)血管拡張は、温血動物の周囲環境が熱いときに温血動物の表在性血管に起こり、このプロセスは加熱した血液の流れを動物の皮膚にそらし、そこで熱がより容易に大気中に放出され得る。血管収縮は、逆の生理的プロセスである。血管拡張と血管収縮は、内皮細胞によって産生される局部的パラクリン剤(例えば、ブラジキニン、アデノシン)、並びに生物体の自律神経系及び副腎によって自然に調節され、自律神経系及び副腎はいずれもカテコールアミン(例えばそれぞれ、ノルエピネフリン及びエピネフリン)を分泌する。
(00195)血管拡張薬は、高血圧症(患者が異常に高い血圧を有する場合)、並びに狭心症及び鬱血心不全(より低い血圧を維持することにより患者が他の心臓障害を発症するリスクを低減する)のような症状を治療するために使用される。
(00196)一態様において、本明細書に開示されるのは、
(i)治療量の実質的に純粋な多形形態の生物活性剤を含む微小粒子製剤、及び
(ii)薬学的に許容可能な担体、
を含み、前記微小粒子製剤が均一な粒径分布の複数の微小粒子を含み、前記実質的に純粋な多形形態の生物活性剤が各微小粒子全体にわたって分散されている、流動性持続放出性微小粒子組成物である。一態様において、生物活性剤は例えば、ニモジピンであることができる。
(00197)別の態様において、記載の発明は、
(i)治療量の実質的に純粋な結晶形態Iのニモジピンを含む微小粒子製剤、及び
(ii)薬学的に許容可能な担体、
を含み、前記微小粒子製剤が均一な粒径分布の複数の微小粒子を含み、前記実質的に純粋な結晶形態Iのニモジピンが各微小粒子全体にわたって分散されている、流動性持続放出性微小粒子組成物を提供する。
(00198)いくつかの実施形態によると、実質的に純粋な多形形態のニモジピンは、ニモジピン形態I、ニモジピン形態II、ニモジピンのアモルファス形態及びこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態によると、実質的に純粋な多形形態のニモジピンは、実施的に純粋なニモジピン形態Iである。いくつかの実施形態によると、実質的に純粋な多形形態のニモジピンは、実施的に純粋なニモジピン形態IIである。いくつかの実施形態によると、実質的に純粋な多形形態のニモジピンは、実施的に純粋なアモルファス形態のニモジピンである。
(00199)いくつかの実施形態によると、結晶形態Iのニモジピンは、122℃〜127℃の溶融範囲によって特徴づけられる。いくつかの実施形態によると、実質的に純粋な結晶形態のニモジピンは、110℃〜117℃の溶融範囲を特徴とするニモジピン形態IIである。
(00200)いくつかの実施形態によると、実質的に純粋な多形形態のニモジピンは、図1に示す赤外スペクトルを特徴とするニモジピン形態Iである。いくつかの実施形態によると、実質的に純粋な多形形態のニモジピンは、図2に示す赤外スペクトルを特徴とするニモジピン形態IIである。
(00201)本明細書の生物活性剤を、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体又は希釈剤と共に含む医薬組成物は、混合、顆粒化又はコーティング方法によって従来方法で製造できる。医薬組成物は単位剤形の形、例えば、アンプル又は複数回用量容器に入れて、防腐剤が添加されて、提供される。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルション等の形態をとってもよく、懸濁剤、安定剤及び分散剤のような製剤化剤を含有してもよい。医薬組成物の製剤は、水溶性形態の活性化合物の水溶液を包含する。更に、活性化合物の懸濁液を、適切な油性懸濁注射液として調製してもよい。好適な親油性溶媒又はビヒクルとしては、ゴマ油のような脂肪油、又はオレイン酸エチル若しくはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、又はリポソームが挙げられる。水性懸濁注射液は、懸濁液の濃度を増大する物質、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、又はデキストランを含有してもよい。任意追加的に、懸濁液は、化合物の溶解性を増大して、高濃度溶液の調製を可能にする好適な安定化剤又は薬剤も含有してもよい。あるいは、活性化合物は、使用前に好適なビヒクル(例えば、滅菌パイロジェンフリー水)に溶解するための粉末形態であってもよい。
(00202)非経口注入用医薬組成物は、薬学的に許容可能な滅菌水性又は非水性溶液、分散液、懸濁液、又はエマルション及び再溶解して滅菌注射用溶液若しくは分散液にするための粉末を含む。好適な水性及び非水性担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例としては、水、エタノール、ジクロロメタン、アセトニトリル、酢酸エチル、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール等)、これらの好適な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)及びオレイン酸エチルのような注射用有機エステルが挙げられる。適切な流動性を、例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散液の場合には必要な粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持してもよい。
(00203)これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤等のアジュバントも含有してもよい。微生物の作用の阻止は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等によって確実としてもよい。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウム等を包含することも望ましい場合がある。注射用医薬剤形の長期吸収は、吸収を遅延する薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらされてもよい。
(00204)懸濁液は、活性化合物に加えて、懸濁剤、例えばエトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド(metahydroxide)、ベントナイト、寒天、トラガカント、並びにこれらの混合物も含有してもよい。
(00205)医薬組成物は、好適な固相又はゲル相の担体又は賦形剤も含んでもよい。このような担体又は賦形剤の例としては、限定するものではないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、及びポリエチレングリコールのようなポリマーが挙げられる。
(00206)いくつかの実施形態によると、生分解性ポリマーと薬物又は医薬活性化合物との組み合わせにより、製剤が、体内に注入又は挿入したときに、薬物を持続放出できるようになる場合がある。
(00207)部位特異的活性は、一般的に、製剤が置かれる体内の位置が体液が充満した空間又は何らかの種類の空洞である場合、例えばクモ膜下腔、慢性硬膜下血腫の硬膜下腔又は脳内の血腫、腫瘍若しくは血管奇形の外科的除去後に残された空洞である場合に生じる。これは、活性が必要な部位に高濃度の薬物を提供し、体内の残りの部位の濃度をより低くすることで、望ましくない全身性副作用のリスクを低減する。
(00208)部位特異的送達システムは、例えば、(直径約1μm〜約100μmの)微小粒子、熱可逆性ゲル(例えば、PGA/PEG)、及びフィルム形態であってもよい生分解性ポリマー(例えば、PLA、PLGA)の使用を包含する。
(00209)薬物の送達特性及びインビボでのポリマー分解も変更できる。例えば、ポリマー共役を用いて体内での薬物の循環を変更すること及び組織標的化の達成、刺激低減及び薬物安定性改善が可能である。
(00210)いくつかの実施態様によると、薬学的に許容可能な担体としては、限定するものではないが、ゲル、徐放性固体又は半固体化合物が挙げられ、任意追加的に持続放出性ゲル、徐放性固体又は半固体化合物として、前記ゲル、徐放性固体又は半固体化合物は治療有効量の本発明の化合物を含む組成物を含む。いくつかのこのような実施態様によると、電位開口型カルシウムチャネル拮抗薬は、薬学的に許容可能な担体に埋め込まれるか、又は薬学的に許容可能な担体の少なくとも1つの表面上に被覆される。コーティングは、所望の任意の材料であることができ、好ましくはポリマー又は異なるポリマーの混合物であることができる。任意追加的に、前記ポリマーを造粒段階の間に用いて、活性成分の所望の放出パターンを得るように活性成分とのマトリックスを形成してもよい。ゲル、徐放性固体又は半固体化合物は、所望の時間にわたって活性剤を放出することができる。ゲル、徐放性固体又は半固体化合物は、ヒト脳内の組織、例えば、限定するものではないが、大脳動脈のような血管にごく近接して移植できる。いくつかのこのような実施形態によると、活性剤の放出は、局所的で部位特異的な薬理学的作用を、所望の時間にわたって生じることができる。いくつかのこのような実施形態によると、活性剤の放出は、所望の時間にわたって広汎性の薬理学的作用を生じることができる。
(00211)好適な液体又は固体医薬調剤には、例えばマイクロカプセル化剤形、及び適切な場合には1つ以上の賦形剤と共に、螺旋状にした、微視的粒子上に被覆した、組織内移植用リポソーム、ペレットに含有された、又は組織に擦り込む対象物上で乾燥したものが挙げられる。本明細書で使用するとき、用語「マイクロカプセル化」は、非常に小さい液滴又は粒子をポリマー材料の連続膜で包囲又は被覆するプロセスを指す。このような医薬組成物は、顆粒、ビーズ、粉末、錠剤、コーティング錠、(マイクロ)カプセル剤、坐薬、シロップ剤、エマルション、懸濁液、クリーム、点滴剤又は活性化合物の放出が遅延された調剤の形であってもよく、その調製において、賦形剤及び添加剤及び/又は補助剤、例えば崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、滑剤、又は可溶化剤が、通例上記のように用いられる。医薬組成物は、種々の薬物送達システムの使用に適している。薬物送達の方法の簡単な総説については、Langer(1990)Science249,1527−1533を参照し、これを参照により本明細書に援用する。
(00212)注射用デポ形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドのような生分解性ポリマー中に薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって製造される。薬物対ポリマーの比及び使用する具体的なポリマーの種類によって、薬物放出速度が制御できる。このような長期作用性製剤は、好適なポリマー材料又は疎水性材料(例えば許容可能な油中のエマルションとして)又はイオン交換樹脂と共に、又はやや難溶の誘導体として、例えば、やや難溶の塩として配合され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。注射用デポ製剤は、体組織に適合するリポソーム又はマイクロエマルション中に薬物を封入することによっても調製される。
(00213)例えば、ポリグリコリド(PGA)は、縫合糸に使用するために開発された直鎖脂肪族ポリエステルである。研究で、炭酸トリメチレン、ポリ乳酸(PLA)、及びポリカプロラクトンとのPGAコポリマーが報告されている。これらのコポリマーの一部は、持続的薬物放出用の微小粒子として製剤化されてもよい。
(00214)ポリエステル−ポリエチレングリコール化合物を合成することができ;これらは軟質であり、薬物送達に使用してもよい。
(00215)ポリ(アミノ)由来バイオポリマーとしては、限定するものではないが、脂肪族ジアミンとして乳酸及びリシンを含有するもの(例えば、米国特許第5,399,665号明細書を参照)、及びチロシン由来ポリカーボネート及びポリアクリレートが挙げられる。ポリカーボネートの変性は、エステルのアルキル鎖の長さを変更(エチルをオクチルに)してもよいが、ポリアリーレート(polyarylate)の変性は二酸のアルキル鎖の長さの変更(例えば、コハク酸をセバシン酸に)を更に包含してもよく、これはポリマーの大幅な並べ替え及びポリマー特性の大きな柔軟性を可能にする。
(00216)ポリ無水物は、溶融重合による2つの二酸分子の脱水によって調製される(例えば、米国特許第4,757,128号明細書を参照)。これらのポリマーは、表面侵食によって分解する(全体侵食によって分解するポリエステルと比較して)。薬物の放出は、選択されるモノマーの親水性によって制御できる。
(00217)光重合可能なバイオポリマーとしては、限定するものではないが、乳酸/ポリエチレングリコール/アクリラートコポリマーが挙げられる。
(00218)用語「ヒドロゲル」は、ゼラチン状又はゼリー様の塊を生成するために必要な水性成分を含有する固体、半固体、擬塑性又は塑性構造をもたらす物質を指す。ヒドロゲルは、一般的に、親水性ポリマー、アクリル酸、アクリルアミド及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)等の種々のポリマーを含む。
(00219)天然のバイオポリマーとしては、限定するものではないが、タンパク質ポリマー、コラーゲン、多糖及び光重合性化合物が挙げられる。
(00220)タンパク質ポリマーは、自己集合タンパク質ポリマー、例えば、絹フィブロイン、エラスチン、コラーゲン、及びこれらの組み合わせから合成されている。
(00221)天然の多糖としては、限定するものではないが、キチン及びその誘導体、ヒアルロン酸、デキストラン及びセルロース系(一般的には変性しなければ生分解性でない)、並びにイソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)が挙げられる。
(00222)キチンは、主に2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコース基から構成され、酵母、菌類及び海洋無脊椎動物(エビ、甲殻類)の外骨格の主成分に見られる。キチンは水溶性でなく、脱アセチル化キチン、キトサンのみが酸性溶液(例えば、酢酸)に可溶である。水溶性、非常に高分子量(200万ダルトンよりも大きい)、粘弾性、非毒性、生体適合性であって、過酸化物、グルタルアルデヒド、グリオキサール及び他のアルデヒド及びカルボジアミドと架橋してゲルを形成することのできるキチン誘導体が研究で報告されている。
(00223)ヒアルロン酸(HA)は、交互のグルクロニド結合とグルコサミニド結合で構成され、哺乳類の硝子体液、脳の細胞外マトリックス、滑液、臍帯及び鶏冠に見られ、そこから単離及び精製されるほか、発酵プロセスによっても生産できる。
(00224)製剤は、最終段階でのガンマ線照射、細菌保持フィルタを通す濾過によって又は使用直前に滅菌水若しくは他の注射用滅菌媒体に溶解又は分散できる滅菌固体組成物の形で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌されてもよい。注射用製剤、例えば、注射用滅菌水性又は油性懸濁液は、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて既知の技術に従って製剤化されてもよい。注射用滅菌製剤は、1,3−ブタンジオール、ジクロロメタン、酢酸エチル、アセトニトリル等の溶液のような、非毒性で非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒中の注射用滅菌溶液、懸濁液又はエマルションでもよい。使用してもよい許容可能なビヒクル及び溶媒には、水、リンゲル液、U.S.P.及び等張食塩液がある。更に、滅菌不揮発性油が通例的に溶媒又は懸濁媒体として使用される。この目的で、合成モノグリセリド又はジグリセリドを包含する任意の無菌性不揮発性油が使用されてもよい。更に、オレイン酸のような脂肪酸が、注射剤の調製に用いられる。
(00225)非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内、髄腔内及び関節内を含むがこれらに限定されない)投与用の製剤としては、製剤を、意図するレシピエントの血液と等張にする、酸化防止剤、緩衝剤、静菌薬及び溶質を含有し得る水性及び非水性滅菌注射溶液;及び懸濁剤及び増粘剤を包含してもよい水性及び非水性滅菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単位用量又は複数回用量容器、例えば密封アンプル及びバイアルに入れて提供されてもよく、使用直前に滅菌液体担体(例えば、生理食塩水、注射用蒸留水)を添加するだけでよい凍結乾燥状態で保管してもよい。即時注射液及び懸濁液を、上記の種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製してもよい。
(00226)本明細書に記載の組成物を製剤化する別の方法は、本発明の生物活性剤を、水溶性を増強するポリマーに共役させる工程を伴う。好適なポリマーの例としては、限定するものではないが、ポリエチレングリコール、ポリ−(d−グルタミン酸)、ポリ−(l−グルタミン酸)、ポリ−(l−グルタミン酸)、ポリ−(d−アスパラギン酸)、ポリ−(l−アスパラギン酸)、ポリ−(l−アスパラギン酸)及びこれらのコポリマーが挙げられる。約5,000〜約100,000の分子量、約20,000〜約80,000の分子量を有するポリグルタミン酸を使用してもよく、約30,000〜約60,000の分子量も使用してもよい。ポリマーは、参照により本明細書に援用する米国特許第5,977,163号明細書に本質的に記載されているプロトコールを用いて、本発明のエポチロンの1つ以上のヒドロキシルにエステル結合によって共役される。具体的な共役部位としては、本発明の21−ヒドロキシ誘導体の場合には、炭素−21からのヒドロキシルが含まれる。他の共役部位としては、限定するものではないが、炭素3からのヒドロキシル及び/又は炭素7からのヒドロキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
(00227)好適な緩衝剤としては:酢酸と塩(1〜2質量/体積%);クエン酸と塩(1〜3質量/体積%);ホウ酸と塩(0.5〜2.5質量/体積%);及びリン酸と塩(0.8〜2質量/体積%)が挙げられる。適切な防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム(0.003〜0.03質量/体積%);クロロブタノール(0.3〜0.9質量/体積%);パラベン(0.01〜0.25質量/体積%)及びチメロサール(0.004〜0.02質量/体積%)が挙げられる。
(00228)本発明の生物活性剤は、粒子の形で提供されてもよい。いくつかの実施形態によると、粒子はコーティングによって囲まれたコアの中に治療剤を含有してもよい。治療剤は、粒子全体に分散されてもよい。治療剤は、粒子内に吸着されてもよい。粒子は、ゼロ次放出、一次放出、二次放出、遅延放出、持続放出、即時放出等、及びこれらの組み合わせを包含する任意の次数の放出動態であってもよい。粒子は、治療剤に加えて、侵食性、非侵食性、生分解性、若しくは非生分解性材料又はこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない、製薬及び医学の分野で日常的に使用される材料のいずれも包含してもよい。粒子は、本発明の生物活性剤を溶液又は半固体状態で含有するマイクロカプセルであってもよい。いくつかの実施形態によると、少なくとも1つの治療剤を全体的又は部分的に含有してもよい粒子は、微小粒子である。いくつかの実施形態によると、少なくとも1つの治療剤を全体的又は部分的に含有してもよい粒子は、ナノ粒子である。いくつかの実施形態によると、粒子は、事実上いかなる形状であることもできる。いくつかの実施形態によると、微小粒子技術を用いる本発明の生物活性剤の送達は、本発明の生物活性剤及び少なくとも1つの追加の治療剤をカプセル化する生物再吸収性ポリマー粒子を伴う。
(00229)別の実施態様によれば、治療剤は、ストリングで提供されてもよい。ストリングはコーティングによって囲まれたコア内に治療剤を含有してもよく、又は治療剤がストリング全体に分散されてもよく、又は治療剤がストリングに吸収されてもよい。ストリングは、ゼロ次放出、一次放出、二次放出、遅延放出、持続放出、即時放出等、及びこれらの任意の組み合わせを含む、任意の次数の放出動態であってもよい。ストリングは、治療剤に加えて、侵食性、非侵食性、生分解性、若しくは非生分解性材料又はこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない、製薬及び医学の分野で日常的に使用される材料のいずれも包含してもよい。
(00230)別の実施態様によれば、本発明の生物活性剤は、少なくとも1つのシートで提供されてもよい。シートは本発明の生物活性剤及び少なくとも1つの追加の治療剤を、コーティングによって囲まれたコア内に含有してもよく、又は本発明の生物活性剤及び少なくとも1つの追加の治療剤がシート全体に分散されてもよく、又は治療剤がシートに吸収されてもよい。シートは、ゼロ次放出、一次放出、二次放出、遅延放出、持続放出、即時放出等、及びこれらの任意の組み合わせを含む、任意の次数の放出動態であってもよい。シートは、本発明の生物活性剤及び少なくとも1つの追加の治療剤を治療剤に加えて、侵食性、非侵食性、生分解性、若しくは非生分解性材料又はこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない、製薬及び医学の分野で日常的に使用される材料のいずれも包含してもよい。
(00231)本発明の生物活性剤を送達するための粒子の製造においては、非生分解性ポリマー材料及び生分解性ポリマー材料のいずれも使用してもよい。かかるポリマーは、天然又は合成ポリマーであってもよい。ポリマーは、放出が望まれる期間に基づいて選択される。特に興味深い生体接着性ポリマーとしては、SawhneyらによってMacromolecules(1993)26,581−587に記載されている生体侵食性ヒドロゲルが挙げられ、この文献の教示を本願明細書に援用する。このポリマーとしては、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギナート、キトサン、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ(エチルメタクリラート)、ポリ(ブチルメタクリラート)、ポリ(イソブチルメタクリラート)、ポリ(ヘキシルメタクリラート)、ポリ(イソデシルメタクリラート)、ポリ(ラウリルメタクリラート)、ポリ(フェニルメタクリラート)、ポリ(メチルアクリラート)、ポリ(イソプロピルアクリラート)、ポリ(イソブチルアクリラート)、及びポリ(オクタデシルアクリラート)が挙げられる。いくつかの実施態様によると、生体接着性ポリマーは、ヒアルロン酸である。いくつかのこのような実施態様において、生体接着性ポリマーは、2.3%未満のヒアルロン酸を包含する。
II.送達システム
(00232)別の態様によると、本発明は、治療量の実質的に純粋な形態のニモジピン及び少なくとも1つの追加の治療剤を含む組成物を送達するための送達システムを提供し、該組成物は、疾患、障害、症状又は負傷から生じるDCI、血管造影血管攣縮、皮質拡延性虚血及び/又は微小血栓症の発生又は重篤度を予防又は低下するために脳動脈に局所送達される。例えば、組成物を脳室に送達した後、CSFの流れによってクモ膜下腔の少なくとも1つの大脳動脈に運んで薬剤の局所放出をもたらし、DCI、血管造影血管攣縮、皮質拡延性虚血及び微小血栓症のうち少なくとも1を治療すること、及び改良された臨床結果を導くことができる。送達部位は少なくとも1つの脳室内である。これは、カテーテルを脳室に挿入し、該カテーテルを通じて医薬組成物を注入し、カテーテルの端部から脳室内に局所的に放出(eminate)することを意味する。
(00233)いくつかの実施形態によると、治療剤が制御放出システムに含有されてもよい。薬物の作用を長期化するために、薬物の吸収を遅らせることがしばしば望ましい。これは、水溶性が低い結晶又はアモルファス材料の液体懸濁液の使用によって達成されてもよい。その場合、薬物の吸収速度は薬物の溶解速度に依存し、溶解速度は結晶サイズ及び結晶形態に依存する。例えば、いくつかの実施態様によれば、高粘度基剤構成成分、例えばイソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)を含むSABER(商標)送達システムを用いて、本発明の生物活性剤の制御放出が提供される。(米国特許第5,747,058号明細書及び米国特許第5,968,542号明細書参照、これらを参照により本明細書に援用する)。高粘度SAIBを薬物、生体適合性賦形剤及び他の添加剤と共に製剤化した場合、得られる製剤は、標準的な注射器と針で容易に注入するのに十分な液体である。SABER(商標)製剤の注入後、賦形剤が拡散して離れ、粘性のデポ剤が残る。
(00234)用語「制御放出」は、製剤からの薬物放出の方法及びプロファイルが制御されている任意の薬物含有製剤を指すことを意図する。これは、非即時放出だけでなく即時放出製剤も意味し、非即時放出製剤としては、限定するものではないが、持続放出性及び遅延放出性製剤が挙げられる。用語「持続放出性」(「徐放性」とも呼ばれる)は、本明細書においてその従来の意味で用いられ、長期間にわたる薬物の漸進的な放出を提供し、必ずしも必要ではないが好ましくは、長期にわたって薬物の実質的に一定の血中レベルをもたらす薬物製剤を指す。あるいは、非経口投与された薬物形態の遅延吸収が、薬物を油性ビヒクルに溶解又は懸濁することによって達成される。用語「遅延放出」は、本明細書においてその一般的な意味で用いられ、製剤の投与とその製剤からの薬物の放出の間に時間の遅れがある薬物製剤を意味する。「遅延放出」は、長時間にわたる薬物の徐放を伴っても伴わなくてもよく、従って「持続放出」であってもなくてもよい。
(00235)長期持続放出性製剤の使用は、慢性症状の治療に特に好適な場合がある。用語「長期」放出は、本明細書で使用するとき、インプラントが治療レベルの活性成分を少なくとも7日間、好ましくは約30〜約60日間送達するように構成及び配置されることを意味する。長期持続放出性製剤は、当業者に周知であり、上記の放出システムのいくつかを包含する。
(00236)マイクロカプセル化プロセス及び製品の例;エマルションベースの微小粒子の製造方法;エマルションベースの微小粒子及びその製造方法;抽出速度が調節可能な溶媒抽出マイクロカプセル化;溶媒及び塩によるマイクロカプセル化プロセス;微小粒子を製造するための連続二重エマルションプロセス;微小粒子特性を調整する乾燥方法、ポリマーブレンドからの制御放出システム;異なる非繰り返し単位を有するポリマーを含むポリマー混合物及びその製造及び使用方法;並びに微小粒子を調製するエマルションベースのプロセス及び該プロセスに使用するワークヘッドアセンブリが、限定するものではないが、米国特許第5,407,609号明細書(発明の名称Microencapsulation Process and Products Thereof)、米国特許出願公開第US2007−0190154A1号明細書(発明の名称Method for the production of emulsion−based microparticles)、米国特許出願公開第US2007−0207211A1号明細書(発明の名称Emulsion−based microparticles and methods for the production thereof)、米国特許出願公開第US2010−0063179A1号明細書(発明の名称Solvent Extraction Microencapsulation With Tunable Extraction Rates)、米国特許出願公開第US2010−0291027A1号明細書(発明の名称Hyaluronic Acid(HA)Injection Vehicle)、米国特許出願公開第US2010−0069602A1号明細書(発明の名称Microencapsulation Process With Solvent And Salt)、米国特許出願公開第US2009−0162407A1号明細書(発明の名称Process For Preparing Microparticles Having A Low Residual Solvent Volume);米国特許出願公開第US2010−0189763A1号明細書(発明の名称Controlled Release Systems From Polymer Blends);米国特許出願公開第US2010−0216948A1号明細書(発明の名称Polymer Mixtures Comprising Polymers Having Different Non−Repeating Units And Methods For Making And Using Same);米国特許出願公開第US2007−0092574A1号明細書(発明の名称「Controlled release compositions」);米国特許出願公開第12/692,029号明細書(発明の名称「Drying Methods for Tuning Microparticle Properties」);米国特許出願公開第US2011−0204533A1号明細書(発明の名称「Emulsion Based Process for Preparing Microparticles and Workhead for Use with Same」);及び米国特許出願公開第US2011−0236497A1号明細書(発明の名称「Composition and Methods for Improved Retention of a Pharmaceutical Composition at a Local Administration Site」)に開示及び記載されている。これらの特許のそれぞれの内容は、参照によりその全体を本明細書に援用する。
(00237)いくつかの実施形態によると、本発明は、局所的治療効果を促進するために半固体、生分解性、生体適合性送達システム又は体内若しくは身体上に注入、沈着若しくは移植するための半固体、生分解性、生体適合性送達システムに分散及び懸濁された生分解性、生体適合性多粒子若しくはミクロスフェアを利用した、送達システムを含む。用語「生分解性」は、本明細書で使用するとき、簡単な化学プロセスによって、体の酵素の作用によって又は体内の他の類似機序によって時間の経過とともに能動的に又は受動的に分解する材料を指す。用語「生体適合性」は、本明細書で使用するとき、臨床的リスク/ベネフィット評価に基づいて治療終了前にデバイスの除去を必要とする臨床的に関連する組織刺激又は壊死を局所部位において引き起こさないことを指す。用語「体内の」、「空隙容積」、「切除ポケット」、「陥凹」、「注入部位」、又は「沈着部位」は、本明細書で使用するとき、身体の全ての組織を制限なく包含することを意味し、その非限定的な例として、疾患若しくは病状に対する臨床評価、治療又は生理的反応の作用によって、注入、外科的切開、腫瘍若しくは組織除去、組織損傷、膿瘍形成からそこに形成された空間、又は任意の他の類似の空洞、空間、又はポケットを指す場合がある。
(00238)いくつかの実施形態によると、半固体送達システムは、生体適合性、生分解性、粘性半固体を部分的又は全体的に含み、この半固体はヒドロゲルを含む。用語「ヒドロゲル」は、ゼラチン状又はゼリー様の塊を生成するために必要な水性成分を含有する固体、半固体、擬塑性又は塑性構造をもたらす物質を指す。ヒドロゲルは相当量のH2Oを取り込んで保持し、その量は最終的には水性環境の存在下で平衡含量に達する。一実施態様によると、モノオレイン酸グリセリル(以下GMOと呼ぶ)は、意図した半固体送達システム又はヒドロゲルである。しかし、粘性/剛性について類似の物理的/化学的特性を有する多くのヒドロゲル、ポリマー、炭化水素組成物及び脂肪酸誘導体が、半固体送達系として機能する可能性がある。
(00239)一実施態様によると、ゲルシステムはGMOをその融点(40〜50℃)よりも高温に加熱することによって、及び温かい水性緩衝剤又は電解液、例えば、リン酸緩衝液又は生理食塩水を添加することによって製造され、その結果三次元構造を生じる。水性緩衝剤は、他の水溶液又は半極性溶媒を含有する組み合わせから構成されてもよい。
(00240)GMOは主に脂質性ヒドロゲルを与え、親油性材料を組み込む能力を有する。用語「親油性」は、本明細書で使用するとき、極性又は水性環境と比較して無極性環境に対する親和性を好むか又は所有することを指す。GMOは、更に、親水性化合物を取り込み及び送達する内部水性チャネルを提供する。用語「親水性」は、本明細書で使用するとき、水のような極性物質に対する親和性を有する材料又は物質を指す。室温(−25℃)において、ゲルシステムは広範囲の粘度測定値を含む異なる相を示し得ることが認識されている。
(00241)一実施態様によると、2つのゲルシステム相が、それらの特性により室温及び生理学的温度(約37℃)及びpH(約7.4)で用いられる。2つのゲルシステム相内で、第1相は、約5%〜約15%のH2O含量及び約95%〜約85%のGMO含量のラメラ相である。ラメラ相は、容易に操作、流し込み及び注入できる適度に粘性な流体である。第2相は、約15%〜約40%のH2O含量及び約85%〜60%のGMO含量からなる立方相である。これは、約35質量%〜約40質量%の平衡含水量を有する。用語「平衡含水量」は、本明細書で使用するとき、過剰な水の存在下での最大含水量を指す。従って、立方相は、約35質量%〜約40質量%で水を取り込む。立方相は、高度に粘性である。粘度は、ブルックフィールド粘度計によって測定した場合、1,200,000センチポアズ(cp)を超え;ここで、1,200,000cpは、ブルックフィールド粘度計のカップとボブの構成によって得られる粘度の最大測定値である。いくつかのこのような実施態様において、本発明の生物活性剤は、系が持続的な連続送達を提供するように半固体に取り込まれてもよい。そのような一部の実施態様において、他の治療剤、生物学的活性剤、薬物、医薬及び不活性剤を、体内で種々の放出速度で局所的な生物学的、生理学的、又は治療的効果を与えるように半固体に組み込んでもよい。
(00242)いくつかの実施態様によると、別の半固体、変性製剤及び製造方法が用いられ、半固体の親油性が変更されるか、又は別の方法で、半固体内に含有される水性チャネルが変更される。従って、種々の濃度の種々の治療薬が、異なる速度で半固体から拡散してもよく、又は半固体の水性チャネルを介して長期にわたって半固体から放出されてもよい。親水性物質を用いて、水性構成成分の粘度、流動性、表面張力又は極性を変更することによって半固体の粘稠度又は治療剤放出を変更してもよい。例えば、単結合でなく脂肪酸部分の炭素9及び炭素10の二重結合を除いてGMOと構造的に同一のモノステアリン酸グリセリル(GMS)は、加熱及び水性構成成分の添加時にGMOが起こするようなゲル化を起こさない。しかし、GMSが界面活性剤であることから、GMSは、約20質量/質量%までH2Oに混和できる。用語「界面活性剤」は、本明細書で使用するとき、限られた濃度でH2Oに混和できる表面活性剤並びに極性物質を指す。加熱及び撹拌時に、80%H2O/20%GMSの組み合わせがハンドローションに似た粘稠度を有する塗り広げ可能なペーストを生成する。このペーストを、次に、上記の高粘度を有する立方相ゲルを形成するように融解したGMOと合わせる。
(00243)いくつかの実施態様によると、水性構成成分を変更するために、市販のGelfoam(商標)のような加水分解ゼラチンを使用する。約6.25質量%〜12.50質量%の濃度のGelfoam(商標)を、約93.75質量%〜87.50質量%の濃度のH2O又は他の水性緩衝剤中に入れてもよい。加熱及び撹拌すると、H2O(又は他の水性緩衝剤)/Gelfoam(商標)の組み合わせが濃厚なゼラチン状物質を生成する。得られた物質をGMOと合わせると、形成された生成物は膨潤して、ニートのGMOゲル単独と比べて展性の低い高粘度で半透明のゲルを形成する。
(00244)いくつかの実施態様によると、薬剤可溶化を助けるための水性構成成分の変更にポリエチレングリコール(PEG)を使用してもよい。約0.5質量%〜40質量%の濃度のPEG(PEGの分子量によって異なる)を、約99.5質量%〜60質量%のH2O又は他の水性緩衝液に入れることができる。加熱及び撹拌すると、H2O(又は他の水性緩衝剤)/PEGの組み合わせが粘性液体〜半固体物質を生成する。得られた物質をGMOと合わせ、それによって、そのように形成された生成物が膨潤し、高粘性のゲルを形成する。
(00245)いくつかの実施形態によると、治療剤は、おそらく二相式の拡散によって半固体から放出される。第1相は、例えば、親油性膜内に含有され、そこから水性チャネルに拡散する親油性薬剤を伴う。第2相は、水性チャネルから外部環境への薬物の拡散を伴う。薬物は、親油性であるため、提案した脂質二層構造内のGMOゲルの内側に自ずと配向する場合がある。従って、約7.5質量%を超える薬物をGMOに組み込むことにより、三次元構造の完全性の喪失を引き起こし、それによってゲルシステムが半固体立方相をそれ以上維持せず、粘性のラメラ相液体に戻る。別の実施態様によると、約1質量%〜約45質量%の治療剤を、正常な三次元構造を破損することなく生理的温度でGMOゲルに組み込む。結果として、このシステムは、薬物投与量の柔軟性を有意に増大することができる。送達システムは展性であることから、体内の壁、空間、又は他の空隙の輪郭に接着及び適合するだけでなく存在する全ての空隙を完全に充填するように、移植部位(例えば、脳動脈又はクモ膜下腔に隣接して)に送達され、該部位で操作されてもよい。送達システムは、移植部位全体への薬物分布及び均一な薬物送達を確実にする。空間内(例えばクモ膜下腔であるがこれに限定されない)での送達システムの送達及び操作の容易性は、半固体送達装置によって促進される。半固体送達装置は、送達システムの標的を定めた制御送達を促進する。
(00246)一実施形態によると、多粒子構成成分は、ノンパレイル(nonpareil)、ペレット、結晶、凝集体、ミクロスフェア、又はナノ粒子を包含するがこれらに限定されない固体構造の製造に利用される生体適合性、生分解性、ポリマー又は非ポリマーシステムで構成される。いくつかの実施形態によると、粒径は約30μm〜約80μmである。
(00247)別の実施形態によると、多粒子構成成分は、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)を含む。PLGAは、体内での制御及び長期間の治療剤送達に使用される生分解性ポリマー材料である。かかる送達システムは、頻繁な定期的全身投与と比較して治療効果の増強及び全体的毒性の低下を与える。いくつかの実施形態によると、異なるモル比のモノマーサブユニットからなるPLGAシステムは、ポリマー分解速度の変更を通じて目標とする治療剤送達に適応するため、精密な放出プロファイルの操作において大きな柔軟性を促進する。一実施形態によると、PLGA組成物は生体適合性であり、生分解時に生体適合性を維持するように十分に純粋である。別の実施形態によると、PLGAポリマーは、治療剤又は薬物をその中に封入したミクロスフェアになるように設計及び構成され、治療剤は以下に更に詳細に記載する方法によって後に放出される。いくつかのこのような実施形態によると、治療剤はカルシウムチャネル拮抗薬である。いくつかのこのような実施形態によると、治療剤はニモジピンである。
(00248)いくつかの実施形態によると、多粒子構成成分はポリ(D,L−乳酸−コ−カプロラクトン)で構成される。この生分解性ポリマー材料は、体内で、PLGAポリマーの薬物放出機序と同様の薬物放出機序により治療剤を制御及び長期放出するために使用できる。一実施形態によると、多粒子ミクロスフェアはGMSのような生分解性及び/又は生体適合性非ポリマー材料を用いても製造される。
(00249)いくつかの実施形態によると、多粒子構成成分は、同一又は異なる薬物物質を有する同一組成物のポリマー、同一又は異なる薬物物質を有する異なるポリマー、又は薬物を含有しないか同一薬物、異なる薬物、若しくは複数の薬物物質を含有する多層化プロセスを用いた、多粒子構成成分のカプセル化又は被覆に使用される方法によって更に変性される。これは、単一又は複数の薬剤の広範な薬物放出プロファイルを同時に有する多層(カプセル化)多粒子システムの製造を可能にする。別の実施形態によると、多粒子からの物理的な薬物拡散速度を制御する被覆材料を単独で又は上記実施形態と合わせて利用してもよい。
(00250)あるいは、本発明はPLGAを利用する送達システムを提供する。PLGAポリマーはエステル結合を含有し、この結合は加水分解不安定性である。用語「不安定性」は、本明細書で使用するとき、より分解を受けやすいことを指す。H2OがPLGAポリマーに浸透すると、そのエステル結合が加水分解され、水溶性のモノマーがPLGAポリマーから離れ、その結果封入された薬物の長時間にわたる物理的放出を促進する。いくつかのこのような実施形態によると、他の分類の合成生分解性、生体適合性ポリマーを体内での制御された長時間の治療剤送達に使用してもよく、ポリ無水物、ポリ(ホスファート)、ポリジオキサノン、セルロース、アクリルポリマーが、非限定例として挙げられる。いくつかのこのような実施形態によると、非ポリマー材料を体内での制御された長時間の治療剤送達に使用してもよく、例えば限定するものではないが、ステロール、スクロース脂肪酸エステル、脂肪酸、及びコレステリルエステルが非限定例として挙げられる。
(00251)あるいは、本発明は、半固体送達システムであって、治療剤の局所送達用ビヒクルとして作用し、親油性、親水性又は両親媒性(amphophilic)の固体又は半固体物質を含み、その融点よりも高温に加熱された後で温暖な水性構成成分を包含して、含水量に基づく可変粘度のゼラチン状組成物を生成する、半固体送達システムを提供する。治療剤は、混合及び半固体システムの形成の前に、溶融した親油性構成成分又は水性緩衝剤構成成分内に組み込み及び分散される。ゼラチン状組成物は、その後の配置、又は沈着のために半固体送達装置内に置かれる。ゲルシステムは、展性であることから、半固体送達装置を介して移植部位に容易に送達されて該部位内で操作され、そこで移植部位、空間、又は他の体内の空隙の輪郭に接着及び適合するだけでなく存在する全ての空隙を完全に充填する。あるいは、生体適合性ポリマー又は非ポリマーシステムで構成される多粒子構成成分を利用して、捕捉した治療剤をその中に有するミクロスフェアを製造する。最終的な加工方法に続いてミクロスフェアを半固体システムに組み込み、続いて、そこから移植部位又は類似空間へ容易に送達されるように半固体送達装置内に配置し、それによってその後治療剤が薬物放出機序によって放出される。
(00252)いくつかの実施形態によると、送達システム内に含有される本発明の組成物の薬物負荷量は約25質量%〜約75質量%の範囲である。一実施形態によると、治療有効量の本発明の生物活性剤は、投与から少なくとも約1日後〜少なくとも約30日後に放出される。
併用
(00253)本発明の方法によると、本発明の生物活性剤は、少なくとも1つの追加の治療剤と共に製剤化されてもよい。本発明の方法によると、本発明の生物活性剤と少なくとも1つの他の医薬品との組み合わせを一緒に投与するとき、そのような投与は、逐次的であることも同時であることもできる。逐次投与の場合、本発明の生物活性剤及び追加の医薬品は、いかなる順序でも投与できる。
(00254)「共投与」又は「併用投与」等は、本明細書で使用するとき、単一患者への選択された治療剤の投与を包含し、該剤が必ずしも同一の投与経路によって又は同一時間に投与されるとは限らない治療レジメンを包含する。
(00255)用語「医薬混合剤」は、本明細書で使用するとき、1つを超える活性成分を混合又は組み合わせた結果得られる製品を意味し、活性成分の多剤混合薬及び非多剤混合薬の両方を包含する。用語「多剤混合薬」は、活性成分、例えば本発明の生物活性剤及び共薬剤の両方を、単一体又は単一調剤の形態で患者に同時に投与することを意味する。用語「非多剤混合薬」は、活性成分、例えば本発明の生物活性剤及び共薬剤の両方を、別個の形で、同時に、並行して、又は特定の時間制限なく逐次的に、患者に投与することを意味し、ここで、そのような投与は、患者の体内において治療有効レベルの2つの生物活性剤を提供する。非多剤混合薬は、例えば、3つ又はそれ以上の活性成分を投与するカクテル治療にも応用される。
III.方法
(00256)1つの態様によると、本明細書に開示されるのは、微小粒子にカプセル化された実質的に純粋な多形形態の生物活性剤を製造するプロセスであり、該プロセスは:(a)実質的に純粋な結晶形態の生物活性剤を提供する工程;(b)前記実質的に純粋な結晶形態の生物活性剤をポリマー溶液に添加し、それによって生物活性剤とポリマー溶液との混合物を作製する工程;(c)前記混合物を均質化して分散相を形成する工程;(d)前記分散相を、連続プロセス媒体を含む連続相と混合し、それによって前記生物活性剤を含むエマルションを形成する工程;(e)前記実質的に純粋な多形形態の生物活性剤を含む微小粒子を形成及び抽出する工程;及び(f)前記微小粒子を乾燥する工程を含む。ポリマー溶液が、分散相に油/水型エマルションを形成する有機溶媒中にポリマーを含む場合、分散相を連続相と混合することで、二重エマルション(すなわち、水/油/水型エマルション)が得られることが理解及び意図される。ポリマー溶液が水のような水性溶媒中にポリマーを含む場合、分散相を連続相と混合したときに、単一エマルションのみが生成する。
(00257)1つの態様によると、連続プロセス媒体は、界面活性剤及びポリマー溶液に使用する溶媒で飽和された生物活性剤を含む。
(00258)更なる態様によると、上記プロセスのポリマー溶液は、ポリマー及び溶媒を含む。開示されたポリマーは、一態様において、ポリラクチド、ポリラクチド−コ−グリコリド、ポリ(オルトエステル)、及びポリ(無水物)を含むことが理解され、本明細書において意図される。一態様において、ポリラクチド−コ−グリコリドは、ラクチド対グリコリドの比が85:15、75:25、65:35、又は50:50であり得る。更なる態様において、ポリマーは8515 DLG 6A、8515 DLG 5A、8515 DLG 4.5E、88515 DLG 5E、515 DLG 7A、7525 DLG 7A、7525 DLG 7E、7525 DLG 5E、6535 DLG 5E、6353 DLG 2E、6535 DLG 4A、5050 DLG 4A、5050 DLG 2A、及び2000MW DLPLを含む。別の態様において、溶媒は酢酸エチル又はジクロロメタンを含むことができる。
(00259)別の態様によると、本明細書に開示するプロセスは微小粒子を10〜48時間にわたって乾燥する工程を含む。
(00260)最終生成物の安定性及び純度は、一般的に、分子量の増大と共に、従ってポリマーの粘度の増大と共に向上することが理解され、本明細書で意図される。従って、ある分子量の6535DLGポリマーから、分子量の大きい6535DLGポリマーに変えると、最終生成物の純度が向上すると考えられる。同様に、使用するポリマーによっては、ポリマー溶液中の溶媒を異なる溶媒に変更することでも純度が向上し得る。例えば、ジクロロメタンから酢酸エチルへの変更により、純度を向上できる。純度は微小粒子の乾燥速度を遅くすることによって向上できることが更に理解される。
(00261)別の態様によると、本明細書の開示は、望ましい場合に特定の多形体を他の形態よりも優先して標的として選択することも提供する。一態様において、安定な結晶形態の多形体よりも純粋なアモルファスの多形形態が望ましい場合、ポリマーのラクチド対グリコリド比を低下することができる。例えば、6535DLGから5050DLGへの変更で、最終生成物の多形形態を、ニモジピンの変性1からアモルファス形態へと変更できる。
(00262)別の態様によると、乾燥時間を低速化することによって、純度を向上することに加え、最も安定な形態の多形体の選択が、乾燥速度が低速になるにつれて選択される。例えば、酢酸エチル中で5050GLG4Aポリマーから調製した微小粒子の乾燥を14時間から24〜48時間に低速化することによって、最終生成物はアモルファス形態から変性IIに移り、最終的には変性Iになる。ポリマー及びポリマー溶液に使用する溶媒を調節し、乾燥時間を所望の結果が得られるように調節することによって、任意の最終生成物を得ることができることが理解され、本明細書で意図される。
(00263)別の態様によると、本発明は、ヒト被験者において、突然の脳損傷による遮断のリスクのあるクモ膜下腔の少なくとも1つの大脳動脈を治療する方法であって、(a)(i)実質的に純粋な多形形態のニモジピンを治療量含有する微小粒子製剤であって、該微小粒子製剤が均一粒径分布の複数の微小粒子を含み、前記多形体が各粒子全体に分散し、前記治療量が遅発性合併症の治療に有効である、微小粒子製剤、及び(ii)薬学的に許容可能な担体、を含む、流動性持続放出性微小粒子組成物を提供する工程;並びに(b)医薬組成物を脳室に局所投与し、クモ膜下腔に前記多形体を放出する前に、前記微小粒子製剤が脳室の脳脊髄液(CSF)からクモ膜下腔の脳脊髄液(CSF)内に流れるようにする工程であって、前記治療剤が、望ましくない副作用を引き起こす量で体循環に入ることなく、クモ膜下腔の少なくとも1つの大脳動脈と接触し、その周辺を流れる工程、を含む方法、を提供する。
(00264)突発的脳損傷に関連する遅発性合併症としては、限定するものではないが、後発性脳虚血、脳内血腫、心室内出血、発熱、血管造影血管攣縮、微小血栓、皮質拡延性虚血(CSI)、行動障害、神経障害、神経細胞死が挙げられる。いくつかの実施形態によると、突発性脳損傷はクモ膜下出血である。
(00265)いくつかの実施形態によると、医薬組成物は、クモ膜下腔において脳損傷の部位から又は脳損傷の部位に近接する血管内へ約0.001mm〜約10mmの範囲内、約0.010mm〜約10mmの範囲内、約0.020mm〜約10mmの範囲内、約0.030mm〜約10mmの範囲内、約0.040mm〜約10mm、0.050mm〜約10mmの範囲内、約0.060mm〜約10mmの範囲内、約0.070mm〜約10mmの範囲内、約0.080mm〜約10mmの範囲内、約0.090mm〜約10mmの範囲内、約0.1mm〜約10mmの範囲内、約0.2mm〜約10mmの範囲内、約0.3mm〜約10mmの範囲内、約0.4mm〜約10mmの範囲内、約0.5mm〜約10mmの範囲内、約0.6mm〜約10mmの範囲内、約0.7mm〜約10mmの範囲内、約0.8mm〜約10mmの範囲内、約0.9mm〜約10mmの範囲内、約1.0mm〜約10mmの範囲内、約1.1mm〜約10mmの範囲内、約1.2mm〜約10mmの範囲内、約1.3mm〜約10mmの範囲内、約1.4mm〜約10mmの範囲内、約1.5mm〜約10mmの範囲内、約1.6mm〜約10mmの範囲内、約1.7mm〜約10mmの範囲内、約1.8mm〜約10mmの範囲内、約1.9mm〜約10mmの範囲内、約2.0mm〜約10mmの範囲内、約2.1mm〜約10mmの範囲内、約2.2mm〜約10mmの範囲内、約2.3mm〜約10mmの範囲内、約2.4mm〜約10mmの範囲内、約2.5mm〜約10mmの範囲内、約2.6mm〜約10mmの範囲内、約2.7mm〜約10mmの範囲内、約2.8mm〜約10mmの範囲内、約2.9mm〜約10mmの範囲内、約3.0mm〜約10mmの範囲内、約3.1mm〜約10mmの範囲内、約3.2mm〜約10mmの範囲内、約3.3mm〜約10mmの範囲内、約3.4mm〜約10mmの範囲内、約3.5mm〜約10mmの範囲内、約3.6mm〜約10mmの範囲内、約3.7mm〜約10mmの範囲内、約3.8mm〜約10mmの範囲内、約3.9mm〜約10mmの範囲内、約4.0mm〜約10mmの範囲内、約4.1mm〜約10mmの範囲内、約4.2mm〜約10mmの範囲内、約4.3mm〜約10mmの範囲内、約4.4mm〜約10mmの範囲内、約4.5mm〜約10mmの範囲内、約4.6mm〜約10mmの範囲内、約4.7mm〜約10mmの範囲内、約4.8mm〜約10mmの範囲内、約4.9mm〜約10mmの範囲内、約5.0mm〜約10mmの範囲内、約5.1mm〜約10mmの範囲内、約5.2mm〜約10mmの範囲内、約5.3mm〜約10mmの範囲内、約5.4mm〜約10mmの範囲内、約5.5mm〜約10mmの範囲内、約5.6mm〜約10mmの範囲内、約5.7mm〜約10mmの範囲内、約5.8mm〜約10mmの範囲内、約5.9mm〜約10mmの範囲内、約6.0mm〜約10mmの範囲内、約6.1mm〜約10mmの範囲内、約6.2mm〜約10mmの範囲内、約6.3mm〜約10mmの範囲内、約6.4mm〜約10mmの範囲内、約6.5mm〜約10mmの範囲内、約6.6mm〜約10mmの範囲内、約6.7mm〜約10mmの範囲内、約6.8mm〜約10mmの範囲内、約6.9mm〜約10mmの範囲内、約7.0mm〜約10mmの範囲内、約7.1mm〜約10mmの範囲内、約7.2mm〜約10mmの範囲内、約7.3mm〜約10mmの範囲内、約7.4mm〜約10mmの範囲内、約7.5mm〜約10mmの範囲内、約7.6mm〜約10mmの範囲内、約7.7mm〜約10mmの範囲内、約7.8mm〜約10mmの範囲内、約7.9mm〜約10mmの範囲内、約8.0mm〜約10mmの範囲内、約8.1mm〜約10mmの範囲内、約8.2mm〜約10mmの範囲内、約8.3mm〜約10mmの範囲内、約8.4mm〜約10mmの範囲内、約8.5mm〜約10mmの範囲内、約8.6mm〜約10mmの範囲内、約8.7mm〜約10mmの範囲内、約8.8mm〜約10mmの範囲内、約8.9mm〜約10mmの範囲内、約9.0mm〜約10mmの範囲内、約9.1mm〜約10mmの範囲内、約9.2mm〜約10mmの範囲内、約9.3mm〜約10mmの範囲内、約9.4mm〜約10mmの範囲内、約9.5mm〜約10mmの範囲内、約9.6mm〜約10mmの範囲内、約9.7mm〜約10mmの範囲内、約9.8mm〜約10mm、又は約9.9mm〜約10mmの範囲内で送達される。
(00266)いくつかの実施形態によると、医薬組成物は、側脳室、第三脳室、若しくは第四脳室の1つ又は脳のクモ膜下槽に挿入されたカテーテル又はチューブを通して脳室に注入される。
(00267)別の実施形態によると、薬学的に許容可能な担体は徐放性固体化合物を含む。1つのこのような実施形態によると、本発明の生物活性剤は徐放性固体化合物に埋め込まれるか又は徐放性固体化合物上に被覆される。更に別の実施形態によると、薬学的に許容可能な担体は、本発明の生物活性剤を含有する徐放性微小粒子を含む。別の実施形態によると、例えば、該微小粒子はポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)を含有する。別の実施形態によると、薬学的に許容可能な担体は、生分解性ヒドロゲルのような、ゲル化合物である。
(00268)別の実施形態によると、損傷した脳に医薬組成物を投与することで、食欲を改善できる。
(00269)別の実施形態によると、損傷した脳に医薬組成物を投与することで、片側不全麻痺、片側感覚消失、失行、運動失調又は不全麻痺のような局所神経学的変化の症状を改善できる。
(00270)別の実施形態によると、本発明の医薬組成物は、局所的治療効果を及ぼすことができる。あるいは、本発明の医薬組成物は、脳全体に拡散的又は全般的治療効果を及ぼすことができる。
(00271)一実施形態によると、実質的に純粋な多形形態のニモジピンを含む組成物を血管造影血管攣縮を有するか又は血管造影血管攣縮のリスクのある被験者に治療有効量投与して、血管造影血管攣縮及びその後のDCIの発症を治療する。治療有効量の実質的に純粋な多形形態のニモジピンは、定義したように、血管造影血管攣縮に関係する1つ以上の症状、好ましくは、DCIのような血管造影血管攣縮から生じ得る脳損傷を包含する症状を、全て寛解、低減又は排除する量である。脳損傷は、梗塞サイズを測定する医用画像技術を用いて、解剖学的に測定してもよい。あるいは、又は同時に、脳損傷は、被験者の認知、感覚若しくは運動又はその他の技能に関して機能面から測定してもよい。別の実施形態によると、実質的に純粋な多形形態のニモジピンを含む組成物は、血管造影血管攣縮を治療するため、血管造影血管攣縮を有するか又はそのリスクのある被験者に投与有効量を投与される。別の実施形態によると、本発明は、治療有効量の実質的に純粋な多形形態のニモジピンを、微小粒子の上又は中に含む持続放出性微小粒子の懸濁液を含む組成物を脳室に投与する工程を含む、血管造影血管攣縮及び/又はDCIを治療、予防又は軽症化する方法を提供する。
(00272)別の実施形態によると、本発明の方法は、クモ膜下腔へのCSF流によって運ばれる微小粒子の中又は上に実質的に純粋な多形形態のニモジピンを含む組成物を脳室内に投与し、血管造影血管攣縮の部位及び/又は微小血栓症及び皮質拡延性虚血に関与し、それ故DCIの重要な潜在的媒介物である血管が位置するクモ膜下腔の他の部位に薬物物質を送達する工程を含む。微小粒子は脳に局所的に送達されることから、血管造影血管攣縮の予防に必要な投薬量は、より高い全身用量の投与を妨げる主な副作用、例えば低血圧症を低減、予防又は回避するのに適した量であろう。
(00273)一実施形態によると、本発明の方法は、クモ膜下腔へのCSF流によって標的とする脳動脈まで運ばれる複数の微小粒子の形態で実質的に純粋な多形形態のニモジピンを脳室に投与する工程を含む。これらの実施形態において、送達の部位は少なくとも1つの脳室内である。これは、カテーテルを脳室に挿入し、該カテーテルを通じて医薬組成物を注入し、カテーテルの端部から脳室内に局所的に放出することを意味する。その後、CSF循環が医薬組成物を投与部位から脳室へと運ぶことができる。注入が側脳室の場合、その経路は、側脳室からモンロー孔を通って第三脳室まで、シルビウス水道を通って第四脳室まで、第四脳室外側口又は正中口から出て脊髄辺縁槽(perimedullary cistern)内へ、続いて頭蓋のクモ膜下腔の他の槽へと辿る。CSFの循環は、しばしばSAH後に低速になり、クモ膜下腔は凝血を含有する。従って、医薬組成物は凝血に捕捉される場合があり、それによって組成物からの薬理学的剤の局所的放出が行われ、そこで隣接する動脈及び脳に薬理学的影響を及ぼす。
(00274)別の実施形態によると、ヒト被験者の脳血管攣縮を治療する方法は、(a)(i)図11に示す粉末X線回折(XRPD)スペクトルと実質的に同じ粉末X線回折(XRPD)スペクトルを有する実質的に純粋な結晶形態Iのニモジピンを治療量含む微小粒子製剤であって、該微小粒子製剤が均一粒径の複数の微小粒子を含み、前記治療量が大脳動脈狭窄の遅発性合併症の治療に有効である、微小粒子製剤、及び(ii)医薬用担体を含む、流動性持続放出性微小粒子組成物を提供する工程;及びb)前記医薬組成物を、血管攣縮のリスクのある大脳動脈に最も近いクモ膜下槽への外科的注入によってヒト被験者に局所的に投与し、その結果前記組成物が、望ましくない副作用を引き起こす量で体循環に入ることなく、大脳動脈の周辺を流れる工程;を含み、前記医薬組成物が局在的な薬理学的作用を生じ;前記治療量が、脳血管攣縮の治療に有効である、方法である。いくつかの実施形態によると、医薬組成物は、治療量の実質的に純粋な結晶形態1のニモジピンの局所放出を促進する凝血中に捕捉されている。
(00275)いくつかの実施形態によると、担体はゲル化合物である。いくつかの実施形態によると、担体は徐放性固体化合物である。
(00276)いくつかの実施形態によると、工程(b)における血管攣縮のリスクのある大脳動脈に最も近い槽は、大脳動脈から約0.001mm〜約10mmである。いくつかの実施形態によると、医薬組成物は、大脳動脈から約0.001mm〜約10mmの範囲内、約0.010mm〜約10mmの範囲内、約0.020mm〜約10mmの範囲内、約0.030mm〜約10mmの範囲内、約0.040mm〜約10mm、0.050mm〜約10mmの範囲内、約0.060mm〜約10mmの範囲内、約0.070mm〜約10mmの範囲内、約0.080mm〜約10mmの範囲内、約0.090mm〜約10mmの範囲内、約0.1mm〜約10mmの範囲内、約0.2mm〜約10mmの範囲内、約0.3mm〜約10mmの範囲内、約0.4mm〜約10mmの範囲内、約0.5mm〜約10mmの範囲内、約0.6mm〜約10mmの範囲内、約0.7mm〜約10mmの範囲内、約0.8mm〜約10mmの範囲内、約0.9mm〜約10mmの範囲内、約1.0mm〜約10mmの範囲内、約1.1mm〜約10mmの範囲内、約1.2mm〜約10mmの範囲内、約1.3mm〜約10mmの範囲内、約1.4mm〜約10mmの範囲内、約1.5mm〜約10mmの範囲内、約1.6mm〜約10mmの範囲内、約1.7mm〜約10mmの範囲内、約1.8mm〜約10mmの範囲内、約1.9mm〜約10mmの範囲内、約2.0mm〜約10mmの範囲内、約2.1mm〜約10mmの範囲内、約2.2mm〜約10mmの範囲内、約2.3mm〜約10mmの範囲内、約2.4mm〜約10mmの範囲内、約2.5mm〜約10mmの範囲内、約2.6mm〜約10mmの範囲内、約2.7mm〜約10mmの範囲内、約2.8mm〜約10mmの範囲内、約2.9mm〜約10mmの範囲内、約3.0mm〜約10mmの範囲内、約3.1mm〜約10mmの範囲内、約3.2mm〜約10mmの範囲内、約3.3mm〜約10mmの範囲内、約3.4mm〜約10mmの範囲内、約3.5mm〜約10mmの範囲内、約3.6mm〜約10mmの範囲内、約3.7mm〜約10mmの範囲内、約3.8mm〜約10mmの範囲内、約3.9mm〜約10mmの範囲内、約4.0mm〜約10mmの範囲内、約4.1mm〜約10mmの範囲内、約4.2mm〜約10mmの範囲内、約4.3mm〜約10mmの範囲内、約4.4mm〜約10mmの範囲内、約4.5mm〜約10mmの範囲内、約4.6mm〜約10mmの範囲内、約4.7mm〜約10mmの範囲内、約4.8mm〜約10mmの範囲内、約4.9mm〜約10mmの範囲内、約5.0mm〜約10mmの範囲内、約5.1mm〜約10mmの範囲内、約5.2mm〜約10mmの範囲内、約5.3mm〜約10mmの範囲内、約5.4mm〜約10mmの範囲内、約5.5mm〜約10mmの範囲内、約5.6mm〜約10mmの範囲内、約5.7mm〜約10mmの範囲内、約5.8mm〜約10mmの範囲内、約5.9mm〜約10mmの範囲内、約6.0mm〜約10mmの範囲内、約6.1mm〜約10mmの範囲内、約6.2mm〜約10mmの範囲内、約6.3mm〜約10mmの範囲内、約6.4mm〜約10mmの範囲内、約6.5mm〜約10mmの範囲内、約6.6mm〜約10mmの範囲内、約6.7mm〜約10mmの範囲内、約6.8mm〜約10mmの範囲内、約6.9mm〜約10mmの範囲内、約7.0mm〜約10mmの範囲内、約7.1mm〜約10mmの範囲内、約7.2mm〜約10mmの範囲内、約7.3mm〜約10mmの範囲内、約7.4mm〜約10mmの範囲内、約7.5mm〜約10mmの範囲内、約7.6mm〜約10mmの範囲内、約7.7mm〜約10mmの範囲内、約7.8mm〜約10mmの範囲内、約7.9mm〜約10mmの範囲内、約8.0mm〜約10mmの範囲内、約8.1mm〜約10mmの範囲内、約8.2mm〜約10mmの範囲内、約8.3mm〜約10mmの範囲内、約8.4mm〜約10mmの範囲内、約8.5mm〜約10mmの範囲内、約8.6mm〜約10mmの範囲内、約8.7mm〜約10mmの範囲内、約8.8mm〜約10mmの範囲内、約8.9mm〜約10mmの範囲内、約9.0mm〜約10mmの範囲内、約9.1mm〜約10mmの範囲内、約9.2mm〜約10mmの範囲内、約9.3mm〜約10mmの範囲内、約9.4mm〜約10mmの範囲内、約9.5mm〜約10mmの範囲内、約9.6mm〜約10mmの範囲内、約9.7mm〜約10mmの範囲内、約9.8mm〜約10mm、又は約9.9mm〜約10mmの範囲内で槽に送達される。
(00277)値の範囲が提供されたとき、その範囲の上限と下限の間に挟まれた各値の、文脈によって特に明示されない限り下限の10分の1の単位まで、及びその記載範囲内の任意の他の記載された又は間に挟まれた値が、本発明に包含されることが理解される。記載範囲に具体的に除外される境界値がある場合は、これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立してそのより小さい範囲内に含まれてもよく、本発明にも包含される。記載範囲が一方又は両方の境界値を含む場合、含まれる境界値のいずれか又は両方を除外した範囲も本発明に含まれる。
(00278)別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての専門用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実施又は試験において、本明細書に記載されるものと同等又は等価であるいかなる方法及び材料も使用できるが、本明細書には、好ましい方法及び材料が記載されている。本明細書で言及する全ての刊行物は、該刊行物と関連して引用された方法及び/又は材料を開示及び記載するために、参照により本明細書に援用される。
(00279)本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、単数形の「a」、「and」及び「the」は、文脈によって特に明示されない限り、複数の参照を包含することに注意しなければならない。本明細書で使用される全ての専門用語及び科学用語は、同じ意味を有する。
(00280)本明細書で論じる刊行物は、単に本出願の出願日前に開示されていることから提供される。本明細書のいずれも、本発明が先願発明によってかかる刊行物に先行しないことを容認するとみなされるべきではない。更に、提供される刊行物の日付は、実際の刊行日とは異なる場合があり、個別に確認する必要がある場合がある。
(00281)以下の実施例は、本発明の製造及び使用方法の完全な開示及び記載を当業者に提供するために記載され、発明者が自身の発明と見なすものの範囲を限定することを意図しておらず、また、以下の実験が、実施された全実験又は実施された実験のみであることを表すものでもない。使用される数字(例えば、量、温度等)に関して正確性を確実にするために努力したが、いくからの実験誤差及び偏差は考慮されるべきである。他に示さない限り、部は質量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧又は大気圧近傍である。
実施例1.(RS)−イソプロピル−2−メトキシエチル−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチル−4(3−ニトロフェニル)ピリジン−3,5−ジカルボキシラートの合成
(00282)ニモジピンを以下のスキームに従って合成した。スキームIにおいて、水酸化アンモニウムの溶液をアセト酢酸2−メトキシエチル(MEAA)に添加し、反応完了まで反応混合物を保持した。続いて、反応混合物をトルエンで分配した。水相を追加のトルエンを用いて逆抽出した。合わせた有機相を、加熱及び減圧を用いた蒸留によって濃縮した。粗生成物の中間体I、(2’−メトキシエチル)3−アミノ−3−メチルアクリラートを、高真空蒸留を用いて蒸留した。
(00283)スキーム2では、3−ニトロベンズアルデヒドを冷イソプロパノールに添加した。混合物を加熱して、完全に溶解した溶液を得、これにアセト酢酸イソプロピル、プロピオン酸及びピペリジンを添加した。得られた溶液を反応完了まで保持し、粗中間体II、3−オキソ−2−(3−ニトロフェニルメチレン)酪酸イソプロピルエステルを得た。続いて、得られた混合物を冷却し、結晶形成まで保持した。粗中間体II結晶を遠心分離によって単離し、追加のイソプロパノールですすぎ、続いて冷イソプロパノールに投入し、加熱及び撹拌した後、再度遠心分離によって単離し、最後に真空加熱を用いて乾燥して、純中間体IIを得た。
(00284)スキーム3では、中間体I及び中間体IIをイソプロパノールに投入した。得られた混合物を加熱し、窒素気流下で還流した。続いて、反応完了まで還流を保持しながら、プロピオン酸及びピペリジンを該混合物に添加した。蒸留によって反応混合物からイソプロパノール部分を除去した。混合物を冷却し、メタノールを添加して、完全に溶解するまで混合物を加熱した。溶液を冷却し、結晶形成まで保持して、ニモジピン(RS)−イソプロピル−2−メトキシエチル−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチル−4(3−ニトロフェニル)ピリジン−3,5−ジカルボキシラートの粗結晶を得た。粗ニモジピン結晶を遠心分離によって単離し、イソプロパノールですすぎ、真空加熱を用いて乾燥し、更に2回精製を行った。
(00285)第1精製工程において、スキーム3の粗ニモジピン結晶をイソプロパノールに溶解した。得られた溶液を加熱還流した後、冷却し、結晶形成まで保持した。結晶を遠心分離によって単離した。第2精製工程において、第1工程から回収したニモジピン結晶を再度イソプロパノールに溶解した。得られた溶液を還流まで加熱し、濾過し、追加のイソプロパノールをフィルタを通して添加した。この溶液を再度加熱還流し、蒸留によって反応混合物からイソプロパノール部分を除去した。続いて、反応混合物に水を投入し、混合物を加熱還流、保持した後、徐冷して生成物を沈殿させた。残りのイソプロパノール部分及び水を減圧蒸留によって除去した。混合物を冷却し、結晶形成まで保持した。得られた結晶を遠心分離によって単離し、水で更にすすぎ、真空加熱により乾燥して純ニモジピンを得た。続いて、この精製した生成物を、粉砕し、続いて微粒子化して、それぞれ粉砕ニモジピン及び微粒子化ニモジピンを得た。微粒子化ニモジピン試料の粒径分布は、波長633nmのレーザー光に曝露したときに生じる回折によって測定したときに、約0.4μm〜約12μmの範囲であることが見出された。
(00286)最終生成物のニモジピン構造を、質量スペクトル(MS)、1H NMRスペクトル及び13C NMRスペクトルによって、市販のUSPニモジピンを参照標準として用いて確認した。分子質量:m/z418(M+);1H NMR(250MHz,CDCl3);13C NMR(62.8MHz,CDCl3)。溶融範囲は約122℃〜約127℃であった。合成したニモジピンのバッチは、いかなる光学活性も示さず、反対の鏡像異性体のラセミ混合物であることが確認された。市販のUSPニモジピンを参照標準とした赤外(IR)吸収スペクトル測定を用いたニモジピン多形性分析で、図3に示すように、合成バッチはラセミ化合物形態Iを示し、集合体形態IIではないことが明らかとなった。
実施例2.生成微小粒子のカプセル化プロセス及び特性決定
(00287)ニモジピン微小粒子を、水中油(o/w)型エマルション(empulsion)プロセスによって調製し、窒素気流下、撹拌式濾過乾燥機内で乾燥した。
(00288)微小粒子のニモジピン多形体組成物を評価するため、処方、溶媒及び乾燥速度を変えた。微小粒子サイズはレーザー回折によって評価した。63%のニモジピン(質量%)及び1.3%の水の粒径分布は、66μm(平均)、95μm(第95パーセンタイル)及び39μm(第10パーセンタイル)であった。均一な粒径分布の微小粒子を含有するプラセボ微小粒子製剤を、ニモジピン不在下でポリマー溶液(例えば、50−50グリコリド−ラクチドブレンド)を溶媒と組み合わせることによって調製した。
(00289)薬物多形体の形成を評価するため、処方並びにポリマー選定、加工溶媒、及び乾燥速度のようなプロセスパラメータを変えた。全ての場合に、微小粒子製造の出発物質としてニモジピンの結晶形態Iを使用した。
(00290)微小粒子モルホロジーを、走査電子顕微鏡(SEM)によって評価した。ニモジピンミクロスフェア製剤の走査電子顕微鏡撮影を、0℃、25℃及び30〜35℃で実施した。図6は、本発明による微粒子ニモジピン製剤の走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
(00291)多形体組成物の特性を、粉末X線回折、ラマン分光法、及び示差走査熱量計によって評価した。
(00292)ラマン分光法は、ニモジピンミクロスフェア製剤が保管温度の変更時に相転移及び結晶形成を起こすことを示した。ラマンイメージングのため、ニモジピンミクロスフェアをエポキシ中で混合及び硬化させることによって、断面を調製した。ミクロスフェアが埋没された硬化エポキシを、−65℃でミクロトームを用いてスライスした。サイズ60×60μm、2ピクセル(スペクトル)/μmの全スペクトル画像を、1ロットにつき複数のミクロスフェア断面で撮影した。データ取得後、ニモジピン薬物、ポリマー及びエポキシ)からの全参照スペクトルを用いて各構成成分のシグナルをデコンボリュートする拡張古典的最小二乗法を実施した。得られた画像は、撮影した断面領域内の各構成成分の相対的ラマン強度及び空間的分布を示した。
(00293)示差走査熱量計(DSC)は、本発明のニモジピンミクロスフェア製剤の多形体含有量を示した。DSCは、相転移の間に吸収又は放出される熱を測定することによって固体の相転移を検出するのに有用な熱分析の技法である。特徴的な溶融温度を示す特徴的なDSCスペクトルを、試料の特定の多形形態を識別するサインとして使用する。
(00294)粉末X線回折は、本発明のニモジピンミクロスフェア製剤の多形体含有量を示す。粉末X線回折(XRPD)分析を用いて、所与の試料の特異的な多形形態を特徴付ける特有の回折パターンを検出した。図11は、ニモジピン形態Iの粉末X線回折パターンを示す。
(00295)分析により、最大で次の3種の薬物形態が、種々の比率で、加工後の微小粒子ロットに存在することが明らかになった:結晶形態I、結晶形態II、及びアモルファスのニモジピン。結晶形態II及びアモルファス構成成分は、最終生成物の凝集を引き起こし、粗悪な製品性能を招いた。
(00296)ポリマー選定及び溶媒選択、並びに、それよりも低い程度で乾燥速度が、ニモジピン形態Iを含有する安定な微小粒子製剤の製造において重要であると判断された。
実施例3.インビトロ放出動態分析
(00297)この実験は、インビトロで放出されるニモジピンの質量パーセントを経時的に測定する。10mgのニモジピンミクロスフェアを50mLファルコンチューブに量り入れ、新たに調製した1Xリン酸緩衝生理食塩水中2%ドデシル硫酸ナトリウムの溶液を20mL添加した。続いて、ミクロスフェアを確実に懸濁するため、試料を一度反転した。チューブを37℃の湯浴中でインキュベートし、1時間、2時間、6時間、24時間の特定の時間点で引き上げ、これを14日まで毎日行った。引き上げた試料は、ニモジピン含有量をHPLCで分析した。図4に、典型的な微小粒子ニモジピン製剤のインビトロ累積放出を、時間に対する質量%として示す。
実施例4.インビボ放出
(00298)この実験は、40ng/mL〜約160ng/mLの範囲のニモジピン血漿濃度が投与から11日以内に達成されることを示す。インビボ放出動態分析は、ラットモデルを用いて実施した。血漿試料を表示した時間点で採取し、ニモジピンの血漿濃度を分析した。図5はニモジピンミクロスフェア製剤を投与した時のラットの血漿薬物濃度をng/mL単位で示す。
実施例5.微小粒子形成の分析
(00299)ニモジピン微小粒子は、o/w型エマルションプロセスで調製し、撹拌式濾過乾燥機内で窒素気流下で乾燥した。薬物多形体の形成を評価するため、処方並びにポリマー選定、加工溶媒、及び乾燥速度のようなプロセスパラメータを変えた。全ての場合に、微小粒子製造の出発物質として結晶形態Iのニモジピンを使用した。微小粒子モルホロジーを、走査電子顕微鏡(SEM)によって評価した。微小粒子サイズはレーザー回折によって評価した。薬物多形体の特性を、粉末X線回折(XRPD)、ラマン分光法、及びDSC等の種々の技法を用いて評価した。
(00300)分析により、最大で次の3種の薬物形態が、種々の比率で、加工後の微小粒子ロットに存在することが明らかになった:結晶形態I、結晶形態II、及びアモルファスのニモジピン。結晶形態II及びアモルファス構成成分は、最終生成物の凝集を引き起こし、粗悪な製品性能を招いた。スペクトルにより、DCM中で調製したニモジピンに、116℃及び126℃の融点(約1:2の比)を示す多形の存在が確認された(図12A)。EtOAc中で調製したニモジピンのプレ製剤は、活性剤の変性II形態に対応する114℃のわずかな融点ピークを示した。該プレ製剤は、125℃に主となる鋭い融点ピークも示した(図12B)。EtOAc中で調製したプレ製剤活性DLGカプセル化ニモジピンのDSCは、125℃のみに1つの融点ピークを示した(図12C)。
(00301)ニモジピン ロット00447−098−この材料は変性Iのみの存在を示した。このロットは、酢酸エチルポリマー溶液中に薬物を懸濁した単一エマルションプロセスを用いて製造した。6535 DLG 5Eポリマーを、65%の理論的薬物負荷量で使用した。分散相が酢酸エチル中20%のポリマー溶液からなり、このポリマー溶液に薬物を直接添加して懸濁液を形成して、10gのバッチを調製した。連続相は、3%酢酸エチルで飽和した2%ポリビニルアルコール(PVA)溶液の界面活性剤を含む連続プロセス媒体を含んだ。500μmビーズを充填したFormEZEカラムを使用してエマルションを形成した。分散相及び連続相を、それぞれ2mL/分及び4mL/分の速度で添加した。乳化した粒子を、300mL/分の速度で添加した水に抽出した。粒子を125及び25μmの篩上に回収し、続いて凍結乾燥によって乾燥した。
(00302)ニモジピン ロット00447−108−この材料はアモルファスであった。このロットは、酢酸エチルポリマー溶液に薬物を懸濁した単一エマルションプロセスを用いて製造した。5050 DLG 4Aポリマーを、65%の理論的薬物負荷量で使用した。分散相が酢酸エチル中20%のポリマー溶液からなり、このポリマー溶液に薬物を直接添加して懸濁液を形成して、10gのバッチを調製した。連続相は、3%酢酸エチルで飽和した2%ポリビニルアルコール溶液を含む連続プロセス媒体を含んだ。500μmビーズを充填したFormEZEカラムを使用してエマルションを形成した。分散相及び連続相を、それぞれ2mL/分及び4mL/分の速度で添加した。乳化した粒子を、300mL/分の速度で添加した水に抽出した。粒子を125及び25μmの篩上に回収し、続いて凍結乾燥によって乾燥した。
(00303)ニモジピン ロット00447−110−この材料は変性I及びIIの存在を示した。このロットは、酢酸エチルポリマー溶液に薬物を懸濁した単一エマルションプロセスを用いて製造した。6535 DLG 2Eポリマーを、50%の理論的薬物負荷量で使用した。分散相が酢酸エチル中20%のポリマー溶液からなり、このポリマー溶液に薬物を直接添加して懸濁液を形成して、10gのバッチを調製した。連続相は、3%酢酸エチルで飽和した2%ポリビニルアルコール溶液を含む連続プロセス媒体を含んだ。500μmビーズを充填したFormEZEカラムを使用してエマルションを形成した。分散相及び連続相を、それぞれ2mL/分及び4mL/分の速度で添加した。乳化した粒子を、300mL/分の速度で添加した水に抽出した。粒子を125及び25μmの篩上に回収し、続いて凍結乾燥によって乾燥した。
(00304)ニモジピン ロットML695(GMP材料)−このロットは変性IIの存在を示した。このロットは、酢酸エチルポリマー溶液に薬物を懸濁した単一エマルションプロセスを用いて製造した。5050 DLG 4Aポリマーを、65%の理論的薬物負荷量で使用した。材料を、窒素下にて、同じ製剤の以前のロットよりもかなり低速で乾燥した。より高速で乾燥した前のロットがアモルファス薬剤のみを含有したが、この低速化した乾燥は、変性II多形体の形成を引き起こした。分散相が酢酸エチル中20%のポリマー溶液からなり、このポリマー溶液に薬物を直接添加して懸濁液を形成して、250gのバッチを調製した。連続相は、3%酢酸エチルで飽和した2%ポリビニルアルコール溶液を含む連続プロセス媒体を含んだ。500μmビーズを充填したFormEZEカラムを使用してエマルションを形成した。分散相及び連続相を、それぞれ20mL/分及び40mL/分の速度で添加した。乳化した粒子を、1500mL/分の速度で添加した水に抽出した。粒子を125及び25μmの篩上に回収し、続いて窒素気流下で乾燥した。
等価物
(00305)本発明をその個々の実施態様に関して記載してきたが、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく種々の変更を加えてもよいこと及び等価物で置換してもよいことは、当業者に理解されるべきである。更に、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセス工程に適応するために、本発明の目的、精神及び範囲に多数の修正を加えてもよい。このような修正は全て、本明細書に添付された特許請求の範囲内にあることを意図する。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕微小粒子にカプセル化された実質的に純粋な多形形態の生物活性剤を製造する方法であって、
(a)実質的に純粋な結晶形態の前記生物活性剤を提供する工程、
(b)前記実質的に純粋な結晶形態の生物活性剤をポリマー溶液に添加し、それによって前記結晶形態の生物活性剤と前記ポリマー溶液との混合物を作製する工程、
(c)前記混合物を均質化して分散相を形成する工程、
(d)前記分散相を、連続プロセス媒体を含む連続相と混合し、それによって前記生物活性剤を含むエマルションを形成する工程、
(e)前記実質的に純粋な多形形態の生物活性剤を含む微小粒子を形成し、抽出する工程、及び、
(f)前記微小粒子を乾燥する工程
を含むことを特徴とする、方法。
〔2〕前記ポリマー溶液が、溶媒及び生分解性ポリマーを含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記生分解性ポリマーが、ポリラクチド、ポリラクチド−コ−グリコリド、ポリ(オルトエステル)、及びポリ(無水物)からなる群から選択される、前記〔2〕に記載の方法。
〔4〕前記ポリラクチド−コ−グリコリドが、85:15、75:25、65:35、又は50:50のラクチド対グリコリドの比を備える、前記〔3〕に記載の方法。
〔5〕前記生分解性ポリマーが、8515 DLG 6A、8515 DLG 5A、8515 DLG 4.5E、88515 DLG 5E、515 DLG 7A、7525 DLG 7A、7525 DLG 7E、7525 DLG 5E、6535 DLG 5E、6353 DLG 2E、6535 DLG 4A、5050 DLG 4A、5050 DLG 2A、又は2000 MW DLPLを含む、前記〔4〕に記載の方法。
〔6〕前記ポリマー溶液中の溶媒が、酢酸エチル若しくはジクロロメタン又はこれらの混合物を含む、前記〔2〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の方法。
〔7〕前記乾燥の時間が、4〜48時間である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の方法。
〔8〕前記生物活性剤が、ニモジピンである、前記〔1〕に記載の方法。
〔9〕前記結晶形態のニモジピンが、ニモジピン形態Iを実質的に含む、前記〔8〕に記載の方法。
〔10〕前記結晶形態のニモジピンが、ニモジピン形態IIを実質的に含む、前記〔8〕に記載の方法。
〔11〕前記結晶形態のニモジピンが、図11に示す粉末X線回折(XRPD)スペクトルと実質的に同じ粉末X線回折(XRPD)スペクトルを有するニモジピン形態Iである、前記〔8〕に記載の方法。
〔12〕前記連続プロセス媒体が、水、ジクロロメタン、エタノール又はこれらの組合せを含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔13〕前記連続プロセス媒体中に界面活性剤を更に含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔14〕前記界面活性剤が、ポリビニルアルコール(PVA)である、前記〔14〕に記載の方法。
〔15〕前記微小粒子を乾燥前にすすぐ工程を更に含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔16〕第2の流量が、1.4mL/分〜2.0mL/分である、前記〔1〕に記載の方法。
〔17〕前記乾燥の速度が、0.2mL/分〜2L/分である、前記〔1〕に記載の方法。
〔18〕前記方法が、
(g)粉末X線回折(XRPD)、ラマン分光法、示差走査熱量計、又はこれらの組合せによって微小粒子のモルホロジーを分析する工程
を更に含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔19〕持続放出動態が可能な半固体、生分解性、生体適合性送達システムであって、
(i)実質的に純粋な結晶形態の多形体生物活性剤を含む流動性微小粒子製剤、及び、 (ii)薬学的に許容可能な担体
を含み、
前記微小粒子製剤が、均一な粒径分布の複数の微小粒子を含み、
前記生物活性剤が、各微小粒子全体にわたって分散され、且つ、
前記送達システムが、微小粒子製剤が生物活性剤を1日〜30日の半減期内に遅延放出することができることを更に特徴とする、送達システム。
〔20〕前記生物活性剤が、図11に示す粉末X線回折(XRPD)スペクトルと実質的に同じ粉末X線回折(XRPD)スペクトルを有する結晶形態Iのニモジピンである、前記〔19〕に記載の送達システム。
〔21〕各微小粒子が、マトリックスを含む、前記〔19〕に記載の送達システム。
〔22〕前記微小粒子製剤が、微小粒子の粉末懸濁液を含む、前記〔19〕に記載の送達システム。
〔23〕前記微小粒子製剤が、徐放性化合物を更に含む、前記〔19〕に記載の送達システム。
〔24〕前記徐放性化合物が、生分解性ポリマーである、前記〔23〕に記載の送達システム。
〔25〕前記送達システム内に含有される組成物の薬物負荷量が、約25(質量)%〜75質量%の範囲である、前記〔19〕に記載の送達システム。
〔26〕前記生分解性ポリマーが、ポリラクチド−ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)、及びポリ(無水物)からなる群から選択される、前記〔25〕に記載の送達システム。
〔27〕ヒト被験者において脳損傷による遮断のリスクのあるクモ膜下腔の少なくとも1つの大脳動脈を治療する方法であって、
(a)流動性持続放出性微小粒子組成物を提供する工程、及び、
(b)前記組成物を脳室に局所投与し、クモ膜下腔にニモジピン形態Iを放出する前に、前記微小粒子製剤が脳室の脳脊髄液(CSF)からクモ膜下腔の脳脊髄液(CSF)内に流れるようにする工程であって、前記ニモジピン形態Iが、望ましくない副作用を引き起こす量で体循環に入ることなく、クモ膜下腔の少なくとも1つの大脳動脈と接触し、その周辺を流れる工程
を含み、前記組成物が、
(i)図11に示す粉末X線回折(XRPD)スペクトルと実質的に同じ粉末X線回折(XRPD)スペクトルを有する実質的に純粋な結晶形態Iのニモジピンを治療量含む微小粒子製剤であって、該微小粒子製剤が、均一な粒径分布の複数の微小粒子を含み、前記治療量が、大脳動脈遮断の遅発性合併症の治療に有効である微小粒子製剤、及び、
(ii)医薬用担体
を含むことを特徴とする、方法。
〔28〕各微小粒子が、マトリックスを含む、前記〔27〕に記載の方法。
〔29〕前記遅発性合併症が、血管造影血管攣縮、複数の微小血栓の形成、皮質拡延性虚血、遅発性脳虚血(DCI)、又はこれらの組合せからなる群から選択される、前記〔27〕に記載の方法。
〔30〕前記微小粒子製剤が、微小粒子の粉末懸濁液を含む、前記〔27〕に記載の方法。
〔31〕前記微小粒子製剤が、徐放性化合物を更に含む、前記〔27〕に記載の方法。
〔32〕前記徐放性化合物が、生分解性ポリマーである、前記〔31〕に記載の方法。
〔33〕前記生分解性ポリマーが、ポリラクチド−ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)、及びポリ(無水物)からなる群から選択される、前記〔32〕に記載の方法。
〔34〕投与が、外科的注入装置によって起こる、前記〔27〕に記載の方法。
〔35〕前記外科的注入装置が、針、カニューレ、カテーテル又はこれらの組合せである、前記〔34〕に記載の方法。
〔36〕ヒト被験者において脳血管攣縮を治療する方法であって、
(a)(i)図11に示す粉末X線回折(XRPD)スペクトルと実質的に同じ粉末X線回折(XRPD)スペクトルを有する実質的に純粋な結晶形態Iのニモジピンを治療量含む微小粒子製剤であって、該微小粒子製剤が、均一粒径の複数の微小粒子を含み、前記治療量が大脳動脈狭窄の遅発性合併症の治療に有効である微小粒子製剤、及び(ii)医薬用担体を含む、流動性持続放出性微小粒子組成物を提供する工程、及び、
(b)前記医薬組成物を、血管攣縮のリスクのある大脳動脈に最も近いクモ膜下槽への外科的注入によってヒト被験者に局所的に投与し、以て前記組成物が、望ましくない副作用を引き起こす量で体循環に入ることなく大脳動脈の周辺を流れる工程
を含み、
前記医薬組成物が、局在的な薬理学的作用を生じ、前記治療量が、前記脳血管攣縮の治療に有効であることを特徴とする、方法。
〔37〕前記担体が、ゲル化合物である、前記〔36〕に記載の方法。
〔38〕前記担体が、徐放性固体化合物である、前記〔36〕に記載の方法。
〔39〕工程(b)における、前記血管攣縮のリスクのある大脳動脈に最も近いクモ膜下槽が、大脳動脈から約0.001mm〜約10mmである、前記〔36〕に記載の方法。