JP6335702B2 - チェーンテンショナ - Google Patents

Description

この発明は、自動車のカム軸駆動用チェーン等のチェーンの張力を一定に保持するチェーンテンショナに関する。

クランク軸の回転をタイミングベルトやタイミングチェーン（以下、総称して単にチェーンという）を介してカム軸に伝達するチェーン伝動装置においては、チェーンの弛み側に揺動可能なチェーンガイドを接触し、そのチェーンガイドにチェーンテンショナの調整力を負荷してチェーンの張力を一定に保つようにしている。

上記チェーンテンショナとして、ハウジングに形成されたシリンダ室内にプランジャと、そのプランジャを外方に向けて押圧するリターンスプリングとを組込み、前記ハウジングには、プランジャの背部に形成された圧力室に連通する給油通路を設け、その給油通路の作動油出口側に圧力室内の作動油が給油通路側に逆流するのを防止するチェックバルブを設け、上記給油通路から圧力室内に供給される作動油によってチェーンからプランジャに負荷される押し込み力を緩衝するようにしたものが従来から知られている。

上記チェーンテンショナには、エンジンの始動時、オイルポンプから圧力室内に作動油が送り込まれるとき、その作動油に空気が巻き込まれて圧力室に送り込まれる場合がある。

また、プランジャが外方に急速に移動して圧力室内の圧力が急激に低下すると、外部の空気がプランジャとシリンダ室の摺動面間から圧力室内に侵入するおそれがある。

ここで、圧力室内に侵入した空気が滞溜すると、チェーンが緊張してプランジャが押し込まれた際、プランジャは空気を圧縮することになるため、ダンパ効果が低下し、チェーンテンショナとしての機能を充分に発揮させることができなくなる。

そのような不都合を解消するため、特許文献１に記載されたチェーンテンショナにおいては、ハウジングの上部外周から圧力室に至るねじ孔を設け、そのねじ孔にビスをねじ係合すると共に、ビスの頭部とハウジングの外周面間にばね座金を組み込んで、上記ビスとねじ孔のねじ係合部間に形成される螺旋状のねじ隙間およびばね座金の周方向一部に形成された径方向の切り離し部を介して外部と圧力室と連通し、プランジャが押し込まれて圧力室内の圧力が上昇した際、圧力室内に滞溜する空気をねじ隙間とばね座金の切り離し部で形成される連通路から外部に排気させるようにしている。

特開平１０−２６１９２号公報

ところで、上記特許文献１に記載されたチェーンテンショナにおいては、圧力室内からの滞溜空気の排気量はねじ孔の下穴径の寸法やビスの締付トルクでもって管理しているが、締付トルクが規定値より大きい場合やエンジンオイル（作動油）に混入する粉塵等の異物がばね座金の周方向の一部に形成された径方向の切り離し部に詰まって空気の排出量が減少し、圧力室内に残存する空気によってチェーンテンショナの機能が阻害され、滞溜空気を確実に排気させる上において改善すべき点が残されていた。

この発明の課題は、ビスの締付トルクの管理が不十分な場合や、ビスを弛み止めするばね座金の切り離し部に異物が詰まった場合においても、圧力室内に滞溜する空気を円滑に確実に排気させることができるようにしたチェーンテンショナを提供することである。

上記の課題を解決するために、この発明においては、ハウジングに形成されたシリンダ室内に摺動可能なプランジャと、そのプランジャを外方に向けて付勢するリターンスプリングとを組み込み、ハウジングには前記プランジャの背部に形成された圧力室に連通する給油通路を設け、その給油通路の油出口側に、圧力室内の作動油が給油通路側に逆流するのを防止するチェックバルブを組み込み、前記ハウジングの上部外周から前記圧力室に至るねじ孔にビスをねじ係合し、そのビスの頭部とハウジングの外周間にばね座金を組み込み、前記圧力室内に滞溜する空気をねじ孔とビスのねじ係合部に形成される螺旋状のねじ隙間およびばね座金の周方向一部に形成される径方向の切り離し部から外部に排気させるようにしたチェーンテンショナにおいて、前記ビスの頭部における座面と前記ばね座金の衝合面における一方に、前記ビスの首部の外径面と前記ばね座金の内径面間に形成される環状空間と外部とを連通する排気溝を設けた構成を採用したのである。

上記のように、ビスの頭部における座面とばね座金の衝合面における一方に、ビスの首部外径面とばね座金の内径面間に形成される環状空間と外部とを連通する排気溝を設けることにより、ビスが規定値を超える締め付けとされた場合、あるいは、ばね座金の切り離し部に異物の詰まりが生じて閉塞された場合においても、圧力室は、ねじ隙間、環状空間および排気溝を介して外部と連通する状態とされる。このため、上記ばね座金の切り離し部が異物の詰まりにより排気が阻害される場合においても、圧力室内に滞溜する空気を排気溝から外部に円滑に確実に排気させることができる。

ここで、排気溝は、複数の放射状配置の径方向溝であってもよく、あるいは、渦巻き溝であってもよい。径方向溝を排気溝とし、その排気溝をビスにおける頭部の座面に形成する場合において、その座面の内周部に円形凹部を設けておくことにより、径方向溝を容易に加工することができると共に、その径方向溝を環状空間に確実に連通させることができる。

この発明に係るチェーンテンショナにおいては、上記のように、ビスの頭部における座面とばね座金の衝合面における一方に、ばね座金の内側に形成される環状空間と外部とを連通する排気溝を設けたことにより、ばね座金の切り離し部が異物の詰まりにより排気が阻害される場合においても、ねじ隙間、環状空間および排気溝によって圧力室内に滞溜する空気を外部に円滑に確実に排気させることができる。

この発明に係るチェーンテンショナの実施の形態を示す縦断面図 図１の要部を拡大して示す断面図 図２に示すビスおよびばね座金を示す正面図 図３のIV-IV線に沿った断面図 排気溝の他の例を示す断面図 （ａ）は排気溝のさらに他の例を示す縦断面図、（ｂ）は（ａ）のVI−VI線に沿った断面図 チェーンテンショナの他の例を示す断面図

以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図１に示すように、ハウジング１０は、外周の一側面で開口するシリンダ室１１を有し、そのシリンダ室１１内にプランジャ１２が摺動自在に組み込まれている。

プランジャ１２にはその後端面で開口する軸方向孔１３が設けられ、その軸方向孔１３の閉塞端とシリンダ室１１の閉塞端間に、プランジャ１２を外方に向けて付勢するリターンスプリング１４が組み込まれている。

ハウジング１０には、プランジャ１２の背部に設けられた圧力室１５に連通する給油通路１６が設けられ、その給油通路１６の油出口側に圧力室１５内の作動油が給油通路１６側に逆流するのを防止するチェックバルブ１７が組み込まれている。

また、ハウジング１０には、上部外周から圧力室１５に至るねじ孔１８と、そのねじ孔１８の上端部に円形の座ぐり１９が設けられている。

図２に示すように、ねじ孔１８にはビス２０がねじ込まれ、そのビス２０の頭部２０ａと座ぐり１９の底面間にばね座金２１が組み込まれている。ねじ孔１８とビス２０のねじ係合部間には螺旋状のねじ隙間２２が設けられ、そのねじ隙間２２は、ビス２０における首部２０ｃの外径面とばね座金２１の内径面間に形成される環状空間２３およびばね座金２１の周方向一部に形成された径方向の切り離し部２４を介して圧力室１５と外部を連通している。

図２乃至図４に示すように、ビス２０における頭部２０ａの座面２０ｂには、ばね座金２１の内側に形成される上記環状空間２３と外部とを連通する排気溝２５が設けられている。排気溝２５として、図４では２本の径方向溝を示し、その径方向溝を対向位置に設けているが、図５に示すように、複数の径方向溝２５を放射状の配置でもって形成してもよい。また、径方向溝に代えて、渦巻き溝や傾斜溝であってもよい。

上記の構成からなるチェーンテンショナにおいては、リターンスプリング１４によって外方に向けて付勢されるプランジャ１２により揺動可能に支持されたチェーンガイドＧを介して図示省略したチェーンを押圧し、そのチェーンに弛みが生じた際には、プランジャ１２を外方に移動させてチェーンの弛みを吸収する。

この時、圧力室１５の容積が増大して圧力が低下するため、チェックバルブ１７が開放し、給油通路１６から圧力室１５内に作動油が供給される。

一方、チェーンが緊張してプランジャ１２が押し込まれると、チェックバルブ１７が閉じ、圧力室１５内に封入された作動油によってプランジャ１２に付与される押し込み力が緩衝される。その押し込み力がリターンスプリング１４の弾性力より強い場合、圧力室１５内の作動油はシリンダ室１１とプランジャ１２の摺動面間より外部にリークし、上記押し込み力とリターンスプリング１４の弾性力とが釣り合う位置までプランジャ１２は後退して停止する。

ここで、エンジンの始動時、オイルポンプから給油通路１６を通って圧力室１５内に作動油が送り込まれるとき、その作動油に空気が巻き込まれて圧力室１５に送り込まれる場合がある。

また、プランジャ１２が外方に急速に移動して圧力室１５内の圧力が急激に低下すると、外部の空気がプランジャ１２とシリンダ室１１の摺動面間から圧力室１５内に侵入するおそれがある。

圧力室１５内に空気が滞溜すると、チェーンが緊張してプランジャ１２が押し込まれた際、プランジャ１２は空気を圧縮することになるため、ダンパ効果が低下し、チェーンテンショナとしての機能を充分に発揮させることができなくなるが、圧力室１５は、ねじ隙間２２、環状空間２３およびばね座金２１の切り離し部２４を介して外部と連通しているため、圧力室１５内の滞溜空気は、プランジャ１２の後退動による圧力室１５の圧力上昇時に、ねじ隙間２２、環状空間２３および切り離し部２４から外部に排気される。

実施の形態においては、図２乃至図５に示すように、ビス２０の頭部２０ａにおける座面２０ｂに、ばね座金２１の内径面間に形成される環状空間２３と外部とを連通する排気溝２５を設けているため、ばね座金２１の切り離し部２４に異物が詰まり、その切り離し部２４からの排気が阻害される場合においても、圧力室１５内に滞溜する空気を、ねじ隙間２２、環状空間２３および排気溝２５から外部に円滑に確実に排気させることができる。

図６（ａ）、（ｂ）は排気溝の他の例を示す。この例においては、ビス２０における頭部２０ａの座面２０ｂにおける内周部に円形凹部２６を設けている点で図５に示す排気溝と相違している。このため、図５に示す排気溝と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。

図６（ａ）、（ｂ）に示すように、ビス２０の頭部２０ａにおける座面２０ｂの内周部に円形凹部２６を設けることにより、径方向溝２５を容易に加工することできると共に、その径方向溝２５を環状空間２３に確実に連通させることができる。

図４乃至図６では、ビス２０の頭部２０ａにおける座面２０ｂに排気溝２５を設けるようにしたが、ばね座金２１の上記頭部２０ａの座面２０ｂが衝合される衝合面に排気溝２５を設けるようにしてもよい。

図７はチェーンテンショナの他の例を示す。この例においては、プランジャ１２に設けられた軸方向孔１３の開口端部の内周に鋸歯状の雌ねじ２７を設け、その雌ねじ２７にスクリュロッド２８の外周に形成された鋸歯状の雄ねじ２９をねじ係合し、そのスクリュロッド２８に設けられた軸方向の段付き孔３０の内周段部３１とプランジャ１２の軸方向孔１３の閉塞端部間にリターンスプリング１４およびスプリングシート３２を組み込んでいる。他の構成は、図１に示すチェーンテンショナと同一であるため同一の部分に同一の符号を付して説明を省略する。

図７に示すチェーンテンショナにおいては、エンジンの停止時、カムの停止位置の関係からチェーンが緊張状態とされ、そのチェーンからプランジャ１２に押し込み力が負荷されると、その押し込み力は鋸歯状雌ねじ２７と鋸歯状雄ねじ２９の圧力側フランクで受けられてプランジャ１２は後退しない。

このため、エンジンが再始動されてもチェーンの弛みは小さく、プランジャ１２は外方に大きく突出しない。したがって、圧力室１５における圧力の低下が小さく、圧力室１５内に外部の空気が侵入するという不都合の発生はない。

１０ ハウジング
１１ シリンダ室
１２ プランジャ
１４ リターンスプリング
１５ 圧力室
１６ 給油通路
１７ チェックバルブ
１８ ねじ孔
２０ ビス
２０ａ 頭部
２０ｂ 座面
２０ｃ 首部
２１ ばね座金
２２ ねじ隙間
２３ 環状空間
２４ 切り離し部
２５ 排気溝
２６ 円形凹部

Claims (3)

1. ハウジングに形成されたシリンダ室内に摺動可能なプランジャと、そのプランジャを外方に向けて付勢するリターンスプリングとを組み込み、ハウジングには前記プランジャの背部に形成された圧力室に連通する給油通路を設け、その給油通路の油出口側に、圧力室内の作動油が給油通路側に逆流するのを防止するチェックバルブを組み込み、前記ハウジングの上部外周から前記圧力室に至るねじ孔にビスをねじ係合し、そのビスの頭部とハウジングの外周間にばね座金を組み込み、前記圧力室内に滞溜する空気をねじ孔とビスのねじ係合部に形成される螺旋状のねじ隙間およびばね座金の周方向一部に形成される径方向の切り離し部から外部に排気させるようにしたチェーンテンショナにおいて、
   前記ビスの頭部における座面と前記ばね座金の衝合面における一方に、前記ビスの首部の外径面と前記ばね座金の内径面間に形成される環状空間と外部とを連通する排気溝を設けたことを特徴するチェーンテンショナ。
2. 前記排気溝が、複数の放射状配置の径方向溝からなる請求項１に記載のチェーンテンショナ。
3. 前記排気溝が前記ビスの頭部における座面に設けられ、その座面の内周部に、前記ばね座金の内側に形成される前記環状空間に連通する円形凹部を設けた請求項１又は２に記載のチェーンテンショナ。

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