JP6331558B2 - 粉末成形用ダイ - Google Patents

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本発明は、主として金属粉末からなる成形体を焼結する粉末冶金法に用いられる成形用ダイに関し、特に、前記成形体を造形するため、主として金属粉末からなる原料粉末をダイの型孔に充填し上下パンチで圧縮成形する、いわゆる押型法に用いられる粉末成形用ダイに関する。
粉末冶金法、特に押型法による焼結機械部品の製造方法は、(1)ニアネットシェイプに造形することができ、かつ、(2)大量生産に向くこと、および(3)溶製材料では得られない特殊な材料を製造できること、等の特長から、自動車用機械部品や各種産業用の機械部品に適用が進んでいる。
このような粉末冶金法においては、主として金属粉末からなる原料粉末をダイの型孔に充填し上下パンチで圧縮成形することから、カジリ(凝着)やクラック等のない成形体を得るためにはダイを含めた成形工程の改善が重要なポイントとなる。粉末冶金法の成形工程は、一般に、粉末と粉末、粉末とダイとの摩擦を軽減する目的で金属粉末の中に、成形潤滑剤粉末を添加する方法(いわゆる内部潤滑法)が行われている。このような成形潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛粉末やステアリン酸リチウム粉末等の金属石鹸粉末や、エチレンビスステアロアマイド等のワックスが一般的に用いられている。これらの成形潤滑剤の中でもステアリン酸亜鉛粉末が最も一般的に使用されている。
これらの成形潤滑剤を用いるにあたり、成形潤滑剤添加量の増加は、粉末成形用ダイの型孔と成形体の摩擦軽減に有効であるが、その一方で金属粉末を覆う潤滑剤層が厚くなり、粉末粒子同士の凝集力が増大して、原料粉末の流動度低下が生じ、型孔への原料粉末の充填不足を招くことになったり、成形体強度が低下して成形体に欠け、クラックが発生し易くなったりする。また、成形体に含有される成形潤滑剤は、焼結炉内で加熱され分解除去されるが、潤滑剤成分の酸化物が焼結炉内へ堆積して、炉の寿命短縮、焼結体不良の問題を引き起こすこととなる。
これらのことから、成形潤滑剤添加量は可能な限り極少に抑えることが必要となる。その一方で、成形潤滑剤の添加量が少なすぎると上下パンチで圧縮成形した成形体を粉末成形用ダイの型孔から抜き出す際に、成形体と型孔との摩擦が大きくなって成形体の抜き出しに要する荷重が増大するとともに、成形体の抜き出し時にクラックや欠け等の成形体の破損、もしくは成形体と型孔のカジリ(凝着)が生じ易くなる。
粉末冶金法において用いられる粉末成形用ダイの一般的な構造を図1に示す。粉末成形用ダイ1は、成形体の外側形状を形成するための型孔2aを有するインナー2と、ケース3からなる。粉末成形用ダイ1は、耐摩耗性、高硬度および高強度が要求されるため、一般に、合金工具鋼、高速度工具鋼、超硬合金等が用いられているが、これらの材質は靱性が低いことから、インナー2にこれらの材質を適用するとともに、インナー2の外周に配設されたケース3を靭性の高い鋼材等から構成し、インナー2をケース3の内孔に嵌合させて拘束することにより、インナー2の割れ、破損を防止している。
このような粉末成形用ダイ1においては、成形体の型孔2aからの抜き出しに際し、成形体と型孔2aとの摩擦を低減することを目的として、インナー2の表面をTiC、TiN、Al、TiCN、HfN、CrN、WC、DLC等でコーティングしたもの(特許文献1)や、摩擦係数の低いAlからなるセラミックスダイ(インナー)に、成形潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を組み合わせて用いること(特許文献2)等の提案が為されている。
特開2002−129201号公報 特開2011−042844号公報
近年、焼結部品はその用途を広げており、高強度な機械部品や、圧粉磁心等の磁性部品への適用も進んでいる。このような高強度な機械部品を製造するに際しては、鋼種のグレードを上げるとコストがかかることから、従来の鋼種の焼結機械部品を高密度にすることで対応している。また、圧粉磁心等の磁性部品を製造するに際しては、部品中のFeの占積率を高めて磁束密度を大きくする必要があることから、この場合も磁性部品を高密度にすることで対応している。これらの高密度化の要求に対しては、成形圧力を増加させて成形体の成形密度を高めることで行っている。
このような状況の下、特許文献1のような型孔表面に表面処理を施し表面層を形成した粉末成形用ダイを高圧の成形条件下で用いると、図2に示すように、表面層がダイの弾性変形に追従できず、表面層にクラックが発生するとともに、このクラックに成形体が噛み込んで、型カジリが発生し易くなる。
また、特許文献1のような表面処理はコストを増加させるので、小径かつ長尺の型孔の場合に、内部まで均一に表面処理できるか不明であり、特殊な表面処理を行うことなく粉末成形用ダイを作製できることが好ましい。また、これらの特殊な表面処理については、摩耗等により、表面処理が欠損した部分でその効果がなくなるものである。
さらに、特許文献2はAlからなるセラミックスダイ(インナー)に、成形潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を組み合わせて用いるものであるが、ステアリン酸亜鉛とは異なる成形潤滑剤を用いたい場合に利用できない。また、成形圧力が高くなると、抜き出し圧力が増加することとなる(特許文献2の図3等)。このため、粉末成形用ダイとしては、よりいっそうの摩擦の低減が求められる。また、特許文献2のAlはヤング率(曲げ強さ)が低いため、高圧力で成形するとインナーが破損する虞がある。
加えて、磁性部品のひとつである圧粉磁心は、鉄粉末等の軟磁性粉末の表面をリン酸塩化合物等の絶縁被膜で被覆した原料粉末を用いて成形したものであり、軟磁性粉末の表面を被覆する絶縁被膜により渦電流を個々の粉末単位で閉じこめることで渦電流を小さくして鉄損を低減したものである。しかしながら、成形後の抜き出し工程で成形体の側面と粉末成形用ダイの型孔とが摺動して絶縁被膜が破壊されると、その部分で電気が流れるため、渦電流が大きくなり、鉄損が増大することとなる。このため、圧粉磁心の成形においては、成形後の抜き出し工程において成形体の側面と粉末成形用ダイの型孔とが摺動しても粉末表面に形成した絶縁被膜が破壊されない、摺動状態の良好な低い摩擦係数の粉末成形ダイが求められている。
これらのことから、本発明の粉末成形用ダイは、表面処理を行わずコストが低いこと、成形体とダイとの摩擦(抜き出し圧力)をいっそう低減すること、および高圧力での成形に耐える高強度なものとすることを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者は、粉末成形用ダイのインナーの材質として、靱性が乏しいセラミックスに替えて、セラミックス粒子を金属相で結合したサーメットを用いることを検討した。これにより、粉末成形用ダイのインナーの靱性が向上し、高圧力での成形に耐える高強度なものとすることが可能となる。しかしながら、サーメットは金属相を有するため、金属粉末を主原料とする成形体と凝着が生じ易くなる。このため、本発明者は、サーメットを構成する硬質相と金属相の成分および量を調整することで、成形体との凝着を防止するとともに、成形体との摩擦をよりいっそう低減することができることを見出した。
本発明の粉末成形用ダイは、この知見により為されたものであり、成形体の外側形状を形成するための型孔を有するインナーと、該インナーの外周をその内孔で嵌合するケースとからなり、前記型孔に金属粉末を主原料とする原料粉末を充填し、次いで充填された原料粉末を圧縮成形し、得られた成形体を前記型孔から抜出す粉末成形方法に用いられる粉末成形用ダイにおいて、前記インナーの金属組織が面積比で、TiCN粒子:60〜70%、TiC粒子:5〜15%、TiN粒子:5〜15%からなる硬質相を含むことを特徴とする。
本発明の粉末成形用ダイは、インナーが金属合金相を含み、当該金属合金が、質量比で、Cr:2〜10%、Fe:2〜15%、Mo:10〜35%および残部がNiおよび不可避不純物からなる組成である。また、インナーのTiCN粒子、TiC粒子およびTiN粒子の大きさが円相当径で0.5〜2μmであること、およびインナーの金属合金相が、円相当径で0.5〜1μmであることを好ましい態様とする。
本発明の粉末成形用ダイは、使用する成形潤滑剤の種類を問わず、成形体と型孔との摩擦(抜き出し圧力)を低減できるとともに、高圧力での成形に耐える高強度を有するものであり、高圧成形の下でも成形体と型孔のカジリを防止し、良好な成形体を成形することが可能となる。
粉末成形用ダイの構造を説明する模式図であり、図1(a)は断面図、図1(b)は斜視図である。 従来の型孔表面に表面処理を施し表面層を形成した粉末成形用ダイを高圧の成形条件下で用いたときの表面層のクラックを示す模式図である。 本発明の粉末成形用ダイに係るインナーの金属組織を示す模式図である。 本発明の粉末成形用ダイの実施形態を説明する断面模式図である。 本発明ダイ1の電子線マイクロアナライザ分析結果である。 本発明ダイ2の電子線マイクロアナライザ分析結果である。 50,000ショット連続成形した際の50,000ショット目の成形体の側面の外観写真である。 本発明ダイと従来の超硬合金製ダイの成形圧力を変えた場合の抜き出し圧力の変化を示すグラフである。
以下に、本発明の粉末成形用ダイの構成について説明する。図3は、本発明の粉末成形用ダイに係るインナーの金属組織の模式図であり、図3(a)に示すように、硬質相10とこれを結合する金属合金相20からなる。この硬質相10は、TiCNの粒子を主成分とし、さらにTiC粒子とTiN粒子からなるものとする。
TiCは硬さが3000〜4000Hvと硬く、摩擦係数も低いという特徴を有する。また、TiNは摩擦係数が低く、硬さが2000〜2300Hv程度とTiCよりは低いが、強度が高いという特徴を有する。さらに、TiCNは硬さが2500〜3200Hv程度でTiNよりも硬さが高いとともに摩擦係数が低く、強度に優れるという特徴を有する。このため、インナーの硬質相10としては、強度が高く、硬さが高いTiCNの粒子を主成分とし、硬質相10と金属合金相20を含めた金属組織の断面面積率で60〜70%となるようにする。TiCN粒子の量が60面積%を下回ると、硬さが低下して型孔と成形体との摩擦係数が高くなるとともに、インナーの強度が低下することとなる。その一方で、TiCN粒子の量が70面積%を超えると、金属合金相20の量が乏しくなりインナーの強度が低下することとなる。
また、硬質相10としては、上記のTiCN粒子を補助するため、硬さが高いTiC粒子および強度が高いTiN粒子をTiCN粒子とともに分散させる。ここで、TiC粒子の量が、硬質相10と金属合金層20とを含めた金属組織の断面面積率で、5面積%を下回ると、インナーの硬さが低下して型孔と成形体との摩擦係数が高くなるとともに、インナーの強度が低下することとなる。その一方で、TiC粒子の量が15面積%を超えると硬質相10の強度が低下してインナーの強度が低下することとなる。したがって、本発明では、TiC粒子の同断面面積率を5〜15%の範囲とすることが好ましい。また、TiN粒子の量が、同断面面積率で5面積%を下回ると硬質相10の強度が低下してインナーの強度が低下することとなる。その一方で、TiN粒子の量が、同断面面積率で15面積%を超えると、インナーの硬さが低下して型孔と成形体との摩擦係数が高くなる。したがって、本発明では、TiN粒子の同断面面積率を5〜15%の範囲とすることが好ましい。
上記のTiCN粒子を主成分としてTiC粒子およびTiN粒子からなる硬質相10は、硬質相10と金属合金層20とを含めた金属組織の断面面積率で、75〜90%の範囲とし、残部を結合相となる金属合金相20とする。すなわち金属合金相20の量は金属組織の断面面積率で10〜25%の範囲とする。金属合金相20の金属組織の断面面積率が10%を下回ると、インナーの強度が低下することとなる。その一方で、金属合金相20の金属組織の断面面積率が25%を超えると硬質相の量が乏しく、成形体との凝着が発生し易くなる。
金属合金相20はNi、Fe、CrおよびMoからなるものとすることが好ましい。Niは、金属合金相20の主成分をなし、インナーの靱性を高めて高強度とする効果がある。CrはNiの濡れ性を改善して硬質相10と金属合金相20の結合を強固とするとともに、Niと合金化してNi合金の強度向上に寄与する。このようなCrは、金属合金相の組成において、Cr量が2質量%を下回るとNiの濡れ性改善の効果およびNi合金の強化の作用が乏しく、インナーの強度が低下することとなる。その一方で、金属合金相の組成中のCr量が10%を超えると、型孔と成形体のカジリが発生し易くなる。このため、金属合金相の組成におけるCr量を2〜10質量%の範囲とする。
FeはNi合金を強化し強度の向上に寄与する。Feは、金属合金相の組成において、Fe量が2質量%に満たないと、Ni合金の強化の作用が乏しい。その一方で、金属合金相の組成中のFe量が15%を超えると、鉄系粉末を主体とする鉄系原料粉末の成形において、型孔と成形体のカジリが発生し易くなる。このため、金属合金相の組成におけるFe量を2〜15質量%の範囲とする。
MoはNi合金の濡れ性を改善して硬質相10と金属合金相20の結合を強固とする作用がある。ただしMo量が10質量%に満たないとNi合金の濡れ性改善の効果が乏しくなる。一方、Mo量が35質量%を超えると、型孔と成形体のカジリが発生し易くなる。このため、金属合金相の組成中のMo量は10〜35質量%とすることが好ましい。
本発明の粉末成形用ダイに係るインナーの硬質相10の大きさは、小さいほど強度が向上するため好ましい。上記の硬質相10においては、硬質相10を形成する各粒子、すなわちTiCN粒子、TiC粒子およびTiN粒子の大きさは、図3(b)に示すように、図中点線で示す、金属組織を観察したときの元の粉末粒子の境界30、いわゆる粉末粒界で囲まれた、元の粉末粒子の部分の大きさが、円相当径で2μm以下であることが好ましい。円相当径は、例えば倍率800倍の金属組織写真を三谷商事株式会社製WinROOF等の画像解析ソフトウェアで解析することで各々の粉末粒子部分の円相当径を求めることができる。このようにして求めた元の各粉末粒子部分の円相当径の平均が2μm以下となることが好ましい。
また、図3(a)および図3(b)に示すように、金属合金相20は硬質相10に周囲を囲まれた状態で金属組織中に分散する。この金属合金相20は粗大となると、金属合金相20が成形体と凝着し易くなるため、金属合金相20についても円相当径で1μm以下とすることが好ましい。金属合金相20も上記の元の粉末粒子部分の大きさと同様に、例えば倍率800倍の金属組織写真を三谷商事株式会社製WinROOF等の画像解析ソフトウェアで解析することで各々の金属合金相の円相当径を求めることができる。このようにして求めた金属組織中の各金属合金相の円相当径の平均が1μm以下となることが好ましい。
ところで、粉末成形用ダイのインナーは、原料として、TiCN粒子粉末、TiC粒子粉末およびTiN粒子粉末からなる硬質相10を形成するための粉末に、金属合金相20を形成するため金属粉末または金属合金粉末を添加した原料粉末をダイの形状に押し固めた後焼結することで製造される。このとき、元の粉末粒子が微細に過ぎると、原料粉末の流動性が低下したり、押し固める際にダイの隙間に微細な粉末粒子が入り込んでカジリが発生する等するため、インナーの製造が難しくなる。この観点から元の各粉末粒子部分の円相当径の平均および金属組織中の各金属合金相の円相当径の平均が0.5μm以上とすることが好ましい。
上記のインナーは、特許文献2等のセラミックスよりも強度が高く、超硬合金に匹敵する強度を示すが、800MPa以上の高圧成形で用いる場合、インナーの割れや破損が生じる虞がある。インナーの割れや破損はインナーの材料強度を超える引張応力とせん断応力が作用することにより発生するため、インナーは該インナーの外周を嵌合するケースを締まり嵌めで嵌合し予め圧縮応力が付加される構造とし、成形時ダイに内圧が掛かったときにインナーに発生する円周方向の引張応力および加圧方向に対して垂直方向のせん断応力を相殺して、より高圧力での成形を可能としている。
その一方で、ケースは締め代によってケースに掛かる円周方向の引張応力に耐え得る材料が選択される。ケースの材質としては、ヤング率が70GPa以上となる金属材料を用いることが好ましい。ヤング率が70GPa未満ではケースの剛性不足により予圧縮応力が低下し、800MPa以上の圧力によりインナーに作用する円周方向の引張応力および加圧方向に対して垂直方向のせん断応力がインナーの材料の許容応力以上となり、インナーが破損する虞がある。このような材料としては、JIS G 4103(Ni−Cr−Mo鋼)に規定のSNCM439、SNCM447や、JIS G 4105(Cr−Mo鋼)に規定のSCM435及びJIS G 4404(合金工具鋼)に規定のSKD61などを挙げることができる。
上記の粉末成形用ダイにおいては、図4に示すように、型孔2aに成形体抜き出し側へ拡大するテーパ角度θのテーパを設けることが好ましい。型孔2aにテーパを設けても粉末と型孔壁面との摩擦抵抗が通常の場合とさほど変わらないが、成形体抜き出し側へ拡大するテーパを設けると、テーパ比の量だけ成形体の横断面積が減少するため、パンチ加圧方向の圧縮に加え、圧縮方向と直角方向からも成形体が圧縮されることとなる。このためテーパを持たない型孔2aの場合に比べて高い密度の成形体を得ることができる。また、型孔2aから成形体を抜き出す際に型孔2aにテーパがあると、成形体の移動に伴い、成形体が順次型孔2aから離型されるので、成形体と型孔2aの内壁面との摩擦抵抗により決定される抜き出し荷重は、成形体の抜き出しの進行にしたがい小さくなる。このテーパ角度θは、1/5000未満では効果が乏しく、その一方で、テーパ角度θを大きくすると成形体にテーパが生じ、寸法精度が悪化するため、下限を1/5000とし、上限を1/1000とする。
また、上記の粉末成形用ダイにおいては、図4に示すように、インナー2とケース3の境界面をテーパ角度θのテーパ形状として、インナー2の外周とケース3の内孔とを締まり嵌めで嵌合することが好ましい。インナー2の割れや破損はインナー2の型孔2aに作用する引っ張り応力がインナー2の材料強度を超えることにより生じるが、インナー2の外周をケース3で締まり嵌めで嵌合すると、外周からインナー2に圧縮応力が加わることとなり、その分インナー2の割れや破損が発生するまでの応力を稼ぐことができるようになり、より高圧力での成形が可能となる。
また、インナー2とケース3の境界面をテーパ形状とすることにより、圧入時の境界面に働く垂直方向の抗力はテーパ角度が大きくなるに従い大きくなることから、圧入後の境界面の相互圧力が大きくなり、インナー2の円周方向の引張応力を小さくすることができる。従って、ストレート形状よりも強度上有利となる。
このテーパ角度θは1/30未満ではインナー2の円周方向の引張応力の低減効果が小さく、また、圧入時の突き出し量が大きくなり、大きな圧力が必要になってくること、さらに、圧入中にスティックスリップを起こす虞がある。その一方で、1/20を超えると摩擦係数の低減により連続成形時にインナー2がケース3から抜け出ることとなるため、1/30〜1/20の範囲とすることが好ましい。
以上の粉末成形用ダイは、使用する成形潤滑剤の種類を問わず、成形体と型孔との摩擦(抜き出し圧力)を低減できるものである。また、高圧力での成形に耐える高強度を有するものであり、800MPa以上の高圧成形の下でも成形体と型孔のカジリを防止し、良好な成形体を成形することが可能となる。さらに、原料粉末として鉄系の原料粉末を用いた場合であっても、成形体と型孔のカジリを防止し、良好な成形体を成形することが可能となる。
本発明ダイ1として、TiCN粒子:70面積%、TiC粒子:10面積%、TiN粒子:10面積%および金属合金相:10面積%であり、金属合金相の組成がNi−14質量%Fe−23質量%Mo−4質量%Crの材料からなるインナーを用意した。また、本発明ダイ2として、TiCN粒子:61面積%、TiC粒子:13面積%、TiN粒子:10面積%および金属合金相:16面積%であり、金属合金相の組成がNi−14質量%Fe−23質量%Mo−4質量%Crの材料からなるインナーを用意した。従来の超硬合金製ダイとして、JIS規格のV3相当、超硬工具協会規格(CIS)VM−4相当(WC−12質量%Coの組成)の超硬合金からなるインナーを用意した。これらのダイの各種特性を表1に示す。
表1より、本発明ダイは、曲げ強さ、圧縮強さ、硬さおよび破壊靭性値が、従来の超硬合金と同等であり、粉末成形用ダイとして充分な機械的特性を有している。また、比重は超硬合金の1/3程度と軽量であり、摩擦係数が超硬合金の1/4と低い値を示しており、粉末成形用ダイとした場合に、軽量化を図ることができるとともに、潤滑性が向上したものとすることができる。なお、本発明ダイ1と本発明ダイ2を比較すると、本発明ダイ2は、金属合金相の量が多くなっており、曲げ強さが高く、破壊靱性値が高くなっている。
本発明ダイ1および本発明ダイ2を電子線マイクロアナライザ(EPMA)で分析した結果を図5および図6に示す。図5が本発明ダイ1、図6が本発明ダイ2の分析結果である。図5および図6においては、電子線マイクロアナライザでTi、C、N、Ni、Fe、CrおよびMoの各成分の分布を取得するとともに、TiとCとNの3成分が検出された部分をマッピングしたもの、TiとCの2成分が検出された部分をマッピングしたもの、TiとNの2成分が検出された部分をマッピングしたもの、およびNi、Fe、CrおよびMoが検出された部分をまとめてマッピングしたもの、に分けて表示した。すなわち、TiとCとNの3成分が検出された部分はTiCN粒子であり、TiとCの2成分が検出された部分はTiC粒子、TiとNの2成分が検出された部分はTiN粒子である。また、Ni、Fe、CrおよびMoが検出された部分は金属合金相である。
図5および図6より、本発明ダイ1および本発明ダイ2とも、主たるTiCN粒子と、主たるTiCN粒子の存在しない部分にTiC粒子、TiN粒子が別個に存在しており、金属合金相がこれらの硬質相間に存在していることがわかる。
[第1実施例]
本発明ダイ1、本発明ダイ2および超硬合金製ダイについて、それぞれ型孔にステアリン酸亜鉛粉末を静電塗布した後、原料粉末として、リン酸塩化合物を含む無機絶縁被膜によって被覆された鉄粉末を充填し、成形圧力1600MPaの条件で外径20mm、内径6.5mmおよび高さ10mmの圧粉磁心用成形体を50,000回連続成形し、50,000回目に成形された成形体の側面を観察した。この結果を図7に示す。
圧粉磁心は、上記のように、鉄粉末等の軟磁性粉末の表面をリン酸塩化合物等の絶縁被膜で被覆した原料粉末を用いて成形したものであり、成形後の抜き出し工程において成形体の側面と粉末成形用ダイの型孔とが摺動した際に、絶縁被膜が破壊されると、その部分で電気が流れて渦電流損が増大する結果、鉄損が増大することとなる。このため、圧粉磁心の成形においては、成形体の絶縁被膜を破壊せず抜き出すことが必要となる。
本発明ダイ1および本発明ダイ2とも、圧粉磁心用成形体を連続成形した際の1回目の成形体側面は原料粉末の形状がはっきりわかる。また、圧粉磁心用成形体を50,000回連続成形した50,000回目の成形体側面において、塑性流動は生じておらず、絶縁被膜の破壊が生じていないことがわかる。このことから本発明ダイ1および本発明ダイ2とも良好な摺動状態を維持できる、摩擦が低いものであることがわかる。その一方で、従来の超硬合金製ダイは、1回目の成形体側面において塑性流動が生じており、さらに、50,000回目の成形体側面において著しい塑性流動が生じている。
[第2実施例]
機械部品用焼結部品のための原料粉末として一般的な、鉄粉末に1.5質量%の銅粉末と、1質量%の黒鉛粉末と、成形潤滑剤としてステアリン酸亜鉛粉末を0.5質量%および0.8質量%添加した原料粉末を用い、それぞれの原料粉末について、本発明ダイ2と超硬合金製ダイを用い、成形圧力を変えて外径20mm、高さ20mmの成形体に成形し、成形後に成形体を型孔から抜き出す際の抜き出し圧力を測定した。この結果を図8に示す。
図8より、成形潤滑剤が0.5質量%の場合、0.8質量%の場合のいずれも本発明ダイ2は、従来の超硬合金ダイよりも抜き出し圧力が小さくなっており、いずれの場合も成形体とダイとの摩擦(抜き出し圧力)が低くなっていることがわかる。
以上より、本発明の粉末成形用ダイは、表面処理を行うものではないからコストが低いものであり、成形体とダイとの摩擦(抜き出し圧力)が低く、かつ従来の超硬合金製ダイと同等の機械的強さを示し高圧力での成形に耐える高強度なものであることが確認された。
本発明の粉末成形用ダイは、成形体とダイとの摩擦(抜き出し圧力)が低く、成形体を高密度に成形しても良好な抜き出しを行うことができるものであり、高強度焼結機械部品用や、圧粉磁心等の粉末冶金法による磁性部品用の成形体の成形に好適なものである。
1 粉末成形用ダイ
2 インナー
2a 型孔
3 ケース
10 硬質相
20 金属合金相
30 元の粉末の境界(粉末粒界)

Claims (8)

  1. 成形体の外側形状を形成するための型孔を有するインナーと、該インナーの外周をその内孔で嵌合するケースとからなり、
    前記型孔に金属粉末を主原料とする原料粉末を充填し、次いで充填された原料粉末を圧縮成形し、得られた成形体を前記型孔から抜出す粉末成形方法に用いられる粉末成形用ダイにおいて、
    前記インナーの金属組織が面積比で、TiCN粒子:60〜70%、TiC粒子:5〜15%、TiN粒子:5〜15%からなる硬質相と、この硬質相を結合させる金属合金相:10〜25%からなり、
    前記インナーの金属合金相が、質量比で、Cr:2〜10%、Fe:2〜15%、Mo:10〜35%および残部がNiおよび不可避不純物からなる組成であることを特徴とする粉末成形用ダイ。
  2. 前記インナーのTiCN粒子、TiC粒子およびTiN粒子の大きさが円相当径で0.5〜2μmであることを特徴とする請求項1に記載の粉末成形用ダイ。
  3. 前記インナーの金属合金相が、円相当径で0.5〜1μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の粉末成形用ダイ。
  4. 前記ケースが、ヤング率70GPa以上を有する金属材からなることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の粉末成形用ダイ。
  5. 前記型孔が圧粉体抜出し側へ拡大するテーパを有しているとともに、
    前記テーパの角度θが1/5000〜1/1000の範囲であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の粉末形成用ダイ。
  6. 前記インナーの外周と前記ケースの内孔の境界面がテーパ形状であるとともに、前記インナーの外周が前記ケースの内孔に締まり嵌めで嵌合しているとともに、前記テーパの角度θが1/30〜1/20の範囲であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の粉末成形用ダイ。
  7. 前記原料粉末が鉄系粉末を主原料とする粉末であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の粉末成形用ダイ。
  8. 800MPa以上の成形圧力で用いられることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の粉末成形用ダイ。
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