まず、図1を用いて、プリンター1(画像形成装置)の全体の構成について説明する。以下、図1における紙面手前側を、プリンター1の前側とする。各図に適宜付される矢印Fr、Rr、L、R、U、Loは、それぞれプリンター1の前側、後側、左側、右側、上側、下側を示している。
プリンター1は、箱型形状のプリンター本体2を備えており、プリンター本体2の下部には、用紙(記録媒体)を収納する給紙カセット3が収容され、プリンター本体2の上面には排紙トレイ4が設けられている。プリンター本体2の上面には、排紙トレイ4の側方に上カバー5が開閉可能に取り付けられ、上カバー5の下方にはトナーコンテナ6が収納されている。
プリンター本体2の上部には、レーザー・スキャニング・ユニット(LSU)で構成される露光器7が排紙トレイ4の下方に配置され、露光器7の下方には、画像形成部8が設けられている。画像形成部8には、像担持体である感光体ドラム10が回転可能に設けられており、感光体ドラム10の周囲には、帯電器11と、現像器12と、転写ローラー13と、クリーニング装置14とが、感光体ドラム10の回転方向(図1の矢印X参照)に沿って配置されている。
プリンター本体2の内部には、用紙の搬送経路15が設けられている。搬送経路15の上流端には給紙部16が設けられ、搬送経路15の中流部には、感光体ドラム10と転写ローラー13によって構成される転写部17が設けられ、搬送経路15の下流部には定着装置18が設けられ、搬送経路15の下流端には排紙部19が設けられている。搬送経路15の下方には、両面印刷用の反転経路20が形成されている。
次に、このような構成を備えたプリンター1の画像形成動作について説明する。
プリンター1に電源が投入されると、各種パラメーターが初期化され、定着装置18の温度設定等の初期設定が実行される。そして、プリンター1に接続されたコンピューター等から画像データが入力され、印刷開始の指示がなされると、以下のようにして画像形成動作が実行される。
まず、帯電器11によって感光体ドラム10の表面が帯電された後、露光器7からのレーザー光(図1の二点鎖線P参照)により感光体ドラム10に対して画像データに対応した露光が行われ、感光体ドラム10の表面に静電潜像が形成される。次に、この静電潜像を、現像器12がトナーによりトナー像に現像する。
一方、給紙部16によって給紙カセット3から取り出された用紙は、上記した画像形成動作とタイミングを合わせて転写部17へと搬送され、転写部17において感光体ドラム10上のトナー像が用紙に転写される。トナー像を転写された用紙は、搬送経路15を下流側へと搬送されて定着装置18に進入し、この定着装置18において用紙にトナー像が定着される。トナー像が定着された用紙は、排紙部19から排紙トレイ4に排出される。なお、感光体ドラム10上に残留したトナーは、クリーニング装置14によって回収される。
次に、図2〜図6を用いて、定着装置18について詳細に説明する。各図に適宜付される矢印Yは、用紙の搬送方向を示している。各図に適宜付される矢印Iは前後方向内側を示し、各図に適宜付される矢印Oは前後方向外側を示している。
図2、図3に示されるように、定着装置18は、箱型形状の定着フレーム21(図3では図示略)と、定着フレーム21の上部に収容される定着ベルト22と、定着フレーム21の下部に収容され、定着ベルト22の下側(外径側)に配置される加圧ローラー23(加圧部材)と、定着ベルト22の内径側の空間の上部に配置されるヒーター24(熱源)と、定着ベルト22の内径側の空間においてヒーター24の下側に配置される反射部材25と、定着ベルト22の内径側の空間の下端部に配置される押圧パッド26(押圧部材)と、押圧パッド26に巻き付けられるシート部材27と、定着ベルト22の内径側の空間において押圧パッド26の上側に配置される支持部材28と、定着ベルト22とヒーター24の間に設けられるカバー部材29と、定着ベルト22の前後両端部に装着される規制部材30(図2では図示略)と、を備えている。
図2に示されるように、定着フレーム21は、上フレーム部33と下フレーム部34によって構成されている。上フレーム部33には、定着ベルト22の過昇温を防止するためのサーモカット35(過昇温防止装置)が設けられている。
定着ベルト22は、前後方向に長い略円筒状を成している。定着ベルト22は、前後方向に延びる回転軸Aの周りを回転可能に設けられている。つまり、本実施形態では、前後方向が定着ベルト22の回転軸方向である。
定着ベルト22は、可撓性を有しており、周方向には無端状である。定着ベルト22は、例えば、基材層と、この基材層に周設される弾性層と、この弾性層を被覆する離型層と、を備えている。定着ベルト22の基材層は、例えばSUSなどの金属によって形成されている。なお、定着ベルト22の基材層は、PI(ポリイミド)などの樹脂によって形成されていても良い。定着ベルト22の弾性層は、例えばシリコンゴムによって形成されている。定着ベルト22の離型層は、例えばPFAチューブによって形成されている。
図3に示されるように、定着ベルト22は、通過領域R1と、通過領域R1の前後両外側にそれぞれ設けられる非通過領域R2と、を備えている。通過領域R1は、最大サイズの用紙(例えば、A3サイズの用紙)が通過する領域であり、非通過領域R2は、最大サイズの用紙が通過しない領域である。
図2に示されるように、加圧ローラー23は、前後方向に長い略円柱状を成している。加圧ローラー23は、定着ベルト22に圧接しており、定着ベルト22と加圧ローラー23の間には定着ニップNが形成されている。加圧ローラー23は、モーターなどによって構成される駆動源50に接続されており、駆動源50によって加圧ローラー23を回転させるように構成されている。
加圧ローラー23は、例えば、円柱状の芯材51と、この芯材51に周設される弾性層52と、この弾性層52を被覆する離型層(図示せず)と、を備えている。加圧ローラー23の芯材51は、例えば、鉄等の金属によって形成されている。加圧ローラー23の弾性層52は、例えば、シリコンゴムによって形成されている。加圧ローラー23の離型層は、例えば、PFAチューブによって形成されている。
ヒーター24は、例えば、ハロゲンヒーターによって構成されている。ヒーター24は、前後方向に長い形状を成している。ヒーター24は、定着ベルト22の回転軸Aに対して上側(加圧ローラー23から離間する側)に偏った位置に設けられている。
図3に示されるように、ヒーター24は、フィラメント54(熱放射部)と、フィラメント54をハロゲンガスと共に収容する収容部56と、収容部56の前後両外側にそれぞれ設けられる封止部57と、を備えている。フィラメント54は、例えば、タングステンによって形成されており、コイル状を成している。フィラメント54は、ヒーター24の通電に伴って発熱し、輻射熱を放射するように構成されている。収容部56は、例えば、石英ガラスによって形成されている。各封止部57は、収容部56の前後両端部をそれぞれ封止している。
図2に示されるように、反射部材25は、上側(加圧ローラー23から離間する側)に向かって凸となる略コ字状の断面を有している。反射部材25は、前後方向に長い形状を成している。反射部材25は、例えば、光輝アルミニウム等の金属によって形成されている。反射部材25は、ヒーター24と支持部材28の間に配置されている。
反射部材25は、用紙の搬送方向に沿って設けられる反射板部59と、反射板部59の左右両端部(用紙の搬送方向における上流側と下流側の端部)から下方に向かって屈曲されるガイド板部60と、を備えている。反射板部59の上面は、ヒーター24に対向している。
図2、図3に示されるように、押圧パッド26は、前後方向に長い平板状を成している。つまり、本実施形態では、前後方向が押圧パッド26の長手方向である。押圧パッド26は、例えば、LCP(液晶ポリマー)等の耐熱性樹脂によって形成されている。押圧パッド26の下面(定着ニップN側の面)は、加圧ローラー23の外周面に沿って円弧状に湾曲している。押圧パッド26の下面は、定着ベルト22を下側(加圧ローラー23側)に向かって押圧している。
図4に示されるように、押圧パッド26の上面(定着ニップNとは反対側の面)には、前後方向に間隔をおいて左右一対の支持突部66が複数セット(例えば、9セット)設けられている。押圧パッド26の上面の左右方向中央部には、前後方向に間隔をおいて固定突部67が複数個(例えば、7個)設けられている。押圧パッド26の上面の左右方向中央部には、固定突部67の形成間隔に、突起部68が複数個(例えば、3個)設けられている。
シート部材27は、前後方向に長い形状を成している。シート部材27は、例えばPTFEなどのフッ素系樹脂によって形成されており、押圧パッド26よりも摩擦係数が小さく、摺動性が高い。
図3〜図5に示されるように、シート部材27は、定着ベルト22の内周面と押圧パッド26の下面の間に介装される本体部71と、本体部71の前後両端部から上側(定着ニップNとは反対側)に向かって延出する長手側被覆部72と、各長手側被覆部72の上端部(定着ニップNとは反対側の端部)から前後方向内側に向かって延出する長手側固定部73と、本体部71の右端部(用紙の搬送方向における上流側の端部)から上側(定着ニップNとは反対側)に向かって延出する上流側被覆部74(図3では、図示略)と、上流側被覆部74の上端部(定着ニップNとは反対側の端部)から左側(用紙の搬送方向における下流側)に向かって延出する上流側固定部75と、本体部71の左端部(用紙の搬送方向における下流側の端部)から上側(定着ニップNとは反対側)に向かって延出する下流側被覆部76と、下流側被覆部76の上端部(定着ニップNとは反対側の端部)から右側(用紙の搬送方向における上流側)に向かって延出する下流側固定部77と、を備えている。
なお、図6の二点鎖線R1は、長手側被覆部72と長手側固定部73の境界を示し、図6の二点鎖線R2は、上流側被覆部74と上流側固定部75の境界を示し、図6の二点鎖線R3は、下流側被覆部76と下流側固定部77の境界を示している。
図3に示されるように、シート部材27の各長手側被覆部72は、押圧パッド26の前後両端面(長手方向の両端面)を全域に亘って覆っている。各長手側被覆部72は、押圧パッド26の前後両端面に接触している。但し、各長手側被覆部72は、押圧パッド26の前後両端面から離間していても良い。
シート部材27の各長手側固定部73は、押圧パッド26の上面の前後両端部を覆っている。図6に示されるように、各長手側固定部73には、左右一対の長手側第1穴部79が設けられている。各長手側固定部73の左右方向中央部には、長手側第2穴部80が設けられている。
図5に示されるように、シート部材27の上流側被覆部74は、押圧パッド26の右側面(用紙の搬送方向における上流側の面)を全域に亘って覆っている。上流側被覆部74は、押圧パッド26の右側面に接触している。但し、上流側被覆部74は、押圧パッド26の右側面から離間していても良い。
シート部材27の上流側固定部75は、押圧パッド26の上面を全域に亘って覆っている。図6に示されるように、上流側固定部75には、左右一対の上流側第1穴部81が複数セット(例えば、9セット)設けられている。上流側固定部75の左右方向中央部には、前後方向に間隔をおいて、上流側第2穴部82が複数個(例えば、7個)設けられている。上流側固定部75の左右方向中央部には、上流側第2穴部82の形成間隔に、上流側第3穴部83が複数個(例えば、3個)設けられている。
図5に示されるように、シート部材27の下流側被覆部76は、押圧パッド26の左側面(用紙の搬送方向における下流側の面)を全域に亘って覆っている。下流側被覆部76は、押圧パッド26の左側面に接触している。但し、下流側被覆部76は、押圧パッド26の左側面から離間していても良い。
シート部材27の下流側固定部77は、押圧パッド26の上面を全域に亘って覆っている。図6に示されるように、下流側固定部77には、左右一対の下流側第1穴部84が複数セット(例えば、9セット)設けられている。下流側固定部77の左右方向中央部には、前後方向に間隔をおいて、下流側第2穴部85が複数個(例えば、7個)設けられている。下流側固定部77の左右方向中央部には、下流側第2穴部85の形成間隔に、下流側第3穴部86が複数個(例えば、3個)設けられている。
図2に示されるように、支持部材28は、前後方向に長い略四角筒状(断面ロの字状)を成している。支持部材28の上部は、反射部材25の各ガイド板部60の間に挿入されている。支持部材28は、第1支持板91と第2支持板92を組み合わせて溶接することで形成されている。第1支持板91と第2支持板92は、SECC(亜鉛メッキ鋼板)等から成るL字状の板金によって形成されており、互いに別体に設けられている。
支持部材28の第1支持板91は、用紙の搬送方向に沿って延びる第1搬送方向壁部93と、第1搬送方向壁部93の右端部(用紙の搬送方向における上流側の端部)から略直角に屈曲され、用紙の搬送方向とは直交(交差)する方向に沿って上側(定着ニップNとは反対側)に向かって延びる第1交差方向壁部94と、を備えている。第1搬送方向壁部93の下面には、押圧パッド26の各支持突部66の上端部が当接している。これにより、支持部材28によって押圧パッド26が支持されており、押圧パッド26の変形が規制されている。第1搬送方向壁部93の左右方向中央部には、前後方向に間隔をおいて貫通穴97が複数個(例えば、3個)設けられており、各貫通穴97を押圧パッド26の各突起部68が貫通している。これにより、押圧パッド26が支持部材28に対して位置決めされている。
支持部材28の第2支持板92は、用紙の搬送方向に沿って延びる第2搬送方向壁部95と、第2搬送方向壁部95の左端部(用紙の搬送方向における下流側の端部)から略直角に屈曲され、用紙の搬送方向とは直交(交差)する方向に沿って下側(定着ニップN側)に向かって延びる第2交差方向壁部96と、を備えている。第2搬送方向壁部95の右端部は、第1支持板91の第1交差方向壁部94の上端部に固定されている。第2交差方向壁部96の下端部は、第1支持板91の第1搬送方向壁部93の左端部に固定されている。
各カバー部材29は、例えば、SUS等の金属によって形成されている。図3に示されるように、各カバー部材29は、定着ベルト22の非通過領域R2と前後方向の位置が重なるように設けられている。
図2、図3に示されるように、各カバー部材29は、湾曲部100と、湾曲部100の左右両端部(用紙の搬送方向における両端部)から屈曲され、用紙の搬送方向とは直交(交差)する方向に沿って下側(定着ニップN側)に向かって延びる一対の取付部101と、を備えている。
各カバー部材29の湾曲部100は、定着ベルト22の内周面に沿って円弧状に湾曲しており、定着ベルト22の内周面と間隔を介して対向している。湾曲部100の前後方向内側の部分には、周方向に間隔をおいてスリット102が複数個(例えば3個)設けられている。各スリット102は、前後方向に延びる長穴状を成している。
各カバー部材29の各取付部101は、平板状に設けられている。各取付部101の下部の前後方向外側の部分は、ビス103を介して支持部材28の左右両側面に取り付けられている。各取付部101の下部の前後方向内側の隅部には、凹溝104が設けられている。
各カバー部材29の前後方向外側の端部には、湾曲部100及び各取付部101に跨って、切欠部105が形成されている。切欠部105は、ヒーター24の封止部57と前後方向の位置が重なるように設けられている。切欠部105の前後方向内側の端部は、封止部57の前後方向内側の端部と前後方向の位置が一致している。切欠部105の前後方向外側の端部(各カバー部材29全体の前後方向外側の端部にも相当する)は、封止部57の前後方向外側の端部よりも前後方向内側に位置している。
図3に示されるように、各規制部材30は、各カバー部材29よりも前後方向外側に配置されている。各規制部材30は、規制片108と、規制片108に取り付けられるリング片109と、を備えている。
各規制部材30の規制片108は、基台部110と、基台部110の前後方向内側の面に突設される挿入部111と、を備えている。規制片108には、基台部110と挿入部111を貫通するガイド穴112が前後方向に沿って設けられており、このガイド穴112をヒーター24及び支持部材28が貫通している。挿入部111は、ガイド穴112の外周に沿って湾曲しており、円弧状(下向きC字状)を成している。挿入部111は、定着ベルト22の前後両端部に挿入されている。これにより、定着ベルト22の形状が規制されている(定着ベルト22の変形が抑制されている)。
各規制部材30のリング片109は、円環状を成している。リング片109は、規制片108の挿入部111の外周に装着されている。リング片109は、定着ベルト22の前後両端部の前後方向外側に配置されており、定着ベルト22の蛇行(前後方向外側への移動)を規制している。
上記のように構成された定着装置18において、用紙にトナー像を定着させる際には、駆動源50によって加圧ローラー23を回転させる(図2の矢印B参照)。このように加圧ローラー23が回転すると、加圧ローラー23に圧接する定着ベルト22が加圧ローラー23とは逆方向に従動回転する(図2の矢印C参照)。このように定着ベルト22が回転すると、定着ベルト22がシート部材27に対して摺動する。
また、用紙にトナー像を定着させる際には、ヒーター24を通電させる。このようにヒーター24が通電すると、ヒーター24のフィラメント54から輻射熱が放射される。ヒーター24のフィラメント54から放射された輻射熱の一部は、定着ベルト22の内周面に直接照射され、吸収される。また、ヒーター24のフィラメント54から放射された輻射熱の別の一部は、反射部材25の反射板部59の上面によって定着ベルト22の内周面に向かって反射され、定着ベルト22の内周面に吸収される。以上のような作用により、ヒーター24によって定着ベルト22が加熱される。この状態で、用紙が定着ニップNを通過すると、トナー像が加熱されて溶融し、用紙にトナー像が定着される。
また、上記のように構成された定着装置18において、シート部材27を押圧パッド26に巻き付ける際には、まず、押圧パッド26の下面をシート部材27の本体部71の上面に重ねるようにして、押圧パッド26をシート部材27に載置する。
次に、図6に矢印Z1で示されるように、シート部材27の各長手側被覆部72及び各長手側固定部73を前後方向内側に折り返す。そして、各長手側固定部73の各長手側第1穴部79に押圧パッド26の各支持突部66を貫通させ、各長手側固定部73の長手側第2穴部80に押圧パッド26の固定突部67を貫通させる。これにより、各長手側固定部73が押圧パッド26の上面に位置決めされる。
次に、図6に矢印Z2で示されるように、シート部材27の上流側被覆部74及び上流側固定部75を左側(用紙の搬送方向における下流側)に折り返す。そして、上流側固定部75の各上流側第1穴部81に押圧パッド26の各支持突部66を貫通させ、上流側固定部75の各上流側第2穴部82に押圧パッド26の各固定突部67を貫通させ、上流側固定部75の各上流側第3穴部83に押圧パッド26の各突起部68を貫通させる。これにより、上流側固定部75が押圧パッド26の上面に位置決めされる。
次に、図6に矢印Z3で示されるように、シート部材27の下流側被覆部76及び下流側固定部77を右側(用紙の搬送方向における上流側)に折り返す。そして、下流側固定部77の各下流側第1穴部84に押圧パッド26の各支持突部66を貫通させ、下流側固定部77の各下流側第2穴部85に押圧パッド26の各固定突部67を貫通させ、下流側固定部77の各下流側第3穴部86に押圧パッド26の各突起部68を貫通させる。これにより、下流側固定部77が押圧パッド26の上面に位置決めされる。
以上のような手順により、図5に示されるように、押圧パッド26の上面には、下側(定着ニップN側)から順番に、長手側固定部73と、上流側固定部75と、下流側固定部77と、が重ね合わされる。
次に、図4に示されるように、押圧パッド26の各固定突部67に固定部材115を締結する。これにより、シート部材27の各長手側固定部73、上流側固定部75及び下流側固定部77が押圧パッド26の上面に固定され、シート部材27の押圧パッド26への巻き付けが完了する。なお、上記の固定部材115としては、例えば、円環状のリングと、このリングから内側に向かって突出する複数の突片と、を備えたCSリングやビスを使用することができる。
上記の記載から明らかな通り、本実施形態では、押圧パッド26の右側部及び左側部(用紙の搬送方向における両側部)だけでなく、押圧パッド26の前端部及び後端部(長手両端部)にもシート部材27が巻き付けられている。
ところで、上記のように構成された定着装置18では、用紙にトナー像を定着させる際に、装置全体の温度が上昇する。これに伴って、シート部材27の温度が上昇すると、シート部材27が熱収縮することがある。このようにシート部材27が熱収縮すると、シート部材27の前後方向の長さが押圧パッド26の前後方向の長さよりも短くなり、定着ベルト22の前後両端部が押圧パッド26の前後両端部に対してシート部材27を介さずに直接摺動する恐れがある。このような事態が発生すると、定着ベルト22の摺動負荷が上昇し、定着ベルト22や押圧パッド26が急速に摩耗して、定着装置18の製品寿命が短くなる。
このような事態を回避するために、シート部材27の前後方向の長さを押圧パッド26の前後方向の長さよりも予め長くしておく(シート部材27を前後方向に余らせておく)という方法が考えられる。しかしながら、このような方法を採用すると、シート部材27の余りの部分が規制部材30の規制片108と接触して変形し、この変形した部分が定着ベルト22を押し下げて、定着ベルト22が変形する恐れが有る。
そこで、本実施形態のシート部材27は、本体部71から延出し、押圧パッド26の前後両端面を覆う長手側被覆部72と、長手側被覆部72から延出し、押圧パッド26に固定される長手側固定部73と、を備えている。このような構成を採用することで、シート部材27の前後方向の熱収縮を抑制することが可能となる。そのため、シート部材27の前後方向の長さが押圧パッド26の前後方向の長さよりも短くなるのを抑制し、定着ベルト22の前後両端部が押圧パッド26の前後両端部に対してシート部材27を介さずに直接摺動するような事態を回避することができる。これに伴って、定着ベルト22の摺動負荷を軽減させることが可能となり、定着ベルト22や押圧パッド26の摩耗を抑制し、定着装置18の製品寿命を長くすることができる。
また、上記のような構成を採用することで、シート部材27を前後方向に余らせておく必要が無くなるため、シート部材27の余りの部分が定着ベルト22を押圧して定着ベルト22が変形するのを抑制することができる。これに伴って、定着ベルト22の回転軌道を安定させることが可能となり、定着ベルト22のひび割れなどを防止することができる。
また、シート部材27の長手側固定部73は、押圧パッド26の上面に固定されている。このような構成を採用することで、簡易な構成を用いて長手側固定部73を固定することが可能となる。
また、押圧パッド26の上面には、下側から順番に、長手側固定部73と、上流側固定部75と、下流側固定部77と、が重ね合わされている。このような構成を採用することで、シート部材27によって押圧パッド26を3方向から包み込むことが可能となり、シート部材27と押圧パッド26の固定強度を高めることができる。また、長手側固定部73を最も下側に配置することで、押圧パッド26の上面から長手側固定部73が不用意に脱落するのを抑制することができる。更に、上流側固定部75を下流側固定部77よりも下側に配置することで、定着ベルト22の回転時に上流側固定部75に下流側固定部77よりも大きな負荷が掛かったとしても、押圧パッド26の上面から上流側固定部75が不用意に脱落するのを抑制することができる。
本実施形態では、シート部材27の長手側固定部73が押圧パッド26の上面に固定される場合について説明した。一方で、他の異なる実施形態では、図7、図8に示されるように、シート部材27の長手側固定部73が支持部材28の下面に固定されていても良い。このような構成を採用することで、本実施形態と同様に、簡易な構成を用いて長手側固定部73を固定することが可能となる。
このようにシート部材27の長手側固定部73が支持部材28の下面に固定される場合、図7に示されるように、シート部材27の長手側固定部73がビスなどの締結部材118によって支持部材28の下面に単独で固定されても良い。このような構成を採用することで、簡易な構成を用いて長手側固定部73を支持部材28の下面に固定することができる。
また、図8に示されるように、シート部材27の長手側固定部73の右端部(用紙の搬送方向における上流側の端部)から左端部(用紙の搬送方向における下流側の端部)までを支持部材28の下面との間に挟み込む挟持部材117が設けられ、ビスなどの締結部材118によって長手側固定部73が挟持部材117と共締めされて支持部材28の下面に固定されても良い。このような構成を採用することで、長手側固定部73の左右方向の全域を挟持部材117と支持部材28によってバランスよく挟み込むことが可能となり、長手側固定部73の位置ずれを抑制することができる。
なお、シート部材27の上流側固定部75や下流側固定部77についても、長手側固定部73と同様に、ビスなどの締結部材118によって支持部材28に単独で固定されていても良いし(図7参照)、ビスなどの締結部材118によって挟持部材117と共締めされて支持部材28に固定されていても良い(図8参照)。
また、他の異なる実施形態では、シート部材27の長手側固定部73、上流側固定部75及び下流側固定部77が押圧パッド26や支持部材28以外の部材に固定されていても良い。
本実施形態では、ヒーター24がハロゲンヒーターによって構成される場合について説明したが、他の異なる実施形態では、セラミックヒーターなどをヒーター24として用いても良い。
本実施形態では、プリンター1に本発明の構成を適用する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、複写機、ファクシミリ、複合機等の他の画像形成装置に本発明の構成を適用することも可能である。