<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る多層配線構造体について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
[多層配線構造体の構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係る多層配線構造体の断面図である。図1では、多層配線構造体の一例として、6層の配線構造体の断面図を用いて説明する。
図1では、基板100上に第1乃至第6配線層(110、120、130、140、150、160)と、第1乃至第6配線層の各配線層を隔離する第1乃至第5層間膜(119、129、139、149、159)と、第1乃至第5配線層(110、120、130、140、150)のうち隣接する配線層を接続する第1乃至第4ビア(191、192、193、194)と、を有する多層配線構造が形成されている。基板100と多層配線構造の最下層の配線層である第1配線層110との間には、基板100と第1配線層110とを隔離する絶縁性の中間層101が形成され、第1配線層110と基板100とが電気的に絶縁されている。
図1では、第1配線層110は第1導電層111および第2導電層112を有する。第2導電層112としては、電気抵抗が低い金属材料が好ましい。例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、アルミニウム(Al)などを使用することができる。また、アルミニウム−ネオジウム合金(Al−Nd)やアルミニウム−銅合金(Al−Cu)などのアルミニウム合金を使用することができる。第1導電層111としては、密着性や、第2導電層112に対するバリア性を有する材料を使用することが好ましい。例えば、第2導電層112としてCuを使用した場合、第1導電層111としては、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、Cr(クロム)などを使用することができる。なお、図1では、配線層として2つの導電層の積層構造を例示したが、この構造に限定されず、1つの導電層の単層構造であってもよく、また、3つ以上の導電層による積層構造であってもよい。
図1では、第1層間膜119は第1無機絶縁層113、第2無機絶縁層114および第1有機絶縁層115を有する。第1無機絶縁層113は、第1導電層111、第2導電層112および露出された中間層101を覆うように形成されている。また、第2無機絶縁層114は第1無機絶縁層113を覆うように形成されており、さらにその上に第1有機絶縁層115が形成されている。ここで、第1有機絶縁層115の誘電率は、第1無機絶縁層113および第2無機絶縁層114の各々の誘電率よりも低いことが望ましい。なお、第1層間膜119は上記3層構造に限るものではなく、有機絶縁層又は無機絶縁層を少なくとも1層以上含むように構成されていてもよい。
第1無機絶縁層113は、第2導電層112に対するバリア性を有している材料を使用することが好ましい。換言すると、第1無機絶縁層113は、第2無機絶縁層114や第1有機絶縁層115に比べて、第2導電層112の拡散速度が遅い材料であることが好ましい。例えば、第2導電層112としてCuを使用した場合、第1無機絶縁層113としては、窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、シリコンカーバイト(SiC)、窒化シリコンカーバイト(SiCN)、炭素添加シリコンオキサイド(SiOC)などを使用することができる。また、第1無機絶縁層113は被覆性の良い成膜条件で成膜することが好ましい。また、第2導電層112としてCuを使用し、第1無機絶縁層113としてSiNを使用した場合、Cuの拡散防止機能を得るために一定以上の膜厚であることが好ましく、SiNは比誘電率が7.5と高いため配線層間の寄生容量を抑制するために一定以下の膜厚にすることが好ましい。具体的には、SiN膜の膜厚は、好ましくは10nm以上200nm以下であるとよい。また、より好ましくは、50nm以上100nm以下であるとよい。
第1無機絶縁層113は、第1配線層110によって形成された段差部において、第1無機絶縁層113のひび割れや、膜が粗な領域が発生しないようにすることが好ましい。例えば、第1無機絶縁層113は、成膜温度が高い条件で成膜することが望ましく、好ましくは200℃以上であるとよい。より好ましくは、300℃以上であるとよい。また、第1無機絶縁層113の被覆性を良くするために、第1配線層110の端面を中間層101の表面に対して傾斜した順テーパ形状にしてもよい。第1配線層110のテーパ角度は、好ましくは30度以上90度以下であるとよい。より好ましくは、30度以上60度以下であるとよい。ここで、第1配線層110に含まれる第1導電層111と第2導電層112の両方が順テーパ形状でなくてもよく、いずれか一方が順テーパ形状であればよい。
第2無機絶縁層114は、第1無機絶縁層113およびその上に形成される第1有機絶縁層115との密着性がよい材料を使用することが好ましい。例えば、第2無機絶縁層114としては、酸化シリコン(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)などを使用することができる。また、第2無機絶縁層114は被覆性の良い成膜条件で成膜することが好ましい。また、SiO2膜は、基板の反りを調整及び信頼性向上のために一定以上の膜厚であることが好ましく、膜厚が厚すぎるとPIの応力との釣り合いが取れなくなるため一定以下の膜厚であることが好ましい。具体的には、SiO2膜の膜厚は、好ましくは1μm以上8μm以下であるとよい。また、より好ましくは2μm以上5μm以下であるとよい。
第1有機絶縁層115は、第1配線層110によって形成された段差を緩和または平坦化し、また、誘電率が第1無機絶縁層113および第2無機絶縁層114よりも低い材料であることが好ましく、例えば感光性ポリイミドなどの樹脂材料で形成されるとよい。第1有機絶縁層115の膜厚は、少なくとも第1配線層110によって形成される段差以上の膜厚であることが好ましく、また、配線層間の寄生容量を小さくするために、塗布工程の可能な限り厚く形成することが好ましい。具体的には、第1有機絶縁層の膜厚は、好ましくは4μm以上24μm以下であるとよい。また、より好ましくは8μm以上20μm以下であるとよい。また、感光性ポリイミドの代わりに、感光性アクリルや感光性シロキサンなどを使用することができる。その他にも、誘電率が低く、Cuに対するバリア性を有するベンゾシクロブテンを使用してもよい。また、感光性樹脂に限らず、非感光性樹脂を使用してもよい。
非感光性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、液晶ポリマー、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾール、シアネート樹脂、アラミド、ポリオレフィン、ポリエステル、BTレジン、FR−4、FR−5、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、シンジオタクチック・ポリスチレン 、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテルポリサルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミドなどを用いることができる。上記の樹脂は単体で用いられてもよく、2種類以上の樹脂を組み合わせて用いられてもよい。また、上記の樹脂に、ガラス、タルク、マイカ、シリカ、アルミナ等 、無機フィラーを併用して用いてもよい。
第1層間膜119には、開口部181が設けられており、開口部181の内部には第1ビア191が充填されている。図1では、第2配線層120の一部が開口部181に充填されることで、第1ビア191を形成する構造を例示したが、この構造に限定されず、例えば、第1ビア191として、第2配線層120とは異なる導電層を使用してもよい。また、図1では、開口部181および第1ビア191は基板に対して直角の形状を有する構造を例示したが、この構造に限定されず、開口部181および第1ビア191が基板に対して順テーパ形状を有していてもよく、また、開口部181および第1ビア191が基板に対して逆テーパ形状を有していてもよい。また、図1では、開口部181が導電層で満たされた構造を例示したが、ビアは隣接する配線層間を接続すればよく、開口部181の一部が空洞であってもよい。
図1のように、第2配線層120を第1ビア191として使用する場合、第4導電層122として、第2導電層112と同様に電気抵抗が低い銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、アルミニウム(Al)などを使用することができる。また、アルミニウム−ネオジウム合金(Al−Nd)やアルミニウム−銅合金(Al−Cu)などのアルミニウム合金を使用することができる。また、第3導電層121として、第1導電層111と同様に第4導電層122に対するバリア性を有する材料を使用することが好ましい。例えば、第4導電層122がCuを含む場合、第3導電層121としては、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、Cr(クロム)などを使用することができる。
第1ビア191は、その底部において第1配線層110の第2導電層112と接しており、第1配線層110と第2配線層120とが電気的に接続される。なお、図1では、第2配線層126、127は上下の配線層と接続されていないが、図1に示す断面とは異なる箇所で上下の配線層と接続されていてもよい。
第2配線層120上には第2層間膜129が形成されている。第2層間膜129は、第1層間膜119と同じ構造を有しており、第3無機絶縁層123、第4無機絶縁層124および第2有機絶縁層125を有する。図1では、第2層間膜129の各々の層に使用される材料は、第1層間膜119の各々の層と同じ材料を使用しているため、ここでは詳細な説明は省略する。ただし、第2層間膜129の各々の層に使用する材料は、第1層間膜119の各々の層と同じ材料に限定されず、その層間膜の目的に応じて適宜選択することができる。
以降、第2配線層120と同様にして、第3乃至第5配線層(130、140、150)を形成することができる。第3配線層130の第5導電層131、第4配線層140の第7導電層141、第5配線層150の第9導電層151はそれぞれ第1導電層111と同じ材料で形成することができる。また、第3配線層130の第6導電層132、第4配線層140の第8導電層142、第5配線層150の第10導電層152はそれぞれ第2導電層112と同じ材料で形成することができる。ただし、これらの導電層は、必ずしも第1導電層111または第2導電層112と同じでなくてもよく、その配線層の目的に応じて適宜選択することができる。
また、第2層間膜129と同様にして、第3乃至第5層間膜(139、149、159)を形成することができる。第3層間膜139の第5無機絶縁層133、第4層間膜149の第7無機絶縁層143、第5層間膜159の第9無機絶縁層153はそれぞれ第1無機絶縁層113と同じ材料で形成することができる。また、第3層間膜139の第6無機絶縁層134、第4層間膜149の第8無機絶縁層144、第5層間膜159の第10無機絶縁層154はそれぞれ第2無機絶縁層114と同じ材料で形成することができる。また、第3層間膜139の第3有機絶縁層135、第4層間膜149の第4有機絶縁層145、第5層間膜159の第5有機絶縁層155はそれぞれ第1有機絶縁層115と同じ材料で形成することができる。ただし、これらの絶縁層は、必ずしも第1無機絶縁層113、第2無機絶縁層114または第1有機絶縁層115と同じでなくてもよく、その絶縁層の目的に応じて適宜選択することができる。
第1乃至第4ビア(191、192、193、194)はそれぞれ同じ平面座標で積層された、いわゆる、スタックビア構造を有している。換言すると、第1乃至第4ビア(191、192、193、194)は平面視において互いに重畳している。ここで、重畳するビアは平面視において完全に重畳する構造に限定されず、例えば、ビアの一部が重畳した構造を含む。図1に示すスタックビア構造において、積層された全てのビアが平面視において互いに重畳した構造を例示したが、この構造に限定されず、少なくともある配線層の上下に形成されたビアが平面視においた互いに重畳していればよい。例えば、第2配線層120の下の第1ビア191と上の第2ビア192とが、平面視において少なくとも一部で重畳していればよい。
また、図1では、第1乃至第4ビア(191、192、193、194)は全て同じ径である構造を例示したが、この構造に限定されず、層によってビアの径が異なっていてもよい。例えば、下の層のビア(例えば第1ビア191)に比べて、上の層のビア(例えば第4ビア194)の方が径が大きい構造であってもよい。また、特定の層のビアの径が他の層のビアの径と異なる構造であってもよい。
図1において、第5配線層150は、第5層間膜159に設けられた開口部185を介して、最上層の第6配線層160に接続される。第6配線層160は、第11導電層161、第12導電層162および第13導電層163を有する。第11導電層161としては、電気抵抗が低く、第10導電層152との密着性がよい材料を使用することが好ましい。例えば、第10導電層152と同じ材料を使用するとよく、Cu、Ag、Au、Al、Al−Nd、Al−Cuなどを使用することができる。
また、第13導電層163としては、耐食性が高く、酸化しにくく、外部素子との接触抵抗が低い材料を使用することが好ましい。例えば、Au、白金(Pt)などを使用することができる。また、第12導電層162としては、第11導電層161および第13導電層163と密着性がよい材料が好ましい。また、例えば、第13導電層163をめっきで形成する場合は、第13導電層163のシード層として適した材料を使用することが好ましい。例えば、Ti、ニッケル(Ni)などを使用することができる。
上記の多層配線構造と基板との間には、多層配線構造と基板とを隔離する絶縁性の中間層101が形成されている。中間層101は、多層配線構造に起因する応力が基板に伝わることを緩和するために、基板100よりも柔らかい、つまりヤング率が小さいことが望ましい。また、中間層101は、基板の熱膨張が多層配線構造に伝わることを緩和するために、基板100よりも伸縮しやすく、第1配線層110の第1導電層111および第2導電層112よりも伸縮しにくいことが望ましい。つまり、基板100よりも熱膨張率が高く、第1配線層よりも熱膨張率が低いことが望ましい。ここで、第2導電層112の膜厚が、例えば第1導電層111の膜厚に比べて5倍以上厚い場合、熱膨張率に起因する応力は第2導電層112に起因する応力が支配的になるため、中間層101の熱膨張率は第2導電層112の熱膨張率よりも低ければよい。また、中間層は樹脂層であることが望ましい。また、中間層101は、第2導電層112に対するバリア性を有している材料を使用することが好ましい。換言すると、中間層101は、基板100に比べて、第2導電層112の拡散速度が遅い材料であることが好ましい。例えば、第2導電層112がCuを含む場合、中間層101としては、ポリイミド等の樹脂層を使用することができる。図1では、多層配線構造と基板との間に1層の中間層が挟まれた構造を例示したが、この構造に限定されず、中間層と多層配線構造、または、中間層と基板との間に他の層が挟まれていてもよい。
ここで、図1では、設計の自由度が高い多層配線構造体を提供するため、また、平面方向の占有面積の小さい多層配線構造体を提供するために、複数のビアが平面視において互いに重畳したスタックビア構造が開示されている。プロセス中の熱処理工程による伸縮の度合いは、有機絶縁層と配線層との間、または、有機絶縁層と基板との間で異なる。そのため、スタックビア構造では、配線層およびビアが重畳した領域A−B線と、各配線層間に有機絶縁層が形成された領域C−D線とでは、熱処理工程による伸縮の度合いおよび内部に発生する応力は大きく異なる。
特に、有機絶縁層に比べて硬い、つまりヤング率が大きい配線層が積層された領域A−B線では、配線層間に有機絶縁層が配置された領域C−D線に比べてD2(立体)方向に大きい応力が発生する。また、有機絶縁層と基板との間にも、熱処理工程による伸縮の度合いに起因したD1(平面)方向の応力が基板全面で発生する。
従来のように、基板上に中間層を設けずにスタックビア構造を形成すると、上記のD1方向またはD2方向の応力に起因して、ビアや無機絶縁層へのクラック発生や、ビアと配線の剥離などの問題が発生する。しかし、図1に示した構造によると、基板100と積層された配線層との間に中間層101を設けることで、上記のD1方向またはD2方向の応力を緩和することができ、ビアや無機絶縁層へのクラック発生や、ビアと配線の剥離などの問題を抑制することができる。
また、従来のように、基板上に中間層を設けずに多層配線構造を形成した構造において、特に第1配線層110の第2導電層112がCuを含む場合、第1導電層111および第1無機絶縁層113としてCuに対するバリア性を有する材料を使用した場合であっても、熱処理工程によって第1無機絶縁層113に発生したクラックを介して、Cuが基板まで拡散することがある。例えば基板100に導電性または半導体の材料を用いた場合、第1配線層110と基板100がショートしてしまう問題が発生する。
上記のように、基板と多層配線構造との間に、基板と多層配線構造とを隔離し、上記の特徴を有する絶縁性の中間層を設けることで、熱処理工程によって配線層およびビアが重畳した領域で発生する立体方向の応力を緩和することができる。また、中間層を設けることで、熱処理工程によって基板全面で発生する平面方向の応力も緩和することができる。その結果、ビアや無機絶縁層へのクラック発生や、ビアと配線の剥離などの問題を抑制することができる。また、基板と多層配線構造との間に上記の特徴を有する絶縁性の中間層を設けることで、熱処理工程によってCuが基板まで拡散することを抑制することができる。その結果、第1配線層と基板がショートする問題を抑制することができる。つまり、上記の問題が抑制されたスタックビア構造の多層配線構造体を得ることができる。
したがって、図1に一例を示した第1実施形態によると、熱処理工程によるクラックや剥離の抑制、また、Cuの基板への拡散などを抑制することができるため、熱処理工程に対する耐性の高い多層配線構造体を提供することができる。また、スタックビア構造の多層配線構造体を得ることができることから、設計の自由度が高い多層配線構造体を提供することができる。また、平面方向の占有面積の小さい多層配線構造体を提供することができる。また、有機絶縁層として、無機絶縁層よりも誘電率が低い材料を使用することで、積層された各配線間の寄生容量を小さくすることができるため、配線を伝達する信号の遅延を抑制することができる多層配線構造体を提供することができる。
[多層配線構造体の製造方法]
次に、図2乃至18を用いて、本発明の第1実施形態に係る多層配線構造体の製造方法を説明する。図2乃至18において、図1に示す要素と同じ要素には同じ符号を付した。
図2は、本発明の第1実施形態に係る多層配線構造体の製造方法において、第1導電材料および下部第2導電材料が形成された基板の断面図である。図2に示すように、シリコン基板などの基板100上に、塗布法を用いて、ポリイミドなどの樹脂材料を用いた絶縁性の中間層101を形成する。次に、スパッタリング法により、第1導電材料211を成膜し、その上に下部第2導電材料212を成膜する。下部第2導電材料212としては、低抵抗なCuを使用することが好ましく、その場合、第1導電材料211としては、Cuに対してバリア性を有するTiを使用することが好ましい。中間層101および第1導電材料211は、基板100にCuが拡散し、第1導電材料211と基板100とがショートすることを抑制するためのバリア層としての役割を果たす。また、下部第2導電材料212は、電解めっき法によりCuを成長させるためのシード層としての役割を果たす。なお、ここでは、Ti以外のバリア層の材料として、TiNや高融点金属のTa、TaN、Crなどを用いることも可能である。
次に、図3に示すように、下部第2導電材料212の上にフォトレジストを塗布した後に、露光及び現像を行うことにより配線形成用レジストパターン310を形成する。その後、電解めっき法を用いて配線形成用レジストパターン310より露出している下部第2導電材料212上に下部第2導電材料212と同じ材料を成長させることで、図4に示すように上部第2導電材料213を形成する。図4では、上部第2導電材料213として、下部第2導電材料212と同じ材料を成長させる製造方法を例示したが、この方法に限定されず、上部第2導電材料213を下部第2導電材料212と異なる材料を成長させてもよい。
次に、上部第2導電材料213を形成した後に、配線形成用レジストパターン310を形成するフォトレジストを有機溶媒により除去し、図5の構造を得る。なお、フォトレジストの除去には、有機溶媒を用いる代わりに、酸素プラズマによるアッシングを用いることもできる。
次に、図6に示すように、配線形成用レジストパターン310により覆われていた下部第2導電材料212の一部および第1導電材料211の一部を、酸性の薬液によってエッチングし、第1導電層111および第2導電層112を形成する。このエッチングによって、上部第2導電材料213の膜厚は薄くなるため、この薄膜化の影響を考慮して上部第2導電材料213の膜厚を設定することが好ましい。また、上記の薬液によるエッチングの代わりに、イオンミリングやドライエッチングなどを用いることもできる。
酸性の水溶液を用いる場合、第2導電層112よりも第1導電層111の方がエッチング速度が速いと、図19に示すようにアンダーカット301が形成されてしまう。特に、配線の幅が5μm以下になると、第1導電層111と下地の中間層101との間での十分な密着性が取れなくなり、第1導電層111が自身の応力などによって剥離してしまうことがある。一方、イオンミリングやドライエッチングを用いる場合には、このようなアンダーカットが起こり難いので、微細な配線形成が可能となる。
次に、図7に示すように、第2導電層112の上にプラズマCVD法を用いて、SiN膜などの第1無機絶縁層113およびSiO2膜などの第2無機絶縁層114を成膜する。SiN膜の成膜には、SiH4をSi源とし、NH3を窒素源として使用することができる。また、SiO2膜の成膜には、SiH4をSi源とし、N2Oを酸素源とすることができる。また、Si源としてテトラエトキシシラン(TEOS)を用いることができる。また、酸素源として、O2を用いることもできる。
SiO2膜は、基板100の反りを抑制する点で、膜応力を−300Mpa以上−100Mpa以下の圧縮応力に調整することが好ましい。特に膜応力は−200Mpa以上、−150MPa以下に調整することが好ましい。
なお、第2導電層112がCuを含む場合、Cuの表面に酸化銅が存在すると、第1無機絶縁層113とCuとの密着力が低下するので第1無機絶縁層113の成膜前にCu表面を希硫酸などで洗浄するのが好ましい。また、第1無機絶縁層113の成膜前に同一チャンバ内でCu表面をNH3プラズマに晒して酸化銅の除去を行うこともできる。
また、第2導電層112がCuを含む場合、第1無機絶縁層113としてはCuに対するバリア性を有するSiN膜を使用することが好ましく、第2導電層112のCu原子やCu分子、Cuイオンが第2導電層112の側面および上面から第2無機絶縁層114に熱拡散するのを防止し、さらに、隣接する配線層間の電界に起因する拡散を防止するバリア絶縁層としての役割を果たす。ここで、SiN膜をバリア絶縁層として用いる代わりに、SiC膜(酸素を数%から10%含んでいてもよい)を用いることができる。SiC膜もプラズマCVDにより成膜することが可能であり、第2導電層112のCu原子やCu分子、Cuイオンの拡散を防止する効果がある。
また、第2無機絶縁層114としてSiO2膜の代わりに、SiOC膜、SiOF膜などを用いてもよい。SiOC膜やSiOF膜もプラズマCVDによって成膜することができる。SiOC膜やSiOF膜はSiO2膜よりも誘電率が低く、積層された各配線間の寄生容量を小さくすることができる。
次に、第2無機絶縁層114の上にスピンコート法によりポリイミドなどの第1有機絶縁層115を塗布する。ポリイミドの代わりに、ベンゾシクロブテンなどを使用してもよい。また、感光性樹脂に限らず、非感光性樹脂を使用してもよい。
非感光性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、液晶ポリマー、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾール、シアネート樹脂、アラミド、ポリオレフィン、ポリエステル、BTレジン、FR−4、FR−5、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、シンジオタクチック・ポリスチレン 、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテルポリサルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミドなどを用いることができる。上記の樹脂は単体で用いられてもよく、2種類以上の樹脂を組み合わせて用いられてもよい。また、上記の樹脂に、ガラス、タルク、マイカ、シリカ、アルミナ等 、無機フィラーを併用して用いてもよい。
ただし、非感光性の樹脂を用いる場合には、さらに感光性の樹脂を塗布しリソグラフィーによりパターンニングを行う必要がある。このため、非感光性の樹脂を用いると工程が増加する場合がある。第1実施形態では、第1有機絶縁層115として感光性ポリイミドを使用した製造方法を説明する。
第1有機絶縁層115を塗布した場合には、フォトマスクを用いて露光をした後に現像を行い、図8に示すように、第2導電層112の上方の必要な位置に凹部281を形成する。ここで、「必要な位置」とは、第2導電層112をそれよりも上層に形成される配線と接続するビアを配置する必要のある位置を指す。
凹部281の形成後に塗布した第1有機絶縁層115を硬化させるために熱硬化処理を行う。熱硬化処理は、使用する有機絶縁層のガラス転移温度以下に設定することが好ましい。ガラス転移温度を越す温度で硬化させると、凹部281の形状が変形してしまい、設計寸法よりも開口径が大きくなるなどの問題が発生するからである。例えば、第1有機絶縁層115としてポリイミドを使用した場合、ポリイミドのガラス転移温度が280℃であれば、250℃で熱処理を行うことが好ましく、例えば、250℃、1時間、窒素雰囲気下で熱処理を行うとよい。なお、熱硬化の処理に限らず、この工程以降の熱処理は、ポリイミドのガラス転移温度を越えないようにして行うのが好ましい。
なお、第1有機絶縁層115を熱硬化させると、第1配線層110による段差の影響で、凹部281以外の領域において、図20に示すような段差302が発生することがある。このような段差は、配線層を積層するにしたがって大きくなり、パターン露光時のフォーカスずれを発生させる。このため、設計寸法に基づく配線パターンの形成が困難となり、隣接する配線がショートする問題や、逆に配線が断線する問題が発生する。このような第1有機絶縁層115の段差302を低減させるために、ポリイミドのような熱収縮率の小さな(好ましくは、熱収縮率が15%以下)有機材料を使用することが好ましい。また、高精度でポリイミドの表面の凹凸を除去するには、フライカッターを用いることもできる。
次に、第1有機絶縁層115をマスクとしてプラズマエッチングすることで、凹部281の底部の第1無機絶縁層113および第2無機絶縁層114をエッチングする。ここでは、第1無機絶縁層113としてSiN膜を使用し、第2無機絶縁層114としてSiO2膜を使用し、第1有機絶縁層115としてポリイミドを使用した場合のエッチング方法について詳しく説明する。
SiO2膜のエッチングガスとしては、CF4(流量20sccm)とH2(流量5sccm)との混合ガスを用いることができる。混合ガスの流量比を変化させることで、硬化したポリイミドとSiO2膜のエッチング速度の比率を調整することが可能である。ここで、SiO2膜に対するポリイミドのエッチング速度の比率が小さくなるように調整することが好ましい。なお、エッチングガスは、上述したものに限らず、CF4の代わりにCHF3やCH2F2を用いることができる。
SiN膜のエッチングガスとしては、CF4(流量20sccm)とO2(流量2sccm)との混合ガスを用いることができる。SiN膜のエッチングにおいても、混合ガスの流量比を変化させることで、硬化したポリイミドとSiN膜のエッチング速度の比率を調整することが可能である。SiO2と同様に、SiN膜に対するポリイミドのエッチング速度の比率が小さくなるように調整することが好ましい。
上記のように、第1無機絶縁層113および第2無機絶縁層114のエッチングによって、第1配線層110と第2配線層120とを電気的に接続する第1ビア191を充填するための開口部181が形成される。この開口部181が形成された直後は、開口部181の側壁や底部にSiやFを含む炭素化合物が付着している場合がある。この炭素化合物を除去するために、有機溶剤で洗浄を行ってもよい。また、開口部181の底部において露出した第2導電層112の表面はプラズマエッチングによって酸化している場合がある。この表面の酸化物を除去するために、希硫酸による洗浄を行ってもよい。
第1無機絶縁層113および第2無機絶縁層114に対するプラズマエッチングにより、第1有機絶縁層115の表面はプラズマダメージを受け、第1有機絶縁層115固有の耐熱性が損なわれている場合がある。この場合には、例えば第1有機絶縁層115のガラス転移温度以下で熱処理を行うことで、表面のダメージ層を除去することができる。このようにして、図9に示す構造を得ることができる。
次に、図10に示すように、スパッタリング法によって第3導電材料221を成膜する。第2導電層112がCuを含む場合、第3導電材料221としては、第1導電層111と同様にTi、TiN、Ta、TaN、Crなどを使用することで、Cu原子やCu分子、Cuイオンが拡散しないようにするバリアメタルとして機能させることができる。
次に、図11に示すように、スパッタリング法によって下部第4導電材料222を成膜する。下部第4導電材料222としては、低抵抗なCuを使用することが好ましい。また、下部第4導電材料222は、電解めっき法によりCuを成長させるためのシード層としての役割を果たす。
次に、図12に示すように、下部第4導電材料222の上にフォトレジストを塗布した後に、露光及び現像を行うことにより配線形成用レジストパターン320を形成する。その後、電解めっき法を用いて配線形成用レジストパターン320より露出している下部第4導電材料222上に下部第4導電材料222と同じ材料を成長させることで、図13に示すように上部第4導電材料223を形成する。図13では、上部第4導電材料223として、下部第4導電材料222と同じ材料を成長させる製造方法を例示したが、この方法に限定されず、上部第4導電材料223を下部第4導電材料222と異なる材料を成長させてもよい。
次に、上部第4導電材料223を形成した後に、配線形成用レジストパターン320を形成するフォトレジストを有機溶媒により除去し、図14の構造を得る。なお、フォトレジストの除去には、有機溶媒を用いる代わりに、酸素プラズマによるアッシングを用いることもできる。
次に、図15に示すように、配線形成用レジストパターン320により覆われていた下部第4導電材料222の一部および第3導電材料221の一部を、酸性の薬液によってエッチングし、第3導電層121および第4導電層122を形成する。このエッチングによって、上部第4導電材料223の膜厚は薄くなるため、この薄膜化の影響を考慮して上部第4導電材料223の膜厚を設定することが好ましい。また、上記の薬液によるエッチングの代わりに、イオンミリングなどを用いることもできる。
次に、図16に示すように、第4導電層122の上に第3無機絶縁層123および第4無機絶縁層124を成膜する。例えば、第4導電層122がCuを含む場合、第3無機絶縁層123としては、第1無機絶縁層113と同様にCuに対するバリア性を有するSiN膜を使用することが好ましく、第4無機絶縁層124としては、第2無機絶縁層114と同様にSiO2膜を使用することが好ましい。第3無機絶縁層123としてSiN膜をバリア絶縁層として用いる代わりに、SiC膜(酸素を数%から10%含んでいてもよい)を用いることができる。また、第4無機絶縁層124としてSiO2膜の代わりに、SiOC膜、SiOF膜などを用いてもよい。
次に、第4無機絶縁層124の上にスピンコート法によりポリイミドなどの第2有機絶縁層125を塗布する。ポリイミドの代わりに、ベンゾシクロブテンなどを使用してもよい。また、感光性樹脂に限らず、非感光性樹脂を使用してもよい。
非感光性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、液晶ポリマー、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾール、シアネート樹脂、アラミド、ポリオレフィン、ポリエステル、BTレジン、FR−4、FR−5、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、シンジオタクチック・ポリスチレン 、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテルポリサルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミドなどを用いることができる。上記の樹脂は単体で用いられてもよく、2種類以上の樹脂を組み合わせて用いられてもよい。また、上記の樹脂に、ガラス、タルク、マイカ、シリカ、アルミナ等 、無機フィラーを併用して用いてもよい。
第1実施形態では、第2有機絶縁層125として感光性ポリイミドを使用した製造方法を説明する。
第2有機絶縁層125を塗布した場合には、フォトマスクを用いて露光をした後に現像を行い、図17に示すように、第4導電層122の上方の必要な位置に凹部282を形成する。ここで、「必要な位置」とは、第4導電層122をそれよりも上層に形成される配線と接続するビアを配置する必要のある位置を指す。
凹部281の形成後に、第2有機絶縁層125を硬化させるため、第2有機絶縁層125のガラス転移温度以下の温度で熱硬化処理を行う。例えば、第2有機絶縁層125としてポリイミドを使用した場合、ポリイミドのガラス転移温度が280℃であれば、上述のように250℃とする。なお、熱硬化の処理に限らず、この工程以降の熱処理は、ポリイミドのガラス転移温度を越えないようにして、行うのが好ましい。
次に、第2有機絶縁層125をマスクとしてプラズマエッチングすることで、凹部282の底部の第3無機絶縁層123および第4無機絶縁層124をエッチングする。プラズマエッチングの方法は、第1無機絶縁層113および第2無機絶縁層114のエッチング方法と同様の方法を使用することができる。第3無機絶縁層123および第4無機絶縁層124のエッチングによって、第2配線層120と第3配線層130とを電気的に接続する第2ビア192を充填するための開口部182が形成される。このようにして、図18に示す構造を得ることができる。
以降、図10乃至18で説明した方法を繰り返すことで、図1に示す多層配線構造体を得ることができる。
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態に係る多層配線構造体について、図面を参照しながら詳細に説明する。図21は、本発明の第2実施形態に係る多層配線構造体の断面図である。図21は、図1と類似しているが、第2配線層120および第4配線層140は、それらの上に無機絶縁層が形成されておらず、有機絶縁層のみが形成されている点において、図1とは異なる。
図21に示す構造においては、少なくとも、無機絶縁層が形成されていない第2有機絶縁層125および第4有機絶縁層145は、第2配線層120および第4配線層140に含まれる導電材料に対するバリア性を有していることが好ましい。
また、図21では、第2配線層120および第4配線層140がそれらの配線層上に無機絶縁層が形成されず、有機絶縁層のみが形成された構造を例示したが、この構造に限定されず、他の配線層も配線層上に無機絶縁層が形成されず、有機絶縁層のみが形成された構造であってもよい。例えば、第3配線層130上に形成された第5無機絶縁層133および第6無機絶縁層134が形成されず、第3配線層130上には第3有機絶縁層135のみが形成された構造であってもよい。ただし、図21に示す多層配線構造体の層間膜が全て有機絶縁層で形成されると、各層の応力の影響で基板が反ってしまう。したがって、少なくとも1層は無機絶縁層を含んでいることが望ましい。好ましくは、中間層101上の第1配線層110を覆う第1無機絶縁層113および第2無機絶縁層114以外に、第1層間膜119よりも上層の層間膜(図21においては、第2乃至4層間膜(129、139、149))に少なくとも1層の無機絶縁層を含んでいることが望ましい。
上記の構造を他の表現で説明すると、第2実施形態の多層配線構造体は、基板100と、その上に配置された絶縁性の中間層101と、中間層101上に配置された第1配線層110および第1層間膜119を含む第1配線構造と、第1配線構造の上方に配置され、第2配線層120および第2層間膜129を含む第2配線構造と、第1配線構造の上方に配置され、第3配線層130および第3層間膜139を含む第3配線構造とを有している。
ここで、第1層間膜119は、第1無機絶縁層113、第2無機絶縁層114および第1有機絶縁層115を有している。また、第2層間膜129は、第2有機絶縁層125を有している。また、第3層間膜139は、第5無機絶縁層133、第6無機絶縁層134および第3有機絶縁層135を有している。第1配線層110と第2配線層120は第1ビア191によって接続され、第2配線層120と第3配線層130は第2ビア192によって接続されている。
図21では、第1配線構造、第2配線構造、第3配線構造が順に積層された構造を例示したが、この構造に限定されず、例えば、第1配線構造、第3配線構造、第2配線構造の順で積層されていてもよい。また、第1配線構造、第2配線構造、第2配線構造、第3配線構造の順で積層されるように、第2配線構造と第3配線構造が交互に積層されていなくてもよい。
上記の構造を有することで、第1実施形態と同様の効果を得ると共に、第1実施形態に比べて無機絶縁層の層数が少ないため、無機絶縁層の成膜工程および無機絶縁層のプラズマエッチング工程を削減することができるため、工程数を少なくすることで低コスト化の効果が得られる。
以下、本発明を図22に示す実施例1に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。図22は、本発明の実施例1に係る多層配線構造体の断面図である。実施例1では、第1実施形態の多層配線構造体に対して、さらに2層の配線層を追加して、8層の配線構造体を作製した例について説明する。
まず、基板100として、厚さ400μmのシリコン基板を用意した。次に、基板100上に絶縁性の中間層101として、スピンコート法によって10μmのポリイミドを形成した。ポリイミドのヤング率は3乃至3.5GPaであり、シリコン基板のヤング率は約185GPaである。つまり、中間層101は基板100よりもヤング率が低い。換言すると、中間層101は基板100よりも柔らかい。また、ポリイミドは後述する配線層に使用するCuに対するバリア性を有している。つまり、ポリイミドはシリコン基板に比べてCuの拡散速度が遅い。
中間層101上には、第1配線層110が形成される。第1配線層110は、第1導電層111として厚さ50nmのTiと、第2導電層112として厚さ4μmのCuと、の積層で形成する。ここで、第1導電層111のTiは第2導電層112のCuに対するバリア性を有している。また、第1配線層110の配線パターンは線幅は10乃至100μmで形成することができる。
図22に示す実施例1では、第2乃至第7配線層(120、130、140、150、160、170)も第1配線層110と同様の積層構造及びパターン線幅で形成される。つまり、第3、5、7、9、11、13導電層(121、131、141、151、161、171)は第1導電層111と同じTiで形成され、第4、6、8、10、12、14導電層(122、132、142、152、162、172)は第2導電層112と同じCuで形成される。
中間層101上に第1配線層110が形成されると、これらを覆って第1層間膜119が形成される。第1層間膜119は、第1無機絶縁層113として厚さ10nmのSiN膜と、第2無機絶縁層114として厚さ2μmのSiO2膜と、第1有機絶縁層115として厚さ12μmのポリイミドと、の積層で形成する。ここで、第1無機絶縁層113のSiN膜および第2無機絶縁層114のSiO2膜はプラズマCVD法を用いて形成される。また、第1有機絶縁層115のポリイミドは、第1配線層110によって形成された段差を緩和または平坦化する。つまり、第1配線層110上の第1有機絶縁層115のポリイミド膜厚115bは、第1配線層110が存在しない、中間層101上の第1有機絶縁層115のポリイミド膜厚115aに比べると薄く形成されることになる。図22に示す実施例1では、膜厚115aは12μmであり、膜厚115bはおおよそ第1配線層110の膜厚の分だけ薄い8μmであった。
続いて、第1層間膜119に開口部181を形成する。開口部181は直径が15μmである。開口部181は、まず、第1有機絶縁層115として感光性ポリイミドを塗布し、フォトマスクを用いて露光をした後に現像を行い、開口部181を設ける位置に、下層の第2無機絶縁層114を露出する凹部を形成する。第1有機絶縁層115の感光性ポリイミドをマスクとして、凹部において露出された第2無機絶縁層114およびその下層の第1無機絶縁層113をプラズマエッチングすることで形成した。第2無機絶縁層114のSiO2膜のエッチングには、CF4(流量20sccm)とH2(流量5sccm)との混合ガスを用いた。また、第1無機絶縁層113のSiN膜のエッチングには、CF4(流量20sccm)とO2(流量2sccm)との混合ガスを用いた。
続いて、第1層間膜119上および開口部181内部に第2配線層120および第1ビア191が同一の工程で形成される。第2配線層120および第1ビア191は、第1配線層110と同様に、第3導電層121として厚さ50nmのTiと、第4導電層122として厚さ4μmのCuと、の積層で形成する。ここで、第3導電層121のTiは第4導電層122のCuに対するバリア性を有している。開口部181内部は、第3導電層121のTiで覆われており、第4導電層122のCuと第1層間膜119の開口部181内部とを隔離するように形成されている。
第1ビア191の直径191aは開口部181の直径と同じ15μmであり、第1ビア191の上部に位置するランドの直径191bは30μmである。また、隣接するビアの中心間の距離を示すビアピッチは、最もピッチが小さいところで40μmである。
上記のようにして、第1配線層、第1層間膜、第1ビアを形成する。これらと同様に第2乃至第7の配線層、層間膜、および第2乃至第6のビアが形成される。そして、第7層間膜179上および第7層間膜179に設けられた開口部187内部に、最上層の第8配線層380および第7ビア197が同一の工程で形成される。第8配線層380は、第15導電層381として厚さ3μmのCuと、第16導電層382として厚さ1μmのNiと、第17導電層383として厚さ1μmのAuと、の積層で形成される。
以上のように、実施例1によれば、基板と多層配線構造との間に、基板と多層配線構造とを隔離し、上記の特徴を有する絶縁性の中間層を設けることで、熱処理工程によって配線層およびビアが重畳した領域で発生する立体方向の応力を緩和することができる。また、中間層を設けることで、熱処理工程によって基板全面で発生する平面方向の応力も緩和することができる。その結果、ビアや無機絶縁層へのクラック発生や、ビアと配線の剥離などの問題を抑制することができる。また、基板と多層配線構造との間に上記の特徴を有する絶縁性の中間層を設けることで、熱処理工程によってCuが基板まで拡散することを抑制することができる。その結果、第1配線層と基板がショートする問題を抑制することができる。つまり、上記の問題が抑制されたスタックビア構造の多層配線構造体を得ることができる。
なお、本発明は上記の実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。