以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1を参照して、本実施の形態に係る光モジュール10の構成の一例について説明する。本実施の形態では、本発明に係る光モジュールに面発光型半導体レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)アレイを適用した形態を例示して説明する。図1(a)は本実施の形態に係る光モジュール10の断面図であり、図1(b)は光モジュール10の平面図である。図1(a)に示す断面図は、図1(b)に示す平面図においてA−A’で切断した断面図である。なお、本実施の形態に係る光モジュール10は、VCSELアレイを駆動する駆動部を含む場合もあるが、図1では該駆動部を含まない形態を例示している。また、本実施の形態においては、VCSELアレイを構成する複数のVCSEL素子は主として光モジュール10からの出射光の冗長性確保のために用いられている。すなわち、各々のVCSEL素子は、単一のVCSEL素子として通信を行うのに必要な光量を出力できる定格を有し、1つのVCSEL素子が外部からのサージ電圧等で損傷した場合であっても正常な通信が維持できるよう、互いに並列に接続された複数のVCSEL素子によってVCSELアレイを構成することで冗長性を確保している。
図1(a)に示すように、光モジュール10は、n側電極配線30、n型のGaAs(ガリウムヒ素)の基板12上に形成されたn型の下部DBR(Distributed Bragg Reflector)14、活性層領域16、酸化狭窄層26、p型の上部DBR18、層間絶縁膜20、およびp側電極配線22を含む積層構造体として構成されている。
図1(b)に示すように、光モジュール10は、発光領域40、およびp側電極パッド28を備えている。
発光領域40は、複数の発光部を含んでVCSELアレイとして構成された領域である。本実施の形態では、一例として、メサ状に形成された4つの発光部50−1、50−2、50−3、50−4(以下、総称する場合は「発光部50」)を含み、各発光部の出射口を除く領域がp側電極配線22によって覆われることで各発光部が互いに電気的に並列に接続されている。ただし、本実施の形態に係る光モジュール10では、複数の発光部50のうちの少なくとも1つについて他の発光部よりも寿命が短く設定されるとともに、光の出射口が遮蔽され、光が出射されないようにされている。光モジュール10では、発光部50−3の出射口が遮蔽されている一方、発光部50−1、50−2、50−4の出射口は遮蔽されていない。換言すれば、光モジュール10では、発光部50−3を除く発光部50−1、50−2、50−4から光が出射される。なお、以下では光の出射口が遮蔽されたメサも便宜的に「発光部50」と称する。
p側電極パッド28は、p側電極配線22の一部として構成され、p側電極配線22を介して発光領域40に電流を供給する電源を接続する際に、該電源の正極を接続するパッドである。なお、該電源の負極はn側電極配線30に接続される。
基板12上に形成されたn型の下部DBR14は、光モジュール10の発振波長をλ、媒質(半導体層)の屈折率をnとした場合に、膜厚がそれぞれ0.25λ/nとされかつ屈折率の互いに異なる2つの半導体層を交互に繰り返し積層して構成される多層膜反射鏡である。
下部DBR14上に形成された活性層領域16は、発光部50から出射される光を生成する部位であり、下部DBR14上にこの順で形成された下部スペーサ114、量子井戸活性層116、上部スペーサ118(図5参照)を含んで構成されている。
本実施の形態に係る量子井戸活性層116は、例えば、4層のGaAs層からなる障壁層と、その間に設けられた3層のInGaAsからなる量子井戸層と、で構成されてもよい。なお、下部スペーサ114、上部スペーサ118は、各々量子井戸活性層116と下部DBR14との間、量子井戸活性層116と上部DBR18との間に配置されることにより、共振器の長さを調整する機能とともに、キャリアを閉じ込めるためのクラッド層としての機能も有している。
活性層領域16上に設けられたp型の酸化狭窄層26は電流狭窄層であり、非酸化領域26a及び酸化領域26bを含んで構成されている。p側電極パッド28からn側電極配線30に向かって流れる電流は、非酸化領域26aによって絞られる。
酸化狭窄層26上に形成された上部DBR18は、膜厚がそれぞれ0.25λ/nとされかつ屈折率の互いに異なる2つの半導体層を交互に繰り返し積層して構成される多層膜反射鏡である。
発光部50−1、50−2、50−4の上部DBR18上には、光の出射面を保護する出射面保護層24が設けられている。出射面保護層24は、一例としてシリコン窒化膜を着膜して形成される。一方、発光部50−3の上部DBR18上はp側電極配線22で覆われており、発光部50−1、50−2、50−4の出射面保護層24に相当する部分は、金属膜による遮蔽部32となっている。つまり、発光部50−3の光の出射口は遮光されている。
図1(a)、(b)に示すように、発光部50のメサを含む半導体層の周囲は無機絶縁膜としての層間絶縁膜20が着膜されている。該層間絶縁膜20はp側電極配線22、p側電極パッド28の下部に配置されている。本実施の形態に係る層間絶縁膜20は、一例として、シリコン窒化膜(SiN膜)で形成されている。なお、層間絶縁膜20の材料はシリコン窒化膜に限らず、例えば、シリコン酸化膜(SiO2膜)、あるいはシリコン酸窒化膜(SiON膜)等であてもよい。
図1(a)に示すように、発光部50−1(発光部50−2、50−4も同様)では、p側電極配線22は層間絶縁膜20の開口部を介して上部DBR18に接続されている。上部DBR18の最上層には、p側電極配線22との接続のためのコンタクト層124(図5参照)が設けられており、コンタクト層124を介してp側電極配線22の一端側が上部DBR18に接続され、上部DBR18との間でオーミック性接触を形成している。
ところで、上記の光モジュール10の発光部50(発光部50−1、50−2、50−4)を構成するVCSELは、基板に垂直な方向にレーザ出力を取り出せ、さらに2次元集積によるアレイ化が容易であることなどから、例えば光通信用光源として好適に利用されている。
光モジュールは、半導体基板(基板12)上に設けられた一対の分布ブラッグ反射器(下部DBR14及び上部DBR18)、一対の分布ブラッグ反射器の間に設けられた活性層領域(活性層領域16)を備えて構成されている。そして、分布ブラッグ反射器の両側に設けられた電極(p側電極配線22及びn側電極配線30)により活性層領域へ電流を注入し、基板面に対して垂直にレーザ発振を生じさせ、素子の上部(出射面保護層24の面側)から発振した光を出射させる構成となっている。
また、低閾値電流化、横モードの制御性等の観点から組成にAlを含む半導体層を酸化して形成される酸化狭窄層(酸化狭窄層26)を備えており、このAlを含む半導体層を酸化するために、素子はメサ形状にエッチング加工され、酸化処理が施される。その後、エッチング加工により露出したメサ形状の側面やエッチングされた半導体表面は、シリコン窒化膜やシリコン酸化膜などの絶縁材料によって覆われるのが一般的である。
一方、VCSEL等の半導体レーザ、あるいは一般的にLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等も含めた発光素子には固有の寿命が存在する。発光素子を用いた光通信システム等の機器において、該発光素子が寿命に近づいた場合には、重大な障害が発生する前に交換する必要がある。そのために発光素子を常時監視し、発光素子の劣化を検出する必要がある。発光素子は光出力を一定にするために定電流駆動(あるいは、定電圧駆動)される場合があるが、このような駆動方式における発光素子の劣化の検出は、例えば該発光素子の光出力を監視し、光出力が予め定められた閾値未満になったことをもって行う。
一方、VCSELに限らず半導体レーザにおいては、温度変動や、電源変動等に伴って光出力が変動しないように安定化させることが求められる場合があり、その安定化の一方式としてAPC(Automatic Power Control)方式がある。APC方式とは、半導体レーザの光出力をモニタPD(Photo Diode)等によってモニタ電流として検出し、検出されたモニタ電流を基準値と比較して差分値を求め、この差分値を用いて駆動電流を変え半導体レーザの光出力を負帰還制御する方式である。
APC方式で半導体レーザの光出力を一定に制御したとしても、半導体レーザが経時的に劣化すると半導体レーザの駆動電流が上昇し、制御しきれなくなる。従って、発光素子を含む機器においてAPC制御方式を用いている場合には、例えば発光素子の駆動電流が予め定められた閾値を越えたことをもって発光素子の劣化を検出する。
発光素子の駆動方式が定電流(定電圧)駆動方式であっても、APC駆動方式であっても、発光素子の劣化が検出された場合には、当該発光素子が搭載された機器のユーザに対し当該発光素子を含む部品等の交換を促す必要がある。しかしながら、交換を促すために発光素子の劣化を検出する構成を有する光モジュールでは、当該発光素子が使用不能となる間際で劣化を検出した場合、交換までの時間が限られるので、ユーザの利便性を損なうことが想定される。
上述の想定に対応した光モジュールとして、以下のような比較例に係る光モジュールが考えられる。すなわち、本来の発光機能を有する第1の発光素子に加え、より早く劣化する第2の発光素子を第1の発光素子と並列に接続し、かつ第2の発光素子の劣化を検出できるようにした光モジュールである。このような光モジュールによれば、第2の発光素子の劣化を検出してユーザに交換を促すように構成されるので、交換までの時間に余裕が生ずる。
しかしながら、比較例に係る光モジュールでは、第2の発光素子の劣化に伴い第2の発光素子の波長スペクトルが変動するので、光モジュール全体の発光スペクトルの均一性が低下する。波長スペクトルの均一性が低下すると、第2の発光素子の劣化前と比較して本光モジュールを用いた光伝送装置の伝送品質が劣化する。
そこで、本実施の形態では、第2の発光素子の光出射面を遮蔽することとした。このことにより、第2の発光素子が劣化しても光モジュールから光が出射されないので、波長スペクトルの均一性の低下が抑制される。
図2を参照して、本実施の形態に係る光モジュール10における劣化の検出の基本的な考え方について説明する。光モジュール10は、寿命の短い発光部50を含む複数の発光部50を有している。すなわち、搭載機器において通常の発光動作を行う発光部50(以下、「通常発光部50n」という場合がある)の他に、通常発光部50nより寿命が短く通常発光部50nの劣化を監視する発光部50(以下、「モニタ発光部50m」という場合がある)を有している。本実施の形態では、このモニタ発光部50mが上記遮蔽部32を備えている。
図2(a)は寿命の異なる3つの発光部である、発光部A、発光部B、発光部Cの光出力の経時変化を示している。発光部A、発光部B、発光部Cの寿命はこの順で長いものとし、図2(a)では、発光部Aの光出力の経時変化を曲線PAで、発光部Bの光出力の経時変化を曲線PBで、発光部Cの光出力の経時変化を曲線PCで、各々表している。なお、図2(a)では、各々の発光部の光出力の初期値を1で規格化している。本実施の形態では、発光部Aを通常発光部50nとし、発光部Bおよび発光部Cをモニタ発光部50mとしている。なお、通常発光部50nを構成する発光部Aは、単一の発光部Aまたは複数の発光部Aとして、光モジュール10として必要な光出力を出力できる定格出力を有している。
ここで、複数の発光部AのみでVCSELアレイが構成されている場合、複数の発光部Aは同じ時期に寿命が到来することになり、光モジュール10のこれ以上の使用は困難となる。そして、曲線PAで示された光出力に基づく劣化を検出することによって、ユーザに光モジュール10の交換を促そうとしても、発光部Aの劣化を検出した時点では使用困難になるまでの期間が短く、ユーザによっては使用困難になる前に交換を行うことが渡過されてしまうことも想定される。
そこで、本実施の形態に係る光モジュール10では、発光部Aよりも寿命が短い発光部Bおよび発光部Cをモニタ発光部50mとして設けるとともに、発光部B、あるいは発光部Cの劣化を検出することで、光モジュール10としての寿命が近づいていることを把握する。そして、ユーザに対して光モジュール10の交換等を促す報知を光モジュール10の寿命に達してしまう前に行う(以下、「アラートを発出する」という場合がある)ようにしている。図2(a)に示すように、発光部Bは発光部Aより期間t2だけ寿命が短く、発光部Cは発光部Bより期間t1だけ寿命が短く設定されている。つまり、発光部Cは発光部Aより期間(t1+t2)だけ寿命が短く設定されている。期間t1、t2については特に限定されないが、ユーザによる光モジュール10の交換までの期間に余裕をもたせることができればよいので、例えば1ヶ月から2ヶ月程度とすればよい。このように、本実施の形態に係る光モジュール10では、モニタ発光部50mによって通常発光部50nの劣化よりも早く劣化を検出している。
以下で説明するように、モニタ発光部50mは発光部Bだけ、発光部Cだけ配置してもよいし、発光部Bおよび発光部Cの両方を配置してもよい。また、発光部Cよりさらに寿命の短い発光部を配置してもよい。複数の寿命のモニタ発光部50mを配置することにより、段階的なアラートが発出される。
図2(b)〜(f)は、光モジュール10の発光領域40における通常発光部50n、モニタ発光部50mの配置の一例を示している。本実施の形態において、通常発光部50n、モニタ発光部50mの配置については特に限定されないが、図2(b)〜図2(f)では、後述する光伝送装置200への適用を考慮し、通常発光部50nの光伝送路(光ファイバ等)への結合を想定した配置の一例を示している。なお、本実施の形態におけるモニタ発光部50mは光が出射されないので、基本的にはいずれの位置に配置されてもよい。
図2(b)は、通常発光部50nである発光部Aを3個(発光部50−1、50−2、50−3)、モニタ発光部50mである発光部B(発光部50−4)を1個、合計4個の発光部を配置する形態である。本形態では、発光部50−4が遮光されている。なお、以下では発光部Aに対して、発光部B、Cを小さく表しているが、これは寿命の長短を模式化したもので必ずしも実際の物理的な大きさが小さいわけではない。
図2(c)は、通常発光部50nである発光部Aを2個(発光部50−1、50−4)、モニタ発光部50mである発光部B(発光部50−2)を1個、モニタ発光部50mである発光部C(発光部50−3)を1個、合計4個の発光部を配置する形態である。本形態では、発光部50−2、50−3が遮光されている。本配置形態によれば、発光部Cによるアラートの発出後に発光部Bによるアラートが発出されるので、アラートが段階的に発出される。また、モニタ発光部50mの個数が多い方が光モジュール10の劣化の判断が行いやすい。
図2(d)は、通常発光部50nである発光部Aを2個(発光部50−3、50−4)、モニタ発光部50mである発光部B(発光部50−2)を1個、モニタ発光部50mである発光部C(発光部50−1)を1個、合計4個の発光部を配置する形態である。本形態では、発光部50−1、50−2が遮光されている。本配置形態によれば、アラートが段階的に発出される。
図2(e)は、通常発光部50nである発光部Aを4個(発光部50−1、50−2、50−3、50−4)、モニタ発光部50mである発光部B(発光部50−5)を1個、合計5個の発光部を配置する形態である。本形態では、発光部50−5が遮光されている。本配置形態によれば、モニタ発光部50mが通常発光部50nで囲まれているので、モニタ発光部50mは通常発光部50nからの熱干渉を受けやすい位置(熱クロストークが大きい位置)に配置されている。従って、通常発光部50nと比較してモニタ発光部50mの寿命が短くされる。
図2(f)は、通常発光部50nである発光部Aを3個(発光部50−2、50−3、50−4)、モニタ発光部50mである発光部C(発光部50−1)を1個、合計4個の発光部を配置する形態である。本形態では、発光部50−1が遮光されている。本配置形態によれば、発光部Cの寿命が発光部Bの寿命より短いことから、図2(b)に示す光モジュールよりも早くアラートが発出される。このように、本実施の形態によれば、寿命を考慮して用いるモニタ発光部50mを選択することにより、アラートの発出時期が異なったものとされる。
以上の形態において、通常発光部50nの個数とモニタ発光部50mの個数との関係について特に制限はないが、通常発光部50nの個数をモニタ発光部50mの個数より多くすることにより、通常発光部50nの個数がモニタ発光部50mの個数より少ない場合と比較して、モニタ発光部50mが劣化したことが検知されてから通常発光部50nの寿命に達するまでの時間(発光モジュールの寿命に達するまでの時間)が長くなる。すなわち、APC制御方式においては、モニタ発光部50mが先に寿命に達した後は残りの通常発光部50nのみで同じ光量を発光することになるため、通常発光部50nの数が多いほど通常発光部50n1個あたりの光量増加分が少なくて済む。よって、通常発光部50nの数が多いほど、光量増加分による発熱等が抑制され、通常発光部50nの寿命に達するまでの時間が長くなる。その結果、交換を促す報知を行ってから発光モジュールの寿命に達するまでの時間、つまり、交換までの猶予期間に余裕が生まれる。
次に、図3および図4を参照して、本実施の形態に係る光モジュール10における劣化の検出方法について説明する。なお、本実施の形態に係る光モジュール10では、発光領域40の駆動方式としてAPC駆動を採用している。
図3(a)は、光モジュール10に発光領域40の駆動回路を付加して構成された、本実施の形態に係る光モジュール10aの回路図を示している。図3(a)に示すように、光モジュール10aは、光モジュール10としての通常発光部50nおよびモニタ発光部50mを含む発光領域40a、モニタPD62、およびAPC駆動部60を含んで構成されている。通常発光部50nのアノード(p側電極パッド28)、モニタ発光部50mのアノード(p側電極パッド28)、およびモニタPD62のカソードは電源VDDに接続されている。なお、APC駆動部60は、光モジュール10とモノリシックに一体的に形成してもよいし、光モジュール10とは別の半導体素子で形成し、両者をボンディングワイヤ等で接続するようにしてもよい。
光モジュール10aの発光領域40aは図2(d)に示す発光領域40と同じ構成を採用している。すなわち、通常発光部50nとしての発光部Aを3個(図3(a)では、代表して1個のみ示している)、モニタ発光部50mとしての発光部Cを1個配置して構成されている。なお、本実施の形態において、通常発光部50n、モニタ発光部50mの各々の個数は特に限定されず、少なくとも各々1個ずつ配置されていればよい。
APC駆動部60は、発光領域40aをAPC方式で駆動する駆動回路である。すなわち、発光領域40a(通常発光部50n)から出射される光出力PoをモニタPD62で受光し、モニタPD62で発生した、光出力Poに応じたモニタ電流ImをAPC駆動部60に入力させる。APC駆動部60はモニタ電流Imを電圧信号に変換し、該電圧信号と光出力Poの目標値を示す基準電圧との差分によって発光領域40aに流す駆動電流Idを制御する。
図3(a)に示すように、光モジュール10aでは、発光領域40aを構成する通常発光部50nおよびモニタ発光部50mは並列に接続し、合計4個の発光部50に一括して駆動電流Idを流している。しかしながら、本実施の形態に係る光モジュール10aではモニタ発光部50mは遮光しているので、モニタPD62は、3個の発光部A(発光部50−2、50−3、50−4)から出射された出射光が合成された光出力Poを受光している。なお、APC駆動部60には、光モジュール10aの光出力Poを変調する変調信号(図示省略。例えば、後述する光伝送装置の伝送データ信号)も入力されるので、駆動電流Idは、発光領域40aをバイアスするバイアス電流と伝送データ信号の電流とが合計された電流となる。
図3(b)は、光モジュール10aの駆動電流Idの経時変化を示している。図3(c)に示すように、光モジュール10aの駆動電流Idは駆動電流初期値Idiから始まって一定の期間、略一定の値を示す。しかしながら、発光領域40aの劣化に伴い光出力Poを一定に維持するため駆動電流Idが変動する。発光領域40aの劣化は、通常発光部50nの劣化に起因する場合もあるが、主としてモニタ発光部50mの劣化に起因する。
発光領域40aの劣化に伴い駆動電流Idが変動するのは、以下の理由による。すなわち、本実施の形態に係る発光領域40aは、3個の発光部Aと1個の発光部Cとが並列に接続されている。図2(a)に示すように、発光部Aより早く発光部Cが劣化するが、劣化に伴い発光部Cのインピーダンスが変化する。発光部Cのインピーダンスが変化すると、3個の発光部Aと1個の発光部Cの並列インピーダンスが変化するので、APC制御される駆動電流Idの大きさも変化する。
例えば、発光部Cのインピーダンスが大きくなると、APC制御によって発光部Aに流れる電流は一定なので、駆動電流Idは減少し、発光部Cのインピーダンスが小さくなれば駆動電流Idは増加する。光モジュール10aでは、この駆動電流Idの変動を監視することによって発光領域40aの劣化を監視している。発光部Cのインピーダンスの変化の方向(インピーダンスが大きくなるか、小さくなるか)は劣化モードによって異なり、それに応じた駆動電流Idの変化の方向も異なるが、本実施の形態では、以下駆動電流Idが大きくなる場合を例示して説明する。
図3(b)に示すように、駆動電流初期値Idiに対して、許容変動幅を示す駆動電流下限値Idminと駆動電流上限値Idmaxとを予め設定しておく。むろん、駆動電流下限値Idminおよび駆動電流上限値Idmaxはいずれか一方を設定しておいてもよい。駆動電流下限値Idmin、駆動電流上限値Idmaxの設定は、実験、シミュレーション等によって予め行っておいてもよい。そして、光モジュール10aの稼動状態において、駆動電流下限値Idmin、または駆動電流上限値Idmaxを外れた場合にアラートを発出する。図3(b)に示す例では、駆動電流Idが駆動電流上限値Idmaxを越えたことをもって、時間taにおいてアラートが発出されている。
時間taにおけるアラートはモニタ発光部50mである発光部Cによるものなので、光モジュール10aでは、通常発光部50nの劣化によって光モジュール10aの使用が困難になる以前にモニタ発光部50mによって劣化の兆候を検出しアラートが発出される。このことにより、ユーザによる交換までの時間的余裕が増大する。本実施の形態に係る光モジュール10aでは、さらにモニタ発光部50mが遮光されているのでモニタ発光部50mからの出射光が光モジュール10aから出射されることはない。そのため、モニタ発光部50mの劣化に伴い通常発光部50nとモニタ発光部50mとの間でスペクトルの均一性が低下することが抑制される。その結果、例えば光モジュール10aを光伝送装置に適用した際に、モニタ発光部50mの劣化前と比較して、伝送信号の品質が劣化することが抑制される。
なお、時間taにおいてアラートが発出された後も光モジュール10aを稼動し続けると、一定の時間の経過後に発光部Aの劣化に起因する駆動電流Idの増加が始まる。従って、この発光部Aの劣化に対応する駆動電流Idの上限値をさらに設定しておき、この上限値において、例えばユーザに交換を要請する報知を行うようにしてもよい。
次に、図4を参照して、光モジュール10aの駆動制御方法について説明する。図4(a)は、光モジュール10aの駆動電流Idの初期値である駆動電流初期値Idi、およびモニタ電流Imの初期値であるモニタ電流初期値Imiを設定するための初期値設定処理の流れを示すフローチャートであり、例えば、製品の出荷前に製造業者によって予め実行される。図4(b)は光モジュール10aの稼動状態において駆動電流を制御する駆動制御処理の流れを示すフローチャートであり、主として、ユーザが光モジュール10aを使用している期間に実行される処理である。
図4(a)を参照して、本実施の形態に係る初期値設定処理について説明する。
まず、ステップS100において、光モジュール10aの発光領域40a(通常発光部50n、モニタ発光部50m)に駆動電流Idを供給する。
次のステップS102で、光出力Poが規定値の範囲内か否か、すなわち光出力Poが初期設定値の範囲内か否かについて判定する。初期設定値は、例えば光モジュール10aの設計条件等から設定される。当該判定が肯定判定となった場合にはステップS106に移行し、否定判定となった場合にはステップS104に移行する。
ステップS104では、光出力Poが規定値の範囲内に収まるように駆動電流Idを調整した後、ステップS102に戻り、再度光出力Poが規定値の範囲内か否かを判定する。
ステップS106では、そのときの駆動電流Idを駆動電流初期値Idiとして設定し、制御部70に設けられたRAM(Random Access Memory)等の記憶手段に記憶させる。また、そのときのモニタ電流Imをモニタ電流初期値Imiとして記憶手段に記憶させる。その後、本初期値設定処理を終了する。
次に、図4(b)を参照して、光モジュール10aにおいてアラートが発出されるまでの駆動制御処理について説明する。
まず、ステップS200において、光モジュール10aの発光領域40a(通常発光部50n、モニタ発光部50m)に、駆動電流Idとして、上記初期値設定処理で設定した駆動電流初期値Idiを供給する。
次のステップS202では、モニタ電流Imが規定値の範囲内か、より具体的にはモニタ電流Imがモニタ電流初期値Imiを中心とする予め定められた範囲内にあるか否か判定する。当該判定が否定判定となった場合にはステップS204に移行し、モニタ電流Imが規定値の範囲内に収まるように駆動電流Idを調整した後、ステップS102に戻り、再度モニタ電流Imが規定値の範囲内か否か判定する。なお、ステップS202、S204のループが本実施の形態に係るAPC制御を示している。
一方、ステップS202で肯定判定となった場合にはステップS206に移行し、駆動電流Idが規定値の範囲内か否か、すなわち駆動電流Idが駆動電流下限値Idmin以上、駆動電流上限値Idmax以下の範囲内か否か判定する。例えば、モニタ発光部50mが劣化してモニタ発光部50mのインピーダンスが高くなった場合は、光モジュール10aに供給される全体の駆動電流Idは初期状態よりも小さくなる。一方、モニタ発光部50mが劣化してモニタ発光部50mのインピーダンスが低くなった場合は、光モジュール10aに供給される全体の駆動電流Idは初期状態小さくなる。よって、駆動電流下限値Idminと駆動電流上限値Idmaxとを設定することでモニタ発光部50mの劣化状態を判定する。
ステップS206における判定が肯定判定となった場合にはステップS202に戻り、再度モニタ電流Imが規定値の範囲内か否か判定する。
一方ステップS206における判定が否定判定となった場合にはステップS208に移行し、モニタ電流Imが許容範囲を外れたことをもってアラートを発出し、その後本駆動制御処理を終了する。なお、アラートを発出した後もAPC制御が継続されることで、光モジュール10aからの発光は維持される。
図4(b)における駆動制御は、制御部70がACP駆動部60等を制御することで実行される。また、ステップS206における駆動電流下限値Idminおよび駆動電流上限値Idmaxは製造業者等によって予め定められ、制御部70を構成するハードウエアやソフトウエアによってステップS206の判定が行われる。ハードウエアでの判定の場合は、パワーモニタ部68からの駆動電流Idの大きさを表す電圧信号と、駆動電流下限値Idminおよび駆動電流上限値Idmaxに対応する基準電圧値とをコンパレータ等の比較回路で比較して判定する。一方、ソフトウエアで判定する場合は、ソフトウエアを動作させるCPU等のプロセッサを備え、デジタル信号に変換された駆動電流Idの大きさを表す電圧信号と、制御部70に設けられたRAMに予め記憶された駆動電流下限値Idminおよび駆動電流上限値Idmaxとをソフトウエア上で比較し判定する。すなわち、制御部70は、パワーモニタ部68とともに、モニタ発光部50mが劣化したことを検知する検知部として機能する。
なお、本実施の形態に係る光モジュール10aでは、駆動電流Idに対し駆動電流下限値Idminおよび駆動電流上限値Idmaxを設定してアラートを発出する形態を例示して説明したが、電流値の異なる駆動電流下限値Idminおよび駆動電流上限値Idmaxを複数設定して、それぞれの上限値や下限値ごとにアラートの通知内容や通知方法を段階的に可変させてもよい。例えば、劣化が進むにつれて、より強く交換を要請するメッセージ等をユーザに報知するようにしてもよい。
次に、図5を参照して、本実施の形態に係る光モジュール10の製造方法について説明する。光モジュール10は、図1(b)に示すように4つの発光部50を備えているが、遮蔽部32の形成以外は製造工程としてはすべて同じであるので、以下の説明ではそのうちの1つの発光部50について図示し説明する。なお、図5において図1と符号が異なる同じ名称の構成は、同じ機能を有している。
まず、図5(a)に示すように、有機金属気相成長(MOCVD)法により、n型GaAsによる基板110上に、AlAsとGaAsとをそれぞれの膜厚が媒質内波長λ’(=λ/n)の1/4となるように交互に30周期積層したキャリア濃度1×1018cm-3となるn型の下部DBR112、アンドープAl0.22Ga0.78Asによる下部スぺーサ114とアンドープの量子井戸活性層116(膜厚80nmInGaAs量子井戸層3層と膜厚150nmGaAs障壁層4層とで構成されている)とアンドープAl0.22Ga0.78Asによる上部スぺーサ118とで構成された膜厚が媒質内波長λ’となる活性層領域130、その上に、キャリア濃度1×1018cm-3、膜厚が媒質内波長λ’の1/4となるp型のAlAs層120、その上にAl0.9Ga0.1AsとGaAsとをそれぞれの膜厚が媒質内波長λ’の1/4となるように交互に22周期積層したキャリア濃度1×1018cm-3、総膜厚が約2μmとなるp型の上部DBR122、その上にキャリア濃度1×1019cm-3となる膜厚が媒質内波長λ’のp型のGaAsによるコンタクト層124を順次積層する。
原料ガスとしては、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウム、アルシン、ドーパント材料としてはp型用にシクロペンタジニウムマグネシウム、n型用にシランを用い、成長時の基板温度は750℃とし、真空を破ることなく、原料ガスを順次変化し、連続して成膜をおこなった。
次に、図5(b)にその形状を示すように、上記積層膜を下部DBR112の途中までエッチングしてメサ126を形成し、AlAs層120側面を露出させる。メサ形状を加工するには、フォトリソグラフィにより結晶成長層上にレジストマスクRを形成し、四塩化炭素をエッチングガスとしてもちいた反応性イオンエッチングを用いた。
その後、レジストマスクRを除去し、図5(c)に示すように、約400℃の炉中で水蒸気によりAlAs層120だけを側方から酸化し高抵抗化させ、酸化領域132と非酸化領域120aとした。非酸化領域120aの径は、一例として約3μmである。この非酸化領域120aが、電流注入領域となる。
その後、図5(d)及び(e)に示すように、SiNによる層間絶縁膜134をメサ126上面を除いて蒸着し、レジストマスクRを利用して、出射口140を除いてTi/Auからなるp側電極配線136を形成する。この際、モニタ発光部50mとされるメサ126についてはレジストマスクRを形成せず、Ti/Auからなる遮蔽部32を形成する。また、基板110の裏面にはn側電極配線138としてAu/Geを蒸着する。このようにして、図5(f)に示す光モジュール10が完成する。なお、本実施の形態では酸化により電流狭窄構造を形成する形態を例示して説明したが、これに限られず、イオン注入により電流狭窄構造を形成する形態としてもよい。
次に、本実施の形態において、モニタ発光部50mを作製する方法について説明する。本実施の形態では通常発光部50nを上述した通常の製造工程で製造する。これに対し、モニタ発光部50mは次に示す方法1ないし方法5のいずれかの方法、または方法1ないし方法5のうちの複数を選択し組み合わせた方法を用い、通常発光部50nに対して寿命が短くなるようにして製造する。
方法1:通常発光部50nにおける酸化アパーチャ径(電流狭窄径)を異ならせる。酸化アパーチャ径とは、略円形である非酸化領域26a(非酸化領域120a)の直径である。酸化アパーチャ径は通常3〜10μm程度とされるが、この直径に対し2μm程度小さい直径の酸化アパーチャ径とする。酸化アパーチャ径は小さいほうが寿命が短い。これは、非酸化領域26aを流れる電流に対する抵抗が大きくなるためモニタ発光部50mでの発熱が増大し、モニタ発光部50mのジャンクション温度が高くなるためである。
方法2:通常発光部50nに対し、発光部にかかる応力が異ならせる。発光部に係る応力を異ならせるための具体的方法としては、例えば、層間絶縁膜20(層間絶縁膜134)の厚み、面積、および形状の少なくとも1つを異らせることが挙げられる。その際、応力の違いの管理のし易さから、通常発光部50nの形状とモニタ発光部50mの形状とは、同一にしておくことが好ましい。なお、ここでいう「同一」とは、製造上のばらつき等のばらつきを含む概念である。方法2によれば、通常発光部50nとモニタ発光部50mとで酸化アパーチャ径が同じ場合であっても、寿命が異なることになる。なお、具体的にどの程度の厚み、面積、および形状とするかは、モニタ発光部50mの寿命を通常発光部50nよりどの程度短く設定するかを決めた上で、実験またはシミュレーション等により決定すればよい。
方法3:モニタ発光部50mを、通常発光部50nのいずれよりも、熱クロストークが大きい位置に配置する。本方法について、図6(a)〜(c)を参照して説明する。図6は、発光領域40を構成するp側電極配線22、通常発光部50n、およびモニタ発光部50mを抜き出して示した図である。熱クロストークが大きい位置とは、モニタ発光部50mが通常発光部50nから受ける熱ストレスの大きい位置をさす。より具体的には、図6(a)に示すようにモニタ発光部50mを通常発光部50nで挟んで配置する形態、図6(b)、(c)に示すように、モニタ発光部50mの周囲に通常発光部50nを配置する形態が挙げられる。
方法4:モニタ発光部50mを、通常発光部50nで囲まれた位置に配置する。
方法5:通常発光部50nにおける隣接する発光部間の距離の最大値よりも、モニタ発光部50mと、通常発光部50nのいずれかとの距離の最小値のほうが大きくなるように配置する。モニタ発光部50mは光を出射しないので、通常発光部50nのように外部と光結合させる位置に配置する必要はない。逆に外部と光結合させる位置にモニタ発光部50mを配置すると、通常発光部50nの温度上昇を助長してしまう。従って、モニタ発光部50mを通常発光部50nから離間させて配置する。なお、その際離間させる方向はいずれの方向であってもよい。具体的な配置としては、図6(d)、(e)に示すような配置が挙げられる。図6(d)、(e)の符号Cで示された円は、後述の光ファイバ300のコア302の位置を示している。
図6(d)は、2個の通常発光部50nと、1個のモニタ発光部50mとをp側電極配線22の延伸方向に離間させて配置させた例である。図6(d)に示すように、本例では通常発光部50nをコアの略中心に位置するように配置し、モニタ発光部50mはコアから外れるようp側電極配線22の延伸方向にずらしている。図6(e)は、3個の通常発光部50n、1個のモニタ発光部50mについて同様の考え方で配置した例である。
[第2の実施の形態]
図7、および図8を参照して、本実施の形態に係る光モジュール10bについて説明する。上記の実施の形態に係る光モジュール10aがAPC駆動方式を採用していたのに対し、光モジュール10bでは定電流駆動方式を採用している。なお、本実施の形態では、定電流駆動方式に代えて定電圧駆動方式を用いてもよい。
図7(a)は、発光領域40aの駆動回路を含む光モジュール10bを示している。図7(a)示すように、光モジュール10bは、発光領域40a、モニタPD62、定電流駆動部64、およびパワーモニタ部66を含んで構成されている。発光領域40aは上記実施の形態に係る光モジュール10aの発光領域40aと同じものなので、説明を省略する。
定電流駆動部64は、図示しない定電流源によって発光領域40aを定電流駆動する部位である。定電流駆動部64には発光領域40aから出射される光出力Poを変調する信号、例えば伝送データ信号が入力されるが、図7(a)では図示を省略している。駆動電流Idはバイアス電流と伝送データ信号による電流とが合計された電流となるが、光モジュール10bに係る定電流駆動部64は、バイアス電流を一定にして光出力Poを制御している。
パワーモニタ部66は、例えば、電流電圧変換回路を含んで構成され、発光領域40aの光出力Poに応じモニタPD62で発生するモニタ電流Imを電圧信号に変換することによって、発光領域40aの光出力Poを監視する。
制御部72は、第1の実施の形態と同様に、ハードウエアやソフトウエアで構成され、モニタ電流Imの大きさを表す電圧信号に基づき、光モジュール10bの劣化を検出する。すなわち、制御部72は、パワーモニタ部66とともに、光モジュール10bに含まれるモニタ発光部50mが劣化したことを検知する検知部として機能する。
図7(b)は、モニタ電流Imの経時変化を示している。図7(b)に示すように、モニタ電流Imは、光モジュール10bの稼動開始後一定期間は、モニタ電流初期値Imiで推移し、発光領域40aに含まれる発光部50の劣化とともに変動する。光モジュール10bでは、このモニタ電流Imの変動によって発光領域40aを監視し、劣化を検出する。
図7(a)示す光モジュール10bでモニタ電流Imが変動するのは、モニタ発光部50mの劣化に伴いモニタ発光部50mのインピーダンスが変化することによる。モニタ発光部50mのインピーダンスの変化する方向(インピーダンスが大きくなるか小さくなるか)は、劣化のモードにより異なる。例えば、モニタ発光部50mの劣化に伴いモニタ発光部50mのインピーダンスが高くなると、駆動電流Idの値が一定であることから、通常発光部50nに流れる電流が増加する。すると、通常発光部50nからの光出力Poが増加するので、モニタ電流Imが増加する。
図7(b)は、モニタ発光部50mの劣化に伴いモニタ電流Imが増加する場合のモニタ電流Imの経時変化を示している。本実施の形態では、モニタ電流Imの変動を判定する閾値として2種類設定している。すなわち、第1の変動幅を示す第1のモニタ電流最小値Immin1と第1のモニタ電流最大値Immax1、第1の変動幅より大きな変動幅を示す第2のモニタ電流最小値Immin2と第2のモニタ電流最大値Immax2である。図7(b)に示す例では、時間ta1において第1のモニタ電流最大値Immax1を越えたことをもって第1のアラートが発出され、時間ta2において第2のモニタ電流最大値Immax2を越えたことをもって第2のアラートが発出される。第2のアラートは、例えば、第1のアラートより強く交換を要請するメッセージ等の報知である。本実施の形態では、通常発光部50nの劣化が検出する前にモニタ発光部50mの劣化によるアラートが発生されるので、ユーザによる交換までの猶予期間が確保されるとともに、モニタ発光部50mが遮光されているので、光モジュール10bの波長スペクトルの均一性の低下が抑制される。
なお、第1のモニタ電流最小値Immin1、第1のモニタ電流最大値Immax1の具体的な値は、例えばモニタ電流初期値Imiからの変動幅±10%の範囲、第2のモニタ電流最小値Immin2、第2のモニタ電流最大値Immax2の具体的な値は、例えばモニタ電流初期値Imiからの変動幅±50%の範囲として設定してもよい。
次に、図8を参照して、光モジュール10bの駆動制御方法について説明する。図8(a)は、光モジュール10bの駆動電流Idの初期値である駆動電流初期値Idi、モニタ電流初期値Imiを設定し、さらに上記第1のモニタ電流最小値Immin1、第1のモニタ電流最大値Immax1、第2のモニタ電流最小値Immin2、第2のモニタ電流最大値Immax2を設定するための初期値設定処理の流れを示すフローチャートである。一方、図8(b)は光モジュール10bの稼動状態において駆動電流を制御する駆動制御処理の流れを示すフローチャートである。
図8(a)に示すように、光モジュール10bの初期値設定処理は、ステップS100〜ステップS106までは、図4に示す上記実施の形態に係る光モジュール10aの初期値設定処理と同様であるため、同じ処理のステップには同じ符号を付し説明を省略する。
引き続くステップS108では、ステップS106で設定したモニタ電流初期値Imiに基づいて第1のモニタ電流最小値Immin1、第1のモニタ電流最大値Immax1、第2のモニタ電流最小値Immin2、第2のモニタ電流最大値Immax2を算出し、制御部72に設けられた記憶手段に記憶させる。第1のモニタ電流最小値Immin1、第1のモニタ電流最大値Immax1、第2のモニタ電流最小値Immin2、第2のモニタ電流最大値Immax2の設定は、実験、あるいはシミュレーション等によってモニタ電流初期値Imiに対する比率を示す係数を求めておき、設定されたモニタ電流初期値Imiに該係数を乗ずることによって設定してもよい。
次に、図8(b)を参照して、光モジュール10bにおいてアラートが発出されるまでの駆動制御処理について説明する。
まず、ステップS300で、駆動電流Idを、上記初期値設定処理で設定された駆動電流初期値Idiに設定する。
次のステップS302では、モニタ電流Imが第1のモニタ電流最小値Immin1以上、第1のモニタ電流最大値Immax1以下の範囲にあるか否か判定する。当該判定が肯定判定となった場合にはステップS302をループし、光モジュール10bの稼動を継続する。
一方、ステップS302で否定判定となった場合にはステップS304に移行する。
ステップS304では、モニタ電流Imが第1のモニタ電流最小値Immin1以上、第1のモニタ電流最大値Immax1以下の範囲を外れたことをもって第1のアラートを発出する。例えば、ユーザに対し光モジュール10bの交換を要請する(光モジュール10bの寿命を報知する)。
次のステップS306では、モニタ電流Imが第2のモニタ電流最小値Immin2以上、第2のモニタ電流最大値Immax2以下の範囲にあるか否か判定する。当該判定が肯定判定となった場合には第1のアラートの発出にとどめ、光モジュール10bの稼動を継続する。
一方、ステップS306で否定判定となった場合にはステップS308に移行し、第2のアラートを発出する。第2のアラートは、例えば、第1のアラートより強く交換を要請するメッセージ等の報知である。そして、光モジュール10bの稼動を継続するとともに、本実施の形態に係るアラートが発出するための駆動制御処理を終了する。
[第3の実施の形態]
図9および図10を参照して、本実施の形態に係る光伝送装置200について説明する。光伝送装置200は光ファイバを介して相互に光通信を行う通信装置の光送信部を構成する装置であり、上記実施の形態に係る光モジュール(光モジュール10、10a、10b)を搭載している。本実施の形態では、以下、光モジュール10を搭載した形態を例示して説明する。
図9(a)は光伝送装置200の平面図を、図9(b)は断面図を各々示している。図9(a)、(b)に示すように、光伝送装置200は、光モジュール10、モニタPD62、サブマウント214、およびこれらの構成を搭載するパッケージを含んで構成されている。光伝送装置200のパッケージは、ステム202、キャップ204、カソード端子216、アノード端子218、219(図9(b)ではアノード端子218に隠れて見えていない)、カソード端子220を含んで構成されている。
サブマウント214は、光モジュール10、モニタPD62等を搭載する基板であり、例えば半導体基板で構成されている。また、サブマウント214の光モジュール10等の搭載面側には金属膜等でn側配線212が形成されており、光モジュール10のn側電極配線30が接続される。
ステム202はサブマウント214を搭載する金属製のベースであり、カソード端子216、アノード端子218、219、カソード端子220が保持されている。カソード端子216、アノード端子218、219は必要な絶縁部を介してステムに保持されているが、カソード端子220はステム202に直接ロウ付けされている(同電位になっている)。
図9(a)に示すように、光モジュール10のp側電極パッド28は、ボンディングワイヤによってアノード電極208に接続され、アノード端子218を介して外部(駆動電源等)と接続される。一方、光モジュール10のn側電極配線30は、n側配線212およびボンディングワイヤを介してカソード電極210に接続され、カソード端子216を介して外部(駆動電源等)と接続される。
モニタPD62のアノードはボンディングワイヤを介してアノード電極206に接続され、アノード端子219を介して外部(駆動電源等)と接続される。一方、モニタPD62のカソードはボンディングワイヤによりステム202に接続され、カソード端子220を介して外部(駆動電源等)に接続される。
キャップ204は、サブマウント214に搭載された半導体素子等を気密封止するものであり、本実施の形態では金属で形成されている。キャップ204には光モジュール10からの光出力Poを通過させる開口部が形成されており、該開口部には部分反射ミラー222は貼り付けられている。光出力Poの大部分は部分反射ミラー222を通過して外部(本実施の形態では後述する光ファイバ)に出力されるが、一部(一例として10%程度)は部分反射ミラー222で反射され、モニタ光PmとしてモニタPD62に入射される。このモニタ光Pmによって、上述したモニタ電流Imが発生する。
制御部70、APC駆動部60、定電流駆動部64、パワーモニタ部66等を構成する半導体素子や、必要となる抵抗、コンデンサ等の受動部品は、カソード端子216、アノード端子218、219を介して光モジュール10およびモニタPD62と接続される制御基板74上に搭載されて光伝送装置200を構成する。なお、制御部70やAPC駆動部60等は、サブマウント214に搭載されてもよい。
また、光伝送装置200は、報知部として機能するディスプレイ76や警告灯などの表示手段を備え、制御部70からの指示に基づき、アラートが発出されたことをユーザに報知する。なお、ユーザに報知する機能を有する構成であれば、音声手段など、他の構成であってもよい。
次に、図10を参照して、光モジュール10と光ファイバ300との結合について説明する。図10(a)は、光モジュール10と光ファイバ300との結合状態を示す断面図、図10(b)は平面図である。なお、本実施の形態に係る光ファイバ300としては、シングルモードファイバ、マルチモードファイバ、プラスチックファイバ等特に制限なく用いられるが、本実施の形態ではマルチモードファイバを用いている。
図10(a)に示すように、光ファイバ300はコア302とクラッド304を備えている。図10(a)、(b)に示すように、光モジュール10の発光部50は、光出力Poが光ファイバ300のコア302に入射するように配置される。本実施の形態では光モジュール10と光ファイバ300との結合にレンズを用いていない。しかしながら、これに限られず、レンズを用いて光モジュール10と光ファイバ300とを結合させる形態としてもよい。
ここで、上記実施の形態ではキャン型のパッケージに搭載した形態の光伝送装置200を例示して説明したが、これに限られず、フラットパッケージに搭載した形態の光伝送装置としてもよい。
上記実施の形態に係る光モジュール10、10a、10b、光伝送装置200では、光モジュールからの光出力Poにおけるスペクトルの均一性の低下を抑制するためにモニタ発光部50mを遮光し、モニタ発光部50mから光が出射されないようにしていた。光が出射されないモニタ発光部50mは光ファイバ300と結合させる必要がないので、モニタ発光部50mの位置は考慮せずに通常発光部50nの位置のみを考慮して光伝送装置を構成することも考えられる。以下、この構成方法による配置形態を、本実施の形態に係る光伝送装置、モニタ発光部50mの作製方法として説明する。なお、本実施の形態に係る光伝送装置は、モニタ発光部50mの配置以外について上記光伝送装置200と同様なので、必要な場合には図9、10を参照することとし、図示を省略する。
方法6:通常発光部50nの方がモニタ発光部50mよりも、コアの中心に近い位置に配置する。本方法によって通常発光部50nとモニタ発光部50mを配置した形態を図11(a)に示す。図11(a)に示すように、本実施の形態では、通常発光部50nはコアの略中心に配置されているのに対し、モニタ発光部50mは中心からずれた位置に配置されている。このように通常発光部50nの位置のみを考慮して、通常発光部50nをよりコアの中心に近い位置に配置するようにすれば、通常発光部50nとモニタ発光部50mとがコアの中心に対して同距離にある構成と比較して、光モジュールから出射される光が光ファイバのコアにより結合しやすくなる。
方法7:複数の通常発光部50nの重心Gの位置の方を、モニタ発光部50mの位置よりも、光伝送路のコアの中心に近い位置に配置させる。図11(b)、(c)は、本方法によって配置した発光領域40の例を示している。このように通常発光部50nが複数ある場合は、その重心をモニタ発光部50mよりも光ファイバのコアの中心に近い位置に配置させることで、通常発光部50nおよびモニタ発光部50mの両方を含む発光部の重心を光ファイバのコアの中心に配置する構成と比較し、光モジュールから出射される光が光ファイバのコアにより結合しやすくなる。
[第4の実施の形態]
以下、本実施の形態に係る光伝送装置について説明する。上記実施の形態に係る光モジュール10、10a、10b、光伝送装置200では、光モジュールからの光出力Poにおけるスペクトルの均一性の低下を抑制するためにモニタ発光部50mを遮光し、モニタ発光部50mから光が出射されないようにしていた。本実施の形態は、モニタ発光部50mの出射口は遮光せず、モニタ発光部50mを遮光する代わりに、モニタ発光部50mからの出射光が光ファイバに結合されにくくなるように配置を考慮した形態である。従って、以下、本発明に係るモニタ発光部50mの作製方法の形態として説明する。なお、本実施の形態に係る光伝送装置200aは、モニタ発光部50mの配置および構造以外について上記光伝送装置200と同様なので、必要な場合には図9、10を参照することとし、図示を省略する。
方法8:通常発光部50nを、通常発光部50nから出射された光が光ファイバ300のコアに入射されるように配置させるとともに、モニタ発光部50mを、モニタ発光部50mから出射される光が光ファイバ300のコアに入射されない位置に配置する。具体的には、例えば、図6(d)や図6(e)のように、モニタ発光部50mを光ファイバのコアと重ならない位置に配置する。このようにすれば、モニタ発光部50mが光ファイバのコアと重なる位置にある構成と比較し、モニタ発光部50mからの出射光が光ファイバに結合されにくくなる。その結果、モニタ発光部50mの出射口が遮光されていない構成であっても、モニタ発光部50mのスペクトルが変化した場合における光ファイバに結合される光のスペクトルの変化が抑制される。
以上のように、本実施の形態に係る光伝送装置によっても、ユーザによる光モジュールの交換までの猶予期間が確保されるとともに、光モジュールの波長スペクトルの均一性の低下が抑制される。
なお、上記各実施の形態では、各発光部がモノリシックに形成された発光素子アレイを用いた形態を例示して説明したが、これに限られず、各発光部として個別の発光素子を用いた形態としてもよい。