JP6325803B2 - 壁補強構造、岸壁補強構造、壁補強方法及び岸壁補強方法 - Google Patents
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また、既存の岸壁の前面の海底に壁体支持部材を敷設した後、その壁体支持部材を貫通して杭を打設してなる岸壁補強構造が提案されている。この岸壁補強構造では、岸壁に作用する地震時水平力が壁体支持部材を介して杭に伝達されるようになっており、杭に伝達された地震時水平力は、杭の曲げ剛性によって支持されるようになっている(例えば、特許文献2参照。)。
壁に接して列状に埋設された複数の鋼管杭を備えた壁補強構造であって、
前記鋼管杭の根入れ部分の周面には杭材内部より押圧されて拡開する少なくとも一葉の切片を有する複数のスリット開口部が前記壁とは反対面側のみに設けられており、拡開した前記スリット開口部に固化材料を充填して形成した突部を有することを特徴とする。
岸壁に接して列状に埋設された複数の鋼管杭を備えた岸壁補強構造であって、
前記複数の鋼管杭の杭頭部は、水面よりも上に位置し、
前記鋼管杭の根入れ部分の周面には杭材内部より押圧されて拡開する少なくとも一葉の切片を有する複数のスリット開口部が設けられており、拡開した前記スリット開口部に固化材料を充填して形成した突部を有することを特徴とする。
前記スリット開口部は、前記鋼管杭が水底より深く根入れされる部分の上半部における前記岸壁とは反対面側のみに設けられていることを特徴とする。
杭材の根入れ部分に相当する周面の半面のみに複数のスリット開口部が設けられている複数の鋼管杭を壁に接して、前記スリット開口部を前記壁とは反対面側に向けて列状に埋設する工程と、
前記鋼管杭の内部より前記スリット開口部を押圧して拡開する工程と、
前記鋼管杭の内部に固化材料を加圧充填する工程と、
を有することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の壁補強方法において、
前記スリット開口部を拡開した箇所に固化材料を充填して突部を形成する工程を有することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の壁補強方法において、
前記加圧充填する工程において、設定圧に達するまで前記固化材料を地盤に浸透させて充填することを特徴とする。
杭材の根入れ部分に相当する周面に複数のスリット開口部が設けられている複数の鋼管杭を岸壁に接して、前記複数の鋼管杭の杭頭部が前記水面よりも上に位置するように列状に埋設する工程と、
前記鋼管杭の内部より前記スリット開口部を押圧して拡開する工程と、
前記鋼管杭の内部に固化材料を加圧充填する工程と、
を有することを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の岸壁補強方法において、
前記スリット開口部を拡開した箇所に固化材料を充填して突部を形成する工程を有することを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載の岸壁補強方法において、
前記加圧充填する工程において、設定圧に達するまで前記固化材料を地盤に浸透させて充填することを特徴とする。
岸壁1は、例えば、図1に示すように、地盤G1上に盛り固められた埋立土G2の表面をアスファルトなどからなる舗装面2で被覆した陸地である。なお、岸壁補強構造100が構築された岸壁1における舗装面2の縁であって鋼管杭10の上には、鋼管杭10の杭頭部を覆う車止め3などの構造物が設けられている。
突部10aは、鋼管杭10の周面に設けられた後述するスリット開口部10bが拡開された箇所に、後述する固化材料20が充填されて形成された突起である。
施工前の鋼管杭10は、例えば、図4に示すように、杭材内部より押圧されて拡開する複数のスリット開口部10bを有している。
スリット開口部10bは、鋼管杭10の周面を杭材の軸心を通る仮想面で二分したうちの一方の面側に形成されている。特に、スリット開口部10bは、鋼管杭10が水底(例えば海底)より深く根入れされる部分の上半部における岸壁1とは反対側となる面に設けられている。
また、鋼管杭10の上端には、スリット開口部10bが形成されている箇所(面)を示すためのマーク11が設けられている。例えば、鋼管杭10におけるマーク11の下方と、そのマーク11から左右45°の範囲にスリット開口部10bが形成されている(図3(b)参照)。
なお、スリット開口部10bの数や位置は、岸壁1や地盤G1(地層)の状況に応じて任意に決められ、この態様に限られるものではない。
ここで、鋼管杭10内部の土砂を排土する際に、鋼管杭10の根入れ部分の地盤状況を確認することができる。例えば、海底の上層は地盤G1上にヘドロ等が堆積している軟質層G3であることが予想されるので、海底面近傍の軟質層G3よりも深くに鋼管杭10のスリット開口部10bが達しているか否かを確認することができる。
つまり、鋼管杭10が海底より深く根入れされた部分の上半部にあるスリット開口部10bが、海底面近傍の軟質層G3よりも深い層(地盤G1)に達していることを確認して、鋼管杭10を埋設することができる。
そして、所定の深度まで埋設された鋼管杭10の向きは例えばマーク11に基づき調整されており、岸壁1とは反対面側の海側にスリット開口部10bを向けるように鋼管杭10を埋設している。
押圧装置40は、例えば、図6に示すように、装置本体41と、装置本体41に設けられて押圧部42を左右方向に進退させるシリンダ43と、装置本体41の姿勢を安定させるとともに上下に移動させるための懸垂部44等を備えている。
そして、図示しないセンサーによってスリット開口部10bを検出したり、また図示しないカメラを用いてスリット開口部10bの位置を目視確認したりするなどして、押圧装置40の上下位置や向きを調整する。
この押圧装置40が適正な位置に配設された状態で、図7に示すように、シリンダ43を駆動させて押圧部42をスリット開口部10bに向けて押し出し、杭材内部より押圧してスリット開口部10bを拡開する。シリンダストロークを管理することで切片10cの突出量を制御できる。
各地点で押圧装置40を作動させて、図8に示すように、全てのスリット開口部10bを拡開して切片10cを外方に突出させた後、押圧装置40を鋼管杭10内から引き上げる。
注入装置50は、例えば、図9に示すように、固化材料20の流路である注入管51と、中央の開口部分に注入管51が固定された円盤状の隔壁52と、隔壁52の周囲に設けられ鋼管杭10の内面に密着するシール部53と、固化材料20の流入量を切り替える開閉部54と、隔壁52の下面に設けられた圧力センサー55と、装置支持体56に取り付けられた加圧手段57と係止手段58とを備えている。
そして、所定の位置で係止手段58を作動させると、シリンダの駆動によって進退する当接部58aが鋼管杭10の内面に当接して、注入装置50の姿勢を安定させることができる。
この注入装置50が適正な位置に配設された状態で、注入管51を通じて隔壁52の開口から鋼管杭10内に固化材料20を注入する。そして、隔壁52まで固化材料20が満たされたら、加圧手段57を作動させ、シリンダの駆動によって隔壁52を下方に押し下げることで、予め設定された圧力で固化材料20を加圧する。また、固化材料充填用のポンプ圧によって加圧してもよい。この加圧によって鋼管杭10内に固化材料20を加圧充填すると、杭材周面のスリット開口部10bから固化材料20が漏出しつつ、スリット開口部10bが拡開した箇所に固化材料20が充填される。この際、固化材料20中の余剰水や空気もスリット開口部10bから排出される。なお、鋼管杭10内部の土砂を排土する際に確認した地盤G1の状況に応じて、固化材料20の充填量や充填圧をコントロールすることも容易である。例えば、図10に示すように、比較的軟弱な地盤G4にあっては、設定圧に到達するまで固化材料20を地盤G4に浸透させて充填することで地盤改良を図ることもできる。また、良好な地盤G1では固化材料20の浸透は少なく(図1参照)、材料のロスを図ることができる。
鋼管杭10内に固化材料20を所定量注入した後、加圧手段57と係止手段58を停止させ、注入装置50を鋼管杭10内から引き上げる。
なお、鋼管杭10の全長に亘って固化材料20を充填する必要はなく、例えば図1、図10に示すように、少なくとも鋼管杭10にスリット開口部10bが形成されている範囲に固化材料20を充填すればよい。このとき、充填した固化材料20の上面が地盤G1(G4)面よりも上にあることが好ましい。鋼管杭10内に充填した固化材料20の範囲が多いほど(鋼管杭10内を固化材料20が占める割合が多いほど)、その鋼管杭10の剛性が高まることは言うまでもない。
さらに、その鋼管杭10内に固化材料20を充填することで、拡開した切片10cが硬化した固化材料20によって補強されるので、鋼管杭10に外力が作用しても外方に突出した切片10cが押し戻されることはない。
そして、杭材周面に突出した複数の突部10aが引抜き・押込み抵抗となるので、その突部10aを有する鋼管杭10の支持力や引抜抵抗力は向上するうえ、曲げモーメントの定常性を本杭長で調整できる。
したがって、岸壁1に地震時の水平力や岸壁後背地に荷重増加があっても、鋼管杭10の杭頭変位は抑止されるので、別途アンカー等の控えが不要となり、また後背地の沈下も抑止できる。
つまり、鋼管杭10の前面に形成した複数の突部10aによって、鋼管杭10の根入れ部分の前面側(海側)の地盤G1を圧密補強するとともに、背面側(岸壁1側)の地盤G1も圧密補強することができる。
その結果、列状に埋設された複数の鋼管杭10によって岸壁1側の地盤G1や埋立土G2が海側にはらみ出すことを抑止することができ、岸壁1側の地盤沈下を防止することができる優れた岸壁補強構造100を構築することができる。
また、この岸壁補強構造100は、既設の鋼管杭10から反力をとって、新たな鋼管杭10を施工位置に圧入する従来周知の作業工程と、圧入した鋼管杭10内に押圧装置40や注入装置50を挿入しての作業工程によって造成することができ、大型の施工機械を使用することはないので、供用中の港湾など狭隘な場所であっても施工可能であり、所望する場所に施工することができる優れた技術である。
また、岸壁補強構造100を造成する際、海底を掘削することはなく鋼管杭10内から海底面最上層部を除く地盤G1(G4)に固化材料20が注入されるので、固化材料20の海底面への漏出がなく海洋を汚染することはない。
また、鋼管杭10内に固化材料20が充填されていることで、鋼管杭10の耐力や靱性が大幅に向上し、鋼管杭10の強度がより一層向上する。
例えば、図11(a)に示すように、スリット開口部10bは、杭材の周面に設けられた略+字形状を呈する切込み状の開口と、スリット開口部10bが拡開した際に外方へ突出する四葉の切片10cを有するものでもよい。
また、図11(b)に示すように、スリット開口部10bは、杭材の周面に設けられた略H字形状を呈する切込み状の開口と、スリット開口部10bが拡開した際に外方へ突出する二葉の切片10cを有するものでもよい。
また、図11(c)に示すように、スリット開口部10bは、杭材の周面に設けられた略U字形状あるいは略V字形状を呈する切込み状の開口と、スリット開口部10bが拡開した際に外方へ突出する一葉の切片10cを有するものでもよい。
また、スリット幅を横長とすれば、鉛直方向荷重に対して突部10aの受圧面積を大きくできるので、突部10aの数量を少なくでき好適である。
10 鋼管杭
10a 突部
10b スリット開口部
10c 切片
11 マーク
20 固化材料
40 押圧装置
50 注入装置
G1 地盤
G2 埋立土
G3 軟質層
G4 地盤
W 海
Claims (9)
- 壁に接して列状に埋設された複数の鋼管杭を備えた壁補強構造であって、
前記鋼管杭の根入れ部分の周面には杭材内部より押圧されて拡開する少なくとも一葉の切片を有する複数のスリット開口部が前記壁とは反対面側のみに設けられており、拡開した前記スリット開口部に固化材料を充填して形成した突部を有することを特徴とする壁補強構造。 - 岸壁に接して列状に埋設された複数の鋼管杭を備えた岸壁補強構造であって、
前記複数の鋼管杭の杭頭部は、水面よりも上に位置し、
前記鋼管杭の根入れ部分の周面には杭材内部より押圧されて拡開する少なくとも一葉の切片を有する複数のスリット開口部が設けられており、拡開した前記スリット開口部に固化材料を充填して形成した突部を有することを特徴とする岸壁補強構造。 - 前記スリット開口部は、前記鋼管杭が水底より深く根入れされる部分の上半部における前記岸壁とは反対面側のみに設けられていることを特徴とする請求項2に記載の岸壁補強構造。
- 杭材の根入れ部分に相当する周面の半面のみに複数のスリット開口部が設けられている複数の鋼管杭を壁に接して、前記スリット開口部を前記壁とは反対面側に向けて列状に埋設する工程と、
前記鋼管杭の内部より前記スリット開口部を押圧して拡開する工程と、
前記鋼管杭の内部に固化材料を加圧充填する工程と、
を有することを特徴とする壁補強方法。 - 前記スリット開口部を拡開した箇所に固化材料を充填して突部を形成する工程を有することを特徴とする請求項4に記載の壁補強方法。
- 前記加圧充填する工程において、設定圧に達するまで前記固化材料を地盤に浸透させて充填することを特徴とする請求項4又は5に記載の壁補強方法。
- 杭材の根入れ部分に相当する周面に複数のスリット開口部が設けられている複数の鋼管杭を岸壁に接して、前記複数の鋼管杭の杭頭部が前記水面よりも上に位置するように列状に埋設する工程と、
前記鋼管杭の内部より前記スリット開口部を押圧して拡開する工程と、
前記鋼管杭の内部に固化材料を加圧充填する工程と、
を有することを特徴とする岸壁補強方法。 - 前記スリット開口部を拡開した箇所に固化材料を充填して突部を形成する工程を有することを特徴とする請求項7に記載の岸壁補強方法。
- 前記加圧充填する工程において、設定圧に達するまで前記固化材料を地盤に浸透させて充填することを特徴とする請求項7又は8に記載の岸壁補強方法。
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