以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態である眼科装置1について説明する。まず、図1を参照して、眼科装置の外観構成を説明する。眼科装置1は、被検眼の瞳孔内画像(いわゆる徹照像)を観察するための眼科機器である。本実施形態において、眼科装置1は、徹照像の撮影が可能なオートレフラクトメータであるものとして説明する。眼科装置1は、基台2と、顔支持ユニット4と、移動台6と、駆動機構7と、測定部8と、ジョイスティック9と、モニタ70と、操作部90と、を備える。
基台2の上には、移動台6が支持されている。また、基台2には、顔支持ユニット4が固定されている。顔支持ユニット4は、図1に示すように、被検眼を測定部に対向させた状態で被験者の顔を支持するためのユニットである。
移動台6は、駆動機構7を介して測定部8を支持するものである。移動台6は、駆動機構7および測定部8と共に、基台2上を、左右方向(X方向)及び前後方向(Z方向)に移動可能に構成される。駆動機構7は、測定部8を、少なくとも上下方向(Y方向)に移動させるための機構である。駆動機構7は、測定部8を移動させるために、モータ等を有している。
また、移動台6には、検者からの操作を受け付けるジョイスティック9が設けられている。検者によってジョイスティック9が倒されることによって、測定部8を支持する移動台6が移動される。また、検者によってジョイスティック9の回転ノブ9aが回転操作されることによって、測定部8が、駆動機構7によって上下方向(Y方向)に移動される。このように、眼科装置1は、ジョイスティック9の操作によって、被検眼Eと測定部8とを手動で位置あわせすることができる。ジョイスティック9に設けられたプッシュボタン9bは、モニタ70に表示される徹照像を取り込む場合に操作される。
測定部8には、被検眼Eの観察像を撮影したり、被検眼Eの眼屈折力等を測定したりするための光学系が格納されている。この光学系の詳細については、図2を参照して後述する。
モニタ70は、測定部8によって撮影された被検眼Eの観察像および測定部8による被検眼Eの測定結果等、の各種情報を表示するディスプレイである。また、操作部90には、眼科装置1の各種設定を行うためのスイッチが複数配置されている。操作部90に設けられた各種スイッチについては、図2を参照して後述する。
次に、図2を参照して、眼科装置1の測定部8が有する光学系および眼科装置1の制御系について説明する。まず、眼科装置1の光学系について説明する。眼科装置1は、主な光学系として、測定光学系10と、固視標呈示光学系30と、リング指標投影光学系45と、作動距離指標投影光学系46と、観察光学系(撮像光学系)50と、を有している。
測定光学系10は、投影光学系(投光光学系)10aと、受光光学系10bと、を有している。投影光学系10aは、被検眼Eの瞳孔を介して被検眼Eの眼底Efに光束を投影するための光学系である。また、受光光学系10bは、眼底Efから反射された眼底反射光を、瞳孔周辺部を介してリング状に取り出し、主に眼屈折力の測定に用いるリング状の眼底反射像を撮像するための光学系である。
投影光学系10aは、測定光学系10の光軸L1上に配置された、測定光源11と、リレーレンズ12と、ホールミラー13と、対物レンズ14と、を含む。
光源11は、被検眼Eの瞳孔中心部を介して眼底Efにスポット状の測定視標を投影するための光源である。光源11は、正視眼の眼底Efと光学的に共役な位置関係となっている。本実施形態では、光源11は、SLD(Super Luminescent Diode)であるものとして説明するが、これに代えて、例えばLED(Light Emitting Diode)等を用いることもできる。
また、本実施形態において、光源11は、被検眼Eの徹照像を撮影するための照明光源としても用いられる。即ち、光源11から出射された光束(照明光)の眼底反射光によって、被検眼Eの瞳孔内が照明される。
ホールミラー13は、リレーレンズ12を介した光源11からの光束を通過させる開口が設けられている。ホールミラー13は、眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置関係となっている。
受光光学系10bは、投影光学系10aのホールミラー13と、対物レンズ14と、を投影光学系10aと共用している。また、受光光学系10bは、リレーレンズ16と、全反射ミラー17と、受光絞り18と、コリメータレンズ19と、リングレンズ20と、二次元撮像素子22(以下、「撮像素子22」と称す)と、を含む。
リレーレンズ16は、ホールミラー13の反射方向の光軸L2上に配置される。受光絞り18は、眼底Efと光学的に共役な位置であって、全反射ミラー17の反射方向の光軸L2上に配置される。リングレンズ20は、眼底反射光をリング状に整形するための光学素子である。リングレンズ20は、リング状に形成されたレンズ部と、レンズ部以外の領域に遮光用のコーティングを施した遮光部と、を有している。また、リングレンズ20は、被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置関係となっている。リングレンズ20を介したリング状の眼底反射光(即ち、二次元パターン像)は、撮像素子22で受光される。撮像素子22は、眼底Efと光学的に共役な位置に配置される。撮像素子22は、受光した二次元パターン像の画像情報を、演算制御部100(以下、制御部100と称す)に出力する。これによって、二次元パターン像をモニタ70に表示させたり、二次元パターン像に基づいて被検眼Eの屈折力を算出させたりすることが可能となる。なお、撮像素子22としては、エリアCCD等の受光素子を用いることができる。
なお、測定光学系10は上記のものに限らず、被検眼眼底Efに向けて測定光を投光する投光光学系と、測定光の眼底Efでの反射によって取得される反射光を受光素子によって受光する受光光学系と、を有する測定光学系であればよい。例えば、眼屈折力測定光学系は、シャックハルトマンセンサーを備えた構成であってもよい。もちろん、他の測定方式の装置が利用されてもよい(例えば、スリットを投影する位相差方式の装置)。
対物レンズ14とホールミラー13との間には、ビームスプリッタ29が配置されている。ビームスプリッタ29は、後述の固視標呈示光学系30からの光束を被検眼Eに導き、被検眼Eの前眼部Ecからの反射光を観察光学系50に導く。また、ビームスプリッタ29は、光源11から出射され、眼底Efで反射された眼底反射光の一部を反射し、観察光学系50へ導くと共に、他の眼底反射光を透過し、受光光学系10bへと導く。なお、詳細は後述するが、光源11による眼底反射光のうち、観察光学系50へ導かれた光束は、徹照像を撮影するために用いられる。
固視標呈示光学系30は、被検眼Eを固視させるための固視光学系である。固視標呈示光学系30は、可視光源31と、固視標を持つ固視標板32と、投光レンズ33と、ビームスプリッタ29と、対物レンズ14と、を含む。可視光源31が点灯されることで、個視標板32が有する固視標が、被検眼Eに呈示される。可視光源31及び固視標板32は、図示しないスライド機構によって、光軸L3方向に移動可能に構成されている。可視光源31及び固視標板32が光軸L3方向に移動されることによって、被検眼Eの雲霧が行われる。
被検眼Eの前眼部の前方には、リング指標投影光学系45と、作動距離指標投影光学系46とが配置されている。リング指標投影光学系45は、被検眼Eの角膜Ecに対してリング指標を投影するための近赤外光を発する光学系である。なお、角膜Ecに投影するリング指標は、角膜形状測定用の指標としても利用できる。また、リング投影光学系45は、被検眼Eの前眼部を照明する前眼部照明としても用いることもできる。一方、作動距離指標投影光学系46は、被検眼Eの角膜Ecに無限遠指標を投影するための近赤外光を発する光学系である。角膜Ecに対する無限遠指標の位置に基づいて、検者は、被検眼Eに対する検眼装置1の位置をアライメントすることができる。
観察光学系(撮像光学系)50は、対物レンズ14と、ビームスプリッタ29と、を固視標呈示光学系30と共用している。また、観察光学系50は、ハーフミラー35と、撮像レンズ51と、二次元撮像素子52(以下、「撮像素子52」と称す)と、を含む。撮像素子52は、被検眼Eの前眼部と略共役な位置に配置された撮像面を持つ受光素子である。この撮像素子52によって、被検眼Eの前眼部画像が撮像される。前眼部画像の一種である徹照像も、撮像素子52によって撮像される。撮像素子52からの出力は、制御部100に入力される。その結果、撮像素子52によって撮像される被検眼Eの前眼部像が、モニタ70上に表示される。なお、本実施形態では、観察光学系50が、作動距離指標投影光学系46によって被検眼Eの角膜に形成されるアライメント指標像を検出する光学系を兼ねている。撮像素子52によるアライメント指標像の撮像結果に基づいてアライメント指標像の位置が検出される。
次に、検眼装置1の制御系について説明する。検眼装置1は、主な制御系として、制御部100を有している。制御部100は、検眼装置1の各部の制御処理と、測定結果の演算処理とを行う電子回路を有する処理装置である。制御部100は、光源11,31、撮像素子22,52、移動台6および駆動機構7、ジョイスティック9、モニタ70、操作部90、フラッシュメモリ105のそれぞれに電気的に接続されている。
制御部100は、CPU101と、ROM102と、RAM103とを備えている。CPU101は、眼科装置1に関する各種の処理を実行するための処理装置である。ROM102は、CPU101が眼科装置1の各種制御を行うための制御プログラムおよび固定データが格納された、不揮発性の記憶装置である。
RAM103は、書き換え可能な揮発性の記憶装置である。RAM103には、例えば、眼科装置1による被検眼Eの測定および撮影に用いる一時データが格納される。
また、フラッシュメモリ105は、書き換え可能な不揮発性の記憶装置である。フラッシュメモリ105には、徹照像を観察する際に光源11から出射される照明光の光量を調節する処理(図4,図5,図7,図8参照)を、制御部100に実行させるためのプログラムが少なくとも格納されている。
また、前述したように、操作部90には、検者の操作を受け付けるためのスイッチが複数設けられている。本実施形態の眼科装置1には、例えば、測定モード切替スイッチ90a、光量調節モード切替スイッチ90b、光量増加スイッチ90c、および、光量減少スイッチ90dが、操作部90に設けられている。
測定モード切替スイッチ90aは、制御部100で行われる制御を、眼屈折力測定モードと、徹照像観察モードとに切り替えるスイッチである。眼屈折力測定モードは、被検眼Eの屈折力を測定する制御モードである。また、徹照像観察モードは、被検眼Eの徹照像を撮像する制御モードである。光量調節モード切替スイッチ90bは、徹照像観察モードにおける制御部100の制御を、自動調光モードと、手動調節モードと、に切り替えるためのスイッチである。自動調光モードは、光源11から出射される光量を、自動で調節するモードである。手動調節モードは、スイッチ90c,90dの操作に基づいて光源11からの光量を調節するモードである。光量増加スイッチ90cは、手動調節モードにおいて、光源11からの光量を増大させるために操作されるスイッチである。また、光量減少スイッチ90dは、手動調節モードにおいて、光源11からの光量を減少させるために操作されるスイッチである。
<眼屈折力測定モード>
以上のような構成を備える装置の測定動作について説明する。まず、被検者の顔を顔支持ユニット4に固定させ、検者から被験者に対して固視標板32の固視標を固視するよう指示する。その後、検者によって、被検眼Eに対する測定部8のアライメントが行われる。
被検眼Eに対する測定部8のアライメント完了後、制御部100は、測定開始信号の入力に基づき光源11を点灯させる。これにより、光源11から出射される光束の眼底反射光が、撮像素子22で受光される。撮像素子22で受光される眼底反射光に基づき、制御部100では、被検眼Eの眼屈折値S(球面度数)、C(柱面度数)、A(乱視軸角度)の各値が演算される。演算結果は、制御部100によってモニタ70に出力される。その結果、S(球面度数)、C(柱面度数)、A(乱視軸角度)の各値がモニタ70に表示される。
<徹照像観察モード>
操作部90のモード切替スイッチ90aの操作に基づいて、眼科装置1の制御が、観察光学系50により徹照像を観察するための徹照像観察モードに移行される。なお、眼屈折力測定モードにおいて、被検眼Eの眼屈折値が算出された後に、制御部100の制御を、自動で徹照像観察モードに移行させてもよい。
操作部90のスイッチ90aが操作されると、モード切替信号が制御部100に入力される。この入力を契機に、眼科装置1の制御が徹照像観察モードに移行される。徹照像観察モードにおいて、まず、制御部100は、リング指標投影光学系45の光源及び作動距離指標投影光学系46の光源を消灯させ、光源11を点灯させる。本実施例の場合、光源11は、眼屈折力測定用の測定光源と、徹照像撮影用の照明光源とを兼ねているが、光源11とは別途、徹照像撮影用の光源を設けてもよい。
光源11から眼底Efに向けて出射された光束は、眼底Efにて反射される。眼底反射光は、被検眼Eの水晶体を介して、瞳孔から出射される。このとき、被検眼Eの中間透光体が眼底反射光によって照明される。瞳孔から出射された眼底反射光は、ビームスプリッタ29、ハーフミラー35の各々で反射され、光軸L4上に配置された撮像素子52によって受光される。これにより、徹照像(瞳孔内画像)を含んだ画像が撮像素子52に撮像される。撮像素子52に撮像された画像は、制御部100を介してモニタ70に出力される。これにより、モニタ70に徹照像が表示される。
ここで、図3を参照して、モニタ70に表示される徹照像について説明する。図3に示すバツ印Axは、眼科装置1の観察光軸の通過位置(以下、「光軸通過位置Ax」と称す)を示す。本実施形態においては、光源11からの照明光は、観察光軸に重なるように照射される。このため、図3に示すように、光軸通過位置Axが瞳孔内に位置していれば、照明光の眼底反射光によって瞳孔内が照明されるので、周囲と比べて瞳孔内が明るく照明された画像が表示される。図3に示すように、白内障等による混濁がある部位K(以下、「混濁部位K」と称す)においては、暗い影が確認される。このとき、混濁部位Kにピントが合っておらず、混濁部位Kの影がぼやけている場合がある。かかる場合、検者は、ジョイスティック9を操作して、測定部8をZ方向(前後方向)に移動させる。これによって、混濁部位Kを鮮明に表示させることができる。
また、光源11から出射された照明光が、被検眼Eの角膜頂点付近に照射されると、照明光の角膜反射によって、画像の中に輝点(角膜反射像)SPが映りこむ場合がある。照明光の照射位置が角膜頂点に近づくほど、照明光の光束と、その光束と角膜における照明光の照射される領域とのなす角が、垂直に近づく。よって、照明光の照射位置が角膜頂点に近づくほど、観察光学系50に入射する角膜反射の光量が増えるからである。この角膜反射像SPによって、例えば、混濁部位Kが隠れてしまうおそれがある。角膜反射像SPは、例えば、照明光の光量を下げることによって、画像の中に映りこみ難くすることができる。また、照明光の照射位置(本実施形態では、観察光軸の通過位置)を角膜頂点から離すことによっても、画像の中に角膜反射像SPを映りこみ難くすることができる
。このように、角膜反射像SPの影響が抑制されることで、角膜Ecよりも網膜側が可視できる瞳孔内領域が拡大(増大)される。
図3に示すように、モニタ70の右下領域Vには、光源11から出射される照明光の光量を示す、光量レベルが表示される。なお、本実施形態において、光源11の光量レベルは、「0」〜「255」の256段階に分かれている。「0」は、光源11から光が照射されない状態の光量を示す値である。光量レベルの値が大きいほど、光源11から出射される照明光の光量が多くなる。この光量レベルを示すためのデータは、RAM103内の所定領域に格納される。なお、本実施形態では、光源11の光量レベルを、数字でモニタ70上に示す場合について説明するが、その他の態様によって、光量レベルを示しても良い。例えば、数字の代わりに目盛りをモニタ70に表示させることで光量レベルを示しても良い。また、数字の代わりに光源11を模したランプ等の図形をモニタ70に表示させ、その図形の色の変化で、光量レベルを示しても良い。
<自動調光モード>
本実施形態では、制御部100は、徹照像観察モードに移行した場合は、まず、自動調光モードで、光源11の光量を制御する。自動調光モードは、観察光学系50で撮像される画像の画像情報に基づいて、光源11から出射される照明光の光量を調節するモードである。制御部100において以下の自動調光処理が実行されることによって、自動調光モードの制御が行われる。
ここで、図4を参照して、自動調光処理について説明する。自動調光処理では、まず、CPU101は、撮像素子52で撮像される画像を取得する処理を行う(S11)。ここでは、CPU101は、撮像素子52の受光結果に基づく画像データを、RAM103内の所定領域に記憶させる(S11)。なお、本実施形態では、1/60秒経過毎に到来する撮像素子52の撮像タイミングと同期して、S11の処理が実行される。
次に、CPU101は、第1調節処理を実行する(S12)。第1調節処理(S12)では、CPU101は、S11の処理によって取得された画像データを解析し、その解析の結果に応じて光源11からの出力を変更させる。
ここで、図5を参照して、第1調節処理(S12)について説明する。第1調節処理において、まず、CPU101は、S11の処理で取得された画像を解析し、高輝度画素および低輝度画素を、領域Biと、領域Boとのそれぞれについてカウントする(S21)。ここで図6に示すように、領域Biは、光軸通過位置Axの近傍領域である。また、領域Boは、領域Biよりも光軸通過位置Axから離れた領域であって、領域Biの周辺に位置する。本実施形態において、領域Bi、領域Boは、それぞれ、光軸通過位置Axを中心とした直径2mmの円の内側領域、外側領域として設定される。本実施形態では、被検眼角膜Ec上における照明光のビーム径は、2mm程度である。このため、本実施形態において、領域Biは、光源11からの照明光が照射される領域であり、角膜反射による輝点は、ほぼ領域Bi内に生じる。
本実施形態では、撮像素子52で撮像される画像に含まれる各画素の輝度値は、「0(黒)」〜「255(白)」の256段階で示される。S21の処理では、輝度値が「201」〜「255」までの画素が、高輝度画素とされる。本実施形態において、高輝度画素の輝度値の範囲は、角膜反射像SPを構成する画素の輝度値が含まれるように設定されている。一方、輝度値が「51」〜「200」までの画素が、低輝度画素とされる。本実施形態において、低輝度画素の輝度値の下限「51」は、眼底反射光に照明された瞳孔内領域における混濁の無い部位の最低輝度値が含まれるように設定されている。なお、本実施形態において、照明光が照射されていない瞳孔外の領域(図3に示す瞳孔外でハッチングされた領域)に含まれる画素の輝度値は、「30」程度である。このため、瞳孔外の照明光が照射されていない領域は、S21の処理において、高輝度画素および低輝度画素のいずれにもカウントされない。
以下の説明において、領域Biに含まれる高輝度画素の画素数、低輝度画素の画素数、および、領域Boに含まれる高輝度画素の画素数、低輝度画素の画素数、をそれぞれ、IH、IL、および、OH、OLと表記する。
次に、CPU101は、S22〜S30の処理を実行し、S21の処理でカウントされたIH、IL、OH、OLの値に応じた調節量で、光源11の光量を調節する。
まず、S22の処理によって、CPU101は、条件「IH>200、且つ、OH>1000、且つ、OL<500」が成立するか判定する(S22)。この条件が成立する場合は、例えば、混濁部位Kとそれ以外の部位との区別が困難になるほど、照明光の光量が高められていると考えられる。例えば、瞳孔内に照射される照明光の光量が著しく多く、それ故、瞳孔全体を照明する眼底反射光の光量が多くなる場合には、混濁部位Kにおける輝度値と、混濁部位K以外の瞳孔内領域の輝度値とが、それぞれ撮像信号の飽和レベル(即ち、輝度値「255」)付近となって、それぞれの部位を区別し難くなってしまうことが考えられる。そこで、本実施形態では、条件「IH>200、且つ、OH>1000、且つ、OL<500」が成立する場合は(S22:YES)、RAM103内の光量レベルがCPU101によって「−3」されて更新される(S23)。S23の処理の実行後は、第1調整処理をリターンして、自動調光処理に戻る。
一方、S22の処理によって、条件「IH>200、且つ、OH>1000、且つ、OL<500」が成立していないと判定された場合は(S22:NO)、CPU101によって、条件「IH>50」が成立しているか判定される(S24)。条件「IH>50」は、例えば、画像における領域Biに、検者が観察できる程度の角膜反射像SPが生じている場合に成立すると考えられる。
前述したように、本実施形態では、角膜反射像SPは領域Biに生じ易いので、領域Biの中にある高輝度画素が所定の閾値(すなわち、本実施形態では「50」)より多ければ、画像の中に角膜反射像SPが生じている可能性があると考えられるからである。従って、条件「IH>50」が成立する場合は(S24:YES)、S25の処理によって、CPU101にRAM103内の光量レベルを「−1」させる(S25)。S25の処理の実行後は第1調節処理を終了し、S12の処理に進む。
S24の処理によって、条件「IH>50」が成立していないと判定された場合は(S24:NO)、角膜反射像SPが画像の中に無い場合である。上述したように、角膜反射像SPは、領域Biの中に生じると考えられるからである。条件「IH>50」が成立していないと判定された場合は(S24:NO)、CPU101は、条件「IL>50、且つ、OL>50」が成立しているか判定する(S26)。条件「IL>50、且つ、OL>50」は、例えば、照明光が瞳孔内に照射されている場合に成立すると考えられる。照明光が瞳孔内に照射されると、眼底反射光によって瞳孔内全体が照明される。このため、本実施形態では、瞳孔と比べて十分小さく照明光の照射されるである領域Biだけでなく、領域Biを囲む領域Boにも、瞳孔の周囲に比べて輝度値の高い画素が含まれると考えられるためである。
画像の中に角膜反射像SPが無く、且つ、瞳孔内に照明光が照射されている場合に、CPU101によって、条件「IL>50、且つ、OL>50」が成立すると判定される(S26:YES)。かかる場合は、S27の処理に移行し、CPU101によって、RAM103内の光量レベルが「+1」される(S27)。S27の処理の実行後は、第1調節処理を終了し、S12の処理に進む。
一方、S26の処理によって条件「IL>50、且つ、OL>50」が成立していないと判定された場合は(S26:NO)、例えば、照明光が瞳孔内に照射されていない可能性があると考えられる。また、照明光の光量が少ないという可能性もあると考えられる。この場合は(S26:NO)、CPU101によって、条件「IL>50」が成立しているか判定される(S28)。S26の判定条件「IL>50、且つ、OL>50」が成立せず、且つ、条件「IL>50」が成立しない場合(S28:NO)には、反射対象物が存在しなかったり、照明光の光量が著しく少なかったりする場合であることが考えられる。この場合は、照明光が瞳孔に照射される場合に、瞳孔内部を速やかに明るく照明するため、CPU101は、RAM103内の光量レベルを「+5」する(S30)。一方、条件「IL>50」が成立する場合は(S28:YES)、少なくとも領域Bi内に存在する反射対象物によって、照明光が反射されていると考えられる。そこで、CPU101は、RAM103内の光量レベルを「+3」する(S29)。S29,S30の処理の実行後は、第1調節処理を終了し、S12の処理に進む。
以上に示したように、第1調節処理では、撮像素子52で撮像される画像の中に角膜反射像が生じていると判定される場合に(S24:YES)、照明光の光量レベルが下げられる。また、撮像素子52で撮像される画像の中に角膜反射像が生じていないと判定された場合は(S24:NO)、照明光の光量レベルが高められる。このようにして、角膜反射像SPによる影響が抑制される範囲で(つまり、角膜反射像に含まれる画素と同程度の輝度値の画素が、画像の中で一定数未満となる範囲に、制御部位100が照明光の光量を制御しつつ)、被検眼Eに照射される照明光の光量を、可能な限り高めることができる。
また、第1調節処理では、撮像素子52で撮像される画像に、角膜反射像SPが生じているか否かの判定が、領域Biに含まれる高輝度画素の数に基づいて行われる(S24)。仮に、領域Biおよび領域Boを区別することなく、画像全体に含まれる高輝度画素の数に基づいて照明光の光量を制御すると、次の問題が生じる。例えば、角膜反射像SPが生じている場合と、角膜反射像SPを生じずに瞳孔内の広範囲が高い光量で照明されている場合とのそれぞれで、被検眼Eに対する照明光の照射位置および被検眼Eのうち少なくとも一方と、照明光の光量と、が互いに異なることによって、高輝度画素の位置の分布は異なっていても、画像全体に含まれる高輝度画素の数が同程度となってしまうときがある。このとき、前者の場合において角膜反射像SPの影響が抑制されるように、画像全体に含まれる高輝度画素の数に基づいて照明光の光量を低下させようとすると、もともと角膜反射像SPの生じていない後者の場合にも照明光の光量が低下してしまう。このように、領域Biおよび領域Boを区別することなく、画像全体の高輝度画素の数に基づいて照明光の光量を制御すると、角膜反射像SPの影響を抑制することと、被検眼Eに照射される照明光の光量を可能な限り高めることとを、必ずしも両立できない場合がある。
一方、領域Biは、瞳孔全体に比べて小さな領域であって、角膜反射像SPが領域Boに比べて生じ易い領域である。よって、領域Biに含まれる画素の輝度値には、瞳孔全体よりも、角膜反射の影響が大きく作用する。このため、瞳孔全体に含まれる画素の輝度値に基づいて角膜反射像SPの有無を判定する場合よりも、領域Biの輝度値に基づいて判定した場合のほうが、より正確に角膜反射像SPの有無を判定できる。よって、上記の第1調節処理によれば、光源11から照射される照明光の光量を、角膜反射像の影響が抑制できる範囲で、好適に調節することができる。
また、被検眼Eの瞳孔外に照明光が照射されているときに照明光の光量が低く調整され、その光量で瞳孔内に照明光が照射されると、照明光の眼底反射光によって、瞳孔内を明るく照明できない場合がある。この場合は、例えば、瞳孔内に照明光を位置決めすることが難しくなってしまうおそれがある。また、画像の中の混濁部位Kとそれ以外の部位とのコントラストが低くなるおそれがある。更に、光量を調節するために時間がかかってしまうおそれがある。
これに対し、第1調節処理では、瞳孔内に照明光が照射されているか否かを、照明光の眼底反射光に基づく画像の解析結果(即ち、照明光の眼底反射光の解析結果)に基づいて判定する(S26)。より具体的には、瞳孔径よりも小さな照明光の照射位置近傍の領域Biから得られる反射光と、領域Biの周囲の領域Boとから得られる反射光とが、それぞれの領域について設定した条件(本実施形態では、領域Biについては、条件「IL>50」、領域Boについては、条件「OL>50」)を、共に満たしているか否かに基づいて判定する。そして、瞳孔内に照明光が照射されていないおそれがあると判定される場合は(S26:NO)、CPU101が、照明光の光量レベルを「+3」または「+5」だけ増加させる。この場合は、瞳孔内に照明光が照射されていると判定される場合と比べて、光量レベルが、より多く増加される。つまり、本実施形態では、瞳孔内に照明光が照射されていないおそれがあると判定される場合は、瞳孔内に照明光が照射されていると判定される場合よりも、照明光の光量を増加させ易くしている。よって、本実施形態の眼科装置1は、被検眼Eの瞳孔外に照明光が照射され、その後に照明光が瞳孔内に照射される場合に、照明光の眼底反射光によって瞳孔内をより明るく照明することができる。
このように、上記第1調節処理では、瞳孔内に照明光が照射されていないおそれがあると判定される場合は、瞳孔内に照明光が照射されていると判定される場合よりも、光量レベルの増加量を高めることで、照明光の光量が減少され難くする制御を実現した。これに限らず、瞳孔内に照明光が照射されていないおそれがあると判定される場合は、瞳孔内に照明光が照射されていると判定される場合よりも、光量レベルの減少量を低下させることで、照明光の光量が減少され難くする制御を実現することもできる。例えば、S24の処理によって、条件「IH>50」が成立したと判定された場合に(S24:Yes)、条件「OL>50」が成立するか否かの判定をCPU101に実行させる。そして、条件「OL>50」が成立すると判定された場合に、照明光の光量レベルを「−2」だけ変更し、条件「OL>50」が成立しないと判定された場合に、照明光の光量レベルを「−1」だけ変更させる。条件「OL>50」が成立する場合は、照明光が瞳孔内に照射されている可能性がある場合であると考えられる。また、条件「IH>50」が成立しているので、条件「OL>50」が成立しない場合は、照明光の光量は十分に確保されているものの、瞳孔外に照射されている場合であると考えられる。この場合は、瞳孔内に照明光が照射されていると判定される場合よりも、光量レベルの減少量(調節量の絶対値)が低下される。よって、このような眼科装置においては、被検眼Eの瞳孔外に照明光が照射され、その後に照明光が瞳孔内に照射される場合に、瞳孔内に十分な光量の照明光を照射しやすい。なお、この眼科装置では、条件「OL>50」が成立しないと判定された場合の調節量を「0」としても良い。このように、瞳孔内に照明光が照射されていないおそれがあると判定される場合における光量レベルの調節量を、瞳孔内に照明光が照射されると判定される場合における調節量よりも正方向に位置する値に設定してもよい。
図4に戻って説明を続ける。第1調節処理(S12)の実行後は、CPU101によって、第2調節処理(S13)が実行される。第2調節処理(S13)は、光源11から出射される測定光の光量を、予め定められた範囲内に調節するための処理である。
ここで、図7を参照して、第2調節処理について説明する。第2調節処理では、まず、CPU101は、RAM103内の測定光の光量レベルが、「200」よりも大きくなっているか判定する(S31)。光量レベルが「200」よりも大きいと判定された場合は(S31:YES)、光量レベルが格納されるRAM103内の領域に、「200」をセットする(S32)。この処理によって、光源11の光量レベルが「200」を超えないように規制される。
前述したように、本実施形態のCPU101は、光量の最も少ない「0」から光量の最も多い「255」までの256段階の光量レベルで、光源11から出射される光量を制御できる。しかし、照明光の光量が高過ぎると、前述したように、混濁部位Kと、それ以外の瞳孔内の部位との区別が難しくなるおそれがある。また、測定光の光量が高いほど、明るさを被験者に感じさせてしまい易い。よって、照明光の光量が高過ぎると、瞳孔が縮瞳されてしまったり、測定光から被検眼が逸らされたりして、検査が中断される原因となり得る。これに対し、本実施形態では、CPU101が、光源11から出射される測定光の光量レベルが「200」を超えないように規制する。このため、混濁部位Kと、それ以外の瞳孔内の部位とを区別できる画像が、眼科装置1で得られ易くなる。また、撮像時において、被験者に明るさを感じさせ難くすることができる。S32の処理の実行後は、第2調節処理を終了し、S14の処理に進む。
S31の処理によって、光源11の光量レベルが「200」以下であると判定された場合に(S31:NO)、CPU101は、RAM103に格納された光源11の光量レベルが「80」より少ないか否かを判定する(S33)。S33の処理によって、光量レベルが「80」より少ないと判定された場合は(S33:YES)、光量レベルが格納されるRAM103内の領域に「80」をセットする(S34)。そして、第2調節処理を終了し、S14の処理に進む。この処理によって、光源11の光量レベルが「80」を下回らないように規制される。本実施形態では、これによって、画像内の混濁部位Kと、それ以外の部位とが判別できなくなる程まで、照明光の光量が低減されてしまうことを抑制できる。
一方、S33の処理によって、光量レベルが「80」以上と判定された場合は(S33:NO)、第2調節処理を終了し、S14の処理に進む。この場合(S33:NO)は、RAM103に格納される光量レベルは、第2調節処理によって変更されない。
図4に戻って説明を続ける。第2調節処理(S13)の実行後は、CPU101は、RAM103に格納された光量レベルに応じた光量で、光源11を点灯させる(S14)。即ち、第1調節処理(S12)および第2調節処理(S13)によって調節された光量で、光源11が点灯される。
次のS15処理では、CPU101は、RAM103に格納された光量レベルを示す数字の画像データをモニタ70へ出力する。これにより、モニタ70の右下領域Vに、RAMに格納される光量レベルを示す数字が表示される(図3参照)。
次に、操作部90の光量調節モード切替スイッチ90bの操作が行われたか否かが、CPU101によって判定される(S16)。スイッチ90bに対して操作が入力されていなければ(S16:NO)、CPU101は、S11の処理に戻って、S11からS16の処理を繰り返し実行する。
一方、スイッチ90bに対して操作が入力されたと判定される場合は(S16:YES)、CPU101は、手動調光処理(S40)を実行する。これにより、光源11の光量の制御モードが、手動調光モードへ移行される。
<手動調光モード>
手動調光モードは、操作部90に対する操作に応じて、光源11から出射される光量を調節するモードである。制御部100において以下の手動調光処理が実行されることによって、手動調光モードの制御が行われる。
ここで、図8を参照して、手動調光処理について説明する。手動調光処理では、まず、光量増加スイッチ90c又は光量減少スイッチ90bが操作された否かが、CPU101によって判定される(S41)。スイッチ90c又はスイッチ90dが操作されたと判定された場合(S41:YES)、CPU101は、操作に応じた値を、RAM103内に格納される光量レベルに反映させる(S42)。例えば、本実施形態では、光量を増加させる操作が入力されている場合は、CPU101は、RAM103内の光量レベルを1加算して更新する。また、光量を減少させる操作が入力されている場合は、CPU101は、RAM103内の光量レベルを1減算して更新する。S42の実行後は、第2調節処理(S43)を実行する。この第2調節処理(S43)は、自動調光処理の中で行われるS13の処理と同様の処理(図7参照)であるため、詳細な説明は省略する。次に、CPU101は、RAM103に格納された光量レベルに応じた光量で、光源11を点灯させる(S44)。
一方、S41の処理によって、スイッチ90cおよびスイッチ90dのいずれも操作されていないと判定された場合は(S41:NO)、S42,S43の処理をスキップして、S44の処理を実行する。これにより、CPU101は、事前にRAM103に格納された光量レベルに応じた光量で、光源11を点灯させる(S44)。
S44の処理で参照されるRAM103内の光量レベルは、自動調光モードから手動調光モードに切り替えられた直後であれば、予め自動調光処理(S10)によって調節された値となっている。つまり、自動調光処理によって調節された照明光の光量が、手動調光処理で調節される照明光の初期値として引き継がれる。
次のS45処理では、CPU101は、RAM103に格納された光量レベルに応じた画像データを、モニタ70へ出力する。かかる処理によって、自動調光処理と同様に、モニタ70の右下領域Vに、RAMに格納される光量レベルを示す値が表示される(図3参照)。
従来の眼科装置は、被検眼に投光される照明光の光量が自動的に調節された後に、更に、手動で照明光の光量を調節する場合に、予め自動的に調節された光量を、手動で照明光の光量を調節する際に利用できなかった。このため、照明光の光量が事前に自動で調節されていたか否かに拘わらず、手動で照明光の光量を調節する場合は、検者が一から調節を行っていた。よって、照明光の光量を調節するための操作が、検者にとって大きな負担となってしまう場合があった。
特に、中間透光体の混濁の度合いは、被検者の加齢と共に増加する傾向がある。照明光、および眼底反射光は、混濁によって遮られてしまう。このため、眼底反射光によって混濁の形状を正確に映し出すためには、中間透光体の混濁度合いが高い場合ほど、照明光の光量を高めて観察することが好ましい。そこで、徹照像撮像においては、混濁の進行度合いに応じて、光源から出射される照明光の光量を大きく切り替えて撮像が行われる。よって、徹照像を撮像するために、照明光の光量を検者が一から手動で調節すると、照明光量の調節操作に対する検者の操作負担が特に大きくなる場合があった。
これに対し、本実施形態の眼科装置1によれば、自動調光モードから手動調光モードに切り替わった場合に、自動調光モードにおいて光源11から投光される照明光の光量が、手動調光モードにおける照明光の光量の初期値として引き継がれる。自動調光モードにおいて、予め照明光の光量が自動的に調節されるので、手動で光量を調節する際の検者の操作負担が低減される。また、手動調光モードでは、自動調光モードで調節された照明光の光量を基準として、検者自身が所望する光量に照明光の光量を調節できる。よって、本実施形態の眼科装置1は、被検眼Eを撮影するための照明光の光量調節を、検者に容易に行わせることができる。また、照明光の光量調節を広い範囲で行う、徹照像の撮影であっても、本実施形態の眼科装置1は、照明光量の調節操作に対する検者の操作負担を抑制することができる。
また、従来の眼科装置では、被検眼に投光される照明光の光量が自動で調節されるモードから、手動で調節されるモードに切り替えられる場合に、モードの切り替えの前後で、照明光の光量を示す情報が検者に示されていなかった。このため、照明光の光量を検者が手動で調節する場合に、事前に自動で調節された照明光の光量を目安にして、検者の所期する光量に調節することが難しい場合があった。
これに対し、本実施形態の眼科装置1によれば、図3に示すように、被検眼Eに照射される照明光の光量を示す光量レベルが、自動調光モードおよび手動調光モードのいずれのモードであってもモニタ70に表示される。このため、手動調光モードでは、自動調光モードにおいてモニタ70に表示された光量情報を目安にしながら、照明光の光量を手動で変更できる。よって、照明光の光量を、検者の所期する光量に、いっそう容易に調節させることができる。
なお、眼科装置1では、自動調節モードから手動調節モードに切り替えられた場合に、自動調節モードにおいて最終的に調節された照明光の光量レベルを、手動調節モードにおける光量レベルとあわせて、引き続き表示させてもよい。この場合、検者は、自動調節モードにおいて最終的に調節された照明光の光量レベルを、手動で調節した光量レベルといつでも比べることができる。このため、照明光の光量を、検者がいっそう調節し易くなる。
<混濁判定>
眼科装置1では、上記の処理によって照明光の光量が調節されたうえで撮像された徹照像に対して画像処理を行い、被検眼Eの中間透光体における混濁の有無、および、混濁の程度を判定する。以下、具体的な判定方法について説明する。
制御部100は、瞳孔内領域の外側エッジを検出し、その外側エッジで囲まれる領域の各画素の輝度値を検出していく。制御部100は、検出された輝度値が所定の閾値以下であるか否かを判定することによって、各画素が、混濁部位Kおよび混濁の無い部位のいずれに対応するものかを判定する。なお、この判定に用いられる輝度値の閾値は、検者によって事前に設定できるものであってもよい。制御部100は、画素の輝度値が所定の閾値以下である場合には、その画素が混濁部位Kに対応するものであると判定する。一方、画素の輝度値が所定の閾値より大きい場合には、その画素が混濁の無い部位に対応していると判定する。制御部100は、外側エッジで囲まれた全画素(即ち、瞳孔内領域の全画素)に対して、上記の判定処理を行う。そして、例えば、全画素または混濁の無い部位の画素と、混濁部位Kに対応する画素との画素数の比率に応じて、中間透光体における混濁の有無、および、混濁の程度を判定する。なお、このとき、眼科装置1で行われる判定は、中間透光体における混濁の有無、および、混濁の程度に関する判定のうち、一方だけを行ってもよい。
本実施形態の眼科装置1では、前述したように、被検眼Eに照射される照明光の光量が、一旦は自動調光モードで調節されることによって、角膜反射像SPによる影響が抑制される範囲で、照明光の光量が可能な限り高められる。このため、眼科装置1では、角膜反射像SPによる影響が抑制された高階調の徹照像が得られ易い。それ故、眼科装置1では、混濁部位Kと、混濁の無い部位とのコントラストを明確にできる。よって、混濁部位Kと、混濁の無い部位とを、低階調の徹照像と比べて正確に区別することができる。従って、本実施形態の眼科装置1では、混濁に関する判定によって、精度の高い判定結果が得られ易い。
以上、実施形態に基づき説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、様々な変形が可能であることは勿論である。
例えば、上記実施形態では、撮像素子52で撮像された徹照像に含まれる各画素の輝度値に基づいて、被検眼Eに照射する照明光の光量を調節する場合について説明した。しかし、照明光の光量を、徹照像に含まれる各画素の輝度値以外の画像情報に基づいて調節することができる。例えば、徹照像に含まれる各画素の色相および彩度等の画像情報に基づいて照明光の光量を調節してもよい。また、必ずしも、撮像素子52で撮像された徹照像の画像情報に基づいて、光源11からの照明光の光量を制御させなくても良い。かかる場合は、例えば、撮像素子52とは別体の多分割SPD(Silicon Photo Diode)を、眼科装置内に設けた変容例によって、本発明が実現される。より具体的には、撮像素子52より被検眼E側の光軸L4上に、ハーフミラー等を設け、光軸L4から光路を分岐させる。そして、光軸L4から分岐した光路に、多分割SPDを設ける。上記実施形態の図6に示した徹照像の領域Biおよび領域Boに対応する領域を、多分割SPDの受光面上に定める。多分割SPDにおける領域Biの対応領域の受光結果と、領域Boの対応領域の受光結果との組み合わせに応じて、光源11から被検眼Eに照射する照明光の光量を調節する。このような変容例であっても、上記実施形態と同様の効果がある。
上記実施形態においては、光源11から被検眼Eに出射される照明光は、観察光軸と重なって被検眼Eに照明されるものとして説明したが、照明光の光束が、観察光軸L4上から離れて照射されても良い。例えば、光源11から被検眼Eまでの光路上に、偏心回転するプリズムを設けた、いわゆるロータリープリズム方式のオートレフラクトメータにも、本発明を適用できる。この場合、被検眼Eの角膜Ecに照射される照明光の軌跡が、観察光軸を中心とするリング状になる。そこで、リング状の照明光の軌跡を含む範囲を、光軸近傍の領域Biとし、それよりも光軸から離れた領域を領域Boとすればよい。この変容例に限らず、領域Biの形状、大きさ等は、照明光の断面形状、光束の拡散する度合い等に応じて、適宜設定すればよい。
上記実施形態においては、眼科装置1は、眼屈折力測定を行う構成を併せ持つものとして説明したが、本発明を実施するうえで、眼屈折力測定を行うための構成(例えば、受光光学系10bと、視標呈示光学系30と、作動距離指標投影光学系46)は、必ずしも設けなくても良い。また、本発明は、眼屈折力測定を行うための眼科装置以外に適用することもできる。例えば、徹照像等の前眼部像が撮影される角膜形状測定装置および眼軸長測定装置等に対して、本発明を適用できる。なお、各装置で撮像される前眼部像としては、照明光の眼底反射光に基づいて撮像が行われる徹照像に限られるものではなく、照明光の前眼部反射光等に基づいて撮像された画像であってもよい。
また、眼底画像が撮影される眼底カメラおよびSLO等の眼底観察装置に対して、本発明を適用することができる。例えば、照明光の光量を自動で調節するモードから、照明光の光量を手動で調節するモードへ切り替え可能に構成された眼底観察装置において、かかるモードの切り替えの前後で、予め自動的に調節された照明光の光量を、手動で調節される光量の初期値として引き継がれるように構成すればよい。その場合も、上記実施形態と同様に、照明光の光量調節を、検者に容易に行わせることができるという効果がある。また、照明光の光量レベルを、モニタ等に表示されることもできる。
ここで、被検眼の観察時と撮影時(キャプチャ時)とで、被検眼に対し照明光を出射する光源を、2種類使い分ける場合には、調節された観察用光源の光量レベルを、所定の計算式で補正したうえで、撮影用光源の光量の初期値となるようにすればよい。観察用光源の光量を、自動から手動へと切り替えて速やかに検者の所期する光量に調節できる。また、撮影は、観察時に調節された光量に応じた光量で行われるので、検者の操作負担が低減される。
また、SLOに例示される、被検眼の組織上を走査させた照明光の反射光を受光させることによって被検眼画像を得る眼科装置では、次のように構成してもよい。すなわち、照明光の光量を、被検眼画像の画像情報に基づいて調節させるのではなく、反射光を受光する受光素子の受光強度に基づいて調節させてもよい。
また、上記実施形態では、自動調光モードにおいて、照明光が瞳孔内および瞳孔外のいずれに照射されているかについての判定を、領域Biおよび領域Boの各々の領域についての輝度分布に基づいて行う場合について説明した(S26)。瞳孔内に照明光が照射されているか否かの判定は、照明光の反射光の解析結果に基づいて行えばよく、上記実施形態の方法に限られるものではない。例えば、撮像素子52で撮像される画像の中で瞳孔の位置を、瞳孔内領域と、瞳孔外の領域を区分けするエッジ抽出等の画像処理を行って特定し、その領域内に、光軸通過位置Axが含まれるか否かを判定することによって、照明光が瞳孔内および瞳孔外のいずれに照射されているかを判定することができる。上記実施形態においては、徹照像の撮影中は、瞳孔内に照明光が照射されていなければ、瞳孔のエッジを抽出できない。そこで、一旦リング指標投影光学系45を点灯させる等して、瞳孔のエッジを抽出するための画像を撮像すればよい。また、光源11しか点灯していない状況下において、瞳孔のエッジを抽出できない状況を、照明光が瞳孔外に照射されている場合と判定してもよい。
また、本実施形態では、被検眼画像として、動画を撮影する場合について説明したが、静止画像を撮影する場合にも本発明を適用することができる。
また、上記実施形態で説明した処理のうち、一部のみを眼科装置に適用することもできる。例えば、自動調光モードから手動調光モードへの切換えに関する処理を行わずに、自動調光モードにおける処理だけを行ってもよい。