以下、図面を参照して、本発明を自動車の後部座席(2列目及び3列目を含む)に適用した一実施形態を説明する。以下の説明では、シートSに着座した乗員を基準にして左右を定める。左右一対設けられる同一構成については、共通の番号を付し、説明を省略する。
図1に示すように、車両用シートSのフレームは、シートクッションを構成するシートクッションフレームF1と、シートバックを構成するシートバックフレームF2及び可動フレーム(中折れフレーム)F3とを有している。シートクッションフレームF1にパッド及び表皮材を被せることによってシートクッションが構成され、シートバックフレームF2の下部及び可動フレームF3にパッド及び表皮材を被せることによってシートバックが構成される。パッドはポリウレタンフォーム等の弾力性を有するクッション材から形成され、表皮材は合成皮革や布地等から形成されている。また、シートバックの後部は、樹脂等から形成されたカバーによって覆われる。
シートクッションフレームF1は、前後に延びる左右一対のクッションサイドフレーム2と、各クッションサイドフレーム2の前部間に掛け渡された板状のパンフレーム3と、各クッションサイドフレーム2の後部間に掛け渡された後部フレーム4とを有し、枠形に形成されている。シートクッションフレームF1は、スライド装置5を介して車両のフロアに結合されている。スライド装置5は、レール及びレールに移動可能に支持されたスライダを含み、レールは前後方向や左右方向に延びているとよい。
シートバックフレームF2は、略上下に延びる左右一対のバックサイドフレーム8、9と、左右のバックサイドフレーム8、9の上端部間に掛け渡されたバックアッパフレーム10と、バックサイドフレーム8、9の下部間に掛け渡されたバックロアフレーム11とを有して枠形に形成されている。なお、左右のバックサイドフレーム8、9の下端部は、バックロアフレーム11よりも下方に延びている。
図1〜図3に示すように、右バックサイドフレーム9は、略上下に延びる右上バックサイドフレーム13と、右上バックサイドフレーム13の下部に結合された右下バックサイドフレーム14と有する。右上バックサイドフレーム13は、板金部材である内側部材13Aと外側部材13Bとから構成されている。内側部材13A及び外側部材13Bはそれぞれ溝形の横断面を有し、内側部材13Aが外側部材13Bに対して左方(左右方向においてシートバックの内方)に配置されている。内側部材13Aは溝形の開口が右方を向くように配置され、外側部材13Bは溝形の開口が左方を向き、かつ内側部材13Aの内部に嵌合している。内側部材13A及び外側部材13Bは、溶接等によって互いに結合されている。これにより、右上バックサイドフレーム13は、長手方向における各部において横断面が略長方形となる閉断面構造に形成されている。
図2に示すように、右下バックサイドフレーム14は、板金部材であり、右上バックサイドフレーム13の下部外側に溶接等によって結合され、右上バックサイドフレーム13の下端よりも下方に突出している。右下バックサイドフレーム14は、主面が左右を向き、その上縁を除く、前縁、後縁、及び下縁に左方(内方)に向けて突出するリブ14Aが形成されている。リブ14Aは、右下バックサイドフレーム14の縁部を曲げ起こすことによって形成されている。右上バックサイドフレーム13の下端部は、右下バックサイドフレーム14のリブ14A間に配置され、リブ14Aと右上バックサイドフレーム13の前面及び後面とが互いに当接している。
右バックサイドフレーム9の上端部には、シートベルトのベルトガイド16を支持するためのベルトガイドラケット17が結合されている。ベルトガイドラケット17は、複数の板金部材を組み合わせて形成され、溶接等によって右バックサイドフレーム9の上端部に結合されているベルトガイドラケット17は、右バックサイドフレーム9の上端部から上方に突出し、その上端部にベルトガイド16が結合されている。
ベルトガイド16は、シートベルトを案内するための部材である。ベルトガイド16は、板金部材から形成され、シートベルトが通過可能な貫通孔であるガイド孔を有する。ベルトガイド16は、ガイド孔が前後を向くようにベルトガイドラケット17の上端部に載置され、ボルト締結等の結合手段によってベルトガイドラケット17に結合されている。図示しないが、シートクッションフレームF1の下方にシートベルトを引き出し可能に巻き取るベルトリトラクタが設けられ、シートベルトはシートクッションフレームF1の下方を後方に延び、右バックサイドフレーム9の後面に沿って上方に延び、ベルトガイド16を通過して前方に引き出される。
図1〜図7に示すように、左バックサイドフレーム8は、略上下に延びる左上バックサイドフレーム21と、左上バックサイドフレーム21の下部に結合された左下バックサイドフレーム22と有する。左上バックサイドフレーム21及び左下バックサイドフレーム22は、板金部材から形成されている。左上バックサイドフレーム21は、その上端部に後方かつ右方(バックアッパフレーム10側)に滑らかに湾曲し、先端部23A(上端部)が右方に延びる湾曲部23を有する。左上バックサイドフレーム21の主部をなす側辺部21Aは、湾曲部23を除く大部分において面が左右を向き、湾曲部23において面が左右方向を向く形態から前後を向く形態に連続的に変化している。これにより、左上バックサイドフレーム21の下部における側辺部21Aの前縁は湾曲部23において連続的に上縁に変化し、左上バックサイドフレーム21の下部における側辺部21Aの後縁は湾曲部23において連続的に下縁に変化する。
左上バックサイドフレーム21の側辺部21Aの前縁及び後縁には、内方(右方)に向けて突出するリブ21B、21Cが形成されている。リブ21B、21Cは、左上バックサイドフレーム21の長手方向に沿って延設され、湾曲部23においては上縁及び下縁に沿って設けられ、前方に向けて突出する。これにより、左上バックサイドフレーム21は、長手方向における各部の横断面が溝形に形成され、開断面構造を有する。リブ21B、21Cは、側辺部21Aの縁部を曲げ起こすことによって形成されている。
図6、図7及び図9に示すように、左下バックサイドフレーム22は、板金部材であり、左上バックサイドフレーム21の下部外側(左側)に溶接等によって結合され、左上バックサイドフレーム21の下端よりも下方に突出している。左下バックサイドフレーム22は、主面が左右を向き、その上縁を除く、前縁、後縁、及び下縁に内方(右方)に向けて突出するリブ22Aが形成されている。リブ22Aは、左下バックサイドフレーム22の縁部を曲げ起こすことによって形成されている。左上バックサイドフレーム21の下端部は、左下バックサイドフレーム22のリブ22A間に配置され、左下バックサイドフレーム22のリブ22Aと左上バックサイドフレーム21のリブ21B、21Cの前面及び後面とが互いに当接している。
図3に示すように、バックアッパフレーム10は、板金部材である前側部材26と後側部材27とから構成されている。前側部材26及び後側部材27はそれぞれ溝形の横断面を有し、前側部材26が後側部材27に対して前方に配置されている。後側部材27は溝形の開口が前方を向くように配置され、前側部材26は溝形の開口が後方を向き、かつ後側部材27の内部に嵌合している。前側部材26及び後側部材27は、溶接等によって互いに結合されている。これにより、バックアッパフレーム10は、長手方向における各部において横断面が略長方形となる閉断面構造に形成されている。
前側部材26及び後側部材27は、それぞれ右端部が右上バックサイドフレーム13の上端部に結合されている。詳細には、後側部材27の右端部は右上バックサイドフレーム13の後面に溶接され、前側部材26の右端部は右上バックサイドフレーム13の左側面に溶接されている。
バックアッパフレーム10の左端部では、前側部材26の左端部26Aが後側部材27の左端部27Aよりも左方に突出している。これにより、バックアッパフレーム10は、左端部において開断面構造を有し、左端部を除く他の部分において閉断面構造を有する。後側部材27の左端部27Aは、左サイドフレームの湾曲部23の先端部23Aと衝当し、溶接によって互いに結合されている。前側部材26の左端部26Aは、湾曲部23の前方に向けて開口する溝形の内側に突入し、嵌合している。前側部材26の上縁及び下縁から後方に突出したリブは、湾曲部23の上縁及び下縁に形成されたリブ間に配置され、当接している。前側部材26は湾曲部23と協働して、閉断面構造を形成する。
図3に示すように、左上バックサイドフレーム21の上半部の内側には、補強部材30が設けられている。補強部材30は、板金部材から形成され、溝形の横断面を有する。補強部材30は、その溝形の開口が左上フレームの溝形の開口と向い合うようにして左上フレームの溝形の内側に嵌合している。すなわち、補強部材30は、湾曲部23と対応する部分においては湾曲部23と同様に湾曲して延びている。補強部材30は、湾曲部23内に配置されたバックアッパフレーム10の前側部材26の左端部26Aと衝当する上端部30Aを有し、上端部30Aから湾曲部23内を通過して左上バックサイドフレーム21の上下方向における中間部まで延びている。補強部材30の主面は、上端部において前後を向き、湾曲部23に沿って下方に進むに従って連続的に左右を向くように湾曲し、下端部において左右を向く。補強部材30の両側縁に沿って形成されたリブは、左上バックサイドフレーム21の両リブ21B、21Cの内面と当接している。補強部材30は、バックアッパフレーム10の前側部材26の左端部26Aと衝当する上端部30Aを有し、左上バックサイドフレーム21の両リブの突出端と当接する複数個所において溶接されている。
補強部材30は、左上バックサイドフレーム21の湾曲部23を含む上半部と協働して、閉断面構造を形成する。補強部材30及び左上バックサイドフレーム21によって形成される閉断面構造の開口端は、バックアッパフレーム10によって形成される閉断面構造の開口端と結合され、連続した閉断面構造を形成する。すなわち、バックアッパフレーム10の前側部材26及び後側部材27と、左上バックサイドフレーム21の上半部と、補強部材30とは、協働して中空部が連続した閉断面構造を形成する。これにより、シートバックフレームF2の上部から左側部にわたる部分は、中空部が連続した閉断面構造によって構成される。
バックアッパフレーム10の前側部材26の左端部26Aが後側部材27の左端部27Aよりも左方に配置されているため、後側部材27と左上バックサイドフレーム21との結合部と、前側部材26と補強部材30との結合部とは、左右方向に互いにオフセットして配置されている。これにより、前後方向又は上下方向から見て、バックアッパフレーム10と左上バックサイドフレーム21とは、互いに重なり合う重畳部を形成する。重畳部によって、左上バックサイドフレーム21とバックアッパフレーム10との結合部の剛性が高められる。
図2及び図4に示すように、バックアッパフレーム10及び左上バックサイドフレーム21の湾曲部23は、シートバックフレームF2の上部を構成し、全体として左右方向における中央部が後方に凸となるように湾曲している。
図3及び図4に示すように、左上バックサイドフレーム21の側辺部21Aであって、湾曲部23よりも下方に位置する部分には、左右方向に貫通する位置決め孔31が形成されている。位置決め孔31は、左上バックサイドフレーム21の長手方向に沿って延びる長孔形状を呈する。位置決め孔31は、シートSの製造時に製造装置の位置決めピンが挿入され、左上バックサイドフレーム21の位置を所定位置に定める目的で使用される。補強部材30の下端縁30Bは、左右方向見て位置決め孔31と重なる位置に配置されている。詳細には、補強部材30の下端縁30Bは、位置決め孔31の上下方向における中間部に対応して配置されている。これにより、左右方向からみて、位置決め孔31の上半部は補強部材30によって覆われ、下半部は左右に貫通している。これにより、製造装置の位置決めピンは、位置決め孔31の下部においては、挿入量を大きくすることができる。
左上バックサイドフレーム21の側辺部21Aの右側面における位置決め孔31よりも下側部分には、左パッド支持ブラケット32が溶接等によって結合されている。左パッド支持ブラケット32は、補強部材30の下方を通過して右方に向けて突出し、上方を向く載置面を有する。左パッド支持ブラケット32の載置面と補強部材30の下縁との間には、間隙が形成されている。右上バックサイドフレーム13の左側面には、右パッド支持ブラケット33が結合されている。右パッド支持ブラケット33は、左パッド支持ブラケット32と対応する位置に配置され、左方に向けて突出し、上方を向く載置面を有する。左パッド支持ブラケット32及び右パッド支持ブラケット33の載置面には、シートバックパッドの係合部が載置される。
図6〜図9に示すように、バックロアフレーム11は、閉断面構造を有し、左上バックサイドフレーム21の下端部に結合された左端部11Aと、右上バックサイドフレーム13の下端部に結合された右端部11Bとを有する。本実施形態に係るバックロアフレーム11は、横断面が円形の金属パイプを屈曲させることによって形成されている。
バックロアフレーム11の右端部11Bと右上バックサイドフレーム13との結合部は、右上バックサイドフレーム13の左側面部及び右側面部の前後方向における中央よりも後方にオフセットして配置されている。なお、バックロアフレーム11の右端部11Bの後縁は、右上バックサイドフレーム13の左側面部及び右側面部の後縁よりも前方に配置されている。バックロアフレーム11の右端部11Bは、上下方向において、右下バックサイドフレーム14の上縁よりも下方に配置されている。右上バックサイドフレーム13の左側面部、右側面部、及び右下バックサイドフレーム14には、バックロアフレーム11の右端部11Bが貫通する右挿通孔35が形成されている。各右挿通孔35は、バックロアフレーム11の右端部11Bが嵌合する大きさに形成されていることが好ましい。バックロアフレーム11の右端部11Bは、各右挿通孔35に挿通された状態で、右上バックサイドフレーム13の右挿通孔35の周縁と溶接されている。バックロアフレーム11の右端部11Bの端面は、右下バックサイドフレーム14の外面と略面一となるように配置されていることが好ましい。
図6及び図7に示すように、左上バックサイドフレーム21の側辺部21Aは、右上バックサイドフレーム13の上下において対応する部分よりも後方に突出した突出部21Dを有する。突出部21Dの後縁(外縁)は滑らかな曲線状に形成され、リブ21Cが突出部21Dの後縁に沿って延びている。バックロアフレーム11の左端部11Aは、側辺部21Aの前後方向における中央よりも後方にオフセットして配置されている。バックロアフレーム11の左端部11Aは、少なくとも一部が突出部21Dと重なるように配置されてもよい。すなわち、バックロアフレーム11の左端部11Aの後縁が、左上バックサイドフレーム21の突出部21Dを除く後縁よりも後方に配置されてもよい。また、図5に示すように、バックロアフレーム11の左端部11Aと左上バックサイドフレーム21との結合部は、バックロアフレーム11の右端部11Bと右上バックサイドフレーム13との結合部よりも後方にオフセットして配置されている。
図6に示すように、左上バックサイドフレーム21の側辺部21Aには、バックロアフレーム11の左端部11Aが貫通する左挿通孔36が形成されている。左挿通孔36は、バックロアフレーム11の左端部11Aが嵌合する大きさに形成されていることが好ましい。左挿通孔36は、一部が突出部21Dと重なることが好ましく、かつ突出部21Dの後縁に到達しない位置に形成されている。左下バックサイドフレーム22は、左挿通孔36と対応する部分が切り欠かれており、左挿通孔36が左方に露出している。バックロアフレーム11の左端部11Aは、左挿通孔36に挿通された状態で、側辺部21Aの内面における左挿通孔36の周縁と溶接されている。バックロアフレーム11の左端部11Aの端面は、左下バックサイドフレーム22の外面と略面一となるように配置されているとよい。
バックロアフレーム11の左右方向における中央部11Cは、左端部11A及び右端部11Bよりも後方かつ下方に配置されている。バックロアフレーム11の左端部11A及び右端部11Bは、左上バックサイドフレーム21及び右上バックサイドフレーム13との結合部から左右方向における中央側に進むにつれて後方かつ下方に進むように延び、バックロアフレーム11の中央部11Cは左右方向と平行に直線状に延びている。バックロアフレーム11の左端部11Aは、右端部11Bに対して後方に配置されているため、右端部11Bよりも前後方向に対する傾斜が小さくなっている。バックロアフレーム11は、以上の形状により、左右方向における両端部の形状が左右非対称形となっている一方、中央部11Cにおける形状が左右対称形となっている。
図9に示すように、バックロアフレーム11の左端部11Aが突出部21Dにおいて左上バックサイドフレーム21と結合し、左上バックサイドフレーム21の前後方向における中央に対して後方にオフセットされているため、左上バックサイドフレーム21の内側(右側)かつバックロアフレーム11の左端部11Aの前方に他の部品や装置を収容するための収容部37が形成される。左上バックサイドフレーム21が内側に向けて開口する溝形に形成されているため、収容部37は左上バックサイドフレーム21の溝形の内側に形成される。
図6〜図8に示すように、左クッションサイドフレーム2の後部と、左バックサイドフレーム8の下端部(左下バックサイドフレーム22)とは第1リクライニング機構41を介して互いに結合されている。右クッションサイドフレーム2の後部と右バックサイドフレーム9の下端部(右下バックサイドフレーム14)とは第2及び第3リクライニング機構42、43を介して互いに結合されている。これにより、シートバックフレームF2は、左右に延びる軸線を回動軸線として回動(傾倒)可能になっている。各リクライニング機構41〜43は、各クッションサイドフレーム2に対する各バックサイドフレーム8、9の傾倒(回動)角度を任意の位置に維持する装置であり、公知の様々な機構を適用することができる。各リクライニング機構41〜43は、電動モータの回転力を受けて回動角度を変化させる電動式のリクライニング装置であり、クッションサイドフレーム2に結合された円板状の第1部材(不図示)と、円板状をなし、前記第1部材と対向するように配置され、右下バックサイドフレーム14及び左下バックサイドフレーム22に結合された第2部材(不図示)と、第1部材及び第2部材の中心部を貫通し、第1部材に対して回動することによって第1部材及び第2部材の相対角度を変化させる駆動軸(不図示)とをそれぞれ有する。リクライニング機構41〜43は、駆動軸の回転量に応じて第1部材に対する第2部材の角度が変化する。
このようなリクライニング機構41〜43の一例を説明する。第1部材は、その回転軸と同軸に突出した第1円筒部を有する。第1円筒部の外周面には外歯車が形成されている。第2部材は、その回転軸と同軸に突出し、前記第1円筒部を受容する第2円筒部を有する。第2円筒部の内周面には内歯車が形成されている。第2円筒部の内径は、第1円筒部の外径よりも大きく形成されており、内歯車の歯数は外歯車の歯数よりも1又は2多く形成されている。外歯車と内歯車とが一部において噛み合うことによって、第1部材及び第2部材は互いに偏心して配置されている。第2部材は、第2円筒部の内側に、同軸に突出した第3円筒部を有する。第3円筒部は、その外径が第1円筒部の内径よりも十分に小さく形成され、第1円筒部の内部に間隙を形成して突入している。第3円筒部の内側に形成される孔は、第2部材を貫通して外部に向けて露出している。同様に、第1円筒部の内側に形成される孔は、第1部材を貫通して外部に向けて露出している。第1円筒部の内周面と第3円筒部の外周面との間の間隙には、周方向に互いに距離をおいて配置された一対のロック片と、各ロック片の間に設けられ、各ロック片を周方向に互いに離れる方向に付勢するばねとが配置されている。第3円筒部の内側には、第3円筒部と同軸に回転可能な駆動軸が受容されている。駆動軸は、第3円筒部の突出端よりも外側部分から径方向に延び、ロック片を周方向に押すことができる駆動片を有する。
以上のように構成されたリクライニング機構は、通常時においては、ばねに付勢された各ロック片によって、第3円筒部が第1円筒部内の一側に押され、外歯車と内歯車との噛み合い位置が維持され、第1部材に対する第2部材の角度が維持される。駆動軸が回転すると、駆動片がロック片を周方向における一側に押し、ロック片に押された第3円筒部が第1円筒部内を周方向に移動する。このとき、外歯車及び内歯車の歯数が異なるため、第3円筒部の周方向への移動に伴って、第1部材に対する第2部材の角度が変化する。このように駆動軸の回転量に応じて第1部材に対する第2部材の角度が変化する。
第1〜第3リクライニング機構41〜43の駆動軸は、回動軸線Xに沿って延びる連結軸45によって互いに連結されている。各駆動軸には、貫通孔が形成されており、連結軸45は各駆動軸の貫通孔を通過して延びている。連結軸45及び各駆動軸の貫通孔は、セレーションによって互いに結合しており連結軸45及び駆動軸は一体に回転する。連結軸45が回転すると、第1〜第3リクライニング機構41〜43の駆動軸が一体に回転し、第1〜第3リクライニング機構R1〜R3が同時にシートクッションS1に対するシートバックS2の回動角を変化させる。
図7〜図9に示すように、左バックサイドフレーム8の内側(右側)に形成された収容部37には、連結軸45を回転させるための駆動装置47が設けられている。駆動装置47は、電動モータ47Aと、電動モータ47Aの回転力を減速して連結軸45に伝達する減速機構47Bとを有する。減速機構47Bは、ウォーム及びウォームホイール等の公知のギヤ列を含む。減速機構47Bは第1リクライニング機構43及び左下バックサイドフレーム22の右側に配置され、連結軸45は減速機構47Bを貫通している。電動モータ47Aは、減速機構47Bの上側に回転軸線が略上下に延びるように設けられ、バックロアフレーム11の左端部11Aの前方に配置されている。詳細には、減速機構47Bは前後幅に対して左右幅が小さい扁平形状に形成され、電動モータ47Aは減速機構47Bの上部前側に設けられている。例えば、減速機構47Bに含まれるウォームホイールの軸線が左右方向に延びるように配置し、電動モータ47Aの回転軸に連結され、ウォームホイールに噛み合うウォームをウォームホイールの前方に配置した場合にこのような形態となる。
電動モータ47Aは、モータ用のワイヤーハーネスが接続されるコネクタ47Cを有する。コネクタ47Cは、モータハウジング47Dの外面であって、バックロアフレーム11の左端部11A側を向く部分に配置されている。すなわち、コネクタ47Cは、モータハウジング47Dの後部に設けられ、モータハウジング47Dとバックロアフレーム11の右端部11Bとの間に配置されている。また、コネクタ47Cは、接続部が上方を向くように配置されている。
モータ用のワイヤーハーネスの中間部は、バックロアフレーム11の左端部11Aに設けられたハーネス支持部材49に支持される。ハーネス支持部材49は、例えばバックロアフレーム11に溶接された板片部を有し、板片部にワイヤーハーネスが締結バンド等によって締結される。
図6〜図9に示すように、バックロアフレーム11の中央部11Cには、下方に向けて突出する補助フレーム50が設けられている。補助フレーム50は、略長方形の枠形に形成された枠部50Aと、枠部50Aに掛け渡された補強部50Bとを有する。枠部50Aは、金属パイプを屈曲することによって形成され、バックロアフレーム11の中央部11Cと協働して長方形状の枠形を形成する。枠部50Aは、略長方形の長辺が下縁となるように配置され、上部においてバックロアフレーム11の中央部11Cに溶接等によって結合されている。補強部50Bは、板金部材から形成され、枠部50Aを上下に縦断するように配置され、上端部がバックロアフレーム11の中央部11Cに溶接され、下端部が枠部50Aの下縁に溶接されている。
補助フレーム50は、連結軸45の後方に配置され、その下端部は連結軸45よりも下方に配置されている。また、補助フレーム50は、上端部に対して下端部が前方に配置されるように、前後に傾斜している。補助フレーム50の下縁は、シートバックの下縁を構成する。
図2に示すように、可動フレームF3は、左右一対のサイドフレーム60と、左右のサイドフレーム60の上端部どうしを結合する上部フレーム61とを有する。各サイドフレーム60は、それぞれ板金部材である上部サイドフレーム62と下部サイドフレーム63とを有し、互いに左右対称形に形成されている。
上部サイドフレーム62は、上下に延び、主面が左右方向を向く側辺部62Aと、側辺部62Aの上端部から滑らかに湾曲して左右方向内方に延び、主面が前後を向く上辺部62Bを有する。側辺部62Aは、上下方向における中間部において屈曲され、下部に対して上部が左右方向内方にオフセットしている。側辺部62Aの前縁及び後縁には、左右方向内方に突出するリブ62C、62Dが各縁に沿うように延設されている。側辺部62Aの前縁に沿って延びるリブ62Cは、側辺部62Aの上端において上辺部62Bの上縁に連続し、その後上縁に沿って延びている。また、側辺部62Aの上半部における後縁には、左右方向内方に突出する補強壁62Eが形成されている。補強壁62Eは、上辺部62Bに連続し、側辺部62Aと上辺部62Bとの隅部を繋いでいる。側辺部62A、上辺部62B、リブ62C及び補強壁62Eは、1つの板金部材を曲げ加工することによって一体的に形成されている。
上部フレーム61は、左右方向に延び、その左右端部において左右の上部サイドフレーム62の上辺部62Bに対向している。また、上部フレーム61の左右端部は、前方かつ下方に滑らかに湾曲し、左右の上部サイドフレーム62の側辺部62Aの左右方向内面に沿って延びている。上部フレーム61は、上部サイドフレーム62の上辺部62B及び側辺部62Aに溶接等によって結合されている。上部フレーム61は、横断面が溝形をなす板金部材であり、溝形の開口が対向する上辺部62B及び側辺部62A側を向くように配置されている。これにより、上部フレーム61は、上辺部62B及び側辺部62Aと協働して閉断面構造を形成している。左右の側辺部62Aの下部間には、連結パイプ65が掛け渡されている。
図2、図7及び図8に示すように、下部サイドフレーム63は、板金部材から形成されている。下部サイドフレーム63は、上下方向に延び、主面が左右方向を向くように配置されている。下部サイドフレーム63の上端部は、上部サイドフレーム62の側辺部62Aの左右方向外面にボルト締結等によって結合されている。下部サイドフレーム63は、その上下方向における中間部において屈曲され、上端部に対して下端部が左右方向外方にオフセットしている。また、下部サイドフレーム63の下端部は、上部に対して前後幅が大きく形成され、各バックサイドフレームに左右方向に延びる回動軸線回りに回動(傾倒)可能に取り付けられる軸支部63A(取付部)を構成している。
右側の下部サイドフレーム63の軸支部63Aは、回動可能に右上バックサイドフレーム13(右バックサイドフレーム9)に結合されている。左側の下部サイドフレーム63の軸支部63Aは、第4リクライニング機構67を介して回動可能に左上バックサイドフレーム21(左バックサイドフレーム8)に結合されている。両下部サイドフレーム63の回動軸線は同軸に配置され、上下方向においてパッド支持ブラケット32、33とバックロアフレーム11との間に配置されている。
第4リクライニング機構67は、左上バックサイドフレーム21に結合された第1部材と、下部サイドフレーム63の軸支部63Aに結合された第2部材と、第1部材及び第2部材との間に設けられ、回動することによって第1部材と第2部材との結合及び分離を切り換える駆動軸67Aとを有する。第4リクライニング機構67は、公知の手動式のリクライニング機構であってよい。このようなリクライニング機構67の一具体例を説明すると、リクライニング機構67は、第1部材及び第2部材が同軸に配置され、駆動軸が第1部材及び第2部材の回転中心を貫通するように設けられている。また、リクライニング機構は、第1部材と第2部材との間に形成される内部空間に配置され、駆動軸と一体に回転するカムプレートと、内部空間に配置された複数のロック部材と、カムプレートを一方の回転方向に付勢する捩じりばね等の付勢部材とを有している。ロック部材は、第1部材に形成されたガイド溝に係合し、第1部材の径方向に移動可能に配置されている。ロック部材は、径方向内方部分にカム部を有し、径方向外方部分に外歯を有し、径方向外方に移動したときに第2部材の内部空間を形成する内周面に周方向にわたって形成された内歯と係合する。カムプレートは、ロック部材と係合し、一方の回転方向に回転するときにロック部材を径方向外方に移動させ、他方の回転方向に回転するときにロック部材を径方向内方に移動させる。このように構成されたリクライニング機構は、通常時においては駆動軸が付勢部材に付勢されてロック位置にあり、ロック部材が第2部材と係合して、第1部材及び第2部材の回転位置がロックされたロック状態となる。一方、付勢部材に抗して駆動軸が回転し、解除位置にあるときにはロック部材が第2部材から離れ、第1部材及び第2部材の相対回転が可能な解除状態となる。
図6に示すように、左上バックサイドフレーム21の側辺部21Aは、第4リクライニング機構67と対向する部分に左右方向内方に膨出した膨出部21Eを有する。膨出部21Eは、概ねリブ21B、21Cの高さと同じ膨出量を有し、その突出端は左右方向内方を向く平面に形成されている。膨出部21Eの裏側は、膨出部21Eの形状に対応して凹んでいる。膨出部21Eによって、左側の下部サイドフレーム63は左上バックサイドフレーム21の溝形の外方に配置される。これにより、可動フレームF3は、左上バックサイドフレーム21のリブ21B、21Cと干渉することなく、前後への傾倒が可能になる。
図2及び図6に示すように、第4リクライニング機構67の駆動軸67Aは、膨出部21Eを貫通し、側辺部21Aの左右方向外方に突出している。駆動軸67Aの先端部には、延長軸70が結合される。延長軸70の内端には駆動軸67Aの先端が相対回転不能に嵌合する結合孔70Aが形成されている。駆動軸67Aの先端部は、例えば長方形や正方形等の角柱形に形成され、結合孔70Aがこれらの角柱と相補的な横断面を有する孔に形成されるとよい。延長軸70は、駆動軸67Aと同軸に延び、左右方向外方に向けて延びている。延長軸70の外端は、操作レバー71と結合されている。操作レバー71には、延長軸70の外端が突入可能な結合孔71Aが形成されている。延長軸70の外端の外周面、及び操作レバー71の結合孔70Aの内周面には互いに係合するセレーション70B、71Bがそれぞれ形成されている。操作レバー71は、延長軸70を介して駆動軸67Aと結合され、一体となって回転する。これにより、操作レバー71を手動操作することによって、第4リクライニング機構67をロック状態及び解除状態の間で切り換えることができる。
図7に示すように、左側の下部サイドフレーム63の軸支部63Aの左右方向内側には、付勢部材としてのぜんまいばね73が設けられている。ぜんまいばね73は、可動フレームF3の回動軸と同軸に配置され、一端が左側の下部サイドフレーム63に結合され、他端が左上バックサイドフレーム21に結合されている。ぜんまいばね73は、シートバックフレームF2に対して可動フレームF3が前方に傾倒する方向に付勢している。
図2に示すように、上部フレーム61には、ヘッドレストを支持するための一対のヘッドレスト取付部75が結合されている。ヘッドレスト取付部75は、筒状をなし、内部に樹脂製の筒形部材であるサポート(不図示)が挿入される。ヘッドレストは、一対のヘッドレストピラー(不図示)を有し、ヘッドレストピラーがサポートを介してヘッドレスト取付部75に挿入されることによって、上部フレーム61に取り付けられる。
上部サイドフレーム62及び下部サイドフレーム63を含むサイドフレーム60は、少なくとも1つの第1脆弱部77を有する。第1脆弱部77は、サイドフレーム60の剛性を局所的に低下させ、外部荷重が加えられたときに変形の起点となる。第1脆弱部77は、例えば部材の側縁に開口した切欠部や、部材に形成された貫通孔、貫通孔を所定の間隔をおいて連続的に配置したミシン目、他の部分に対して部材の肉厚を薄くした薄肉部等であってよい。
第1脆弱部77は、サイドフレーム60におけるヘッドレスト取付部75と軸支部63Aとの間に配置されていることが好ましい。本実施形態では、第1脆弱部77は、上部サイドフレーム62における上部フレーム61の下端よりも下方、かつ下部サイドフレーム63の上端よりも上方に配置されている。また、第1脆弱部77は、上部サイドフレーム62における連結パイプ65との結合部よりも上方に配置されている。左右の第1脆弱部77は、同じ上下位置に配置されている。
また、第1脆弱部77は、上下方向において補強壁62Eと対応する位置に配置されている。補強壁62Eは、第1脆弱部77と対応する部分に第2脆弱部78を有している。第2脆弱部78は、上述したような第1脆弱部77と同様の構成である。これにより、外部荷重によって第1脆弱部77から変形が生じるときには、第2脆弱部78も変形し、補強壁62Eが上部サイドフレーム62の変形を阻害することが抑制される。
本実施形態では、第1脆弱部77は上部サイドフレーム62にそれぞれ形成された切欠部であり、前縁のリブ62Cの突出端から側辺部62Aに到達するように延びている。また、第2脆弱部78は左右の切欠部は、補強壁62Eのそれぞれに形成された切欠部であり、補強壁62Eの下縁から上下方向において第1脆弱部77よりも上方に延びている。第2脆弱部78は、左右方向において、各上部サイドフレーム62の側辺部62Aに近接して配置されるほど好ましい。これらの構成の第2脆弱部78によって、補強壁62Eの下部は上部サイドフレーム62の剛性に影響を与えない。
補強壁62Eの下部は、ワイヤーハーネスを支持するためのハーネス支持部62Fを構成する。ハーネス支持部62Fは、補強壁62Eの下部を厚み方向に貫通する貫通孔を含む。ハーネス支持部62Fには、締結バンド等によってワイヤーハーネスが締結される。このハーネス支持部62Fに支持されるワイヤーハーネスは、可動フレームF3によって支持されるシートバックの上部に配置される、例えばヒーター等の装置に接続される。
可動フレームF3及び左右のバックサイドフレーム8、9の適所には、シートバックパッドを支持するための第1〜第6パッド支持部材81〜86が設けられている。左右一対の第1パッド支持部材81は、それぞれ上部サイドフレーム62に設けられている。各第1パッド支持部材81は、棒状部材を屈曲して形成され、上部サイドフレーム62の第1脆弱部77よりも上側に溶接された上端部と、同じ側の上部サイドフレーム62の第1脆弱部77よりも下側に溶接された下端部とを有する。各第1パッド支持部材81は、長手方向における中間部が上部サイドフレーム62に対して前方かつ左右方向外方に張り出している。各第1パッド支持部材81は、第1脆弱部77を有する上部サイドフレーム62に対して剛性が十分に低く、第1脆弱部77を起点する上部サイドフレーム62の変形を阻害しないことが好ましい。第1パッド支持部材81は、変形の起点となる屈曲部を複数有し、剛性が低く抑えられている。
第2パッド支持部材82は、上部フレーム61と連結パイプ65との間において、左右の上部サイドフレーム62間に架け渡されている。第3パッド支持部材83は、左右方向に延び、連結パイプ65の両端部にそれぞれ結合された両端部を有する。第3パッド支持部材83の中間部は、連結パイプ65に対して下方に張り出している。
第4パッド支持部材84は、左右のパッド支持ブラケット32、33間に架け渡された第1の棒状部材84Aと、左右方向に延び、第1の棒状部材84Aの両端部それぞれ結合された両端部を有する第2の棒状部材84Bとを有する。第2の棒状部材84Bの中間部は、第1の棒状部材84Aに対して下方かつ前方に張り出している。
第5パッド支持部材85は、棒状部材から形成され、左右方向に延び、右上バックサイドフレーム13の後面に結合された右端部と、右上バックサイドフレーム13の後面に結合された右端部とを有する。第5パッド支持部材85の左右端部は、可動フレームF3の軸支部63Aの後方に配置されている。第5パッド支持部材85の左右方向における中間部は両端部に対して前方に張り出している。
第6パッド支持部材86は、棒状部材から形成されて上下に延び、左上サイドフレームの前縁のリブ21Bに溶接された上端部及び下端部を有する。第6パッド支持部材86の上端部は、上下方向において軸支部63Aよりも上方に配置され、下端部は軸支部63Aよりも下方に配置されている。第6パッド支持部材86の中間部は、左上サイドフレームに対して右方に張り出し、ぜんまいばね73の前方を覆うように配置されている。
右上バックサイドフレーム13の左側面には、可動フレームF3の右側の軸支部63Aを保護する保護部材88が設けられている。保護部材88は、右上バックサイドフレーム13の左側面における軸支部63Aよりも下側部分に溶接された下端部と、軸支部63Aの左方に延出して遊端を形成する上端部とを有する。本実施形態では、保護部材88は、棒状部材を屈曲させることによってから形成され、その両端部が下端部を形成し、中間部が上端部を形成している。
図2、図8及び図9に示すように、バックロアフレーム11と第5パッド支持部材85とは連結部材89によって連結されている。連結部材89は、棒状部材を屈曲させることによって形成されている。連結部材89は、バックロアフレーム11の中央部11Cに溶接された一端部と、一端部から第5パッド支持部材85まで上下に延びる連結部89Aと、連結部89Aの上端から左方かつ前方に突出した後、屈曲して上下に延びる規制部89Bとを有する。連結部材89は、連結部89Aと規制部89Bとの間の部分が第5パッド支持部材85に溶接されている。規制部89Bは、ぜんまいばね73の右方に配置され、ぜんまいばね73及び可動フレームF3の軸支部63Aへの他の部品の接近を規制している。
図2、図7〜図9に示すように、左上バックサイドフレーム21の後縁のリブ21Cにおける、第5パッド支持部材85が結合された部分の下方にはブラケット91が結合されている。ブラケット91は、板金部材であり、第5パッド支持部材85に沿って右方に延びている。ブラケット91の上縁は前方に折曲され、第5パッド支持部材85に係止されている。また、ブラケット91は、連結部材89の後方に配置され、その右端部が連結部材89の連結部89Aと対応する位置まで延び、連結部89Aと溶接されている。このように構成されたブラケット91は、可動フレームF3の軸支部63A及びぜんまいばね73の後方を覆い、可動フレームF3の軸支部63A及びぜんまいばね73への他の部品の接近を規制している。
ブラケット91には、前後に貫通するガイド孔91Aが形成されている。可動フレームF3によって構成されるシートバックの上部内に延びるワイヤーハーネスは、ガイド孔91Aを後側から前側に通過し、その後、連結部材89の規制部89Bの右方を通過するように配設される。これにより、ワイヤーハーネスは、ブラケット91及び連結部材89によって、可動フレームF3の軸支部63A及びぜんまいばね73への接近が規制される。
以下、上記のように構成したシートSの効果について説明する。シートSは、左バックサイドフレーム8の上部と補強部材30とが協働して閉断面構造を形成するため、左バックサイドフレーム8の剛性が高くなり、変形が抑制される。これにより、シートバックフレームF2の上部に加わる外部荷重は、バックアッパフレーム10から左右のバックサイドフレーム8、9、及び第1〜第3リクライニング機構41〜43を介してシートクッションフレームF1に効率良く伝達されるようになる。また、左バックサイドフレーム8の下部は、開断面構造となるため左バックサイドフレーム8を薄く、コンパクトにすることができる。また、左バックサイドフレーム8の内側に、電動モータ47Aを含む駆動装置47等の他の部品や装置を配置することができる。
バックアッパフレーム10及び左バックサイドフレーム8は、湾曲部23によって滑らかに接続されるため、バックアッパフレーム10及び左バックサイドフレーム8の結合部への応力集中が抑制される。また、湾曲部23が補強部材30によって補強されるため、バックアッパフレーム10及び左バックサイドフレーム8の結合部の変形が一層抑制される。
左上バックサイドフレーム21が湾曲部23を形成するため、湾曲部23の立体構造によって、板金部材である左上バックサイドフレーム21の断面2次モーメント(剛性)が高くなる。また、湾曲部23の横断面が溝形に形成され、補強部材30が湾曲部23に嵌合して湾曲部23と共に閉断面を形成する溝形に形成されているため、補強部材30及び湾曲部23によって形成される閉断面構造の剛性が高くなる。
バックアッパフレーム10及び左上バックサイドフレーム21の結合部と、バックアッパフレーム10及び補強部材30の結合部とが左右方向に互いにオフセットされているため、バックアッパフレーム10の左端部と、補強部材30が結合された左上バックサイドフレーム21の上端部とが互いに係合する。これにより、バックアッパフレーム10と左上バックサイドフレーム21との結合部の剛性が高くなる。
左上バックサイドフレーム21が左右方向内方(右方)に向けて開口する溝形に形成されているため、左上バックサイドフレーム21の内側に、電動モータ47Aを含む駆動装置47等の他の部材を収容する収容部37が形成される。これにより、他の部材は左上バックサイドフレーム21に保護され、外部から荷重を受け難くなる。
補強部材30の下端が、位置決め孔31と対向する位置まで延びているため、左上バックサイドフレーム21において位置決め孔31によって剛性が低下する部分が補強部材30によって補強される。
補強部材30の下端がパッド支持ブラケット32の上方に間隔をおいて配置されているため、パッド支持ブラケット32と補強部材30との間に間隔が形成され、パッド支持ブラケット32の周囲に空間が確保される。これにより、シートバックパッドをパッド支持ブラケット32の周囲に配置することが可能になると共に、パッド支持ブラケット32とシートバックパッドとの係合面積を広くすることができる。
可動フレームF3の軸支部63Aが、左上バックサイドフレーム21の開断面構造部分に配置されるため、可動フレームF3及び左上バックサイドフレーム21を効率良く配置することができる。
シートバックパッドの移動を規制する第6パッド支持部材86が可動フレームF3の軸支部63Aを囲むように配置されているため、シートバックパッドと軸支部63Aとの接触が避けられる。
右バックサイドフレーム9とシートクッションフレームF1との結合部に2つのリクライニング機構42、43が設けられているため、右バックサイドフレーム9とシートクッションフレームF1との結合部の剛性が高められる。これにより、シートバックフレームF2に加わる外部荷重は、主に右バックサイドフレーム9及び第2及び第3のリクライニング機構42、43を介してシートクッションフレームF1に伝達され、左上バックサイドフレーム21に変形が生じ難くなる。
右バックサイドフレーム9の上端部にベルトガイド16が設けられているため、シートベルト及びベルトガイド16を介してシートバックフレームF2に加わる外部荷重は、主に右バックサイドフレーム9及び第2及び第3リクライニング機構42、43を介してシートクッションフレームF1に伝達される。
バックロアフレーム11は、左端部11Aが右端部11Bに対して後方にオフセットして配置されているため、左端部11Aの前方かつ左上バックサイドフレーム21の下部内側に収容部37が形成される。すなわち、電動モータ47A等の他の部材が配置される収容部37を避けつつ、右上バックサイドフレーム13及び左上バックサイドフレーム21をバックロアフレーム11で結合することができる。
バックロアフレーム11の左端部11Aが、シートSに着座する乗員の背部から離れる方向にオフセットしているため、シートSに着座する乗員に違和感を与えることが抑制される。また、突出部21Dを設けたことによって、バックロアフレーム11の左端部11Aの後方へのオフセット量を大きくすることができる。また、バックロアフレーム11の左端部11Aの少なくとも一部が突出部21Dに結合されることによって、バックロアフレーム11の左端部11Aの後方へのオフセット量が一層大きくなる。
バックロアフレーム11は、乗員の背部に対応する中央部11Cが左右対称形に形成されているため、乗員に違和感を与えることが抑制される。また、バックロアフレーム11の中央部11Cが、左端部11A及び右端部11Bよりも下方かつ後方に配置され、乗員の背部と間に距離が確保されるため、乗員に違和感を与えることが抑制される。
左上バックサイドフレーム21の内側に形成された収容部37に電動モータ47Aを配置することによって、左上バックサイドフレーム21の開断面構造を利用して電動モータ47Aをシートバック内に効率良く収納することができる。また、電動モータ47Aは左上バックサイドフレーム21の内側に配置されるため、外部から荷重を受けることが防がれる。また、コネクタ47Cがハウジングとバックロアフレーム11との間に配置されているため、外部から荷重を受けることが防がれる。
電動モータ47Aに接続されるモータ用のワイヤーハーネスが、コネクタ47Cに近接したバックロアフレーム11の左端部11A側に支持されるため、モータ用のワイヤーハーネスの揺動が抑制される。
バックロアフレーム11に設けられた補助フレーム50が第1〜第3リクライニング機構41〜43の駆動軸及び連結軸45よりも下方に配置されているため、シートバックの下端部が補助フレーム50によって保形される。自動車の製造ラインでは、シートSを移動させるために、シートバックの下端部がハンガー装置によって支持されることがある。この場合、補助フレーム50がシートバックの下端部に存在することで、シートSの荷重が補助フレーム50を介してハンガー装置に加わり、シートバックの変形が抑制される。また、下方からシートバックに加わる荷重が、補助フレーム50に加わり、駆動軸や連結軸45に加わることが防止されため、駆動軸や連結軸45の変形が抑制される。
補助フレーム50は、駆動軸及び連結軸45の後方、すなわち乗員から離れた位置に配置されるため、乗員に違和感を与えることが抑制される。
バックロアフレーム11に上方に突出する連結部材89を設け、連結部材89の規制部89Bによって可動フレームF3によって構成されるシートバックの上部に延びるワイヤーハーネスの揺動を規制したため、可動フレームF3の軸支部63Aや、ぜんまいばね73、第4リクライニング機構67へのワイヤーハーネスの接近を抑制することができる。
可動フレームF3が第1脆弱部77を有するため、可動フレームF3や可動フレームF3に連結されたヘッドレストに所定以上の外部荷重が加わったときには、第1脆弱部77を起点として可動フレームF3が変形し、衝撃が吸収される。例えば、シートSの乗員や、シートSの後方に配置されたシートの乗員が、車両の衝突等によって可動フレームF3によって構成されるシートバックの上部や、ヘッドレストに衝突する場合に、可動フレームF3が第1脆弱部において変形して衝撃を吸収し、乗員に加わる衝撃が軽減される。
第1脆弱部77がヘッドレスト取付部75と軸支部63Aとの間に設けられているため、ヘッドレストに外部荷重が加わったときに、可動フレームF3が確実に第1脆弱部77を起点として屈曲することができる。
第1脆弱部77が、可動フレームF3のサイドフレーム60の前縁に形成されているため、後方から可動フレームF3に外部荷重が加わったときに、可動フレームF3は前方に向けて屈曲し、衝撃を吸収することができる。これにより、シートSの後方に配置されたシートの乗員が、可動フレームF3によって構成されるシートバックの上部や、ヘッドレストに衝突する場合に、乗員に加わる衝撃が軽減される。
可動フレームF3のサイドフレーム60は、リブ62Cを有することで剛性が高められる。一方、切欠部がリブ62Cから側辺部62Aまで延びることによって第1脆弱部77が形成されるため、サイドフレーム60における第1脆弱部77と他の部分との剛性差が大きくなる。これにより、可動フレームF3は、第1脆弱部77を起点として確実に屈曲することができる。
補強壁62Eによってサイドフレーム60と上部フレーム61との結合部の剛性が高められる。また、補強壁62Eが第1脆弱部77と上下方向において対応する位置に第2脆弱部78を有するため、サイドフレーム60は補強壁62Eによって阻害されることなく、第1脆弱部77を起点として変形することができる。第2脆弱部78は、補強壁62Eの下縁から上下方向において第1脆弱部77よりも上方まで延び、広範囲において第1脆弱部77と対応するため、第1脆弱部77を起点とした可動フレームF3の変形が補強壁62Eに阻害されることなく確実に行われる。また、補強壁62Eにハーネス支持部62Fが設けられているため、シートバックの上部に配置されるワイヤーハーネスの揺動が抑制される。
可動フレームF3の左右のサイドフレーム60に連結パイプ65が掛け渡され、第1脆弱部77が連結パイプ65よりも上方に設けられているため、サイドフレーム60の下部側、すなわちシートバックフレームF2との結合部側が、連結パイプ65によって剛性が高められる。また、第1脆弱部77における剛性がサイドフレーム60の下部側に対して一層低くなるため、外部荷重が加わったときの変形が第1脆弱部77を一層確実に起点とするようになる。
第1パッド支持部材81は、第1脆弱部77を跨ぐようにサイドフレーム60に結合されている。しかし、第1パッド支持部材81が変形の起点となる屈曲部を有するため、サイドフレーム60が第1脆弱部77を起点として変形するときに、サイドフレーム60の変形を阻害することが抑制される。
延長軸70を設けたことによって、第4リクライニング機構67の駆動軸67Aから離れたシートバックフレームF2の外方に操作レバー71を配置することができる。これにより、左上バックサイドフレーム21がシートバックパッド等の被覆物によって覆われる場合にも、操作レバー71が被覆物の外方に配置され、手動操作が可能になる。延長軸70と操作レバー71とは、セレーション70B、71Bによって結合するため、操作レバー71と延長軸70との結合構造が強固になり、操作レバー71の回転が確実に延長軸70に伝達される。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、各部材を結合するための一例として溶接を採用した例を記載したが、溶接によって結合する部分は、リベットによる結合や、摩擦撹拌接合、接着剤による接着等の公知の結合手法に置換することができる。上記のシートSは、左右を交換した対称形として構成してもよい。
左上バックサイドフレーム21と一体に形成された湾曲部23は、左上バックサイドフレーム21に代えてバックアッパフレーム10と一体に形成されてもよい。また、バックアッパフレーム10の前側部材26の左端部を後側部材27の左端部よりも右方に配置し、補強部材30の端部が後側部材27の前方の内側に嵌合するようにしてもよい。
また上記の実施形態では、バックロアフレーム11の左端部11Aが右端部11Bに対して後方にオフセットした例を示したが、他の実施形態では、左端部11Aが右端部Bに対して上方、下方、及び前方等の任意の方向にオフセットしてもよい。収容部37は、左端部11Aのオフセット方向と相反する側に形成される。また、収容部37には、駆動装置47と異なる他の装置や部品等が収容されてもよい。
また上記の実施形態では、バックロアフレーム11の中央部11Cが左右方向に直線状に延びる形状を有するが、他の実施形態では中央部11Cが後方に突出した弧状等の他の形状を有してもよい。
また上記の実施形態では、補助フレーム50が略長方形の外形を有するが、他の実施形態では任意の外形を有してもよい。この場合、補助フレーム50の下縁が連結軸45よりも下方に配置されるようにするとよい。
また上記の実施形態では、第1脆弱部77を上部サイドフレーム62の前縁に設けたが、他の実施形態では上部サイドフレーム62の後縁に設けてもよい。この場合、可動フレームF3は、前方からの荷重に対して後方に変形し、衝撃を吸収することができる。
また上記の実施形態では、延長軸70と操作レバー71との結合構造をセレーション70B、71Bによる係合構造としたが、他の公知の結合構造に置換してもよい。
上記実施形態では、本発明を車両用シートに適用した例を説明したが、本発明に係るシートは航空機用や鉄道用等の様々なシートに適用することもできる。また、上記実施形態に示したシートSの各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。