JP6321492B2 - 高性能タイヤ用トレッドゴム組成物及び高性能タイヤ - Google Patents

高性能タイヤ用トレッドゴム組成物及び高性能タイヤ Download PDF

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Description

本発明は、高性能タイヤ用トレッドゴム組成物及びこれを用いて作製したトレッドを有する高性能タイヤに関する。
高性能タイヤ用のトレッドには、走行初期から走行終了まで、乾燥路面(ドライ路面)における優れた操縦安定性(グリップ性能)を保つことが望まれている。すなわち、優れた初期グリップ性能と共に、走行中のグリップ性能も良好に保つことが望まれている。
従来から、初期グリップ性能を向上させる目的で、トレッドゴム組成物において、低軟化点樹脂や液状ポリマー等の配合量を増量する方法や、低温軟化剤を配合する方法が検討されている。一方、走行中の安定したグリップ性能を得る目的では、トレッドゴム組成物へ高軟化点樹脂を配合する方法が検討されている。
しかしながら、低軟化点樹脂を配合したトレッドを有するタイヤにおいては、初期グリップ性能は向上するものの、トレッドの温度が上昇するにつれて、走行中のグリップ性能が低下するという問題がある。
一方、クマロンインデン樹脂等の高軟化点樹脂を配合したトレッドを有するタイヤにおいては、走行中の安定したグリップ性能は得られるものの、初期グリップ性能が大きく低下するという問題がある。
これらの問題を解決するため、低軟化点樹脂と高軟化点樹脂を組み合わせてゴム組成物に配合する方法が考えられる。しかしながら、ゴム組成物に配合する樹脂の合計量は、ゴム全体の温度特性に大きく影響するため、ゴム組成物に配合可能な樹脂の合計量は制限される。その結果、低軟化点樹脂と高軟化点樹脂を併用したゴム組成物の初期グリップ性能及び走行中の安定したグリップ性能は、それぞれの樹脂を単独で配合した場合ほどは得られない。このように、良好な耐摩耗性を確保しつつ、初期グリップ性能及び走行中の安定したグリップ性能を同時に高次元に向上させる技術の開発が求められている。
特開2004−137463号公報
本発明は、前記課題を解決し、良好な耐摩耗性を確保しつつ、初期グリップ性能及び走行中の安定したグリップ性能を同時に高次元に向上できる高性能タイヤ用トレッドゴム組成物及びこれを用いて作製したトレッドを有する高性能タイヤを提供することを目的とする。
本発明は、ゴム成分及び無溶剤型アクリル樹脂を含有し、上記ゴム成分100質量部に対して、上記無溶剤型アクリル樹脂の含有量が1〜5質量部である高性能タイヤ用トレッドゴム組成物に関する。
上記無溶剤型アクリル樹脂のガラス転移点(Tg)が、0〜100℃であることが好ましい。
上記無溶剤型アクリル樹脂の酸価が、15〜250mgKOH/gであることが好ましい。
上記無溶剤型アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)が、2000〜20000であることが好ましい。
上記無溶剤型アクリル樹脂が、無溶剤型スチレンアクリル樹脂であることが好ましい。
本発明はまた、前記高性能タイヤ用トレッドゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する高性能タイヤに関する。
本発明によれば、ゴム成分と、所定量の無溶剤型アクリル樹脂とを含む高性能タイヤ用トレッドゴム組成物であるので、良好な耐摩耗性を確保しつつ、初期グリップ性能及び走行中の安定したグリップ性能(特にドライ路面における初期グリップ性能及び走行中の安定したグリップ性能)を同時に高次元に向上させた高性能タイヤを提供できる。
本発明の高性能タイヤ用トレッドゴム組成物は、ゴム成分と、所定量の無溶剤型アクリル樹脂とを含む。
従来、グリップ性能の改善のために樹脂が配合されてきたが、従来配合されてきた樹脂では、樹脂の配合により粘弾性特性が改善されることによりグリップ性能が改善されているものと推測される。そのため、使用する樹脂の軟化点に応じて、初期グリップ性能、走行中の安定したグリップ性能のいずれかのみしか改善することができなかった。
一方、本願発明では、無溶剤型アクリル樹脂を配合することにより、この粘弾性特性の改善によるグリップ性能の改善に加えて、トレッドゴムの路面への粘着性を付与できることによってもグリップ性能を改善できるため、初期グリップ性能及び走行中の安定したグリップ性能(特にドライ路面における初期グリップ性能及び走行中の安定したグリップ性能)を同時に高次元に改善できるものと推測される。特に、この効果は、無溶剤型アクリル樹脂の配合量を本願所定量とした場合により好適に得られ、特に、配合量を本願所定量とすることにより、より良好な初期グリップ性能が得られる。
本発明で使用できるゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、グリップ性能及び耐摩耗性がバランスよく得られるという理由からNR、BR、SBRが好ましく、SBRがより好ましい。
SBRとしては、特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)等を使用できる。
SBRのスチレン含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。20質量%未満であると、充分なグリップ性能が得られない傾向がある。また、上記スチレン含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。60質量%を超えると、耐摩耗性が低下するだけでなく、温度依存性が増大し、温度変化に対する性能変化が大きくなってしまい、走行中の安定したグリップ性能が良好に得られない傾向がある。なお、本発明において、SBRのスチレン含有量は、H−NMR測定により算出される。
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。10質量%未満であると、十分な耐熱性、グリップ性能、耐摩耗性が得られない傾向がある。また、SBRの含有量の上限は特に限定されず、100質量%でもよい。
本発明では、無溶剤型アクリル樹脂を含有する。これにより、良好な耐摩耗性を確保しつつ、初期グリップ性能及び走行中の安定したグリップ性能(特にドライ路面における初期グリップ性能及び走行中の安定したグリップ性能)を同時に高次元に向上できる。
本発明において、無溶剤型アクリル樹脂は、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59−6207号公報、特公平5−58005号公報、特開平1−313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42−45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)である。なお、本発明において、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルを意味する。
上記(メタ)アクリル系樹脂は、その製法に起因して、実質的に副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを含まない。また、上記(メタ)アクリル系樹脂は、連続重合により得られるため、組成分布や分子量分布が比較的狭い。上記(メタ)アクリル系樹脂のこのような性質により、本発明の効果が好適に得られるものと推測される。
上記(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(アルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
また、上記(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体と共に、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルを使用してもよい。
無溶剤型アクリル樹脂は、(メタ)アクリル成分のみで構成される樹脂であっても、(メタ)アクリル成分以外の成分をも構成要素とする樹脂であっても良いが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、(メタ)アクリル成分と共にスチレンに由来する成分を構成要素とするスチレンアクリル樹脂(無溶剤型スチレンアクリル樹脂)であることが好ましい。
また、無溶剤型アクリル樹脂は、水酸基、カルボキシル基、シラノール基等を有していてよく、なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、水酸基、カルボキシル基を有していることが好ましい。
無溶剤型アクリル樹脂の市販品としては、特に限定されないが、例えば東亞合成(株)製のARUFONシリーズ(UP−1000、UP−1010、UP−1020、UP−1021、UP−1061、UP−1070、UP−1080、UP−1110、UP−1170、UH−2032、UH−2041、UH−2170、UC−3900、UCX−3510)等が挙げられる。
無溶剤型アクリル樹脂のガラス転移点(Tg)(℃/DSC)は、好ましくは0℃以上、より好ましくは30℃以上である。また、該Tgは、好ましくは100℃以下、より好ましくは85℃以下である。0℃未満であると、初期グリップ性能の向上効果は得られるものの、走行中の安定したグリップ性能、耐摩耗性が良好に得られないおそれがあり、100℃を超えると、走行中の安定したグリップ性能の向上効果は得られるものの、初期グリップ性能、耐摩耗性が良好に得られないおそれがある。
なお、本発明において、無溶剤型アクリル樹脂のガラス転移点は、JIS−K7121に従い、昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量測定(DSC)を行なって測定される値である。
無溶剤型アクリル樹脂の酸価は、好ましくは15mgKOH/g以上、より好ましくは30mgKOH/g以上、更に好ましくは50mgKOH/g以上、特に好ましくは80mgKOH/g以上である。また、該OH価は、好ましくは250mgKOH/g以下、より好ましくは200mgKOH/g以下、更に好ましくは120mgKOH/g以下である。15mgKOH/g未満であると、初期グリップ及び走行中のグリップ性能を高次元で共に得られないおそれがあり、250mgKOH/gを超えると、ジエン系ゴム成分との相溶性が悪くなり、十分な破壊特性が得られず、耐摩耗性が著しく悪化するおそれがある。
なお、本発明において、無溶剤型アクリル樹脂の酸価とは、無溶剤型アクリル樹脂1g中に含まれる酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K 0070:1992)により測定した値である。
無溶剤型アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上である。また、該Mwは、好ましくは20000以下、より好ましくは15000以下である。2000未満であると、初期グリップ性能の向上は得られるものの、走行中の安定したグリップ性能が良好に得られないおそれがあり、20000を超えると、軟化点が高く、ゴム成分等と混合できないおそれがある。
なお、本発明において、無溶剤型アクリル樹脂のMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。
上述のように、無溶剤型アクリル樹脂は、実質的に副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを含まないために、純度が高い。無溶剤型アクリル樹脂の純度(該樹脂中に含まれる樹脂の割合)は、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上である。
無溶剤型アクリル樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上である。また、該含有量は、5質量部以下、好ましくは3質量部以下である。1質量部未満であると、十分な粘着効果が得られず、初期グリップ性能及び走行中のグリップ性能の向上が共に得られず、5質量部を超えると、初期グリップ性能及び走行中のグリップ性能(特に、初期グリップ性能)の向上効果が低下し、更に耐摩耗性が悪化する。
本発明では、無溶剤型アクリル樹脂と共に、クマロン系樹脂、芳香族系石油樹脂など、従来タイヤ用ゴム組成物で慣用される樹脂も使用できる。なかでも、低軟化点の低軟化点樹脂、高軟化点の高軟化点樹脂が好ましく、低軟化点樹脂、高軟化点樹脂を併用することがより好ましい。低軟化点樹脂を配合することにより、初期グリップ性能をより改善でき、高軟化点樹脂を配合することにより、走行中の安定したグリップ性能がより良好に得られる。また、無溶剤型アクリル樹脂と共に、低軟化点樹脂、高軟化点樹脂を併用することにより、初期グリップ性能及び走行中の安定したグリップ性能を同時により高次元に改善できる。
低軟化点樹脂の軟化点は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上である。また、該軟化点は、好ましくは119℃以下、より好ましくは110℃以下である。60℃未満であると、走行中の安定したグリップ性能が得られないおそれがあり、119℃を超えると、初期グリップ性能が低下するおそれがある。
低軟化点樹脂としては、軟化点が上記範囲内の樹脂であれば特に限定されないが、クマロン系樹脂が好ましい。
クマロン系樹脂としては、クマロンを構成成分とする樹脂であれば特に限定されないが、例えば、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂等が挙げられる。なかでも、クマロンインデン樹脂が好ましい。
低軟化点樹脂を配合する場合、低軟化点樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5〜35質量部以下、より好ましくは10〜30質量部である。低軟化点樹脂の含有量が上記範囲内であると、初期グリップ性能及び走行中の安定したグリップ性能をより高次元に改善できる。
高軟化点樹脂の軟化点は、好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上である。また、該軟化点は、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。120℃未満であると、走行中の安定したグリップ性能が得られないおそれがあり、200℃を超えると、初期グリップ性能が低下するおそれがある。
なお、本発明において、樹脂の軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
高軟化点樹脂としは、軟化点が上記範囲内の樹脂であれば特に限定されないが、芳香族系石油樹脂が好ましい。
芳香族系石油樹脂としては、特に限定されないが、JX日鉱日石エネルギー(株)製の日石ネオポリマー170S、140S等が挙げられる。
高軟化点樹脂を配合する場合、高軟化点樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5〜35質量部以下、より好ましくは10〜30質量部である。低軟化点樹脂の含有量が上記範囲内であると、初期グリップ性能及び走行中の安定したグリップ性能をより高次元に改善できる。
本発明では、初期グリップ性能、走行中の安定したグリップ性能などの観点から、上記樹脂(無溶剤型アクリル樹脂、必要に応じて、高軟化点樹脂及び/又は低軟化点樹脂)に加えて、軟化剤を配合することが好ましい。軟化剤としては特に限定されないが、オイル、液状ジエン系重合体などが挙げられる。
オイルとしては、例えば、パラフィン系、アロマ系、ナフテン系プロセスオイルなどのプロセスオイルが挙げられる。
オイルを配合する場合、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは45質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは85質量部以下、より好ましくは75質量部以下である。30質量部未満では、添加による効果が得られないおそれがあり、85質量部を超えると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。なお、本明細書において、オイルの含有量には、油展ゴムに含まれるオイル量も含まれる。
液状ジエン系重合体は、常温(25℃)で液体状態のジエン系重合体である。
液状ジエン系重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1.0×10〜2.0×10であることが好ましく、3.0×10〜1.5×10であることがより好ましい。1.0×10未満では、耐摩耗性、破壊特性が低下し、十分な耐久性が確保できないおそれがある。一方、2.0×10を超えると、重合溶液の粘度が高くなり過ぎ生産性が悪化するおそれがある。なお、本発明において、液状ジエン系重合体のMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。
液状ジエン系重合体としては、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)などが挙げられる。なかでも、耐摩耗性と走行中の安定したグリップ性能がバランスよく得られるという理由から、液状SBRが好ましい。
液状ジエン系重合体を配合する場合、液状ジエン系重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは120質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。20質量部未満では、十分なグリップ性能が得られない傾向があり、120質量部を超えると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
無溶剤型アクリル樹脂、高軟化点樹脂、低軟化点樹脂、オイル、及び液状ジエン系重合体の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50〜250質量部、より好ましくは100〜200質量部、更に好ましくは120〜180質量部、特に好ましくは130〜142質量部である。上記含有量が上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
本発明のゴム組成物は、耐摩耗性が優れているという点で、カーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックとしては、例えば、オイルファーネス法により製造されたカーボンブラックなどが挙げられ、2種類以上のコロイダル特性の異なるものを併用してもよい。具体的にはGPF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられるが、なかでも、SAFが好適である。
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は、100m/g以上が好ましく、105m/g以上がより好ましく、110m/g以上が更に好ましい。また、該NSAは、600m/g以下が好ましく、250m/g以下がより好ましく、180m/g以下が更に好ましい。100m/g未満では、グリップ性能が低下する傾向があり、600m/gを超えると、良好な分散が得られにくく、耐摩耗性が低下する傾向がある。なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K 6217−2:2001に準拠して求められる。
カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸油量は、50ml/100g以上が好ましく、100ml/100g以上がより好ましい。また、該DBPは、250ml/100g以下が好ましく、200ml/100g以下がより好ましく、135ml/100g以下がさらに好ましい。50ml/100g未満では、十分な耐摩耗性が得られないおそれがあり、250ml/100gを超えると、グリップ性能が低下するおそれがある。なお、カーボンブラックのDBPは、JIS K 6217−4:2001に準拠して測定される。
カーボンブラックを配合する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは80質量部以上、更に好ましくは100質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下である。50質量部未満では十分な耐摩耗性、グリップ性能が得られないおそれがあり、200質量部を超えると、グリップ性能が低下するおそれがある。
本発明では、補強用充填剤として、カーボンブラックの他に、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、クレー、タルクなど、従来タイヤ用ゴム組成物で慣用されるものも使用できる。
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、ワックス、酸化亜鉛、老化防止剤、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤等の材料を適宜配合してもよい。
本発明で使用される酸化亜鉛としては、特に限定されず、タイヤなどのゴム分野で使用されているものなどが挙げられる。ここで、酸化亜鉛のなかでは、微粒子酸化亜鉛を好適に使用できる。具体的には、平均一次粒子径200nm以下の酸化亜鉛を使用することが好ましく、より好ましくは150nm以下である。該平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上、更に好ましくは80nm以上である。なお、酸化亜鉛の平均一次粒子径は、窒素吸着によるBET法により測定した比表面積から換算された平均粒子径(平均一次粒子径)を表す。
酸化亜鉛を配合する場合、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部以下、より好ましくは1〜5質量部である。酸化亜鉛の含有量が上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
加硫促進剤としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、グアニジン系加硫促進剤などが挙げられ、なかでも、本発明では、チアゾール系、チウラム系加硫促進剤を好適に使用できる。
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィドなどが挙げられ、なかでも、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィドが好ましい。チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT−N)などが挙げられ、なかでも、TOT−Nが好ましい。
加硫促進剤を配合する場合、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。1質量部未満では、充分な加硫速度が得られず、良好なグリップ性能、耐摩耗性が得られない傾向があり、15質量部を超えると、ブルーミングを起こし、グリップ性能、耐摩耗性が低下するおそれがある。
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。該ゴム組成物は、高性能タイヤのトレッドに使用される。
本発明の高性能タイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。なお、本発明における高性能タイヤとは、グリップ性能(特に、ドライグリップ性能)に特に優れたタイヤであり、競技車両に使用する競技用タイヤをも含む概念であり、該高性能タイヤは、レースなどの競技用タイヤ、特にドライ路面に使用される高性能ドライタイヤに好適に適用できる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR:旭化成(株)製のタフデン4850(スチレン含有率:40質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイル分50質量部含有)
カーボンブラック:東海カーボン(株)製のシースト9(SAF、NSA:142m/g、DBP吸油量:115ml/100g)
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスAH−24
液状ジエン系重合体:(株)クラレ製のL−SBR−820(液状SBR、Mw:10000)
樹脂1:日塗化学(株)製のエスクロンG−90(クマロンインデン樹脂(低軟化点樹脂)、軟化点:90℃)
樹脂2:JX日鉱日石エネルギー(株)製の日石ネオポリマー170S(芳香族系石油樹脂(高軟化点樹脂)、軟化点:160℃)
樹脂3:東亞合成(株)製の無溶剤型アクリルポリマーUH−2170(無溶剤型アクリル樹脂(無溶剤型スチレンアクリル樹脂)、水酸基含有樹脂、純度:98質量%以上、Tg:60℃、OH価:88mgKOH/g、Mw:14000)
樹脂4:東亞合成(株)製の無溶剤型アクリルポリマーUC−3900(無溶剤型アクリル樹脂(無溶剤型スチレンアクリル樹脂)、カルボキシル基含有樹脂、純度:98質量%以上、Tg:60℃、酸価:108mgKOH/g、Mw:4600)
酸化亜鉛:ハクスイテック(株)製のジンコックスーパーF−1(平均1次粒子径:100nm)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
老化防止剤1:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチル)−p−フェニレンジアミン)
老化防止剤2:住友化学(株)製のアンチゲンRD(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM(ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーTOT−N(テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド)
<実施例及び比較例>
表1に示す配合処方に従い、神戸製鋼(株)製1.7Lバンバリーを用いて硫黄及び加硫促進剤以外の配合材料を混練りした。得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、150℃の条件下で30分間加硫し、試験用タイヤ(タイヤサイズ:215/45R17)を得た。
上記製造で得た試験用タイヤについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
(初期グリップ性能)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行った。その際に2周目おける操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが評価し、比較例1を100として指数表示をした(初期グリップ性能指数)。数値が大きいほど初期グリップ性能が高いことを示す。指数値が140以上の場合に特に良好であると判断した。
(走行中のグリップ性能)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行った。その際における、ベストラップと最終ラップの操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが比較評価し、比較例1を100として指数表示をした。数値が大きいほどドライ路面において、走行中のグリップ性能の低下が小さく、走行中の安定したグリップ性能が良好に得られることを示す。
(耐摩耗性)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて実車走行を行った。その際におけるタイヤトレッドゴムの残溝量を計測し(新品時15mm)、それぞれ比較例1の残溝量を100として指数表示した(耐摩耗性指数)。数値が大きいほど、耐摩耗性が高いことを示す。
Figure 0006321492
表1より、所定量の無溶剤型アクリル樹脂を配合した実施例では、良好な耐摩耗性を確保しつつ、初期グリップ性能及び走行中の安定したグリップ性能(特にドライ路面における初期グリップ性能及び走行中の安定したグリップ性能)を同時に高次元に向上でき、特に、初期グリップ性能をより好適に向上できることが明らかとなった。

Claims (6)

  1. ゴム成分及び無溶剤型アクリル樹脂を含有し、
    前記ゴム成分100質量部に対して、前記無溶剤型アクリル樹脂の含有量が1〜5質量部であり、
    前記無溶剤型アクリル樹脂のガラス転移点(Tg)が、0〜100℃である高性能タイヤ用トレッドゴム組成物。
  2. ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックの含有量が80〜200質量部である請求項1記載の高性能タイヤ用トレッドゴム組成物。
  3. 前記無溶剤型アクリル樹脂の酸価が、15〜250mgKOH/gである請求項1又は2記載の高性能タイヤ用トレッドゴム組成物。
  4. 前記無溶剤型アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)が、2000〜20000である請求項1〜3のいずれかに記載の高性能タイヤ用トレッドゴム組成物。
  5. 前記無溶剤型アクリル樹脂が、無溶剤型スチレンアクリル樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載の高性能タイヤ用トレッドゴム組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の高性能タイヤ用トレッドゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する高性能タイヤ。
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