以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
[スナップリング組付装置の全体構成]
図1は、本実施形態に係るスナップリング組付装置1(以下、単に「組付装置1」ともいう)を示している。なお、以下の説明において、組付装置1の「正面側」とは、組付装置1を用いて組付作業を行う作業者が位置する側を意味し、その反対側を組付装置1の「背面側」という。
本実施形態において、組付装置1は、図2に示すような自動変速機のブレーキ205に用いられるピストン(ブレーキピストン)210に、スナップリング230を皿ばね220と共に組み付けるものである。ピストン210は、第1ピストン部材211と第2ピストン部材212で構成されるものであり、これらのピストン部材211,212は、組付装置1によって組み付けられるスナップリング230と皿ばね220によって一体的に連結される。ブレーキ205のより詳細な構成については、後に説明する。
ただし、組付装置1によってスナップリング230と皿ばね220が組み付けられる被組付部品は、ブレーキピストンに限られるものでなく、スナップリングと皿ばねを用いて一体的に連結される2つの部材からなるものであれば、種々の被組付部品に組付装置1を適用可能である。
図1に示すように、組付装置1は、架台2、駆動機構11、及び昇降ヘッド40を備えており、後に詳述するように、駆動機構11によって昇降ヘッド40を下降させる動作によって、スナップリング230及び皿ばね220(図2等参照)の組み付けが行われる。
架台2は、組付装置1の設置面99上に載置される土台部3と、土台部3から上方に延びる立ち上がり部4と、立ち上がり部4の上端部に固定された天板部5と、上下方向において土台部3と天板部5との間に配置された中間プレート部6とを備えている。中間プレート部6は、上下方向に延びる複数の支柱7を介して天板部5に吊り下げ支持されている。
土台部3の上面には支持台30が設けられており、支持台30には、被組付部品であるピストン210(図2参照)を収容する変速機ケース200が載置される。
土台部3には、上下方向に延びる可動ロッド34を有する芯出し機構32が取り付けられている。芯出し機構32は、例えばエアシリンダで構成されており、可動ロッド34を上下方向にスライド駆動可能となっている。芯出し機構32の停止時において、可動ロッド34の上端は、支持台30の上面よりも下方に配置され、芯出し機構32が作動すると、可動ロッド34が支持台30を貫通して上方へ軸方向移動する。このようにして支持台30の上方に配置された可動ロッド34の上端部は、後述のガイド径調整機構90の芯出しに用いられる。
土台部3の正面側には、組付装置1の動作を開始するための操作部36が設けられている。立ち上がり部4の背面側には、動力回路と制御回路が設けられた制御盤10が配設されている。架台2には、組付装置1の動作中における所定エリアへの作業者等の侵入を検知するエリアセンサ38が取り付けられている。エリアセンサ38は、例えば天板部5に取り付けられた投光部38aと、例えば土台部3に取り付けられた受光部38bとを備えている。また、架台2には、種々の操作や上方の入力を行うための操作盤(図示せず)が更に取り付けられてもよい。
駆動機構11は、駆動源としてのモータ12と、上下方向に延びる昇降ロッド16と、モータ12から出力された動力を昇降ロッド16に伝達する動力伝達機構14とを備えている。モータ12と駆動機構11は、例えば天板部5に支持されており、昇降ロッド16の上端側は、例えば、天板部5に支持されたシリンダ18に軸方向移動可能に収容されている。
動力伝達機構14は、モータ12の回転運動を上下方向に沿った並進運動に変換して、昇降ロッド16に動力を伝達するように構成されている。これにより、昇降ロッド16は、モータ12の作動時に軸方向に移動する。昇降ロッド16の移動方向は、モータ12の回転方向に応じて切り換えられる。また、動力伝達機構14は、モータ12から入力された回転数を減速させ、これによってトルクが増大された回転運動を並進運動に変換するように構成されている。これにより、昇降ロッド16の下降時に大きな加圧力が得られる。
昇降ロッド16は、中間プレート部6を貫通しており、中間プレート部6よりも下方に配置された昇降ヘッド40に、昇降ロッド16の下端が固定されている。これにより、昇降ヘッド40は、モータ12の作動によって昇降ロッド16と共に軸方向に移動する。
昇降ヘッド40には、支持プレート20が固定されており、支持プレート20には、上下方向に延びる複数のガイドロッド22が固定されている。ガイドロッド22は、支持プレート20から上方に延びて、中間プレート部6と、該中間プレート部6に設けられたボス部24とを上下方向に貫通している。ガイドロッド22の上端にはストッパ23が設けられており、該ストッパ23がボス部24の上端に係合することで、ガイドロッド22の抜け止めが果たされる。昇降ヘッド40が軸方向移動を行うときは、複数のガイドロッド22がボス部24に案内されながら軸方向に移動することで、昇降ヘッド40の傾きが抑制される。
[自動変速機のブレーキ]
昇降ヘッド40の構成及び動作の説明を行う前に、上述した自動変速機のブレーキ205の構成について説明する。
図2に示すように、ブレーキ205は、変速機ケース200内において変速機構の軸心上に配置された被制動回転部材(図示せず)に係合された摩擦板261と、変速機ケース200に係合された摩擦板262とを備え、これらの摩擦板261,262は軸方向に交互に配置されている。
ブレーキ205は、締結時の応答性向上のためのクラッチクリアランス調整機能を有するタンデムピストン式のものであり、締結用ピストン214とクリアランス調整用ピストン210とを備えている。クリアランス調整用ピストン210は、変速機ケース200に設けられたピストンシリンダ200c内に軸方向に移動可能に嵌合されており、締結用ピストン214は、クリアランス調整用ピストン210に対して軸方向移動可能に嵌合されている。これにより、ピストンシリンダ200c内において、クリアランス調整用ピストン210の背部(図2の右側)にクリアランス調整用の油圧室250が形成され、締結用ピストン214の背部(図2の右側)に締結用の油圧室252が形成されている。
クリアランス調整用ピストン210は、第1ピストン部材211と第2ピストン部材212とで構成されている。クリアランス調整用の油圧室250は、第1ピストン部材211とピストンシリンダ203cとの間に形成されている。
第1ピストン部材211は、軸方向の一方側(図2の右側)からピストンシリンダ200cに位置決めされる第1被位置決め部211aを備えている。第1ピストン部材211には、第1被位置決め部211aから軸方向の他方側(図2の左側)に間隔を空けて配置された環状のストッパ240が例えば溶接により固定されている。第1ピストン部材211の外周部と内周部にはそれぞれシール部材201,203が取り付けられており、これらのシール部材201,203によって、クリアランス調整用の油圧室250の油密性が確保されている。
第2ピストン部材212は、第1被位置決め部211aの軸方向他方側に重ねられることで該第1被位置決め部211aを介してピストンシリンダ200cに位置決めされる第2被位置決め部212aを備えている。第2被位置決め部212aは、第2ピストン部材212の内周端部に設けられている。
第2ピストン部材212の外周部には、径方向外側に突出するばね受け部212bが一体に設けられている。ばね受け部212bは、周方向に間隔を空けて複数設けられている。ばね受け部212bは、変速機ケース200側に取り付けられたばね受け部材272に対して軸方向一方側(図2の右側)に対向配置されており、これらのばね受け部212bとばね受け部材272との間に、軸方向に伸縮可能なリターンスプリング270が介装されている。
また、第2ピストン部材212の外周部にはシール部材202が取り付けられており、該シール部材202と、第1ピストン部材211の外周部のシール部材202とによって、締結用の油圧室252に連通する油路部254の油密性が確保されている。
クリアランス調整用ピストン210の外周部には、軸方向に並ぶ2つのシール部材201,202が取り付けられている。これらのシール部材201,202は、第1及び第2ピストン部材211,212に分割して設けられているため、変速機ケース200に第1ピストン部材211をセットするとき、及びそのセットが完了したとき、その外周部のシール部材201を軸方向から視認することができ、第2ピストン部材212のセット時及びセット完了後にも外周部のシール部材202を軸方向から視認することができる。なお、第2ピストン部材212において、ばね受け部212bが設けられた周方向位置では、シール部材202がばね受け部212bの奥側に隠れて見えないが、その他の周方向位置においてシール部材202の状態を視認できる。
第1ピストン部材211と第2ピストン部材212は、皿ばね220及びスナップリング230を介して一体に連結されている。スナップリング230は、第1ピストン部材211に固定されたストッパ240の軸方向一方側(図2の右側)に係合されている。スナップリング230は、自然状態での内径がストッパ240の外径よりも小さく、自然状態に比べて拡径された状態で装着されている。
皿ばね220は、軸方向に圧縮変形された状態で、第2ピストン部材212の第2被位置決め部212aとスナップリング230との間に介装されている。これにより、皿ばね220の弾性力によって第2被位置決め部212aが第1被位置決め部211aに常時押し付けられることで、第1ピストン部材211と第2ピストン部材212が一体化されている。
以上のように構成されたブレーキ205が締結されるときは、まずクリアランス調整用の油圧室250に油圧が供給されることで、クリアランス調整用ピストン210が締結用ピストン214と共に、両ピストン210,214の位置関係を保持しながら、リターンスプリング270の付勢力に抗してストッパ274に当接するまで図の左側にストロークする。これにより、締結用ピストン214は、摩擦板261,262を押圧することなく該摩擦板261,262に接した状態もしくはほぼ接した状態、即ち、クラッチクリアランスが小さな締結準備状態(小クリアランス状態)となる。
そして、この締結準備状態で締結用の油圧室252に油圧が供給されることで、締結用ピストン214は、既に締結のためのストロークがほぼ終了しているから、図の左側へ僅かにストロークするだけで、油圧の供給とほぼ同時に摩擦板261,262を押圧する。これにより、摩擦板261,262が応答性良く締結されることになる。
なお、図2では、便宜上、最も右側の摩擦板262と締結用ピストン214との間に、摩擦板261,262間のクリアランスが集中するように図示されているが、実際には、隣接する摩擦板261,262間にクリアランスは分散される。
以上のようなブレーキ205の構成により、ブレーキ205の解放状態では大クリアランス状態となることで、潤滑油の粘性による回転抵抗が抑制され、締結時には、小クリアランス状態で締結用ピストン214が作動することで、緻密で応答性の良い締結制御が可能となる。
組付装置1を用いてクリアランス調整用ピストン210へのスナップリング230及び皿ばね220の組み付けを行うときは、図3に示すように、先ず、組付装置1の支持台30上に変速機ケース200を載置する。変速機ケース200の載置は、ピストンシリンダ200cが上方に開放するような姿勢、具体的には、トルクコンバータ(図示せず)との合わせ面200aが支持台30に対向し、反対側の開口端部200bが上方に配置されるような姿勢で行われる。
続いて、支持台30上に載置された変速機ケース200内に、予めストッパ240が固定された第1ピストン部材211、第2ピストン部材212、及び皿ばね220をこの順でセットする。第1ピストン部材211、第2ピストン部材212、及び皿ばね220は、上方から変速機ケース200内に挿入されて、軸方向に差し込まれることで変速機ケース200のピストンシリンダ200cにセットされる。
第1ピストン部材211をセットするときは、その外周部及び内周部に取り付けられたシール部材201,203(図2参照)のまくれやねじれ、損傷等が生じないように、軸方向上側からの目視によってシール部材201,203の状態を確認しながら第1ピストン部材211をピストンシリンダ200cにセットする。このセットが完了したときも、軸方向上側からの目視によってシール部材201,203の状態を確認する。シール部材201,203にめくれ等が生じたときは、第1ピストン部材211をセットし直す。
第1ピストン部材211上に第2ピストン部材212をセットするとき及びセット完了時も、その外周部に取り付けられたシール部材202(図2参照)の状態を軸方向上側からの目視によって確認する。シール部材202にめくれ等が生じたときは、第2ピストン部材212をセットし直す。
皿ばね220は、内周部に比べて外周部が下方に配置される姿勢で、第2ピストン部材212の第2被位置決め部212a(図2参照)上に仮置きされる。皿ばね220の内径は、ストッパ240の外径よりも大きいため、皿ばね220は、ストッパ240の径方向外側を通ることでストッパ240に干渉することなく仮置きされる。
以上のように変速機ケース200内にセットされた第1ピストン部材211、第2ピストン部材212、皿ばね220、及び第1ピストン部材211に固定されたストッパ240の軸心は、組付装置1の後述するホルダ70(図4参照)に保持されるスナップリング230の軸心に一致するように配置される。この状態で組付装置1を作動させることで、第1ピストン部材211及び第2ピストン部材212に対するスナップリング230及び皿ばね220の組み付けが行われる。スナップリング230及び皿ばね220の具体的な組み付け動作については後に説明する。
[昇降ヘッドの構成]
続いて、図4〜図12を参照しながら、組付装置1の昇降ヘッド40の構成について説明する。
図4に示すように、昇降ヘッド40は、昇降ロッド16に固定されたベース部42を備えている。ベース部42は、昇降ロッド16の軸心L1上に配置された筒状部43と、筒状部43の上端開口を塞ぐカバー部46とを備えている。
筒状部43の下端近傍部には、径方向外側に突出した外側フランジ部44が一体に設けられている。外側フランジ部44には、該外側フランジ部44を上下方向に貫通するボルト挿通穴44aが周方向に間隔を空けて複数設けられ、ボルト挿通穴44aが設けられた周方向位置において、外側フランジ部44の上面にはナット58が溶接されている。各ナット58には、上側からボルト59がねじ込まれ、該ボルト59の下端側は、ボルト挿通穴44aを通って外側フランジ部44の下側へ出没可能とされている。
筒状部43の下端部には、径方向内側に突出した内側フランジ部45が一体に設けられている。内側フランジ部45は、外側フランジ部44よりも下側に配置されている。内側フランジ部45には、該内側フランジ部45を上下方向に貫通するねじ穴45aが周方向に間隔を空けて複数設けられている。
カバー部46は、例えば円板状とされており、カバー部46の中央部には貫通穴47が設けられている。カバー部46の上面には、昇降ロッド16の下端部と、支持プレート20の下面とが接合されている。昇降ロッド16は、例えば筒状部材で構成されており、昇降ロッド16の下端に設けられた内向きのフランジ部16aが、カバー部46の貫通穴47の周縁部に接合されている。
また、昇降ヘッド40は、上記のように変速機ケース200内にセットされた皿ばね220を下側に向かって軸方向に押圧する第1押圧部55と、後述するホルダ70に保持されたスナップリング230を下側に向かって軸方向に押圧する第2押圧部65とを備えている。
第1押圧部55は第1押圧部材50に設けられ、第2押圧部65は第2押圧部材60に設けられている。第1押圧部材50は、ベース部42の外側フランジ部44の下方に対向配置されるフランジ部51と、該フランジ部51の内縁部から下方に延びる第1円筒部52とを備えている。第2押圧部材60は、ベース部42の内側フランジ部45の下面に重ねて配置されるフランジ部61と、該フランジ部61の外縁部から下方に延びる第2円筒部62とを備えている。
第2押圧部材60のフランジ部61には、複数のボルト挿通穴63が周方向に間隔を空けて設けられている。フランジ部61は、ボルト挿通穴63に下側から差し込まれて内側フランジ部45のねじ穴45aにねじ込まれるボルト69によって、内側フランジ部45に締結される。これにより、第2押圧部材60はベース部42に一体に連結されている。
第2押圧部65は、第2押圧部材60の第2円筒部62における環状の下端面で構成されている。第2押圧部材60には、第2円筒部62を厚み方向に貫通する複数のねじ穴64が周方向に間隔を空けて設けられている。
第1押圧部55は、第1押圧部材50の第1円筒部52における環状の下端面で構成されている。第1円筒部52における径方向外側の下端コーナ部には切欠部53が設けられており、これにより、第1円筒部52の下端部が小径化されている。
第1円筒部52は、第2円筒部62の外側に嵌合されており、第1円筒部52の内周面に第2円筒部62の外周面が当接している。第1円筒部52には、該第1円筒部52を厚み方向に貫通する複数のボルト挿通穴54が周方向に間隔を空けて設けられている。該ボルト挿通穴54は、上下方向に延びる長穴で構成されている。ボルト挿通穴54には、径方向外側からボルト57が差し込まれ、該ボルト57の先端部が第2円筒部62のねじ穴64にねじ込まれることで、第1円筒部52が第2円筒部62に締結される。これにより、第1押圧部材50が第2押圧部材60を介してベース部42に一体に連結される。
上記のようにボルト挿通穴54が長穴で構成されていることにより、第1押圧部材50は、ベース部42及び第2押圧部材60に対して軸方向に位置調整可能とされている。ベース部42及び第2押圧部材60に対する第1押圧部材50の位置決めは、ベース部42のナット58にねじ込まれて外側フランジ部44の下面から下側に突出したボルト59の下端部に第1押圧部材50のフランジ部51の上面を押し当てることで行う。したがって、ナット58に対してボルト59を螺進又は螺退させて外側フランジ部44から下方へのボルト59の突出量を調整することで、ベース部42及び第2押圧部材60に対する第1押圧部材50の軸方向位置を調整することができる。
第1押圧部55は、第2押圧部65よりも下側に配置されている。上記のように第2押圧部材60の軸方向位置が調整されることで、第1押圧部55と第2押圧部65は、互いに対する軸方向の相対位置が調整可能とされている。したがって、第1押圧部55から第2押圧部65までの軸方向距離を所定距離に精度よく調整できる。また、第1円筒部52や第2円筒部62の下端が摩耗することによって、第1押圧部55や第2押圧部65の軸方向位置が上方にずれた場合に、軸方向における第1押圧部55と第2押圧部65との間の相対位置を適宜調整できる。
さらに、第1押圧部55又は第2押圧部65の一方に過度の摩耗や損傷が生じた場合は、第1押圧部55と第2押圧部65が別部材50,60に設けられていることにより、第1押圧部材50又は第2押圧部材60の一方のみを新品に交換すればよい。
さらに、昇降ヘッド40は、スナップリング230の内周部に当接するガイド部材72を有するホルダ70と、スナップリング230の径方向におけるガイド部材72の位置を調整するガイド径調整機構90と、ホルダ70及びガイド径調整機構90を昇降ロッド16に連結させる連結機構80とを備えている。
連結機構80は、ベース部42のカバー部46の下方に間隔を空けて対向配置された対向プレート84と、対向プレート84から上方に延びる連結ロッド82とを備えている。対向プレート84は、例えば円形のプレートであり、ベース部42の筒状部43内に収容されている。連結ロッド82は、昇降ロッド16の軸心L1上に配置されており、カバー部46の貫通穴47に挿通されてカバー部46を上下方向に貫通している。連結ロッド82の上端は、昇降ロッド16の内部に配置されている。連結ロッド82の上端には、昇降ロッド16のフランジ部16aに上側から係合するフランジ83が設けられており、この係合によって、連結ロッド82の上端部が昇降ロッド16の下端部に連結されている。
連結ロッド82は、その上端のフランジ83と昇降ロッド16のフランジ部16aとの係合によって昇降ロッド16から下方への抜け止めが果たされつつ、昇降ロッド16に対する上方への相対移動が可能となっている。昇降ロッド16に対する連結ロッド82の軸方向への相対移動に応じて、カバー部46と対向プレート84との間の上下方向距離は変化する。
連結ロッド82の外側にはコイルスプリング86が嵌合されている。コイルスプリング86は、対向プレート84の上面からカバー部46の下面にかけて上下方向に沿って配置されている。コイルスプリング86は、カバー部46と対向プレート84との間の上下方向距離に応じて軸方向に伸縮可能とされている。
連結機構80の対向プレート84の下側には、ガイド径調整機構90を介してホルダ70が連結されている。
ガイド径調整機構90は、例えば、対向プレート84の下面に固定されたエアシリンダ91を備えている。エアシリンダ91は、上下方向にスライド移動可能なピストン92と、該ピストン92と一体に上下方向に移動するカム94とを備えている。ピストン92及びカム94は、昇降ロッド16の軸心L1上に配置されている。カム94は、ピストン92に一体に設けられているが、別体のカム94がピストン92に固定されてもよい。エアシリンダ91の停止時において、ピストン92及びカム94は所定の上下方向範囲の最上端に位置しており、エアシリンダ91の作動によって、ピストン92及びカム94は下方へ軸方向移動する。
また、ガイド径調整機構90は、径方向にスライド移動可能な複数の可動部材96を備えている。可動部材96は、周方向に間隔を空けて例えば3つ設けられている(図5及び図6参照)。各可動部材96は、その径方向内側端部においてカム94に係合されており、カム94の上下動に応じて可動部材96が径方向にスライド移動するようになっている。カム94がその所定上下方向範囲の最上端に位置するとき、可動部材96は、その所定径方向範囲の最も内側に位置し(図4及び図5参照)、カム94がその所定上下方向範囲の最下端に位置するとき、可動部材96は、その所定径方向範囲の最も外側に位置する(図6及び図7参照)。
図4及び図5に示すように、ホルダ70のガイド部材72は、周方向に間隔を空けて複数設けられている。ガイド部材72は、ガイド径調整機構90の可動部材96と同じ個数設けられており、各ガイド部材72は、対応する可動部材96に固定されている。これにより、ガイド部材72は、可動部材96と共に径方向に移動可能となっている。ガイド部材72は、昇降ロッド16の軸心L1から径方向外側に延びるように設けられている。ガイド部材72は、第2押圧部材60の第2円筒部62の内側に収容されている。
ガイド部材72の外周部には、下側に突出した突出部73が設けられている。組付装置1の初期状態(作動前の状態)において、突出部73は、第1円筒部52及び第2円筒部62の下端よりも下方へ突出して配置されている。
突出部73の径方向外側の下端コーナ部には段状の切り欠きが設けられており、これにより、図5及び図9に示すように、ガイド部材72の外周面は、第1外周面部72aと、第1外周面部72aの下側かつ径方向内側に配置される第2外周面部72bと、第1外周面部72aの下端と第2外周面部72bの上端とを繋ぐ庇面部72cとを備えている。第1外周面部72a及び第2外周面部72bの各径方向位置は、軸方向の全長に亘って均一とされている。庇面部72cは、水平方向に沿って配置されている。また、組付装置1の初期状態(作動前の状態)において、庇面部72cは、上記の第2押圧部65よりも下側に配置されている。
図4及び図5に示すように、各突出部73にはボールプランジャ75が取り付けられている。ボールプランジャ75の外周面にはねじが切られており、ボールプランジャ75は、突出部73の径方向内側の面に固定されたナット74にねじ込まれることで突出部73に取り付けられている。ボールプランジャ75は、ボール76とスプリング77を備えている。スプリング77は、径方向に沿って伸縮可能に配置されており、その一端においてボールプランジャ75の内部に固定され、他端においてボール76に固定されている。
図5及び図9に示すように、スプリング77の自然状態において、ボール76は、その一部がガイド部材72の第2外周面部72bから外側に突出するように設けられている。また、ボール76は、庇面部72cの下側近傍に配設されており、第1外周面部72aよりも径方向内側に配置されている。
そして、スナップリング230は、各ガイド部材72の庇面部72cとボール76とによって上下両側から挟み込まれることで、ホルダ70に保持される。ホルダ70へのスナップリング230の装着は、ガイド部材72が最も径方向内側に位置する状態、すなわち、ガイド径調整機構90によってガイド径が最も小さくなるように調整されている状態で行われる。
具体的には、先ず、各ガイド部材72の第2外周面部72bの外側にスナップリング230を下側から差し込んで、第2外周面部72bに沿ってスナップリング230を上方へスライドさせる。スナップリング230がボール76を通過するとき、ボール76は、スプリング77による径方向外側への付勢力に抗してスナップリング230によってボールプランジャ75の内部へ押し込まれ、スナップリング230がボール76よりも上側に装着されると、ボール76の一部が第2外周面部72bよりも外側に突出して、庇面部72cとの間でスナップリング230を保持する。
スナップリング230の装着時において、ボール76の中心が設けられた周方向位置では、軸心L1から第2外周面部72bまでの径方向寸法は、自然状態のスナップリング230の内径と比べて同じか又は僅かに小さいことが好ましく、これにより、自然状態のスナップリング230を簡単かつ確実に第2外周面部72bの外側に装着できる。
また、径方向における庇面部72cの寸法は、スナップリング230の内周から外周までの径方向寸法よりも小さい。これによって、庇面部72cの下側に保持されたスナップリング230は、第1外周面部72aよりも外側に突出して配置されることになり、この突出部分を上記の第2押圧部65によって押圧することができる。
図6及び図7に示すように、上記のガイド径調整機構90の作動によって、可動部材96と共にガイド部材72が径方向外側へ移動すると、ボール76が設けられた各周方向位置における第2外周面部72bの径方向位置によって規定されるガイド径が拡大されることで、ホルダ70に保持されたスナップリング230は拡径される。
なお、各ガイド部材72の径方向内側における下端コーナ部には切欠部78が設けられており、ガイド径を拡大した状態において、切欠部78の内周面78aは、軸心L1を中心とする所定の円上に配置される。そして、この状態において、上述した芯出し機構32の可動ロッド34(図1参照)の上端部が切欠部78に嵌合され、可動ロッド34の外周面によって切欠部78の内周面78aが径方向に位置決めされることで、ホルダ70の芯出しが行うことができる。
[スナップリングの組付方法]
続いて、以上のように構成された組付装置1を用いて、ピストン210にスナップリング230を皿ばね220と共に組み付ける方法について説明する。
先ず、図1に示すように、組付装置1の支持台30上に変速機ケース200を載置する。なお、支持台30には複数の位置決めピンが設けられることが好ましく、この場合、これらの位置決めピンを、変速機ケース200に設けられた係合穴に係合させることで、変速機ケース200を簡単かつ精度よく位置決めすることができる。
続いて、準備工程として、図2を参照しながら上述したように、変速機ケース200内に、第1ピストン部材211、第2ピストン部材212、皿ばね220を、下側からこの順で軸方向に重なるようにセットする。
また、組付装置1のホルダ70に、スナップリング230を上述したように装着する。なお、スナップリング230の装着は、変速機ケース200の位置決めの前、又は、変速機ケース200内への各部品211,212,220のセットの前に行ってもよい。
以上の工程が完了した後、操作部36を操作することで、組付装置1の作動を開始させる。これによって、モータ12の回転駆動が開始され、昇降ロッド16が下方へ軸方向に移動される。
このとき、図7に示すように、昇降ヘッド40のベース部42、及び該ベース部42に固定された第1及び第2押圧部材50,60は、昇降ロッド16と一体に下降する。また、昇降ヘッド40のホルダ70は、上記のようにガイド径調整機構90及び連結機構80を介して昇降ロッド16に連結されていることにより、昇降ロッド16の下方への軸方向移動に伴って下降する。
また、昇降ロッド16及び昇降ヘッド40の下降中において、ガイド径調整機構90のエアシリンダ91が作動するように制御される。これにより、ガイド径調整機構90の可動部材96と共にホルダ70のガイド部材72が径方向外側へスライド移動し、ガイド部材72の外周部に保持されたスナップリング230が拡径される。これにより、スナップリング230の内径は、第1ピストン部材211に固定されたストッパ240の外径以上の所定値となる(図9参照)。
なお、ガイド径調整機構90によるスナップリング230の拡径は、昇降ロッド16及び昇降ヘッド40の下降が開始される前に行われてもよい。
スナップリング230の拡径が完了した後、図8に示すように、ホルダ70のガイド部材72の突出部73の下端がストッパ240の上面に当接し、該ストッパ240によってホルダ70のこれ以上の下降が規制される。
このようにしてホルダ70及び該ホルダ70に保持されたスナップリング230の下降が停止されたとき、昇降ロッド16の下方への軸方向移動は継続される。これにより、昇降ヘッド40のベース部42は、そのカバー部46と停止状態の対向プレート84との間でコイルスプリング86を軸方向に圧縮させながら、第1押圧部材50及び第2押圧部材60と共に下方への軸方向移動を継続する。
その後、図9に示すように、第2押圧部材60の下端の第2押圧部65が停止状態のホルダ70に保持されたスナップリング230に当接すると、スナップリング230は、その下方の皿ばね220に向かって第2押圧部65によって軸方向に押圧される。
これにより、図10に示すように、スナップリング230は、第2押圧部65によって下方へ軸方向に押し動かされながら、ボールプランジャ75のボール76を径方向内側へ押し込み、これにより、ホルダ70によるスナップリング230の保持状態が解除される。
その後、スナップリング230は、第2押圧部65によってボール76よりも下側へ押し動かされて、ガイド部材72の第2外周面部72bに沿って更に下方へ軸方向移動する。このスナップリング230の軸方向移動は、自然状態の皿ばね220と軸方向にオーバラップする所定位置に向かって行われる。
この軸方向移動によって第2外周面部72bの下端を通過したスナップリング230は、図10に示すように、ストッパ240の外周面に沿って下方への軸方向移動を継続する。なお、このとき、ストッパ240の外縁部は、第2外周面部72bと比べて同じ径方向位置か又は僅かに径方向内側に位置しており、これにより、スナップリング230の下方への移動がストッパ240によって規制されることが防止される。
このように第2押圧部65によるスナップリング230の下方への移動が行われているとき、スナップリング230が前記所定位置に到達する前、すなわちストッパ240を通過する前のタイミングで、第2押圧部65と一体的に軸方向移動している第1押圧部55が皿ばね220に当接する。これにより、第1押圧部55によって、皿ばね220は、その下方の第1ピストン部材211第1被位置決め部211a及び第2ピストン部材212の第2被位置決め部212aに向かって軸方向に押圧される。
図12に示すように、第1押圧部55によって押圧された皿ばね220は、その外周部が第2被位置決め部212aによって位置決めされていることにより、内周部が下方へ移動するように軸方向に圧縮変形される。これによって、皿ばね220とストッパ240との間の軸方向間隔が拡大され、スナップリング230を装着するための軸方向スペースが形成される。したがって、第1押圧部55によって皿ばね220が圧縮された状態で、第2押圧部65によって下方へ押し動かされるスナップリング230がストッパ240を通過したとき、スナップリング230は、その内向きの弾性力によって縮径されて、ストッパ240の下側に係合される。
このとき、第1押圧部55によって皿ばね220が圧縮変形された状態においてスナップリング230がストッパ240よりも下側へ移動できるように、第1押圧部55と第2押圧部65との間の軸方向距離は第1の所定値以下であることが好ましい。また、このとき、第2押圧部65と皿ばね220との間にスナップリング230が挟まって抜けなくなることが防止されるように、第1押圧部55と第2押圧部65との間の軸方向距離は前記第1の所定値よりも小さな第2の所定値以上であることが好ましい。
その後、第1押圧部55による皿ばね220の押圧が行われている状態で、駆動機構11(図1参照)に内蔵された荷重センサ(図示せず)によって、所定値以上の荷重が検知されると、スナップリング230の装着が完了したとみなされて、モータ12が停止され、これにより、昇降ロッド16と一体に軸方向移動していた第1押圧部55及び第2押圧部65が停止する。
また、モータ12の停止後、所定時間が経過すると、モータ12は、逆方向に回転駆動されて、昇降ロッド16が元の位置まで上昇する。これにより、昇降ロッド16と共に第1押圧部55が上方へ軸方向移動することで、皿ばね220は、その復元力により軸方向に伸長するように変形し、皿ばね220の内周部がスナップリング230の下側に係合する。したがって、図2に示すような皿ばね220とスナップリング230の組付け状態となり、このように組み付けられた皿ばね220とスナップリング230を介して第1ピストン部材211と第2ピストン部材212が一体的に連結される。
以上のように、本実施形態によれば、1つの駆動機構11によって第1押圧部55と第2押圧部65が一体的に軸方向に移動されることで、第1押圧部55によって皿ばね220を押圧しながら、第2押圧部65によってスナップリング230を押圧することができる。したがって、簡単な動作でスナップリング230と皿ばね220を組み付けることができ、これにより、組付作業の効率化を図ることができる。また、第1押圧部55と第2押圧部65の軸方向移動に1つの駆動機構11が共用されるため、組付装置1の簡素化及び小型化を図ることができる。
[組み付け状態の確認]
組付装置1によるピストン210へのスナップリング230及び皿ばね220の組み付けは変速機ケース200内で行われるため、その組み付け状態を変速機ケース200の外側から目視で確認することが難しい。
そこで、本実施形態では、スナップリング230及び皿ばね220の組み付け状態の確認に、図13の底面図及び図14の断面図に示される確認用治具100が用いられる。
確認用治具100は、円形のプレート部102と、該プレート部102の上面に例えばボルト108で固定された把手部109と、プレート部102に取り付けられた近接センサ110とを備えている。
プレート部102の中央部には例えば円形の開口部103が設けられており、これにより、プレート部102は環状に形成されている。プレート部102の外周部には、下向きに突出した一対の環状突部104,105が径方向に間隔を空けて設けられている。径方向内側の環状突部105は、径方向外側の環状突部104の下端よりも下側へ突出している。プレート部102の下面には、一対の環状突部104,105間に環状凹部106が形成されている。
近接センサ110は、プレート部102の上面に例えば溶接により固定されたナット112にねじ込まれている。近接センサ110の下端は、環状凹部106を臨むように配置されている。近接センサ110は、周方向に間隔を空けて複数、例えば3つ設けられている。
以上のように構成された確認用治具100を用いて、スナップリング230と皿ばね220の組み付け状態を確認するときは、スナップリング230と皿ばね220が組み付けられた変速機ケース200内に上側から確認用治具100を挿入して、該確認用治具100の下面の環状凹部106を、第1ピストン部材211に固定されたストッパ240(図14の二点鎖線参照)上に載置する。
このように確認用治具100がセットされたとき、スナップリング230と皿ばね220の組み付け状態が正常であれば、スナップリング230が全周に亘って環状凹部106内に収まり、全ての近接センサ110の下端がストッパ240の上面に対して所定距離以内に近接配置される。これにより、全ての近接センサ110によりストッパ240の存在が検知されることで、スナップリング230と皿ばね220が適切に組み付けられていることを確認できる。
これに対して、図15(a)に示すようにスナップリング230の装着が全周に亘って不完全である場合は、確認用治具100の外側の環状突部104が全周に亘ってスナップリング230に干渉することで、確認用治具100を正しくセットできない。そのため、いずれの近接センサ110によってもストッパ240が検知されないことにより、スナップリング230及び皿ばね220の組み付け不良を確認できる。
また、図15(b)に示すようにスナップリング230の周方向の一部がストッパ240に適切に係合されていない場合は、確認用治具100の外側の環状突部104が部分的にスナップリング230に干渉することで、確認用治具100を正しくセットできない。そのため、一部の近接センサ110がストッパ240を検知できないことにより、スナップリング230及び皿ばね220の組み付け不良を確認できる。
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、自動変速機の摩擦締結要素のピストンを構成する2つのピストン部材がスナップリングと皿ばねを用いて一体に連結される場合において、該スナップリングと皿ばねの組み付けに本発明を適用する例を説明したが、本発明は、あらゆる種類の部材間の連結に用いられるスナップリングと皿ばねの組み付けに適用可能である。
また、上述の実施形態では、自然状態から拡径されたスナップリングを、その内向きの弾性力を利用して組み付ける例を説明したが、図16に示す変形例のように、自然状態から縮径されたスナップリングを、その外向きの弾性力を利用して組み付ける場合にも本発明を適用できる。
図16に示す変形例に係るスナップリング組付装置140では、筒状の第1押圧部材150の外側に筒状の第2押圧部材160が嵌合されている。また、スナップリング194を保持するホルダ170は、ボールプランジャ175を有し径方向に移動可能な複数のガイド部材172を備えているが、これらのガイド部材172は、第2押圧部材160の外側に配置されており、径方向内側に移動されることでスナップリング194を縮径状態で保持可能とされている。
このようにホルダ170によって縮径状態のスナップリング194が保持された状態で、第1押圧部材150と第2押圧部材160が駆動機構(図示せず)によって一体に軸方向に移動されると、先ず、第2押圧部材160の下端の第2押圧部165によって、スナップリング194が軸方向下向きに押圧される。これにより、スナップリング194は、その下方に位置する自然状態の皿ばね193とオーバラップする所定位置に向かって軸方向に押し動かされる。
その後、スナップリング194が前記所定位置に到達する前のタイミングで、第1押圧部材150の下端の第1押圧部155によって、皿ばね193が軸方向下向きに押圧される。これにより、皿ばね193が軸方向に圧縮するように変形されて、スナップリング194を装着するための軸方向スペースが形成される。これにより、該軸方向スペースに到達した縮径状態のスナップリング194は、その外向きの弾性力によって拡径されて、内向きに開放した周溝191aに嵌り込む。
最後に、第1押圧部材150及び第2押圧部材160が一体に上方へ軸方向移動すると、皿ばね193の外周部がスナップリング194に係合し、第2環状部材192とスナップリング194との間に圧縮状態で介装される。このようにして組み付けられた皿ばね193の弾性力によって、第2環状部材192は常に第1環状部材191に向かって軸方向に押し付けられ、これにより、皿ばね193とスナップリング194を介して第1環状部材191と第2環状部材192とが一体に連結される。