JP6317590B2 - アゾベンゼン化合物及びこれを用いたヒートポンプシステム - Google Patents

アゾベンゼン化合物及びこれを用いたヒートポンプシステム Download PDF

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Description

本発明は、光照射によって構造変化するアゾベンゼン化合物及びこれを用いたヒートポンプシステムに関する。
従来より、アゾベンゼン化合物に所定の波長の光を照射することで、シス体からトランス体あるいはトランス体からシス体に異性化することが知られている。このようなアゾベンゼン化合物において、紫外光の照射によって固体状態のトランス体から液体状態のシス体に変化する環状アゾベンゼン誘導体が報告されている(特許文献1、非特許文献1参照)。
特開2011−256155号公報
Chemical Communications, 2011, 47, 1770-1772
上述の環状アゾベンゼン誘導体は、紫外光の照射によって固体から液体に相変化することから、相変化に伴う潜熱を利用してヒートポンプシステムの熱媒体として用いることが考えられる。ところが、液体状のシス体となった環状アゾベンゼン誘導体を固体状のトランス体に変化させるためには加熱する必要がある。すなわち、紫外光照射によって汲み上げられた熱を放出するために、外部から熱を加える必要がある。結果、低温側から高温側に有効に移動できる熱量が少なくなるため、ヒートポンプシステムの熱媒体としては好ましくない。
本発明は上記点に鑑み、加熱することなく繰り返し構造変化が可能なアゾベンゼン化合物及びこれを用いたヒートポンプシステムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載のアゾベンゼン化合物は、一般式(1)で表され、光照射によってシス−トランス異性化反応することを特徴としている。
一般式(1)において、
Y:Nである。
1〜R3(CH 2 6 CH 3 である。
4OC 4 8 である。
5 〜R 8 :Hである。
9 :OC 6 13 である。
-Br - である。
上記一般式(1)で表されるアゾベンゼン化合物は、第1の光照射トリガーとして紫外光を照射することでトランス体からシス体に異性化し、第2の光照射トリガーとして可視光を照射することでシス体からトランス体に異性化するという特性を備えている。このため、シス体の融点とトランス体の融点との間の温度範囲でトランス体とシス体の異性化を行うことで、アゾベンゼン化合物の固相から液相あるいは液相から固相への相変化を誘発することができる。
一般式(1)で表されるアゾベンゼン化合物は、固相のトランス体から液相のシス体に相変化する際に、融解潜熱による吸熱が起こり、液相のシス体から固相のトランス体に相変化する際に、相変化に伴う発熱が起こる。このため、低温環境下で固相のトランス体に紫外光を照射することで、液相のシス体に相変化させて吸熱させることができ、高温環境下で液相のシス体に可視光を照射することで、固相のトランス体に相変化させて発熱させることができる。
そして、上記一般式(1)のアゾベンゼン化合物をヒートポンプシステムの熱媒体として用い、光照射によるアゾベンゼン化合物の相変化に伴う潜熱を利用することで、圧縮機のような機器を用いて外部からエネルギーを投入することなく、低温環境から高温環境への熱の移動を行うことができる。これにより、より少ないエネルギーで熱の移動が可能となるヒートポンプシステムを提供することができる。
また、アゾベンゼン化合物は光刺激に対する応答速度が速いので、相変化に伴う吸熱と発熱が短時間で行われ、ヒートポンプシステムの熱媒体として好適に用いることができる。
本発明の実施形態に係るヒートポンプシステムの概念図である。 アゾベンゼン化合物の異性体を示す図である。 アゾベンゼン化合物のギブスの自由エネルギーを示す図である。 アゾベンゼン化合物のトランス体に紫外光を照射した際の吸光スペクトル変化を示すグラフである。 アゾベンゼン化合物のシス体に可視光を照射した際の吸光スペクトル変化を示すグラフである。 アゾベンゼン化合物の紫外光照射前の偏光顕微鏡画像を示す図である。 アゾベンゼン化合物の紫外光照射後の偏光顕微鏡画像を示す図である。 アゾベンゼン化合物の可視光照射後の偏光顕微鏡画像を示す図である。
以下、本発明のアゾベンゼン化合物をヒートポンプシステムの熱媒体として用いた実施形態について図1〜図3に基づいて説明する。
図1に示すように、ヒートポンプシステムは、循環経路10、低温側熱交換器11、高温側熱交換器12、循環ポンプ13を備えている。ヒートポンプシステムは、低温環境および高温環境のような温度勾配が存在する環境下で用いられる。
図1では、左側が低温側であり、右側が高温側となっている。循環経路10は、低温側と高温側に跨って配置されている。低温側熱交換器11は循環経路10における低温側に配置され、高温側熱交換器12は循環経路10における高温側に配置されている。
本実施形態のヒートポンプシステムは、冬季に用いられる室内暖房装置として構成されている。つまり、外気温が低くなる冬季において、低温側熱交換器11を室外(例えば0℃)に配置し、高温熱交換器12を室内(例えば25℃)に配置することで、室内暖房に用いることができる。
循環経路10には、内部に熱媒体が封入されており、熱媒体が低温側熱交換器11と高温側熱交換器12との間を循環可能となっている。本実施形態では、熱媒体としてアゾベンゼン化合物を用いている。アゾベンゼン化合物は、例えばクロロホルム等の有機溶媒に溶解させたものをマイクロカプセルに封入して用いることができる。
循環経路10には、アゾベンゼン化合物が封入されたマイクロカプセルを輸送するための輸送用流体も封入されている。輸送用流体としては、エチレングリコール等の不凍液を用いることができる。熱媒体は輸送用流体とともに循環ポンプ13によって送出され、循環経路10を循環する。
低温側熱交換器11は、少なくとも紫外光を透過可能な紫外光透過部が設けられており、内部を通過するアゾベンゼン化合物に外部から紫外光を照射可能となっている。また、高温側熱交換器12は、少なくとも可視光を透過可能な可視光透過部が設けられており、内部を通過するアゾベンゼン化合物に外部から可視光を照射可能となっている。
本実施形態で用いるアゾベンゼン化合物は、下記一般式(1)で表される。
一般式(1)において、YはNもしくはCHである。
1〜R3は、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。R4は、(OCH2CH2n(但しnは1〜3の整数)、(OCH2CH2CH2n(但しnは1〜3の整数)、R10、O−R10、NHR10、N(R10)(R11)、COOR10またはCONHR10の何れかである。R10、R11は、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。
9は、CH3(OCH2CH2nO(但しnは1〜3の整数)、CH3(OCH2CH2CH2nO(但しnは1〜3の整数)、R10、R10O、R10NH、(R10)(R11)N、R10COOまたはR10CONHの何れかである。
5〜R8は、H、F、R14、OR14またはN(R142の何れかである。R14は、H、CH3、C25、C37またはi−C37の何れかである。
-は、Cl-、Br-、I-、BF4 -、PF6 -、CH3(CH2nSO3 -(但しnは0〜2の整数)、TsO-、(YSO22-(但しY=F、CF3、C25)、(NC)2-の何れかであり、好ましくはCl-又はBr-である。
図2に示すように、アゾベンゼン化合物には、トランス体およびシス体の異性体が存在していることが知られている。そして、トランス体の方がシス体よりも50kJ/mol程度安定である。本実施形態のアゾベンゼン化合物は、第1の光照射トリガーとして紫外光(例えば波長365nm)を照射することでトランス体からシス体に異性化し、第2の光照射トリガーとして可視光(例えば波長500nm)を照射することでシス体からトランス体に異性化する。また、アゾベンゼン化合物は、光刺激に対する応答速度が速いという特性を有している。
次に、本実施形態のアゾベンゼン化合物の相変化を図3に基づいて説明する。図3の縦軸はギブスの自由エネルギーを示し、横軸は温度を示している。図3に示すように、本実施形態のアゾベンゼン化合物は、シス体の融点Tmcisがトランス体の融点Tmtransよりも低くなっている。つまり、シス体の融点Tmcisより高くトランス体の融点Tmtransより低い温度範囲では、シス体のアゾベンゼン化合物は液相となっており、トランス体のアゾベンゼン化合物は固相となっている。このため、本実施形態のアゾベンゼン化合物は、シス体の融点Tmcisとトランス体の融点Tmtransとの間の温度範囲でトランス体とシス体の異性化を行うことで、アゾベンゼン化合物の固相から液相あるいは液相から固相への相変化を誘発することができる。
本実施形態のアゾベンゼン化合物は、固相のトランス体に紫外光を照射することで、液相のシス体に相変化させることができ、液相のシス体に可視光を照射することで、固相(結晶)のトランス体に相変化させることができる。液相のシス体に可視光を照射することで固相(結晶)のトランス体に異性化するアゾベンゼン化合物は、これまで報告されておらず、本実施形態のアゾベンゼン化合物に特徴的な性質である。
アゾベンゼン化合物は、固相のトランス体から液相のシス体に相変化する際に、融解潜熱による吸熱が起こり、液相のシス体から固相のトランス体に相変化する際に、相変化に伴う発熱が起こる。このため、低温環境下で固相のトランス体に紫外光を照射することで、液相のシス体に相変化させて吸熱させることができ、高温環境下で液相のシス体に可視光を照射することで、固相のトランス体に相変化させて発熱させることができる。
このため、本実施形態のヒートポンプシステムは、シス体の融点Tmcisとトランス体の融点Tmtransとの間の温度範囲となる条件下で使用することで、アゾベンゼン化合物の相変化に伴う吸熱及び発熱を利用することができる。つまり、ヒートポンプシステムは、低温側熱交換器11が配置された低温側の温度がシス体の融点Tmcisより高く、高温側熱交換器12が配置された高温側の温度がトランス体の融点Tmtransより低い条件下で使用する。
このような条件下において、ヒートポンプシステムは次のように作動する。まず、低温側熱交換器11の紫外光透過部(図示せず)を介して内部のアゾベンゼン化合物に紫外光を照射することで、アゾベンゼン化合物がトランス体からシス体に変化する。このトランス体(固体)からシス体(液体)への相変化に伴う融解潜熱によって、アゾベンゼン化合物は低温環境下で吸熱する。
シス体のアゾベンゼン化合物は、循環ポンプ13によって低温側熱交換器11から高温側熱交換器12に移動する。そして、高温側熱交換器12の可視光透過部(図示せず)を介して内部のアゾベンゼン化合物に可視光を照射することで、アゾベンゼン化合物がシス体からトランス体に変化する。このシス体(液体)からトランス体(固体)への相変化に伴って、アゾベンゼン化合物は高温環境下で放熱する。このように、光照射によるアゾベンゼン化合物の相変化に伴う潜熱を利用することで、低温環境から高温環境への熱の移動を行うことができる。
以上説明した本実施形態では、低温環境下で紫外光照射を行うことで吸熱し、高温環境下で可視光照射を行うことで発熱する特性を備えた上記一般式(1)で表されるアゾベンゼン化合物をヒートポンプシステムの熱媒体として用いることで、圧縮機のような機器を用いて外部からエネルギーを投入することなく、吸熱及び発熱を行うことができる。これにより、より少ないエネルギーで熱の移動が可能となる。
また、アゾベンゼン化合物は光刺激に対する応答速度が速いので、相変化に伴う吸熱と発熱が短時間で行われ、ヒートポンプシステムの熱媒体として好適に用いることができる。
また、本実施形態のアゾベンゼン化合物はイオン液体であるため、揮発しにくく高温で安定である。また、マーデルングエネルギーの効果により、類似構造を有する他の非イオン性化合物に比べて潜熱が大きくなることが期待できる。
ここで、「融点」とは、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry : DSC)において試料が固体状態から液体状態に変化する際に観測される吸熱ピークについて、ベースラインと、ピークの立ち上がり側の変曲点に引いた接線の交点の温度のことをいう。
また、ある温度が「融点より高い」「融点より低い」とは、その温度が、それぞれ融点を含まない高温側、融点を含まない低温側に存在していることをいう。
次に、本発明の実施例について説明する。本実施例では、上記一般式(1)のR1〜R3をそれぞれC715とし、R448とし、R5〜R8をそれぞれHとし、R9613とし、X-をBr-とした下記一般式(2)で示されるN,N,N−トリヘプチル−[4−(4’−ヘキシルオキシフェニルジアゼニル)フェノキシブチル]アンモニウム ブロマイド(以下、「C6AzoC4N(C7153 +Br-」という。)について説明する。
ここで、一般式(2)で示されるアゾベンゼン化合物C6AzoC4N(C7153 +Br-の製造方法について説明する。
上記合成スキームで示されるように、C6AzoC4N(C7153 +Br-は、4−(ヘキロキシ)アニリン、4−((4−ヘキロキシフェニル)ジアゼニル)フェノール(C6AzoC4OH)、C6AzoC4Brといった中間生成物を経て合成される。
まず、4−(ヘキロキシ)アニリンの合成について説明する。
500mlナスフラスコに炭酸カリウム(M.W.138.20)71.87グラム(520mmol)、4−アセトアミドフェノール(M.W.151.16)30.23グラム(200mmol),1−ブロモヘキサン(M.W.165.07)42.92グラム(260mmol)を加えた。そこに、アセトン300mlを加え、18時間還流した。反応懸濁液を室温に戻した後、水600mlに滴下した。析出した無色沈殿を濾別し、真空乾燥した。その後、ヘキサン900mlに懸濁させ、60分間撹拌し、ヘキサンに溶解する余剰の1−ブロモヘキサンを除去し、減圧濾過にて回収した。
得られた固体を500mlナスフラスコに入れ、メタノール:12N塩酸=6:4(v/v)の混合溶媒300mlを加え、還流を行った。18時間後、反応溶液を600mlの水に滴下し、NaOH水溶液を用いてpHを6〜7に調節した。現れた茶色オイルを酢酸エチルで抽出した(100ml×6回)。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥後、酢酸エチルを減圧留去し、茶色固体35.28グラム(182.5mmol)を得た。
得られた茶色固体の1H−NMRスペクトル測定結果からすべてのプロトンが帰属され、薄茶色固体のFT−IRスペクトル測定結果から前駆体のC=O伸縮振動の消失が確認された。これにより、4−(ヘキロキシ)アニリンの合成を確認した。
次に、4−((4−ヘキロキシフェニル)ジアゼニル)フェノール(C6AzoC4OH)の合成(ジアゾカップリング)について説明する。
1000mlビーカーに4−ヘキロキシアニリン(M.W.193.29)8.23グラム(42.5mmol)と水100ml及びアセトン200mlを加えた。そこに、12N塩酸11.0ml(132mmol)を加え、この溶液をチャンバーにて5℃以下に冷却した(系は不均一)。これに、亜硝酸ナトリウム(M.W.69.01)3.81グラム(55.2mmol)を水15mlに溶かした溶液(5℃以下)を、氷浴中で撹拌しながら滴下した(系は均一)。また、水酸化ナトリウム(M.W.39.9)5.27グラム(132mmol)とフェノール(M.W.94.11)5.20グラム(55.3mmol)を水50mlに溶かした溶液(5℃以下)を先の溶液に加え(滴下後のpH8〜9)、氷浴下で4時間撹拌した。室温で一晩撹拌した後、6N塩酸を加え、pHを4〜5に調節した。アセトンを減圧留去した後、生じた沈殿を濾別し、エタノール:水=2:1(v/v)混合溶媒390mlで再結晶した。得られた結晶を濾別した後、減圧乾燥し、暗赤色結晶9.93グラム(33.3mmol)を得た。
得られた暗赤色結晶の1H−NMRスペクトル測定結果からすべてのプロトンが帰属され、暗赤色結晶のFT−IRスペクトル測定結果からOH結合、−N=N−結合の生成が示唆された。これにより、4−((4−ヘキロキシフェニル)ジアゼニル)フェノールの合成を確認した。
次に、C6AzoC4Brの合成について説明する。
500mlナスフラスコに炭酸カリウム(M.W.138.21)13.81グラム(99.9mmol)とC6AzoOH(M.W.298.38)9.93グラム(33.3mmol)、1,6−ジブロモブタン(M.W.215.91)34.59グラム(160.2mmol)を加えた。そこにアセトン300mlを加え、12時間還流を行った。反応懸濁液を室温に戻した後、溶媒を減圧留去し、水300mlを加えた。水に不溶な成分をろ過により回収し、酢酸エチル:クロロホルム=2:1(v/v)150mlで再結晶した。析出した結晶を減圧濾過により回収し、淡黄色結晶8.04グラム(18.6mmol)を得た。
得られた淡黄色結晶の1H−NMRスペクトル測定結果からすべてのプロトンが帰属され、淡黄色結晶のFT−IRスペクトル測定結果からOH結合の消失が確認された。これにより、C6AzoC4Brの合成を確認した。
次に、C6AzoC4N(C7153 +Br-の合成について説明する。
50mlナスフラスコにC6AzoC4Br(M.W.433.39)1.50グラム(3.46mmol,1eq)とトリヘプチルアミン(N(C7153)(M.W.311.59)3.23グラム(10.37mmol,3eq)を加えた。そこに、アセトニトリル50mlを加え、アルゴン雰囲気下で72時間還流した(加熱時の系は均一)。反応溶液を室温に戻した後、溶媒を留去すると暗赤色オイルが得られた。次いで、このオイルをヘキサン200mlに滴下すると、暗赤色粘性固体が析出した。上澄みのヘキサンを取り除き、そこに少量のトルエンを加えて、再びヘキサン200mlに滴下した。黄色粉末が得られたため、減圧濾過にて回収した。減圧乾燥した後、再び少量のトルエンに溶解させ、ヘキサン200mlに滴下した。得られた粉末を減圧濾過にて回収して乾燥し、黄色粉末1.76グラム(2.36mmol)を得た。
得られた黄色粉末の1H−NMRスペクトル測定結果からすべてのプロトンが帰属された。また、黄色粉末のMALDI−TOF−MSにより分子イオンピークが確認された。そして黄色固体の元素分析の結果は、C6AzoC4N(C7153 +Br-の組成と一致した。これにより、C6AzoC4N(C7153 +Br-が合成されたと判断した。
次に、本実施例のC6AzoC4N(C7153 +Br-(以下、本実施例において「アゾベンゼン化合物」と略す)のトランス体に紫外光を照射した際の吸光スペクトル変化と、本実施例のアゾベンゼン化合物のシス体に可視光を照射した際の吸光スペクトル変化を測定した結果を、図4、図5に基づいて説明する。吸光スペクトルは、光路長1cmのセルを用いて25μMメタノール溶液中25℃で測定した。
図4は、アゾベンゼン化合物のトランス体に365nmの紫外光を40秒間照射した場合の吸光度の変化を5秒毎に記録した結果を示している。図4の上段はアゾベンゼン化合物のトランス体に紫外光を照射した場合の吸光スペクトルの変化を示し、図4の下段は356nmでの吸光度の変化を示している。
図4の上段に示すように、紫外光を照射する前の吸光スペクトルでは、アゾベンゼン化合物のトランス体に由来する356nm付近で吸光度の大きなピークが出現している。そして、紫外光を照射してから40秒経過後の吸光スペクトルでは、356nm付近の吸光度が減少し、アゾベンゼン化合物のシス体に由来する448nm付近の吸光度が増大している。この吸光スペクトルの変化から、本実施例のアゾベンゼン化合物のトランス体に紫外光を照射することで、シス体に変化することが明らかである。
また、図4の下段に示すように、アゾベンゼン化合物のトランス体に由来する356nmの吸光度は、紫外光(365nm)の照射を開始してから20秒程度が経過するまで急激に低下し、その後は緩やかに低下している。
図5は、アゾベンゼン化合物のシス体に480nmの可視光を120秒間照射した場合の吸光度の変化を、30秒経過までは5秒毎、30秒から60秒経過までは10秒毎、60秒経過後は20秒毎に記録した結果を示している。図5の上段はアゾベンゼン化合物のシス体に可視光を照射した場合の吸光スペクトルの変化を示し、図5の下段は356nmでの吸光度の変化を示している。
図5の上段に示すように、可視光を照射する前の吸光スペクトルでは、アゾベンゼン化合物のシス体に由来する448nm付近で吸光度の大きなピークが出現している。そして、可視光を照射してから120秒経過後の吸光スペクトルでは、448nm付近の吸光度が減少し、アゾベンゼン化合物のトランス体に由来する356nm付近の吸光度が増大している。この吸光スペクトルの変化から、本実施例のアゾベンゼン化合物のシス体に可視光を照射することで、トランス体に変化することが明らかである。
また、図5の下段に示すように、アゾベンゼン化合物のトランス体に由来する356nmの吸光度は、可視光(480nm)の照射を開始してから60秒程度が経過するまで急激に増大し、その後は緩やかに増大している。
次に、本実施例のアゾベンゼン化合物を偏光顕微鏡(POM)のクロスニコル条件で観察した結果を図6〜図8に基づいて説明する。図6に示すアゾベンゼン化合物のトランス体に紫外光を照射する前のPOM画像では、アゾベンゼン化合物が結晶状態となっていることが示されている。また、図7に示すアゾベンゼン化合物のトランス体に紫外光を照射した後のPOM画像では、中央部分に暗視野が観測され、結晶状態のアゾベンゼン化合物において紫外光が照射された部位が液体状態となったことが示されている。また、図8に示すアゾベンゼン化合物のシス体に可視光を照射した後のPOM画像では、図7で暗視野として観測された部位が、可視光を照射することによって再度結晶化したことが確認できる。
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。
例えば、上記実施形態では、本発明のアゾベンゼン化合物をヒートポンプシステムの熱媒体として用いた例について説明したが、アゾベンゼン化合物をヒートポンプシステムの熱媒体以外の用途に用いてもよい。
また、上記実施形態では、アゾベンゼン化合物を熱媒体として用いたヒートポンプシステムを室内暖房に用いた例について説明したが、これに限定されることなく、低温側と高温側とが存在する環境下において、低温側で吸熱して高温側で放熱する構成であれば、アゾベンゼン化合物を熱媒体として用いたヒートポンプシステムを他の用途にも用いることができる。
また、上記実施形態では、アゾベンゼン化合物をマイクロカプセルに封入して使用した例について説明したが、これに限らず、異なる態様でアゾベンゼン化合物を使用してもよい。
10 循環経路
11 低温側熱交換器
12 高温側熱交換器
13 循環ポンプ

Claims (6)

  1. 一般式(1)で表され、光照射によってシス−トランス異性化反応することを特徴とするアゾベンゼン化合物。
    一般式(1)において、
    Y:Nである。
    1〜R3(CH 2 6 CH 3 である。
    4OC 4 8 である。
    5 〜R 8 :Hである。
    9OC 6 13 である。
    -Br - である。
  2. トランス体に紫外光を照射することでシス体に変化し、シス体に可視光を照射することでトランス体に変化することを特徴とする請求項1に記載のアゾベンゼン化合物。
  3. シス体の融点がトランス体の融点よりも低くなっており、
    シス体の融点より高くトランス体の融点より低い温度範囲において、固相のトランス体への紫外光照射によって液相のシス体に変化し、シス体への可視光照射によって固相のトランス体に変化することを特徴とする請求項2に記載のアゾベンゼン化合物。
  4. 一般式(1)で表されるアゾベンゼン化合物を含有する熱媒体が内部で循環し、低温側と高温側に跨って配置される循環回路(10)と、
    前記循環回路(10)における低温側に設けられ、外部からの熱を前記熱媒体に伝える低温側熱交換器(11)と、
    前記循環回路(10)における高温側に設けられ、前記熱媒体からの熱を外部に放出する高温側熱交換器(12)とを備え、
    前記アゾベンゼン化合物は、トランス体への紫外光照射によってシス体に変化し、シス体への可視光照射によってトランス体に変化することを特徴とするヒートポンプシステム。
    一般式(1)において、
    Y:Nである。
    1〜R3(CH 2 6 CH 3 である。
    4OC 4 8 である。
    5 〜R 8 :Hである。
    9OC 6 13 である。
    -Br - である。
  5. 前記アゾベンゼン化合物は、トランス体に紫外光を照射することでシス体に変化し、シス体に可視光を照射することでトランス体に変化することを特徴とする請求項4に記載のヒートポンプシステム。
  6. 前記アゾベンゼン化合物は、シス体の融点がトランス体の融点よりも低くなっており、シス体の融点より高くトランス体の融点より低い温度範囲において、固相のトランス体への紫外光照射によって液相のシス体に変化し、シス体への可視光照射によって固相のトランス体に変化することを特徴とする請求項5に記載のヒートポンプシステム。
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