JP2014172833A - 膜タンパク質の結晶化方法及び膜タンパク質結晶化剤 - Google Patents

膜タンパク質の結晶化方法及び膜タンパク質結晶化剤 Download PDF

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Abstract

【課題】良好な結晶を得る膜タンパク質の結晶化方法を提供すること。
【解決手段】膜タンパク質、脂質、光異性化基を有する疎水性部と親水性部とを有する界面活性剤、及び、水を含む組成物を調製する調製工程、並びに、前記組成物中において膜タンパク質結晶を析出させる析出工程を含むことを特徴とする膜タンパク質の結晶化方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、膜タンパク質の結晶化方法及び膜タンパク質結晶化剤に関する。
生体高分子、特にタンパク質の立体構造の情報は、単にその機能を原子間相互作用の観点から理解するという学問的な重要性だけでなく、立体構造をもとにした薬剤の開発 (structure-based drug design)などの応用面からも注目されている(非特許文献1参照)。従来型の薬剤設計では、まず膨大な数の化合物の中からしらみつぶしに候補化合物を見つけ、次にそれらをもとにして様々な化合物を合成する。さらにその中から薬剤効果が高く毒性の低いものを見つけるという作業を繰り返し、最終的に最も良い化合物を探していくという、非常に手間と時間がかかる手法をとってきた。多くの薬剤はタンパク質の機能を制御する薬剤としての働きによって薬として作用するため、ターゲットとなるタンパク質の立体構造がわかっていれば、その構造から理論的に有用な薬を作り出せると期待される。実際に、インフルエンザの特効薬として知られているタミフルやリレンザはこの手法で開発された薬剤である(非特許文献2参照)。
このように立体構造をもとにした薬剤設計は、薬剤の開発に必要な時間と労力を大幅に軽減することができるため、注目されている。しかし、このタンパク質の立体構造は容易に決定することはできない。そのボトルネックは、タンパク質の結晶化にある。
従来は、生体高分子の中でも、単純タンパク質、特に水溶性のタンパク質を中心にして、その結晶化が検討されてきた。生体高分子の中でも、膜タンパク質は、生体膜間のエネルギー生産や情報伝達を担う、生命維持に深く関与する非常に重要なタンパク質である。
このような膜タンパク質のシグナル伝達は生命活動に必須であり、生理機能のカギであると同時に創薬の重要なターゲットである。アメリカ食品医薬品局 (FDA)によって承認されている治療薬の約60%の標的分子は、細胞膜上に存在する膜タンパク質に作用すると報告されており、その立体構造を解明することが強く求められている(非特許文献3参照)。
膜タンパク質は細胞膜に埋まる形で存在しているため、結晶化が特に難しいことが知られており、Protein Data Bankに登録された膜タンパク質の報告例は少ない。Protein Data Bankに報告された全タンパク質の報告のうち、膜タンパク質の報告は、全タンパク質の約1%程度しかない。
そのため、この膜タンパク質の構造と機能を解明するためにも、膜タンパク質の優れた結晶化法が切望されている。
本発明者らは、簡便に、再現性良く、汎用的に、低分子から生体高分子に至る種々の結晶を製造できる新規な方法などを提供することを課題にして研究を進めてきている。
その研究成果の例は、既に出願公開されている(特許文献1)。特許文献1の概要は、巨大分子の溶液に光を照射することにより、巨大分子結晶の核形成及び/又は結晶成長をさせる工程を含むことを特徴とする巨大分子結晶の製造方法である。ここで、巨大分子には、タンパク質、ポリペプチド、糖タンパク質、及び核酸が含まれ、また、照射する光は巨大分子の電子遷移を起こさせる波長範囲の光を含むことが好ましい。
また、タンパク質や有機物の結晶を得るために、それらの過飽和溶液にフェムト秒レーザー光を照射する工程を含む、結晶核の製造方法及び結晶化スクリーニング方法が開示されている(特許文献2参照)。
特開2003−306497号公報 国際公開第2004/018744号
「創薬科学入門−薬はどのようにつくられる?」、佐藤健太郎、オーム社、東京(2011) 「構造生物学-原子構造からみた生命現象の営み」、樋口芳樹、中川敦史、共立出版、東京(2010) 山下敦子、日本結晶学会編、日本結晶学会誌、52、76-80(2010)
本発明が解決しようとする課題は、膜タンパク質の良好な結晶を得る膜タンパク質の結晶化方法及び膜タンパク質結晶化剤を提供することである。
上記の課題は、以下に列挙する手段<1>及び<15>により達成された。好ましい実施形態である<2>〜<14>と共に列記する。
<1>膜タンパク質、脂質、光異性化基を有する疎水性部と親水性部とを有する界面活性剤、及び、水を含む組成物を調製する調製工程、並びに、前記組成物中において膜タンパク質結晶を析出させる析出工程を含むことを特徴とする膜タンパク質の結晶化方法、
<2>前記光異性化基が、アゾベンゼン残基又はスチルベン残基である、<1>に記載の膜タンパク質の結晶化方法、
<3>前記界面活性剤が、ジアリールアゾベンゼン残基を有する疎水性部とカチオン性の親水性部とを有する、<1>又は<2>に記載の膜タンパク質の結晶化方法、
<4>前記界面活性剤がトランス体の光異性化基を有する疎水性部を有する、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の膜タンパク質の結晶化方法、
<5>前記親水性部が第4級アンモニウム塩であり、対イオンがハロゲンである、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の膜タンパク質の結晶化方法、
<6>前記界面活性剤が式(1)及び/又は式(2)で表される、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の膜タンパク質の結晶化方法、
Figure 2014172833
(式(1)中R1は炭素数が2〜10のアルキレン基を表し、R2は炭素数が1〜5のアルキル基を表し、R3は水素原子又は炭素数が1〜10のアルキル基を表し、X-は対イオンを表す。)
Figure 2014172833
(式(2)中R1は炭素数が2〜10のアルキレン基を表し、R2は炭素数が1〜5のアルキル基を表し、R3は水素原子又は炭素数が1〜10のアルキル基を表し、X-は対イオンを表す。)
<7>前記疎水性部がトランス体の光異性化基を有する界面活性剤を共存させて、前記界面活性剤を共存させない場合に比較して、結晶サイズのより大きな膜タンパク質結晶を得る、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の膜タンパク質の結晶化方法、
<8>前記疎水性部がシス体の光異性化基を有する界面活性剤を共存させて、前記界面活性剤を共存させない組成物中からは得られない、膜タンパク質結晶を得る、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の膜タンパク質の結晶化方法、
<9>前記組成物に含まれる前記界面活性剤中の光異性化基を光異性化する光照射工程を含む、<1>〜<8>のいずれか1つに記載の膜タンパク質の結晶化方法、
<10>前記調製工程と前記析出工程との間に、前記組成物と結晶化促進剤を含有する水溶液とを接触させる工程を含む、<1>〜<9>のいずれか1つに記載の膜タンパク質の結晶化方法、
<11>脂質及び水の総重量に対する水の配合量が10〜60重量%であり、かつ、膜タンパク質の脂質に対する配合量が1〜10モル%であり、界面活性剤の脂質に対する配合量が0.1〜15モル%である、<1>〜<10>のいずれか1つに記載の膜タンパク質の結晶化方法、
<12>前記脂質がモノオレインである、<1>〜<11>のいずれか1つに記載の膜タンパク質の結晶化方法、
<13>前記膜タンパク質が、Gタンパク質結合受容体、イオンチャネル、及び、輸送タンパク質、並びに、これらの部分配列よりなる群から選ばれた、<1>〜<12>のいずれか1つに記載の膜タンパク質の結晶化方法、
<14>膜タンパク質結晶の最大直径が50μm以上である、<1>〜<13>のいずれか1つに記載の膜タンパク質の結晶化方法、
<15>ジアリールアゾベンゼン残基を有する疎水性部とカチオン性の親水性部とを有する界面活性剤からなる膜タンパク質結晶化剤、
<16>上記式(1)又は式(2)で表される界面活性剤の膜タンパク質結晶化調節剤としての使用。
本発明によれば、光異性化基を有する疎水性部及び親水性部を有する界面活性剤を共存させない場合に比較して、より大きな直径を有する膜タンパク質の結晶が得られた。この大径の膜タンパク質は、分解能が高いX線回折データを与える。よって、新規な膜タンパク質の三次元構造解析結果を通して、治療薬の開発などに有効に利用できる。
本発明によれば、ジアリールアゾベンゼン系界面活性剤を膜タンパク質の結晶化剤として有効に使用できた。
以下の本発明の説明において、数値範囲である「下限〜上限」は「下限」以上「上限」以下を意味する。すなわち下限及び上限の数値を含む数値範囲を意味する。
また、「好ましい」又は「より好ましい」旨の実施態様の組み合わせは、「さらに好ましい」又は「特に好ましい」実施態様となる。
本発明の膜タンパク質の結晶化方法は、膜タンパク質、脂質、光異性化基を有する疎水性部と親水性部とを有する界面活性剤、及び、水を含む組成物を調製する調製工程、並びに、前記組成物中において膜タンパク結晶を析出させる析出工程を含むことを特徴とする。
以下、上記の膜タンパクの結晶化方法について、詳しく説明する。
なお、説明の便宜上、「光異性化基を有する疎水性部と親水性部とを有する界面活性剤」を「光異性化界面活性剤(IPS;photo-isomerizable surfactant)」ともいう。
(膜タンパク質)
タンパク質は、水溶性のタンパク質と、非水溶性の膜タンパク質に大別される。
膜タンパク質とは、生体膜を構成しているタンパク質の総称である(生物学事典 第2版 東京化学同人 1990)。
膜タンパク質には、内在性膜タンパク質と、表在性膜タンパク質が含まれる。内在性膜タンパク質には、膜貫通型膜タンパク質や、一回貫通型膜タンパク質が含まれる。
内在性膜タンパク質とは、常に膜に付着しているタンパク質であり、引き離すにはラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤又は非極性溶媒を必要とする。
表在性膜タンパク質とは、疎水性相互作用、静電相互作用など共有結合以外の力によって脂質二重層又は内在性膜タンパク質と一時的に結合しているタンパク質である。これを単離するには高塩濃度の極性溶媒を必要とする。
本発明において結晶化の対象とされる膜タンパク質は特に制限されず、生体膜に埋め込まれて存在するいかなる膜タンパク質も対象となる。
本発明の結晶化方法を適用する膜タンパク質には、受容体からなる群、好ましくは、Gタンパク質結合受容体、イオンチャネル、及び、輸送タンパク質、並びに、これらの部分配列などが含まれる。
これらの膜タンパク質は、治療及び診断上の観点から大きな関心が持たれている。
Gタンパク質結合受容体も結晶化の対象とされる。Gタンパク質結合受容体(G-protein coupled receptor, GPCR)は、細胞膜を7回貫通する特徴的な構造を持ち、Gタンパク質(グアニンヌクレオチド結合タンパク質)と呼ばれる三量体タンパクを介して、細胞内における信号伝達の中心的機能を果たす。Gタンパク結合受容体はアドレナリン受容体、ヒスタミン受容体、ドパミン受容体などのアゴニストやアンタゴニストとして多くの薬物の標的となっている。イオンチャネルについては、ナトリウムチャネル、カリウムチャネルやカルシウムチャネルのブロッカーは、不整脈薬として使用され、カリウムチャネル・オープナーは糖尿病薬として用いられている。輸送タンパク質については、イオン、アミノ酸、糖、ペプチドや薬物など様々な物質の輸送に関与しており、強心薬や利尿薬などの標的となっている。 本発明の実施例では、膜タンパク質の一例としてバクテリオロドプシンを使用した結晶化について開示する。
膜タンパク質の一例としてバクテリオロドプシンの単離について説明する。
高度好塩菌Halobacterium salinarumを、高度好塩菌培地1.25LにHalobacterium salinarumを加え、恒温振とう培養機(Taitec、Bio-shaker:BR-40LF)で死亡期にさしかかるまでインキュベーションした。遠心分離によって集菌を行った後、紫膜を得るために、透析処理を行った。次いで、紫膜を分離するため、洗浄の操作を行った。引き続いて、ショ糖濃度勾配遠心により紫膜を単離した。引き続いて、紫膜を25mM Na/K-Pi緩衝液pH6.9で懸濁し、遠心分離を行った(遠心機:HITACHI himac CP80WX、ローター:P45AT、141900g、30min、4℃)。上清を捨て、沈澱した紫膜を25mM Na/K Pi緩衝液で再度懸濁した後、懸濁溶液に25mM Na/K Pi緩衝液を加え、遠心分離を3回行い、精製した。
その後、吸収スペクトル(Beckman、DU 7500)を用いて、濃度調整を行った。吸収スペクトル測定時には、可視光(キセノンランプ)を照射し、バクテリオロドプシンを明順応させた。バクテリオロドプシンの明順応時のεとして62700M-1cm-1の値を用いた(Y. Yokoyama、M. Sonoyama and S. Mitaku、Photochem. Photobiol.、86、297-301(2010))。700μMの可溶化バクテリオロドプシン溶液を調製し、ストック溶液とした。
(脂質 lipid)
脂質とは、分子内に長鎖脂肪酸又は類似の炭化水素鎖を持ち、生物体内に存在するか生物に由来するような物質をいう(生物学事典 第2版 東京化学同人 1990)。本発明において脂質は、上記のように広義の脂質を意味し、生物体内に存在するか生物に由来して、水に不溶、有機溶媒に可溶の有機化合物の総称である。具体的には、脂質には、脂肪酸と各種アルコールとのエステルである単純脂質(中性脂肪)、脂肪酸・アルコール・リン酸・糖などからなる複合脂質(リン脂質・糖脂質など)、及び以上二者の加水分解生成物で水に不溶の物質(脂肪酸・高級アルコール・ステロールなど)が含まれる。
本発明の結晶化方法において使用する脂質には、脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸のエステルなどが例示できる。脂質としては、グリセリンの脂肪酸モノエステルが好ましく、モノオレイン(オレイン酸2,3−ジヒドロキシプロピル)がより好ましい。
(光異性化基を有する疎水性部と親水性部とを有する界面活性剤)
本発明の結晶化法に使用する界面活性剤は、光異性化基を有する疎水性部及び親水性部を有する。
光異性化とは、二重結合を有する化合物が、光エネルギーを吸収して生成する励起状態を経て、より安定なトランス体からシス体に変化すること、及びこの逆の変化をいう。シス体は、光エネルギーを吸収するか、又は、熱的により安定なトランス体に異性化する。
このような光異性化基としては、アゾ基やエチレン性二重結合が好ましく、アゾ基を有する化合物がより好ましく、ジアリールアゾベンゼン系の残基を有する化合物が特に好ましい。ジアリールアゾベンゼンの誘導体残基は、シス体の熱異性化の速度が遅いので、シス体を使用する場合には好ましい。
前記光異性化基は、アゾベンゼン残基又はスチルベン残基であることが好ましく、アゾベンゼン残基であることがより好ましく、ジアリールアゾベンゼン残基であることが特に好ましい。ジアリールアゾベンゼン残基は、置換又は無置換の、フェニル基又はフェニレン基を有することが好ましい。
光異性化する化合物では、例えばアゾ化合物又はアルケンにおいて、シス及びトランスの配座異性体が存在し、その2種類の異性体の存在比は、トランス体が吸収する波長の光を照射することによりシス体が増加する。シス体/トランス体のモル比は、0/100〜99/1であり、好ましくは1/100〜90/10である。
光異性化基は、一般にトランス体がシス体よりも熱的に安定であるから、疎水性部がトランス体の光異性化基を有する界面活性剤を使用することが本発明の好ましい実施態様の一つである。
界面活性剤の親水性部は、ノニオン性でもイオン性でもよいが、イオン性であることが好ましい。イオン性の親水性部は、アニオン性(陰イオン性)でもカチオン性(陽イオン性)でも、ベタイン型(両性系)でもよいが、カチオン性であることがより好ましく、第4級アンモニウム塩残基を含むことが特に好ましい。
さらに、第4級アンモニウム塩である場合は、対イオンがハロゲンイオンであることが好ましく、臭素イオンであることがより好ましい。第4級アンモニウム塩の窒素原子に結合するアルキル基は炭素数が1〜5の低級アルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
なお、アニオン性の親水基としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、及びホスホン酸塩が含まれる。
本発明の1つの実施態様においては、前記疎水性部がすべて、又は実質的にすべて、トランス体の光異性化基を有する界面活性剤を使用する。トランス体である方が、熱的に安定であり、また、界面活性剤の分子鎖が直線的となるために好ましい。
前記疎水性部がトランス体の光異性化基を有する界面活性剤を共存させて、前記界面活性剤を共存させない場合に比較して、結晶サイズのより大きな膜タンパク質結晶が得られる。
また、本発明の別の実施態様においては、前記疎水性部がシス体の光異性化基を有する界面活性剤を共存させて、前記界面活性剤を共存させない組成物中からは得られない、膜タンパク質結晶が得られる。この場合、シス体/トランス体の比率は、20/80〜80/20の比率であることが好ましい。
これらの結晶化については、後に詳しく説明する。
なお、本発明で使用する界面活性剤は、膜タンパク質を生体膜から分離して可溶化するために使用される界面活性剤とは、その機能と化学構造を異にするものである。可溶化のためには、ノニオン系のn−オクチルグルコシドなどが使用される。
本発明の結晶化方法において、前記界面活性剤は、式(1)及び/又は式(2)で表されることが好ましい。
Figure 2014172833
(式(1)中R1は炭素数が2〜10のアルキレン基を表し、R2は炭素数が1〜5のアルキル基を表し、R3は水素原子又は炭素数が1〜10のアルキル基を表し、X-は対イオンを表す。)
Figure 2014172833
(式(2)中R1は炭素数が2〜10のアルキレン基を表し、R2は炭素数が1〜5のアルキル基を表し、R3は水素原子又は炭素数が1〜10のアルキル基を表し、X-は対イオンを表す。)
式(1)で表される界面活性剤は、トランス体のアゾベンゼン構造を有し、式(2)で表されるシス体のアゾベンゼン構造よりも熱的に安定である。
トランス体を使用する場合、アゾベンゼンのシス体(2)/トランス体(1)の比率は、0/100〜20/80であることが好ましい。トランス体の溶液を暗所で長期保存すると、シス体のないトランス体のみのジアリールアゾベンゼンが得られる。
式(1)のトランス体に光を照射すると、以下に示すように、式(2)で表されるシス体に異性化する。シス体を増やすためには、トランス体を含む溶液又は組成物に光照射を行えばよい。
上記式(1)で表されるトランス体を式(2)で表されるシス体に光異性化するためには、式(1)を含む溶液又は組成物に、300〜400nmの波長範囲の紫外(UV)光を照射することが好ましく、300〜340nmの波長範囲であることがより好ましい。このためには、紫外光源とバンドパスフィルターが組み合わせて使用される。
式(2)で表されるシス体(2)は、可視(VIS)光の照射又は熱的に可逆的にトランス体(1)に光異性化する。可視光は、400〜500nmの波長範囲が好ましい。
Figure 2014172833
ここで、R1、R2、R3及びX-は式(1)又は式(2)と同義である。
式(1)で表される界面活性剤は、既知の原料を使用して合成される。代表的な化合物についてその合成スキームを以下に示す。このスキームでは、合成方法は、パラ位にR3を有するアニリン誘導体をジアゾ化した後、アルキレンジブロミドと反応させ、トリメチルアミンで四級化して目的物を得ている。原料及び/又は反応化合物を変えて、このシリーズの化合物を自由に合成できる。
Figure 2014172833
式(1)において好ましい置換基は、以下の通りであり、好ましい組み合わせは、より好ましい。
1は、スペーサーとも呼ばれる結合であり、炭素数(C)が2〜10のアルキレン基であり、直鎖であることが好ましい。C2〜6の直鎖で無置換のアルキレン基が好ましく、C2〜4の直鎖で無置換のアルキレン基がより好ましい。
2は、C1〜5のアルキル基であり、3つのアルキル基は相互に異なっていてもよい。炭素数が少ないほど、第4級アミノ基の親水性が大きく、メチル基が好ましい。
3は、尾(しっぽtail)とも呼ばれる部分であり、水素原子又は炭素数(C)が1〜10のアルキル基であり、直鎖であることが好ましく、C数が偶数のアルキル基がより好ましい。C2のアルキル基は、C4やC6のアルキル基よりも、シス体が熱的に安定であり好ましい。
Xは、対イオンであり、ハロゲンイオンが好ましく、塩素イオン、臭素イオン又はヨウ素イオンがより好ましく、臭素イオンが特に好ましい。
Figure 2014172833
(脂質分子と界面活性剤分子の鎖長比)
組成物の調製工程において、界面活性剤(トランス体)の分子鎖長は、脂質の分子鎖長の0.5〜1.2倍であることが好ましく、0.6〜1.0倍であることがより好ましい。
脂質としてモノオレインを使用する場合、上表中のPIS No.3であるAZTMAは約0.86倍の鎖長を有する。
(界面活性剤の配合量)
トランス体の光異性化界面活性剤を使用する場合は、脂質に対して0.01〜15モル%であることが好ましく、0.5〜10モル%であることが好ましく、1〜5モル%であることが特に好ましい。トランス体を配合する場合には、暗所に長期間放置して、熱的に安定なトランス体となった界面活性剤を使用する。また、光異性化を防止するために、紫外光を排除した安全灯の下で実験操作を行う。
(シス体を組成物中に共存させる方法)
疎水性部がシス体の光異性化基を有する界面活性剤を前記組成物中に共存させる方法について説明する。シス体を共存させる場合もシス体とトランス体の総量で同じ添加量が好ましい。
シス体の光異性化界面活性剤を配合する場合には、大きく2つの方法がある。
第1の方法は、シス体を添加する方法であり、光異性化界面活性剤の溶液に紫外線を照射して予めシス体を生成させた後に、このシス体を添加して前記組成物を調製する方法である。シス体が吸収する400〜500nmの青色光成分のない緑色光又は赤色光の安全灯の下で実験操作を行う。
第2の方法は、トランス体の光異性化界面活性剤を使用して前記組成物を調製した後に、組成物にUV光を照射してトランス体をシス体に光異性化させて生成する方法である。
この方法では、UV光を使って空間限定的にシスを生成させる点で優れている。
第2の方法による場合には顕微鏡の対物レンズを通して光照射することも可能であり、シス体を組成物の限定した位置に生成させる点に特徴がある。
(水)
水としては、蒸留水を使用することが好ましい。水には膜タンパク質を分離する前工程において好ましく使用される非イオン性界面活性剤(アルキルグルコシドなど)やpH緩衝剤を含んでもよい。
例えば、可溶化バクテリオロドプシン(s−bR)を膜タンパク質として使用する場合、可溶化剤としてn−オクチルグルコシド(1.2%wt/vol)を使用して可溶化され、pH緩衝液(25mM Na/K−Pi緩衝液)が使用される。
(組成物の調製工程)
本発明の膜タンパク質の結晶化方法において、必須の前段工程である、膜タンパク質、脂質、光異性化界面活性剤及び水を含む組成物を調製する調製工程について説明する。
上記の必須4成分を混合する方法は特に限定されない。以下のようなサブ工程(a)及び(b)を含む調製方法が例示される。
サブ工程(a):膜タンパク質、光異性化活性剤を含む水溶液の調製
サブ工程(b):脂質と上記水溶液との混合
微量のサンプル調製のためにマイクロシリンジ及びマイクロミキサーを使用することが好ましい。マイクロシリンジは、ハミルトン製の小容量用液体用シリンジが例示でき、混合にはカッパーを介して二本のシリンジを結合して使用し、リピーティングディスペンサーを併用してもよい。
必要に応じて、脂質を注入するシリンジは50℃など室温以上の温度に暖めて、好ましい相を形成させる。
本発明の調製工程において、前記組成物を調製するための必須成分の配合量は、以下の通りである。モノオレイン、バクテリオロドプシン及びAZTMAを使用した場合の配合量を代表例として記載する。他の脂質、膜タンパク又は光異性化界面活性剤を使用する場合にも同じ配合比が好ましい。
本発明において、組成物を構成する必須成分である、α−モノオレイン(分子量356.55)と水との配合量は重量百分率で規定され、膜タンパク質であるバクテリオロドプシン及び光異性化界面活性剤は、モノオレインに対するモル分率で規定される。組成物調製工程において、光異性化界面活性剤及び膜タンパクはどちらも脂質中に取り込まれる。
具体的には、水とモノオレインとの合計量を100重量部とした場合に、水の配合量は以下の通りである。
・水 :10〜60重量部
・モノオレイン :40〜90重量部
(モノオレイン及び水の合計が100重量部となる。)
モノオレイン(脂質)100モルに対して、AZTMA(光異性化界面活性剤)の配合量は、0.1〜15モルが好ましく、1〜10モルがより好ましく、1〜5モルが特に好ましい。
モノオレイン(脂質)100モルに対して、バクテリオロドプシン(膜タンパク質)の配合量は、1〜10モルが好ましく、2〜8モルがより好ましく、3〜8モルが特に好ましい。
なお、前段の調製工程と後段の析出工程との間に、前記組成物と結晶化促進剤溶液とを接触させると、膜タンパク質の結晶化が促進される、この場合には、その結晶化促進剤の好ましい濃度は、好ましくは、0.1〜6Mであり、より好ましくは1〜3Mである。
結晶化促進剤としては、タンパク質の結晶化に使用される公知の水溶性塩類が使用される。
結晶化促進剤は、結晶核の形成及び/又は結晶成長を促進する化合物であって、沈殿剤、pH調節剤、その他タンパク質の結晶化に使用される添加剤が使用される。
結晶化促進剤としては、無機塩類、有機溶媒、水溶性高分子等を用いることができる。無機塩類としては、硫酸アンモニウム、塩化ナトリウム、リン酸塩、リン酸水素塩、クエン酸ナトリウム、硫酸塩、硝酸塩などが用いられ、リン酸水素ナトリウムカリウムが好ましく使用される。その他の結晶化を促進する条件は、前掲の日本生化学会編、新生化学実験講座1「タンパク質I−分離・精製・性質−」、高野常弘氏執筆、第14章「結晶化」、及びA.McPherson著、“Preparation and Analysis of Protein Crystals”(John Wiley & Son, Inc)に記載されている。
(組成物中に生成する相の調節)
膜タンパク質の結晶の形態には、I型、II型及びIII型がある(日本学術振興会 回折構造生物第169委員会編「タンパク質の結晶化」(京都大学学術出版会 2005年 参照))。
I型の膜タンパク質結晶は、膜タンパク質が、その疎水的な膜貫通部分同士が会合して、二次元的に凝集し、さらにこの二次元結晶が積み重なった構造の結晶をI型の膜タンパク質結晶という。
I型の膜タンパク質を形成する一つの方法は、立方相(cubic phase)と呼ばれる脂質の集合状態を利用する方法であり、本発明において好ましく使用される。
生体膜から単離したバクテリオロドプシンなどの膜タンパク質を立方相状態の脂質と混合して埋め込む。この立方相では脂質相は、連続した3次元的な網目構造を持つ。結晶核の生成により、脂質相に沿った膜タンパク質の集合により3次元結晶が形成されると推定される。
II型の膜タンパク質結晶では、膜タンパク質と可溶化に用いた界面活性剤とが複合体を形成し、この複合体が親水性部分の分子間相互作用だけで結晶格子を形成した形態を有している。
最後に、結晶析出前に溶液中で中空の球状ベシクルが形成され、それが最密充填することで結晶格子が形成された結晶形態をIII型の膜タンパク質結晶と分類する。
(その他の好ましい要件)
本発明結晶化方法の後段である析出工程は、一定温度に保ったインキュベーター中で進行させる。温度は特に限定されず、好ましくは、0〜60℃であり、より好ましくは10〜30℃である。結晶化温度は、使用する脂質と水とにより形成される相図において、立方相が形成されるような温度と組成を選択することが好ましい。
結晶化時間も適宜選択され、好ましくは、1〜100日、より好ましくは、5〜30日である。
(析出工程)
本発明の結晶化方法を適用する場合には、好ましくは、人工の脂質膜の3次元的網目構造中で、対象となる膜タンパク質を結晶化する、脂質立方相を用いた結晶化方法であることが好ましい。膜タンパク質に応じて適当な人工の脂質が選択される。
脂質は、膜タンパク質との種々の特性値を総合的に検討して選択される。その一つは、脂質が膜タンパク質と形成する相の種類に依存する。脂質と膜タンパク質とは、バイセル、ベシクル、又は、立方相を形成することが知られている。
本発明の膜タンパク質の結晶化法において、バイセルによる結晶化法(bicelle formation)、ベシクルによる結晶化法(proteoliposome assembly)、立方相による結晶化(lipidic cubic phase reconstitution)が好ましく、立方相による結晶化法がより好ましい。
(膜タンパク質)
膜タンパク質は、その表面が親水的部分だけでなく、疎水的な部分を併せ持つ。膜タンパク質の単離は、さまざまな化合物や手法を駆使して生体膜から分離される。この際に膜タンパク質を可溶化すると同時に変性させずに分離することが重要である。
以下の実施例では、高度好塩菌から単離したバクテリオロドプシンの水溶液を実験に使用した。
前掲のジアリールアゾベンゼンは、膜タンパク質の結晶化剤として有用である。
トランス体もシス体も活用できる。特にトランス体は、結晶核の生成抑制によると推定される、大きなサイズを有する膜タンパク質の結晶生成に有用である。
以下に実施例及び比較例により本発明を説明する。
(光異性化界面活性剤の合成)
前記の式(1)又は(2)で表される界面活性剤を文献(T. Hayashita、T. Kurosawa、T. Miyata、K. Tanaka and M. Igawa、Colloid Polym. Sci.、272、1611-1619(1994))に記載の方法により合成した。
4-Butylazobenzene-4'-(oxyethyl)trimethylammonium bromide (AZTMA)の合成
光異性化界面活性剤PIS No.3に相当する4−ブチルアゾベンゼン−4’−(オキシエチル)トリメチルアンモニウムブロミド(AZTMA)を例に採り、その合成スキームを前に示した。目的物の同定は、1H−NMR測定、質量分析及び光異性化に伴う吸収スペクトル変化により行った。
その他、式(1)において、R1(スペーサー(spacer))及びR2(しっぽ(tail))の鎖長(含有炭素数)の異なる、光異性化可能なアゾ系界面活性剤群も上記の文献記載の方法に準じて市販原料を用いて合成した。
(AZTMAのトランス-シス光異性化)
AZTMAのトランス-シス光異性化を、以下のようにして確認した。光源として、300Wキセノンショートアークランプ(USHIO、UXL-300D)を使用した。この光源にUVバンドパスフィルター(SIGMA KOKI、UTVAF-50S-33U)又は長波長透過フィルター(400nmロングパスフィルター)を組み合わせて使用した。
本発明では、300W XeランプにUVバンドパスフィルターを組み合わせた光をUV光(320-340nm)、420nmロングパスフィルターを組み合わせた光を可視光(VIS光)と示した。トランス−シスの光異性化が、200〜600nmの波長範囲の吸収スペクトル変化により確認できた。
(膜タンパク質であるバクテリオロドプシン溶液の調製)
バクテリオロドプシンは、文献(D. Oesterhelt and W. Stoeckenius、Methods Enzymol.、31、667-678(1974))に記載の方法に準じて、高度好塩菌Halobacterium salinarumを培養して、その細胞膜に存在するバクテリオロドプシンを単離した。
前培養、本培養、集菌、透析、洗浄、ショ糖濃度勾配遠心、及び緩衝液洗浄により、バクテリオロドプシン溶液(19mg/mL;0.7mM)を調製し、ストック溶液とした。
<比較例1>
(光異性化界面活性剤を共存させないバクテリオロドプシンの結晶化)
バクテリオロドプシンを膜タンパク質として使用し、脂質としてモノオレインを使用し、脂質及び水の総量に対して水を40重量%加えた結晶化実験を行った。
比較試料の調製方法は、モノオレインと、可溶化バクテリオロドプシン水溶液(700μM)をマイクロシリンジ及びマイクロミキサーを使用して混合し、立方相を形成させた。結晶化容器に得られた組成物を200nL滴下し、ここに、2.2Mリン酸水素ナトリウムカリウム(Na/K-Pi pH5.5;結晶化促進剤)を2μL加えて、防湿フィルムにより密閉した。結晶化促進剤水溶液の添加により、立方相からラメラ相への相転移が始まり、膜タンパク質の結晶化が進行した。
結晶化は、20℃のインキュベータ―に保存し、10日後に生成した結晶を、実体顕微鏡(オリンパス(株)SZX50)により観察した。
光異性化界面活性剤を加えない場合には、バクテリオロドプシンの紫色の六角平板結晶が多数生成した。結晶一つあたりの直径(六角形の対角線長)は約30μmであった。
<実施例1>
上記の比較例1において、モノオレインに対して、トランス−AZTMAがモノオレインに対して2.0モル%となるように、s−bR溶液にトランス−AZTMAを添加した以外は全く同様にして、膜タンパク質の結晶化を進行させた。
また、比較例及び実施例の一連の実験操作は、バクテリオロドプシンの光異性化を防ぐために、赤色蛍光灯下で行った。
生成した六角平板状の結晶には、直径が約70μmを超えるものが認められた。AZTMAの添加により、結晶数が減少し、結晶サイズは大きくなった。これは、AZTMAの添加によって核形成が抑制され、結晶一つを形成するバクテリオロドプシンの分子の数が増加し、結晶サイズが大きくなったと考えられる。膜タンパク質のX線構造解析を行うためには、粒子径の大きな結晶であることが重要であり、優れた技術的効果を奏した。
<実施例2>
光異性化界面活性剤として、PIS No.3の代わりに前掲のPIS No.1、2、又は4〜9を用いて、実施例1と同様の結果が得られる。
<比較例2>
モノオレインに対して、2.0モル%のトランス−AZTMA(光異性化界面活性剤)を使用する代わりに、非イオン性のオクチルグルコシドを同モル%共存させても、生成するバクテリオロドプシンの結晶数と結晶サイズに変化はなく、上記の比較例1と同様であった。
<参考例1>
実施例1において調製した組成物に320〜340nmの波長範囲の紫外光を照射した。生成したシス−AZTMAの共存により、生成するバクテリオロドプシンの結晶数は増加し、その結晶サイズが減少した。
<参考例2>
−バクテリオロドプシン、モノオレイン、及び、シス−AZTMAを含む水溶液中における結晶化−
バクテリオロドプシンを膜タンパク質として使用し、脂質としてモノオレインを使用し、脂質に対して水を40重量%加えた結晶化実験を行った。
試料の調製方法は、モノオレインと、可溶化バクテリオロドプシン水溶液(700μM)をマイクロシリンジ及びマイクロミキサーを使用して混合して、組成物を調製した。この組成物は立方相を形成した。結晶化容器に得られた組成物を200nL滴下した。この組成物に1.8Mリン酸水素ナトリウムカリウム(Na/K-Pi pH5.5)を1.2μL加えて、防湿フィルムにより密閉した。
結晶化は、20℃のインキュベータ―に保存し、10日後に生成した結晶を、実体顕微鏡(オリンパス(株)SZX50)により観察した。結晶は認められなかった。
<実施例3>
上記の参考例において、組成物を調製する際に、トランス−AZTMAをモノオレインに対して2モル%含有させた。この組成物を結晶化容器に200nL滴下した。この組成物に1.8Mリン酸水素ナトリウムカリウム(Na/K-Pi pH5.5)を1.2μL加えた。引き続いて、320〜340nmの紫外光を組成物に照射して、シス−AZTMAを組成物中に生成させた。結晶を参考例2と同様にして成長させた。
界面活性剤AZTMAがない状態に比較して、シス体の活性剤の共存により大きなバクテリオロドプシンの結晶が得られる。

Claims (15)

  1. 膜タンパク質、脂質、光異性化基を有する疎水性部と親水性部とを有する界面活性剤、及び、水を含む組成物を調製する調製工程、並びに、
    前記組成物中において膜タンパク質結晶を析出させる析出工程を含むことを特徴とする
    膜タンパク質の結晶化方法。
  2. 前記光異性化基が、アゾベンゼン残基又はスチルベン残基である、請求項1に記載の膜タンパク質の結晶化方法。
  3. 前記界面活性剤が、ジアリールアゾベンゼン残基を有する疎水性部とカチオン性の親水性部とを有する、請求項1又は2に記載の膜タンパク質の結晶化方法。
  4. 前記界面活性剤がトランス体の光異性化基を有する疎水性部を有する、請求項1〜3のいずれか1つに記載の膜タンパク質の結晶化方法。
  5. 前記親水性部が第4級アンモニウム塩であり、対イオンがハロゲンである、請求項1〜4のいずれか1つに記載の膜タンパク質の結晶化方法。
  6. 前記界面活性剤が式(1)及び/又は式(2)で表される、請求項1〜5のいずれか1つに記載の膜タンパク質の結晶化方法。
    Figure 2014172833
    (式(1)中R1は炭素数が2〜10のアルキレン基を表し、R2は炭素数が1〜5のアルキル基を表し、R3は水素原子又は炭素数が1〜10のアルキル基を表し、X-は対イオンを表す。)
    Figure 2014172833
    (式(2)中R1は炭素数が2〜10のアルキレン基を表し、R2は炭素数が1〜5のアルキル基を表し、R3は水素原子又は炭素数が1〜10のアルキル基を表し、X-は対イオンを表す。)
  7. 前記疎水性部がトランス体の光異性化基を有する界面活性剤を共存させて、前記界面活性剤を共存させない場合に比較して、結晶サイズのより大きな膜タンパク質結晶を得る、請求項1〜6のいずれか1つに記載の膜タンパク質の結晶化方法。
  8. 前記疎水性部がシス体の異性化基を有する界面活性剤を共存させて、前記界面活性剤を共存させない組成物からは得られない、膜タンパク質結晶を得る、請求項1〜6のいずれか1つに記載の膜タンパク質の結晶化方法。
  9. 前記組成物に含まれる前記界面活性剤中の光異性化基を光異性化する光照射工程を含む、請求項1〜8のいずれか1つに記載の膜タンパク質の結晶化方法。
  10. 前記調製工程と前記析出工程との間に、前記組成物と結晶化促進剤を含有する水溶液とを接触させる工程を含む、請求項1〜9のいずれか1つに記載の膜タンパク質の結晶化方法。
  11. 脂質及び水の総重量に対する水の配合量が10〜60重量%であり、かつ、膜タンパク質の脂質に対する配合量が1〜10モル%であり、界面活性剤の脂質に対する配合量が0.1〜15モル%である、請求項1〜10のいずれか1つに記載の膜タンパク質の結晶化方法。
  12. 前記脂質がモノオレインである、請求項1〜11のいずれか1つに記載の膜タンパク質の結晶化方法。
  13. 前記膜タンパク質が、Gタンパク質結合受容体、イオンチャネル、及び、輸送タンパク質、並びに、これらの部分配列よりなる群から選ばれた、請求項1〜12のいずれか1つに記載の膜タンパク質の結晶化方法。
  14. 膜タンパク質結晶の最大直径が50μm以上である、請求項1〜13のいずれか1つに記載の膜タンパク質の結晶化方法。
  15. ジアリールアゾベンゼン残基を有する疎水性部とカチオン性の親水性部とを有する界面活性剤からなる膜タンパク質結晶化剤。
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