JP6314653B2 - ガス焼入れ装置 - Google Patents

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Description

本発明はガス焼入れ装置に関し、特に均一かつ歪の小さい焼入れを行うことが可能なガス焼入れ装置に関する。
自動車用歯車等のワークを表面熱処理する場合、従来はガス浸炭後に油焼入れを行うのが普通であった。そして、特に歪が出易いリング形状の歯車等の場合には、歪を抑制するために拘束油焼入れが行われている。これは例えば特許文献1に示されているように、ワークの外周ないし内周の変形を防止するような側壁を備える焼入れ油注入空間をワーク周囲に形成して焼入れを行うものである。
特開2013−23751
しかし、油焼入れは、焼入れ後の洗浄工程を必要とするとともに、オイルミストが発生して作業環境が悪化し、爆発や火災等の危険性があるという問題がある上に、光輝性に劣るという問題もあった。そこで、このような問題点の無いガス焼入れによって十分に歪の小さいワークを得ることが要請されていた。
そこで、本発明はこのような要請に鑑みたもので、均一かつ歪の小さいワークを得ることが可能なガス焼入れ装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本第1発明では、ガス冷却室(1)内に設置され、ワーク(W)を一段で複数平面的に載置するとともに、平面の必要箇所に上下方向へ貫通する複数の開口(21)が形成された水平姿勢の平板状トレイ(2)と、前記各開口(21)を経て上昇させられて先端で前記ワーク(W)を前記トレイ(2)上から持ち上げ支持する棒状の第1拘束部材(51)と、上方から前記ワーク(W)の上面に下降してその先端で前記ワーク(W)を抑えて前記第1拘束部材(51)とで前記ワーク(W)の変形を防止するように挟持する棒状の第2拘束部材(52)とを備える。
第1発明においては、トレイの上方位置で拘束部材によって上下面を拘束されて保持されたワークに対し、冷却ガスは、棒状の拘束部材の間の空間を円滑に流れる。この結果、拘束され平面的に配置されたワークは、その歪変形が抑えられた状態で効率的かつ均一に冷却される。
本第2発明では、前記第2拘束部材(52)はバネ部材(43)によって下降方向へ進出付勢されており、前記ワーク(W)の上面の凹凸に従って前記バネ部材(43)を圧縮変形させて後退可能となっている。
本第2発明においては、バネ部材によって進出付勢されている各拘束部材、先端がワークの上面に当接するとその凹凸に応じてバネ部材を圧縮しつつ適宜後退するから、ワークはその厚み方向の形状の如何に拘わらず両拘束部材によって上下面よりバネ部材のバネ力とその反力によって強固に挟持されて変形が防止され、拘束状態で保持される
本第3発明では、前記トレイ(2)は平面視で格子状に成形されて多数の開口(21)が隣接して形成されている。
本第3発明においては、拘束部材の平面配置の自由度が向上するから、ワークはその平面外形の如何に拘わらず確実に上下の拘束部材によって拘束される。
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
以上のように、本発明のガス焼入れ装置によれば、均一かつ歪の小さいワークを得ることが可能である。
本発明の第1実施形態を示す、ガス焼入れ装置の全体概略断面図である。 ワーク拘束機構の垂直断面図である。 挟持されたワークの斜視図である。
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
図1にはガス焼入れ装置の全体概略断面を示す。図1において、ガス焼入れ装置はガス冷却室1を備えている。ガス冷却室1内には左右の側壁の上下方向中間位置に支持壁11が突設してあり、図略の扉付き開口から室内へ装入された平板状のトレイ2がその両端下面を支持壁11上に位置させて水平姿勢で設置されている。
トレイ2は平面視で格子状に成形されており、その平面内に、互いに隣接して上下方向へ延びる多数の貫通孔21を有している。このようなトレー2の上面にワークWが複数載置されている。なお、図1では理解を容易にするために二個のワークWのみが示してあるが、実際にはトレー2上には一段で平面的に多数のワークWが載置されている。
ガス冷却室1の底壁には駆動シリンダ3が設けられて上下方向へ進退可能なそのロッド31がガス冷却室1内へ延びている。ロッド31の上端には、トレイ2と平面視でほぼ同形の支持板32が水平姿勢で固定されている。支持板32の上面には複数位置に棒状の拘束部材51が立設されており、その先端(下端)がトレイ2の貫通孔21を経てワークWの下面に当接して、ワークWをトレイ2上から上方へ持ち上げて支持している。
一方、ガス冷却室1の頂壁には駆動シリンダ4が設けられて上下方向へ進退可能なそのロッド41がガス冷却室1内へ延びている。ロッド41の下端には、トレイ2と平面視でほぼ同形の支持板42が水平姿勢で固定されている。支持板42の下面には複数位置に、詳細を後述する構造で棒状の拘束部材52が垂設されており、その先端(下端)がワークWの上面に当接している。
このようなワーク拘束機構の詳細を図2に示す。支持板32上の拘束部材51は、基端(下端)が支持板32の上面に固着されており、ロッド31の進出に伴って支持板32が上昇すると、拘束部材51の先端がトレイ2(図1)上のワークW1,W2の下面に当接してこれをトレイ2の上方へ持ち上げる(図1の状態。なお図1ではワークは符号Wで代表させてある)。
支持板42の下面に垂設された各拘束部材52の基端521は、支持板42に設けた下方へ開放するガイド凹所421内にそれぞれ位置しており、上記基端521は拡径してガイド凹所421の内面に摺動可能に接している。そして、基端521とガイド凹所421の底面との間にはバネ部材43が配設されて、そのバネ力によって拘束部材52は下方へ付勢されている。
ロッド41の進出に伴って支持板42が下降すると、拘束部材52の先端がワークW1,W2の上面に当接するが、基端521をバネ部材43によって弾性的に支持されている各拘束部材52は図2に示すように、先端がワークW1,W2の上面に当接するとその凹凸に応じてバネ部材43を圧縮しつつ適宜後退する。これにより、各ワークW1,W2は拘束部材51,52によって上下面よりバネ部材43のバネ力とその反力によって強固に挟持されて変形が防止され、拘束状態で保持される(図3)。
図1において、ガス冷却室1内で拘束部材51,52によってトレイ2の上方に持ち上げられて挟持拘束されたワークWの上方位置とトレイ2の下方位置にはそれぞれ冷却ガス供給ヘッダ61,62が水平姿勢で配置されている。上側の冷却ガス供給ヘッダ61には長手方向へ間隔をおいて下方へ向けて多数のガス噴出孔(図示略)が設けてあり、また下側の冷却ガス供給ヘッダ62には長手方向へ間隔をおいて上方へ向けて多数のガス噴出孔(図示略)が設けてある。
各冷却ガス供給ヘッダ61,62はガス冷却室1の側壁を貫通して外方へ延び、それぞれ電磁弁63,64を介して合流した後、ブロア65の吐出口652に連通している。ガス冷却室1の、上下の冷却ガス供給ヘッダ61,62の間の側壁には室外に設けられた排気ダクト66の一端が開口連結されており、当該排気ダクト66は途中に設けたガスクーラ67を介してブロア65の吸入口651に連結されている。
このような構造のガス焼入れ装置において、既述のようにトレイ2の上方位置で拘束部材51,52によって上下面を拘束されて保持されたワークWに対し、電磁弁63のみを開放するとガス冷却室1内には冷却ガス供給ヘッダ61から下方へ冷却ガスの下降流が形成される(図1の矢印)。冷却ガスは、棒状の拘束部材51,52の間の空間を円滑に下方へ流れて、拘束され平面的に配置されたワークWを、その歪変形が抑えられた状態で効率的かつ均一に冷却する。冷却ガスはその後、排気ダクト66内へ流出して室外のガスクーラ67へ至る。そして、ガスクーラ67で再冷却された冷却ガスがブロア65を経て再び冷却ガス供給ヘッダ61へ送られる。このようにして、拘束された状態のワークWに対して均一かつ歪の小さいガス焼入れが行われる。
なお、電磁弁63に代えて電磁弁64を開放するとガス冷却室1内には冷却ガス供給ヘッダ62から上方へ冷却ガスの上昇流が形成される(図1の矢印)。また、ワークWの形状に応じて、両電磁弁63,64をいずれも開放すれば、上昇流と下降流がワークW付近で衝突した後、側方へ流れる気流となり、これによって均一かつ歪の小さい効率的なガス焼入れが実現される。また、ガス冷却室1の側面の室壁や適宜位置に冷却ガス供給ヘッダをさらに増設すれば、ワーク形状に応じたさらに多様なガス焼入れが可能となる。
1…ガス冷却室、2…トレイ、21…開口、3…駆動シリンダ、31…ロッド、32…支持板、4…駆動シリンダ、41…ロッド、42…支持板、43…バネ部材、51…拘束部材(第1拘束部材)、52…拘束部材(第2拘束部材)、W…ワーク。

Claims (3)

  1. ガス冷却室内に設置され、ワークを一段で複数平面的に載置するとともに、平面の必要箇所に上下方向へ貫通する複数の開口が形成された水平姿勢の平板状トレイと、前記各開口を経て上昇させられて先端で前記ワークを前記トレイ上から持ち上げ支持する棒状の第1拘束部材と、上方から前記ワークの上面に下降してその先端で前記ワークを抑えて前記第1拘束部材とで前記ワークの変形を防止するように挟持する棒状の第2拘束部材とを備えるガス焼入れ装置。
  2. 前記第2拘束部材はバネ部材によって下降方向へ進出付勢されており、前記ワークの上面の凹凸に従って前記バネ部材を圧縮変形させて後退可能となっている請求項1に記載のガス焼入れ装置。
  3. 前記トレイは平面視で格子状に成形されて多数の開口が隣接して形成されている請求項1に記載のガス焼入れ装置。
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