JP6314527B2 - 鋼矢板 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼矢板に関する。
鋼矢板は護岸、土留めなどの工事において用いられる鋼材である。鋼矢板には、その断面形状からハット形、U形、直線形などの種類がある。また、鋼矢板を用いた構造形式には、自立式、タイロッド式などの種類がある。
例えば、自立式は、鋼矢板の剛性と鋼矢板が埋め込まれた地盤の抵抗力(水平方向の抵抗力)によって外力に抵抗する構造形式である。この方式は、地盤が良好で水深が小さい場合に適用される場合が多い。タイロッド式は、鋼矢板と控え工をタイロッドまたはタイワイヤーで連結することで壁体を安定させる構造形式である。
自立式の場合には、鋼矢板自体を支持する部材がなく鋼矢板にしなりが生じるため、ヤング率を考慮した設計が必要となる。一方、タイロッド式の場合には、タイロッドによりしなりが抑制されるので、降伏強度を考慮した設計が必要となり、鋼矢板の高強度化が求められる。特に、タイロッド式に用いる鋼矢板には、降伏強度が430N/mm以上であること、さらに最近では、降伏強度が460N/mm以上であること、が望まれる場合がある。
鋼矢板には、高い降伏強度に加えて良好な靱性と溶接性を兼ね備えていることが望まれる場合がある。しかし、鋼矢板は、やや複雑な断面形状を有しているため、その製造時の温度履歴に制約があり、寸法精度を良好にする観点から、ウェブの圧下を高温で終了させ、その後の加速冷却を実施しないことが望まれている。このため、圧下後にミクロ組織が成長して、製品の結晶粒が粗大になるなど、靱性が低下しやすい。
従来から高強度の鋼矢板に関する技術は多く開示されている。
例えば、特許文献1には、高強度広幅鋼矢板に関する技術が開示されている。特許文献1で開示された技術によれば、降伏強度が390N/mm以上の高強度鋼矢板が得られるとされている。
また、特許文献2には、鋼矢板の製造方法に関する技術が開示されている。特許文献2で開示された技術によれば、ウェブの靱性に優れる鋼矢板が得られるとされている。
さらに、特許文献3にも鋼矢板に関する技術が開示されている。特許文献3で開示された技術によれば、降伏強度が430N/mm以上で、かつ良好な靱性を有する鋼矢板が得られるとされている。
特開2007−332414号公報 特開2008−221318号公報 特開2012−201904号公報
特許文献1で開示された技術を用いれば、降伏強度が390N/mm以上の鋼矢板が得られるとされているものの、該技術を用いても、その実施例で「発明例」として具体的に示されているように、高い降伏強度(460N/mm以上)と優れた靱性(0℃でのシャルピー吸収エネルギーで300J以上)を同時に有する鋼矢板を安定的に得ることは極めて難しい。
特許文献2で開示された技術を用いれば、ウェブの靱性に優れる鋼矢板が得られるとされているものの、該技術を用いても、その実施例で「発明例」として具体的に示されているように、460N/mm以上という高い降伏強度と0℃でのシャルピー吸収エネルギーで300J以上という優れた靱性を同時に有する鋼矢板を安定的に得ることは難しい。
特許文献3で開示された技術を用いれば、降伏強度が430N/mm以上で、かつ良好な靱性を有する鋼矢板が得られる。しかしながら、一層安定して高い降伏強度(460N/mm以上)と優れた靱性(0℃でのシャルピー吸収エネルギーで300J以上)を同時に有する鋼矢板を得るためには、改善すべき余地がある。
本発明は、このような従来技術の問題を解決するため、一般に用いられる鋼矢板のサイズの中では最も板厚が大きく、高い降伏強度と高靱性の確保が難しい27.6mm厚さであっても、上記の、460N/mm以上の高い降伏強度とJIS Z 2242−2005に規定された幅10mmの標準Vノッチ試験片を用いた場合の0℃でのシャルピー吸収エネルギー(以下、単に「0℃でのシャルピー吸収エネルギー」という。)で300J以上の優れた靱性を同時に有する鋼矢板を提供することを目的とする。
鋼矢板の圧延においては、良好な寸法精度を確保することが必要である。このため、通常は、鋼材の強度および靱性を向上させるために、圧延時に比較的低温域での累積圧下率を大きく増加させたり、圧延中または圧延後に加速冷却を適用したりすることは難しい。また、一般に、鋼矢板の板厚が大きいほど高い降伏強度と優れた靱性を同時に得ることが難しい。
本発明者らは、鋼矢板のウェブの圧延を模擬した圧延条件、すなわち、圧延終了温度が900℃以上で、かつ、圧延中または圧延後に加速冷却を適用しない条件で、板厚が28mmの鋼材を圧延しても、460N/mm以上という高い降伏強度と0℃でのシャルピー吸収エネルギーで300J以上という優れた靱性が得られる条件を調査し、本発明を完成させた。
本発明の要旨は、下記に示す鋼矢板にある。
(A)化学組成が、質量%で、
C:0.01%以上0.04%未満、
Si:0.01〜0.60%、
Mn:0.5〜2.0%、
Nb:0.05%を超えて0.20%以下、
sol.Al:0.004〜0.10%および
N:0.0005〜0.0090%と、
Cu:0.01〜2.0%、
Ni:0.01〜3.0%、
Cr:0.01〜1.0%、
Mo:0.01〜1.0%、
V:0.001〜0.30%、
Ti:0.001〜0.10%および
B:0.0001〜0.0050%から選択される1種以上と、
Ca:0〜0.01%、
REM:0〜0.02%、
Mg:0〜0.01%、
Sn:0〜0.50%と、
残部:Feおよび不純物とであり、
下記の(1)式で表されるPTが20以下であり、
不純物としてのP、SおよびOがそれぞれ、
P:0.04%以下、
S:0.04%以下および
O:0.005%以下
であり、
組織が、パーライト分率:10%以下、残部:フェライトであり、
降伏強度が、460N/mm以上であり、0℃でのシャルピー吸収エネルギーが300J以上である、鋼矢板。
PT=−124+646C−12Cu−60Ni+265V+361Nb+3316Ti+14697B・・・(1)
ただし、(1)式中の元素記号は、その元素の鋼中含有量(質量%)を表す。
(B)前記化学組成が、質量%で、
Ca:0.0005〜0.01%および
REM:0.001〜0.02%、
から選択される1種以上を含有する、上記(A)に記載の鋼矢板。
(C)前記化学組成が、質量%で、
Mg:0.0005〜0.01%、
を含有する、上記(A)または(B)に記載の鋼矢板。
(D)前記化学組成が、質量%で、
Sn:0.03〜0.50%、
を含有する、上記(A)から(C)までのいずれかに記載の鋼矢板。
本発明の鋼矢板は、460N/mm以上という高い降伏強度と0℃でのシャルピー吸収エネルギーで300J以上という優れた靱性を有するので、自立式またはタイロッド式の工法に用いる鋼矢板として好適である。本発明の鋼矢板は、特にタイロッド式に用いる鋼矢板として好適である。本発明の鋼矢板は溶接性にも優れているため、溶接作業も容易に実施することができる。
種々の化学組成を有する鋼を用いて、鋼矢板のウェブの圧延を模擬した圧延条件(圧延終了温度が900℃以上で、かつ、圧延中または圧延後に加速冷却を適用しないという条件)で、板厚が28mmの鋼材を圧延した場合における、(1)式で表されるPTと幅10mmの標準Vノッチ試験片を用いた場合の破面遷移温度(vTs)との関係を示す図である。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、化学組成における各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
[1]鋼矢板の化学組成について:
C:0.01%以上0.04%未満
Cは、鋼材の強度を高める作用を有する。この効果を得るために、C含有量は0.01%以上とする。しかし、Cの含有量が0.04%以上となると、上述した優れた靱性の確保、さらには優れた溶接性の確保が難しくなる場合がある。よって、C含有量は0.01%以上0.04%未満とする。C含有量は0.02%以上とすることが望ましく、0.03%以上とすることがさらに望ましい。
Si:0.01〜0.60%
Siは、脱酸作用を有する元素である。この効果を得るために、Si含有量は0.01%以上とする。しかし、Siの含有量が0.60%を超えると、母材および溶接熱影響部の靱性が著しく悪化する。よって、Si含有量は0.01〜0.60%とする。好ましい下限は0.03%であり、より好ましい下限は0.05%である。好ましい上限は0.45%であり、より好ましい上限は0.20%である。
Mn:0.5〜2.0%
Mnは、鋼材の強度を高める作用を有する。この効果を得るために、Mn含有量は0.5%以上とする。しかし、その含有量が2.0%を超えると、溶接割れが起こりやすくなる。このため、Mnの含有量は0.5〜2.0%とする。好ましい下限は1.0%であり、より好ましい下限は1.2%である。また、好ましい上限は1.7%、より好ましい上限は1.6%である。
Nb:0.05%を超えて0.20%以下
Nbは、鋼材の強度を向上させる効果を有する。この効果を得るために、Nbは0.05%を超えて含有させる。しかし、その含有量が0.20%を超えると、母材と溶接熱影響部の靱性が悪化する。よって、Nbの含有量を0.05%を超えて0.20%以下とする。好ましい下限は0.055%であり、より好ましい下限は0.06%である。好ましい上限は0.15%であり、より好ましい上限は0.10%である。
sol.Al:0.004〜0.10%
Alは、脱酸作用を有する元素である。この効果を得るために、Alをsol.Al(「酸可溶Al」)として0.004%以上含有させる。しかし、sol.Al含有量が0.10%を超えると、溶接熱影響部の靱性が悪化する場合がある。よって、sol.Al含有量は0.004〜0.10%とする。好ましい下限は0.005%である。好ましい上限は0.050%であり、より好ましい上限は0.030%である。
N:0.0005〜0.0090%
Nは、Ti、B、Nb、Al、Vとともに析出物を形成し、母材および溶接熱影響部の強度や靱性を改善するのに大変有効な場合がある。これらの効果を得るために、Nを0.0005%以上含有させる。しかし、その含有量が0.0090%を超えると、母材および溶接熱影響部の靱性が悪化する。よって、N含有量は0.0005〜0.0090%とする。好ましい下限は0.0020%である。好ましい上限は0.0060%である。
本発明の鋼矢板は、強度、靱性を向上させるために、Cu、Ni、Cr、Mo、V、TiおよびBから選択される1種以上を、下記に述べる量で含有する。
Cu:0.01〜2.0%
Cuは、鋼材の強度を向上させるのに有効な元素である。この効果は、Cuを0.01%以上含有させた場合に得られる。しかし、Cu含有量が2.0%を超えると、鋼材の表面性状および靱性が悪化し、溶接割れが起こりやすくなる。よって、Cuを含有させる場合の含有量は0.01〜2.0%とする。好ましい下限は0.10%である。好ましい上限は0.50%である。
Ni:0.01〜3.0%
Niは、鋼材の強度および靱性を向上させるのに有効な元素である。この効果は、Niを0.01%以上含有させた場合に得られる。しかし、Ni含有量が3.0%を超えると、鋼材の表面性状が悪化することがある。よって、Niを含有させる場合には、その含有量を0.01〜3.0%とする。好ましい下限は0.10%である。好ましい上限は1.0%、より好ましい上限は0.50%である。
Cr:0.01〜1.0%
Crは、鋼材の強度を向上させるのに有効な元素である。この効果は、Crを0.01%以上含有させた場合に得られる。しかし、Cr含有量が1.0%を超えると、溶接割れが起こりやすくなる。よって、Crを含有させる場合には、その含有量を0.01〜1.0%とする。好ましい下限は0.10%である。好ましい上限は0.50%である。
Mo:0.01〜1.0%
Moは、鋼材の強度を向上させるのに有効な元素である。この効果は、Moを0.01%以上含有させた場合に得られる。しかし、Mo含有量が1.0%を超えると、溶接割れが起こりやすくなる。よって、Moを含有させる場合には、その含有量を0.01〜1.0%とする。好ましい下限は0.10%である。好ましい上限は0.50%である。
V:0.001〜0.30%
Vは、鋼材の強度を向上させるのに有効な元素である。この効果は、Vを0.001%以上含有させた場合に得られる。しかし、V含有量が0.30%を超えると靱性が悪化するおそれがある。よって、Vを含有させる場合には、その含有量を0.001〜0.30%とする。好ましい下限は0.010%であり、より好ましい下限は0.040%である。好ましい上限は0.15%である。
Ti:0.001〜0.10%
Tiは、鋼材の強度を向上させるのに有効な元素であり、また、Nとともに析出物(TiN)を形成し、溶接熱影響部の靱性を改善するのにも有効な元素である。さらに、Tiには、固溶N量を調整して、B(ボロン)の働きを制御する効果もある。これらの効果は、Tiを0.001%以上含有させた場合に得られる。しかし、その含有量が0.10%を超えると、母材と溶接熱影響部の靱性が悪化する。よって、Tiを含有させる場合には、その含有量は0.001〜0.10%とする。好ましい下限は0.005%である。好ましい上限は0.025%であり、より好ましい上限は0.020%であり、さらに好ましい上限は0.014%である。
B:0.0001〜0.0050%
Bは、鋼材の強度を向上させるのに有効な元素である。また、Nとともに析出物(BN)を形成し、母材、溶接熱影響部の靱性を改善する効果もある。これらの効果は、Bを0.0001%以上含有させた場合に得られる。しかし、Bの含有量が0.0050%を超えると、溶接割れが起こりやすくなる。よって、Bを含有させる場合には、その含有量を0.0001〜0.0050%とする。好ましい下限は0.0005%である。好ましい上限は0.0025%であり、より好ましい上限は0.0020%である。
なお、Cu、Ni、Cr、Mo、V、TiおよびBから選択される2種以上を含有させる場合には、その合計含有量を2.0%以下とすることが好ましい。合計含有量は1.0%以下とするのがより好ましい。
Ca:0〜0.01%、
Caは、硫化物(特にMnS)の形態を制御し、靱性を向上させるのに有効な元素である。この効果を得るために、Caを含有させてもよい。ただし、その含有量が過剰な場合、Caを含む介在物が粗大となる。粗大化した介在物がクラスター化すると、鋼の清浄度を害し、溶接性にも悪影響を及ぼすことがある。よって、Caを含有させる場合には、その含有量は0.01%以下とする。Caの含有量は、溶接性の観点から0.006%以下にすることが好ましい。
一方、前記したCaの効果を安定して得るためには、Caの含有量は、0.0005%以上とすることが好ましい。
REM:0〜0.02%、
REMは、硫化物(特にMnS)の形態を制御し、靱性を向上させるのに有効な元素である。この効果を得るために、REMを含有させてもよい。ただし、その含有量が過剰な場合、REMを含む介在物が粗大となる。粗大化した介在物がクラスター化すると、鋼の清浄度を害し、溶接性にも悪影響を及ぼすことがある。よって、REMを含有させる場合には、その含有量は0.02%以下とする。REMの含有量は0.01%以下とすることが好ましい。
一方、前記したREMの効果を安定して得るためには、REMの含有量は、0.001%以上とすることが好ましい。
なお、「REM」とは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、これらの元素から選択される1種以上を含有させることができる。REMの含有量は上記元素の合計量を意味する。
上記のCaおよびREMは、そのうちのいずれか1種のみ、または、2種の複合で含有させることができる。なお、これらの元素の2種を複合して含有させる場合の合計含有量の上限は、0.03%である。合計含有量は0.02%以下とするのが好ましい。
Mg:0〜0.01%、
Mgは、微細に分散した酸化物を形成し、溶接熱影響部のオーステナイト粒径の粗大化を抑制して靱性を向上させる効果を発揮する。この効果を得るために、Mgを含有させてもよい。ただし、Mg含有量が0.01%を超えると、粗大な酸化物を生成して靱性を劣化させることがある。このため、Mgを含有させる場合には、その含有量は0.01%以下とする。Mgの含有量は0.005%以下とすることが好ましい。
一方、前記したMgの効果を安定して得るためには、Mgの含有量は、0.0005%以上とすることが好ましい。
Sn:0〜0.50%、
Snは、Sn2+となって溶解し、腐食を抑制する作用を有する。これは、Sn2+が腐食促進作用を有するFe3+を速やかに還元するからである。また、Snは、鋼のアノード溶解反応を抑制し耐食性を向上させる作用も有する。これらの効果を得るためにSnを含有させてもよい。ただし、Sn含有量が0.50%を超えると、これらの効果は飽和する。よって、Snを含有させる場合には、その含有量を0.50%以下とする。Sn含有量の好ましい上限は0.30%である。
一方、前記したSnの効果を安定して得るためには、Sn含有量の下限は、0.03%とすることが好ましく、0.05%とすることが一層好ましい。
PT:20以下
本発明に係る鋼矢板は、
PT=−124+646C−12Cu−60Ni+265V+361Nb+3316Ti+14697B・・・(1)
で表されるPTが、20以下でなければならない。
既に述べたとおり、上記(1)式中の元素記号は、その元素の鋼中含有量(質量%)を意味する。
鋼中の各元素をそれぞれ規定するだけでは、鋼矢板のウェブの圧延を模擬した圧延条件(圧延終了温度が900℃以上で、かつ、圧延中または圧延後に加速冷却を適用しない条件)で、板厚が28mmの鋼材を圧延した場合に、降伏強度が460N/mm以上で、かつ優れた靱性を有する鋼矢板を得ることができないことがある。
そのため、本発明者らは、種々の化学組成を有する鋼を用いて、上記の圧延条件で圧延する実験を数多く実施した。その結果、上記のPTを20以下にした場合に、図1に示すように、幅10mmの標準Vノッチ試験片を用いた場合の破面遷移温度(vTs)が低下して靱性が良好になることが明らかになり、高い0℃でのシャルピー吸収エネルギーと高い降伏強度との両立が可能になることを見出した。PTは、10以下とすることがより好ましく、0以下とすることがさらに好ましく、−10以下とすることが一層好ましい。なお、PTの下限は、計算精度を考慮して−150とする。
本発明の鋼矢板において、その化学組成の残部は、Feおよび不純物である。不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石あるいはスクラップ等のような原料を始めとして、製造工程の種々の要因によって混入するもの、が例示される。
なお、P、SおよびOは、不純物としての含有量が高いと、鋼の特性を顕著に悪化させる可能性がある。よって、これらの元素については、その含有量を下記の範囲に制限する必要がある。
P:0.04%以下
Pは、鋼材中に不純物として存在し、靱性を悪化させる元素である。そのため、P含有量は0.04%以下とする必要がある。なお、不純物元素としてのP含有量はできる限り少なくすることが望ましいが、0.04%以下であれば大きな問題がないので、その上限を0.04%とする。好ましい上限は0.02%である。より好ましい上限は0.012%である。
S:0.04%以下
Sは、鋼材中に不純物として存在し、靱性に有害な元素である。そのため、S含有量は0.04%以下とする必要がある。なお、不純物元素としてのS含有量はできる限り少なくすることが望ましいが、0.04%以下であれば大きな問題がないので、その上限を0.04%とする。好ましい上限は0.01%であり、より好ましい上限は0.007%であり、さらに好ましい上限は0.004%である。
O:0.005%以下
O(酸素)は、鋼材中に不純物として存在し、母材靱性に悪影響を及ぼす元素である。そのため、O含有量は0.005%以下とする必要がある。なお、不純物元素としてのO含有量はできる限り少なくすることが望ましいが、0.005%以下であれば大きな問題がないので、その上限を0.005%とする。好ましい上限は0.003%であり、より好ましい上限は0.002%である。
[2]鋼矢板のミクロ組織と降伏強度について:
本発明の鋼矢板は、[1]項に記載の化学組成を有し、さらに、
組織が、パーライト分率:10%以下、残部:フェライト、
であって、
降伏強度が、460N/mm以上、
である。
前述した鋼矢板のウェブの圧延を模擬した圧延条件で、板厚が28mmの鋼材を圧延した場合、そのミクロ組織はフェライトとパーライトを含む組織となる。なお、本明細書でいう残部の「フェライト」には、分類法によって「(グラニュラー)ベイニティックフェライト」や「ベイナイト」などと称されるものを含む。
パーライトは、引張強度(TS)を高める効果があるが、その分率(面積率)が大きくなると0℃でのシャルピー吸収エネルギーで300J以上という優れた靱性の確保が困難になる。このため、パーライト分率は10%以下とする。パーライト分率は、5%以下とすることが好ましい。なお、パーライト分率は低い方がよく、0%が最適である。
また、降伏強度が460N/mm以上であれば、例えばタイロッド式工法の場合にも安定して適用することができる。このため、降伏強度は460N/mm以上とする。降伏強度の上限は、660N/mmである。
[3]鋼矢板の製造条件について
組織が、パーライト分率が10%以下、残部がフェライトであって、降伏強度が、460N/mm以上である本発明の鋼矢板は、例えば、次のようにして得ることができる。
まず、転炉、電気炉などを用いて溶製し、化学組成を[1]項に記載したものに調整する。
化学組成を調整した溶鋼は、次に、インゴットに鋳造して鋼塊にし、その後の熱間加工によって、スラブ、ブルーム、ビレットなどいわゆる「鋼片」に加工してもよい。また、溶鋼を連続鋳造して、直接にスラブ、ブルーム、ビレットなどいわゆる「鋼片」にしてもよい。
次いで、上記のようにして得た鋼片を用いて、加熱、圧延を行うことで鋼矢板を製造することができる。加熱、圧延における各工程の好ましい条件を以下に示す。
圧延前の加熱温度と加熱時間は、鋼材の熱間圧延を容易に行うため、それぞれ1000℃以上、1時間以上とすることが好ましい。この温度、時間で圧延前の加熱を行えば、炭窒化物の固溶が促進するなどの効果が得られ、強度および靱性が向上する。加熱温度は、1200℃以上とするのがより好ましい。ただし、加熱温度が高すぎる場合や加熱時間が長すぎる場合には、オーステナイト結晶粒が粗大化して靱性が劣化することがある。したがって、加熱温度は1350℃以下とするのが好ましく、また加熱時間は10時間以下とするのが好ましい。
圧延は、全ての温度域における合計圧下率が50%以上となる条件で行うことが好ましく、75%以上となる条件で行うことがより好ましく、85%以上となる条件で行うことがさらに好ましい。これにより、オーステナイト結晶粒が小さくなり、靱性が改善する。
ここで、「全ての温度域における合計圧下率」とは、{(圧延前の鋼片の厚さ)−(圧延仕上厚さ)}/(圧延前の鋼片の厚さ)×100(%)を意味する。
また圧延は、900℃以下の温度域における合計圧下率が20%以下となる条件で行うことが好ましい。これにより、圧延荷重を小さくすることができ、良好な形状を確保することが容易になる。900℃以下の温度域における合計圧下率は10%以下とするのがより好ましい。
ここで、「900℃以下の温度域における合計圧下率」とは、{(900℃に達した時点の厚さ)−(圧延仕上厚さ)}/(900℃に達した時点の厚さ)×100(%)を意味する。
さらに、圧延仕上温度は、700℃以上とすることが好ましい。これにより、良好な形状がより確実に得られる。好ましい下限は750℃であり、より好ましい下限は800℃である。
上記各温度は、被圧延材の代表位置(例えば中央部)における表面温度を意味する。
圧延中、圧延後の加速冷却を適用することにより、強度および靱性を改善できる場合があるが、変形が懸念されるため加速冷却は特に必要とされない。ただし、本発明の実施において、圧延中の圧延設備の冷却水が鋼材にかかる場合もある。また、圧延後は放冷することが好ましいが、本発明の実施において、冷却床においてスプレー水が鋼材にかかる場合もある。しかし、上述した程度の水がかかることによる鋼矢板の特性への影響はほとんどない。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する厚さ250mmの鋼片を、1250℃に加熱し、加熱後にその温度で4時間保持し、熱間圧延して、鋼矢板を作製した。表2に、熱間圧延の条件を示す。なお、仕上板厚は28mmとし、圧延後は放冷した。
得られた各鋼板について、常温での引張試験および0℃でのシャルピー衝撃試験を行った。また、合わせて組織観察も行った。それぞれの試験は、下記のとおりに行った。各試験結果を表2に併記した。
<引張試験>
板厚中央部から、試験片の軸が圧延方向に対して平行になるように採取したJIS Z 2241−2011に規定された1A号板状引張試験片を用いて、室温で引張試験を実施し、降伏強度(YS。0.2%耐力とした)、および引張強度(TS)を求めた。YSは460N/mm以上であることを、TSは550N/mm以上であることを目標とした。
<シャルピー衝撃試験>
板厚中央部から、試験片の長辺が圧延方向に対して平行になるように採取したJIS Z 2242−2005に規定された幅10mmの標準Vノッチ試験片を用いてシャルピー衝撃試験を実施し、0℃でのシャルピー吸収エネルギー(vE0。試験片3本の平均値)を求めた。vE0は300J以上であることを目標とした。
<組織観察>
ミクロ組織観察は、圧延方向と板厚方向を含む面を鏡面研磨し、ナイタールで腐食して試料を作製し、光学顕微鏡を用いて、板厚方向中央部を倍率500倍で5視野観察した。得られた組織については、画像処理により組織を解析した。なお、主たる組織はフェライトであって、組織が硬軟複合組織と明確に分離できる場合に硬質組織はパーライトであったので、表2にはパーライト面積率(分率)のみを記載した。
Figure 0006314527
Figure 0006314527
表2に示すように、本発明例の試験番号1〜8はいずれも、YSが460N/mm以上、TSは550N/mm以上、vE0が300J以上であり、パーライト分率が10%以下であった。本発明例のうち、試験番号8は、全ての温度域における合計圧下率が41%とやや低いため、vE0が300Jと、他の本発明例よりも低い水準にとどまった。
個々の元素の含有量は本発明で規定する範囲内であるものの、(1)式で表されるPTが本発明で規定する条件を満足しない鋼9を用いた比較例の試験番号9は、vE0が目標値に達しない98Jであった。
さらに、CとNbの含有量と(1)式で表されるPTが本発明で規定する条件から外れる鋼10を用い、しかもパーライト分率も本発明で規定する条件を満足しない比較例の試験番号10は、YSが460N/mmを下回って、本発明の規定から外れ、さらにvE0が目標値に達しない39Jであった。
本発明の鋼矢板は、460N/mm以上という高い降伏強度と0℃でのシャルピー吸収エネルギーで300J以上という優れた靱性を有するので、自立式またはタイロッド式の工法に用いる鋼矢板として好適である。本発明の鋼矢板は、特にタイロッド式に用いる鋼矢板として好適である。本発明の鋼矢板は溶接性にも優れているため、溶接作業も容易に実施することができる。

Claims (4)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C:0.01%以上0.04%未満、
    Si:0.01〜0.60%、
    Mn:0.5〜2.0%、
    Nb:0.05%を超えて0.20%以下、
    sol.Al:0.004〜0.10%および
    N:0.0005〜0.0090%と、
    Cu:0.01〜2.0%、
    Ni:0.01〜3.0%、
    Cr:0.01〜1.0%、
    Mo:0.01〜1.0%、
    V:0.001〜0.30%、
    Ti:0.001〜0.10%および
    B:0.0001〜0.0050%から選択される1種以上と、
    Ca:0〜0.01%、
    REM:0〜0.02%、
    Mg:0〜0.01%、
    Sn:0〜0.50%と、
    残部:Feおよび不純物とであり、
    下記の(1)式で表されるPTが20以下であり、
    不純物としてのP、SおよびOがそれぞれ、
    P:0.04%以下、
    S:0.04%以下および
    O:0.005%以下
    であり、
    組織が、パーライト分率:10%以下、残部:フェライトであり、
    降伏強度が、460N/mm以上であり、0℃でのシャルピー吸収エネルギーが300J以上である、鋼矢板。
    PT=−124+646C−12Cu−60Ni+265V+361Nb+3316Ti+14697B・・・(1)
    ただし、(1)式中の元素記号は、その元素の鋼中含有量(質量%)を表す。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    Ca:0.0005〜0.01%および
    REM:0.001〜0.02%、
    から選択される1種以上を含有する、請求項1に記載の鋼矢板。
  3. 前記化学組成が、質量%で、
    Mg:0.0005〜0.01%、
    を含有する、請求項1または2に記載の鋼矢板。
  4. 前記化学組成が、質量%で、
    Sn:0.03〜0.50%、
    を含有する、請求項1から3までのいずれかに記載の鋼矢板。
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