JP6361278B2 - 圧延鋼材の製造方法 - Google Patents
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Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14・・・・(2)
ここで、上記式(1)、式(2)中の元素記号は、その元素の質量%での鋼中含有量を表す。
C:0.06〜0.15%
Cは、母材及び溶接部の強度を高める作用を有する。しかし、その含有量が0.06%未満では強度が不足する可能性がある。一方、Cの含有量が0.15%を超えると、母材及び溶接部の靱性低下が著しくなる可能性がある。なお、より大きな効果を得るために、Cの含有量は、0.12%以下が好ましく、0.10%以下がより好ましい。
Siは、製鋼における脱酸作用を有し、また母材及び溶接部の強度を確保する作用を有する。しかしながら、その含有量が0.01%未満では添加効果に乏しい。一方、Siの含有量が多くなり、特に、Siの含有量が0.50%を超えると、母材及び溶接部の靱性低下が著しくなる可能性がある。なお、より大きな効果を得るために、Siの含有量は、0.05%以上が好ましく、0.10%以上がより好ましい。また、Siの含有量は、0.40%以下が好ましく、0.30%以下がより好ましい。
Mnは、母材及び溶接部における強度及び靱性を確保するために必要な元素である。しかしながら、Mnの含有量が0.60%未満では十分な添加効果が得られない。一方、Mnの含有量が2.0%を超えると、母材及び溶接部の靱性低下が顕著になる可能性がある。なお、より大きな効果を得るために、Mnの含有量は、0.80%以上が好ましく、0.9%以上がより好ましい。また、Mnの含有量は、1.6%以下が好ましく、1.3%以下がより好ましい。
Crは、母材及び溶接部の強度を確保する上で有用である。Crの含有量が0.1%未満では十分な添加効果が得られないため、含有量を0.1%以上とすることが必要である。一方、Crの含有量が1.5%を超えると溶接割れが顕著になる。なお、より大きな効果を得るために、Crの含有量は、0.2%以上が好ましく、0.3%以上がより好ましい。また、Crの含有量は、1.2%以下が好ましく、0.8%以下がより好ましい。
Nbは、母材の強度及び靱性を向上させる上で有用である。Nbの含有量が0.005%未満では十分な添加効果が得られないため、含有量を0.005%以上とすることが必要である。一方、Nbの含有量が0.10%を超えると、溶接部靱性の著しい低下を招く可能性がある。なお、より大きな効果を得るために、Nbの含有量は、0.007%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。また、Nbの含有量は、0.070%以下が好ましく、0.050%以下がより好ましい。
Tiは、鋼塊、なかでも鋳片の表面性状を改善する上で有用である。また、TiN析出物には特に溶接部の靱性を高める作用もある。Tiの含有量が0.005%未満では十分な添加効果が得られない。一方、Tiの含有量が0.05%を超えると靱性低下が顕著になる可能性がある。なお、より大きな効果を得るために、Tiの含有量は、0.007%以上がより好ましい。また、Tiの含有量は、0.03%以下が好ましく、0.02%以下がより好ましい。
Bは、母材及び溶接部の強度を確保する上で有用である。Bの含有量が0.0005%未満では十分な添加効果が得られないため、含有量を0.0005%以上とすることが必要である。一方、Bの含有量が0.0025%を超えると母材の靱性低下が顕著になる。なお、より大きな効果を得るために、Bの含有量は、0.0008%以上がより好ましい。また、Bの含有量は、0.0020%以下が好ましく、0.0015%以下がより好ましい。
Alは、製鋼における脱酸に有効な元素である。しかしながら、sol.Al(酸可溶Al)の含有量が0.003%未満では十分な添加効果が得られない。一方、sol.Alの含有量が0.10%を超えると、介在物の生成量が多くなり母材及び溶接部の靱性劣化が著しくなる可能性がある。なお、より大きな効果を得るために、sol.Alの含有量の下限値は、0.006%以上が好ましく、0.01%以上がより好ましい。また、sol.Alの含有量は、0.06%以下が好ましく、0.05%以下がより好ましい。
Cuは、添加しなくても良いが、母材及び溶接部の強度と靱性を確保する上で有用である。Cuの含有量が0.1%未満では十分な添加効果が得られないため、添加する場合には含有量を0.1%以上とすることが好ましい。一方、Cuの含有量が2%を超えると、熱間加工時に割れが生じたり、母材及び溶接部の靱性劣化が著しくなったりする可能性がある。なお、より大きな効果を得るために、Cuの含有量は、0.2%以上が好ましく、0.3%以上がより好ましい。また、Cuの含有量は、0.9%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。
Niは、添加しなくても良いが、母材及び溶接部の強度と靱性を確保する上で有用である。Niの含有量が0.1%未満では十分な添加効果が得られないため、添加する場合には含有量を0.1%以上とすることが好ましい。一方、Niの含有量が3%を超えると表面疵が著しくなる可能性がある。なお、より大きな効果を得るために、Niの含有量は、0.5%以上が好ましく、0.7%以上がより好ましい。また、Niの含有量は、2%以下が好ましく、1.5%以下がより好ましい。さらに、Cuの含有による熱間加工時の割れを防止するため、Cuを含有させる場合は、Cuの含有量の50%以上のNiを含有させることが好ましく、Cuの含有量の75%以上のNiを含有させることがより好ましい。
Moは、添加しなくても良いが、母材及び溶接部の強度を確保するために有用である。Moの含有量が0.1%未満では十分な添加効果が得られないため、添加する場合には含有量を0.1%以上とすることが好ましい。一方、Moの含有量が1%を超えると溶接割れが顕著になる。なお、より大きな効果を得るために、Moの含有量は、0.2%以上が好ましく、0.3%以上がより好ましい。また、Moの含有量は、1%以下が好ましく、0.6%以下がより好ましい。
Vは、添加しなくても良いが、母材及び溶接部の強度を確保する上で有用である。Vの含有量が0.01%未満では十分な添加効果が得られないため、添加する場合には含有量を0.01%以上とすることが好ましい。一方、Vの含有量が0.1%を超えると母材の靱性低下が顕著になる。なお、より大きな効果を得るために、Vの含有量は、0.02%以上が好ましく、0.03%以上がより好ましい。また、Vの含有量は、0.8%以下が好ましく、0.06%以下がより好ましい。
Pは、不純物として鋼中に不可避的に存在する元素である。また、Pは、圧延鋼材の靱性を低下させるとともに、溶接時に高温割れを生じさせる。特に、その含有量が0.025%を超えると、靱性の低下と溶接時の高温割れ発生が著しくなる。Pは少ないほど好ましい不純物であるため、その下限は特に規定するものではない。なお、より大きな効果を得るために、Pの含有量は、0.020%以下が好ましく、0.010%以下がより好ましい。
Sは、母材及び溶接部の靱性劣化を招く。特に、含有量が0.015%を超えると、母材及び溶接部の靱性劣化が著しくなる。Sは少ないほど好ましい不純物であるため、その下限は特に規定されない。なお、より大きな効果を得るために、Sの含有量は、0.010%以下が好ましく、0.005%以下がより好ましい。
Nは、不純物として鋼中に0.001%以上含まれる。Nは、Ti析出物を形成する。Nは、高温加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制し、特に溶接部の靱性を高めることに寄与する場合もある。一方、Nの含有量が0.010%を超えると、母材と溶接部の靱性低下が大きくなる。なお、より大きな効果を得るために、Nの含有量は、0.002%以上が好ましく、0.003%以上がより好ましい。また、Nの含有量は、0.008%以下が好ましく、0.006%以下がより好ましい。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B・・・・(1)
上記式(1)は、溶接割れ感受性組成として知られている式であるが、母材の特性を良好にするために有用なパラメータである。Pcmの値が0.21%未満では、目標とする母材強度の確保が難しい。一方、Pcmの値が0.30%を超えると母材強度が高くなりすぎたり、母材靱性の低下も起こり易くなったりする。なお、より大きな効果を得るために、Pcmの値は、0.22%以上が好ましく、0.24%以上がより好ましい。また、Pcmの値は、0.27%以下が好ましく、0.26%以下がより好ましい。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14・・・・(2)
上記の化学組成を有する場合であっても、強度または靭性が不足する可能性や、降伏比が上昇する可能性がある。また、溶接性の指針である炭素当量が高くなる可能性がある。そのため、本発明の実施形態に係る圧延鋼材においては、式(2)で表されるCeqが0.45〜0.59となるように化学組成を調整する必要がある。なお、式(2)は、JIS G3136に規定されている「炭素当量」の式と同様である。
目標とする高強度及び低降伏比を得るために、圧延鋼材のミクロ組織において、ベイナイト組織とマルテンサイト組織の合計の比率は80%超とする。目標の特性をより確実に得るために、ベイナイト組織とマルテンサイト組織の合計の比率は90%超とすることがより好ましい。
本発明の実施形態に係る圧延鋼材は、降伏強度が700MPa以上、引張強度が780MPa以上且つ1000MPa以下、降伏比が85%以下という機械特性を有する。
本発明の実施形態に係る圧延鋼材は、上記の化学組成、ミクロ組織及び機械特性を有していれば、いかなる製造方法によって製造されてもよいが、以下の製造方法によって、効率的且つ安定的に製造することができる。
まず、上述の化学組成を有する鋼塊又は鋼片を、所定の形状及び寸法に熱間圧延する。以下の説明において、特に言及がなければ、温度は鋼の表面温度を意味する。なお、圧延ロールとの接触による抜熱や加速冷却などによって鋼の表面温度が下がった後に復熱する場合には、復熱後の表面温度を意味する。
加熱温度を1000℃以上とすることで熱間加工が容易になると共に、Nb、V、Ti、Bなどが基地に固溶して、引張強度増加の効果が得られる。また、加熱温度を1350℃以下とすることによって結晶粒の粗大化が抑制され、良好な靱性が得られる。なお、より大きな効果を得るために、加熱温度を1200〜1330℃とすることが好ましく、1250〜1300℃とすることがより好ましい。なお、特にNb、Tiが基地に固溶して引張強度が増加する効果をより確実に得るために、加熱温度を1200℃以上に保持する時間を1時間以上とすることが好ましい。
「950℃超、加熱温度以下での累積圧下率」とは、圧延前の板厚をt0、圧延中に950℃に達したときの板厚をt1として、(t0−t1)/t0×100により得られる値を意味する。
「950℃以下での累積圧下率」とは、950℃になったときの板厚をt1、熱間圧延終了時の板厚をt2として、(t1−t2)/t1×100により得られる値を意味する。
圧延仕上温度が950℃よりも高い場合には、良好な靱性を得ることが困難になる。一方、圧延終了温度が700℃よりも低い場合には、熱間圧延後の加速冷却前にフェライト変態が進行し易いため、所望のミクロ組織と引張強度を得ることが困難になる。なお、より良好な強度と靱性を得るために、圧延仕上温度を750〜920℃とすることが好ましく、800〜860℃とすることがより好ましい。
加速冷却開始温度:700℃以上
上記の熱間圧延が終了したら、加速冷却を行う。加速冷却開始温度が低い場合には、所望の引張特性及びシャルピー特性を得ることが困難になるため、加速冷却開始温度は700℃以上とする。
加速冷却開始温度が高い場合には、所望の引張特性及びシャルピー特性を得ることが困難になるため、加速冷却終了温度は500℃以下とする。
圧延終了後の加速冷却工程における平均冷却速度が小さすぎると、強度や靭性が劣化したり、製造能率が低下したりするなどの問題が生じる。そのため、平均冷却速度は1℃/s以上とする。しかし、この冷却工程における平均冷却速度が大きすぎると、伸びや靭性が低下する場合があるため、平均冷却速度は20℃/s以下とする。なお、良好な機械的性質をより確実に得るために、平均冷却速度は9℃/s以下とすることが好ましく、5℃/s以下とするのがさらに好ましい。
Claims (1)
- 質量%で、
C:0.06〜0.15%、
Si:0.01〜0.50%、
Mn:0.60〜2.0%、
Cr:0.1〜1.5%、
Nb:0.005〜0.10%、
Ti:0.005〜0.05%、
B:0.0005〜0.0025%、
sol.Al:0.003〜0.10%と、
Cu:2%以下、Ni:3%以下、Mo:1%以下、V:0.1%以下から選択される1種以上と、
残部:Fe及び不純物とからなり、
前記不純物は、P:0.025%以下、S:0.015%以下、N:0.010%以下であり、
下記式(1)によって計算されるPcmの値が0.21〜0.30であり、下記式(2)によって計算されるCeqの値が0.45〜0.59である化学組成を有する鋼塊又は鋼片を、1000〜1350℃の加熱温度で加熱し、950℃超で前記加熱温度以下での累積圧下率が10%以上、950℃以下での累積圧下率が10%以上、圧延仕上温度が700〜950℃の条件で圧延し、その後、加速冷却開始温度が700℃以上、加速冷却停止温度が500℃以下、加速冷却開始から加速冷却終了までの平均冷却速度が1〜20℃/sとなる条件で、複数回の加速冷却を繰り返す、
ベイナイト組織及びマルテンサイト組織の合計の比率が80%超であり、
引張強度が780MPa以上、降伏比が85%以下、延性−脆性破面遷移温度が−20℃以下である、圧延鋼材の製造方法。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B・・・・(1)
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14・・・・(2)
ここで、上記式(1)、式(2)中の元素記号は、その元素の質量%での鋼中含有量を表す。
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