JP6314248B2 - 酸化鉛含有廃棄物を回収利用する方法 - Google Patents

酸化鉛含有廃棄物を回収利用する方法 Download PDF

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Description

本発明は酸化鉛含有廃棄物を回収利用する方法に関する。
鉛蓄電池は19世紀半ばにフランスの技師プランテによって発明されて以来、安価で性能に信頼性の高い二次電池として自動車、電気自動車、エネルギー貯蔵など幅広い分野で使用されている。最新の統計によると、リチウムイオン電池とニッケル水素電池からの激しい競争を受けているにもかかわらず、鉛蓄電池がそのユニークな安全性能とコストパフォーマンスを持ちながら二次電池市場シェアの65.2%を占め、392.94億ドルに達したことを示してくれた。グロバール鉛亜鉛電池研究チームよりのデーターから分かるように、2012年の鉛の全世界消費量が1062万トンでもあったが、なかでも約82%が鉛蓄電池の生産に使われた。また、中国非鉄金属協会の統計データーによると、2012年中国の鉛消費総量が464.6万トンであるが、なかでも鉛蓄電池の製造に使用したのは330万トンであることを示してくれた。2012年、米国で最後の鉛原料鉱物製錬企業が閉鎖されたことに伴い、ただ15社の鉛再生企業だけを保留するため、このような膨大な鉛蓄電池消費量に直面したとき、廃棄鉛蓄電池が将来の主要な社会鉱物として、今後ますます鉛精錬の主原料となることを確信している。
既存の鉛回収モードは基本的に高温冶金である。一般的に、鉛蓄電池の鉛とは主に極板格子及び耳部に使用する鉛合金と正極・負極に含まれる鉛ペーストに分けられる。鉛ペーストにPb(10〜15wt.%)と、PbO(10〜20wt.%)と、PbO2(25〜35wt.%)及びPbSO4(30〜45wt.%)などの4つの主要成分を含むので、鉛ペーストから鉛を回収するのは回収過程全体のポイントであると言われる。現代高温冶金事業者はイタリアEngitec社製の全自動鉛蓄電池解体・分離装置を利用するほかに、炭酸ナトリウムよりの仮脱硫と排気ガスの炭酸ナトリウム溶液よりの二酸化硫黄吸収装置を採用するので、製錬工程に当たる二酸化硫黄の排出量を大幅に削減した。代表的な事業者は豫光金鉛、湖北金洋、浙江天能などがある。ただ、現代では、高温冶金工程は大規模連続生産を可能にし、技術も成熟しているが、鉛含有材料に対する製錬は1100〜1300℃の高温で行わなければならないので、高エネルギー消費という課題を抱える一方、高温において蒸発によって鉛蒸気やPM2.5未満の鉛含有粉じん及び製錬過程に生じた鉛含有残渣や煙突ダストなどを発生することに避けられないため、鉛の回収率が通常95〜97%しかなくなる。
高温冶金による高エネルギー消費と鉛排出などの欠点を克服するために、湿式鉛製錬法はより清潔な次世代鉛回収技術である。既存のヘキサフルオロケイ酸を電解し鉛を得るための代表である湿式法による鉛の再生技術は鉛ペースト処理技術が煩雑であり、消費電力が700〜1000kWh/トン鉛も高く、フッ素含有溶液による環境汚染及び設備の腐食により、その高い処理コストが工業生産に受けられなくなる。潘軍青などの研究チームが報告したH2-PbO燃料電池の新技術により、従来の湿式処理工程に電解を必要とする課題を解決し、燃料電池とフロー電池との特徴を取り入れ、PbOをアルカリ性NaOH溶液に溶解させることにより、H2-PbO発電の方式で高純度のPbを回収することを実現し、鉛の回収過程においてエネルギー消費や電解コストを大幅に削減したので、その鉛の回収コストが従来の高温冶金より低くなった(Nature Communications, 2013, 4, 2178:1-6)。将来の工業化された湿式法により鉛の回収工程では、そのコストが高温冶金法より低下する可能性があるけど、既存の鉛の回収についての構想は妥当かどうかを考えている。人類社会が鉛精錬を使い始めた数千年前からH2-PbO燃料電池技術が出現した近代に至るまで、人類は規模化された鉛回収業界において金属鉛という構想をずっと使用しているが、それに対して、近代では、鉛の主なユーザーは伝統的な鉛活字、鉛ケーブル、耐酸性鉛タンク及び鉛蓄電池からますますより単一な鉛蓄電池マーケットに傾いていく。鉛蓄電池業者にとって、鉛蓄電池の活性物質は酸化鉛であり、一部だけの精鉛から鉛−カルシウム合金などの合金格子を製造する必要がある。そこで、鉛精錬業者は大量のエネルギーを費やして酸化鉛などの鉛含有素材を粗鉛に製錬した後、電解によりその粗鉛を精鉛に精製するが、その主な得意先としての鉛蓄電池事業者は精鉛を購入し、それを融かして鉛ボールになるように鋳造し、最後にボールミルによって酸化させた酸化鉛を鉛蓄電池の活性物質として使用する。よく分かると思うが、鉛精錬事業者はその主な顧客である鉛蓄電池事業者のニーズを考えに入れなく、従来の構想に基づき大量の精鉛を生産し、その過程において大量のエネ消費や環境汚染を引き起こしたため、既存の伝統的な高温鉛冶金事業の活路は、高エネ消費及び高汚染という従来の考え方を変え、伝統的な鉛精錬工程を、酸化鉛を直接に生産することに変えるという新しい考え方を取り入れることにある。廃鉛蓄電池の回収について、如何にして廃鉛ペーストに含まれる4つの成分(Pb、PbO、PbSO4、PbO2)を有効に転化させるという効果的な方法を見つけ、高純度を有するPbOを得るかは、酸化鉛の再生技術における課題となった。公示した既存の特許文献により、いくつかの研究チームは廃鉛ペーストから酸化鉛を製造することについて試したことがある。例えば、CN103374657Aでは、炭酸ナトリウムなどの原料を用い、廃鉛ペーストとの脱硫反応をさせ、次いで、脱硫後の鉛ペーストをクエン酸溶液と反応させて乾燥し、クエン酸鉛を得る。最後にクエン酸鉛を焙焼してから超微細な酸化鉛を得る。当該発明の目的製品がPbOであるのに、PbOを作るために、クエン酸、過酸化水素及び炭酸ナトリウムなどの化学素材を大量に消費するため、原子利用の観点からみれば非常に不経済である。また、当該技術において、元の鉛ペーストに含まれた硫酸バリウムなどの不純物は分離することができない。CN103374658Aには、脱硫鉛ペースト三分法で超微細な酸化鉛を製造する方法が開示されている。当該方法は、炭酸ナトリウムにより脱硫され、及び過酸化水素により予備還元された鉛ペーストを硝酸又は酢酸で溶解する工程(1)と、酸性の鉛含有溶液と炭酸ナトリウムとの反応で炭酸鉛を得る工程(2)と、炭酸鉛を焙焼することにより、PbO、Pb3O4又はその両者の混合物を含む超微細な鉛酸化物を得る工程(3)とを含む。明らかに、当該技術における主な問題は、それが伝統的で化学素材への消耗性技術であり、鉛の回収に当たって大量の過酸化水素や硝酸及び炭酸ナトリウムなどの化学素材を消費することである。
類似に、CN102820496Aには、廃棄鉛蓄電池ペーストと酢酸とH2O2とを攪拌して反応させ、ろ過によって酢酸鉛の結晶体が得られ、最後に酢酸鉛の結晶体を高温下で2〜3h焙焼してPbO粉末を得ることが開示された。
上述で述べたように、既存の公表された酸化鉛の回収方法は、主に(1)鉛ペーストを予備還元、及び予備脱硫する工程、(2)酢酸やクエン酸又は蓚酸で予備処理した後の鉛ペーストを酢酸鉛やクエン酸鉛などの鉛塩に転化させる工程、(3)酢酸鉛やクエン酸鉛などの鉛塩を焙焼して酸化鉛を得る工程を含む。我々の目的生成物はPbOであるため、環境にやさしい鉛の回収工程は、 (1)硫酸鉛のところに脱硫剤を使用しなくてはいけない他に、その他のPb、PbO、PbO2を回収するが出来るだけ他の原子の添加を伴わないようにすること、(2)原子経済性を基となる有効な酸化鉛精製技術を提供すること、という2つの部分を含まなければならない。
潘軍青研究チームは転化中の原子経済利用率の向上について新たな研究を進めているが。初期、CN103146923Aには、鉛蓄電池の鉛ペーストを利用する新しい方法が開示され、当該方法では主に次の5つの過程を含むが、(1)鉛蓄電池の鉛ペーストと鉛粉を加熱で固相混合反応をさせる、(2)水酸化ナトリウム溶液Aをアルカリ性脱硫させる、(3)水酸化ナトリウム溶液Bで脱硫後の生成物に対して浸出を行って鉛含有アルカリ性溶液と残渣を得て、次に、浄化と冷却結晶化により酸化鉛を得る、(4)NaOH溶液Cで再結晶化してより高い純度を有するPbO結晶体を得る、(5)脱硫後のNaOH溶液AにNaOHを添加して硫酸ナトリウム結晶体を析出させ、NaOH脱硫循環を構築して副生成物である硫酸ナトリウムを得る。当該方法の特徴としては、鉛ペーストの4つの成分について、まずPbとPbO2よりの直接固相抽出でPbOを得て、しかもPbを添加して廃鉛ペーストにある余分のPbO2を消耗させる。次いで、鉛ペースト中に含まれるPbSO4だけに対して脱硫を行い、PbOとNa2SO4を生成する。最後にNaOH溶液を用いてPbOの再結晶化を行って、より純粋なPbO固体を得る。当該方法はPbとPbO2との原子経済性反応及び、NaOH溶液中でのPbOの再結晶化を生かしたものである。主に消費したNaOH原料は鉛ペーストに含まれるPbSO4に対する脱硫だけに使われるので、鉛ペーストに含まれるすべての成分を鉛塩に転化してから脱硫を行う他の方法と違うため、原子経済性の方面から酸化鉛を回収する新しい技術を開拓したといわれる。一年間研究したあげく、今現在では当該方法に存在する主な欠点がますます明らかになってきて、主に以下の欠点を含む。
1 高温固相反応と、NaOH溶液Aでの脱硫と、NaOH溶液Bでの浸出と、NaOH溶液Cでの再結晶化とNaOH添加での硫酸ナトリウム晶析という5つの工程も必要となり、プロセスが長い。そのため、工程プロセスをいかにして簡略化して回収コスト及びそのエネ消費量を低減させることに特に必要がある。
2 最初の鉛ペースト高温固相転化工程において、PbSO4が加熱前・後にいずれも反応に関与していない。そこで、この部分のPbSO4が鉛ペースト総量に対して30〜45重量%を占め、かつPbとPbO2との間に混雑されているので、まずは無駄に加熱されてエネルギーを消費した、次に大量の硫酸鉛が鉛ペーストの中に混在し、PbとPbO2との間での固相反応が不十分になるため、一部の反応しなかったPb又はPbO2粒子が製品の中に残留するようになったから、如何にしてPbSO4の影響を事前に取り消すかは、製品の品質及び収率に対して特に重要である。
本発明はプロセスが短かくエネ消費量が低い酸化鉛含有廃棄物を回収利用するための新方法を提供することを目的とする。当該方法により、高純度のPbOを得られ、当該方法は従来の酸化鉛含有廃棄物の中から高純度の酸化鉛を回収する方法に存在する長いプロセス、不十分な化学反応、不合理なエネルギー消費などの欠陥を克服することを特徴とする。
本発明は、(1)脱硫反応条件下で、酸化鉛含有廃棄物を脱硫剤とを接触させ、かつ、接触後の混合物を固液分離することにより、濾液と残渣を得る工程(1)と、
(2)上記の残渣を350〜750℃で転化反応させて、残渣に含まれる鉛含有成分を酸化鉛に転化させる工程と、を含む酸化鉛含有廃棄物の回収利用方法を提供する。
本発明の方法では、脱硫を先にしてそれから原子経済性転化過程を採用することにより、酸化鉛含有廃棄物に含まれる主な鉛含有物質PbSO4を熱媒体だけとして高温下での原子経済性転化に関与しなく、不要な熱エネルギー消費を増加させるのみならず、硫酸鉛が存在しているため反応後の主要な物質がPbOとPbSO4となり、そして少量のPbとPbO2も硫酸鉛の中に混在するようになるので原子経済性反応の転化率が低下し、脱硫や浸出-分離-結晶化など処理工程がいらなくなってはならないことを避けることができる。新方法の利点としては予備脱硫技術により、酸化鉛含有廃棄物に含まれる硫酸鉛を脱硫工程で有用なPbO又はPb(OH)2成分に変えさせると同時に、SO4 2-の除去で、SO4 2-部分の無用な熱エネルギー消費を大幅に削減したことである。
鉛酸電池分野においてα相PbOへのニーズを満たすように、本発明は、(3)工程(2)で得られた生成物をアルカリ溶液と接触させ、中のPbOが溶解した後、固液分離をすることによってPbO-アルカリ溶液を得る工程と、(4)工程(3)で得られたPbO-アルカリ溶液を結晶化させることにより、PbO結晶体とアルカリ濾液を得る工程と、及び工程(4)で得られたPbO結晶体をボールミルで結晶転移で典型的なα相の純度の高いPbOに転移させる工程と、を更に含む。実験によって、脱硫後の酸化鉛含有廃棄物に対して直接に原子経済性反応を行うと、一次結晶化と結晶転移を通して典型的なα相を有し、かつ純度が99.3%以上と高いPbOを得られることを示した。工程(4)を繰り返して実施することにより、更に、PbOの純度を99.99%以上に向上することができる。
また、本発明の好ましい実施形態によれば、原子経済性転化を420〜580℃で行うことで、反応過程におけるPbOの結晶形を更に制御することができ、より高い割合のα-PbO含有量が得られる。比較的低い反応温度であれば、原子経済性反応が自発的に行えるが、しかしながら、通常より長い反応時間が必要となり、しかも反応によって得られたPbOに赤いPb3O4を常に混在するのでPbOの純度が低下する。温度が高ければ反応の速度を大幅に高められるが、同時にβ相のPbOの含有量が高すぎたり、鉛粉塵の発生やエネルギー高消費などの欠点が伴ってくる。
原子経済性転化後の物質を特定の速度で冷却させることにより、冷却過程において、空気中の酸素でPbOに対する酸化作用を更に取り消すことができる。本発明は高温PbOを直接に噴霧冷却する方法を提供し、通常、噴霧量が酸化鉛の含有量に対して0.5〜50重量%の範囲内にあり、使用する冷却剤は水、エタノール、メタノール、アセトンから選ばれる1種又は複数種が好ましい。
脱硫後の濾液にアルカリ溶液を加えることにより、硫酸塩製品と循環的に脱硫に使えるアルカリ溶液とを直接に得ることができる。そこで、本発明における酸化鉛含有廃棄物から酸化鉛を回収する方法でPbOと硫酸塩製品のコジェネレーションができる。
また、本発明の好ましい実施形態によれば、本発明では、湿式ボールミル法を用いて工程(1)における反応釜内での攪拌脱硫過程を実現することができる。湿式ボールミル脱硫技術は以下の利点がある。
(1)ワンステップボールミル脱硫技術により、現有技術において、酸化鉛含有廃棄物に対する予備粉砕及び反応釜内での攪拌脱硫という2つの工程を必要とすることを克服した。通常、酸化鉛含有廃棄物の中に鉛蓄電池に混在している硫酸物を含有するため、既存の機械的予備粉砕加工において、含有量が10〜50ppmのFe不純物を持ち込むことがよくあるから、酸化鉛粉末の回収質量に直接な影響を及ぼしている。新技術の場合、アルカリ性NaOH及び/又はKOH溶液でのボールミル脱硫技術により、ボールミル反応装置が一つだけで、直接に酸化鉛含有廃棄物への予備粉砕と攪拌脱硫という二つの機能を実現できるのみならず、既存の機械的粉砕で発生した鉛含有粉塵の発生をほとんど回避したことで、環境を保全することができる。
(2)アルカリ性条件下で、ジルコニウムボール又は瑪瑙ボールを研磨素材とすることは、Feなどの金属不純物の持込を効果的に防止することができ、更にレベルの高い酸化鉛を製造するための技術的な基盤を提供した。
(3)湿式ボールミル加工により、後続の高温下での原子経済性反応の時間を短縮できるので、生産効率を向上すると共に省エネを図る。その原因を追究すれば、湿式ボールミル加工において、酸化鉛含有廃棄物に含まれるPbとPbO2との成分を十分に混合する一方、一部のPb及びPbO2がボールミル加工での接触によって少量的な原子経済性反応転化を発生するので、これらは、いずれも引き続いて行う迅速かつ徹底的な原子経済性反応や高温下の原子経済性反応の時間短縮に役立つ。
以下、具体的な実施形態を参照しながら本発明を詳しく説明する。それで、ここに記載する具体的な実施例は本発明に対する説明や解釈だけであり、本発明を限定するものではないことをご理解いただきたい。
本発明によれば、
(1)脱硫反応条件下で、酸化鉛含有廃棄物を脱硫剤と直接に接触させ、接触後の混合物を固液分離することにより、濾液と残渣を得る工程と、
(2)前記残渣を350〜750℃の温度で転化反応させ、残渣に含まれる鉛含有成分を酸化鉛に転化させる工程と、
(3)工程(2)で得られた生成物をアルカリ溶液と接触させ、その中のPbOを溶解させた後に、固液分離を行うことによってPbO-アルカリ溶液を得る工程と、
(4)工程(3)で得られたPbO-アルカリ溶液を結晶化させることにより、PbO結晶体とアルカリ濾液を得る工程と、
を含む、酸化鉛含有廃棄物から酸化鉛を回収する方法が提供される。
本発明に提供する方法によれば、工程(1)において、酸化鉛含有廃棄物を脱硫剤と接触させるのは、酸化鉛含有廃棄物に含まれる硫酸鉛を除去することを目的とする。それで、本発明に適用する脱硫剤は、当該分野に周知される酸化鉛含有廃棄物に含まれる硫酸鉛と反応し、可溶性硫酸塩及び鉛の非硫黄化合物を生成出来る種々の物質であってもよい。前記脱硫剤は、好ましくはNaOH及び/又はKOH溶液であり、更に好ましくはNaOH溶液である。
本発明が提供する方法によれば、工程(1)において、廃鉛ペーストを脱硫剤と接触させる過程では、普段の反応釜脱硫技術で実施しても、湿式ボールミル法で実施してもよい。本発明者らは、酸化鉛含有廃棄物を脱硫剤、特にNaOH及び/又はKOH溶液と湿法ボールミルで混合して接触させること及び、普段の反応釜で攪拌することにより、もっと速い均一な攪拌・粉砕効果があげられ、後続工程でのPbOの回収率及びPbO製品の純度を向上させることができ、かつ後続工程(2)での接触に必要となる時間が短縮できることを見出した。そのため、本発明に記載の前記酸化鉛含有廃棄物と脱硫剤との接触方式は、好ましくは湿式ボールミル混合法である。ボールミルの条件としては、粉砕ボールの質量は、1000gの酸化鉛含有廃棄物に対して5〜500g、好ましくは3〜300gであり、粉砕ボールの数量を5〜100個とし、ボールミル時間を0.1〜200分間とし、ボールミルの反応温度は-5℃〜105℃、好ましくは10〜80℃の範囲内に制御される。使用された粉砕ボールはジルコニウムボール又は瑪瑙ボールが好ましい。
濃度の高いNaOH及び/又はKOH溶液により、反応後に、直接に高濃度の硫酸ナトリウム溶液及び/又は硫酸カリウム溶液が得られるが、酸化鉛含有廃棄物が極めて少量のNaOH及び/又はKOH溶液に十分分散させるのは困難であり、攪拌過程において溶液の粘稠性が比較的に高くなる。大量の実験により、NaOH及び/又はKOHと酸化鉛含有廃棄物との間に適切な固液比と攪拌粘度を保持し、更に適切な濃度を有する硫酸ナトリウム及び/又は硫酸カリウム母液を得るために、本発明に記載のNaOH及び/又はKOH溶液の濃度は、好ましくは4〜23重量%である。
工程(1)において、通常、少し過剰な量の脱硫剤(NaOH及び/又はKOH溶液が好ましい)を使用し、その用量が投入する酸化鉛含有廃棄物の中に含まれる硫酸鉛の化学量論の101〜150%に相当する。脱硫剤の投入が不足している場合、PbSO4と脱硫剤との脱硫反応を完全にさせるのは困難である。脱硫剤を投入する量が多すぎる場合、残留した脱硫剤によりPbOの溶解を起こし、濾液中のPbの含有量が増える。また、過剰な脱硫剤溶液により母液中の硫酸塩含有量が減少し、後続での硫酸ナトリウム及び/又は硫酸カリウムの回収率を減少させ、又は余分の蒸発過程を追加すれば、硫酸ナトリウム及び/又は硫酸カリウムが十分に析出されることを保障できる。
本発明の方法は、種々の酸化鉛含有廃棄物から酸化鉛を回収することに適用する。その中にPbO、Pb、硫酸鉛及びPbO2から選ばれる1種又は複数種のものさえ含まれればよい。例えば、前記酸化鉛含有廃棄物は、廃鉛蓄電池における鉛ペースト、廃棄極板の回収によって得られたPbO廃棄物、鉛蓄電池生産中に発生するその他の酸化鉛含有廃棄物及び他の分野において生産過程で発生する酸化鉛含有廃棄物などの1種又は複数種を用いることができる。好ましくは、前記酸化鉛含有廃棄物は廃鉛蓄電池の鉛ペースト、すなわち廃鉛ペーストである。通常、廃鉛ペーストに10〜15重量%のPbと、10〜20重量%のPbOと、25〜35重量%のPbO2と30〜45重量%のPbSO4を含む。
本発明が提供する方法によれば、工程(2)は原子経済性転化工程であり、PbとPbO2、及び脱硫によって得るPbO-Pb(OH)2からPbOへの転化を実現するためである。工程(2)に記載の転化反応の温度は350〜750℃の範囲内に制御されるべきであり、好ましくは前記転化反応の温度が390〜620℃である。工程(2)に記載する転化反応時間は3〜70分であることができ、好ましくは5〜40分間である。
本発明が提供する方法によれば、工程(2)に記載の転化反応は、原子経済性反応促進剤の存在下で行うことが好ましい。前記原子経済性反応促進剤が存在すれば、脱硫後の酸化鉛含有廃棄物を迅速かつ徹底的にPbOへの転化を促進することができる。前記原子経済性反応促進剤は工程(1)及び/又は工程(2)で投入してよい。
本発明においては、前記原子経済性反応促進剤として、PbO2との化学反応をさせてPbOが得られる様々な物質を用いることができる。例えば、金属粉末、炭粉末、ナフタリン、樟脳、尿素及び0.5〜95重量%のPbOを含む活性炭から選ばれる1種又は複数種、又は上記物質から選ばれる1種又は複数種の物質とβ-二酸化鉛と任意の割合で混合して得た混合物を用いることができる。前記金属粉末としては、例えば、鉛粉末、バリウム粉末、アルミニウム粉末、ナトリウム粉末、リチウム粉末、カリウム粉末、マグネシウム粉末、ニッケル粉末、スズ粉末、アンチモン粉末、亜鉛粉末などから選ばれる1種又は複数種の金属粉末を用いることができる。より好ましくは、前記原子経済性反応促進剤の粒子径は80〜600メッシュの範囲内に制御される。
本発明の好ましい実施形態によれば、前記原子経済性反応促進剤は鉛粉末とβ-二酸化鉛との混合物であり、かつ鉛粉末とβ-二酸化鉛との混合割合が、重量比で1:0.05〜2である。当該好ましい原子経済性反応促進剤を採用すれば反応の迅速進行を保証できると共に、コストが比較的低い。
前記原子経済性反応促進剤の使用量により、上記転化過程さえ十分進行すればよい。前記原子経済性反応促進剤の使用量は、工程(1)で得られた残渣0.05〜30重量%、好ましくは1〜20重量%である。
本発明者らは、工程(2)で得られた転化生成物を特定の冷却速度での冷却を制御することにより、PbO製品が主にα相構造に維持させる一方、PbOの酸化を防止し得ることを更に見い出した。そのため、本発明の方法は、工程(3)の実施前に、工程(2)で得られた生成物を0.5〜30分間以内に100〜300℃となるまで冷却し、好ましくは1〜10分間以内に100〜150℃となるまで冷却することを更に含む。より好ましくは、前記冷却方法は霧状液体冷却であり、これにより、よりよいガス冷却効果が得られ、前記冷却剤としては、水、メタノール、エタノール、アセトンから選ばれる1種又は複数種のものが好ましい。前記霧状液体冷却方法において、液滴の粒子径は、好ましくは2〜50ミクロンである。
高純度のPbO製品を得るために、本発明に記載の方法は、まだ、(3)工程(2)で得られた生成物及び/又は冷却によって得られた生成物をアルカリ性溶液と接触させ、その中に含まれるPbOを溶解させた後、固液分離を行うという工程を含む。前記アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムから選ばれる1種又は2種の溶液を用いることができる。前記アルカリ性溶液の濃度は12〜60重量%であってよい。前記アルカリ性溶液の使用量により、工程(2)で得られた生成物は、工程(3)に記載の接触体系において濃度が30〜120g/Lとなり、接触の温度が45〜135℃であり、接触の時間が0.5〜100分間である。好ましくは、前記アルカリ性溶液を予め前記接触温度となるまで加熱した後、当該アルカリ性溶液を工程(2)で得られた生成物及び/又は冷却によって得られた生成物と接触させる。
本発明が提供する方法によれば、前記アルカリ性溶液の中に、まだ、少量のPbO、例えば前記アルカリ性溶液の中に60g/L以下のPbOを溶解することができる。
更に好ましくは、工程(2)で得られた生成物及び/又は冷却後生成物のアルカリ溶液への溶解を加速するために、又は工程(2)で得られた生成物及び/又は冷却後生成物のアルカリ溶液への溶解度を向上するために、工程(2)で得られた生成物及び/又は冷却後生成物とアルカリ溶液との接触が、溶解促進剤の存在下で行われる。前記溶解促進剤としては、エチレンジアミン、酢酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、EDTA、グリセリン、ブチレングリコール、ペンタノ−ル、ソルビトール、キシリトール、ヒスチジン、アルギニン及びグリシンから選ばれる1種又は複数種であることが好ましい。前記溶解促進剤の使用量は、前記アルカリ溶液の0.2〜20重量%、好ましくは0.5〜15重量%である。
本発明が提供する方法によれば、工程(1)と工程(3)に記載する固液分離は、本分野において周知される固体と液体とを分離するための各種方法、例えば加圧ろ過或いは遠心分離であってもよい。好ましい実施形態においては、工程(3)に記載の固液分離が65〜120℃(好ましくは70〜110℃)の温度下で加圧ろ過を行う。前記加圧ろ過はLOX加圧ろ過装置を使って実施することができる。
より純度の高いPbO固体を得るために、本発明の好ましい方法は、更に、工程(3)から工程(4)までの過程を2回又は複数回繰り返して実施すること含み、即ち、工程(2)で得られた生成物の代わりに工程(4)で得られたPbO結晶体を用いて工程(3)から工程(4)までの過程を繰り返して実施する。工程(4)において、前記結晶化は、PbO結晶体と結晶後の母液(つまりアルカリ濾液)を得る冷却結晶化である。実験が示すように、繰り返して精製したPbO結晶体はその純度が通常99.99%以上に達することができる。
全体的に見ると、高純度の酸化鉛粉末を製造する過程は2段階に分けられ、すなわち、PbOの粗生成物をアルカリ性溶液に溶かすことで第一段階の溶解が完了する。アルカリ性溶液がNaOH溶液である場合、その反応式は次のように表す。
PbO(不純)+NaOH(aq)=NaHPbO2(aq)+不純物 (1)
高純度のPbOを得るために、PbO溶解後のアルカリ性溶液を固液分離することにより、PbOのアルカリ性溶液(即ちPbO-アルカリ性溶液)と不純物を含む残渣を得る必要がある。一般的に、この残渣には30〜50重量%と高い硫酸バリウムと5〜10重量%のCa(OH)2とのほかに、残りにPbOを有し、簡単なHClO4又は硝酸の溶解過程により、残渣に含まれる硫酸バリウムを分離して再び鉛蓄電池の負極生産に戻すことができる。
不純物分離後のPbO溶液については、晶析過程によってPbO結晶体とアルカリ濾液を得る必要があり、このアルカリ濾液はPbO粗生成物の溶解-結晶過程に繰り返して用いられることができる。アルカリ性溶液がNaOH溶液である場合、その晶析過程の反応式は次のように表す。
NaHPbO2(aq)=PbO(s)+NaOH(aq) (2)
したがって、結晶化によってできたPbOが依然に一定量の不純物を含む場合、PbOをアルカリ性溶液に溶解-結晶させる過程を再度利用して精製することができる。
実際的には、PbO結晶化条件で、核生成と成長プロセスは完全に分離することではない。核生成の時間が長ければ、核生成プロセスがまだ終わらないうちに核の一部が成長段階に入って成長し始めるため、核生成終了後一部の大きい結晶粒が出てきて、そしてこれらの大きな結晶粒にアルカリ母液は混在しやすい。核生成の速度が成長の速度より随分大きくなりさえすれば、核生成と成長の過程が完全に分離し、かつ互いに干渉しないと考えられる。このような状況で得られた結晶粒は単分散結晶粒であり、結晶粒の平均粒径が小さいし、分布が集中している。このような類型の結晶粒を得るために、核生成の速度をできるだけ高めて、成長の速度をできるだけ低減し、又は結晶の完全さを保証することを前提にして成長の時間をできるだけ短縮しなければならない。そこで、PbO粗生成物の溶解過程にとっては、PbO溶液の結晶化過程への制御や結晶性生成物への後処理が非常に重要である。PbOの晶析過程には、PbOの結晶構造や、結晶粒のサイズ及び吸着又は晶析過程において持ち込んだ不純物の含有量が影響している。従って、一つの好ましい実施形態において、工程(4)の前記晶析は段階的に行われ、60〜135℃の温度下で実行する第一段階晶析と、-5℃〜60℃の温度下で実行する第二段階晶析とを含み、中に、第一段階晶析の時間は1〜60分間、第二段階晶析の時間は3〜600分間である。より好ましくは、第一段階晶析の時間が1〜60分間、第二段階晶析の時間が3〜600分間である。
もう一つの好ましい実施形態において、本発明に提供する前記方法は、(5)工程(4)で得られたPbO結晶体をボールミルで結晶転移で典型的なα相を有するPbOを得る工程を更に含む。
本発明に記載のボールミルで結晶転移の条件は、酸化鉛1000gに対して、粉砕ボールの質量が5〜500g、好ましくは3〜300gで、粉砕ボールの個数が5〜100個で、ボールミルの時間が0.5〜200minで、ボールミルの温度が5〜550℃、好ましくは30〜460℃であることを含む。
本発明者らは、前記脱硫剤がNaOH溶液である場合、工程(1)で得られた濾液により濃いNaOH溶液又はNaOH固体を補足することで、濾液中のNaOHの濃度を高めることができ、更に濾液中のNaOHの濃度が接触前濃度の90〜150%になる時、工程(1)の脱硫反応で生成する硫酸ナトリウムを直接析出させることができ、簡単な固液分離であれば硫酸ナトリウム製品を得ることができるし、濾液(NaOH溶液)も直接に回収して利用できることを見出した。そのため、前記脱硫剤はNaOH溶液であることが好ましい。本発明の方法は、まだ、工程(1)で得られた濾液に前記脱硫剤を追加し、得られた濾液中の脱硫剤の濃度を接触前濃度の90〜150%にすることを含む。
本発明の提供する方法は、酸化鉛含有廃棄物を高純度の酸化鉛に効率よく転化することができ、エネルギー消費量を明らかに低減し、回収過程に有毒、有害物質の使用及びそれによる二次汚染を避け、更に連続化・全密閉・工業化生産を実現した。
以下、実施例を参照しながら本発明を更に説明する。
実施例1
本実施例を参照しながら本発明における電気自動車用鉛蓄電池の廃鉛ペーストから酸化鉛を直接回収する方法を説明する。
使用済12V、12Ahの廃棄電気自動車電池に由来する廃鉛ペースト10kgを測りとり、分析した結果、その主成分の重量百分率は、20%PbO、11%Pb、35%PbSO4、30%PbO2、0.35%BaSO4、0.2%SiO2となり、残りは重量百分率濃度が20%の硫酸水溶液である。上記の廃鉛ペースト10kgに含まれる各種類の鉛化合物はPbOに換算して計38.39molである。
酸化鉛の回収技術は次の通りである。
(1)前記廃鉛ペースト10kgを重量百分率濃度が8.5%の15L NaOH溶液と20℃の温度下、ボールミル(廃鉛ペースト1000gに対し、粉砕ボールの質量が300g、瑪瑙ボールである)で10分間混合した後、ろ過して濾液と残渣を得る。
(2)反応を均一的にかつ十分進行させるため、上記残渣と粒度が160メッシュの原子経済性反応促進剤0.1kg(Pb粉末とβ-PbO2との重量比が1:0.5となる)とを均一に混合した後、温度プログラムにより、460℃まで、5℃/分の温度上昇率で上昇し、460℃との恒温条件を保持して反応を20分間持続させる。
(3)工程(2)で得られた生成物を0.5分以内に水霧冷却方式(水霧の液滴のサイズが約25ミクロン)で150℃まで冷却し、その温度で噴水を停止する。
(4)工程(3)で冷却によって得られた生成物を、重量百分率濃度が35%の80L NaOH溶液と接触させ、中のPbOを溶解させ、またPbOの溶解を促進するために当該NaOH溶液を120℃まで加熱し、同時に溶液の中にEDTA1200gを添加する。100回転/分の速度で15分間攪拌を保持し、工程(3)に得られたPbOをNaOH溶液に十分溶解させる。
(5)工程(4)における固液分離で得られた濾液を80℃と5℃の温度下で、それぞれ順次に60分間と300分間結晶化を行い、二段階の結晶化で得られたPbOと母液とを固液分離して20g/LのPbOを含む母液が得られるが、残留のPbOを含有するNaOH母液は、工程(4)において繰り返して使用することができる。
(6)工程(5)で得られたPbO結晶体をボールミルの中に入れてボールミルで結晶転移を行う。結晶転移の条件としては、酸化鉛含有廃棄物1000gに対し、粉砕ボールの質量が200gで、粉砕ボールの個数が50個で、ボールミルの時間が30minで、ボールミルの反応温度が130℃である。
(7)工程(1)で得られた濾液にNaOHを追加し、濾液のNaOH濃度を接触前濃度の105%までさせるようにし、中の硫酸ナトリウムを析出させた後に固液分離を行う。固液分離によって3kgの純度が98.5%の硫酸ナトリウム結晶体を得て、硫酸ナトリウムの一部がNaOH脱硫液の中に保留される。濃度調整後の水酸化ナトリウム溶液は、工程(1)において繰り返して使用することができる。
乾燥した後に重量を測定し、回収によって得られたPbOサンプルは重量が6.95kgであり、ICPテストにより分析した結果、その純度が99.99%であり、XRD測定が示すように、中にα-PbO含有量が95%であり、工程(5)中のNaOH母液に保留されたPbOを考えると、そのPbOの回収率が99.7%である。
実施例2
本実施例は、本発明における電気自動車用鉛蓄電池の廃鉛ペーストから、実施例1での一回目の酸化鉛回収で得られた工程(4)のNaOH母液と、工程(7)のNaOH脱硫液とを二回目循環利用により、PbOの回収を実現する方法を説明することに用いられる。
引き続き実施例1と同様の廃鉛ペースト10kgを測りとり、そのPbOを循環回収する過程は次の通りである。
(1)鉛蓄電池の廃鉛ペーストを実施例1の工程(7)で得られた重量百分率濃度が8.9%のNaOH溶液とボールミル(廃鉛ペースト1000gに対し、粉砕ボールの質量が130g、瑪瑙ボールである)で30分間混合した後、ろ過して濾液と残渣を得る。
(2)反応を均一的にかつ十分進行するため、上記残渣と粒度が200メッシュの原子経済性反応促進剤500g(Pb粉末とβ-PbOとの重量比が1:2)とを均一に混合した後、530℃まで、10℃/分の温度上昇率で上昇し、530℃の温度下で反応を10分間持続させる。
(3)工程(2)で得られた生成物を水霧冷却方式(水霧の液滴のサイズが約10ミクロン)で120℃まで冷却する時に噴水を停止する。
(4)工程(3)で冷却によって得られた生成物を実施例1で回収された重量百分率濃度が35%のNaOH溶液と接触させ、125℃を保持しながら、120回転/分で10分間攪拌を保持し、工程(3)に得られたPbOをNaOH母液に十分溶解させる。
(5)工程(4)での固液分離によって得られた濾液を75℃と10℃の温度下で、それぞれ40分間と300分間結晶化を順次に行い、それから固液分離を行ってPbO結晶体とNaOH母液とを得て、当該NaOH母液は22g/LのPbOを含有し、水が70g添加され、NaOHの濃度を最初の濃度し、工程(4)に再使用される。
(6)工程(5)で得られたPbO結晶体をボールミルの中に入れてボールミルで結晶転移を行う。結晶転移の条件としては、酸化鉛含有廃棄物1000gに対し、粉砕ボールの質量が300gで、粉砕ボールの個数が20個で、ボールミルの時間が100minで、ボールミルの反応温度が60℃である。
(7)工程(1)で得られた濾液にNaOHを追加し、濾液のNaOH濃度を接触前濃度の115%までさせるようにし、中の硫酸ナトリウムを析出させた後に固液分離を行う。固液分離で純度が99.0%の硫酸ナトリウム結晶体を3.4kg得る。硫酸ナトリウムの回収率が95%であり、150℃で1時間乾燥した後に重量を測定してICPにより分析した結果、生成物は純度が99.99%のPbO8.4kgである。XRD測定が示すように、α相PbOの含有量を90%とし、鉛の回収率が99.8%である。
実施例3
1kgの鉛蓄電池の廃鉛ペーストをとり、分析により、その主成分は以下の通りであり、つまり、13重量%Pb、18重量%PbO、33重量%PbO2、35重量%PbSO4及び0.3%BaSO4であり、残りが水である。上記廃鉛ペーストをPbOに換算すると、計3.97molであり、そのPbOを循環回収する過程は次の通りである。
(1)上記廃鉛ペーストと濃度が10%のNaOH溶液1.3Lとをボールミル混合(廃鉛ペースト1000gに対し、粉砕ボールの質量が200g、瑪瑙ボールである)を20分間行い、その後、ろ過して濾液と残渣を得る。
(2)反応を均一的にかつ十分進行させるため、上記残渣と粒度が300メッシュの原子経済性反応促進剤(炭素粉末とβ-PbOとの重量比が1:1)とを均一に混合した後に、570℃まで、10℃/分の温度上昇率で上昇し、転がりながら反応を5分間保持し、原子経済性反応促進剤の用量は残渣の1重量%とする。
(3)工程(2)で得られた生成物を6分間以内に迅速に水霧冷却方式(水霧の液滴のサイズが約30ミクロン)で110℃まで冷却し、その温度で水霧スプレーを停止する。
(4)工程(3)で冷却によって得られた生成物及び濃度が25重量%のNaOH溶液9Lをエチレンジアミンと接触させ、115℃まで加熱し、かつ恒温条件下、60回転/分の速度で攪拌しながら10分間保持し、その中のPbOを溶解させ、その後固液分離を行い、NaOH溶液とエチレンジアミンとの重量比は1:0.05とする。
(5)工程(4)での固液分離によって得られた濾液を70℃と10℃の温度下で、それぞれ60分間と350分間の結晶化を順次に行い、結晶体PbOと結晶後の母液を得る。工程(5)で得られた結晶後の母液は、工程(4)において繰り返して使用することができる。
(6)工程(5)で得られたPbO結晶体をボールミルの中に入れてボールミルで結晶転移を行い、結晶転移の条件としては、酸化鉛含有廃棄物1000gに対し、粉砕ボールの質量が80gで、粉砕ボールの個数が20個で、ボールミルの時間が10minで、ボールミルの反応温度が80℃である。
(7)工程(1)で得られた濾液にNaOHを追加し、濾液のNaOH濃度を接触前濃度の110%までさせるようにし、中の硫酸ナトリウムを析出させた後に固液分離を行う。固液分離によって純度が99.0%の硫酸ナトリウム結晶体製品が290g得られ、残留した硫酸ナトリウムは脱硫母液の中に保留され、次回の脱硫により、再度溜めてから析出させてよい。液体がNaOH溶液であり、濃度調整後、当該水酸化カリウムの脱硫母液を工程(1)に繰り返して用いることは可能である。
実験でPbO 790gが得られ、ICP分析により、その純度が99.99%であり、XRD測定が示すように、そのα相PbOの含有量が85%である。工程(5)でのNaOHに溶解されたPbO 93gを差し引いて、その回収率が790/(3.97*223-93)=99.7%である。
実施例4
実施例3の方法に基づいて廃鉛ペーストに含まれる酸化鉛を回収し、実施例3の工程(5)で得られたNaOH母液と工程(7)で得られた脱硫母液を繰り返して利用する。違うのは、原子経済性反応促進剤が鉛粉末であり、結果的に得られたPbOの量は884gであり、ICP分析により、その純度が99.99%であり、XRD測定が示すように、α相PbOの含有量が86%、PbOの回収率が99.8%である。
実施例5
実施例3の方法に基づいて廃鉛ペーストに含まれる酸化鉛を回収し、それぞれに実施例4の工程(5)及び工程(7)で得られたNaOH母液及び脱硫母液を引き続き利用するが、違うのは、工程(2)において温度が500℃であり、結果的にPbOは重量を883gとし、純度が99.99%であり、XRD測定が示すように、α相PbOの含有量が89%、PbOの回収率が99.7%である。
実施例6
実施例3の方法に基づいて廃鉛ペーストに含まれる酸化鉛を回収し、それぞれに実施例5の工程(5)及び工程(7)で得られたNaOH母液及び脱硫母液を引き続き利用するが、違うのは工程(2)において温度が600℃であり、結果的に回収して得られたPbOは重量が880g、生成物の純度が99.95%であり、XRD測定が示すように、α相PbOの含有量が80%、PbOの回収率が99.4%である。
実施例7
実施例3の方法に基づいて廃鉛ペーストに含まれる酸化鉛を回収し、それぞれに実施例6の工程(5)及び工程(7)で得られたNaOH母液及び脱硫母液を引き続き利用するが、違うのは、工程(3)において、工程(2)で得られた生成物を1分以内に100℃まで迅速に冷却し、結果的に回収したPbOは重量が881g、生成物の純度が99.97%であり、XRD測定が示すように、α相PbOの含有量が85%、PbOの回収率が99.5%である。
実施例8
実施例3と同様の廃鉛ペーストを1kgとり、当該廃鉛ペーストをPbOに換算して3.97molとなり、そのPbOを回収する過程は次の通りである。
(1)上記廃鉛ペーストと濃度が12%のKOH溶液1.3Lとを化学量論比130%で(廃鉛ペースト1000gに対し、粉砕ボールの質量が200g、瑪瑙ボールである)20分間ボールミル混合させ、その後にろ過して濾液と残渣を得る。
(2)反応を均一的にかつ十分進行させるため、上記残渣と粒度が300メッシュの原子経済性反応促進剤(炭素粉末とβ-PbO2との重量比が1:1)とを均一に混合した後に、570℃まで、10℃/分の温度上昇率で上昇し、転がりながら反応を5分間保持する。原子経済性反応促進剤の用量は残渣の1重量%とする。
(3)工程(2)で得られた生成物を6分間以内に迅速に水霧冷却方式(水霧の液滴のサイズが約30ミクロン)で110℃まで冷却し、その温度で水霧スプレーを停止する。
(4)工程(3)での冷却によって得られた生成物と濃度が33重量%のKOH溶液9Lとを、キシリトールと接触させ、122℃まで加熱し、恒温条件下で、60回転/分の攪拌速度を10分間保持し、その中のPbOを溶解させた後、固液分離を行い、KOH溶液とキシリトールとの重量比は1:0.02である。
(5)工程(4)での固液分離によって得られた濾液をそれぞれに65℃と5℃の温度下で60分間と360分間の結晶化を順次に行い、結晶体PbOと結晶後の母液を得る。工程(5)で得られた結晶後の母液を工程(4)に重複使用する。
(6)工程(5)で得られたPbO結晶体をボールミル装置に入れてボールミルで結晶転移を行う。結晶転移の条件としては、酸化鉛含有廃棄物1000gに対し、粉砕ボールの質量が80gで、粉砕ボールの個数が20個で、ボールミルの時間が10minで、ボールミルの反応温度が80℃である。
(7)工程(1)で得られた濾液にKOHを追加し、濾液のKOHの濃度が接触前濃度の105%までさせるようにし、中の硫酸ナトリウムを析出させた後に固液分離を行う。固液分離によって純度が99.2%の硫酸カリウム結晶体製品が160g得られ、残留した硫酸カリウムは脱硫母液の中に保留され、次回の脱硫により、再度溜めてから析出させてよい。硫酸カリウム析出後、得られた液体はKOH溶液であり、濃度調整後、当該水酸化カリウムの脱硫母液を工程(1)に繰り返して用いることは可能である。
実験で802gのPbOが得られ、ICP分析により、その純度が99.99%であり、XRD測定が示すように、そのα相PbOの含有量が83%である。工程(5)でのKOHの中に溶解された81gのPbOを差し引いて、その回収率が802/(3.97*223-81)=99.7%となる。
実施例9
当該実施例に使用する酸化鉛含有廃棄物は、河南省済源製錬工場に由来するものであるが、分析により、主に重量百分率含量が65%のPbOと、24%のPbSO4を含み、残りは4%のCaSiO3と5%のAl2O3及び2%のSiO2などの不溶性不純物である。上記酸化鉛含有廃棄物1kgを量り取り、PbOに換算すれば826.6gである。その酸化鉛回収プロセスは次の通りである。
(1)上記酸化鉛含有廃棄物と重量百分率濃度が10%のNaOH溶液0.9Lとを150%の化学量論比で反応釜の中で攪拌しながら脱硫を行う。60回転/分で攪拌しながら、20分間保持し、その後、ろ過して濾液と残渣を得る。
(2)反応を均一的にかつ十分進行させるため、温度プログラムにより、上記残渣を520℃まで、10℃/分の温度上昇率で上昇し、それから恒温条件を保持して反応を55分間持続させる。
(3)工程(2)で得られた生成物をエタノール噴霧冷却方法(液滴のサイズが30ミクロン)で6分以内に100℃に迅速に冷却し、その温度で霧のスプレーを停止する。
(4)工程(3)での冷却によって得られた生成物と濃度が33重量%のNaOH溶液10L(中にPbOを溶解し、かつPbOの濃度が30g/Lである)をキシリトールと接触させ、中にNaOH溶液とキシリトールとの重量比は1:0.02であり、125℃まで加熱し、60回転/分の攪拌速度と恒温条件を10分間保持し、その中の工程(3)で得られた生成物に含まれるPbOを溶解し、それから固液分離を行う。
(5)工程(4)での固液分離によって得られた濾液をそれぞれに70℃と8℃の温度下で、60分間と350分間の結晶化を順次に行い、PbO結晶体と結晶後の母液を得る。工程(5)で得られた結晶後の母液は、工程(4)において繰り返して使用する。
(6)工程(5)で得られたPbO結晶体をボールミルの中に入れてボールミルで結晶転移を行う。結晶転移の条件としては、酸化鉛含有廃棄物1000gに対し、粉砕ボールの質量が80gで、粉砕ボールの個数が20個で、ボールミルの時間が10minで、ボールミルの反応温度が100℃である。
(7)工程(1)で得られた濾液にNaOHを追加し、濾液のNaOH濃度を接触前濃度の102%までさせるようにし、中の硫酸ナトリウムを析出させた後に固液分離を行う。固液分離により、純度が99.2%の硫酸ナトリウム結晶体を140g得る。残留した硫酸ナトリウムは脱硫母液の中に保留され、次回の脱硫により再度溜めてから析出させてよい。硫酸ナトリウム析出後、得られた液体はNaOH溶液であり、濃度調整後、当該水酸化ナトリウム溶液を工程(1)に繰り返して用いることは可能である。
工程(6)でのボールミルで結晶転移によってPbOを825.1g得たが、ICPにより分析した結果、その純度が99.99%であり、XRD測定が示すように、そのα相PbOの含有量が80%であり、その回収率が:825.1/826.6=99.8%である。
以上は本発明の好ましい実施形態を詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に述べた細かい内容に限定されるものではなく、本発明の技術的発想の範囲内に、本発明の技術方案に対して様々な簡単な変更を行うことができる。そして、それらの簡単な変更はいずれも本発明の保護の範囲に属している。
他に、上記の具体的な実施形態に記載される個々の具体的な技術的特徴は、矛盾ではなければ、任意の適切な方法で組み合わせることができる。不要な重複を避けるために、種々の組み合わせ方法については、別途説明しない。
また、本発明の種々の実施形態は任意に組み合わせることができるが、本発明の思想に反しない限り、本発明に開示した内容と同じであるとみなされるべきである。

Claims (13)

  1. (1)脱硫反応条件下で、酸化鉛含有廃棄物を脱硫剤と接触させ、且つ、接触後の混合物を固液分離することにより、濾液と残渣を得る工程と、
    (2)上記の残渣を350〜750℃で転化反応させ、残渣に含まれる鉛成分を酸化鉛に転化させる工程と、
    (3)工程(2)で得られた生成物をアルカリ溶液と接触させ、その中に含まれるPbOを溶解させた後、固液分離を行うことによってPbO-アルカリ溶液を得る工程と、
    (4)工程(3)で得られたPbO-アルカリ溶液を結晶化させることにより、PbO結晶体とアルカリ濾液を得る工程と、を含み、
    工程(2)に記載の転化反応は原子経済性反応促進剤の存在下で行われ、前記原子経済性反応促進剤が工程(1)及び/又は工程(2)で投入され、
    前記原子経済性反応促進剤が、鉛粉末、バリウム粉末、アルミニウム粉末、ナトリウム粉末、リチウム粉末、カリウム粉末、マグネシウム粉末、ナフタリン、樟脳、尿素、ニッケル粉末、スズ粉末、アンチモン粉末、亜鉛粉末、炭粉末及びPbO 0.5〜95重量%を含む活性炭から選ばれる1種又は複数種、又は上記物質とβ-二酸化鉛との任意の割合で混合してなる混合物である、
    酸化鉛含有廃棄物を回収利用する方法。
  2. 前記原子経済性反応促進剤の使用量が工程(1)で得られた残渣重量の0.05〜30%である請求項1に記載の方法。
  3. 工程(3)を実施する前に、工程(2)で得られた生成物を0.5〜30分間以内に100〜300℃に冷却させる請求項1に記載の方法。
  4. 工程(3)を実施する前に、工程(2)で得られた生成物を1〜10分間以内に100〜150℃に冷却させる請求項3に記載の方法。
  5. 前記冷却方法が霧状液体冷却であって、冷却剤は水、メタノール、エタノール、アセトンから選ばれる1種又は複数種であり、液滴の粒子径は2〜50ミクロンである請求項3又は4に記載の方法。
  6. 工程(3)に記載の前記接触を溶解促進剤の存在下で行い、前記溶解促進剤はエチレンジアミン、酢酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、EDTA、グリセリン、ブチレングリコール、ペンタノ−ル、ソルビトール、キシリトール、ヒスチジン、アルギニン、グリシンから選ばれる1種又は複数種の溶解促進剤であって、前記溶解促進剤の使用量が前記アルカリ溶液の0.2〜20%重量である請求項1に記載の方法。
  7. 工程(3)に使用するアルカリ溶液が水酸化ナトリウムと水酸化カリウムから選ばれる1種又は2種の溶液であり、前記アルカリ溶液の濃度が12〜60重量%であり、前記アルカリ溶液の使用量により、工程(2)で得られた生成物は工程(3)に記載の接触体系における濃度が30〜120g/Lとなり、接触の温度が45〜135℃であり、接触の時間が0.5〜100分間である請求項6に記載の方法。
  8. 工程(4)の前記晶析は段階的に行われ、60〜135℃の温度下で実行する第一段階晶析と、-5℃〜60℃の温度下で実行する第二段階晶析とを含み、中に、第一段階晶析の時間は1〜60分間、第二段階晶析の時間は3〜600分間である請求項1に記載の方法。
  9. (5)工程(4)で得られたPbO結晶体をボールミルで結晶転移処理することにより、典型的なα相PbOを得る工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
  10. ボールミルで結晶転移処理する条件は、酸化鉛1000gに対して、粉砕ボールの質量が5〜500gで、粉砕ボールの個数が5〜100個で、ボールミルの時間は0.1〜200分間で、ボールミルの温度が5〜550℃であることを含む、請求項9に記載の方法。
  11. 工程(2)で得られた生成物の代わりに工程(4)で得られたPbO結晶体を用いて工程(3)と工程(4)を循環して実施することをさらに含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 酸化鉛含有廃棄物と前記脱硫剤との接触方式が湿式ボールミル法である請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  13. 工程(1)において前記脱硫剤がNaOH及び/又はKOH溶液であり、前記NaOH及び/又はKOH溶液の濃度が4-23重量%である請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
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