JP6312285B2 - 9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶 - Google Patents
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Description
フルオレノンとフェノキシエタノールとを反応(縮合反応)させ、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶を製造する。フルオレノンとフェノキシエタノールとを反応させて9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを製造するための方法は、種々知られており、これらの方法を採用することができる。例えば、助触媒としてのβ−メルカプトプロピオン酸の存在下において、触媒としての塩化水素を供給しながらフルオレノンに対してフェノキシエタノールの大過剰量(通常は5倍モル以上)を反応させる方法が知られており、本発明においてもこの方法を採用することができる。
この析出方法では、改良法による反応液をメタノールと混合し、メタノール溶液を調製する。そして、このメタノール溶液を55〜60℃に加熱後、自然に冷却することで9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させる。この場合、メタノール溶液に既製の9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを添加し、メタノール溶液からの9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの析出を促進させることもできる。なお、メタノール溶液の調製において、後記する工程2の再結晶時に得られるメタノール母液を利用することもできる。
この析出方法では、改良法による反応液をトルエンと混合し、混合液を調製する。そして、この混合液から水層を分離することで得られるトルエン溶液を冷却することで9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させる。この場合、トルエン溶液を適宜水洗し、トルエン溶液に含まれる水溶性の不純物を分離すると、析出する9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶の純度を高めることができる。なお、トルエン溶液の調製において、後記する工程2の再結晶時に得られるトルエン母液を利用することもできる。
工程1において得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶を精製し、純度を少なくとも99%に高めた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶を調製する。9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶の純度は、高速液体クロマトグラフィーにより確認することができる。
工程2において得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶を、温度を−10〜5℃の低温、好ましくは−5〜0℃の低温に制御した処理溶媒に溶解した溶液を調製し、この溶液において結晶を析出させる。
工程3において分離した結晶を乾燥する。この乾燥は、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶格子内に取り込まれた微量の処理溶媒を除去する必要があることから、通常、ロータリーエバポレータ等の真空乾燥装置を用い、1〜2mmHg(133.32〜266.62Pa)程度の減圧下で加熱しながら実行するのが好ましい。この際、加熱温度を一定に維持してもよいが、処理溶媒の除去効率を高めるために加熱温度を段階的に高めるのが好ましい。
工程1−1(反応工程):
容量が1,000mLの四つ口の第1ガラス反応器内に減圧下でフェノキシエタノール(純度99.8%)200gとジクロロエタン100gとを導入した。導入完了後、第1ガラス反応器内を常圧に戻して試料投入口よりフルオレノン(純度99.8%)100gを投入し、攪拌下で第1ガラス反応器の内容物を40℃に加熱し、2時間かけて内容物を完全に溶解させた。内容物の溶解を目視で確認後、内容物を20℃まで冷却した。冷却した内容物に対してβ−メルカプトプロピオン酸1.56gを添加し、20分間攪拌した。次に、36%塩酸60gを3時間かけて滴下し、その滴下完了後に90%硫酸60gを6時間かけて滴下した。硫酸の滴下完了後、内容物の温度を18〜20℃に維持し、反応系におけるフルオレノン濃度が0.1%以下になるまで反応させた。反応に要した時間は24時間であった。反応終了時の反応液の体積および質量は、それぞれ400mLおよび520gであった。
カラム:ODS−A/径4.6mm、長さ250mm、粒子径5μm、設定温度40℃
移動相:アセトニトリル:0.2%酢酸水溶液=60:40
流量:1.0mL/分
検出器波長:280nm
容量が5,000mLの第2ガラス反応器へメタノール3,000gを投入し、このメタノールに対して温度を20〜25℃に維持しながら攪拌下において工程1−1で得られた反応液の全量を滴下した。滴下終了後、300gのメタノールを用いて第1ガラス反応器を洗浄し、この洗浄液を第2ガラス反応器に投入した。これにより、合計量が4,050mLのメタノール溶液を得た。
容量が5,000mLのガラス反応器にメタノール3,300gを仕込み、工程1−2で得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶の全量を投入した。ガラス反応器を攪拌下で緩やかに加熱することで内温を2時間かけて60℃まで高め、添加した粗結晶を完全に溶解した。その後、攪拌速度を下げて徐冷を開始したところ、内温が48℃付近まで低下したところで結晶が析出し始めた。一夜かけて内温が10℃になるまで徐冷を継続し、結晶の析出を完結させた。ヌッチェ式ろ過器によりガラス反応器の内容物をろ過し、結晶を分離した。この結晶を遠心分離機にかけて液分を除去し、330gの一次再結晶品(湿品)を得た。この一次再結晶品は、工程1−2と同じ条件でHPLCにより測定した純度が98.5%であった。
容積が5,000mLのガラス反応器にトルエン3,500gを仕込み、得られた二次再結晶品の全量を攪拌下で投入した。二次再結晶品の投入完了後、ガラス反応器を攪拌下で緩やかに加熱することで内温を2時間かけて75℃まで高め、添加した二次再結晶品を完全に溶解した。そして、内温を75℃に維持しながら攪拌を30分間継続した。
容量が5,000mLのガラス反応器にアセトニトリル1,500gとメタノール1,500gとを仕込み、この混合溶媒の冷却を攪拌下で開始した。そして、ガラス反応器の内温が0℃となった時点において、同温度を維持しながら工程2−2で得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶の全量を四分割して10分毎に混合溶媒中に投入した。精製結晶の全量の投入完了後、混合溶媒の温度を0℃に維持しながら攪拌を1時間継続した。この間、混合溶媒は、当初、透明溶液状を呈していたが、精製結晶の投入完了から4〜5分後に結晶が析出し始め、この結晶は体積を増しながら成長した。
ロータリーエバポレーターを用い、工程3で得られた結晶を真空乾燥した。このとき、真空度は1〜2mmHg(133.32〜266.62Pa)に設定した。また、乾燥温度は、当初、40℃で1時間保持し、その後に90℃まで徐々に昇温した。そして、90℃を3時間維持し、乾燥を完了した。
工程1−2と同じ条件・方法でHPLCにより測定。
嵩比重:0.75g/cm3
乾燥した9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶を10mLメスシリンダーの10mL罫線まで仕込み、その重量を測定することで求めた。
9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶10mgと酸化アルミニウム10mgとをそれぞれアルミパンに精密に秤取し、示差走査熱量計(セイコー電子工業株式会社の型番「DSC220C」)を用いて酸化アルミニウムを対象として下記の条件で測定した。結果を図1に示す。図1によると、得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶の融解ピークは118.85℃である。
昇温速度:10℃/分
測定範囲:40−260℃
雰囲気:開放、窒素40mL/分
結晶150mgをガラス試験板の試料充填部に充填し、粉末X線回折装置(スペクトリス社の型番「X’PertPRO」)を用いて下記の条件で測定した。結果を図2および表1に示す。
X線源:CuKα
出力:1.8kW(45kV−40mA)
測定範囲:2θ=5°〜60°
スキャン速度:2θ=1.2°/分
スリット:DS=1°、マスク=15mm、RS=可変(0.1mm〜)
実施例1の工程1−1から工程2−2までを同様に実行し、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶を340g得た。得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶について、以下の工程を実行した。
容量が5,000mLのガラス反応器にトルエン1,000gを仕込み、これにアセトニトリル17gとメタノール17gとを加えることで混合溶媒を調製した。この混合溶媒の冷却を攪拌下で開始し、ガラス反応器の内温が0℃となった時点において、同温度を維持しながら工程2−2で得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶の全量を四分割して10分毎に混合溶媒中に投入した。精製結晶の全量の投入完了後、混合溶媒の温度を0℃に維持しながら攪拌を2時間継続した。この間、混合溶媒は、当初、透明溶液状を呈していたが、精製結晶の投入完了から約5分後に結晶が析出し始め、この結晶は体積を増しながら成長した。
ロータリーエバポレーターを用い、工程3で得られた結晶を真空乾燥した。このとき、真空度は1〜2mmHg(133.32〜266.62Pa)に設定した。また、乾燥温度は、当初、40℃で1時間保持し、その後に90℃まで徐々に昇温した。そして、90℃を3時間維持し、乾燥を完了した。
嵩比重:0.63g/cm3
示差走査熱量測定法による融解ピーク:
結果を図3に示す。図3によると、得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶の融解ピークは122.00℃である。
粉末X線回折:
結果を図4および表2に示す。
実施例1の工程1−1を同様に実行し、反応液を得た。得られた反応液について、以下の工程を実行した。
工程1−1において第1ガラス反応器中で得られた反応液に対し、トルエン400gを加えた。
容積が5,000mLのガラス反応器にトルエン3,000gを仕込み、攪拌下で工程1−2において得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶の全量を投入した。粗結晶の投入完了後、ガラス反応器の内温を攪拌下で75℃に加熱し、添加した粗結晶を完全に溶解した。次に、ガラス反応器の内容物を東洋濾紙株式会社製5Cろ紙を用いてろ過し、容量が5,000mLのガラス容器にろ液を移した。そして、ガラス容器内のろ液を12時間かけて25℃まで徐冷後に一夜放置し、結晶を析出させるとともに熟成させた。
容量が5,000mLのガラス反応器にトルエン1,000gを仕込み、これにアセトニトリル17gとメタノール17gとを加えることで混合溶媒を調製した。この混合溶媒の冷却を攪拌下で開始し、ガラス反応器の内温が−5℃となった時点において、同温度を維持しながら工程2で得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶の全量を四分割して10分毎に混合溶媒中に投入した。精製結晶の全量の投入完了後、混合溶媒の温度を0℃に維持しながら攪拌を2時間継続した。この間、混合溶媒は、当初、透明溶液状を呈していたが、精製結晶の投入完了から約5分後に結晶が析出し始め、この結晶は体積を増しながら成長した。
ロータリーエバポレーターを用い、工程3で得られた結晶を真空乾燥した。このとき、真空度は1〜2mmHg(133.32〜266.62Pa)に設定した。また、乾燥温度は、当初、40℃で1時間保持し、その後に90℃まで徐々に昇温した。そして、90℃を3時間維持し、乾燥を完了した。
嵩比重:0.65g/cm3
示差走査熱量測定法による融解ピーク:
結果を図5に示す。図5によると、得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶の融解ピークは121.62℃である。
粉末X線回折:
結果を図6および表3に示す。
Claims (1)
- 示差走査熱量測定法による融解ピークが118.85〜122.00℃の温度域において認められ、かつ、嵩比重が0.63〜0.75g/cm 3 である、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶。
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