JP6312285B2 - 9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶 - Google Patents

9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶 Download PDF

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Description

本発明は、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶の製造方法、特に、多形性を有する9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの新規な結晶の製造方法に関する。
光学レンズ、光学フイルム、光ファイバーおよび光ディスク基板等の光学製品のための光学材料として、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂またはアクリル樹脂など、透明性や屈折率に優れた樹脂材料が利用されている。光学材料は、光学製品の高精度化若しくは高機能化または多様な用途展開を背景とし、透明性や屈折率等の光学特性の高度化の要請が強く、併せて耐熱性の向上が要請されていることから、これらの要請に応えるための改良が検討されている。そして、このような観点での光学材料の改良方法として、光学材料を製造するための単量体成分の一部として、或いは、光学材料の改質剤として、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを用いることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
光学材料の改良のために用いられる9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンは、不純物を含む場合に光学材料の光学特性を損なう可能性があることから、高純度のものを用いる必要がある。そこで、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンについては、高純度のものを得るための種々の製造方法が提案されている。
例えば、特許文献1は、ヘテロポリ酸を触媒として用いる製造方法を開示している。この製造方法は、先ず、フルオレノンと2−フェノキシエタノールとをヘテロポリ酸の存在下で反応させ、得られた反応混合物から50℃未満で9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの析出を開始させて9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物を得る。この粗精製物の純度は、通常、85%以上である。次に、得られた粗精製物を芳香族炭化水素溶媒、ケトン溶媒およびエステル溶媒からなる群から選ばれる少なくとも一つの溶媒に溶解し、50℃以上で9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させる。このようにして精製された9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの純度は、特許文献1の実施例の記載によると98%以上である。
特許文献1は、その製造方法による場合、特定の性状の9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶、すなわち、示差走査熱分析による融解吸熱最大が150〜180℃若しくは160〜166℃であり、かつ、嵩密度が0.5g/cm以上、特に、0.6〜0.8g/cmの9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶(特許文献1において「多形体B」と称されている。)が選択的に得られるとしている。しかし、この9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶は、上記のとおり融解吸熱最大が150〜180℃と非常に高く、光学材料を製造するための他の単量体成分と均一に融解・混合させるのが困難であることから、他の単量体成分との共重合反応を円滑化するために繊細かつ微妙な重合制御が求められる。
また、特許文献1は、その製造方法の中間段階で得られる9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物、および、公知の9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(これらの9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶は、特許文献1において「多形体A」と称されている。)が、同文献に記載の製造方法により選択的に得られる結晶(多形体B)とは異なるものであり、上記融解吸熱最大が100〜130℃であるとしている。しかし、特許文献1において「多形体A」に当たるものの嵩密度は、実施例の記載によると0.23〜0.26g/cm程度と小さいことから、特許文献1の記載(段落[0011])に照らすと、容積効率等の点で工業的な取扱いにおいて非常に不利である。
特許第4140975号公報
本発明は、示差走査熱量測定法による融点が低く、かつ、嵩密度が大きい、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの新規な結晶を製造しようとするものである。
本発明に係る9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶の製造方法は、フルオレノンとフェノキシエタノールとを反応させ、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶を得る工程1と、工程1において得られた粗結晶を精製し、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの純度を少なくとも99%に高めた精製結晶を調製する工程2と、温度を−20〜5℃に制御した処理溶媒に工程2において得られた精製結晶を溶解することで調製した溶液において結晶を析出させる工程3と、工程3において析出した結晶を乾燥する工程4とを含む。
本発明の製造方法の一形態は、工程1において、塩酸、硫酸およびメルカプト基含有化合物の存在下、塩素系非極性溶媒中でフルオレノンとフェノキシエタノールとを反応させる。
この形態では、フルオレノンとフェノキシエタノールとを反応させた反応液のメタノール溶液を調製し、当該メタノール溶液を冷却することで9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶を析出させることができる。この場合、工程2において、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶を、メタノールを用いて再結晶した後、トルエンを用いてさらに再結晶することで精製するのが好ましい。
また、上記形態では、フルオレノンとフェノキシエタノールとを反応させた反応液とトルエンとの混合液を調製し、当該混合液から水層を分離することで得られるトルエン溶液を冷却することで9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶を析出させることもできる。この場合、工程2において、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶を、トルエンを用いて再結晶することで精製するのが好ましい。
本発明の製造方法の工程3においては、上記溶液を調製するための処理溶媒として、通常、低級脂肪族極性溶媒および非プロトン性極性溶媒のうちの少なくとも一つを含む極性溶媒、または、ジクロロメタン、ジクロロエタンおよびジエチルエーテルのうちの少なくとも一つの非極性溶媒を用いる。この場合、工程3において、処理溶媒を含む非極性の芳香族炭化水素溶媒を用いて上記溶液を調製することもできる。
本発明の製造方法では、通常、工程3において析出した結晶をろ過して溶液から分離し、さらに遠心分離処理した後に工程4において乾燥するのが好ましい。
本発明の9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶は、示差走査熱量測定法による融解ピークが118.85〜122.00℃の温度域において認められ、かつ、嵩比重が0.63〜0.75g/cm 新規なものであり、本発明の製造方法により製造することができる。
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分と、本発明の9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶とを含む。
本発明の重合性組成物は、単量体成分と、本発明の9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶とを含む。
本発明の光学材料は、本発明の樹脂組成物を用いたもの、或いは、本発明の重合性組成物の重合物を用いたものである。
本発明の製造方法は、示差走査熱量測定法による融点が低く、かつ、嵩密度が大きい、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの新規な結晶を製造することができる。
実施例1において得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶の示差走査熱量測定曲線を示す図。 実施例1において得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶の粉末X線回折パターンを示す図。 実施例2において得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶の示差走査熱量測定曲線を示す図。 実施例2において得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶の粉末X線回折パターンを示す図。 実施例3において得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶の示差走査熱量測定曲線を示す図。 実施例3において得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶の粉末X線回折パターンを示す図。
本発明は、下記の式(1)の構造式で表される9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、特に、その新規な結晶の製造方法に関するものである。この製造方法は、下記の工程1から4を含む。
Figure 0006312285
<工程1>
フルオレノンとフェノキシエタノールとを反応(縮合反応)させ、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶を製造する。フルオレノンとフェノキシエタノールとを反応させて9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを製造するための方法は、種々知られており、これらの方法を採用することができる。例えば、助触媒としてのβ−メルカプトプロピオン酸の存在下において、触媒としての塩化水素を供給しながらフルオレノンに対してフェノキシエタノールの大過剰量(通常は5倍モル以上)を反応させる方法が知られており、本発明においてもこの方法を採用することができる。
本工程において用いるフルオレノンおよびフェノキシエタノールは、両者間の反応効率を高めることができ、また、生成した9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶の精製が後の工程において容易になることから、いずれもできるだけ高純度のものを用いるのが好ましい。フルオレノンは、例えば、フルオレンを酸化することで製造した高純度のものが市販されており、通常、当該市販品をそのまま用いることができる。但し、当該市販品を精製することで純度をさらに高めたもの、特に、高速液体クロマトグラフィーで測定した純度が99.7%以上のものを用いるのが好ましく、同純度が99.8%以上のものを用いるのがより好ましい。フルオレノンは、例えば、メタノール濃度が60〜80質量%の水溶液に加熱溶解し、再結晶することで精製することができる。
フェノキシエタノールも高純度のものが市販されており、通常、当該市販品をそのまま用いることができる。特に、高速液体クロマトグラフィーで測定した純度が99.7%以上のものを用いるのが好ましく、同純度が99.8%以上のものを用いるのがより好ましい。
本工程では、塩酸、硫酸およびメルカプト基含有化合物の存在下、溶媒中でフルオレノンとフェノキシエタノールとを反応させ、目的の9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを製造することもできる。このような改良法によると、フルオレノンに対するフェノキシエタノールの使用量、すなわち反応割合を2〜3倍モル程度に抑えることができるとともに、酸化着色物質等の副生物の生成を抑えて低温で反応を進行させることができることから、より効率的に9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを製造することができる。
改良法において用いられる塩酸は、反応系において触媒として作用する塩化水素の発生源となるものであり、反応系での存在量が過少の場合はフルオレノンとフェノキシエタノールとの反応を進行させにくく、反応時間の短縮が困難になる可能性があり、逆に、反応系での存在量が過剰の場合は反応の制御が困難になることから、目的物の量産時に危険を伴う可能性がある。このため、塩酸は、通常、濃度が34〜36質量%程度の高濃度のものを用い、フルオレノンの質量に対して50〜70%の割合で使用するのが好ましく、55〜65%の割合で使用するのがより好ましい。
改良法において用いられる硫酸は、塩酸に作用して塩化水素を生成させるとともに、それ自体がフルオレノンとフェノキシエタノールとの反応を促進する触媒として機能し得るものである。硫酸は、反応系での存在量が過少の場合はフルオレノンとフェノキシエタノールとの反応を進行させにくく、反応時間の短縮が困難になる可能性があり、逆に、反応系での存在量が過剰の場合は反応の制御が困難になることから、目的物の量産時に危険を伴う可能性がある。このため、硫酸は、通常、濃度が75質量%以上の高濃度のものを用い、フルオレノンの質量に対して50〜80%の割合で使用するのが好ましく、60〜70%の割合で使用するのがより好ましい。
改良法において用いられるメルカプト基含有化合物は、フルオレノンとフェノキシエタノールとの反応系において助触媒として機能し得るものであり、通常、メルカプタン類やメルカプトカルボン酸類が用いられる。メルカプタン類としては、炭素数が1〜10のもの、例えば、エチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、1−オクチルメルカプタンまたはt−ドデシルメルカプタン等を用いるのが好ましい。メルカプタン類は、炭素数が2〜4のものが特に好ましく、また、メルカプトエタノールのように一部が水酸基で置換されたものであってもよい。メルカプトカルボン酸類は、炭素数が2〜11のものが好ましい。特に、炭素数が2〜4のもの、例えば、メルカプト酢酸またはβ−メルカプトプロピオン酸を用いるのが好ましい。メルカプト基含有化合物は、二種類以上のものを併用することもできる。
メルカプト基含有化合物の使用量は、過少であると所要の反応を促進させにくく、逆に過剰に用いても反応の促進効果に乏しいことから、通常、フルオレノンの質量に対して1.0〜3.0%の割合で使用するのが好ましく、1.4〜1.6%の割合で使用するのがより好ましい。
改良法において用いられる溶媒は、フルオレノンとフェノキシエタノールとの反応を阻害する可能性のある溶媒以外のものであれば特に限定されるものではなく、例えば、脂肪族炭化水素溶媒、塩素系非極性溶媒または芳香族炭化水素溶媒等である。このうち、塩素系非極性溶媒を用いるのが好ましい。好ましい塩素系非極性溶媒としては、例えば、ジクロロエタンやジクロロメタンを挙げることができる。塩素系非極性溶媒は、二種以上のものを併用することもできる。
改良法による9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造手順では、通常、溶媒にフルオレノン、フェノキシエタノールおよびメルカプト基含有化合物を溶解した溶液を調製する。そして、この溶液に先ず塩酸を滴下した後、硫酸を滴下し、反応を進行させるのが好ましい。この際、反応系の温度は、15〜30℃程度の低温、特に、18〜20℃の低温に維持するのが好ましい。反応の進行状況は、反応系におけるフルオレノンの含量を高速液体クロマトグラフィーにより適時確認することで判断することができ、通常、フルオレノンの含量が当初量の0.1%以下になるまで反応を継続するのが好ましい。
本工程においては、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを製造した反応系から9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させて分離し、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶を得る。反応系から9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させる方法は、反応系に対して貧溶媒を加える方法等、種々の方法を採用することができるが、改良法により9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを製造した場合、次の方法により9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させるのが好ましい。
析出方法1:
この析出方法では、改良法による反応液をメタノールと混合し、メタノール溶液を調製する。そして、このメタノール溶液を55〜60℃に加熱後、自然に冷却することで9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させる。この場合、メタノール溶液に既製の9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを添加し、メタノール溶液からの9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの析出を促進させることもできる。なお、メタノール溶液の調製において、後記する工程2の再結晶時に得られるメタノール母液を利用することもできる。
析出方法2:
この析出方法では、改良法による反応液をトルエンと混合し、混合液を調製する。そして、この混合液から水層を分離することで得られるトルエン溶液を冷却することで9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させる。この場合、トルエン溶液を適宜水洗し、トルエン溶液に含まれる水溶性の不純物を分離すると、析出する9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶の純度を高めることができる。なお、トルエン溶液の調製において、後記する工程2の再結晶時に得られるトルエン母液を利用することもできる。
析出させた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶は、ろ過や遠心分離などの固液分離法により確保することができる。
<工程2>
工程1において得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶を精製し、純度を少なくとも99%に高めた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶を調製する。9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶の純度は、高速液体クロマトグラフィーにより確認することができる。
9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶の精製方法は、再結晶法やクロマトグラフィー法等の様々な方法を採用することができるが、通常は再結晶法によるのが好ましい。
改良法を採用した工程1において、析出方法1により9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶を得た場合、この粗結晶は、メタノールを用いて再結晶した後、トルエンを用いてさらに再結晶することで精製するのが好ましい。この場合、メタノールによる再結晶は、数回繰り返すことができる。また、トルエンによる再結晶時は、先ず、メタノールによる再結晶品をトルエンに溶解することでトルエン溶液を調製し、このトルエン溶液を水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液で洗浄した後、水でさらに洗浄する。この際、水層のpHが7程度になるまで繰返し洗浄する。そして、洗浄後のトルエン溶液は、ろ過後に冷却することで結晶を析出させるのが好ましい。トルエンによる再結晶は、数回繰り返すことができる。
改良法を採用した工程1において、析出方法2により9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶を得た場合、この粗結晶は、トルエンを用いて再結晶することで精製するのが好ましい。トルエンによる再結晶は、数回繰り返すことができる。
<工程3>
工程2において得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶を、温度を−10〜5℃の低温、好ましくは−5〜0℃の低温に制御した処理溶媒に溶解した溶液を調製し、この溶液において結晶を析出させる。
本工程で用いられる処理溶媒は、常温以下、特に、−20〜10℃の低温下において9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを溶解可能なものであれば特に限定されるものではないが、通常は極性溶媒、または、ジクロロメタン、ジクロロエタンおよびジエチルエーテルのうちの少なくとも一つの非極性溶媒を用いるのが好ましい。
極性溶媒としては、低級脂肪族極性溶媒または非プロトン性極性溶媒を用いることができる。好ましい低級脂肪族極性溶媒の例としては、メタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコール等のアルコール類を挙げることができる。また、好ましい非プロトン性極性溶媒の例としては、アセトンおよびメチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類並びにアセトニトリルなどを挙げることができる。低級脂肪族極性溶媒および非プロトン性極性溶媒は、いずれも二種以上のものが併用されてもよい。また、低級脂肪族極性溶媒と非プロトン性極性溶媒とは併用することもできる。この場合、低級脂肪族極性溶媒(A)と非プロトン性極性溶媒(B)との割合(A:B)は、質量比で10:1〜1:10に設定するのが好ましく、2:1〜1:2に設定するのがより好ましいが、1:1に設定するのが特に好ましい。
処理溶媒の使用量は、通常、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶の量に対し、質量基準で6〜14倍に設定するのが好ましく、8〜12倍に設定するのがより好ましい。処理溶媒の使用量がこの範囲外の場合、目的の特性を有する9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶が得られにくくなる場合がある。
本工程では、処理溶媒を含む非極性の芳香族炭化水素溶媒(以下、本工程の説明において「混合溶媒」という場合がある。)を用いて目的の溶液を調製することもできる。混合溶媒用として用いられる非極性の芳香族炭化水素溶媒の例としては、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼンなどを挙げることができる。混合溶媒を用いる場合、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶は、混合溶媒に含まれる処理溶媒に溶解する。
混合溶媒における非極性の芳香族炭化水素溶媒の使用量は、通常、処理溶媒に対し、質量基準で10〜100倍に設定するのが好ましく、20〜40倍に設定するのがより好ましい。非極性の芳香族炭化水素溶媒の使用量がこの範囲外の場合、目的の9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶が得られにくくなる可能性がある。
また、混合溶媒を用いる場合、その使用量は、通常、溶解する9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの量に対し、質量基準で3〜6倍に設定するのが好ましく、3.5〜4.5倍に設定するのがより好ましい。混合溶媒の使用量がこの範囲外の場合、目的の9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶が得られにくくなる可能性がある。
本工程では、処理溶媒または混合溶媒を−20〜5℃、好ましくは−5〜0℃に冷却・制御しながら攪拌を開始し、その処理溶媒または混合溶媒に9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶を添加、溶解することで溶液を調製する。この際、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶は、数回に分けて段階的に処理溶媒または混合溶媒に添加するのが好ましい。調製した溶液は、通常、上記温度を維持しながら攪拌を続けると、徐々に結晶が析出し始める。この結晶は、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶格子内に処理溶媒の分子が取り込まれた包接化合物と考えられる。
なお、処理溶媒または混合溶媒に対して9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶の全量を一度に添加すると、精製結晶の一部が未溶解のうちに結晶が析出し始め、析出した結晶の体積が速やかに増大しやすいことから、目的の溶液の調製が困難になる。
溶液中で析出した結晶は、ろ過することで分離することができる。分離した結晶は、通常、さらに遠心分離処理することで、付着している溶媒を除去するのが好ましい。このような遠心分離処理をした場合、次の工程4において、所定の嵩比重の9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶が得られやすくなる。
<工程4>
工程3において分離した結晶を乾燥する。この乾燥は、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶格子内に取り込まれた微量の処理溶媒を除去する必要があることから、通常、ロータリーエバポレータ等の真空乾燥装置を用い、1〜2mmHg(133.32〜266.62Pa)程度の減圧下で加熱しながら実行するのが好ましい。この際、加熱温度を一定に維持してもよいが、処理溶媒の除去効率を高めるために加熱温度を段階的に高めるのが好ましい。
以上の工程を含む製造方法により得られる本発明の9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶は、示差走査熱量測定法による融解ピークが115〜125℃の温度域において認められ、かつ、嵩比重が0.60〜0.75g/cmという特性を有する新規なものである。各特性の測定方法は、後記の実施例に記載の通りである。
本発明の9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶は、これまでに知られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶と同様、各種の樹脂の耐熱性を高めるための改質剤として用いることができる。すなわち、樹脂成分と本発明の9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶とを含む樹脂組成物は、耐熱性を高めた樹脂製品を製造するための材料として用いることができる。この場合、樹脂成分としてエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂またはアクリル樹脂など、光学材料として用いられるものを用いると、その樹脂組成物から透明性および屈折率を高めた光学材料、すなわち、光学特性に優れた光学材料を形成することができる。
また、本発明の9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶は、これまでに知られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶と同様、耐熱性を高めた重合物を製造するための共重合成分として用いることができる。すなわち、重合物を製造するための単量体成分と、本発明の9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶とを含む重合性組成物は、耐熱性を高めた重合物を製造するための材料として用いることができる。この場合、単量体成分としてエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂またはアクリル樹脂など、光学材料として用いられる樹脂成分を生成可能なものを用いると、その重合性組成物の重合物は、透明性および屈折率を高めた光学材料、すなわち、光学特性に優れた光学材料として利用することができる。
本発明の9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶は、示差走査熱量測定法による融解ピークが115〜125℃の温度域において認められるものであって融点が低いことから、樹脂材料や単量体成分等に対し、加熱温度を抑えて混合、溶解することができる。このため、上述の樹脂組成物や重合性組成物は容易に調製することができ、上述の重合性組成物については反応温度を抑えて9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンと他の単量体成分とを共重合させることができる。また、本発明の9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶は、嵩比重が0.60〜0.75g/cmと大きいことから質量当りの体積が小さく、輸送、保管において有利であるとともに、上述の樹脂組成物や重合性組成物の調製において、限られた容積の混合槽や反応槽への投入が容易であって工業上の取扱い性に優れている。
[実施例1]
工程1−1(反応工程):
容量が1,000mLの四つ口の第1ガラス反応器内に減圧下でフェノキシエタノール(純度99.8%)200gとジクロロエタン100gとを導入した。導入完了後、第1ガラス反応器内を常圧に戻して試料投入口よりフルオレノン(純度99.8%)100gを投入し、攪拌下で第1ガラス反応器の内容物を40℃に加熱し、2時間かけて内容物を完全に溶解させた。内容物の溶解を目視で確認後、内容物を20℃まで冷却した。冷却した内容物に対してβ−メルカプトプロピオン酸1.56gを添加し、20分間攪拌した。次に、36%塩酸60gを3時間かけて滴下し、その滴下完了後に90%硫酸60gを6時間かけて滴下した。硫酸の滴下完了後、内容物の温度を18〜20℃に維持し、反応系におけるフルオレノン濃度が0.1%以下になるまで反応させた。反応に要した時間は24時間であった。反応終了時の反応液の体積および質量は、それぞれ400mLおよび520gであった。
なお、原料として用いたフェノキシエタノールおよびフルオレノンの純度は、いずれも高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の測定結果によるものである。HPLCの測定条件は下記のとおりである。なお、ここでは、HPLCとして株式会社島津製作所の型番「LC−10A vp」を用い、また、カラムとして株式会社ワイエムシー製のものを用いた。また、分析用の試料は、測定対象物1mgを移動相1mLに溶解することで調製し、HPLCへの注入量を4μLに設定した。
<HPLCの測定条件>
カラム:ODS−A/径4.6mm、長さ250mm、粒子径5μm、設定温度40℃
移動相:アセトニトリル:0.2%酢酸水溶液=60:40
流量:1.0mL/分
検出器波長:280nm
また、反応系のフルオレノンの濃度は、反応液を適時採取し、HPLCでの測定により確認した。分析用の試料は、次のようにして調製した。先ず、採取した反応液の一滴を0.75mLの酢酸エチルに溶かして混合液を調製し、この混合液を純水で洗浄した。混合液の洗浄は、水層側が中性になるまで繰り返した。そして、洗浄した混合液0.25mLに酢酸エチルを加えることで1mLの分析用試料を調製した。HPLCの測定条件は、原料として用いるフルオレノンの純度の測定に関する上記条件と同じである。HPLCへの分析用試料の注入量は1μLに設定した。
工程1−2(析出・分離工程):
容量が5,000mLの第2ガラス反応器へメタノール3,000gを投入し、このメタノールに対して温度を20〜25℃に維持しながら攪拌下において工程1−1で得られた反応液の全量を滴下した。滴下終了後、300gのメタノールを用いて第1ガラス反応器を洗浄し、この洗浄液を第2ガラス反応器に投入した。これにより、合計量が4,050mLのメタノール溶液を得た。
得られたメタノール溶液に既製の9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶60g(湿重量)を添加した。そして、メタノール溶液を緩やかに加熱して温度を60℃とし、同温度で2時間保持することで添加した9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶を溶解させた。その後、メタノール溶液を自然に冷却し、結晶を析出させた。結晶の析出は、メタノール溶液の温度が42〜43℃に低下した頃から始まった。メタノール溶液の温度を10℃程度まで冷却し、6時間維持することで結晶の析出を完結させた後、メタノール溶液を一夜放置することで析出した結晶を熟成させた。
結晶が析出したメタノール溶液をヌッチェ式ろ過器にてろ過し、結晶を分離した。そして、この結晶を小型遠心分離機にかけて液分を除去し、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶360gを得た。得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶の純度をHPLCにより測定したところ、95.0%であった。
ここで、HPLCの測定条件は、工程1−1でのHPLCの測定条件と同じである。純度測定用試料は、得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶1mgを移動相1mLに溶解することで調製した。また、HPLCへの純度測定用試料の注入量は4μLに設定した。
工程2−1(メタノールによる精製工程):
容量が5,000mLのガラス反応器にメタノール3,300gを仕込み、工程1−2で得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶の全量を投入した。ガラス反応器を攪拌下で緩やかに加熱することで内温を2時間かけて60℃まで高め、添加した粗結晶を完全に溶解した。その後、攪拌速度を下げて徐冷を開始したところ、内温が48℃付近まで低下したところで結晶が析出し始めた。一夜かけて内温が10℃になるまで徐冷を継続し、結晶の析出を完結させた。ヌッチェ式ろ過器によりガラス反応器の内容物をろ過し、結晶を分離した。この結晶を遠心分離機にかけて液分を除去し、330gの一次再結晶品(湿品)を得た。この一次再結晶品は、工程1−2と同じ条件でHPLCにより測定した純度が98.5%であった。
容積が5,000mLのガラス反応器にメタノール3,300gを仕込み、得られた一次再結晶品の全量を投入した。ガラス反応器を攪拌下で緩やかに加熱することで内温を2時間かけて60℃まで高め、添加した一次再結晶品を完全に溶解した。そして、内温を60℃で30分間維持した後に攪拌速度を下げて徐冷を開始したところ、内温が48℃付近まで低下したところで結晶が析出し始めた。一夜かけて内温が10℃になるまで徐冷を継続し、結晶の析出を完結させた。ヌッチェ式ろ過器によりガラス反応器の内容物をろ過し、結晶を分離した。この結晶を遠心分離機にかけて液分を除去し、330gの二次再結晶品(湿品)を得た。この二次再結晶品は、工程1−2と同じ条件・方法でHPLCにより測定した純度が99.5%であった。
工程2−2(トルエンによる精製工程):
容積が5,000mLのガラス反応器にトルエン3,500gを仕込み、得られた二次再結晶品の全量を攪拌下で投入した。二次再結晶品の投入完了後、ガラス反応器を攪拌下で緩やかに加熱することで内温を2時間かけて75℃まで高め、添加した二次再結晶品を完全に溶解した。そして、内温を75℃に維持しながら攪拌を30分間継続した。
次に、ガラス反応器の内容物に対して5質量%水酸化ナトリウム水溶液250gを投入し、20分間攪拌後に20分間静置してトルエン層と水層とに分離した。水層を廃棄した後、トルエン層に純水250gを投入し、20分間、十分に攪拌、混合した。ガラス反応器を20分間静置し、トルエン層から分離した水層を廃棄した。このようなトルエン層の水洗操作を水層のpHが7.0付近になるまで繰り返した。この際、水層から採取した25mLの試料にBTB指示薬を添加し、水層が中性であることを確認した。
トルエン層の水洗操作の完了後、ガラス反応器を加熱することでトルエン層に残留している水分を共沸させ、自動油水分離器を通じて凝縮した水分を系外に排出した。この操作は、系内の温度が110℃以上に到達した時点で終了した。このような脱水操作が完了したガラス反応器内のトルエン層を東洋濾紙株式会社製5Cろ紙を用いてろ過し、別のガラス反応器に移した。そして、ろ過後のトルエン層を攪拌下で25℃まで徐冷し、析出した結晶をヌッチェ式ろ過器によりろ過して分離した。これにより、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶を350g得た。この精製結晶の純度を工程1−2と同じ方法でHPLCにより測定したところ、99.8%であった。
工程3(溶解・析出工程):
容量が5,000mLのガラス反応器にアセトニトリル1,500gとメタノール1,500gとを仕込み、この混合溶媒の冷却を攪拌下で開始した。そして、ガラス反応器の内温が0℃となった時点において、同温度を維持しながら工程2−2で得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶の全量を四分割して10分毎に混合溶媒中に投入した。精製結晶の全量の投入完了後、混合溶媒の温度を0℃に維持しながら攪拌を1時間継続した。この間、混合溶媒は、当初、透明溶液状を呈していたが、精製結晶の投入完了から4〜5分後に結晶が析出し始め、この結晶は体積を増しながら成長した。
析出した結晶をヌッチェ式ろ過器によりろ過して分離し、さらに遠心分離した。得られた結晶は、質量が260g、工程1−2と同じ方法でHPLCにより測定した9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの純度が99.7%であった。
工程4(乾燥工程):
ロータリーエバポレーターを用い、工程3で得られた結晶を真空乾燥した。このとき、真空度は1〜2mmHg(133.32〜266.62Pa)に設定した。また、乾燥温度は、当初、40℃で1時間保持し、その後に90℃まで徐々に昇温した。そして、90℃を3時間維持し、乾燥を完了した。
こうして得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶は、室温(25℃)まで放冷後、分析、評価した。分析結果および分析方法は次の通りである。
純度:99.7%
工程1−2と同じ条件・方法でHPLCにより測定。
嵩比重:0.75g/cm
乾燥した9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶を10mLメスシリンダーの10mL罫線まで仕込み、その重量を測定することで求めた。
示差走査熱量測定法による融解ピーク:
9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶10mgと酸化アルミニウム10mgとをそれぞれアルミパンに精密に秤取し、示差走査熱量計(セイコー電子工業株式会社の型番「DSC220C」)を用いて酸化アルミニウムを対象として下記の条件で測定した。結果を図1に示す。図1によると、得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶の融解ピークは118.85℃である。
昇温速度:10℃/分
測定範囲:40−260℃
雰囲気:開放、窒素40mL/分
粉末X線回折:
結晶150mgをガラス試験板の試料充填部に充填し、粉末X線回折装置(スペクトリス社の型番「X’PertPRO」)を用いて下記の条件で測定した。結果を図2および表1に示す。
X線源:CuKα
出力:1.8kW(45kV−40mA)
測定範囲:2θ=5°〜60°
スキャン速度:2θ=1.2°/分
スリット:DS=1°、マスク=15mm、RS=可変(0.1mm〜)
Figure 0006312285
[実施例2]
実施例1の工程1−1から工程2−2までを同様に実行し、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶を340g得た。得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶について、以下の工程を実行した。
工程3(溶解・析出工程):
容量が5,000mLのガラス反応器にトルエン1,000gを仕込み、これにアセトニトリル17gとメタノール17gとを加えることで混合溶媒を調製した。この混合溶媒の冷却を攪拌下で開始し、ガラス反応器の内温が0℃となった時点において、同温度を維持しながら工程2−2で得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶の全量を四分割して10分毎に混合溶媒中に投入した。精製結晶の全量の投入完了後、混合溶媒の温度を0℃に維持しながら攪拌を2時間継続した。この間、混合溶媒は、当初、透明溶液状を呈していたが、精製結晶の投入完了から約5分後に結晶が析出し始め、この結晶は体積を増しながら成長した。
析出した結晶をヌッチェ式ろ過器によりろ過して分離し、さらに遠心分離した。得られた結晶は、質量が330g、実施例1の工程3と同じ方法でHPLCにより測定した9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの純度が99.8%であった。
工程4(乾燥工程):
ロータリーエバポレーターを用い、工程3で得られた結晶を真空乾燥した。このとき、真空度は1〜2mmHg(133.32〜266.62Pa)に設定した。また、乾燥温度は、当初、40℃で1時間保持し、その後に90℃まで徐々に昇温した。そして、90℃を3時間維持し、乾燥を完了した。
こうして得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶は、室温(25℃)まで放冷後、実施例1と同様の方法で分析、評価した。結果は次の通りである。
純度:99.8%
嵩比重:0.63g/cm
示差走査熱量測定法による融解ピーク:
結果を図3に示す。図3によると、得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶の融解ピークは122.00℃である。
粉末X線回折:
結果を図4および表2に示す。
Figure 0006312285
[実施例3]
実施例1の工程1−1を同様に実行し、反応液を得た。得られた反応液について、以下の工程を実行した。
工程1−2(析出・分離工程):
工程1−1において第1ガラス反応器中で得られた反応液に対し、トルエン400gを加えた。
別途用意した容量が5,000mLの第2ガラス反応器へトルエン3,000gを仕込み、このトルエンに対して温度を20〜25℃に維持しながら攪拌下において第1ガラス反応器の内容物の全量を滴下した。滴下終了後、第2ガラス反応器へ純水250gを加えて第2ガラス反応器の内温を75℃に加熱し、1時間攪拌後に第2ガラス反応器を静置することで内容物を水層とトルエン層とに分離した。第2ガラス反応器から水層を廃棄し、トルエン層へさらに純水250gを加えて第2ガラス反応器の内温を75℃に加熱した。そして、30分攪拌後、第2ガラス反応器を静置することで内容物を水層とトルエン層とに再度分離した。
次に、第2ガラス反応器から水層を廃棄し、トルエン層へ5質量%水酸化ナトリウム水溶液250gを加えて第2ガラス反応器の内容物を攪拌下で75℃に加熱した。1時間攪拌後、第2ガラス反応器を静置することで内容物を水層とトルエン層とに分離した。5質量%水酸化ナトリウム水溶液によるトルエン層の洗浄を同様にして繰り返した後、第2ガラス反応器から水層を廃棄した。トルエン層へ純水250gを加え、第2ガラス反応器の内温を75℃に加熱して1時間攪拌後、第2ガラス反応器を静置することで内容物を水層とトルエン層とに分離した。第2ガラス反応器から水層を廃棄し、トルエン層に対する同様の水洗操作を5回繰り返した。
水洗後のトルエン層を自然に冷却し、結晶を析出させた。結晶の析出は、トルエン層の温度が42℃程度に低下したころから始まった。トルエン層の温度を25℃程度に12時間維持することで結晶の析出を完結させた後、トルエン層を一夜放置することで析出した結晶を熟成させた。
結晶が析出したトルエン層をヌッチェ式ろ過器にてろ過し、結晶を分離した。そして、この結晶を小型遠心分離機にかけて液分を除去し、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶360gを得た。得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶の純度を実施例1の工程1−2と同様の方法でHPLCにより測定したところ、96.0%であった。
工程2(トルエンによる精製工程):
容積が5,000mLのガラス反応器にトルエン3,000gを仕込み、攪拌下で工程1−2において得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗結晶の全量を投入した。粗結晶の投入完了後、ガラス反応器の内温を攪拌下で75℃に加熱し、添加した粗結晶を完全に溶解した。次に、ガラス反応器の内容物を東洋濾紙株式会社製5Cろ紙を用いてろ過し、容量が5,000mLのガラス容器にろ液を移した。そして、ガラス容器内のろ液を12時間かけて25℃まで徐冷後に一夜放置し、結晶を析出させるとともに熟成させた。
ヌッチェ式ろ過器を用いて析出した結晶をろ過し、さらに遠心分離した。これにより、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶を340g得た。この精製結晶は、実施例1の工程1−2と同様の方法でHPLCにより純度を測定したところ、99.7%であった。
工程3(溶解・析出工程):
容量が5,000mLのガラス反応器にトルエン1,000gを仕込み、これにアセトニトリル17gとメタノール17gとを加えることで混合溶媒を調製した。この混合溶媒の冷却を攪拌下で開始し、ガラス反応器の内温が−5℃となった時点において、同温度を維持しながら工程2で得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの精製結晶の全量を四分割して10分毎に混合溶媒中に投入した。精製結晶の全量の投入完了後、混合溶媒の温度を0℃に維持しながら攪拌を2時間継続した。この間、混合溶媒は、当初、透明溶液状を呈していたが、精製結晶の投入完了から約5分後に結晶が析出し始め、この結晶は体積を増しながら成長した。
析出した結晶を真空ろ過し、さらに遠心分離した。得られた結晶は、質量が345g、実施例1の工程3と同じ方法でHPLCにより測定した9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの純度が99.7%であった。
工程4(乾燥工程):
ロータリーエバポレーターを用い、工程3で得られた結晶を真空乾燥した。このとき、真空度は1〜2mmHg(133.32〜266.62Pa)に設定した。また、乾燥温度は、当初、40℃で1時間保持し、その後に90℃まで徐々に昇温した。そして、90℃を3時間維持し、乾燥を完了した。
こうして得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶は、室温(24℃)まで放冷後、実施例1と同様の方法で分析、評価した。結果は次の通りである。
純度:99.7%
嵩比重:0.65g/cm
示差走査熱量測定法による融解ピーク:
結果を図5に示す。図5によると、得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶の融解ピークは121.62℃である。
粉末X線回折:
結果を図6および表3に示す。
Figure 0006312285

Claims (1)

  1. 示差走査熱量測定法による融解ピークが118.85〜122.00℃の温度域において認められ、かつ、嵩比重が0.63〜0.75g/cm ある、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン結晶。
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