JP6311391B2 - 再利用基材の製造方法およびカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法 - Google Patents

再利用基材の製造方法およびカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6311391B2
JP6311391B2 JP2014067203A JP2014067203A JP6311391B2 JP 6311391 B2 JP6311391 B2 JP 6311391B2 JP 2014067203 A JP2014067203 A JP 2014067203A JP 2014067203 A JP2014067203 A JP 2014067203A JP 6311391 B2 JP6311391 B2 JP 6311391B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
base material
cleaning
catalyst
substrate
cnt
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014067203A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015188811A (ja
Inventor
広和 高井
広和 高井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Zeon Corp
Original Assignee
Zeon Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Zeon Corp filed Critical Zeon Corp
Priority to JP2014067203A priority Critical patent/JP6311391B2/ja
Publication of JP2015188811A publication Critical patent/JP2015188811A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6311391B2 publication Critical patent/JP6311391B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P20/00Technologies relating to chemical industry
    • Y02P20/50Improvements relating to the production of bulk chemicals
    • Y02P20/584Recycling of catalysts

Landscapes

  • Carbon And Carbon Compounds (AREA)
  • Catalysts (AREA)

Description

本発明は、再利用基材の製造方法およびカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法に関し、特には、カーボンナノチューブ合成用触媒を担持させる基材として好適に用いられる再利用基材の製造方法、および、当該再利用基材を用いたカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法に関するものである。
カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)は、力学的強度、光学特性、電気特性、熱特性、分子吸着能等の各種特性に優れており、電子デバイス材料、光学素子材料、導電性材料等の機能性材料としての展開が期待されている。
ここで、CNTの製造方法の一つとして、化学気相成長法(以下、「CVD法」と称することがある。)が知られている。このCVD法は、高温雰囲気下で原料となる炭素化合物を金属微粒子よりなる触媒と接触させてCNTを合成することを特徴としている。そして、CVD法は、CNTの製造条件(例えば、触媒の種類または配置、炭素化合物の種類、或いは、反応条件など)の自由度が高く、また、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)と多層カーボンナノチューブ(MWCNT)とのいずれも製造可能である製造方法として注目されている。
また、CVD法を用いたCNTの製造方法の中でも、CNT合成用触媒を担持した基材(以下、「触媒基材」と称することがある。)を用いてCNTを合成する方法は、触媒基材に対して垂直に配向した多数のCNTを大量に製造することができるため、特に注目されている。そのため、触媒基材を使用してCVD法によりCNTを製造する方法に関し、製造コストの低減などを目的とした様々な提案がなされている。
具体的には、例えば特許文献1では、触媒基材上で形成したCNTを回収した後、使用済みの触媒基材を焼成し、そして焼成した触媒基材をCNTの合成にそのまま再使用することにより、CNTの製造コストを低減することが提案されている。
また、例えば特許文献2では、触媒基材上に形成したCNTを特定の方法で触媒基材から剥離して回収した後、使用済みの触媒基材について、触媒基材上の炭素成分を燃やして灰化させるアッシング処理や、触媒基材上の触媒成分を除去する酸洗浄を実施してからCNTの合成に再使用することにより、CNTの製造コストを低減することが提案されている。
特開2006−27948号公報 特開2007−91485号公報
しかし、特許文献1に記載の技術では、600〜750℃の高温下で焼成した触媒基材を再利用しているため、CNTの合成を繰り返すと、CNT合成用触媒自体やCNT合成用触媒を担持している基材が劣化し、製造されるCNTの品質が低下する虞があった。
また、特許文献2に記載の技術においても、触媒基材の再利用に際し、高温下でのアッシング処理や、硝酸、塩酸またはフッ酸などを使用した酸洗浄を実施しているため、CNTの合成を繰り返すと、CNT合成用触媒を担持している基材が劣化し、製造されるCNTの品質が低下する虞があった。
一方で、焼成、アッシング処理または酸洗浄などを実施することなく触媒基材の再利用を繰り返すと、基材の表面に残存した炭素成分などの不純物の影響によりCNTの合成不良が発生し、製造されるCNTの品質が低下する虞がある。
即ち、上記従来の技術には、基材の再利用によるCNTの製造コストの低減と、高品質なCNTの安定的な製造とを両立することができないという問題点があった。
そこで、本発明は、高品質なCNTを低コストで安定的に製造することを可能にする技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、CNTの製造に使用した触媒基材を再利用してCVD法によりCNTを繰り返し合成する際に、液体の衝突を利用した物理的な洗浄方法を用いて基材を洗浄することで、基材の劣化を抑制しつつ基材の表面に残存している炭素成分などの不純物を良好に除去できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の再利用基材の製造方法は、表面からカーボンナノチューブが剥離された使用済み基材を用いた再利用基材の製造方法であって、前記使用済み基材の前記表面を洗浄する初期化工程を含み、前記洗浄が、液体の衝突を利用した洗浄であることを特徴とする。このように、使用済み基材に対して液体の衝突を利用した洗浄を実施すれば、基材の劣化を抑制しつつ、基材の表面に残存している炭素成分などの不純物を良好に除去することができる。従って、この製造方法を用いて製造した再利用基材にカーボンナノチューブ合成用触媒を担持させて形成した触媒基材をカーボンナノチューブの合成に使用すれば、使用済み基材の再利用によるコストの削減と、高品質なカーボンナノチューブの安定的な製造とを両立することができる。
ここで、本発明の再利用基材の製造方法は、前記初期化工程の後に、前記表面を清掃する清掃工程を更に含むことが好ましい。初期化工程の後に清掃工程を実施すれば、基材の表面に残存している炭素成分などの不純物が十分に除去された再利用基材を製造することができるからである。
そして、本発明の再利用基材の製造方法は、前記液体の衝突を利用した洗浄が、超音波洗浄、液中流体噴射洗浄、圧縮流体噴射洗浄および気液2流体ジェット洗浄からなる群より選択される少なくとも1つの洗浄処理であることが好ましい。これらの洗浄方法を使用すれば、基材の劣化を十分に抑制しつつ、基材の表面に残存している炭素成分などの不純物が十分に除去された再利用基材を製造することができるからである。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法は、上述した再利用基材の製造方法の何れかにより得られた再利用基材の前記表面側にカーボンナノチューブ合成用触媒を担持させ、前記再利用基材上に触媒層を形成する触媒層形成工程を含むことを特徴とする。このように、上述した再利用基材の製造方法を用いて得られた再利用基材の表面に触媒層を形成してカーボンナノチューブ生成用触媒基材を製造すれば、使用済み基材を再利用しつつ、高品質なカーボンナノチューブを安定的に製造することが可能な触媒基材を提供できる。
本発明の再利用基材の製造方法によれば、基材の劣化を抑制しつつ、基材の表面に残存している炭素成分などの不純物を良好に除去した再利用基材を製造することができる。また、本発明のカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法によれば、使用済み基材を再利用しつつ、高品質なカーボンナノチューブを安定的に製造することが可能な触媒基材を提供することができる。
従って、本発明によれば、使用済み基材の再利用によるコストの削減と、高品質なカーボンナノチューブの安定的な製造とを両立することができる。
基材を再利用しつつカーボンナノチューブを繰り返し合成するカーボンナノチューブの製造方法のフローチャートである。 本発明の再利用基材の製造方法の一例を用いて製造される再利用基材の構成を模式的に示す図である。 (a)は、初期化工程を実施する前の使用済み基材の状態を模式的に示す図であり、(b)は、初期化工程を実施した後の使用済み基材の状態を模式的に示す図である。 初期化工程を実施する前の使用済み基材に対するジェット流の噴射角度を模式的に示す図である。 本発明のカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法の一例を用いて製造されるカーボンナノチューブ生成用触媒基材の構成を模式的に示す図である。 図5に示すカーボンナノチューブ生成用触媒基材を使用してカーボンナノチューブを合成した後に基材からカーボンナノチューブを剥離して得られる使用済み基材の構成を模式的に示す図である。 本発明のカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法の一例を用いて製造されるカーボンナノチューブ生成用触媒基材の別の構成を模式的に示す図である。 カーボンナノチューブ生産装置の一例の構成を模式的に示す図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の再利用基材の製造方法は、カーボンナノチューブ(CNT)の合成に使用された使用済み基材を原材料として使用し、表面にCNT合成用触媒を担持させることでCNTの合成に再び使用することができる再利用基材を製造する際に用いられる。また、本発明のカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法は、本発明の再利用基材の製造方法を用いて製造した再利用基材を使用し、化学気相成長法(CVD法)を用いたCNTの合成に良好に使用し得るカーボンナノチューブ生成用触媒基材を製造する際に用いられる。
そして、本発明の再利用基材の製造方法およびカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法は、例えば図1に示すような、基材を再利用しつつCNTを繰り返し合成するCNTの製造方法において好適に用いることができる。
(カーボンナノチューブの製造方法)
図1に示すカーボンナノチューブの製造方法は、基材上に形成したCNTを基材から剥離するCNT剥離工程と、CNT剥離工程において基材からCNTを剥離して得られる使用済み基材を使用し、本発明の再利用基材の製造方法を用いて再利用基材を製造する工程(再利用基材製造工程)と、得られた再利用基材を使用し、本発明のカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法を用いてカーボンナノチューブ生成用触媒基材を製造する工程(触媒基材製造工程)と、得られたカーボンナノチューブ生成用触媒基材を使用し、CVD法によりカーボンナノチューブ生成用触媒基材上でCNTを合成するCNT成長工程とを含む。そして、カーボンナノチューブの製造方法では、これらの工程を繰り返し実施し、基材を再利用しつつ低コストでCNTを繰り返し製造する。
<CNT剥離工程>
CNT剥離工程では、表面にCNTが形成された基材からCNTを剥離し、表面からCNTが剥離された使用済み基材を得る。
ここで、CNT剥離工程においてCNTを基材から剥離する方法としては、物理的、化学的あるいは機械的な剥離方法を例示できる。具体的には、例えば、電場、磁場、遠心力、表面張力等を用いて剥離する方法、機械的に直接基材から剥ぎ取る方法、並びに、圧力または熱を用いて基材から剥離する方法等が適用可能である。また、真空ポンプを用いてCNTを吸引し、基材から剥ぎ取ることも可能である。なお、簡単でCNTを損傷させ難い剥離方法としては、CNTをピンセットで直接つまんで基材から剥がす方法や、鋭利部を備えたプラスチック製のヘラまたはカッターブレード等の薄い刃物を使用してCNTを基材から剥ぎ取る方法が挙げられる。中でも、剥離方法としては、鋭利部を備えたプラスチック製のヘラまたはカッターブレード等の薄い刃物を使用してCNTを基材から剥ぎ取る方法が好適である。
<再利用基材製造工程>
再利用基材製造工程において再利用基材を製造する際に使用する本発明の再利用基材の製造方法の一例は、使用済み基材を洗浄する初期化工程を含み、任意に、初期化工程を経た使用済み基材を清掃する清掃工程を更に含む。
[使用済み基材]
CNT剥離工程において基材からCNTを剥離して得られる使用済み基材は、一例としてCNTの製造を一度のみ実施した基材からCNTを剥離して得られる使用済み基材の構成を図3(a)に示すように、例えば、基材10と、基材10の両面に設けられた浸炭防止層11と、基材10の主表面側(図3では上側)に位置する浸炭防止層11の上に設けられた下地層12と、下地層12の基材10側とは反対側の表面に設けられた触媒層13とを備えている。そして、使用済み基材の、少なくとも触媒層13側の表面(即ち、CNTが形成されていた側の表面)には、CNTの合成時に付着した炭素成分やCNTの剥離時に残存した炭素成分などの不純物14が残存している。具体的には、使用済み基材の表面には、CNTの剥離時に取りきれずに残ったCNT、グラファイト状またはアモルファス状のナノ粒子、薄片状物質等の炭素化合物が残存していると推察される。因みに、使用済み基材の、不純物14以外の構成、即ち、基材10、浸炭防止層11、下地層12および触媒層13は、CNT剥離工程において基材から剥離されたCNTを合成した際に使用されたものである。従って、例えば触媒層13は、CNTの剥離時に剥離されずに残存した微粒子状のCNT合成用触媒で構成されている。
なお、使用済み基材は、浸炭防止層を備えていなくてもよい。また、使用済み基材は、下地層を備えていなくてもよい。
[[基材]]
ここで、CNTの合成に使用された後に使用済み基材の一部を構成する基材10としては、その表面にCNT合成用の触媒を担持することが可能であり、後述する液体の衝突を利用した洗浄に対する耐性を有している基材であれば任意の基材が用いられる。具体的には、基材10としては、CNTの製造に実績のあるものを、適宜、用いることができる。なお、基材10は、500℃以上の高温でも形状を維持できることが好ましい。
ここで、基材10の材質としては、鉄、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、チタン、アルミニウム、マンガン、コバルト、銅、銀、金、白金、ニオブ、タンタル、鉛、亜鉛、ガリウム、インジウム、ゲルマニウムおよびアンチモンなどの金属、並びに、これらの金属を含む合金および酸化物、或いは、シリコン、石英、ガラス、マイカ、グラファイトおよびダイヤモンドなどの非金属、並びに、セラミックなどを例示できる。これらの中でも、金属は、シリコンおよびセラミックと比較して、低コスト且つ加工が容易であるから好ましく、特に、Fe−Cr(鉄−クロム)合金、Fe−Ni(鉄−ニッケル)合金、Fe−Cr−Ni(鉄−クロム−ニッケル)合金などは好適である。
基材10の形状としては、平板状、薄膜状、ブロック状または粒子状などが挙げられ、CNTを大量に製造する観点からは、体積の割に表面積を大きくとれる平板状および粒子状が特に有利である。
ここで、基材10が合金からなる場合、特に形状が平板状のものには、その圧延工程に由来するヘアライン状の凹凸が全面に存在しており、この凹凸部に付着した汚れは一般に除去されにくいと予想される。しかし、本発明では液体の衝突を利用した洗浄を行うことから、該凹凸部に存在する汚れを効率的に除去できると考えられ、本発明による効果をより顕著に得ることが可能である。
なお、平板状の基材10を使用する場合、基材10の厚さに特に制限はなく、例えば数μm程度の薄膜から数cm程度までのものを用いることができる。好ましくは、基材10の厚さは0.05mm以上3mm以下である。基材10の厚さが3mm以下であれば、CNTを合成する際に基材10を十分に加熱することができ、CNTの成長不良の発生を抑制することができる。また、基材10のコストを低減できる。一方、基材10の厚さが0.05mm以上であれば、CNT合成時の浸炭による基材10の変形を抑制することができ、また、基材自体のたわみが起こりにくいため、基材10の搬送や再利用に有利である。なお、本明細書にいう「浸炭」とは、基材10に炭素成分が浸透することをいう。
また、平板状の基材10の形状および大きさに特に制限はないが、形状としては、長方形もしくは正方形のものを用いることができる。また、基材10の一辺の長さに特に制限はないが、CNTの量産性の観点からは、一辺の長さは長いほど望ましい。
[[浸炭防止層]]
浸炭防止層11は、CNTを合成する際に基材10が浸炭されて変形してしまうことを防止するための保護層である。浸炭防止層11は、基材10の表面および裏面のいずれか一方のみに形成してもよいが、基材10の両面に形成することが望ましい。
浸炭防止層11は、金属またはセラミック材料によって構成されることが好ましく、特に浸炭防止効果の高いセラミック材料で構成されることが好ましい。金属としては、銅、アルミニウム等を例示できる。セラミック材料としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、シリカアルミナ、酸化クロム、酸化ホウ素、酸化カルシウム、酸化亜鉛等の酸化物、窒化アルミニウム、及び、窒化ケイ素等の窒化物を例示できる。これらの中でも、浸炭防止効果が高いことから、浸炭防止層11を構成する材料としては、酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素が好ましい。
なお、浸炭防止層11上には下地層12または触媒層13を形成するが、浸炭防止層の材質と下地層12または触媒層13の材質とが共通する場合には、浸炭防止層11を設けることなく、下地層12や触媒層13を浸炭防止層11として機能させてもよい。
浸炭防止層11の厚さは、0.01μm以上1.0μm以下が望ましい。浸炭防止層の厚さが0.01μm以上であると、浸炭防止効果を充分に得ることができる。一方、浸炭防止層の厚さが1.0μm以下であると、基材10の熱伝導性が変化するのを抑制し、CNT合成時に基材10を十分に加熱してCNTを良好に成長させることができる。浸炭防止層11の層形成(コーティング)の方法としては、例えば、蒸着、スパッタリング等の物理的方法、CVD、塗布等の方法を用いることができる。
[[下地層]]
下地層12は、「触媒担持層」とも称されるものであり、CNT合成用触媒の下地となる層である。そして、下地層12の材料としては、CNT合成用触媒の下地となるものであればさまざまな材料を用いることができ、例えば、アルミナ、チタニア、窒化チタン、酸化シリコンなどのセラミック材料が好適に用いられる。中でも、下地層12の材料としては、セラミック材料を用いることが好ましい。セラミック材料の方が、基材10を再利用してCNTを合成したときにCNTが良好に成長するからである。
なお、下地層12の厚みは、CNTの成長が安定して歩留まりが向上する観点からは10nm以上であることが好ましく、生産効率の観点からは30nm以下であることが好ましい。
[[触媒層]]
触媒層13は、CNT合成用触媒の微粒子を含む層である。ここで、触媒層13を構成するCNT合成用触媒としては、例えば、これまでのCNTの製造に実績のあるものを、適宜、用いることができる。具体的には、鉄、ニッケル、コバルトおよびモリブデン、並びに、これらの塩化物および合金等をCNT合成用触媒として例示することができる。
なお、触媒層13の形成に使用するCNT合成用触媒の量は、例えば、これまでのCNTの製造に実績のある量を使用することができる。具体的には、例えばCNT合成用触媒として鉄を用いる場合には、触媒層13の厚さは、0.1nm以上100nm以下が好ましく、0.5nm以上5nm以下がさらに好ましく、0.8nm以上2nm以下が特に好ましい。
因みに、触媒層13は、基材10の表面側および裏面側の両面に形成してもよい。基材10の両面に触媒層13を形成すれば、CNTを基材10の両面において成長させることができるので、生産効率を向上させることができる。もちろん、生産コストや生産工程上の都合等に応じて、触媒層13を基材10の片面のみに設けることは可能である。
ここで、上述した下地層12および触媒層13の組み合わせとしては、例えば、アルミナ−鉄薄膜、アルミナ−コバルト薄膜、および、アルミナ−鉄−モリブデン薄膜などを例示することができる。
なお、例えば、アルミニウム−鉄薄膜、アルミニウム−鉄−モリブデン薄膜などの形態でもCNTの合成は可能であるが、基材の再利用を行なう場合、下地層12の形成に使用する材料は、セラミック材料の方が好ましい。セラミック材料は、金属材料に比べてCVD法を用いたCNTの合成中に劣化し難いため、セラミック材料を使用すれば、CVD法を用いたCNTの合成を2度以上行なった場合でも、CNTが良好に成長するからである。
ここで、上述した基材10、浸炭防止層11および触媒層12は、それぞれ、その表面の算術平均粗さRaが3μm以下であることが望ましい。表面の算術平均粗さRaが3μm以下であれば、使用済み基材の表面への炭素成分の付着が防止または抑制され、さらに浸炭されにくくなる。従って、基材を再利用してCNTを合成した際に、高品質のCNTを安定的に高効率で生産することが可能となる。
なお、算術平均粗さRaは、JIS B0601(2001)に記載の通り、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さLだけ抜き取って、この抜き取り部分の平均線方向にX軸、直交する縦倍率の方向にY軸をとったときの表面プロファイルをy=f(x)で表したときに、次式(1)によって求められる。
Figure 0006311391
[初期化工程]
初期化工程においては、CNTが剥離された使用済み基材に対し、液体の衝突を利用した洗浄を実施する。具体的には、初期化工程では、使用済み基材の表面のうち、少なくともCNTが剥離された側の表面に対して、液体の衝突を利用した洗浄を実施する。そして、図3(a)に初期化工程を実施する前の使用済み基材の状態を示し、図3(b)に初期化工程を実施した後の使用済み基材の状態を示すように、初期化工程においては、使用済み基材の表面(図示例では触媒層13の表面)に残存していた炭素成分などの不純物14が、液体の衝突を利用した洗浄により除去される。
なお、初期化工程後の基材上には、図3(b)に示すように下地層12および触媒層13が残存していてもよいし、使用済み基材の下地層12および触媒層13は、液体の衝突を利用した洗浄による炭素成分の除去に伴って除去されていてもよい。なお、初期化工程において下地層12および触媒層13が除去されても、後述する下地層形成工程および触媒層形成工程において下地層および触媒層を再び形成すれば、その後のCNTの生成に悪影響を及ぼすことはない。一方で、初期化工程で炭素成分の除去が不十分であると、その上に下地層および触媒層を形成したとしても、その後のCNTの生成においてCNTの生産量や品質が低下することがある。
ここで、「液体の衝突を利用した洗浄」とは、被洗浄物である使用済み基材の表面に対して液体を衝突させ、液体を衝突させる際に発生する局所的な高圧場、せん断流、被洗浄物の振動などを利用して使用済み基材の表面を物理的に洗浄する方法である。
そして、液体の衝突を利用した洗浄方法としては、例えば、超音波洗浄、液中流体噴射洗浄、圧縮流体噴射洗浄、気液2流体ジェット洗浄およびそれらの組み合わせなどが挙げられる。これらの洗浄方法は、被洗浄物である使用済み基材が洗浄により劣化するのを抑制しつつ、使用済み基材の表面に残存している炭素成分などの不純物を十分に除去することができるため、使用済み基材を洗浄する方法として適している。
[[超音波洗浄]]
ここで、超音波洗浄を用いて使用済み基材を洗浄する場合には、例えば水などの液体中に使用済み基材を浸漬し、超音波を照射することで、液体を振動させると共に使用済み基材に衝突させる。そして、超音波の照射により生じるキャビテーション、せん断流れ、使用済み基材の振動などを利用して、使用済み基材の表面を洗浄する。
なお、超音波洗浄には、超音波洗浄槽などの既知の超音波洗浄装置を使用することができる。
そして、使用済み基材の超音波洗浄は、20kHz以上5MHz以下の周波数で行なうことが好ましく、20kHz以上1MHz以下の周波数で行なうことがより好ましく、20kHz以上200kHz以下の周波数で行なうことが更に好ましい。かかる周波数帯域では適度にキャビテーションを発生させることができ、効率的に洗浄を行うことができる。また、超音波洗浄を実施する時間は、0.1分以上10分以下が好ましい。更に、超音波洗浄を実施する際の温度は、20℃以上50℃以下が好ましい。周波数が高すぎたり、洗浄時間が長すぎたり、温度が高すぎたりすると、洗浄中に使用済み基材が劣化する虞があるからである。一方で、周波数が低すぎたり、洗浄時間が短すぎたり、温度が低すぎたりすると、炭素成分などの不純物を十分に除去することができない虞があるからである。
[[液中流体噴射洗浄]]
液中流体噴射洗浄は、水などの液体中に浸漬した被洗浄物に対して高圧・小流量のジェット流を噴射することにより被洗浄物を洗浄する方法である。そして、液中流体噴射洗浄を用いて使用済み基材を洗浄する場合には、例えば水などの液体中に使用済み基材を浸漬した後、噴射ノズルなどを使用して高圧・小流量のジェット水流を使用済み基材の表面に液体中で衝突させる。そして、ジェット水流を衝突させる際に生じるキャビテーション、せん断流れ、使用済み基材の振動などを利用して、使用済み基材を洗浄する。
ここで、噴射ノズルとしては、既知の噴射ノズルを用いることができるが、例えば、噴射口が末広がりのテーパ形状をしたノズル(「ホーン型ノズル」と称されることもある。)を使用することが好ましい。このホーン型ノズルを使用した場合には、ジェット流の噴射時に噴射口付近のテーパ部分内へ水が巻き込まれ、キャビテーションが効果的に発生し、洗浄効果が増大する。
そして、使用済み基材の液中流体噴射洗浄は、圧力100kPa以上30MPa以下のジェット流を使用して行なうことが好ましい。なお、ジェット流の流量は、1L/分以上100L/分以下であることが好ましい。また、液中流体噴射洗浄を実施する時間は、0.1分以上10分以下が好ましい。更に、液中流体噴射洗浄を実施する際の温度は、20℃以上50℃以下が好ましい。ジェット流の圧力が高すぎたり、流量が大きすぎたり、時間が長すぎたり、温度が高すぎたりすると、洗浄中に使用済み基材が劣化する虞があるからである。一方で、圧力が低すぎたり、流量が低すぎたり、洗浄時間が短すぎたり、温度が低すぎたりすると、炭素成分などの不純物を十分に除去することができない虞があるからである。
[[圧縮流体噴射洗浄]]
圧縮流体噴射洗浄とは、水などの液体を高圧に圧縮して被洗浄物に対して高速で噴射することにより被洗浄物を洗浄する方法である。圧縮流体噴射洗浄を用いて使用済み基材を洗浄する場合には、例えば、細径のノズルを使用し、高圧のジェット水流を使用済み基材の表面に空気中で衝突させる。そして、ジェット水流を衝突させる際に生じるキャビテーション、せん断流れ、使用済み基材の振動などを利用して、使用済み基材を洗浄する。
ここで、ジェット流を噴射するためのノズルとしては、扇型、円錐型および直進型などの既知の細径ノズルを用いることができる。
そして、使用済み基材の圧縮流体噴射洗浄は、圧力100kPa以上30MPa以下のジェット流を使用して行なうことが好ましい。なお、ジェット流の流量は、1L/分以上100L/分以下であることが好ましい。また、圧縮流体噴射洗浄を実施する時間は、0.1分以上10分以下が好ましい。更に、圧縮流体噴射洗浄を実施する際の温度は、20℃以上50℃以下が好ましい。ジェット流の圧力が高すぎたり、流量が大きすぎたり、時間が長すぎたり、温度が高すぎたりすると、洗浄中に使用済み基材が劣化する虞があるからである。一方で、圧力が低すぎたり、流量が低すぎたり、洗浄時間が短すぎたり、温度が低すぎたりすると、炭素成分などの不純物を十分に除去することができない虞があるからである。
[[気液2流体ジェット洗浄]]
気液2流体ジェット洗浄は、水などの液体と、空気または水蒸気などの気体とを混合して得た微細な液滴を含む2流体ジェット流を被洗浄物に対して噴射することにより被洗浄物を洗浄する方法である。そして、気液2流体ジェット洗浄を用いて使用済み基材を洗浄する場合には、例えば2流体噴射ノズルを使用し、微細な液滴を含む2流体ジェット流を使用済み基材の表面に空気中で衝突させる。そして、2流体ジェット流を衝突させる際に生じるキャビテーション、せん断流れ、使用済み基材の振動などを利用して、使用済み基材を洗浄する。
ここで、2流体噴射ノズルとしては、加圧した気体と液体とを混合する混合部をノズル内部に持った既知のノズルを用いることができる。なお、液体の加圧には、窒素ガスなどの既知のガスを使用することができる。
そして、使用済み基材の気液2流体ジェット洗浄は、圧力0.05MPa以上0.6MPa以下に加圧した気体と、圧力0.05MPa以上0.6MPa以下に加圧した液体とを使用して行なうことが好ましい。また、噴射される2流体ジェット流の液滴の速度は、0.5m/分以上10m/分以下であることが好ましい。更に、気液2流体ジェット洗浄を実施する時間は、0.1分以上10分以下が好ましい。また、気液2流体ジェット洗浄を実施する際の温度は、20℃以上50℃以下が好ましい。圧力が高すぎたり、噴射速度が大きすぎたり、時間が長すぎたり、温度が高すぎたりすると、洗浄中に使用済み基材が劣化する虞があるからである。一方で、圧力が低すぎたり、噴射速度が低すぎたり、洗浄時間が短すぎたり、温度が低すぎたりすると、炭素成分などの不純物を十分に除去することができない虞があるからである。
ここで、CNT剥離時に鋭利部を備えたプラスチック製のヘラまたはカッターブレード等の薄い刃物を使用してCNTを基材から剥ぎ取る方法を用いた場合、使用済み基材の表面に残存している炭素成分などの不純物は、刃物の進行方向に依存して、方向性を有するようになる。そのため、薄い刃物を使用してCNTを基材から剥ぎ取った後に上述した液中流体噴射洗浄、圧縮流体噴射洗浄および気液2流体ジェット洗浄の少なくとも一つを用いて洗浄を行なう場合には、使用済み基材の表面に残存している炭素成分などの不純物を効率的に除去するのに適したジェット流の噴射角度が存在することになる。具体的には、図4に示すように、刃物の進行方向(A→B、通常は使用済み基材表面と平行な方向)を0°とし、不純物14が付着する使用済み基材表面の垂線の上向き方向を90°として、使用済み基材の表面に対するジェット流の噴射角度は、10°以上80°以下とすることが好ましく、30°以上60°以下とすることがより好ましい。それにより、使用済み基材の表面に残存している炭素成分などの不純物を効率的に除去することができる。
なお、液体の衝突を利用した洗浄方法としては、使用済み基材の表面の不純物除去効率に優れることから、液中流体噴射洗浄、圧縮流体噴射洗浄および気液2流体ジェット洗浄が好ましく、気液2流体ジェット洗浄がより好ましい。
[清掃工程]
清掃工程においては、初期化工程後の基材上を清掃して、図2に示すような、使用済み基材から炭素成分等の不純物が除去された再利用基材20を得る。清掃工程では、初期化工程において用いた洗浄方法とは異なる方法、例えば、基材表面を水洗し、布により拭き取る方法や、基材表面を水洗し、エアーを吹き付けて乾燥する方法等により、基材上を清掃する。液体の衝突を利用した洗浄を実施した後の基材表面には、炭素成分などの不純物が除去しきれずに残存している場合があるが、初期化工程後に基材を清掃することによって、残存する炭素成分などの不純物を十分に取り除くことができる。なお、基材表面に残存する炭素成分等と基材との接着力は、初期化工程における液体の衝突を利用した洗浄により低下している。従って、清掃工程では、水洗、拭き取り等によって容易に炭素成分等を取り除くことができる。
なお、清掃工程後の基材上には、図2に示すように下地層12および触媒層13が残存していてもよいし、下地層12および触媒層13は、基材表面の清掃に伴って除去されていてもよい。なお、清掃工程において下地層12および触媒層13が除去されても、後述する下地層形成工程および触媒層形成工程において、下地層および触媒層を形成すれば、その後のCNTの生成に悪影響を及ぼすことはない。
[再利用基材]
そして、上述した再利用基材製造工程において使用済み基材に対して初期化工程と任意の清掃工程とを実施して得られる再利用基材は、例えば図2に示すような、使用済み基材から炭素成分等の不純物が除去された構成を有している。具体的には、図2に示す再利用基材20は、基材10と、基材10の両面に設けられた浸炭防止層11と、基材10の主表面側(図2では上側)に位置する浸炭防止層11の上に設けられた下地層12と、下地層12の基材10側とは反対側の表面に設けられた触媒層13とを備えている。なお、下地層12や触媒層13が前述した初期化工程および清掃工程において除去された場合には、再利用基材は下地層12や触媒層13を有さない構成となる。
ここで、この再利用基材20の表面からは、前述した初期化工程および清掃工程において炭素成分等が除去されている。従って、再利用基材20は、後に詳細に説明する触媒基材製造工程において下地層や触媒層を形成してカーボンナノチューブ生成用触媒基材とした後、CNTの製造に再度使用することができる。即ち、再利用基材20は、後に詳細に説明する触媒基材製造工程においてカーボンナノチューブ生成用触媒基材を製造する際の原料基材として用いることができる。
なお、再利用基材20をCNTの製造に再度使用する場合、再利用基材20が炭素成分等の不純物を含んでいると、CNTの成長が不安定になる、或いは、生成されるCNTの品質が低下する可能性がある。しかし、再利用基材20を製造する際には、前述した初期化工程および清掃工程において炭素成分等を十分に除去しているので、再利用基材20を使用すれば、CNTの成長を安定化することができると共に、高品質なCNTを繰り返し生成することができる。
ここで、基材に付着した炭素成分などの除去方法としては、高温で加熱して蒸発または灰化させる方法や、酸洗浄する方法等が考えられる。しかし、高温で基材を加熱すると、基材の損傷、基材の反り等の問題が生じ、再利用時にCNTの成長に悪影響を及ぼす場合がある。また、基材を酸洗浄すると、特に基材が金属材料よりなる場合に、基材が腐食され、再利用時にCNTの成長に悪影響を及ぼす可能性がある。
これに対して、前述した初期化工程では、水などの液体の衝突を利用した洗浄を用いて炭素成分等を除去しているので、洗浄時の基材の劣化(例えば、損傷、反りおよび腐食の発生など)を抑制することができる。従って、再利用基材20を使用すれば、CNTの成長を安定化させ、高品質なCNTを繰り返し生成することができる。
なお、基材の腐食を十分に抑制する観点からは、液体の衝突を利用した洗浄において使用する液体のpHは、4以上10以下であることが好ましい。
[[再利用基材の性状]]
ここで、上述したとおり、再利用基材20からは炭素成分等が十分に除去されていることが好ましく、再利用基材20は炭素成分等が表面に残存していないことが特に好ましい。ここで、再利用基材20から炭素成分が除去されていることは、例えば基材表面のラマンスペクトル測定により評価することが可能である。ラマンスペクトルにおいて、炭素成分は、1593cm−1付近のグラファイトの振動モード、または、1350cm−1付近の結晶性の低いアモルファス炭素化合物の振動モードとして検出することが可能である。従って、再利用基材20は、これらのピークが観測されないことが好ましい。
また、この再利用基材20は、表面(触媒層13側の表面)の水に対する接触角が70°以下であることが好ましく、65°以下であることが更に好ましい。再利用基材20の表面の接触角が大きい場合、CNTの製造に再度使用した際にCNTの成長に悪影響を及ぼす可能性があるからである。
なお、接触角は、再利用基材の触媒層側の表面に純水を2マイクロリットル滴下し、5秒後の液滴から、θ/2法を用いて算出することができる。
<触媒基材製造工程>
再利用基材製造工程で得られた再利用基材を使用し、触媒基材製造工程においてカーボンナノチューブ生成用触媒基材を製造する際に使用する本発明のカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法の一例は、再利用基材の表面にCNT合成用触媒を担持させ、再利用基材上に触媒層を形成する触媒層形成工程を少なくとも含む。なお、触媒基材製造工程は、任意に、CNT合成用触媒の下地となる下地層を再利用基材の表面に形成する下地層形成工程を触媒層形成工程の前に含んでいてもよい。
ここで、再利用基材をCNTの合成に使用する場合、触媒層13が最表面にある再利用基材20をそのまま用いて2度目のCNTの合成を行なうことも考えられる。しかし、再利用基材20をそのまま用いた場合、CNTの成長が不安定になったり、生成されるCNTの品質が低下したりする場合がある。考えられる原因としては、触媒層13中の触媒微粒子の密度や直径が、1度目のCNT合成時とは異なる状態なっていることや、初期化工程や清掃工程において触媒層13中の触媒微粒子が除去されたこと等が挙げられる。
そのため、触媒基材製造工程では、再利用基材の表面にCNT合成用触媒を再び担持させ、再利用基材上に触媒層を再び形成する。なお、触媒層を再び形成する前に再利用基材上に下地層を形成すれば、使用済みの触媒層と、次のCNTの合成に使用する触媒層とを下地層で分離し、触媒層を良好に形成することができる。従って、触媒基材製造工程では、下地層形成工程を実施することが好ましい。
なお、当業者であれば、再利用基材の表面に下地層や触媒層を新たに設けるのであれば、使用済み基材に対して初期化工程や清掃工程を実施することなく、使用済み基材をそのまま用いてもよいと考えるであろう。しかし、本発明者らは、初期化工程を行わずに使用済み基材を再利用した場合、CNTが生成しない場合があることを見出した。このことから、使用済み基材の再利用にあたり、初期化工程は、CNTの成長の安定性を向上させる役割、若しくは、CNTの成長を促進する役割があることを見出し、本発明に至ったのである。
[下地層形成工程]
再利用基材20の触媒層13上への下地層の形成には、ウェットプロセスまたはドライプロセス(スパッタリング蒸着法など)のいずれを用いてもよい。成膜装置の簡便さ、スループットの速さ、原材料費の安さなどの観点からは、ウェットプロセスを用いるのが好ましい。
以下、一例として、ウェットプロセスにより下地層を形成する場合について説明する。
下地層を形成するウェットプロセスは、下地層となる元素を含んだ金属有機化合物および/または金属塩を有機溶剤に溶解してなる塗工液Aを基材上へ塗布する工程と、その後加熱する工程から成る。塗工液Aには金属有機化合物および金属塩の過度な縮合重合反応を抑制するための安定剤を添加してもよい。
ここで、例えば、アルミナ膜を下地層として用いる場合、アルミナ膜を形成するための金属有機化合物および/または金属塩としては、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−n−プロポキシド、アルミニウムトリ−i−プロポキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムトリ−tert−ブトキシド等のアルミニウムアルコキシドを用いることができる。アルミナ膜を形成するための金属有機化合物としては他に、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム(III)などの錯体が挙げられる。金属塩としては、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、臭化アルミニウム、よう化アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、塩基性硝酸アルミニウム等が挙げられる。これらのなかでも、アルミニウムアルコキシドを用いることが好ましい。これらは、それぞれ単独で、または2種以上の混合物として用いることができる。
安定剤としては、β−ジケトン類およびアルカノールアミン類からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることが好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。β−ジケトン類としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、ベンゾイルトリフルオルアセトン、フロイルアセトンおよびトリフルオルアセチルアセトンなどを用いることができるが、特にアセチルアセトン、アセト酢酸エチルを用いることが好ましい。アルカノールアミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどを用いることができるが、第2級または第3級アルカノールアミンを用いることが好ましい。
有機溶剤としては、アルコール、グリコール、ケトン、エーテル、エステル類、炭化水素類等種々の有機溶剤が使用できるが、金属有機化合物および金属塩の溶解性が良いことから、アルコールまたはグリコールを用いることが好ましい。これらの有機溶剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが、取り扱い性、保存安定性といった点で好ましい。
塗工液A中の金属有機化合物および/または金属塩の量は特に限定されないが、有機溶剤100mL当たり、好ましくは0.1g以上、より好ましくは0.5g以上であり、好ましくは30g以下、より好ましくは5g以下である。
また、塗工液A中の安定剤の量は特に限定されないが、有機溶剤100mL当たり、好ましくは0.01g以上、より好ましくは0.1g以上であり、好ましくは20g以下、より好ましくは3g以下である。
塗工液Aの塗布方法としては、スプレー、ハケ塗り等により塗布する方法、スピンコーティング、ディップコーティング等のいずれの方法を用いてもよいが、生産性および膜厚制御の観点からは、ディップコーティングが好ましい。
塗工液Aを塗布した後の加熱は、下地層の種類に応じ、50℃以上400℃以下の温度範囲で、5分以上3時間以下の時間に亘って行なうことができる。加熱することで塗布された金属有機化合物および/または金属塩の加水分解および縮重合反応が開始され、金属水酸化物および/または金属酸化物を含む硬化皮膜(下地層)が再利用基材の表面に形成される。
[触媒層形成工程]
触媒層の形成には、下地層と同様に、ウェットプロセスまたはドライプロセス(スパッタリング蒸着法など)のいずれを用いてもよい。成膜装置の簡便さ、スループットの速さ、原材料費の安さなどの観点からは、ウェットプロセスを用いるのが好ましい。
以下、一例として、ウェットプロセスにより触媒層を形成する場合について説明する。
触媒層を形成するウェットプロセスは、CNT合成用触媒となる元素を含んだ金属有機化合物および/または金属塩を有機溶剤に溶解してなる塗工液Bを基材上へ塗布する工程と、その後加熱する工程から成る。塗工液Bには金属有機化合物および金属塩の過度な縮合重合反応を抑制するための安定剤を添加してもよい。
ここで、例えば、鉄をCNT合成用触媒として用いる場合、触媒層となる鉄薄膜を形成するための金属有機化合物および/または金属塩としては、鉄ペンタカルボニル、フェロセン、アセチルアセトン鉄(II)、アセチルアセトン鉄(III)、トリフルオロアセチルアセトン鉄(II)、トリフルオロアセチルアセトン鉄(III)等を用いることができる。金属塩としては、例えば、硫酸鉄、硝酸鉄、リン酸鉄、塩化鉄、臭化鉄等の無機酸鉄、酢酸鉄、シュウ酸鉄、クエン酸鉄、乳酸鉄等の有機酸鉄等が挙げられる。これらのなかでも、有機酸鉄を用いることが好ましい。これらは、それぞれ単独で、または2種以上の混合物として用いることができる。
なお、塗工液Bの安定剤および有機溶剤としては、上述の塗工液Aと同様のものを用いることができる。また、それらの含有量も、塗工液Aと同様の量とすることができる。
更に、塗工液Bの塗布方法としては、塗工液Aと同様の方法を用いることができる。また、塗工液Bを塗布した後の加熱も、塗工液Aと同様にして行なうことができる。
この触媒層形成工程により、触媒層が再利用基材の表面に形成されてなるカーボンナノチューブ生成用触媒基材が形成される。
[カーボンナノチューブ生成用触媒基材]
そして、上述した触媒基材製造工程において再利用基材20に対して下地層形成工程と触媒層形成工程とを実施して得られるカーボンナノチューブ生成用触媒基材は、例えば図5に示すような、再利用基材20の触媒層13側に新たな下地層22および触媒層23が順次積層された構成を有している。具体的には、図5に示すカーボンナノチューブ生成用触媒基材1は、基材10、浸炭防止層11、下地層12および触媒層13を有する再利用基材20と、再利用基材20の触媒層13側の表面に新たに設けられた下地層22と、下地層22の再利用基材20側とは反対側の表面に新たに設けられた触媒層23とを備えている。
このカーボンナノチューブ生成用触媒基材1は、再利用基材20の上に下地層22および触媒層23を新たに形成しているので、以下に詳細に説明するCNT成長工程においてCNTを合成する際に好適に用いることができる。
<CNT成長工程>
CNT成長工程では、触媒基材製造工程において得られたカーボンナノチューブ生成用触媒基材を使用し、CVD法等の既知の手法を用いてカーボンナノチューブ生成用触媒基材上でCNTを合成する。なお、CNT成長工程では、再利用基材の上に下地層や触媒層を新たに形成してなるカーボンナノチューブ生成用触媒基材を使用しているので、高品質のCNTを安定的に合成することができる。
具体的には、CNT成長工程では、特に限定されることなく、カーボンナノチューブ生成用触媒基材上のCNT合成用触媒を還元するフォーメーション工程と、CNTを成長させる成長工程と、CNTが成長した基材を冷却する冷却工程とを順次実施して、カーボンナノチューブ生成用触媒基材上にCNTを成長させることができる。
[CNT生産装置]
なお、CNT成長工程は、特に限定されることなく、カーボンナノチューブ生成用触媒基材を受容する合成炉(反応チャンバ)および加熱手段を備える既知のCNT生産装置を用いて実施することができる。具体的には、例えば、熱CVD炉、熱加熱炉、電気炉、乾燥炉、恒温槽、雰囲気炉、ガス置換炉、マッフル炉、オーブン、真空加熱炉、プラズマ反応炉、マイクロプラズマ反応炉、RFプラズマ反応炉、電磁波加熱反応炉、マイクロ波照射反応炉、赤外線照射加熱炉、紫外線加熱反応炉、MBE反応炉、MOCVD反応炉、レーザ加熱装置等の、公知のCNT生産装置をいずれも使用できる。このような生産装置の例として、図8に示すCVD装置が挙げられる。
図8に示すCVD装置は、カーボンナノチューブ生成用触媒基材110を受容する、石英ガラスからなる管状の反応チャンバ120と、反応チャンバ120を囲んで設けられた加熱コイル130と、原料ガス140並びに雰囲気ガス150を供給すべく反応チャンバ120の一端に接続された供給管と、反応チャンバ120の他端に接続された排気管160と、触媒賦活剤170を供給すべく供給管の中間部に接続された触媒賦活剤供給管180とを備えている。
また、このCVD装置は、極めて微量の触媒賦活剤を高精度に制御して供給するために、原料ガス140および雰囲気ガス150の供給管に、原料ガス140および雰囲気ガス150から触媒賦活剤を除去するための純化装置190を備えている。さらに図示していないが、CVD装置には、流量制御弁や圧力制御弁などを含む制御装置が適所に付設されている。
そして、CNT成長工程では、カーボンナノチューブ生成用触媒基材上でCNTが合成され、多数のCNTが特定の方向(通常は、基材に垂直な方向)に配向してなるCNT配向集合体がカーボンナノチューブ生成用触媒基材上に形成される。
[CNT配向集合体の性状]
なお、形成されるCNT配向集合体は、例えば以下の性状を有していることが好ましい。
即ち、CNT配向集合体の好ましいBET比表面積は、CNTが主として未開口のものにあっては、600m/g以上であり、より好ましくは、800m/g以上である。BET比表面積が高いほど、金属や炭素などの不純物の量をCNTの質量の数十パーセント(40%程度)より低く抑えることができる。
また、CNT配向集合体の重量密度は0.002g/cm以上、0.2g/cm以下であることが好ましい。重量密度が0.2g/cm以下であれば、CNT配向集合体を構成するCNT同士の結びつきが弱くなるので、CNT配向集合体を溶媒などに攪拌した際に、均質に分散させることが容易になる。つまり、重量密度を0.2g/cm以下とすることで、均質な分散液を得ることが容易となる。また、重量密度が0.002g/cm以上であれば、CNT配向集合体の一体性を向上させ、バラけることを抑制できるため取扱いが容易になる。
更に、特定方向に配向したCNT配向集合体は、高い配向度を有していることが好ましい。ここで、高い配向度を有するとは、以下の1.から3.の少なくともいずれか1つ以上を満たすことを指す。
1.CNTの長手方向に平行な第1方向と、第1方向に直交する第2方向とからX線を入射してX線回折強度を測定(θ−2θ法)した場合に、第2方向からの反射強度が第1方向からの反射強度より大きくなるθ角と反射方位とが存在し、且つ、第1方向からの反射強度が第2方向からの反射強度より大きくなるθ角と反射方位とが存在する。
2.CNTの長手方向に直交する方向からX線を入射して得られた2次元回折パターン像でX線回折強度を測定(ラウエ法)した場合に、異方性の存在を示す回折ピークパターンが出現する。
3.ヘルマンの配向係数が、θ−2θ法又はラウエ法で得られたX線回折強度を用いると0より大きく1以下、より好ましくは0.25以上、1未満である。
なお、CNT配向集合体は、前述のX線回折において、単層CNT間のパッキングに起因する(CP)回折ピーク及び(002)ピークの回折強度と、単層CNTを構成する炭素六員環構造に起因する(100)、(110)ピークの平行(第1方向)と垂直(第2方向)との各入射方向の回折ピーク強度との度合いが互いに異なることも好ましい。
更に、CNT配向集合体が高い配向性および高いBET比表面積を示すためには、CNT配向集合体の高さ(長さ)は10μm以上、10cm以下の範囲にあることが好ましい。高さが10μm以上であると、配向性が向上する。また高さが10cm以下であると、生成を短時間で行なえるため炭素系不純物の付着を抑制でき、BET比表面積を向上できる。
また、CNTのG/D比は好ましくは3以上、より好ましくは4以上である。G/D比とはCNTの品質を評価するのに一般的に用いられている指標である。ラマン分光装置によって測定されるCNTのラマンスペクトルには、Gバンド(1600cm−1付近)とDバンド(1350cm−1付近)と呼ばれる振動モードが観測される。GバンドはCNTの円筒面であるグラファイトの六方格子構造由来の振動モードであり、Dバンドは非晶箇所に由来する振動モードである。よって、GバンドとDバンドのピーク強度比(G/D比)が高いものほど、結晶性の高いCNTと評価できる。
そして、このカーボンナノチューブの製造方法では、図1に示すように、CNT成長工程においてカーボンナノチューブ生成用触媒基材上に形成したCNTを、次のCNT剥離工程で剥離し、基材を再利用する。
ここで、図5に示すカーボンナノチューブ生成用触媒基材1の上に形成したCNTをCNT剥離工程で剥離した場合、得られる使用済み基材は、図6に示すような構成となる。この使用済み基材は、CNTを合成する際のフォーメーション工程の実施などにより触媒層23を構成するCNT合成用触媒の微粒子化が進んでいる点、および、触媒層23の表面(即ち、CNTが形成されていた側の表面)にCNTの合成時に付着した炭素成分やCNTの剥離時に残存した炭素成分などの不純物24が残存している点を除き、図5に示すカーボンナノチューブ生成用触媒基材1と同様の構成を有している。
そして、このカーボンナノチューブの製造方法では、前述したようにして使用済み基材の再利用を繰り返し、低コストで高品質のCNTを繰り返し製造する。なお、使用済み基材の再利用を繰り返した場合、カーボンナノチューブ生成用触媒基材は、積層された下地層および触媒層の一部を省略して図7に示すように、両面に浸炭防止層11が設けられた基材の上に下地層および触媒層が繰り返し積層された構成となる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において、G/D比、BET比表面積および算術平均粗さは、それぞれ以下の方法を使用して評価した。
<G/D比>
CNT配向集合体を試料とし、顕微レーザラマンシステム(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製、NicoletAlmega XR)を用い、基材中心部付近のCNTについて測定した。
<BET比表面積>
BET比表面積測定装置((株)マウンテック製、HM model−1210)を用いて測定した。
<算術平均粗さ>
レーザ顕微鏡(キーエンス製、VK−9700)を用いて、対物倍率50倍で測定した。
(実施例1)
<使用済み基材の準備>
アルミニウム化合物としてのアルミニウムトリ−sec−ブトキシド1.9gを、有機溶剤としての2−プロパノール100mLに溶解させた。さらに、安定剤としてのトリイソプロパノールアミン0.9gを加えて溶解させて、塗工液Aを調製した。
また、鉄化合物としての酢酸鉄174mgを有機溶剤としての2−プロパノール100mLに溶解させた。さらに、安定剤としてのトリイソプロパノールアミン190mgを加えて溶解させて、塗工液Bを調製した。
基材としてのFe−Cr合金SUS430基板(JFEスチール株式会社製、40mm×100mm、厚さ0.3mm、Cr18%、算術平均粗さRa≒0.59μm)の表面に、室温25℃、相対湿度50%の環境下でディップコーティングにより、上述の塗工液Aを塗布した。具体的には、基材を塗工液Aに浸漬後、20秒間保持して、10mm/secの引き上げ速度で基材を引き上げた。その後、5分間風乾し、300℃の空気環境下で30分間加熱後、室温まで冷却することにより、基材上に膜厚40nmのアルミナ薄膜(下地層)を形成した。
次いで、室温25℃、相対湿度50%の環境下で、基材に設けられたアルミナ薄膜の上に、ディップコーティングにより上述の塗工液Bを塗布した。具体的には、アルミナ薄膜を備える基材を塗工液Bに浸漬後、20秒間保持して、3mm/秒の引き上げ速度でアルミナ薄膜を備える基材を引き上げた。その後、5分間風乾(乾燥温度45℃)することにより、膜厚3nmの鉄薄膜(触媒層)を形成した。
次に、図8に示すCVD装置(反応チャンバのサイズ:直径30mm、加熱長360mm)を用いて基材上にCNT配向集合体を形成した。具体的には、作製した基材を、炉内温度:750℃、炉内圧力:1.02×10Paに保持されたCVD装置の反応チャンバ内に設置し、この反応チャンバ内に、He:100sccm、H:900sccmを6分間導入した。これにより、CNT合成用触媒(鉄)は還元されて微粒子化が促進され、単層CNTの成長に適した状態(下地層上にナノメートルサイズの触媒微粒子が多数形成された状態)となった(フォーメーション工程)。なお、このときの触媒微粒子の密度は、1×1012〜1×1014個/cmに調整した。その後、炉内温度:750℃、炉内圧力:1.02×10Paに保持された状態の反応チャンバ内に、He:850sccm、C:59sccm、HO:HO濃度が300ppmとなる量を5分間供給した。これにより、単層CNTが各触媒微粒子から成長した(CNT成長工程)。
そして、CNT成長工程の終了後、反応チャンバ内にHe:1000sccmのみを供給し、残余の原料ガスや触媒賦活剤を排除した。これにより、カーボンナノチューブ配向集合体が表面に形成された基材が得られた。
その後、得られた基材の表面から、基材上に成長したCNT配向集合体を剥離した。具体的には、鋭利部を備えたプラスチック製のヘラを使用し、CNT配向集合体を剥離した。剥離時には、ヘラの鋭利部をCNT配向集合体と基材との境界に当て、基材からCNT配向集合体をそぎ取るように、基材面に沿って鋭利部を動かした。これにより、CNT配向集合体を基材から剥ぎ取り、使用済み基材を得た。
<再利用基材の調製>
次に、得られた使用済み基材を水中に浸漬して、株式会社カイジョー社製の投込み式超音波洗浄機400G(出力400W、発振周波数38kHz)を用いて5分間洗浄し、再利用基材を得た(初期化工程)。その後、超音波洗浄後の基材の表面を水洗して、更にエアーを吹きつけて乾燥した(清掃工程)。そして、洗浄を実施する前後での基材の表面の水に対する接触角を協和界面化学社製自動接触角計DMs−601にて測定したところ、洗浄前は79°であったのに対し、洗浄後は65°となっており、基材上の汚れが除去できていることが確認された。
<カーボンナノチューブ生成用触媒基材の調製>
再利用基材の表面に、上記と同様の条件で、ディップコーティングにより厚さ40nmのアルミナ薄膜(下地層)と、厚さ3.0nmの鉄薄膜(触媒層)を製膜してカーボンナノチューブ生成用触媒基材を製造した。
<CNTの繰り返し合成>
得られたカーボンナノチューブ生成用触媒基材を使用して、CVD装置によるCNT配向集合体の成長、CNT配向集合体の剥離、再利用基材の調製、及び、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の調製を、5回繰り返した。
その結果、5回生成したCNT配向集合体はいずれも、G/D比が2〜3、BET比表面積が850〜950m/gの範囲内であった。このように、CNTを剥離した後に超音波洗浄を用いた初期化工程を実施して再利用基材を製造することによって、基材を繰り返し使用しても品質に優れるCNTの合成が可能であることが確認できた。
(実施例2)
再利用基材の調製時に、超音波洗浄機を用いた超音波洗浄に替えて、株式会社スギノマシン社製の水中高圧水洗浄機U−Jetを用いて、図4に示す噴射角度を80°として、液中流体噴射洗浄を5分間実施した以外は実施例1と同様にして、使用済み基材の準備、再利用基材の調製、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の調製、CNTの繰り返し合成を行なった。なお、再利用基材の調製時に洗浄前後での基材の水に対する接触角を測定したところ、洗浄前は79°であったのに対し、洗浄後は69°となっており、基材上の汚れが除去できていることが確認された。
CNTの繰り返し合成の結果、5回生成したCNT配向集合体はいずれも、G/D比が2〜3、BET比表面積が850〜950m/gの範囲内であった。このように、CNTを剥離した後に液中流体噴射洗浄を用いた初期化工程を実施して再利用基材を製造することによって、基材を繰り返し使用しても品質に優れるCNTの合成が可能であることが確認できた。
(実施例3)
再利用基材の調製時に、超音波洗浄機を用いた超音波洗浄に替えて、有光工業社製ウォータージェット洗浄機PJ−01G(圧力6.4MPa、吐水量6.2L/分)を用いて、図4に示す噴射角度を75°として、圧縮流体噴射洗浄を5分間実施した以外は実施例1と同様にして、使用済み基材の準備、再利用基材の調製、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の調製、CNTの繰り返し合成を行なった。なお、再利用基材の調製時に洗浄前後での基材の水に対する接触角を測定したところ、洗浄前は80°であったのに対し、洗浄後は66°となっており、基材上の汚れが除去できていることが確認された。
CNTの繰り返し合成の結果、5回生成したCNT配向集合体はいずれも、G/D比が2〜3、BET比表面積が850〜950m/gの範囲内であった。このように、CNTを剥離した後に圧縮流体噴射洗浄を用いた初期化工程を実施して再利用基材を製造することによって、基材を繰り返し使用しても品質に優れるCNTの合成が可能であることが確認できた。
(実施例4)
再利用基材の調製時に、前記ウォータージェット洗浄機を用いて、図4に示す噴射角度を45°として、圧縮流体噴射洗浄を5分間実施した以外は実施例3と同様にして、使用済み基材の準備、再利用基材の調製、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の調製、CNTの繰り返し合成を行なった。なお、再利用基材の調製時に洗浄前後での基材の水に対する接触角を測定したところ、洗浄前は80°であったのに対し、洗浄後は62°となっており、基材上の汚れが除去できていることが確認された。
CNTの繰り返し合成の結果、5回生成したCNT配向集合体はいずれも、G/D比が4〜5、BET比表面積が1,000〜1,100m/gの範囲内であった。このように、CNTを剥離した後に圧縮流体噴射洗浄を用いた初期化工程を実施して再利用基材を製造することによって、基材を繰り返し使用しても品質に優れるCNTの合成が可能であることが確認できた。
(実施例5)
再利用基材の調製時に、超音波洗浄機を用いた超音波洗浄に替えて、マコー株式会社製2流体ジェット洗浄装置(エアー圧力0.2MPa、供給水圧力0.2MPa)を用いて、図4に示す噴射角度を70°として、気液2流体ジェット洗浄を1分間実施した以外は実施例1と同様にして、使用済み基材の準備、再利用基材の調製、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の調製、CNTの繰り返し合成を行なった。なお、再利用基材の調製時に洗浄前後での基材の水に対する接触角を測定したところ、洗浄前は80°であったのに対し、洗浄後は60°となっており、基材上の汚れが除去できていることが確認された。
CNTの繰り返し合成の結果、5回生成したCNT配向集合体はいずれも、G/D比が4〜5、BET比表面積が1,000〜1,100m/gの範囲内であった。このように、CNTを剥離した後に気液2流体ジェット洗浄を用いた初期化工程を実施して再利用基材を製造することによって、基材を繰り返し使用しても品質に優れるCNTの合成が可能であることが確認できた。
(実施例6)
再利用基材の調製時に、前記2流体ジェット洗浄装置を用いて、図4に示す噴射角度を45°として、気液2流体ジェット洗浄を1分間実施した以外は実施例5と同様にして、使用済み基材の準備、再利用基材の調製、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の調製、CNTの繰り返し合成を行なった。なお、再利用基材の調製時に洗浄前後での基材の水に対する接触角を測定したところ、洗浄前は80°であったのに対し、洗浄後は57°となっており、基材上の汚れが除去できていることが確認された。
CNTの繰り返し合成の結果、5回生成したCNT配向集合体はいずれも、G/D比が5〜7、BET比表面積が1,100〜1,200m/gの範囲内であった。このように、CNTを剥離した後に気液2流体ジェット洗浄を用いた初期化工程を実施して再利用基材を製造することによって、基材を繰り返し使用しても品質に優れるCNTの合成が可能であることが確認できた。
(比較例1)
再利用基材の調製時に、超音波洗浄機を用いた超音波洗浄に替えて、水中において使用済み基材をロールブラシ(材質ナイロン、繊維径0.2mm)でブラッシングする洗浄を1分間実施した以外は実施例1と同様にして、使用済み基材の準備、再利用基材の調製、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の調製、CNTの繰り返し合成を行なった。なお、再利用基材の調製時に洗浄前後での基材の水に対する接触角を測定したところ、洗浄前は79°であったのに対し、洗浄後は80°となっており、接触角の変化はみられなかった。
CNTの繰り返し合成の結果、生成されたCNTは、G/D比が1.1、BET比表面積が650m/gであり、実施例1〜6と比較してG/D比およびBET比表面積の大幅な低下が見られた。
(比較例2)
再利用基材の調製時に、超音波洗浄機を用いた超音波洗浄に替えて、2%塩酸水溶液中に使用済み基材を1時間浸漬する酸洗浄を実施した以外は実施例1と同様にして、使用済み基材の準備、再利用基材の調製、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の調製、CNTの繰り返し合成を行なった。なお、再利用基材の調製時に洗浄前後での基材の水に対する接触角を測定したところ、洗浄前は79°であったのに対し、洗浄後は73°となっており、基材上の汚れが除去できていることが確認された。
CNTの繰り返し合成の結果、生成されたCNTは、G/D比が1.1、BET比表面積が640m/gであり、実施例1〜6と比較してG/D比およびBET比表面積の大幅な低下が見られた。
(比較例3)
再利用基材の調製時に、超音波洗浄機を用いた超音波洗浄に替えて、空気雰囲気下、約800℃の温度で5分間使用済み基材を熱処理した以外は実施例1と同様にして、使用済み基材の準備、再利用基材の調製、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の調製、CNTの繰り返し合成を行なった。なお、再利用基材の調製時に熱処理前後での基材の水に対する接触角を測定したところ、熱処理前は79°であったのに対し、熱処理後は72°となっており、基材上の汚れが除去できていることが確認された。
CNTの繰り返し合成の結果、生成されたCNTは、G/D比が0.9、BET比表面積が450m/gであり、実施例1〜6と比較してG/D比およびBET比表面積の大幅な低下が見られた。
本発明の再利用基材の製造方法によれば、基材の劣化を抑制しつつ、基材の表面に残存している炭素成分などの不純物を良好に除去した再利用基材を製造することができる。また、本発明のカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法によれば、使用済み基材を再利用しつつ、高品質なカーボンナノチューブを安定的に製造することが可能な触媒基材を提供することができる。
10 基材
11 浸炭防止層
12,22,92 下地層
13,23,93 触媒層
14,24 不純物
20 再利用基材
110 カーボンナノチューブ生成用触媒基材
120 反応チャンバ
130 加熱コイル
140 原料ガス
150 雰囲気ガス
160 排気管
170 触媒賦活剤
180 触媒賦活剤供給管
190 純化装置

Claims (3)

  1. 表面からカーボンナノチューブが剥離された使用済み基材を用いた再利用基材の製造方法であって、
    前記使用済み基材の前記表面を洗浄する初期化工程を含み、
    前記洗浄が、液体の衝突を利用した洗浄であり、
    前記液体の衝突を利用した洗浄が、液体中に前記使用済み基材を浸漬して超音波を照射する超音波洗浄、液中流体噴射洗浄、圧縮流体噴射洗浄および気液2流体ジェット洗浄からなる群より選択される少なくとも1つの洗浄処理である、再利用基材の製造方法。
  2. 前記初期化工程の後に、前記表面を清掃する清掃工程を更に含む、請求項1に記載の再利用基材の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の再利用基材の製造方法により得られた再利用基材の前記表面側にカーボンナノチューブ合成用触媒を担持させ、前記再利用基材上に触媒層を形成する触媒層形成工程を含む、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法。
JP2014067203A 2014-03-27 2014-03-27 再利用基材の製造方法およびカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法 Active JP6311391B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014067203A JP6311391B2 (ja) 2014-03-27 2014-03-27 再利用基材の製造方法およびカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014067203A JP6311391B2 (ja) 2014-03-27 2014-03-27 再利用基材の製造方法およびカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015188811A JP2015188811A (ja) 2015-11-02
JP6311391B2 true JP6311391B2 (ja) 2018-04-18

Family

ID=54423808

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014067203A Active JP6311391B2 (ja) 2014-03-27 2014-03-27 再利用基材の製造方法およびカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6311391B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN115916694A (zh) 2020-08-28 2023-04-04 日本瑞翁株式会社 氧化碳纳米管及其制造方法
CN116710402A (zh) 2021-01-26 2023-09-05 日本瑞翁株式会社 氧化碳纳米管及其制造方法

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001068501A (ja) * 1999-08-27 2001-03-16 Hitachi Ltd ワイヤボンディング装置及び半導体装置の製造方法
JP2006027948A (ja) * 2004-07-15 2006-02-02 Electric Power Dev Co Ltd 単層カーボンナノチューブの製法
JP2007091485A (ja) * 2005-09-26 2007-04-12 Sonac Kk カーボンファイバの製造方法、基板カートリッジおよび熱cvd装置
US8337979B2 (en) * 2006-05-19 2012-12-25 Massachusetts Institute Of Technology Nanostructure-reinforced composite articles and methods
JP2009537339A (ja) * 2006-05-19 2009-10-29 マサチューセッツ・インスティテュート・オブ・テクノロジー ナノ構造強化された複合体およびナノ構造強化方法
JP4317884B2 (ja) * 2007-05-10 2009-08-19 株式会社サワーコーポレーション 超音波切断装置
JP2010013319A (ja) * 2008-07-03 2010-01-21 Toshiba Corp ナノカーボン製造装置
US9346679B2 (en) * 2008-10-14 2016-05-24 Brother International Corporation Method for enhancing growth of carbon nanotubes
JP5574257B2 (ja) * 2009-09-24 2014-08-20 日本ゼオン株式会社 カーボンナノチューブ生成用再利用基材及びカーボンナノチューブ生成用基材並びにその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2015188811A (ja) 2015-11-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6048591B2 (ja) カーボンナノチューブ
JP5443756B2 (ja) カーボンナノチューブを成長および収集するための方法
US20120321544A1 (en) Method for producing aligned carbon nanotube aggregate
WO2014208097A1 (ja) カーボンナノチューブの製造方法
JP6311391B2 (ja) 再利用基材の製造方法およびカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法
KR20230058050A (ko) 산화 카본 나노튜브 및 그 제조 방법
JP6287463B2 (ja) 再利用基材の製造方法およびカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法
JP6376009B2 (ja) 再利用基材の製造方法、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法およびカーボンナノチューブの製造方法
WO2023008164A1 (ja) 酸化カーボンナノチューブ及び酸化カーボンナノチューブ分散液
JP2017165617A (ja) 繊維状炭素ナノ構造体の製造方法
JP6772661B2 (ja) カーボンナノチューブの製造方法
JP2021070597A (ja) カーボンナノチューブの製造方法
JP6436037B2 (ja) 繊維状炭素ナノ構造体の製造方法
JP2014185072A (ja) カーボンナノチューブ生成用再利用基材の製造方法
Cheraghali et al. Etching of 316L Stainless Steel by Different Chemical Etchant Solutions for the Growth of Carbon Nanotubes by Thermal Chemical Vapour Deposition
JP2016088815A (ja) 炭素ナノ構造体集合物およびその製造方法
WO2022163372A1 (ja) 酸化カーボンナノチューブ及びその製造方法
JP3836743B2 (ja) カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブ膜、カーボンナノチューブ膜含有炭化珪素基板及びカーボンナノチューブ膜体の製造方法
JP2020029385A (ja) 単層カーボンナノチューブの製造方法
JP5787253B2 (ja) 高配向カーボンナノチューブの製造方法
JP6221290B2 (ja) カーボンナノチューブ生成用再利用基材の製造方法
TW200912026A (en) Method for manufacturing carbon nanotubes and method for forming carbon particles
JP2022120959A (ja) 単層カーボンナノチューブの製造方法
JP2023128467A (ja) カーボンナノチューブの製造方法
CN105984862B (zh) 用于生长碳纳米管的方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160913

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170516

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170704

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20170825

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171026

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180220

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180305

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6311391

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250