以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る車両用空調制御装置を搭載した車両1は、外部電源から供給される電力によって充電される二次電池の電力を駆動力とする電気自動車を構成する。なお、本実施形態では、本発明に係る車両用空調制御装置を電気自動車に適用した例について説明するが、本発明に係る車両用空調制御装置は、電気自動車以外の車両、例えばハイブリッド車両やガソリン車あるいはディーゼル車等の各種車両に適用可能である。
本実施形態に係る車両1は、充電コネクタ2と、充電回路3と、二次電池4と、駆動回路5と、駆動モータ6と、空調装置としての空調ユニット7と、ECU(Electronic Control Unit)8とを含んで構成される。
充電コネクタ2は、例えば家庭用電源等の外部電源に接続可能な充電プラグで構成されており、接続した外部電源から電力が供給されるようになっている。充電回路3は、充電コネクタ2に接続され、充電コネクタ2に供給された交流電力を直流電力に変換するコンバータおよび直流電力を昇圧する昇圧回路を含んで構成される。
二次電池4は、充電回路3と並列に接続されている。二次電池4は、充電回路3から供給される電力によって充電される一方で、駆動回路5および空調ユニット7等に電力を供給するようになっている。
駆動回路5は、充電回路3および二次電池4と並列に接続されている。駆動回路5は、ECU8によって制御されるインバータを有している。駆動回路5は、ECU8による制御に基づいて直流電力と三相交流電力とを相互に変換するようになっている。これにより、駆動回路5は、二次電池4と駆動モータ6との間で電力をやりとりさせ、二次電池4を充放電させるようになっている。
駆動モータ6は、回転磁界を形成するステータと、ステータの内部に配置され、複数の永久磁石が埋め込まれているロータとを備えている。ステータは、ステータコアおよびステータコアに巻き掛けられた三相コイルを備えている。
このように構成された駆動モータ6において、ステータの三相コイルに三相交流電力が供給されると、ステータによって回転磁界が形成され、この回転磁界にロータに埋め込まれた永久磁石が引かれることにより、ロータが回転駆動される。このように、駆動モータ6は、電動機、すなわち車両1の駆動源として機能するようになっている。
また、ロータに埋め込まれた永久磁石が回転すると、回転磁界が形成され、この回転磁界によりステータの三相コイルに誘導電流が流れることにより、三相コイルの両端に電力が発生する。このように、駆動モータ6は、発電機としても機能するようになっている。
空調ユニット7は、車室内の空調を行うものであり、充電回路3、二次電池4および駆動回路5と並列に接続されている。すなわち、空調ユニット7は、充電回路3、二次電池4および駆動回路5から供給される電力によって駆動するようになっている。また、空調ユニット7は、後述するECU8による空調制御に基づく空調動作を実行するようになっている。ここで、空調動作とは、空調ユニット7における例えばブロワファン20の駆動や導入口切換ドア11の位置の切替等の動作をいう。
図2に示すように、空調ユニット7には、車室内に吹出される空気の導入口として、空調ユニット7内を車室外に連通する外気導入口10aと、空調ユニット7内を車室内に連通する内気導入口10bとが形成されている。
外気導入口10aは、車室外の空気を空調ユニット7内に導入する導入口である。内気導入口10bは、車室内の空気を空調ユニット7内に導入する導入口、すなわち車室内で循環する空気を導入させるための導入口である。
空調ユニット7内には、車室内に吹出される空気の導入口を外気導入口10aと内気導入口10bとの間で切り換える導入口切換ドア11が設けられている。導入口切換ドア11は、外気導入口10aを完全に閉じて内気導入口10bを完全に開く位置と、内気導入口10bを完全に閉じて外気導入口10aを完全に開く位置との間を移動できるように、空調ユニット7内に回転自在に取り付けられている。
導入口切換ドア11には、導入口切換ドア11を駆動するためのアクチュエータ12が設けられている。アクチュエータ12は、ECU8による制御に応じて、導入口切換ドア11の位置を制御するようになっている。したがって、空調ユニット7は、ECU8による制御に応じて導入口切換ドア11の位置が切り替えられることで、ブロワファン20に対して外気導入口10aを介して車外の空気を導入する外気導入モードと内気導入口10bを介して車室内の空気を導入する内気循環モードとの間で吸気モードが切り替えられるようになっている。
また、空調ユニット7には、車室内に吹出される空気の排出口として、フロントウインドガラスの車室内側に向けて開口されたデフロスタ吹出し口13aに連通されたデフロスタ排出口14aと、運転席および助手席に向けて開口されたベント吹出し口13bに連通されたベント排出口14bと、運転席および助手席に着座した車両乗員の足元に向けて開口された足元吹出し口13cに連通された足元排出口14cとが形成されている。
ベント吹出し口13bには、ベント吹出し口13bを閉鎖することができる閉鎖体を構成するルーバ15が設けられている。例えば、ルーバ15は、車両乗員が操作できる操作レバーの位置に応じて、ベント吹出し口13bを開放する状態と閉鎖する状態との間でベント吹出し口13bの開放状態を変更するようになっている。
空調ユニット7内には、デフロスタ排出口14aを開閉する吹出口切換ドア16aと、ベント排出口14bおよび足元排出口14cを開閉する吹出口切換ドア16bとが設けられている。
吹出口切換ドア16aは、デフロスタ排出口14aを完全に閉じる位置と、デフロスタ排出口14aを完全に開く位置との間を移動できるように、空調ユニット7内に回転自在に取り付けられている。
吹出口切換ドア16aには、吹出口切換ドア16aを駆動するためのアクチュエータ17aが設けられている。アクチュエータ17aは、ECU8による制御に応じて、吹出口切換ドア16aの位置を制御するようになっている。
吹出口切換ドア16bは、ベント排出口14bを完全に閉じて足元排出口14cを完全に開く位置と、足元排出口14cを完全に閉じてベント排出口14bを完全に開く位置との間を移動できるように、空調ユニット7内に回転自在に取り付けられている。
吹出口切換ドア16bには、吹出口切換ドア16bを駆動するためのアクチュエータ17bが設けられている。アクチュエータ17bは、ECU8による制御に応じて、吹出口切換ドア16bの位置を制御するようになっている。
また、空調ユニット7内には、空気の導入口から排出口に向けて、ブロワファン20と、エバポレータコア21と、エアミックスドア22と、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ23とが設けられている。
ブロワファン20は、車室内に吹出させる空気を送風するようになっている。ここで、以下においては、ブロワファン20によって車室内に吹出される空気を「空調風」といい、外気導入モード設定時に車室外から導入される空気や内気循環モード設定時に車室内で導入される空気と区別することとした。しがって、ブロワファン20は、車室内に空調風を送風するものである。
ブロワファン20には、ブロワファン20を回転させるブロワファンモータ24が設けられている。ブロワファン20は、ブロワファンモータ24によって回転させられることにより、導入口から導入された空気を排出口に向けて送風するようになっている。ブロワファンモータ24は、ECU8による印加電圧の制御に応じて、その回転力が変化し、ブロワファン20の送風量を変化させるようになっている。
エバポレータコア21は、エバポレータコア21を通過する空気と、エバポレータコア21内を通過する冷媒との間で熱交換を行わせることによって、エバポレータコア21を通過する空気を冷却および除湿するようになっている。エバポレータコア21には、電動コンプレッサ25および図示しない室外コンデンサが設けられている。これにより、空調ユニット7は、冷房装置を構成する。
エアミックスドア22は、PTCヒータ23を通過する空気の流量を調整するようになっている。具体的には、エアミックスドア22は、エバポレータコア21を通過した空気がPTCヒータ23を通過する位置と、エバポレータコア21を通過した空気がPTCヒータ23を通過しない位置との間を移動できるように、空調ユニット7内に回転自在に取り付けられている。
エアミックスドア22には、エアミックスドア22を駆動するためのアクチュエータ27が設けられている。アクチュエータ27は、ECU8による制御に応じて、エアミックスドア22の位置を制御するようになっている。
PTCヒータ23は、車室内に吹出させる空気を暖める熱源として機能する。したがって、ブロワファン20が回転させられ、車室内に吹出させる空気がPTCヒータ23を通過するようにエアミックスドア22の位置が制御されることにより、空調ユニット7は、暖房装置を構成する。なお、車両1が例えばハイブリッド車両等の電気自動車以外の車両で構成されている場合には、PTCヒータ23に加えてヒータコアを熱源として設けてもよい。この場合、PTCヒータ23は、補助ヒータとして用いることができる。
ECU8は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、フラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
ECU8のROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをECU8として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、ECU8において、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、ECU8として機能する。
本実施形態において、ECU8の入力ポートには、車室内の温度である内気温度を検出する内気温度検出部としての内気温度センサ51と、外気の温度を検出する外気温度センサ52と、二次電池4の放電電流値を検出する電流センサ53と、車室内の日射量を検出する日射センサ54とを含む各種センサ類と、コントロールパネル55を含む各種コントローラとが接続されている。
コントロールパネル55には、空調ユニット7のオン/オフが切り換えられる空調スイッチと、外気導入モードと内気循環モードとの間で吸気モードが選択される空気導入モード選択スイッチと、デフロスタ吹出し口13a、ベント吹出し口13bおよび足元吹出し口13cから吹出される空調風の流量の比率の組合せからなる空調モードが選択される空調モード選択スイッチと、これら吹出し口から吹出される空調風の流量(以下、単に「吹出し量」ともいう)が設定される風量調節スイッチと、設定温度が設定される温度設定スイッチと、空調ユニット7において車両1の運転時と異なる空調制御が行われる睡眠モードが設定される睡眠モードスイッチ56とを含む各種スイッチが設けられている。
空調モード選択スイッチは、例えばベントモード、フットモード、B/L(バイレベル)モードおよびD/F(デフ/フット)モードのなかから1つの空調モードが選択されるようになっている。
ベントモードは、ベント吹出し口13bから空調風を吹出させるモードである。フットモードは、足元吹出し口13cから空調風を吹出させるモードである。B/Lモードは、ベント吹出し口13bおよび足元吹出し口13cから空調風を吹出させるモードである。D/Fモードは、デフロスタ吹出し口13aおよび足元吹出し口13cから空調風を吹出させるモードである。
睡眠モードスイッチ56は、例えば車両乗員が車室内で仮眠や宿泊を行うといった場合に睡眠に適した空調制御の実施を望むとき等に選択されるスイッチである。例えば、睡眠モードスイッチ56が押下されると、それまで行っていた空調制御が睡眠に適した設定の空調制御に切り替えられる。こうした空調制御の切替は、ECU8によって実行される。詳しくは、後述する。ここで、空調制御とは、ECU8によって空調ユニット8に対して実行される制御であり、例えば空調風の吹出し温度やブロワファン20の送風量等を設定および調整する制御である。
ECU8の出力ポートには、アクチュエータ12、17a、17bおよび27、PTCヒータ23、ブロワファンモータ24、電動コンプレッサ25ならびに警告報知部26等の各種制御対象類が接続されている。警告報知部26は、例えばブザー等も含めたホーンやスピーカ等の音声出力装置で構成されており、ECU8による制御に応じて、音声により車両乗員に警告を報知するものである。なお、警告報知部26は、音声出力装置に加えてハザードランプ等の点灯装置を備えるものであってもよい。
ECU8は、各種センサ類、各種コントローラおよび各種スイッチから得られる情報に基づいて、各種制御対象類を制御するようになっている。例えば、ECU8は、コントロールパネル55の空調スイッチによって空調ユニット7がオン状態にあるときに、内気温度センサ51によって検出された内気温度と、コントロールパネル55の温度設定スイッチによって設定された温度とが等しくなるように、アクチュエータ27、PTCヒータ23および電動コンプレッサ25を適宜制御するようになっている。
また、ECU8のROMには、図3〜図6に示すように、睡眠モードが設定された際に参照される各種マップが予め格納されている。したがって、ECU8は、例えば暖房時に睡眠モードが設定されると、外気温度から図3(a)に示す暖房加算値を算出し、この暖房加算値を車両乗員による温度設定スイッチの操作により予め設定されていた設定温度に加算した値を、睡眠モード設定時の目標設定温度(以下、睡眠モード目標設定温度という)として設定するようになっている。また、ECU8は、冷房時の睡眠モード設定時についても同様に、図3(b)に示す冷房加算値を設定温度に加算した値を睡眠モード目標設定温度として設定するようになっている。
このように、睡眠モードでは、設定温度に対して睡眠モード目標設定温度を暖房時は低めに、冷房時は高めに設定することで、空調ユニット7の消費電力を抑制できるとともに、車室内を車両乗員が快適に睡眠できる温度とすることができる。
また、ECU8は、睡眠モードが設定されると、ブロワファン20の騒音により車両乗員の睡眠が妨げられないように、ブロワ風量を小さい値に設定するようになっている。具体的には、ECU8は、通常の空調制御で算出されたブロワ風量と図4に示すマップに基づき外気温に応じて設定されるブロワ風量とのうち、いずれか小さいブロワ風量を睡眠モード設定時のブロワ風量として設定するようになっている。
図4に示すマップは、予め実験的に求められたもので、例えば車両乗員の睡眠を妨げることのないブロワファン20の作動音とすることができるブロワ風量のうち、最大のブロワ風量を外気温度に対応付けてROMに記憶したものである。ここで、ブロワ風量は、ブロワファンモータ24の最大駆動時を100%としている。
また、ECU8は、睡眠モードが設定されると、空調ユニット7の使用電力量を制限使用電力量以下となるように、電動コンプレッサ25の回転数等を設定するようになっている。具体的には、ECU8は、空調ユニット7の後述する動作モードが冷房モードあるいは送風モードである場合には、空調ユニット7の使用電力量を予め定められた冷房・送風時用の制限使用電力量(例えば、1500W)以下となるように、電動コンプレッサ25の回転数等を設定する。一方、ECU8は、空調ユニット7の動作モードが暖房モードである場合には、空調ユニット7の使用電力量を予め定められた暖房時用の制限使用電力量(例えば、2000W)以下となるように、PTCヒータ23の使用電力量等を設定する。
これにより、睡眠モード設定時は、電動コンプレッサ25等を含む空調ユニット7が制限無しに動作することによる二次電池4の過放電を防止することができるとともに、電動コンプレッサ25の作動音が車両乗員の睡眠の妨げとなることを防止することができる。なお、ECU8は、空調ユニット7の動作モードが要求無しの場合には、空調ユニット7の使用電力量を上限無しとする。
また、ECU8は、睡眠モードが設定されると、車両乗員が快適に睡眠を行うのに適した空調モードを設定するようになっている。具体的には、ECU8は、睡眠モード設定時の動作モードが冷房モードあるいは送風モードである場合には、空調モードをD/Fモードに設定する。一方、ECU8は、睡眠モード設定時の動作モードが暖房モードである場合には、空調モードをフットモードに設定する。これにより、睡眠中の車両乗員に直接、空調風をあてる量を抑制し、空調の原則である頭寒足熱型の快適な空調フィーリングを実現することができる。
ここで、上述した睡眠モード中に例えばエバポレータコア21やPTCヒータ23等の空調部品の故障等の要因により空調ユニット7が正常に機能しなくなった場合には、内気温度が過度に上昇したり、過度に低下するおそれがある。このように内気温度が過度に上昇あるいは低下した状況下で、車両乗員が睡眠を続けると、快適な睡眠が妨げられることはもとより、車両乗員の睡眠環境が極端に悪化するおそれがある。
そこで、本実施形態に係るECU8は、空調ユニット7が正常に機能しなくなっているおそれがある場合には、空調動作の切替を行う警告予備制御および空調装置が正常に機能しなくなった旨の警告の報知を行う警告制御の少なくともいずれか一方を実行するようになっている。本実施の形態では、警告予備制御および警告制御の双方を実行可能な構成について以下に説明するが、警告予備制御あるいは警告制御のいずれか1つのみを実行する構成であってもよい。
ECU8は、冷房中でかつ睡眠モードが設定されている際に、内気温度が後述する予め定められた許容温度を超えたことを条件に、吸気モードを外気導入モードに切り替える警告予備制御を実行するようになっている。これにより、空調ユニット7は、吸気モードが内気循環モードである場合には同モードから外気導入モードに切り替えられる。
また、ECU8は、前述の警告予備制御において吸気モードの切替と併せて、内気温度が許容温度を超える前と比較して空調風の送風量を増加させるようブロワファン20を制御するようになっている。具体的には、ECU8は、ブロワ風量が増加するようブロワファンモータ24の駆動を制御する。このとき、ブロワ風量は、例えば最大まで増加される。これにより、車室内の換気が促進される。
なお、上述の許容温度は、外気温度と日射量とに基づき予め実験的に求めたもので、外気温度および日射量から図5に示すマップに基づき設定されるようになっている。すなわち、許容温度は、車室内の換気等によって睡眠中の車両乗員が体温調節を適切に行えなくなる可能性を排除することが可能な内気温度の上限として設定される。図5に示すマップにおいては、同一外気温度において日射量が多いほど低い許容温度が設定され、外気温度が高いほど高い許容温度が設定されるようになっている。なお、本実施形態では、日射量の違いにより許容温度を変えたが、日射量に関わらず外気温度のみによって許容温度を設定してもよい。
また、ECU8は、空調ユニット7による空調制御を通じて行われる空調動作に異常が発生したことを検出するようになっている。具体的には、ECU8は、睡眠モードの設定中に、内気温度が予め定められた警告上限温度を超えた状態または内気温度が予め定められた警告下限温度を下回った状態が予め定められた規定時間以上継続したか否かを判定することにより、空調動作に異常が発生したことを検出するようになっている。例えば、ECU8は、当該判定の結果が肯定的であった場合には、空調動作に異常が発生していることにより内気温度が極端に高温あるいは低温となっているものと判断する。これにより、空調動作に異常が発生していることが検出される。こうした空調動作に異常が発生したことを検出するECU8は、異常検出部72を構成する。
ここで、上述の警告上限温度は、外気温度と日射量とに基づき予め実験的に求めたもので、外気温度および日射量から図6(a)に示すマップに基づき設定されるようになっている。すなわち、警告上限温度は、外気温度および日射量の関係から睡眠中の車両乗員が体温調節を適切に行えなくなる可能性のある内気温度の上限として設定される。図6(a)に示すマップにおいては、同一外気温度において日射量が多いほど低い警告上限温度が設定されるようになっている。また、警告上限温度は、同一外気温度および同一日射量において少なくとも上述した許容温度よりも高い温度に設定されている。なお、本実施形態では、日射量の違いにより警告上限温度を変えたが、日射量に関わらず外気温度のみによって警告上限温度を設定してもよい。
また、上述の警告下限温度は、外気温度に基づき予め実験的に求めたもので、外気温度から図6(b)に示すマップに基づき設定されるようになっている。図6(b)に示すマップにおいては、外気温度が高いほど低い警告下限温度が設定されるようになっている。また、警告下限温度は、同一外気温度および同一日射量において少なくとも上述した許容温度よりも低い温度に設定されている。
さらに、ECU8は、睡眠モードの設定中に、空調動作に異常が発生したことが検出されたことを条件に、警告を報知するよう警告報知部26を制御する警告制御を実行するようになっている。具体的には、ECU8は、睡眠モードの設定中に、内気温度が警告上限温度を超えた状態または内気温度が警告下限温度を下回った状態が規定時間以上継続したことを条件に、警告を報知するよう警告報知部26を制御するようになっている。
ここで、上述の警告には、予備警告と本警告とがあり、予備警告は、車両乗員のみに警告を行うもので、本警告は、車両乗員に加えて車両外部に警告を発するものである。したがって、ECU8は、予備警告を行う際には、車室内に設けられたスピーカ等の警告報知部26を介して車両乗員に警告を行う。一方、ECU8は、本警告を行う際には、車両外部に設けられたホーン等の警告報知部26を介して車両外部に向けて警告を行う。また、この本警告を行うにあたっては、ECU8は、ホーン等の警告報知部26を介した音声による警告に加えてハザードランプ等を点灯あるいは点滅させることによる警告を行ってもよい。この場合、車両1の周囲にいる人に対して異常を知らせるために、通常行われるハザードランプの点灯パターンと異なる点灯パターンとすることが好ましい。
また、上述の規定時間には、規定時間t1と、規定時間t1よりも短い規定時間t2とが設定されており、ECU8は、規定時間t1と規定時間t2とに基づき予備警告および本警告を区別して行うようになっている。具体的には、ECU8は、睡眠モードの設定中に、内気温度が警告上限温度を超えた状態または内気温度が警告下限温度を下回った状態が、規定時間t2以上継続したことを条件に予備警告を行い、規定時間t1以上継続したことを条件に本警告を行う。これにより、予備警告と本警告とを段階的に行うことができる。上述したような警告予備制御および警告制御を実行するECU8は、制御部71を構成する。
次に、以上のように構成された本実施形態に係る車両用空調制御装置のECU8によって実行される各種制御処理について説明する。なお、以下においては、車両1が走行可能状態になく、例えば外部電源から充電を行っている際に車両乗員が車室内で仮眠を取ろうとする場合を想定した例について説明する。
まず、図7を参照して、ECU8により実行される睡眠モードの設定処理について説明する。図7に示すように、ECU8は、IG状態がOFFか否かを判定する(ステップS1)。例えば、ECU8は、図示しないイグニッションスイッチのON−OFF信号に基づきIG状態がOFFか否かを判定する。
ECU8は、IG状態がOFFでないと判定した場合には、車両1が走行可能状態であると判断して睡眠モードをOFFとして(ステップS2)、本処理を終了する。一方、ECU8は、IG状態がOFFであると判定した場合には、睡眠モードスイッチ56がONか否か、つまり押下されたか否かを判定する(ステップS3)。
ECU8は、睡眠モードスイッチ56がONでないと判定した場合には、車両乗員に仮眠する意思がないものと判断して睡眠モードをOFFとして(ステップS2)、本処理を終了する。一方、ECU8は、IG状態がOFFで、かつ睡眠モードスイッチ56がONであると判定した場合には、充電プラグ接続情報がONであるか否かを判定する(ステップS4)。例えば、ECU8は、電流センサ53の検出結果に基づき充電コネクタ2が外部電源に接続されているか否かを判定する。
ECU8は、充電プラグ接続情報がONでないと判定した場合には、睡眠モードをOFFとして(ステップS2)、本処理を終了する。一方、ECU8は、IG状態がOFFで、かつ睡眠モードスイッチ56がONで、さらに充電プラグ接続情報がONであると判定した場合には、車両乗員が二次電池4の充電中に車室内で仮眠する意思があるものと判断し、睡眠モードをONにして、すなわち睡眠モードに設定して(ステップS5)、本処理を終了する。
次に、図8を参照して、ECU8により実行される睡眠モード設定時の動作モードの設定処理について説明する。図8に示す処理は、図7に示した設定処理において睡眠モードが設定されたことを条件に行われる。
図8に示すように、ECU8は、車両乗員による温度設定スイッチの操作により設定された設定温度と内気温度と外気温度と日射量とに基づき算出した目標吹出し温度が予め定められた冷房判定温度T0未満か否かを判定する(ステップS11)。ここで、目標吹出し温度は、車両乗員が設定した設定温度を満たすために必要な空調風の吹出し温度であり、一般的なオートエアコンシステムにおいて設定されるものである。また、冷房判定温度T0は、目標吹出し温度が冷房を必要とする領域にあるか否かを判定するために用いられる温度で、例えば20℃に設定される。
ECU8は、目標吹出し温度が冷房判定温度T0未満であると判定した場合には、空調ユニット7の動作モードを冷房モードに設定して(ステップS12)、本処理を終了する。一方、ECU8は、目標吹出し温度が冷房判定温度T0未満でないと判定した場合には、目標吹出し温度が予め定められた暖房判定温度T1より大きいか否かを判定する(ステップS13)。ここで、暖房判定温度T1は、目標吹出し温度が暖房を必要とする領域にあるか否かを判定するために用いられる温度で、例えば30℃に設定される。
ECU8は、目標吹出し温度が冷房判定温度T0未満でなく、かつ目標吹出し温度が暖房判定温度T1より大きいと判定した場合には、空調ユニット7の動作モードを暖房モードに設定して(ステップS14)、本処理を終了する。一方、ECU8は、目標吹出し温度が冷房判定温度T0未満でなく、かつ目標吹出し温度が暖房判定温度T1より大きくないと判定した場合には、動作モードを送風モードに設定して(ステップS15)、本処理を終了する。
次に、図9を参照して、ECU8により実行される睡眠モード設定時の睡眠モード目標設定温度の設定処理について説明する。図9に示す処理は、図8に示した設定処理において動作モードが設定されたことを条件に行われる。
図9に示すように、ECU8は、図8に示した設定処理で設定された動作モードが送風モード、冷房モードおよび暖房モードのいずれであるかを判定する(ステップS21)。ECU8は、動作モードが送風モードであると判定した場合には、睡眠モード目標設定温度を睡眠モードの設定前に車両乗員により設定された設定温度に設定して(ステップS22)、本処理を終了する。
一方、ECU8は、ステップS21において動作モードが冷房モードであると判定した場合には、外気温度から図3(b)に示す冷房加算値を算出する(ステップS23)。そして、ECU8は、車両乗員により設定された設定温度にステップS23で算出した冷房加算値を加算した値を睡眠モード目標設定温度として設定して(ステップS24)、本処理を終了する。
他方、ECU8は、ステップS21において動作モードが暖房モードであると判定した場合には、外気温度から図3(a)に示す暖房加算値を算出する(ステップS25)。そして、ECU8は、車両乗員により設定された設定温度にステップS25で算出した暖房加算値を加算した値を睡眠モード目標設定温度として設定して(ステップS26)、本処理を終了する。
次に、図10および図11を参照して、ECU8により睡眠モード中に実行される警告予備制御および警告制御の各処理について説明する。なお、図10において、ステップS32〜ステップS40までの処理が警告制御に該当する。
図10に示すように、まず、ECU8は、ステップS32以降の警告制御を行う前に、警告予備制御を実行する(ステップS31)。この警告予備制御は、空調ユニット7が正常に機能しなくなっているおそれがある場合に、警告制御に先立ち実行されるもので、図11に示す各処理によって実現される。図11は、警告予備制御の処理の流れを示したものである。
具体的には、図11に示すように、ECU8は、警告予備制御において、動作モードが冷房モードであるか否かを判定する(ステップS51)。ECU8は、動作モードが冷房モードでないと判定した場合には、警告予備制御を終了し、図10のステップS32以降の処理に移行する。
一方、ECU8は、動作モードが冷房モードであると判定した場合には、内気温度が予め定められた許容温度を超えているか否かを判定する(ステップS52)。ここで、内気温度と比較される許容温度としては、上述した通り、外気温度および日射量から図5に示すマップに基づき設定されたものを用いる。
ECU8は、内気温度が許容温度を超えていないと判定した場合には、警告予備制御を終了し、図10のステップS32以降の処理に移行する。一方、ECU8は、内気温度が許容温度を超えていると判定した場合には、吸気モードを外気導入モードに切り替えるとともに、ブロワ風量を例えば最大となるまで増加させる(ステップS53)。その後、ECU8は、図10のステップS32以降の処理に移行する。
図10に示すように、ECU8は、ステップS31の警告予備制御を終えると、外気温度および日射量から図6(a)に示すマップに基づき、警告上限温度を算出して設定する(ステップS32)。続いて、ECU8は、外気温度から図6(b)に示すマップに基づき、警告下限温度を算出して設定する(ステップS33)。
次いで、ECU8は、内気温度がステップS32で設定された警告上限温度を超えた状態が規定時間t1以上継続したか否かを判定する(ステップS34)。ECU8は、内気温度が警告上限温度を超えた状態が規定時間t1以上継続していないと判定した場合には、内気温度が警告下限温度を下回った状態が規定時間t1以上継続したか否かを判定する(ステップS35)。
そして、ECU8は、内気温度が警告下限温度を下回った状態が規定時間t1以上継続していないと判定した場合には、内気温度が警告上限温度を超えた状態が規定時間t1よりも短い規定時間t2以上継続したか否かを判定する(ステップS36)。ECU8は、内気温度が警告上限温度を超えた状態が規定時間t2以上継続したと判定した場合には、車両乗員を目覚めさせるために警告報知部26を介して予備警告を行って(ステップS39)、本処理を終了する。
一方、ECU8は、内気温度が警告上限温度を超えた状態が規定時間t2以上継続していないと判定した場合には、内気温度が警告下限温度を下回った状態が規定時間t2以上継続したか否かを判定する(ステップS37)。ECU8は、内気温度が警告下限温度を下回った状態が規定時間t2以上継続したと判定した場合には、車両乗員を目覚めさせるために警告報知部26を介して予備警告を行って(ステップS39)、本処理を終了する。一方、ECU8は、内気温度が警告下限温度を下回った状態が規定時間t2以上継続していないと判定した場合には、警告をOFFに設定して(ステップS38)、すなわち警告を行うことなく本処理を終了する。
他方、ECU8は、ステップS34およびステップS35において、内気温度が警告上限温度を超えた状態あるいは警告下限温度を下回った状態が規定時間t1以上継続したと判定した場合には、車両乗員に加えて車両外部に警告を発するために警告報知部26を介して本警告を行って(ステップS40)、本処理を終了する。つまり、ECU8は、ステップS39で予備警告を行ってもなお車両乗員が目覚めない場合には、車両外部に警告を発するべく本警告を行う。
以上のように、本実施形態に係る車両用空調制御装置は、睡眠モード中に空調ユニット7が正常に機能しなくなった場合に、空調動作の切替および警告の報知の少なくともいずれか一方を実行するので、睡眠モード中に空調ユニット7が正常に機能しなくなった場合に適切な対応をとることができる。
また、本実施形態に係る車両用空調制御装置は、冷房中で、かつ睡眠モード中に内気温度が許容温度を超えたことを条件に、吸気モードを外気導入モードに切り替えるとともにブロワ風量を増加させるので、例えば睡眠モード中に空調ユニット7が正常に機能しなくなったことにより内気温度が過度に上昇した場合であっても、車室内の換気を促進するといった適切な対応をとることができる。
また、本実施形態に係る車両用空調制御装置は、睡眠モード中に内気温度が警告上限温度を超えた状態または警告下限温度を下回った状態が規定時間t2以上継続したことを条件に、車両乗員に予備警告を報知するので、睡眠中の車両乗員に対して空調ユニット7の異常を知らせることができる。したがって、車両乗員は、当該予備警告の報知によって目覚めることができ、例えば空調ユニット7を停止したり、ウィンドウを開けて換気を行う等の適切な対応をとることができる。
また、本実施形態に係る車両用空調制御装置は、睡眠モード中に内気温度が警告上限温度を超えた状態または警告下限温度を下回った状態が規定時間t1以上継続したことを条件に、車両乗員に対する予備警告に加えて、車両外部に向けて本警告を行うので、車両1の周囲にいる人に対して異常を知らせることができる。
また、本実施形態に係る車両用空調制御装置は、警告報知部26が音声により予備警告を報知するので、睡眠中の車両乗員を確実に目覚めさせることができる。
なお、本実施形態においては、内気温度が過度に上昇あるいは低下する等の内気温度の変化に基づき、警告を行う構成としたが、これに限らず、例えば空調部品の故障や空調部品の意図しない停止等を直接検出し、これら故障や停止が検出されたことを条件に警告を行う構成としてもよい。
また、本実施形態においては、外気温度および日射量から図6(a)に示すマップに基づき警告上限温度を設定する構成としたが、これに限らず、例えば車室内の湿度に基づき、あるいは車室内の湿度を含む各種パラメータに基づき警告上限温度を設定するようにしてもよい。例えば、車室内の湿度が高いほど睡眠中の車両乗員の体温調節が適切に行えなくなる可能性が高いため、湿度が高いほど警告上限温度が低くなるように設定する。
上述の通り、本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。