JP6308016B2 - 樹脂組成物及び樹脂成形体 - Google Patents
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近年地球規模での環境問題に対して、植物由来の樹脂の利用は、温室効果ガス排出量を低減し得る材料として大きな期待が寄せられている。従来から知られている植物由来の樹脂の一つに、セルロース誘導体がある。セルロース誘導体は、従来、塗料としての用途や、繊維としての用途では、広く利用されているが、セルロース誘導体の樹脂成形体への利用に際しては、まだ用いられている例は少ない。
セルロースエステル樹脂と、
アジペート系可塑剤、及びポリエステル系可塑剤より選択される少なくとも1種の可塑剤を1phr以上50phr以下と、
4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)−1,1−ビフェニルの単量体、二量体、及び三量体よりなる群から選択される少なくとも1種の難燃剤を5phr以上40phr以下と、
を含み、
前記可塑剤、及び前記難燃剤の合計量が、6phrを超える樹脂組成物。
前記可塑剤と前記難燃剤との質量比(前記可塑剤/前記難燃剤)が、1/50以上70/30以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
セルロースエステル樹脂と、
アジペート系可塑剤、及びポリエステル系可塑剤より選択される少なくとも1種の可塑剤を1phr以上50phr以下と、
4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)−1,1−ビフェニルの単量体、二量体、及び三量体よりなる群から選択される少なくとも1種の難燃剤を5phr以上40phr以下と、
を含み、
前記可塑剤、及び前記難燃剤の合計量が、6phrを超える樹脂成形体。
前記可塑剤と前記難燃剤との質量比(前記可塑剤/前記難燃剤)が、1/50以上70/30以下である請求項3に記載の樹脂成形体。
請求項2に係る発明によれば、可塑剤と難燃剤との質量比が上記範囲外の場合に比べ、ブリードを抑制した樹脂成形体が得られる樹脂組成物を提供できる。
請求項4に係る発明によれば、可塑剤と難燃剤との質量比が上記範囲外の場合に比べ、ブリードを抑制した樹脂成形体を提供できる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、セルロースエステル樹脂と、可塑剤と、4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)−1,1−ビフェニルの単量体、二量体、及び三量体よりなる群から選択される少なくとも1種の難燃剤(以下「特定の難燃剤」とも称する)と、を含む組成物である。
そして、セルロースエステル樹脂に対し、可塑剤の含有量を1phr以上50phr以下とし、特定の難燃剤の含有量を5phr以上40phr以下とする。但し、可塑剤及び難燃剤の合計の含有量は、6phr超え(好ましくは8phr以上40phr以上)とする。
なお、「phr」とは、「per hundred resin」の略であり、ベース樹脂(本実施形態ではセルロースエステル樹脂)100質量部に対する「質量部」である。
特に、セルロースエステル樹脂をベース樹脂とする樹脂成形体では、セルロースエステル樹脂に対して添加剤(特に難燃剤)の分散性が低く、添加剤のブリードが生じやすいのが現状である。その理由は、セルロースエステル樹脂の置換基として有する酢酸、及びプロピオン酸の極性が高いためである。
この点、本実施形態に係る樹脂組成物は、得られる樹脂成形体の難燃性が高まりやすい。その理由としては、特定の難燃剤自身の難燃効果が高いことが挙げられる。これに加え、樹脂成形体中での特定の難燃剤の分散状態が良く、特定の難燃剤による難燃効果を発揮すると考えられるためである。
また、本実施形態に係る樹脂組成物は、透明性も高いことから、着色剤による着色性に優れた樹脂成形体も得られる。
可塑剤と難燃剤との質量比を上記範囲にすると、よりブリードが抑制された樹脂成形体が得られやすくなる。
セルロースエステル樹脂は、樹脂組成物のベース樹脂である。
セルロースエステル樹脂としては、例えば、セルロースアセテート類が好適に挙げられ、具体的には、例えば、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートメチレート、セルロースアセテートヒドロキシエチレート、セルロースアセテートヒドロキシプロピレート、セルロースブチレートヒドロキシプロピレート、セルロースジアセテート等が挙げられる。
この重量平均分子量を上記範囲にすると、樹脂組成物の流動性が適切となり、成形性が高まりやすくなる。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミッションクロマトグラフィー装置(島津製作所製Prominence GPC型)を用い、測定カラムにはShim−pack GPC−80Mを使用して測定された値である。以下、同様である。
可塑剤としては、例えば、アジベート系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等が挙げられる。
アジベート系可塑剤としては、例えば、ベンジル−2−(2−メトキシエトキシ)エチルアジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ベンジオクチルアジペート、ジブチルアジペート、ジメチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ(オクチル、デシル)アジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソオクチルアジペート、高級アルコールアジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジノルマルアルキルアジペート、アルキルエーテルジエステルアジペート、ジブトキシエチルアジペート、ジ(ブトキシエトキシエチル)アジペート、ジ(ヘキシルオクイルデシル)アジペート等が挙げられる。
ポリエステル系可塑剤としては、例えば、ポリ(1,3−ブタンジオールアジペート)、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエステルセバケート、ポリエステルフタレート等が挙げられる。
可塑剤の重量平均分子量を上記範囲にすると、樹脂組成物の流動性が適切となり、また、成形加工時に可塑剤のガス化が抑制され、成形性が高まりやすくなる。
可塑剤の含有量を上記範囲にすると、得られる樹脂成形体のブリードが抑制される。また、得られる成形体の難燃性、機械的特性、及び湿熱特性も高まりやすくなる。
難燃剤としては、4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)−1,1−ビフェニルが適用される。具体的には、4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)−1,1−ビフェニルは、単量体、二量体、及び三量体があり、難燃剤としては、これら単量体、二量体、及び三量体よりなる群から選択される少なくとも一種が適用される。つまり、難燃剤としては、これら単量体、二量体、及び三量体のいずれかの単独物、又は2種以上の混合物が適用される。
特定の難燃剤の残留触媒量を上記範囲にすると、得られる樹脂成形体のブリードが抑制されやすくなる。また、得られる成形体の難燃性、機械的特性、及び湿熱特性も高まりやすくなる。
この残留触媒量を上記範囲にするには、例えば、1)物理吸着法(活性炭などの多孔質材料を使用した方法)、2)抽出法(溶媒により抽出する方法)、3)沈降法(酸には塩基で沈降させる方法)を行うことがよい。
難燃剤の含有量を上記範囲にすると、得られる樹脂成形体のブリードが抑制される。また、得られる成形体の難燃性、機械的特性、及び湿熱特性も高まりやすくなる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記各成分の他、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、例えば、難燃助剤、加熱された際の垂れ(ドリップ)防止剤、可塑剤、酸化防止剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、帯電防止剤、耐加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミナ、ボロンナイトライド等)等の周知の添加剤が挙げられる。
その他の成分は、例えば、0phr以上10phr以下がよく、0phr以上5phr以下がより好ましい。ここで、「0phr」とはその他の成分を含まない形態を意味する。
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記各成分を溶融混練することにより製造される。
ここで、溶融混練の手段としては公知の手段を用いることができ、例えば、二軸押出し機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物からなる。つまり、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物と同じ組成で構成されている。
具体的には、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を成形して得られる。成形方法は、例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーティング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などを適用してよい。
表1〜表2に従った成分(数量の単位は「phr」)を
2軸混練装置(東芝機械製、TEM58SS)にて、シリンダ温度190℃で混練し、樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットを、射出成型機(東芝機械(株)製、製品名「NEX500」)を用いて表1〜表2に記載の射出温度(シリンダ温度)、金型温度50℃で射出成型し、長さ方向の両側にゲートを設けて成形した試験片(ISO527引張試験、ISO178曲げ試験に対応、試験部厚さ4mm、幅10mm)と、UL−94におけるVテスト用UL試験片(厚さ:0.8mm、1.6mm)を成形した。
(透明性)
得られた樹脂組成物のペレットをプレス成型機(東洋精機(株)製 ファインラボプレス M−1)により成形し、厚み100μmの試験用シートを作製した。
その試験用シートの光透過率を、紫外・可視光分光光度計(島津製作所製UV−1800)により測定し、透明性を評価した。
なお、測定波長は550nmとした。また、表中、「−」は測定不可を示している。
−UL−V試験−
Vテスト用UL試験片を用い、UL−94HB試験に規定の方法に準拠して、ULチャンバ(東洋精機(株)製)にて、UL−Vテストを実施した。結果の表示は、難燃性が高い方から順にV−0、V−1、V−2、HBであり、HBより劣る場合、即ち試験片が延焼してしまった場合を「failure」と示した。
なお、射出成形できず、試験片を作製できなかったものは、実質上生産不可能という理由から、検討を中止した。
−引張り強さ、伸び−
長さ方向の両側にゲートを設けて成形した試験片を用い、ISO527に準拠して、評価装置(島津製作所製、精密万能試験機オートグラフAG−IS 5kN)にて、引張り強さ、及び伸びについて測定した。
長さ方向の両側にゲートを設けて成形した試験片にノッチ加工を施し、これを用い、JIS−K7111(2006年)に準拠して、評価装置(東洋精機(株)製DG−UB2)にて、シャルピー衝撃試験より耐衝撃性を測定した。
長さ方向の両側にゲートを設けて成形した試験片を用い、ISO178曲げ試験に準拠して、HDT測定装置(東洋精機(株)製、HDT−3)を用にて、1.8MPaの荷重における荷重たわみ温度(℃)を測定した。
−湿熱試験後の耐衝撃性−
長さ方向の両側にゲートを設けて成形した試験片に対して、次のようにして湿熱試験を行った後、上記同様にして耐衝撃性を測定した。
湿熱試験は、湿熱試験機(THN042PA;ADVANTEC製)にて65℃×85%×400時間の条件で行った。
ブリードについて、次の評価を行った。
剥離強度試験(JIS K5600)に用いるテープを基材に張り、その基材と水平方向にテープを引っ張る引張試験を実施した。その際の引張強さと表面状態の目視にてブリード状況を判断した。なお、試験状態の調整は、65℃×85%×500時間、サンプル放置後、実施した。
評価基準は、以下の通りである。
G1(○):ブリード状態調整前以上の引張強さ、かつ目視でのブリードなし
G2(△):ブリード状態調整前以下の引張強さ、かつ目視でのブリードなし
G3(×):目視でのブリードあり
特に、本実施例3〜4、6〜8と比較例7〜8とを比較から、難燃剤としてFP800を含む本実施例では、ブリードが抑えられると共に、透明性、難燃性、機械的特性、湿熱特性が向上することがわかる。
−セルロースエステル樹脂−
・CAP482: 商品名CAP482(イーストマンケミカル(株)製)、セルロースアセテートプロピオネート
・L−50: 商品名L−50(ダイセル(株)製)、セルロースジアセテートプロピオネート
・DAIFATTY−101: 商品名DAIFATTY−101(大八化学(株)製)、ベンジル−2−(2−メトキシエトキシ)エチルアジペート
・FP800(未処理品): 商品名FP800((株)ADEKA製)、4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)−1,1−ビフェニルの単量体、二量体、及び三量体の混合物の未処理品(残留触媒量=50ppm)
・FP800(処理品): 商品名FP800((株)ADEKA製)、4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)−1,1−ビフェニルの単量体、二量体、及び三量体の混合物に触媒除去処理を施した処理品(残留触媒量=10ppm)
・PX−200: 商品名PX−200(大八化学(株)製)、下記構造式(P)で示される芳香族縮合リン酸エステル化合物
Claims (4)
- セルロースエステル樹脂と、
アジペート系可塑剤、及びポリエステル系可塑剤より選択される少なくとも1種の可塑剤を1phr以上50phr以下と、
4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)−1,1−ビフェニルの単量体、二量体、及び三量体よりなる群から選択される少なくとも1種の難燃剤を5phr以上40phr以下と、
を含み、
前記可塑剤、及び前記難燃剤の合計量が、6phrを超える樹脂組成物。 - 前記可塑剤と前記難燃剤との質量比(前記可塑剤/前記難燃剤)が、1/50以上70/30以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
- セルロースエステル樹脂と、
アジペート系可塑剤、及びポリエステル系可塑剤より選択される少なくとも1種の可塑剤を1phr以上50phr以下と、
4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)−1,1−ビフェニルの単量体、二量体、及び三量体よりなる群から選択される少なくとも1種の難燃剤を5phr以上40phr以下と、
を含み、
前記可塑剤、及び前記難燃剤の合計量が、6phrを超える樹脂成形体。 - 前記可塑剤と前記難燃剤との質量比(前記可塑剤/前記難燃剤)が1/50以上70/30以下である請求項3に記載の樹脂成形体。
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