以下、本発明について詳細に説明する。
(A)分岐状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
本発明の組成物は、下記式(1)で表される、シロキサン単位数1〜4個からなる分岐鎖を有する、分岐状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含有することを特徴とする。
(式中、R
1は、互いに独立に、置換または非置換の、炭素数1〜12の飽和炭化水素基又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であり、R
3は、互いに独立に、置換または非置換の、炭素数1〜12の飽和炭化水素基又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、及び炭素数2〜10のアルケニル基から選ばれる基であり、R
4は、互いに独立に、置換または非置換の、炭素数1〜6の飽和炭化水素基又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であり、R
5は、互いに独立に、炭素数2〜10のアルケニル基であり、kは0〜3の整数であり、但し、1分子中に少なくとも2つのアルケニル基を有し、xは0〜3の整数であり、aは1〜100の整数であり、bは0〜300の整数であり、但し1≦a+b≦400であり、括弧内にあるシロキサン単位はランダム構造を形成していてもブロック単位を形成していても良い)
R1は、互いに独立に、置換または非置換の、炭素数1〜12の、好ましくは1〜8の飽和炭化水素基又は炭素数6〜12の、好ましくは6〜10の芳香族炭化水素基である。置換または非置換の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;これらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基、グリシジルオキシ基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、又はアミノ基で置換したもの、例えば、トリフルオロプロピル基、クロロプロピル基等のハロゲン化一価炭化水素基;β−シアノエチル基、γ−シアノプロピル基等のシアノアルキル基、3−メタクリルオキシプロピル基、3−グリシジルオキシプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−アミノプロピル基が例示される。この中でも、メチル基、シクロヘキシル基などが好ましく、特にはメチル基が好ましい。また、置換または非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基やベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。これらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子またはシアノ基で置換したものであってもよい。中でも、フェニル基、トリル基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。
R3は、互いに独立に、置換または非置換の炭素数1〜12の、好ましくは1〜8の飽和炭化水素基、置換または非置換の炭素数6〜12の、好ましくは6〜10の芳香族炭化水素基、及び炭素数2〜10の、好ましくは2〜8のアルケニル基から選ばれる基である。飽和炭化水素基及び芳香族炭化水素基は上記R1の為に例示したものと同じものが挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ヘキセニル基、及びスチリル基などが挙げられ、ビニル基、及びアリル基が好ましく、特にはビニル基が好ましい。
R4は、互いに独立に、置換または非置換の、炭素数1〜6の飽和炭化水素基、または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基から選ばれる基である。飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;これらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基、グリシジルオキシ基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、又はアミノ基で置換したもの、例えば、トリフルオロプロピル基、クロロプロピル基等のハロゲン化一価炭化水素基;β−シアノエチル基、γ−シアノプロピル基等のシアノアルキル基、3−メタクリルオキシプロピル基、3−グリシジルオキシプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−アミノプロピル基が例示される。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基やベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられ、好ましくはフェニル基である。これらの中でも、メチル基、シクロヘキシル基、又はフェニル基が好ましく、特にはメチル基、又はフェニル基が好ましい。
R5は、互いに独立に、炭素数2〜10の、好ましくは2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ヘキセニル基、及びスチリル基などが挙げられる。中でもビニル基、アリル基が好ましく、特にビニル基が好ましい。好ましくは各末端に少なくとも1のR5を有するのがよい。
kは0〜3の整数であり、好ましくは1〜3の整数であり、さらに好ましくは1である。xは0〜3の整数であり、好ましくは0又は1であり、特に好ましくは0である。aは1〜100の整数であり、好ましくは2〜75の整数であり、より好ましくは2〜50の整数である。bは0〜300の整数であり、好ましくは1〜230の整数であり、より好ましくは1〜110の整数である。ただし、好ましくは2≦a+b≦300であり、より好ましくは3≦a+b≦250であり、さらに好ましくは3≦a+b≦200である。また、0.01≦a/(a+b)≦1.0であるのがよい。
上記分岐状オルガノポリシロキサンは好ましくはR1で示される基の少なくとも1が芳香族炭化水素基であるのがよい。特には、上記分岐状オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に結合する1価芳香族炭化水素基を、ケイ素原子に結合する全置換基の合計個数のうち3%以上90%以下となる個数で有するのが好ましく、さらに好ましくは5%以上で有するのがよい。上限は、好ましくは80%以下であるのがよい。芳香族炭化水素基を好ましくは上記範囲となる量で有することにより、得られる硬化物は高い屈折率、及び低ガス透過性を有するため、半導体素子を封止するために好適に用いることができる。
以下、上記分岐状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法を説明する。
上記分岐状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、下記式(3)で示される片末端ケイ素原子に二つの加水分解性基が結合したオルガノシロキサンを分岐鎖導入のための原料とし、該オルガノシロキサンを縮合反応させることを特徴とする製造方法により得られる。該縮合反応は触媒存在下で行われるのが好ましい。
(式中、R
1、R
3、及びxは上述の通りであり、R
2は水素原子または炭素数1〜6の飽和炭化水素基である)
上記式(3)中、R2としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基が挙げられる。この中でも、メチル基、及びエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
上記式(3)で示されるオルガノポリシロキサンとしては、例えば、1,1,1,3−テトラメチル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1−フェニル−1,1,3−トリメチル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,1−ジフェニル−1,3−ジメチル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,1−ジフェニル−1,3−ジメチル−3,3−ジエトキシジシロキサン、1,1,1−トリフェニル−3−メチル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,1,1−トリメチル−3−フェニル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,3−ジフェニル−1,1−ジメチル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,1−ジフェニル−1−メチル−3−フェニル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,1,1−トリフェニル−3−フェニル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,1−ジフェニル−1−メチル−3−シクロヘキシル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,1−ジフェニル−1−メチル−3−グリシジル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,1−ジフェニル−1−メチル−3−トリフルオロプロピル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,1,1,3,3,5−ヘキサメチル−5,5−ジメトキシトリシロキサン、1,1−ジフェニル−1,3,3,5−テトラメチル−5,5−ジメトキシトリシロキサン、1,1,1−トリフェニル−3,3,5−トリメチル−5,5−ジメトキシトリシロキサン、1,1,1,3,3−ペンタメチル−5−フェニル−5,5−ジメトキシトリシロキサン、1,1,5−トリフェニル−1,3,3−トリメチル−5,5−ジメトキシトリシロキサン、1,1,1,5−テトラフェニル−3,3−トリメチル−5,5−ジメトキシトリシロキサン、1,1,1,5−テトラメチル−3,3−ジフェニル−5,5−ジメトキシトリシロキサン、1,1,1−トリメチル−3,3,5−トリフェニル−5,5−ジメトキシトリシロキサン、1,1,1,3,3,5−ヘキサフェニル−5,5−ジメトキシトリシロキサン、1,1−ジフェニル−1−メチル−3−ビニル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,1−ジフェニル−1−メチル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,1−ジフェニル−1−メチル−3,3−ジフェニル−5−メチル−5,5−ジメトキシトリシロキサン、1,1−ジフェニル−1−メチル−3,5,7−トリフェニル−3,5,7−トリメチル−9−メチル−9,9−ジメトキシペンタシロキサン、1,1−ジフェニル−1−メチル−3,5,7−トリ(3,3,3−トリフルオロプロピル)−3,5,7−トリメチル−9−メチル−9,9−ジメトキシペンタシロキサン、及び1,1−ジフェニル−1−メチル−3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−3,3−ジメトキシジシロキサンが挙げられる。
上記式(3)で示される化合物を、単独であるいは他の有機ケイ素化合物と、好ましくは触媒存在下で、縮合反応させて、下記式(4)で示されるオルガノポリシロキサンを生成し(以下、縮合反応段階という)、該オルガノポリシロキサンの末端を他の有機ケイ素化合物と反応させて封鎖することで、上記式(1)で表される分岐状オルガノポリシロキサンを製造する(以下、末端封鎖反応段階という)。末端封鎖反応は任意で触媒存在下で行ってよい。
(式中、R
1、R
2、R
3及びxは上記の通りであり、aは1〜100の整数であり、b’’は0〜300の整数であり、1≦a+b’’≦400である)
上記式(3)で示される化合物と反応させる有機ケイ素化合物としては、R
3 2SiX
2(式中、R
3は上記の通りであり、Xは加水分解性基またはハロゲン原子である)で示される有機ケイ素化合物及び下記式(5)で示される有機ケイ素化合物から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
(式中、R
2及びR
3は上記の通りであり、pは2〜300の整数であり、好ましくは5〜200の整数であり、さらに好ましくは10〜100の整数である。括弧内にある各シロキサン単位はブロック単位を形成していてもランダム構造を形成していてもよい)
R3 2SiX2で示される有機ケイ素化合物としては、例えば、ジメチルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ベンジルメチルジクロロシランなどのクロロシラン類;ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ベンジルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ベンジルメチルジエトキシシランなどのアルコキシシラン;ジフェニルシランジオール、ベンジルメチルシランジオール、ジベンジルシランジオールなどのジシラノール類などが挙げられる。中でもジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルシランジオールなどが好ましい。
上記式(5)で示される有機ケイ素化合物としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジメトキシジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジオール、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ジメトキシトリシロキサン、1,3,5−トリフェニル−1,3,5−トリメチル−1,5−ジメトキシトリシロキサン、1,3,5−トリフェニル−1,3,5−トリメチルトリシロキサン−1,5−ジオール、1,1,3,3,5,5−ヘキサフェニル−1,5−ジメトキシトリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサフェニルトリシロキサン−1,5−ジオール、及び1,3,5−トリ(トリフルオロプロピル)−1,3,5−トリメチルトリシロキサン−1,5−ジオール、及びこれら化合物のオリゴマー又はポリマーが挙げられる。
また、3−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのハロゲンや酸素、窒素、硫黄原子を含む炭化水素基を有するシラン類を縮合させてもよい。
上記式(4)で表される化合物は、例えば、下記式(6)、(7)、又は(8)で示される有機ケイ素化合物とさらに反応させることにより、末端が封鎖され、上記式(1)で表される分岐状オルガノポリシロキサンを得ることができる。
(式中、R
4、R
5、及びkは上記の通りであり、Xは加水分解性基またはハロゲン原子である)
(式中、R
4、R
5、及びkは上記の通りであり、Qは酸素原子または=N−Hである)
(式中、R
4、R
5、R
3、及びkは上記の通りであり、p’は1から100の整数である)
上記において、Xは加水分解性基またはハロゲン原子である。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。加水分解性基は−ORで示される基であり、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であるのがよい。該加水分解性基としては、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、及びイソプロポキシ基が挙げられる。中でも塩素原子、ヒドロキシ基、及びメトキシ基が好ましく、特にはヒドロキシ基、及びメトキシ基が好ましい。
上記式(6)、(7)、又は(8)で示される有機ケイ素化合物としては、例えば1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニル−1,3−ジメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラビニル−1,3−ジメチルジシロキサン、ヘキサビニルジシロキサン、及び1,3−ジメチル−1,3−ジフェニル−1,3−ジビニルジシロキサンなどのジシロキサン類;1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジフェニル−1,3−ジメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラフェニルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラビニル−1,3−ジメチルジシラザン、ヘキサビニルジシラザン、及び1,3−ジメチル−1,3−ジフェニル−1,3−ジビニルジシラザンなどのシラザン類;及び、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,5−ジビニル−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルペンタシロキサン、1,9−ジビニル−1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルペンタシロキサン、1,1,3,5,5−ペンタメチル−3−フェニルトリシロキサン、1,5−ジビニル−1,1,3,5,5−ペンタメチル−3−フェニルトリシロキサン、1,1,3,5,7,9,9−ヘプタメチル−3,5,7−トリフェニルペンタシロキサン、1,9−ジビニル−1,1,3,5,7,9,9−ヘプタメチル−3,5,7−トリフェニルペンタシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニルトリシロキサン、1,5−ジビニル−1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニルトリシロキサン、1,5−ジメチル−1,3,3,5−テトラフェニルトリシロキサン、1,5−ジビニル−1,5−ジメチル−1,3,3,5−テトラフェニルトリシロキサン、1,1,9,9−テトラメチル−3,3,5,5,7,7−ヘキサフェニルペンタシロキサン、及び1,9−ジビニル−1,1,9,9−テトラメチル−3,3,5,5,7,7−ヘキサフェニルペンタシロキサンなどのシロキサンオリゴマーまたはポリマー類などが挙げられる。
上記反応に使用される触媒は、酸触媒、塩基性触媒、及び金属元素化合物触媒より選ばれる少なくとも1種であるのがよい。金属元素化合物触媒としては、周期表第2族元素の水酸化物、周期表第2族元素の水酸化物の水和物、周期表第2族元素の酸化物、及び周期表第3〜第15族に属する金属元素の水酸化物または酸化物が好適である。酸触媒としては、希塩酸及び酢酸が好ましく、特には希塩酸が好ましい。塩基性触媒としては、トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドライドが好ましく、特にはトリエチルアミンが好ましい。
金属元素化合物触媒としては、水酸化ラジウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ベリリウム、水酸化バリウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、水酸化ランタン(III)、水酸化セリウム(IV)、水酸化ジルコニウム(IV)、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、水酸化コバルト(II)、水酸化ニッケル(II)、水酸化銅(II)、水酸化金(III)、水酸化亜鉛(II)、水酸化カドミウム(II)、水酸化アルミニウム(III)、水酸化インジウム(III)、水酸化タリウム(I)、水酸化鉛(II)、水酸化ビスマス(III)、酸化マンガン(IV)、及び酸化鉄(II)、酸化銅(II)が挙げられる。中でも、入手性などの観点から、周期表第2族元素の水酸化物、及び周期表第3〜第15族に属する金属元素の水酸化物が好ましい。特には、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化ランタン(III)、水酸化アルミニウム(III)、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、及び水酸化銅(II)が好ましい。また、上記周期表第2族元素の水酸化物の水和物であってもよい。特には水酸化バリウム八水和物、水酸化バリウム一水和物、及び水酸化ストロンチウム八水和物が好ましい。
金属元素化合物触媒は、予めシランカップリング剤で表面処理されているのが好ましい。該シランカップリング剤は従来公知のものを使用することができる。特には、触媒の分散性の観点から、縮合反応に付する有機ケイ素化合物、特にはアルコキシ基を含有する有機ケイ素化合物に類似した構造を有するものが望ましい。該シランカップリング剤としては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロ−プロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメトキシ−1,3,5−トリメチルトリシロキサン、1,1,5,5−テトラメトキシ−1,3,5−トリメチルトリシロキサン−3−オール、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジスチリルジメトキシシラン、ジペンタフルオロフェニルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。中でも、トリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、及び3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
上記シランカップリング剤による金属元素化合物触媒の表面処理は従来公知の方法に従えばよい。例えば、湿式法や乾式法などを用いることができる。金属元素化合物触媒とシランカップリング剤との混合割合は特に限定されるものではないが、触媒活性を損なわないためには、金属元素化合物触媒100質量部に対してシランカップリング剤0.001〜10質量部、好ましくは0.01〜5質量部であることが好ましい。
上記触媒の量は、縮合反応が十分進行する量であればよく、特に限定されない。例えば、酸塩基触媒の場合には、有機ケイ素化合物の合計重量に対して0.1〜10wt%となる量が好ましく、0.5〜5wt%となる量がより好ましく、上記金属元素化合物を触媒として用いる場合には、有機ケイ素化合物の合計重量に対して0.01〜20wt%となる量、好ましくは0.1〜10wt%となる量、より好ましくは0.2〜9wt%となる量、さらに好ましくは0.5〜5wt%となる量がよい。触媒の量が上記範囲内であれば、縮合反応において十分な触媒効果を得ることができるため好ましい。
上記式(6)で示されるオルガノシラン化合物としてクロロシラン化合物を使用し、水の存在下で反応させる場合は、発生する塩酸が触媒の働きをするため、触媒を添加しなくてよい。
上記縮合反応及び末端封鎖反応は少なくとも1種の溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒は、反応速度および反応率を調整するため、または生成物の希釈剤として用いられる。該溶媒は、非極性溶媒及び極性溶媒から選ばれる1種以上であればよい。非極性溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタンなどの炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。極性溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;アルコールエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテルなどのエーテル類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトニトリルなどのシアン化炭化水素類;アミン類;アセトアミドなどのアミド類;塩化メチレン、クロロホルム、ヘキサフロロメタキシレンなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物類が挙げられる。溶媒の使用量は特に限定されるものではなく、適宜調整すればよい。通常、反応に付する有機ケイ素化合物の濃度が5〜95質量%、好ましくは20〜80質量%となる量であるのがよい。尚、上記反応は無溶剤系で行うこともできる。
上記式(6)で示されるオルガノシラン化合物としてクロロシラン化合物を使用する場合は、反応によって生成する塩化水素を中和し取り除くための受酸剤を添加することが望ましい。受酸剤としては例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミン類;ピリジン、ピペラジンなどの含窒素複素環化合物類、1,4−Diazabicyclo[2.2.2]octane(DABCO)、1,8−Diazabicyclo[5.4.0]−7−undecene(DBU)などの環状ジアミン類;1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラビニル−1,3−ジメチルジシラザン、ヘキサビニルジシラザン、1,3−ジメチル−1,3−ジフェニル−1,3−ジビニルジシラザンなどのシラザン類;水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機物系受酸剤が挙げられる。中でも、トリエチルアミン、ピリジン、酸化マグネシウムが好ましい。
上記縮合反応と上記末端封鎖反応はそれぞれ別の工程として、末端封鎖反応を縮合反応工程の後に行ってもよいし、縮合反応と末端封鎖反応を一工程で行ってもよい。上記製造方法によれば、触媒を反応生成物から容易に除去することができる。触媒のろ過は、縮合反応終了後に行われるのが好ましいが、末端封鎖反応終了後に行ってもよい。濾過には、得られた反応生成物の粘度を調節する目的で、上述した溶媒を使用してもよい。本発明の製造方法はさらに、反応生成物から未反応モノマーを除去する目的で、水洗、減圧ストリップ、活性炭処理など公知の方法により精製を行う工程を含んでいてもよい。
上記縮合反応は、加熱条件下で行っても良い。反応温度の好ましい範囲は0〜160℃であり、より好ましくは60〜100℃である。末端封鎖反応も加熱条件下で行っても良い。反応温度の好ましい範囲は0〜100℃であり、より好ましくは20〜80℃である。縮合反応と末端封鎖反応とを一工程で行う場合、反応温度は0〜160℃、好ましくは20〜80℃であるのがよい。反応時間は適宜選択されればよい。
上記製造方法はさらに、反応生成物から未反応モノマーを除去する目的で、水洗、減圧ストリップ、活性炭処理など公知の方法により精製を行う工程を含んでいてもよい。特に前述の受酸剤を用いた場合は、受酸剤由来の塩酸塩が発生するので、濾過、水洗、活性炭処理などの公知の方法でこれを除去することが望ましい。特にアミン塩酸塩はシロキサン結合の切断を促進したり、ヒドロシリル化反応の触媒毒として作用したりすることがあるので、付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物の原料として用いる場合、できるだけ生成物から除去することが特に好ましい。
(B)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
本発明の組成物はさらに、下記式(2)で表される、シロキサン単位数1〜4個からなる分岐鎖を少なくとも1つ有する、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有することを特徴とする。
(式中、R
3’は、互いに独立に、置換または非置換の、炭素数1〜12の飽和炭化水素基又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であり、R
6は、互いに独立に、水素原子、またはR
3’の選択肢から選ばれる基であり、R
4’は、互いに独立に、置換または非置換の、炭素数1〜6の飽和炭化水素基又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であり、R
6で示される基の少なくとも2つは水素原子であり、x’は0〜3の整数であり、a’は1〜100の整数であり、b’は0〜300の整数であり、但し1≦a’+b’≦400であり、括弧内にあるシロキサン単位はランダム構造を形成していてもブロック単位を形成していても良い)
上記(B)成分としては、特には、下記式(2’)で表される分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
(式中、R
3’、R
4’、R
6、x’、a’、及びb’は請求項1に規定する通りであり、括弧内にあるシロキサン単位はランダム構造を形成していてもブロック単位を形成していても良い)。
また上記(B)成分は下記式(a)で示される分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンであってもよい。該シロキサンは、上記式(2’)で表される分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンと併用されるのが好ましい。
上記式(a)において、a’は好ましくは1〜10の整数であり、さらに好ましくは1〜3の整数であり、R
3’及びR
4’は上記の通りであり、好ましくはメチル基またはフェニル基である。x’は好ましくは0又は1であり、更に好ましくは0である。
R3’は、互いに独立に、置換または非置換の、炭素数1〜12の、好ましくは1〜8の飽和炭化水素基又は炭素数6〜12の、好ましくは6〜10の芳香族炭化水素基である。置換または非置換の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;これらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基、グリシジルオキシ基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、又はアミノ基で置換したもの、例えば、トリフルオロプロピル基、クロロプロピル基等のハロゲン化一価炭化水素基;β−シアノエチル基、γ−シアノプロピル基等のシアノアルキル基、3−メタクリルオキシプロピル基、3−グリシジルオキシプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−アミノプロピル基が例示される。この中でも、メチル基、シクロヘキシル基などが好ましく、特にはメチル基が好ましい。また、置換または非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基やベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。これらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子またはシアノ基で置換したものであってもよい。中でも、フェニル基、トリル基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。
R6は、互いに独立に、水素原子、置換または非置換の炭素数1〜12の、好ましくは1〜8の飽和炭化水素基、及び置換または非置換の炭素数6〜12の、好ましくは6〜10の芳香族炭化水素基から選ばれる基である。飽和炭化水素基及び芳香族炭化水素基は上記R3’の為に例示したものと同じものが挙げられる。R6で示される基としては、水素原子、メチル基、及びフェニル基が好ましい。ただし、R6で示される基の少なくとも2つは水素原子である。
R4’は、互いに独立に、置換または非置換の、炭素数1〜6の飽和炭化水素基、または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基から選ばれる基である。飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;これらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基、グリシジルオキシ基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、又はアミノ基で置換したもの、例えば、トリフルオロプロピル基、クロロプロピル基等のハロゲン化一価炭化水素基;β−シアノエチル基、γ−シアノプロピル基等のシアノアルキル基、3−メタクリルオキシプロピル基、3−グリシジルオキシプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−アミノプロピル基が例示される。飽和炭化水素基の中でも、メチル基、シクロヘキシル基が好ましい。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基やベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基など上記R3’の為に例示したものと同じものが挙げられる。中でもフェニル基が好ましい。特には、R4’はメチル基、及びフェニル基が好ましい。
x’は0〜3の整数であり、好ましくは0又は1であり、特に好ましくは0である。a’は1〜100の整数であり、好ましくは1〜50の整数であり、さらに好ましくは1〜25の整数であり、より好ましくは1〜10の整数である。b’は0〜300の整数であり、好ましくは1〜230の整数であり、より好ましくは1〜110の整数である。1≦a’+b’≦400であり、好ましくは1≦a’+b’≦350であり、さらに好ましくは1≦a’+b’≦150であり、より好ましくは1≦a’+b’≦50である。また、0.01≦a’/(a’+b’)≦1.0であるのがよい。
上記分岐状オルガノポリシロキサンは好ましくはR3’で示される基の少なくとも1が芳香族炭化水素基であるのがよい。特には、上記分岐状オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に結合する1価芳香族炭化水素基を、ケイ素原子に結合する全置換基の合計個数のうち3%以上90%以下となる個数で有するのが好ましく、さらに好ましくは5%以上で有するのがよい。上限は、好ましくは80%以下であるのがよい。芳香族炭化水素基を好ましくは上記範囲となる量で有することにより、得られる硬化物は高い屈折率、及び低ガス透過性を有するため、半導体素子を封止するために好適に用いることができる。
(B)成分の添加量は、(A)成分中のアルケニル基の合計個数に対して、(B)成分中のヒドロシリル基の個数の比が0.4〜4となる量、好ましくは0.6〜3となる量、更に好ましくは0.8〜2となる量であるのがよい。上記下限値未満ではSiH基が不足して硬化不良となるため好ましくなく、上記上限値を超えると残存SiH基による脱水素などの副反応が生じやすくなるので好ましくない。なお、本発明のシリコーン組成物が後述する(D)成分を含む場合は、(A)成分および(D)成分のアルケニル基の合計個数に対する(B)成分中のヒドロシリル基の個数の比が上記範囲となる量であればよい。また、本発明のシリコーン組成物が後述する(E)成分を含む場合は、(A)成分、又は(A)及び(D)成分中のアルケニル基の合計個数に対して、(B)成分及び(E)成分中のヒドロシリル基の合計個数の比が上記範囲となる量であればよい。またこの場合、(B)成分及び(E)成分中の合計質量に対する(B)成分の割合は5〜95質量%であるのがよく、好ましくは10〜90質量%であり、さらに好ましくは20〜80質量%となる量であるのがよい。
以下、上記分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンの製造方法を説明する。
上記分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記式(3’)で示される片末端ケイ素原子に二つの加水分解性基が結合したオルガノシロキサンを分岐鎖導入のための原料とし、該オルガノシロキサンを縮合反応させることを特徴とする製造方法により得られる。該縮合反応は触媒存在下で行われるのが好ましい。
(式中、R
3’、R
6、及びx’は上述の通りであり、R
2は水素原子または炭素数1〜6の飽和炭化水素基である。)
当該製造方法により、好適には、上記式(2’)で表される分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを製造することができる。上記式(a)で表される分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは当該方法で製造することもできるが、従来公知の方法で製造することもでき、また市販品であってもよい。上記式(3’)で表される化合物は、特には、下記式(3’’)で表される化合物であるのが好ましい。
(式中、R
3’、R
6、及びx’は上述の通りであり、R
2は水素原子または炭素数1〜6の飽和炭化水素基である。)
上記式中、R2としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基が挙げられる。この中でも、メチル基、及びエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
上記式(3’)で示されるオルガノポリシロキサンとしては、例えば、1,1,1,3−テトラメチル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1−フェニル−1,1,3−トリメチル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,1−ジフェニル−1,3−ジメチル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,1−ジフェニル−1,3−ジメチル−3,3−ジエトキシジシロキサン、1,1,1−トリフェニル−3−メチル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,1,1−トリメチル−3−フェニル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,3−ジフェニル−1,1−ジメチル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,1−ジフェニル−1−メチル−3−フェニル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,1,1−トリフェニル−3−フェニル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,1−ジフェニル−1−メチル−3−シクロヘキシル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,1−ジフェニル−1−メチル−3−グリシジル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,1−ジフェニル−1−メチル−3−トリフルオロプロピル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,1,1,3,3,5−ヘキサメチル−5,5−ジメトキシトリシロキサン、1,1−ジフェニル−1,3,3,5−テトラメチル−5,5−ジメトキシトリシロキサン、1,1,1−トリフェニル−3,3,5−トリメチル−5,5−ジメトキシトリシロキサン、1,1,1,3,3−ペンタメチル−5−フェニル−5,5−ジメトキシトリシロキサン、1,1,5−トリフェニル−1,3,3−トリメチル−5,5−ジメトキシトリシロキサン、1,1,1,5−テトラフェニル−3,3−トリメチル−5,5−ジメトキシトリシロキサン、1,1,1,5−テトラメチル−3,3−ジフェニル−5,5−ジメトキシトリシロキサン、1,1,1−トリメチル−3,3,5−トリフェニル−5,5−ジメトキシトリシロキサン、1,1,1,3,3,5−ヘキサフェニル−5,5−ジメトキシトリシロキサン、1,1−ジフェニル−1−メチル−3−ビニル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,1−ジフェニル−1−メチル−3,3−ジメトキシジシロキサン、1,1−ジフェニル−1−メチル−3,3−ジフェニル−5−メチル−5,5−ジメトキシトリシロキサン、1,1−ジフェニル−1−メチル−3,5,7−トリフェニル−3,5,7−トリメチル−9−メチル−9,9−ジメトキシペンタシロキサン、1,1−ジフェニル−1−メチル−3,5,7−トリ(3,3,3−トリフルオロプロピル)−3,5,7−トリメチル−9−メチル−9,9−ジメトキシペンタシロキサン、及び1,1−ジフェニル−1−メチル−3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−3,3−ジメトキシジシロキサンが挙げられる。
上記式(3’)で示される化合物を、単独であるいは他の有機ケイ素化合物と縮合反応させて、下記式(4’)で示されるオルガノポリシロキサンを生成し(以下、縮合反応段階という)、該オルガノポリシロキサンの末端を他の有機ケイ素化合物と反応させて封鎖することで、上記式(2)で表される分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを製造する(以下、末端封鎖反応段階という)。縮合反応及び末端封鎖反応は任意で触媒存在下で行ってよい。
(式中、R
2、R
3’、R
6、及びx’は上記の通りであり、a’は1〜100の整数であり、b’’は0〜300の整数であり、1≦a+b’’≦400である)
上記式(4’)で示されるオルガノポリシロキサンは好ましくは下記式(4’’)で表される。
(式中、R
2、R
3’、R
6、x’、a’、及びb’’は上記の通りである)
上記式(3’)で示される化合物と反応させる有機ケイ素化合物としてはR
6R
3’SiX
2(式中、R
6及びR
3’は上記の通りであり、Xは加水分解性基またはハロゲン原子である)で示される有機ケイ素化合物及び下記式(5’)で示される有機ケイ素化合物から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
(式中、R
2、R
3’、及びR
6は上記の通りであり、pは2〜300の整数であり、好ましくは5〜200の整数であり、さらに好ましくは10〜100の整数である。括弧内にある各シロキサン単位はブロック単位を形成していてもランダム構造を形成していてもよい)
R6R3’SiX2で示される有機ケイ素化合物としては、例えば、ジメチルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ベンジルメチルジクロロシランなどのクロロシラン類;ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ベンジルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ベンジルメチルジエトキシシランなどのアルコキシシラン;ジフェニルシランジオール、ベンジルメチルシランジオール、ジベンジルシランジオールなどのジシラノール類などが挙げられる。中でもジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルシランジオールなどが好ましい。
上記式(5’)で示される有機ケイ素化合物としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジメトキシジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジオール、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ジメトキシトリシロキサン、1,3,5−トリフェニル−1,3,5−トリメチル−1,5−ジメトキシトリシロキサン、1,3,5−トリフェニル−1,3,5−トリメチルトリシロキサン−1,5−ジオール、1,1,3,3,5,5−ヘキサフェニル−1,5−ジメトキシトリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサフェニルトリシロキサン−1,5−ジオール、及び1,3,5−トリ(トリフルオロプロピル)−1,3,5−トリメチルトリシロキサン−1,5−ジオール、及びこれら化合物のオリゴマー又はポリマーが挙げられる。
また、3−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのハロゲンや酸素、窒素、硫黄原子を含む炭化水素基を有するシラン類を縮合させてもよい。
上記式(4’)で表される化合物は、例えば、下記式(6’)、(7’)、又は(8’)で示される有機ケイ素化合物とさらに反応させることにより、末端が封鎖され、上記式(2)で表される分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを得ることができる。
(式中、R
4’、及びR
6は上記の通りであり、Xは加水分解性基またはハロゲン原子である)
(式中、R
4’、及びR
6は上記の通りであり、Qは酸素原子または=N−Hである)
(式中、R
3’、R
4’、及びR
6は上記の通りであり、p’は1から100の整数である)
上記において、Xは加水分解性基またはハロゲン原子である。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。加水分解性基は−ORで示される基であり、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であるのがよい。該加水分解性基としては、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、及びイソプロポキシ基が挙げられる。中でも塩素原子、ヒドロ基シ基、及びメトキシ基が好ましく、特にはヒドロキシ基、及びメトキシ基が好ましい。
上記式(6’)、(7’)、又は(8’)で示される有機ケイ素化合物としては、例えば1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニル−1,3−ジメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラビニル−1,3−ジメチルジシロキサン、ヘキサビニルジシロキサン、及び1,3−ジメチル−1,3−ジフェニル−1,3−ジビニルジシロキサンなどのジシロキサン類;1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジフェニル−1,3−ジメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラフェニルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラビニル−1,3−ジメチルジシラザン、ヘキサビニルジシラザン、及び1,3−ジメチル−1,3−ジフェニル−1,3−ジビニルジシラザンなどのシラザン類;及び、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,5−ジビニル−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルペンタシロキサン、1,9−ジビニル−1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルペンタシロキサン、1,1,3,5,5−ペンタメチル−3−フェニルトリシロキサン、1,5−ジビニル−1,1,3,5,5−ペンタメチル−3−フェニルトリシロキサン、1,1,3,5,7,9,9−ヘプタメチル−3,5,7−トリフェニルペンタシロキサン、1,9−ジビニル−1,1,3,5,7,9,9−ヘプタメチル−3,5,7−トリフェニルペンタシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニルトリシロキサン、1,5−ジビニル−1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニルトリシロキサン、1,5−ジメチル−1,3,3,5−テトラフェニルトリシロキサン、1,5−ジビニル−1,5−ジメチル−1,3,3,5−テトラフェニルトリシロキサン、1,1,9,9−テトラメチル−3,3,5,5,7,7−ヘキサフェニルペンタシロキサン、及び1,9−ジビニル−1,1,9,9−テトラメチル−3,3,5,5,7,7−ヘキサフェニルペンタシロキサンなどのシロキサンオリゴマーまたはポリマー類などが挙げられる。
上記縮合反応及び末端封鎖反応は、(A)成分の製造方法のために上述した縮合反応及び末端封鎖反応と同様の方法及び条件で行うことができる。従って、上記縮合反応及び末端封鎖反応に使用される触媒及び溶剤、並びに反応温度及び精製方法等は、(A)成分の製造方法のために上述したものであればよい。
(C)ヒドロシリル化触媒
(C)成分はヒドロシリル化触媒である。該触媒は、従来公知のものであればよく、特に限定されない。中でも、白金族金属単体および白金族金属化合物から選ばれる触媒が好ましい。例えば、白金(白金黒を含む)、塩化白金、塩化白金酸、白金−ジビニルシロキサン錯体等の白金−オレフィン錯体、及び白金−カルボニル錯体等の白金触媒、パラジウム触媒、及びロジウム触媒等が挙げられる。これらの触媒は、単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用しても良い。この中でも特に好ましくは、塩化白金酸、および白金−ジビニルシロキサン錯体等の白金−オレフィン錯体である。
(C)成分の配合量は特に制限されるものでなく触媒量であればよい。触媒量とは、上記付加反応を進行できる量であり、希望する硬化速度に応じて適宜調整すればよい。例えば、白金族金属触媒を使用する場合、反応速度の観点から、白金族金属原子に換算した質量基準で、上記(A)及び(B)成分の合計100質量部に対して1.0×10−4〜1.0質量部となる量が好ましく、更には1.0×10−3〜1.0×10−1質量部となる量がより好ましい。なお、後述する(D)成分および/又は(E)成分を含む場合は、(A)、(B)、(D)及び/又は(E)成分の合計100質量部に対して上記質量部となる量であるのがよい。
(D)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンレジン
本発明の組成物は更に(D)一分子中に少なくとも2つのアルケニル基を有する、網目構造を有するオルガノポリシロキサンを含むことができる。該オルガノポリシロキサンとしては、下記式(9)で示されるオルガノポリシロキサンが挙げられる。
(R8 3SiO1/2)r(R8 2SiO2/2)s(R8SiO3/2)t(SiO4/2)u
(9)
上記式中、R8は互いに独立に、置換または非置換の、炭素数1〜12の飽和炭化水素基、置換または非置換の、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、及び炭素数2〜10のアルケニル基から選ばれる基であり、但しR8の少なくとも2つはアルケニル基であり、rは0から100の整数、sは0から300の整数、tは0から200の整数、uは0から200の整数であり、1≦t+u≦400、2≦r+s+t+u≦800であり、但し、r、s、t及びuは、上記オルガノポリシロキサンが一分子中に少なくとも2つのアルケニル基を有する値である。
該オルガノポリシロキサンは、公知の方法によって製造されたものであってよく、また市販品を用いてもよい。
飽和炭化水素基及び芳香族炭化水素基としては、上記R1の為に例示したものと同じ基が挙げられる。アルケニル基としては、上記R3の為に例示したものと同じ基が挙げられる。R8で示される基のうち少なくとも2つはアルケニル基であり、その他のR8はメチル基もしくはフェニル基が好ましい。
rは0〜100整数であり、好ましく1〜75の整数であり、さらに好ましくは2〜50の整数である。sは0〜300の整数であり、好ましくは0〜200の整数であり、さらに好ましくは0〜100の整数である。tは0〜200の整数であり、好ましくは1〜100の整数であり、さらに好ましくは1〜50の整数である。uは0〜200の整数であり、好ましくは1〜100の整数であり、さらに好ましくは1〜50の整数である。1≦t+u≦400であり、好ましくは1≦t+u≦200であり、より好ましくは1≦t+u≦100であり、2≦r+s+t+u≦800の範囲であることが好ましく、2≦r+s+t+u≦400の範囲であることがより好ましく、2≦r+s+t+u≦200の範囲であることがさらに好ましい。
このようなオルガノポリシロキサンは、ビニル基やアリル基などのアルケニル基を有する有機ケイ素化合物(例えば、シラン、シロキサン、シラザン)と他のシランまたはシロキサンとを共縮合させて得ることができる。アルケニル基含有シランとしては、好ましくは、ジメチルビニルクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、トリビニルクロロシラン、ビニルメチルフェニルクロロシランおよびこれらのアルコキシ体やシラノール体が挙げられる。シロキサンとしては、好ましくは、上記アルケニル基含有シラン単位を含んでいるダイマー、オリゴマー、ポリマーが挙げられる。
上記アルケニル基含有有機ケイ素化合物と共縮合されるシラン及びシロキサンは特に限定されるものでないが、ハロゲンや酸素、窒素、硫黄原子を含む炭化水素基を有するシランを好適に用いることができる。例えば、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、ジフェニルメチルクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、トリエチルクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、エチルトリクロロシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシランおよびこれらのアルコキシ体やシラノール体、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが使用できる。また、シロキサンとして、これらのオリゴマーやポリマーも好適に用いることができる。共縮合は従来公知の方法に従えばよい。
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して5〜900質量部、好ましくは10〜800質量部、さらに好ましくは20〜600質量部である。(D)成分を上記範囲となる量で含むと、ゴム状の硬化物が得られるため好ましい。
また、本発明の組成物は、直鎖状であるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンをさらに含むことができる。この場合には、組成物全体におけるアルケニル基の合計個数に対するヒドロシリル基の合計個数の比が、上記した範囲を満たすように調整されればよい。直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは従来公知のものが使用できる。
(E)(B)成分以外のオルガノハイドロジェンポリシロキサン
本発明のシリコーン組成物は、任意成分として上記(B)成分以外のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含んでいても良い。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは好ましくは下記式(10)で示される。
(R7 3SiO1/2)r’(R7 2SiO2/2)s’(R7SiO3/2)t’(SiO4/2)u’
(10)
式中、R7は互いに独立に、水素原子、又は、置換または非置換の、炭素数1〜12の飽和炭化水素基又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基から選ばれる基であり、R7で示される基の少なくとも2つは水素原子であり、r’は0〜100の整数であり、s’は0〜300の整数であり、t’は0〜200の整数であり、u’は0〜200の整数であり、2≦r’+s’+t’+u’≦800であり、但し、r’、s’、t’及びu’は、上記オルガノポリシロキサンが一分子中に少なくとも2つのヒドロシリル基を有する値である。
該オルガノポリシロキサンは、公知の方法によって製造されたものであってよく、また市販品を用いてもよい。
該(E)成分は、さらに特には、直鎖状、環状、又は網目状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン、あるいは、ケイ素原子数5個以上の長い側鎖を1分子中に少なくとも1つ有する分岐鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。さらに好ましくは網目状または直鎖状であり、特には網目状がよい。
飽和炭化水素基及び芳香族炭化水素基としては、上記R1の為に例示したものが挙げられる。R7で示される基のうち少なくとも2つは水素原子であり、その他のR7はメチル基もしくはフェニル基が好ましい。
上記式(10)においてr’は好ましく0〜75の整数であり、さらに好ましくは0〜50の整数であり、s’は好ましくは0〜200の整数であり、さらに好ましくは0〜100の整数であり、t’は好ましくは0〜100の整数であり、さらに好ましくは0〜50の整数であり、u’は好ましくは0〜100の整数であり、さらに好ましくは0〜50の整数である。r’、s’、t’、u’は、好ましくは2≦r’+s’+t’+u’≦400の範囲であり、さらに好ましくは2≦r’+s’+t’+u’≦200の範囲である。中でも、1≦t’+u’≦400であり、好ましくは1≦t’+u’≦200であり、より好ましくは1≦t’+u’≦100である網目状ポリシロキサンレジンが好ましい。また、t’及びu’が共に0であり、r’が2である直鎖状ポリシロキサンも好ましい。この場合、s’は1〜300の整数であり、好ましくは1〜200の整数であり、さらに好ましくは1〜100の整数である。
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ヒドロシリル基を有する有機ケイ素化合物(例えば、シラン、シロキサン、シラザン)と他のシランまたはシロキサンとを共縮合させて得ることができる。ヒドロシリル基含有シランとしては、好ましくは、ジメチルクロロシラン、メチルジクロロシラン、トリクロロシラン、モノクロロシラン、メチルフェニルクロロシランおよびこれらのアルコキシ体やシラノール体が挙げられる。シロキサンとしては、好ましくは、上記ヒドロシリル基含有シラン単位を含んでいるダイマー、オリゴマー、ポリマーが挙げられる。
上記ヒドロシリル基含有有機ケイ素化合物と共縮合されるシラン及びシロキサンは特に限定されるものでないが、ハロゲンや酸素、窒素、硫黄原子を含む炭化水素基を有するシランを好適に用いることができる。例えば、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、ジフェニルメチルクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、トリエチルクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、エチルトリクロロシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシランおよびこれらのアルコキシ体やシラノール体、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが使用できる。また、シロキサンとして、これらのオリゴマーやポリマーも好適に用いることができる。共縮合は従来公知の方法に従えばよい。
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは好ましくはR7で示される基の少なくとも1が芳香族炭化水素基であるのがよい。特には、(E)成分は、ケイ素原子に結合する1価芳香族炭化水素基を、ケイ素原子に結合する全置換基の合計個数のうち3%以上90%以下で有することが好ましく、さらに好ましくは5%以上である。該個数の上限は80%以下であることがさらに好ましい。芳香族炭化水素基を好ましくは上記範囲内となる量で有することにより、(E)成分が高屈折率及び低ガス透過性を有し、且つ、その他のシロキサン成分と良好に相溶することができる。これにより組成物は透明性に優れた硬化物を与えることができ、半導体素子の封止の為に好適に用いることができる。
(E)成分の添加量は、(A)成分、又は(A)成分及び(D)成分中のアルケニル基の合計個数に対して、(B)成分及び(E)成分中のヒドロシリル基の個数の比が0.4〜4となる量、好ましくは0.6〜3となる量、更に好ましくは0.8〜2となる量であるのがよい。上記下限値未満ではSiH基が不足して硬化不良となるため好ましくなく、上記上限値を超えると残存SiH基による脱水素などの副反応が生じやすくなるので好ましくない。さらに(B)成分および(E)成分の合計質量に対する(E)成分の質量が5〜95質量%であるのがよく、好ましくは10〜90質量%であり、さらに好ましくは20〜80質量%となる量であるのがよい。
本発明のシリコーン組成物は、上述した(A)〜(E)成分以外に、必要に応じて、蛍光体、無機充填材、接着助剤、及び硬化抑制剤等を含有してもよい。以下、各成分について説明する。
[蛍光体]
蛍光体は、特に制限されるものでなく、従来公知の蛍光体を使用すればよい。例えば、半導体素子、特に窒化物系半導体を発光層とする半導体発光ダイオードからの光を吸収し、異なる波長の光に波長変換するものであることが好ましい。このような蛍光体としては、例えば、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体・酸窒化物系蛍光体、Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に賦活されるアルカリ土類金属ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類金属ケイ酸塩蛍光体、アルカリ土類金属硫化物蛍光体、アルカリ土類金属チオガレート蛍光体、アルカリ土類金属窒化ケイ素蛍光体、ゲルマン酸塩蛍光体、又は、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩蛍光体、希土類ケイ酸塩蛍光体又はEu等のランタノイド系元素で主に賦活される有機及び有機錯体蛍光体、Ca−Al−Si−O−N系オキシ窒化物ガラス蛍光体等から選ばれる1種以上であることが好ましい。
Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体としては、M2Si5N8:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種である)が挙げられる。また、MSi7N10:Eu、M1.8Si5O0.2N8:Eu、及びM0.9Si7O0.1N10:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種である)などが挙げられる。
Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される酸窒化物系蛍光体としては、MSi2O2N2:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種である)が挙げられる。
Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に賦活されるアルカリ土類金属ハロゲンアパタイト蛍光体としては、M5(PO4)3X:R(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種である。Xは、F、Cl、Br、Iから選ばれる少なくとも1種である。Rは、Eu、Mn、Eu及びMnのいずれか1以上である)が挙げられる。
アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体としては、M2B5O9X:R(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種である。Xは、F、Cl、Br、Iから選ばれる少なくとも1種である。Rは、Eu、Mn、Eu及びMnのいずれか1以上である)が挙げられる。
アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体としては、SrAl2O4:R、Sr4Al14O25:R、CaAl2O4:R、BaMg2Al16O27:R、BaMg2Al16O12:R、及びBaMgAl10O17:R(Rは、Eu、Mn、Eu及びMnのいずれか1以上である)が挙げられる。
アルカリ土類金属硫化物蛍光体としては、La2O2S:Eu、Y2O2S:Eu、及びGd2O2S:Euなどが挙げられる。
Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩蛍光体としては、Y3Al5O12:Ce、(Y0.8Gd0.2)3Al5O12:Ce、Y3(Al0.8Ga0.2)5O12:Ce、及び(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12の組成式で表されるYAG系蛍光体が挙げられる。また、Yの一部若しくは全部をTb、Lu等で置換したTb3Al5O12:Ce、Lu3Al5O12:Ceなどもある。
その他の蛍光体には、ZnS:Eu、Zn2GeO4:Mn、MGa2S4:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種である。Xは、F、Cl、Br、Iから選ばれる少なくとも1種である)などが挙げられる。
上記蛍光体は、所望に応じてEuに代えて、又は、Euに加えてTb、Cu、Ag、Au、Cr、Nd、Dy、Co、Ni、Tiから選択される1種以上を含有させることができる。
Ca−Al−Si−O−N系オキシ窒化物ガラス蛍光体とは、モル%で、CaCO3をCaOに換算して20〜50モル%、Al2O3を0〜30モル%、SiOを25〜60モル%、AlNを5〜50モル%、希土類酸化物または遷移金属酸化物を0.1〜20モル%とし、5成分の合計が100モル%となるオキシ窒化物ガラスを母体材料とした蛍光体である。尚、オキシ窒化物ガラスを母体材料とした蛍光体では、窒素含有量が15wt%以下であることが好ましく、希土類酸化物イオンの他に増感剤となる他の希土類元素イオンを希土類酸化物として蛍光ガラス中に0.1〜10モル%の範囲の含有量で共賦活剤として含むことが好ましい。
また、上記蛍光体以外の蛍光体であって、同様の性能、効果を有する蛍光体を使用することもできる。
蛍光体の配合量は、蛍光体以外の成分、例えば(A)〜(C)成分100質量部に対して、0.1〜2,000質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜100質量部である。本発明の硬化物を蛍光体含有波長変換フィルムとする場合は、蛍光体の含有量を10〜2,000質量部とするのが好ましい。また、蛍光体は、平均粒径10nm以上を有することが好ましく、より好ましくは10nm〜10μm、更に好ましくは10nm〜1μmを有するのがよい。上記平均粒径は、シーラスレーザー測定装置などのレーザー光回折法による粒度分布測定で測定される。
[無機充填材]
無機充填材としては、例えば、シリカ、ヒュームドシリカ、ヒュームド二酸化チタン、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、酸化第二鉄、及び酸化亜鉛等を挙げることができる。これらは、1種単独でまたは2種以上を併せて使用することができる。無機充填材の配合量は特に制限されないが、(A)〜(C)成分の合計100質量部あたり20質量部以下、好ましくは0.1〜10質量部の範囲で適宜配合すればよい。
[接着助剤]
本発明のシリコーン組成物は、接着性を付与するため、必要に応じて接着助剤を含有してよい。接着助剤としては、例えば、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子、アルケニル基、アルコキシ基、エポキシ基から選ばれる官能性基を少なくとも2種、好ましくは3種有するオルガノシロキサンオリゴマーが挙げられる。該オルガノシロキサンオリゴマーは、ケイ素原子数4〜50個であることが好ましく、より好ましくは4〜20個である。また、接着助剤として、下記一般式(11)で示されるオルガノオキシシリル変性イソシアヌレート化合物、及びその加水分解縮合物(オルガノシロキサン変性イソシアヌレート化合物)を使用することができる。
上記式(11)中、Rは互いに独立に、下記(12)で示される有機基、又は酸素原子を有してよい脂肪族不飽和炭化水素基である。但し、Rの少なくとも1個は下記(12)で示される基である。
R
’は水素原子又は炭素数1〜6の一価炭化水素基であり、nは1〜6の整数、好ましくは1〜4の整数である。脂肪族不飽和炭化水素基としては、好ましくは炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜6の、直鎖状又は分岐を有するアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基、及び2−メチルプロペニル基、又は(メタ)アクリル基等が挙げられる。
接着助剤の配合量は、(A)〜(C)成分の合計100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、より好ましくは0.1〜8質量部、特に好ましくは0.2〜5質量部である。配合量が上記上限値以下であれば硬化物硬度が高いものとなり、表面タック性も抑えられる。
[硬化抑制剤]
本発明のシリコーン組成物は、反応性を制御して貯蔵安定性を高めるために、硬化抑制剤を含んで良い。硬化抑制剤としては、トリアリルイソシアヌレート、アルキルマレエート、アセチレンアルコール類、及びそのシラン変性物及びシロキサン変性物、ハイドロパーオキサイド、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる化合物が挙げられる。硬化抑制剤の配合量は、(A)〜(C)成分の合計100質量部あたり、0.001〜1.0質量部が好ましく、より好ましくは0.005〜0.5質量部である。
[その他の添加剤]
本発明のシリコーン組成物には、上記成分のほかに、その他の添加剤を配合することができる。その他の添加剤としては、例えば、老化防止剤、ラジカル禁止剤、難燃剤、界面活性剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤、有機溶剤等が挙げられる。これらの任意成分は、一種を単独で用いても二種以上を併用してもよい。
本発明のシリコーン組成物の最も単純な実施形態は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分からなる組成物である。または(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分からなる組成物、及び(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、及び(E)成分からなる組成物である。また、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分、並びに蛍光体を含む組成物も好ましい。特には、高い透明性を有する硬化物を得るために、シリカ充填材等の無機充填材を含有しないのがよい。該無機充填材の例は上述の通りである。
本発明のシリコーン組成物の調製方法は特に制限されるものでなく、従来公知の方法に従えばよく、上記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分、任意で(D)成分、(E)成分、及びその他の任意成分を任意の方法により混合して調製すればよい。例えば、市販の攪拌機(THINKY CONDITIONING MIXER((株)シンキー製)等)に入れて、1〜5分間程度、均一に混合することによって調製することができる。
本発明のシリコーン組成物を硬化する方法は特に制限されるものでなく従来公知の方法に従えばよい。例えば、60〜180℃、1〜12時間程度で硬化することができる。特には、60〜150℃でステップキュアによって硬化させることが好ましい。ステップキュアでは、以下の2段階を経ることがより好ましい。まず、シリコーン組成物を60〜100℃の温度で0.5〜2時間加熱し、十分に脱泡させる。次いで、シリコーン組成物を120〜180℃の温度で1〜10時間加熱硬化させる。これらの段階を経ることにより、硬化物が厚い場合であっても十分に硬化し、気泡の発生がなく、無色透明を有することができる。本発明において無色透明の硬化物とは、1mm厚に対する450nmにおける光透過率が80%以上、好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上であるものを意味する。
本発明のシリコーン組成物は高い光透過性を有する硬化物を与える。従って、本発明のシリコーン組成物は、LED素子封止用、特に青色LEDや紫外LEDの素子封止用として有用である。本発明のシリコーン組成物でLED素子等を封止する方法は従来公知の方法に従えばよい。例えば、ディスペンス法、及びコンプレッションモールド法などが使用できる。
さらに本発明のシリコーン組成物は、優れた耐クラック性、耐熱性、耐光性、及び透明性等を有する硬化物を与えるため、ディスプレイ材料、光記録媒体材料、光学機器材料、光部品材料、光ファイバー材料、光・電子機能有機材料、及び半導体集積回路周辺材料等の用途にも有用である。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
下記実施例に示した重量平均分子量(Mw)はポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した値である。以下に測定条件を示す。
[GPC測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/min
カラム:TSK Guardcolumn SuperH−L
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL (試料濃度:0.5wt%−テトラヒドロフラン溶液)
検出器:示差屈折率計(RI)
下記実施例に示したVi価(mol/100g)およびSiH価(mol/100g)は、化合物の400MHzの1H−NMRスペクトルを測定し、ジメチルスルホキシドを内部標準として得られた水素原子の積分値から計算したものである。
また、1H−NMR測定はULTRASHIELDTM400PLUS(BRUKER社製)を使用して行い、29Si−NMR測定はRESONANCE500(JEOL社製)を使用して行った。
[合成例1]分岐状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A−1)の合成
1,1−ジフェニル−1,3−ジメチル−3,3−ジメトキシジシロキサン63.7g(0.2mol)、ポリメチルフェニルシロキサン−α,ω−ジオール(Mw=537.43)1198.5g(2.23mol)およびジメチルビニルメトキシシラン48.82g(0.42mol)を攪拌し、60℃に調節した。その後、Sr(OH)
2・8H
2Oを3.15g加え、60℃で3時間反応を行った。得られた生成物から、濾過により触媒を除去し、メタノールと水を減圧留去することで、オイル状であり下記式で表される分岐状オルガノポリシロキサンを得た。Mw=5,729、Vi価=0.038mol/100gであった。
29Si−NMRスペクトルから、下記式においてn=平均37、m=平均1.1であることがわかった。
[合成例2]分岐状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A−2)の合成
1,1,3,3−テトラフェニル−1,5−ジメチル−5,5−ジメトキシトリシロキサン524.1g(1mol)、ポリメチルフェニルシロキサン−α,ω−ジオール(Mw=537.43)1381.2g(2.57mol)、及びジメチルビニルメトキシシラン55.79g(0.48mol)を混合し、攪拌しながら80℃に調節した。その後、Sr(OH)
2・8H
2Oを12g加え、発生するメタノールを留去しながら80℃で12時間反応を行った。得られた生成物から、濾過により触媒を除去し、メタノールと水を減圧留去することで、オイル状であり下記式で表される分岐状オルガノポリシロキサンを得た。Mw=8,902、Vi価=0.023mol/100gであった。
29Si−NMRから、下記式においてn=平均46、m=平均4.9であることがわかった。
[合成例3]分岐状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A−3)の合成
1,1−ジフェニル−1,3−ジメチル−3,3−ジメトキシジシロキサン955.5g(3mol)、及びジメチルビニルメトキシシラン69.7g(0.6mol)に水142.6gを加え、攪拌しながらSr(OH)
2・8H
2Oを12g加えた。その後、発生するメタノールを留去しながら80℃で12時間反応を行った。得られた生成物から水とメタノールを留去し、濾過により触媒を除去することで、オイル状であり下記式で表される分岐状オルガノポリシロキサンを得た。Mw=3,816、Vi価=0.054mol/100gであった。
29Si−NMRから、下記式においてm=平均13であることがわかった。
[合成例4]分岐状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A−4)の合成
1,1−ジフェニル−1,3−ジメチル−3,3−ジメトキシジシロキサン127.4g(0.4mol)、ポリジメチルシロキサン−α,ω−ジオール(Mw=1498)749.0g(0.5mol)、及びジメチルビニルメトキシシラン27.90g(0.24mol)を混合し、攪拌しながら80℃に調節した。その後、Sr(OH)
2・8H
2Oを12g加え、発生するメタノールを留去しながら80℃で12時間反応を行った。得られた生成物から、濾過により触媒を除去し、メタノールと水を減圧留去することで、オイル状であり下記式で表される分岐状オルガノポリシロキサンを得た。Mw=8,634、Vi価=0.024mol/100gであった。
29Si−NMRから、下記式においてn=平均98、m=平均4であることがわかった。
[合成例5]分岐状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A−5)の合成
1,1,1,3−テトラメチル−3,3−ジメトキシジシロキサン 194.4g(1mol)、ポリジメチルシロキサン−α,ω−ジオール(Mw=1498)749.0g(0.5mol)、及びジメチルビニルメトキシシラン13.95g(0.12mol)を混合し、攪拌しながら80℃に調節した。その後、Sr(OH)
2・8H
2Oを12g加え、発生するメタノールを留去しながら80℃で12時間反応を行った。得られた生成物から、濾過により触媒を除去し、メタノールと水を減圧留去することで、オイル状であり下記式で表される分岐状オルガノポリシロキサンを得た。Mw=16,406、Vi価=0.011mol/100gであった。
29Si−NMRから、下記式においてn=平均195、m=平均22であることがわかった。
[合成例6]分岐状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A−6)の合成
1,1−ジフェニル−1,3−ジメチル−3,3−ジメトキシジシロキサン127.4g(0.4mol)、ポリジメチルシロキサン−α,ω−ジオール(Mw=1498)749.0g(0.5mol)、ジメトキシメチルビニルシラン52.89g(0.4mol)、及びジメチルビニルメトキシシラン27.90g(0.24mol)を混合し、攪拌しながら80℃に調節した。その後、Sr(OH)
2・8H
2Oを12g加え、発生するメタノールを留去しながら80℃で12時間反応を行った。得られた生成物から、濾過により触媒を除去し、メタノールと水を減圧留去することで、オイル状であり下記式で表される分岐状オルガノポリシロキサンを得た。Mw=8,854、Vi価=0.068mol/100gであった。
29Si−NMRから下記式においてn=平均98、m=平均4、及びk=平均4であることがわかった。
[比較合成例1]比較例用分岐状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A’−1)の合成
オクタメチルシクロテトラシロキサン1483g(5mol)と1,1−ジビニルテトラメチルジシロキサン18.6g(0.1mol)、トリメトキシシラン272.5g(2mol)、ヘキサメチルジシロキサン8.1g(0.05mol)、水酸化カリウム8.9g、及び水120gを加え、80℃で8時間、発生するメタノールを留去しながら反応を行った。次いで、140℃で水を留去しながら12時間反応を行った後、80℃まで冷却し、酢酸10.1gで中和した。その後、水洗と減圧留去を行うことでオイル状であり下記式で表される分岐状オルガノポリシロキサンを得た。Mw=16,701、Vi価=0.011mol/100gであった。
29Si−NMRから、下記式においてn及びn’は各々平均100であり、m=平均20であることがわかった。
上記式において、Rは−CH
3又は−CH=CH
2であり、平均して少なくとも2つのRは−CH=CH
2である。
[合成例6]分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B−1)の合成
1,1−ジフェニル−1,3−ジメチル−3,3−ジメトキシジシロキサン318.5g(1.0mol)とジメチルクロロシラン283.8g(3.0mol)を混合し、10℃に調節した。その後、撹拌しながら水108gを滴下し、8時間反応を行った。得られた生成物にトルエン500gを加えて水洗し、140℃で減圧留去することによって下記式で表される、分岐状オルガノポリシロキサンを得た。Mw=531であり、SiH価=0.50mol/100gであった。
29Si−NMRスペクトルから下記式においてm=平均1であることがわかった。
[合成例7]分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B−2)の合成
1,1,3,3−テトラフェニル−1,5−ジメチル−5,5−ジメトキシトリシロキサン524.1g(1mol)とジメチルクロロシラン283.8g(3.0mol)を混合し、10℃に調節した。その後、撹拌しながら水108gを滴下し、8時間反応を行った。得られた生成物にトルエン800gを加えて水洗し、140℃で減圧留去することによって下記式で表される分岐状オルガノポリシロキサンを得た。Mw=732であり、SiH価=0.33mol/100gであった。
29Si−NMRスペクトルから下記式においてm=平均1であることがわかった。
[合成例8]分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B−3)の合成
1,1−ジフェニル−1,3−ジメチル−3,3−ジメトキシジシロキサン318.5g(1.0mol)、ポリメチルフェニルシロキサン−α,ω−ジオール(Mw=537.43)1074.8g(2.0mol)を攪拌し、60℃に調節した。その後、Sr(OH)
2・8H
2Oを2.4g加え、1時間反応を行った。酢酸1.5gを加えて中和し、10℃に調節した後、ジメチルクロロシラン283.8g(3.0mol)を加え、続いて水120gを滴下し、8時間反応を行った。得られた生成物にトルエン2500gを加えて水洗し、140℃で減圧留去することによって下記式で表される分岐状オルガノポリシロキサンを得た。Mw=1574であり、SiH価=0.14mol/100gであった。
29Si−NMRスペクトルから下記式においてn=平均7、m=平均1.2であることがわかった。
[合成例9]分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B−4)の合成
1,1−ジフェニル−1−ジメチル−3,3−ジメトキシジシロキサン121.8g(0.4mol)とポリジメチルシロキサン−α,ω−ジオール(Mw=1498)749.0g(0.5mol)を混合し、攪拌しながら80℃に調節した。その後、Mg(OH)
2・8H
2Oを30g加え、発生するメタノールを留去しながら80℃で8時間反応を行った。酢酸34gを加えて中和し、10℃に調節した後、ジメチルクロロシラン23.7g(0.25mol)を加え、続いて水22gを滴下し、8時間反応を行った。得られた生成物にトルエン1000gを加えて水洗し、140℃で減圧留去することによって下記式で表される分岐状オルガノポリシロキサンを得た。Mw=9159、SiH価=0.069mol/100gであった。
29Si−NMRスペクトルから下記式においてn=平均104であり、m=平均4.3であることがわかった。
[合成例10]分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B−5)の合成
1,1,1,3−テトラメチル−3,3−ジメトキシジシロキサン 194.4g(1mol)とポリジメチルシロキサン−α,ω−ジオール(Mw=1498)749.0g(0.5mol)を混合し、攪拌しながら80℃に調節した。その後、Sr(OH)
2・8H
2Oを12g加え、発生するメタノールを留去しながら80℃で8時間反応を行った。酢酸7.0gを加えて中和し、10℃に調節した後、ジメチルクロロシラン11.4g(0.12mol)を加え、続いて水5.2gを滴下し、24時間反応を行った。得られた生成物にトルエン1000gを加えて水洗し、140℃で減圧留去することによって下記式で表される分岐状オルガノポリシロキサンを得た。Mw=19,568であり、SiH価=0.010mol/100gであった。
29Si−NMRスペクトルからn=平均220であり、m=平均21であることがわかった。
[比較合成例2]比較用分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B’−1)の合成
ポリジメチルシロキサン−α,ω−ジオール(Mw=1498)749.0g(0.5mol)とジメチルクロロシラン11.4(0.12mol)、トリメチルクロロシラン108.6g(1mol)、メチルトリクロロシラン149.5g(1mol)を混合し、攪拌しながら10℃に調節し、水88gと98%濃硫酸5.1gの水溶液を滴下した。その後、12時間反応を行い、トルエン1000gを加えて水洗し、140℃で減圧留去することによって下記式で表される分岐状オルガノポリシロキサンを得た。Mw=18,591、SiH価=0.010mol/100gであった。
29Si−NMRスペクトルから下記式においてn及びn’は各々平均104であり、m=平均19であることがわかった。
上記式において、RはCH
3またはHであり、平均して少なくとも2つのRは水素原子である。
実施例及び比較例にて使用したその他の成分は以下の通りである。
(B−6)下記式で表される、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(信越化学工業株式会社製、SiH価=0.90mol/100g)
(C)塩化白金酸のジビニルシロキサン錯体(信越化学工業株式会社製)
(D−1)下記式で表されるフェニル系シリコーンレジン(信越化学工業株式会社製、Vi価=0.147mol/100g、重量平均分子量はMw=1,563)
n単位数とm単位数の比率:n=0.22、m=0.78
(D−2)下記式で表されるメチル系シリコーンレジン(信越化学工業株式会社製、Vi価=0.091mol/100g、重量平均分子量はMw=5,211)
n単位数、m単位数、及びj単位数の比率:n=0.06、m=0.36、j=0.58
(E−1)下記式で表されるジメチルシリコーンレジン(信越化学工業株式会社製、SiH価=0.96mol/100g、重量平均分子量はMw=2,631)
n単位数とm単位数の比率:n=0.6、m=0.4
比較試験用のオルガノポリシロキサンとして以下のもの使用した。
(A’−2)下記式で表されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(信越化学工業株式会社製、Vi価=0.038mol/100g)
(B’−2)下記式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(信越化学工業株式会社製、SiH価=0.60mol/100g)
[実施例1〜7および比較例1〜2]
触媒以外の上記各成分を表1に記載の配合量で混合して、(C)触媒を組成物全体の合計質量に対して白金量として5ppmとなる量加えてさらに混合し、シリコーン組成物を調製した。実施例1〜7及び比較例1〜2で調製したシリコーン組成物について以下に示す試験を行った。尚、表1に記載のH/Viの値は、組成物全体におけるビニル基の合計個数に対するヒドロシリル基の合計個数の比である。
[(1)シリコーン組成物の粘度]
JIS Z 8803:2011に準じ、B型粘度計を用いて23℃でのシリコーン組成物の粘度を測定した。結果を表2及び3に記載する。
[(2)硬化物の硬さ]
50mm径×10mm厚のアルミシャーレに調製したシリコーン組成物を流し込み、60℃×1時間、100℃×1時間、次いで150℃×4時間の順でステップキュアして、硬化物を得た。該硬化物の硬さ(デュロメータTypeAもしくはTypeD)をJIS K 6253−3:2012に準拠して測定した。結果を表2及び3に記載する。
[(3)硬化物の光透過率]
50mm×20mm×1mm厚のスライドガラス2枚の間に凹型の1mm厚テフロン(登録商標)スペーサーを挟み、それらを固定した後、シリコーン組成物を流し込み、60℃×1時間、100℃×1時間、次いで150℃×4時間の順でステップキュアしてサンプルを作製した。得られたサンプルの450nmにおける光透過率を分光光度計 U−4100(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)にて測定した。結果を表2及び3に記載する。
[(4)硬化物の引張強さおよび切断時伸び]
150mm×200mm×2mm厚の凹型テフロン(登録商標)金型にシリコーン組成物を流し込み、60℃×1時間、100℃×1時間、次いで150℃×4時間の順でステップキュアしてサンプルを作製した。JIS K 6251:2010に準拠して、卓上試験機EZ TEST(機器名:EZ−L、株式会社島津製作所製)を用いて、試験速度500mm/min、つかみ具間距離80mm、及び標点間距離40mmの条件でサンプルの引張強さと切断時伸びを測定した。結果を表2及び3に記載する。
[(5)硬化物のガラス転移温度]
上記(4)で作製した硬化物サンプルの貯蔵弾性率(MPa)を、動的粘弾性測定装置(機器名:DMA Q800、TAインスツルメント株式会社製)を用い、−140℃〜150℃の範囲で測定し、得られた貯蔵弾性率の値から導き出されるTanδの値をプロットしたグラフから得られるピークトップの温度をガラス転移温度:Tgとした。測定条件は、20mm長×5mm幅×1mm厚のサンプル、昇温速度5℃/min、マルチ周波数モード、引っ張りモード、振幅15μmで行った。結果を表2及び3に記載する。
[(6)温度サイクル試験]
Tiger3528パッケージ(信越化学株式会社製)にシリコーン組成物をディスペンスし、60℃×1時間、100℃×1時間、次いで150℃×4時間の順でステップキュアし、硬化物でパッケージを封止した試験体を製造した。該試験体の20個について、−50℃〜140℃、1,000回のサーマルサイクル試験(TCT)を行い、封止物にクラックが生じた試験体の数を計測した。結果を表2及び3に記載する。
表3に示されるように、分岐鎖に長いシロキサン鎖を有する分岐状オルガノポリシロキサンを含むシリコーン組成物、及び分岐鎖を有さないオルガノポリシロキサンを含むシリコーン組成物から得られる硬化物は、TCT試験においてクラックを生じ、低温及び高温耐性に劣る。これに対し、表2に示されるように、本発明の分岐状オルガノポリシロキサンを含有するシリコーン組成物は、TCT試験においてクラックを生じず低温及び高温耐性に優れる硬化物を与える。また、実施例1と比較例2の対比、実施例6と比較例1の対比からわかるように、同程度の鎖長を有するオルガノポリシロキサンでは、短い分岐鎖を有する本発明のオルガノポリシロキサンを含む組成物は、直鎖または長い分岐鎖を有するオルガノポリシロキサンを含む組成物に比べてガラス転移温度が低くなる。尚、実施例6、7、及び比較例1は、実施例1〜5及び比較例2に比べてガラス転移温度が著しく低い。これは(A)成分、(B)成分、及び(D)成分、(E)成分の1以上または全てが芳香族基を有さないためである。
[水蒸気透過率]
実施例1、実施例6、及び比較例2のシリコーン組成物を150mm×200mm×2mm厚の凹型テフロン(登録商標)金型にそれぞれ流し込み、60℃×1時間、100℃×1時間、150℃×4時間の順でステップキュアし、各々の試験サンプルを作製した。得られたサンプルをJIS K 7129:2008に準拠して、Lyssy法(装置名L80−5000、Lyssy社製)により水蒸気透過率を測定した。各硬化物の水蒸気透過率は以下の通りであった。
実施例1:19g・m2/day
実施例6:57g・m2/day
比較例2:17g・m2/day
実施例1及び比較例2の組成物に含まれる(A)成分及び(B)成分は共に芳香族基を有する。一方、実施例6の組成物に含まれる(A)成分及び(B)成分はいずれも芳香族基を有さない。上記結果に示す通り、より低いガス透過性を有する硬化物を得るためには(A)成分及び(B)成分が芳香族基を有する方が好ましい。