JP6306433B2 - 切削インサート、切削工具および切削加工物の製造方法 - Google Patents

切削インサート、切削工具および切削加工物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、切削インサート、切削工具および切削加工物の製造方法に関する。
金属などの被削材の切削加工に用いられる切削インサート(以下、単にインサートともいう)として、特許文献1に記載の切削インサートが知られている。特許文献1に記載のインサートは菱形平板状であって、上側表面の切削コーナーに切れ刃が形成されている。上側表面には、切削コーナーを囲み、切削コーナーから離れるにしたがって上方に傾斜する輪郭面を有する切り屑フォーマーが形成されている。また、下側表面にも、上側表面と同様に、切れ刃および切り屑フォーマーが形成されている。
特許文献1に記載のインサートにおいては、上側表面に形成された切れ刃および下側表面に形成された切れ刃のいずれか一方が使用される。すなわち、上側表面に形成された切れ刃を使用する際には、下側表面における切り屑フォーマーが工具ホルダーへの接触面となる。また、切り屑フォーマーが切削コーナーを囲んでいる。そのため、上側表面における切削コーナーの主切れ刃の下方に下側表面における切り屑フォーマーの一部が位置する。切削加工時においては、主切れ刃から下方に向かって主分力が加わるが、上記の通り支持面として機能する切り屑フォーマーが位置していることから、工具ホルダーによってインサートを安定して保持することが可能になる。
特開2000−254808号公報
しかしながら、切り屑フォーマーが切削コーナーを囲むように位置していることから、上面視した場合における切屑コーナーの面積を広く確保することが難しい。そのため、切屑が切屑コーナーに詰まって外部に排出することが困難になる可能性がある。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、インサートを安定して保持することが可能であるとともに、切屑を安定して排出できる切削インサートを提供するものである。
本発明の一態様に基づく切削インサートは、多角形状であって、角部、ならびに該角部に隣接する第1辺および第2辺を具備する上面と、該上面に対応する多角形状の下面と、前記上面と前記下面との間に位置する側面と、前記上面と前記側面とが交差する稜線の一部に位置する上切刃と、前記下面と前記側面とが交差する稜線の一部に位置する下切刃とを備えている。
前記上切刃は、前記上面の前記角部に位置するコーナ切刃、前記第1辺における前記コーナ切刃に隣接する部分に位置する第1切刃、および前記第2辺における前記コーナ切刃に隣接する部分に位置する第2切刃を有し、前記上面は、前記第1辺における前記第1切刃よりも前記コーナ切刃から離れた部分に沿って設けられた平坦な第1ランド面、前記第2辺における前記第2切刃よりも前記コーナ切刃から離れた部分に沿って設けられた平坦な第2ランド面、ならびに前記第1ランド面および前記第2ランド面から離れて前記第1ランド面および前記第2ランド面よりも内側に位置する平坦な載置面を有している。そして、上面視において、前記第2切刃よりも前記第1切刃が長く、前記載置面が、前記第1ランド面よりも前記第2ランド面に近接しており、上面視において、前記載置面は、前記コーナ切刃に最も近接する部分が、前記コーナ切刃が位置する角部の角度の二等分線よりも前記第1切刃の側の領域に位置している。
上記態様の切削インサートは、インサートをホルダに保持する際に接触する平坦な座面として、第1ランド面、第2ランド面および載置面を有している。このとき、載置面が第1ランド面および第2ランド面から離れている。そのため、上切刃を用いて切削加工を行なう際には、切屑を排出するためのスペースが第1ランド面および第2ランド面と載置面との間に確保される。
また、載置面が単に第1ランド面および第2ランド面から離れて位置しているのではなく、相対的に大きな負荷が加わり易い第1ランド面よりも相対的に負荷が小さい第2ランド面に近接している。そのため、下切刃を用いて切削加工を行なう際には、相対的に負荷の大きい主切刃として機能する領域の下方に載置面が偏って位置することになる。したがって、この載置面によって安定してインサートをホルダに保持できる。
本発明の第1の実施形態の切削インサートを示す斜視図である。 図1に示す切削インサートにおける領域A1を拡大した斜視図である。 図1に示す切削インサートの上面図である。 図3に示す切削インサートにおける領域A2を拡大した上面図である。 図1に示す切削インサートの下面図である。 図3に示す切削インサートのA3方向からの側面図である。 図3に示す切削インサートのA4方向からの側面図である。 図3に示す切削インサートの上面透視図である。 図5に示す切削インサートの下面透視図である。 図3に示す切削インサートのB1−B1断面の断面図である。 図3に示す切削インサートのB2−B2断面の断面図である。 本発明の一実施形態の切削工具を示す斜視図である。 図12に示す切削工具における先端側を拡大した斜視図である。 本発明の一実施形態の切削加工物の製造方法の一工程を示す概略図である。 本発明の一実施形態の切削加工物の製造方法の一工程を示す概略図である。 本発明の一実施形態の切削加工物の製造方法の一工程を示す概略図である。
<切削インサート>
以下、一実施形態の切削インサート1について、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、実施形態の構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、本発明の切削インサートは、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
本実施形態の切削インサート1(以下、単にインサート1ともいう)は、図1〜11に示すように、上面3、下面5、側面7、上切刃9、下切刃11および貫通孔13を有している。インサート1の材質としては、例えば、超硬合金あるいはサーメットなどが挙げら
れる。超硬合金の組成としては、例えば、炭化タングステン(WC)にコバルト(Co)の粉末を加えて焼結して生成されるWC−Co、WC−Coに炭化チタン(TiC)を添加したWC−TiC−Co、あるいはWC−TiC−Coに炭化タンタル(TaC)を添加したWC−TiC−TaC−Coがある。また、サーメットは、セラミック成分に金属を複合させた焼結複合材料であり、具体的には、炭化チタン(TiC)、または窒化チタン(TiN)を主成分としたチタン化合物が挙げられる。
インサート1の表面は、化学蒸着(CVD)法または物理蒸着(PVD)法を用いて被膜でコーティングされていてもよい。被膜の組成としては、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(TiN)、炭窒化チタン(TiCN)またはアルミナ(Al)などが挙げられる。
上面3は多角形状であり、図3に示すように、本実施形態においては菱形の形状となっている。菱形の形状である上面3は、第1辺15、第2辺17および鋭角の第1角部19を具備している。第1角部19は第1辺15に隣接している。第2辺17は、第1角部19を介して第1辺15に隣接している。言い換えれば、上面3は、鋭角の第1角部19、ならびに第1角部19を間に挟むように菱形の辺部に位置する第1辺15および第2辺17を具備している。ここで、多角形状とは、厳密に多角形の形状であることを意味するものではない。例えば、本実施形態での上面3における第1角部19は厳密な角となっておらず、上面視において丸みを帯びた形状となっている。
本実施形態における上面3は、上面視において鋭角である第1角部19を2つ有している。そのため、それぞれの第1角部19を間に挟むように位置する第1辺15および第2辺17を2つずつ具備している。なお、鋭角の第1角部19は1つであっても2つであってもよい。第1辺15および第2辺17は、それぞれ上面視した場合において直線形状となっている。
下面5は、上面3とは反対側に位置する面である。上切刃9を用いる場合においては、下面5はインサート1をホルダに取り付ける際にインサートポケットへの座面として機能する。本実施形態における下面5は、図5に示すように、上面3に対応する多角形状となっている。具体的には、下面5は上面3と同じ大きさの菱形の形状となっている。そのため、上面視した場合において、下面5の周縁は、上面3の周縁と重なり合っている。
上面3と同様に菱形の形状である下面5は、第3辺21、第4辺23および鋭角の第2角部25を具備している。第2角部25は第3辺21に隣接している。第4辺23は、第2角部25を介して第3辺21に隣接している。言い換えれば、下面5は、鋭角の第2角部25、ならびに第2角部25を間に挟むように菱形の辺部に位置する第3辺21および第4辺23を具備している。本実施形態での下面5における第2角部25は厳密な角となっておらず、特に図示しないが下面視において丸みを帯びた形状となっている。
なお、上面3および下面5の形状は、上記の形態に限定されない。本実施形態のインサート1においては上面3および下面5の形状が略四角形である。しかし、上面3および下面5の形状は、三角形または五角形のような多角形の形状であってもよい。また、本実施形態における上面3および下面5は菱形である。しかし、四角形の形状としては菱形に限られず、例えば、平行四辺形であってもよい。
本実施形態のインサート1は、上面3の中心から下面5の中心に向かって形成された貫通孔13を有している。貫通孔13は、インサート1を切削工具のホルダにネジ止め固定する際にネジを挿入するために設けられている。貫通孔13は、上面3の中心から下面5の中心に向かって形成されている。そのため、貫通孔13の中心軸は、上面3の中心と下
面5の中心とを結ぶインサート1の中心軸O1と一致している。以下、本実施形態のインサート1における各構成部位の上下方向の位置を評価するため、中心軸O1に対して直交し、上面3と下面5との間に位置する基準面Sを設定する。
上面3の中心とは上面3における重心を意味している。本実施形態のように上面3が菱形である場合においては、対角線の交点が上面3の中心となる。同様に、下面5の中心とは下面5における重心を意味している。本実施形態のように下面5が菱形である場合においては、対角線の交点が下面5の中心となる。
側面7は、上面3と下面5との間に位置しており、上面3および下面5に接続されている。上記の通り、下面5は上面3と同じ形状であることから、側面7は中心軸O1に対して平行となっている。
本実施形態のインサート1を上面視した場合における上面3の最大幅は6〜25mmである。また、下面5から上面3までの高さは1〜10mmである。ここで、下面5から上面3までの高さとは、上面3の上端と下面5の下端との間における中心軸O1に平行な方向での高さを意味している。
上切刃9は、上面3と側面7とが交差する稜線の一部に設けられている。下切刃11は、下面5と側面7とが交差する稜線の一部に設けられている。上切刃9および下切刃11は切削加工において被削材を切削するために用いられる。ただし、上切刃9および下切刃11は同時に切削加工に使用されることはなく、いずれか一方が使用される。
上面3と側面7とが交わる領域であって上切刃9が形成されている部分には、いわゆるホーニング加工が施されていてもよい。同様に、下切刃11が形成されている部分にも、ホーニング加工が施されていてもよい。すなわち、上面3と側面7とが交差する稜線および下面5と側面7とが交差する稜線は、それぞれ2つの面が交差することによる厳密な線形状でなくてもよい。上記の稜線が線形状であると上切刃9および下切刃11の強度が低下する。そのため、これらの領域が曲面形状となるRホーニングが施される。
本実施形態において上切刃9は、第1コーナ切刃27、第1切刃29および第2切刃31を有している。第1コーナ切刃27は、上面3の第1角部19に位置している。第1切刃29は、上面3の第1辺15における第1コーナ切刃27に隣接する部分に位置している。第2切刃31は、上面3の第2辺17における第1コーナ切刃27に隣接する部分に位置している。そのため、第1切刃29および第2切刃31は、第1コーナ切刃27を間に挟んで隣り合っている。本実施形態では、第1切刃29および第2切刃31のうち第1切刃29を主要な切刃として用いている。そのため、上面視において、第2切刃31の長さよりも第1切刃29の長さが長い。
本実施形態においては上面3が鋭角な第1角部19を2つ具備している。そのため、上切刃9は、第1コーナ切刃27、第1切刃29および第2切刃31からなる上切刃群を2つ有している。これら2つの上切刃群は、中心軸O1を基準にして180°回転対称となっている。
第1切刃29および第2切刃31は、上面3における辺部にそれぞれ位置している。そのため、本実施形態における第1切刃29および第2切刃31は、上面視した場合において、それぞれ直線形状となっている。第1コーナ切刃27は、上面3における第1角部19に位置している。第1角部19は上面視において丸みを帯びた形状となっていることから、第1コーナ切刃27は、上面視した場合において外側に凸の円弧形状となっている。
本実施形態において下切刃11は、第2コーナ切刃33、第3切刃35および第4切刃37を有している。第2コーナ切刃33は、下面5の第2角部25に位置している。第3切刃35は、下面5の第3辺21における第2コーナ切刃33に隣接する部分に位置している。第4切刃37は、下面5の第4辺23における第2コーナ切刃33に隣接する部分に位置している。そのため、第3切刃35および第4切刃37は、第2コーナ切刃33を間に挟んで隣り合っている。本実施形態では、第3切刃35および第4切刃37のうち第3切刃35を主要な切刃として用いている。そのため、上面視において、第4切刃37の長さよりも第3切刃35の長さが長い。
下切刃11における第2コーナ切刃33は、上切刃9における第1コーナ切刃27に対応する切刃である。下切刃11における第3切刃35は、上切刃9における第1切刃29に対応する切刃である。下切刃11における第4切刃37は、上切刃9における第2切刃31に対応する切刃である。下面視した場合における下面5の形状は、上面視した場合における上面3の形状と同じになっている。そのため、本実施形態における第3切刃35および第4切刃37は、上切刃9における第1切刃29および第2切刃31と同様に、下面視した場合においてそれぞれ直線形状となっている。また、第2コーナ切刃33は、第1コーナ切刃27と同様に外側に凸の円弧形状となっている。
下面5の形状が上面3の形状と同じであることから、平面透視した場合において、下切刃11における第3切刃35は、上面3における第2辺17の下方に位置している。下切刃11における第4切刃37は、上面3における第1辺15の下方に位置している。また、下切刃11における第2コーナ切刃33は、上面3における第1コーナ切刃27と重なり合っている。
本実施形態における上面3は、平坦な第1ランド面39、平坦な第2ランド面41、第1底面43および平坦な第1載置面45を有している。第1ランド面39は、第1辺15における第1切刃29よりも第1コーナ切刃27から離れた部分に沿って設けられている。第2ランド面41は、第2辺17における第2切刃31よりも第1コーナ切刃27から離れた部分に沿って設けられている。第1載置面45は、第1ランド面39および第2ランド面41よりも上面3における内側に位置している。このとき、第1載置面45は、第1ランド面39および第2ランド面41から離れて位置している。
第1底面43は、第1ランド面39および第2ランド面41と第1載置面45との間に位置しており、第1ランド面39および第2ランド面41に沿って設けられている。本実施形態においては、第1底面43は、第1ランド面39および第2ランド面41に加えて第1切刃29、第2切刃31および第1コーナ切刃27に沿っても設けられている。第1底面43は、第1ランド面39、第2ランド面41および第1載置面45よりも基準面からの高さが低い。本実施形態におけるインサート1においては、このような第1底面43を有していることによって、第1載置面45が第1ランド面39および第2ランド面41から離れて位置している。上面3における第1載置面45よりも内側には貫通孔13が位置している。
本実施形態における下面5は上面3と同じ形状となっている。そのため、下面5は、上面3における第1ランド面39、第2ランド面41、第1底面43および第1載置面45に対応する部位を有している。具体的には、上面3における第1ランド面39に対応する部位として、下面5は平坦な第3ランド面47を有している。上面3における第2ランド面41に対応する部位として、下面5は平坦な第4ランド面49を有している。上面3における第1底面43に対応する部位として、下面5は第2底面51を有している。上面3における第1載置面45に対応する部位として、下面5は第2載置面53を有している。
下面5の形状が上面3の形状と同じであることから、平面透視した場合において、下面5における第3ランド面47は、上面3における第2辺17の下方に位置している。下面5における第4ランド面49は、上面3における第1辺15の下方に位置している。また、下切刃11における第2コーナ切刃33は、上面3における第1コーナ切刃27と重なり合っている。
上面3における第1ランド面39、第2ランド面41および第1載置面45、ならびに下面5における第3ランド面47、第4ランド面49および第2載置面53は、それぞれ基準面Sに対して平行な平坦面である。これらの面は、インサート1をホルダに保持する際にホルダに接触する座面として機能する。具体的には、上切刃9を用いる場合においては、下面5における第3ランド面47、第4ランド面49および第2載置面53が座面として機能する。また、下切刃11を用いる場合においては、上面3における第1ランド面39、第2ランド面41および第1載置面45が座面として機能する。
下切刃11を用いる場合における第1ランド面39、第2ランド面41および第1載置面45に加わる負荷が過度に偏らないようにするため、第1ランド面39、第2ランド面41および第1載置面45の基準面Sからの高さは同じであることが好ましい。同様に、上切刃9を用いる場合における第3ランド面47、第4ランド面49および第2載置面53に加わる負荷が過度に偏らないようにするため、第3ランド面47、第4ランド面49および第2載置面53の基準面Sからの高さは同じであることが好ましい。
上面3における第1底面43および下面5における第2底面51は、それぞれ切屑を良好に処理するために用いられる。例えば、第1底面43における第1切刃29、第2切刃31および第1コーナ切刃27に沿った領域においては、切屑を湾曲させて適度な長さで切断させるために用いられる。また、第1底面43における第1ランド面39および第2ランド面41に沿った領域においては、切屑が上切刃9から離れる方向に流れるためのスペースとして機能する。そのため、切屑を外部に良好に排出することができる。
同様に、第2底面51における第3切刃35、第4切刃37および第2コーナ切刃33に沿った領域は、切屑を湾曲させて適度な長さで切断させるために用いられる。また、第2底面51における第3ランド面47および第4ランド面49に沿った領域は、切屑が下切刃11から離れる方向に流れるためのスペースとして機能する。そのため、切屑を外部に良好に排出することができる。
上面3は、第1切刃29、第2切刃31、第1コーナ切刃27、第1ランド面39および第2ランド面41から離れて第1底面43に近付くにしたがって基準面Sからの高さが低くなるように傾斜している傾斜面と、第1底面43から第1載置面45に近付くにしたがって基準面Sからの高さが高くなるように傾斜している傾斜面と、を有している。
同様に、下面5は、第3切刃35、第4切刃37、第2コーナ切刃33、第3ランド面47および第4ランド面49から離れて第2底面51に近付くにしたがって基準面Sからの高さが低くなるように傾斜している傾斜面と、第2底面51から第2載置面53に近付くにしたがって基準面Sからの高さが高くなるように傾斜している傾斜面とを有している。
本実施形態においては、上面3がインサート1をホルダに保持する際に接触する平坦な座面として複数の載置面を有している。これら複数の載置面のうちの一つが第1載置面45である。本実施形態における第1載置面45は、第1底面43における上面3の外縁から離れるにしたがって基準面Sからの高さが低くなるように傾斜している領域よりも上面3の内側であって、第1底面43の下端よりも上方に位置している。
また、第1載置面45は第1ランド面39と第2ランド面41との間に位置している。これにより、第1ランド面39および第2ランド面41を座面として用いる場合に、第1ランド面39および第2ランド面41に加わる負荷を良好に第1載置面45に分散させることができる。
本実施形態においては、下面5がインサート1をホルダに保持する際に接触する平坦な座面として複数の載置面を有している。これら複数の載置面のうちの一つが第2載置面53である。本実施形態における第2載置面53は、第2底面51における下面5の外縁から離れるにしたがって基準面Sからの高さが高くなるように傾斜している領域よりも下面5の内側であって、第2底面51の下端よりも下方に位置している。
また、第2載置面53は第3ランド面47と第4ランド面49との間に位置している。これにより、第3ランド面47および第4ランド面49を座面として用いる場合に、第3ランド面47および第4ランド面49に加わる負荷を良好に第2載置面53に分散させることができる。
また、本実施形態のインサート1においては、上切刃9が、第1ランド面39、第2ランド面41および第1載置面45よりも下方に位置している。下切刃11を用いて切削加工を行なう際には、第1ランド面39、第2ランド面41および第1載置面45がホルダへの座面となるが、このとき、上切刃9がホルダに接触する可能性を小さくできる。そのため、上切刃9が損傷する可能性を小さくできる。
加えて、本実施形態のインサート1においては、下切刃11が、第3ランド面47、第4ランド面49および第2載置面53よりも上方に位置している。上切刃9を用いて切削加工を行なう際には、第3ランド面47、第4ランド面49および第2載置面53がホルダへの座面となるが、このとき、下切刃11がホルダに接触する可能性を小さくできる。そのため、下切刃11が損傷する可能性を小さくできる。
本実施形態のインサート1では、第1載置面45が第1ランド面39よりも第2ランド面41に近接している。具体的には、図3に示すように、第1載置面45と第1ランド面39との間隔W1よりも第1載置面45と第2ランド面41との間隔W2が小さい。既に示したように、上切刃9における第1切刃29および第2切刃31に対応する下切刃11における第3切刃35および第4切刃37に関して、第4切刃37の長さよりも第3切刃35の長さが長い。そのため、下切刃11を用いて切削加工を行なう際には、第4切刃37よりも第3切刃35に相対的に大きな負荷が加わり易い。
しかしながら、図9に示すように、第3切刃35の下方に位置する第2ランド面41に対して上面3における第1載置面45が近接していることから、第3切刃35に加わる相対的に大きな負荷を第1載置面45で受け易い。したがって、インサート1をホルダで安定して保持できるようになる。
また、本実施形態のインサート1では、下面5における第2載置面53が第3ランド面47よりも第4ランド面49に近接している。具体的には、図5に示すように、第2載置面53と第3ランド面47との間隔W3よりも第2載置面53と第4ランド面49との間隔W4が小さい。既に示したように、上切刃9における第2切刃31の長さよりも第1切刃29の長さが長い。そのため、上切刃9を用いて切削加工を行なう際には、第2切刃31よりも第1切刃29に相対的に大きな負荷が加わり易い。
しかしながら、図8に示すように、第1切刃29の下方に位置する第4ランド面49に
対して下面5における第2載置面53が近接していることから、第1切刃29に加わる相対的に大きな負荷を第2載置面53で受け易い。したがって、下切刃11を用いて切削加工を行なう場合であっても、インサート1をホルダで安定して保持できるようになる。
さらに、本実施形態のインサート1では、上面視において、第1載置面45が第1コーナ切刃27の二等分線よりも第1切刃29の側に位置する領域において第1コーナ切刃27に近接している。下切刃11を用いて切削加工を行なう場合において、第1コーナ切刃27における第1切刃29に近接する領域には、第1コーナ切刃27における第2切刃31に近接する領域よりも大きな負荷が加わり易い。しかしながら、第1載置面45が上記の構成である場合には、第1コーナ切刃27における比較的大きな負荷が加わり易い領域に第1載置面45が近接していることから、インサート1をホルダでさらに安定して保持できる。
同様の理由から、本実施形態のインサート1では、下面視において、第2載置面53が第2コーナ切刃33の二等分線よりも第3切刃35の側に位置する領域において第2コーナ切刃33に近接している。そのため、上切刃9を用いて切削加工を行なう場合において、インサート1をホルダでさらに安定して保持できる。
さらに、本実施形態のインサート1では、上面視において、図3および4に示すように、第2辺17に直交する方向での第2ランド面41の幅が、第1辺15に直交する方向での第1ランド面39の幅よりも広い。下切刃11を用いて切削加工を行なう際には、第4切刃37よりも第3切刃35に相対的に大きな負荷が加わり易い。このとき、第3切刃35の下方に第2切刃31が位置しており、この第2切刃31に隣接する第2ランド面41の幅が相対的に大きいことから、下切刃11を用いて切削加工を行なう場合において、インサート1をホルダでさらに安定して保持できる。
同様の理由から、本実施形態のインサート1では、下面視において、図5に示すように、第4辺23に直交する方向での第4ランド面49の幅が、第3辺21に直交する方向での第3ランド面47の幅よりも広い。そのため、上切刃9を用いて切削加工を行なう場合において、インサート1をホルダでさらに安定して保持できる。
<切削工具>
次に、本発明の一実施形態の切削工具101について図面を用いて説明する。
本実施形態の切削工具101は、図12および13に示すように、先端側にインサートポケット103を有するホルダ105と、上切刃9または下切刃がホルダ105の先端から突出するようにインサートポケット103に装着された上記の切削インサート1とを備えている。本実施形態の切削工具101においては、上切刃9がホルダ105の先端から突出するようにインサート1が装着されている。
ホルダ105は、細長く伸びた棒形状をなしている。そして、ホルダ105の先端側には、インサートポケット103が1つ設けられている。インサートポケット103は、インサート1が装着される部分であり、ホルダ105の先端面に対して開口している。このとき、インサートポケット103がホルダ105の側面に対しても開口していることによって、インサート1の装着を容易に行なうことができる。具体的には、インサートポケット103は、ホルダ105の下面に対して平行な着座面と、着座面に対して傾斜する拘束側面とを有している。
インサートポケット103にはインサート1が装着される。インサート1は、上切刃9または下切刃のうち切削加工に用いられる方の切刃がホルダ105の先端側に突出するよ
うに装着される。本実施形態においては、インサート1は、固定ネジ107によって、ホルダ105に装着されている。すなわち、インサート1の貫通孔に固定ネジ107を挿入し、この固定ネジ107の先端をインサートポケット103に形成されたネジ孔に挿入してネジ部同士を螺合させることによって、インサートがホルダ105に装着されている。
ホルダ105としては、鋼、鋳鉄などを用いることができる。特に、これらの部材の中で靱性の高い鋼を用いることが好ましい。
<切削加工物の製造方法>
次に、本発明の一実施形態の切削加工物の製造方法について図面を用いて説明する。
切削加工物は、被削材201を切削加工することによって作製される。本実施形態における切削加工物の製造方法は、以下の工程を備えている。すなわち、
(1)被削材201を回転させる工程と、
(2)回転している被削材201に上記実施形態に代表される切削工具101の上切刃9または下切刃を接触させる工程と、
(3)切削工具101を被削材201から離す工程と、
を備えている。
より具体的には、まず、図14に示すように、被削材201を軸O2の周りで回転させるとともに、被削材201に切削工具101を相対的に近付ける。次に、図15に示すように、切削工具101における上切刃9を回転している被削材201に接触させて、被削材201を切削する。そして、図16に示すように、切削工具101を被削材201から相対的に遠ざける。
本実施形態においては、軸O2を固定するとともに被削材201を回転させた状態で切削工具101をX1方向に移動させることによって被削材201に近づけている。また、図15においては、回転している被削材201に切削インサート1における上切刃9を接触させることによって被削材201を切削している。また、図16においては、被削材201を回転させた状態で切削工具101をX2方向に移動させることによって遠ざけている。
なお、本実施形態の製造方法における切削加工では、それぞれの工程において、切削工具101を動かすことによって、切削工具101を被削材201に接触させる、あるいは、切削工具101を被削材201から離しているが、当然ながらこのような形態に限定されるものではない。
例えば、(1)の工程において、被削材201を切削工具101に近づけてもよい。同様に、(3)の工程において、被削材201を切削工具101から遠ざけてもよい。切削加工を継続する場合には、被削材201を回転させた状態を維持して、被削材201の異なる箇所に切削インサート1における上切刃9または下切刃を接触させる工程を繰り返せばよい。
なお、被削材201の材質の代表例としては、炭素鋼、合金鋼、ステンレス、鋳鉄、または非鉄金属などが挙げられる。
1・・・切削インサート(インサート)
3・・・上面
5・・・下面
7・・・側面
9・・・上切刃
11・・・下切刃
13・・・貫通孔
15・・・第1辺
17・・・第2辺
19・・・第1角部
21・・・第3辺
23・・・第4辺
25・・・第2角部
27・・・第1コーナ切刃
29・・・第1切刃
31・・・第2切刃
33・・・第2コーナ切刃
35・・・第3切刃
37・・・第4切刃
39・・・第1ランド面
41・・・第2ランド面
43・・・第1底面
45・・・第1載置面
47・・・第3ランド面
49・・・第4ランド面
51・・・第2底面
53・・・第2載置面
101・・・切削工具
103・・・インサートポケット
105・・・ホルダ
107・・・固定ネジ
201・・・被削材

Claims (7)

  1. 多角形状であって、角部、ならびに該角部に隣接する第1辺および第2辺を具備する上面と、該上面に対応する多角形状の下面と、前記上面と前記下面との間に位置する側面と、前記上面と前記側面とが交差する稜線の一部に位置する上切刃と、前記下面と前記側面とが交差する稜線の一部に位置する下切刃とを備えた切削インサートであって、
    前記上切刃は、前記上面の前記角部に位置するコーナ切刃、前記第1辺における前記コーナ切刃に隣接する部分に位置する第1切刃、および前記第2辺における前記コーナ切刃に隣接する部分に位置する第2切刃を有し、
    前記上面は、前記第1辺における前記第1切刃よりも前記コーナ切刃から離れた部分に沿って設けられた平坦な第1ランド面、前記第2辺における前記第2切刃よりも前記コーナ切刃から離れた部分に沿って設けられた平坦な第2ランド面、ならびに前記第1ランド面および前記第2ランド面から離れて前記第1ランド面および前記第2ランド面よりも内側に位置する平坦な載置面を有し、
    上面視において、前記第2切刃よりも前記第1切刃が長く、前記載置面が、前記第1ランド面よりも前記第2ランド面に近接しており、
    上面視において、前記載置面は、前記コーナ切刃に最も近接する部分が、前記コーナ切刃が位置する角部の角度の二等分線よりも前記第1切刃の側の領域に位置していることを特徴とする切削インサート。
  2. 上面視において、前記載置面は、前記第1辺よりも前記第2辺に近接していることを特徴とする請求項1に記載の切削インサート。
  3. 上面視において、前記第2辺に直交する方向での前記第2ランド面の幅が、前記第1辺に直交する方向での前記第1ランド面の幅よりも広いことを特徴とする請求項1または2に記載の切削インサート。
  4. 前記上切刃は、前記第1ランド面、前記第2ランド面および前記載置面よりも下方に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の切削インサート。
  5. 前記第1ランド面、前記第2ランド面および前記載置面の高さが同じであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の切削インサート。
  6. 先端側にインサートポケットを有するホルダと、
    前記上切刃または前記下切刃が前記ホルダの先端から突出するように前記インサートポケ
    ットに装着された、請求項1〜5のいずれか1つに記載の切削インサートとを具備した切削工具。
  7. 被削材を回転させる工程と、
    回転している前記被削材に請求項6に記載の切削工具の前記上切刃または前記下切刃を接触させる工程と、
    前記切削工具を前記被削材から離す工程とを備えた切削加工物の製造方法。
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