ところで、特許文献1の描画装置を用いて、特許文献2の描画対象物(基板)が有する複数の描画領域(デバイスチップが設けられた領域)のそれぞれに描画を行うことが考えられる。具体的には、照射範囲に対して描画対象物を移動させつつ照射範囲に順番に到達する各描画領域に光を照射することで、各描画領域に描画を実行できると考えられる。
しかしながら、描画を高精度に実行するためには、照射範囲内の描画領域に対して適切にフォーカスを調整した状態で描画領域に光を照射する必要がある。これに対して、疑似ウエハのような描画対象物では、複数の描画領域のそれぞれが傾きなく、あるいは高さを揃えて配列されているとは限らない。そのため、描画対象物が有する各描画領域に適切にフォーカスを調整することが困難な場合があった。
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、複数の描画領域を有する描画対象物の各描画領域に対して光を照射することで描画を実行する描画方法および描画装置において、フォーカスの調整に関する問題に対応可能な技術の提供を目的とする。
本発明の第1態様にかかる描画方法は、複数の描画領域を有する描画対象物の描画領域に設けられた複数の基準点それぞれの高さを示す高さ情報を取得する情報取得工程と、情報取得工程で取得した高さ情報から描画領域の傾きを示す値を算出する算出工程と、光学系により光を集光することで描画領域に描画を実行することの適否を、光学系の焦点深度と算出工程で算出した描画領域の傾きを示す値とに基づいて判断する判断工程とを備える。
本発明の第1態様にかかる描画装置は、光源および光源から射出された光を集光する光学系を有し、複数の描画領域を有する描画対象物の描画領域に対して光学系により光を集光することで描画領域に描画を実行可能な描画部と、描画領域に設けられた複数の基準点それぞれの高さを示す高さ情報を取得する情報取得部と、光学系の焦点深度を記憶する記憶部と、情報取得部が取得した高さ情報から描画領域の傾きを示す値を算出した結果と焦点深度とに基づいて、描画領域への描画を描画部に実行させることの適否を判断する制御部とを備える。
このように構成された本発明の第1態様では、光学系により光を集光することで描画領域に描画を実行することができる。ただし、描画対象物が有する複数の描画領域の中に大きく傾いた描画領域が存在すると、描画領域が光学系の焦点深度内に収まらず、描画領域に所望の精度で描画を実行できない場合があった。このような場合、該当描画領域に描画を実行することは、所望の精度に満たない描画を無駄に行うことになる。
これに対して本発明の第1態様では、描画領域に設けられた複数の基準点それぞれの高さを示す高さ情報が取得され、高さ情報から描画領域の傾きを示す値が算出される。そして、描画領域の傾きを示す値を算出した結果と焦点深度とに基づいて、描画領域に描画を実行することの適否が判断される。このような本発明の第1態様は、所望の精度に満たない描画が無駄に実行されるのを抑制するのに資する。
また、判断工程において描画を実行することが不適と判断された描画不適領域が複数の描画領域の中に存在する場合には、描画不適領域が存在する旨を作業者に報知する報知工程をさらに備えるように、描画方法を構成しても良い。かかる構成では、作業者は、描画不適領域の存在を把握することができる。その結果、作業者は必要な対応作業を適切に実行することが可能となり、作業者の作業効率の向上を図ることができる。
さらに、報知工程では、描画不適領域が存在する旨を作業者に報知するとともに、少なくとも描画不適領域以外の描画領域に描画を実行するか否かを作業者に選択させるように、描画方法を構成しても良い。かかる構成では、例えば描画不適領域が多い(所定個数以上である)場合には描画対象物が有する全描画領域への描画を止める一方、描画不適領域が少ない(所定個数未満である)場合には少なくとも描画不適領域以外の描画領域に描画を実行するといった判断を、作業者が行うことができる。
また、判断工程において描画を実行することが不適と判断された描画不適領域が複数の描画領域の中に存在する場合には、描画不適領域以外の描画領域に描画を実行し、描画不適領域には描画を実行しない描画工程をさらに備えるように、描画方法を構成しても良い。かかる構成では、所望の精度に満たない描画を描画不適領域に無駄に実行することなく、描画不適領域以外の描画領域に描画を適切に実行することができる。
また、描画領域が有する感光性材料に対して描画を実行する描画方法において、判断工程において描画を実行することが不適と判断された描画不適領域が複数の描画領域の中に存在する場合には、感光性材料の露光状態に応じて感光性材料を除去する処理を行うと描画不適領域の感光性材料が全て除去されることを示すデータを含む描画データを生成するデータ生成工程と、データ生成工程で生成された描画データに基づいて少なくとも描画不適領域以外の描画領域に描画を実行する描画工程とを備え、描画工程では、描画データが描画不適領域へ露光を実行する旨を示す場合は、描画不適領域の感光性材料の全体を露光し、描画データが描画不適領域への露光を実行しない旨を示す場合は、描画不適領域の感光性材料に露光を実行しないように、描画方法を構成しても良い。かかる構成では、その後に感光性材料の露光状態に応じて感光性材料を除去する処理が行われると、描画不適領域の感光性材料が全て除去される。その結果、例えば以後のプロセスにおいて、感光性材料が全て除去された描画領域が描画不適領域であると容易に識別することが可能となる。
ここで、感光性材料の露光状態に応じて感光性材料を除去する処理とは、例えば現像処理が該当する。また、描画不適領域の感光性材料が全て除去されることを示すデータとは例えば感光性材料としてネガ型フォトレジストを用いた場合には、描画不適領域に対して露光を実行しないことを示すデータが該当し、感光性材料としてポジ型フォトレジストを用いた場合には、描画不適領域の全体に対して露光を実行することを示すデータが該当する。なお、上述のとおり描画不適領域は、描画に不適、すなわち露光に不適な描画領域である。しかしながら、この際の描画不適領域への露光は、感光性材料の全体を露光できる程度の精度で足りるため(換言すれば、パターンを描画するほどの精度を要しないため)、実行しても構わない。
本発明の第2態様にかかる描画方法は、複数の描画領域を有する描画対象物の描画領域の高さを示す高さ情報を取得する情報取得工程と、描画領域に描画すべき内容を示すラスタデータおよび高さ情報から少なくとも成る描画データを生成するデータ生成工程と、照射範囲に光を照射する光照射器を描画対象物に対して相対的に移動させるとともに照射範囲に順番に到達する各描画領域の高さに応じて光照射器のフォーカスを調整しつつ光照射器から照射範囲へ光を照射することで、照射範囲に順番に到達した各描画領域に光を照射する描画工程とを備え、描画工程では、光照射器のフォーカスおよび光照射器を描画対象物に対して相対的に移動させる移動速度の少なくとも一方を描画データに含まれる高さ情報に基づいて制御しつつ、描画データに含まれるラスタデータに基づいて光照射器から光を照射する。
本発明の第2態様にかかる描画装置は、フォーカス調整機構を有し、フォーカス調整機構によってフォーカスを調整しつつ照射範囲に光を照射する光照射器と、複数の描画領域を有する描画対象物に対して照射部を相対的に移動させる移動部と、各描画領域の高さを示す高さ情報を取得する情報取得部と、光照射器を描画対象物に対して相対的に移動させるとともに照射範囲に順番に到達する各描画領域の高さに応じてフォーカスを調整しつつ照射範囲に順番に到達した各描画領域に光を照射する描画動作を、光照射器および移動部を用いて実行する制御部とを備え、制御部は、描画領域に描画すべき内容を示すラスタデータおよび高さ情報から少なくとも成る描画データを生成し、描画動作において光照射器のフォーカスおよび光照射器を描画対象物に対して相対的に移動させる移動速度の少なくとも一方を描画データに含まれる高さ情報に基づいて制御しつつ、描画データに含まれるラスタデータに基づいて光照射器から光を照射するように、描画装置を構成しても良い。
このように構成された本発明の第2態様では、照射範囲に光を照射する光照射器を描画対象物に対して相対的に移動させるとともに光照射器から照射範囲へ光を照射することで、照射範囲に順番に到達した各描画領域に光を照射する(描画工程、描画動作)。かかる描画工程あるいは描画動作では、照射範囲に順番に到達する各描画領域の高さに応じて光照射器のフォーカスが調整される。これによって、照射範囲に到達した描画領域にフォーカスを調整しつつ当該描画領域に光を照射して、当該描画領域に描画を実行できる。
ところで、連続して照射範囲に到達する各描画領域の高さが大きく違っている場合がある。このような場合には、先の描画領域が照射範囲に到達してから次の描画領域が照射範囲に到達するまでの時間間隔の間に、これらの描画領域の高さの違いに応じた量だけフォーカスを調整することが難しい場合が想定される。
これに対して本発明の第2態様では、複数の描画領域を有する描画対象物の描画領域の高さを示す高さ情報が取得され、描画領域に描画すべき内容を示すラスタデータおよび高さ情報から少なくとも成る描画データが生成される。そして、光照射器のフォーカスおよび光照射器を描画対象物に対して相対的に移動させる移動速度の少なくとも一方が、描画データに含まれる高さ情報に基づいて制御される。その結果、各描画領域が順番に照射範囲に到達する時間間隔の間に、各描画領域の高さの違いに応じた量だけフォーカスを調整することが可能となる。この点について、高さ情報に基づいてフォーカスを制御した場合および移動速度を制御した場合のそれぞれについて詳述すると、次の通りである。
光照射器のフォーカスを描画データに含まれる高さ情報に基づいて制御した場合、高さ情報が示す各描画領域の高さの違いに応じてフォーカスを調整し、照射範囲に順番に到達する各描画領域の高さにフォーカスを追従させることができる。その結果、各描画領域が順番に照射範囲に順番に到達する時間間隔の間に、各描画領域の高さの違いに応じた量だけフォーカスを調整することが可能となる。
光照射器を描画対象物に対して相対的に移動させる移動速度を制御した場合、各描画領域の高さの違いに応じて移動速度を減じて、各描画領域が順番に照射範囲に到達する時間間隔を長くするといった制御が可能となり、当該時間間隔の間にフォーカスの調整に要する時間を確保することができる。その結果、各描画領域が順番に照射範囲に到達する時間間隔の間に、各描画領域の高さの違いに応じた量だけフォーカスを調整することが可能となる。この際、フォーカスの調整は、先の場合のように高さ情報に基づいて制御しても構わないし、あるいは描画工程(描画動作)の実行中に照射範囲に到達する前の描画領域の高さをセンサで検出し、その結果に基づいて制御しても構わない。
また、描画工程では、描画データに含まれる高さ情報に基づいて光照射器のフォーカスをフィードフォワード制御するように、描画方法を構成しても良い。かかる構成は、高さ情報に基づくフィードフォワード制御によって、照射範囲に順番に到達する各描画領域の高さにフォーカスを追従させることができる。その結果、描画領域が順番に照射範囲に到達する時間間隔の間に、各描画領域の高さの違いに応じた量だけフォーカスを調整することが可能となる。
また、描画工程では、描画データに含まれる高さ情報から求めた一定の移動速度で描画対象物に対して光照射器を相対的に移動させるように、描画方法を構成しても良い。あるいは、描画工程では、描画データに含まれる高さ情報に基づいて描画対象物に対する光照射器の移動速度をフィードフォワード制御するように、描画方法を構成しても良い。かかる構成では、例えば照射範囲に順番に到達する描画領域の高さが大きく違う場合には、描画対象物に対する光照射器の相対的な移動速度を減じることで、描画領域が順番に照射範囲に到達する時間間隔を長くして、フォーカスの調整にかける時間を長く確保できる。その結果、照射範囲に順番に到達する各描画領域の高さの違いにフォーカスの調整を追従させることが可能となる。
本発明の第3態様にかかる描画方法は、照射範囲に光を照射する光照射器を複数の描画領域を有する描画対象物に対して相対的に移動させるとともに照射範囲に順番に到達した各描画領域に光を照射することで、各描画領域に描画を実行する描画工程を備える描画方法において、各描画領域の高さを示す高さ情報を取得する情報取得工程と、情報取得工程で取得した高さ情報に基づいて光照射器を描画対象物に対して相対的に移動させる移動速度を決定する速度決定工程とを備え、描画工程では、速度決定工程で決定された移動速度で光照射器を描画対象物に対して相対的に移動させるとともに、照射範囲に順番に到達する各描画領域の高さに応じて光照射器のフォーカスを調整しつつ光照射器から照射範囲へ光を照射する。
本発明の第3態様にかかる描画装置は、フォーカス調整機構を有し、フォーカス調整機構によってフォーカスを調整しつつ照射範囲に光を照射する光照射器と、複数の描画領域を有する描画対象物に対して照射部を相対的に移動させる移動部と、各描画領域の高さを示す高さ情報を取得する情報取得部と、情報取得部での取得した高さ情報に基づいて光照射器を描画対象物に対して相対的に移動させる移動速度を決定する制御部とを備え、制御部は、決定された移動速度で光照射器を描画対象物に対して相対的に移動させ、光照射器は、描画対象物に対する相対的な移動に伴って照射範囲に順番に到達する各描画領域の高さに応じてフォーカスを調整しつつ照射範囲に到達した各描画領域に光を照射して、各描画領域に描画を実行する。
このように構成された本発明の第3態様では、照射範囲に光を照射する光照射器を描画対象物に対して相対的に移動させるとともに光照射器から照射範囲へ光を照射することで、照射範囲に順番に到達した各描画領域に光を照射する。この際、照射範囲に順番に到達する各描画領域の高さに応じて光照射器のフォーカスが調整される。これによって、照射範囲に到達した描画領域にフォーカスを調整しつつ当該描画領域に光を照射して、当該描画領域に描画を実行できる。
ところで、連続して照射範囲に到達する各描画領域の高さが大きく違っている場合がある。このような場合には、先の描画領域が照射範囲に到達してから次の描画領域が照射範囲に到達するまでの時間間隔の間に、これらの描画領域の高さの違いに応じた量だけフォーカスを調整する必要がある。しかしながら、これらの描画領域の高さが大きく違っていると、次の描画領域が照射範囲に到達するまでにフォーカスの調整が完了しない、換言すれば、照射範囲に順番に到達する各描画領域の高さの違いにフォーカスの調整が追従しないおそれがあった。
これに対して本発明の第3態様では、各描画領域の高さを示す高さ情報が取得され、取得した高さ情報に基づいて光照射器を描画対象物に対して相対的に移動させる移動速度が決定される。かかる構成では、例えば照射範囲に順番に到達する描画領域の高さが大きく違う場合には、描画対象物に対する光照射器の相対的な移動速度を減じることで、描画領域が順番に照射範囲に到達する時間間隔を長くして、フォーカスの調整にかける時間を確保できる。その結果、照射範囲に順番に到達する各描画領域の高さの違いにフォーカスの調整を追従させることが可能となる。
ところで、例えば描画対象物に対する光照射器の相対的な移動速度を減じた場合、照射範囲に到達した描画領域には、光照射器からの光がより長い時間照射されることとなる。その結果、過度な量の光を描画領域に照射するおそれがある。そこで、描画工程において照射範囲に照射する光量を、速度決定工程で決定された移動速度に応じて決定する光量決定工程をさらに備え、描画工程では、光量決定工程で決定された光量の光を光照射器から照射範囲に照射するように、描画方法を構成しても良い。かかる構成では、描画対象物に対する光照射器の相対的な移動速度に応じた光量が照射範囲に照射される。その結果、適切な量の光を描画領域に照射することが可能となる。
なお、光量を決定する方法は種々考えられる。一例を挙げると、光量決定工程では、速度決定工程で決定された移動速度に対する照射範囲に照射される単位時間当たりの光のエネルギーの比が所定値となるように、あるいは所定範囲に収まるように、照射範囲に照射する光量を決定するように、描画方法を構成しても良い。これによって、適切な量の光を描画領域に照射することが可能となる。
また、移動速度を決定する方法は種々考えられる。一例を挙げると、速度決定工程では、描画工程で連続して照射範囲で描画が実行される2個の描画領域の間を光照射器が相対的に移動する間に調整すべきフォーカスの調整量である移動中調整量に基づいて、移動速度を決定するように、描画方法を構成しても良い。かかる構成では、2個の描画領域が順番に照射範囲に到達する時間間隔の間に、必要な量(移動中調整量)のフォーカスの調整を完了することができ、すなわち照射範囲に順番に到達する各描画領域の高さの違いにフォーカスの調整を追従させることが可能となる。
具体的には、光照射器が2個の描画領域の間を相対的に移動する移動距離に対するフォーカスの移動中調整量の比F、単位時間あたりに調整可能なフォーカスの調整量の最大値Vc、および移動速度Vsが、条件式F<Vc/Vsを満たすように、速度決定工程では移動速度Vsを決定するように、描画方法を構成しても良い。
この際、描画工程では3個以上の描画対象領域に順番に照射範囲で描画が実行される描画方法において、速度決定工程では、描画工程で連続して照射範囲で描画が実行される2個の描画領域の組み合わせのそれぞれの比Fのうち、最大の比Fmaxについて条件式Fmax<Vc/Vsを満たす前記移動速度Vsを求め、描画工程では、光照射器は、一定の移動速度Vsで描画対象物に対して相対的に移動しつつ3個以上の前記描画領域を順番に描画するように、描画方法を構成しても良い。
あるいは、描画工程では3個以上の描画対象領域に順番に被対象領域で描画が実行される描画方法において、速度決定工程では、描画工程で連続して照射範囲で描画が実行される2個の描画領域の組み合わせのそれぞれについて、条件式F<Vc/Vsを満たす前記移動速度Vsを求め、描画工程では、光照射器は、速度決定工程で各組み合わせについて求められた移動速度Vsで各描画領域の間を相対的に移動しつつ3個以上の描画領域を順番に描画するように、描画方法を構成しても良い。
本発明の第4態様にかかる描画方法は、複数の描画領域を有する描画対象物の各描画領域の高さを示す高さ情報を取得する情報取得工程と、照射範囲に光を照射する光照射器を描画対象物に対して相対的に移動させることで照射範囲に順番に到達した各描画領域に光を照射する描画工程を実行することの適否を判断する判断工程とを備え、描画工程では、光照射器が有するフォーカス調整機構によって光照射器のフォーカスを照射範囲に順番に到達する各描画領域の高さに応じて調整し、判断工程では、描画工程において調整すべきフォーカスの調整量を情報取得工程で取得した高さ情報から求めた結果と、フォーカス調整機構のフォーカスの調整能力とに基づいて、描画工程を実行することの適否を判断する。
本発明の第4態様にかかる描画装置は、フォーカス調整機構を有し、フォーカス調整機構によってフォーカスを調整しつつ照射範囲に光を照射する光照射器と、複数の描画領域を有する描画対象物に対して照射部を相対的に移動させる移動部と、各描画領域の高さを示す高さ情報を取得する情報取得部と、光照射器を描画対象物に対して相対的に移動させるとともに照射範囲に順番に到達する各描画領域の高さに応じてフォーカスを調整しつつ照射範囲に到達した各描画領域に光を照射する描画動作を、光照射器および移動部を用いて実行することの適否を判断する制御部とを備え、制御部は、描画動作において調整すべきフォーカスの調整量を情報取得部で取得した高さ情報から求めた結果と、フォーカス調整機構のフォーカスの調整能力とに基づいて、描画動作を実行することの適否を判断する。
このように構成された本発明の第4態様では、照射範囲に光を照射する光照射器を描画対象物に対して相対的に移動させるとともに光照射器から照射範囲へ光を照射することで、照射範囲に順番に到達した各描画領域に光を照射する(描画工程、描画動作)。かかる描画工程あるいは描画動作では、照射範囲に順番に到達する各描画領域の高さに応じて光照射器のフォーカスが調整される。これによって、照射範囲に到達した描画領域にフォーカスを調整しつつ当該描画領域に光を照射して、当該描画領域に描画を実行できる。
ところで、連続して照射範囲に到達する各描画領域の高さが大きく違っている場合がある。このような場合には、先の描画領域が照射範囲に到達してから次の描画領域が照射範囲に到達するまでの期間に、これらの描画領域の高さの違いに応じた量だけフォーカスを調整する必要がある。しかしながら、これらの描画領域の高さが大きく違っていると、次の描画領域が照射範囲に到達するまでにフォーカスの調整が完了しない、換言すれば、照射範囲に順番に到達する各描画領域の高さの違いにフォーカスの調整が追従しないおそれがあった。このようにフォーカスの調整が追従しない状態で、各描画領域に描画を行うことは、調整の不十分なフォーカスで所望の精度に満たない描画を無駄に行うことになる。
これに対して本発明の第4態様では、各描画領域の高さを示す高さ情報が取得され、描画工程(描画動作)において調整すべきフォーカスの調整量を高さ情報から求めた結果と、フォーカス調整機構のフォーカスの調整能力とに基づいて、描画工程(描画動作)を実行することの適否が判断される。このような本発明の第4態様は、調整の不十分なフォーカスで所望の精度に満たない描画が無駄に実行されるのを抑制するのに資する。
なお、描画工程(描画動作)を実行することの適否を判断する方法は種々考えられる。一例を挙げると、判断工程では、描画工程で連続して照射範囲に到達する2個の描画領域の間を光照射器が相対的に移動する移動期間に調整すべきフォーカスの調整量である移動中調整量を情報取得工程で取得した高さ情報から求め、フォーカス調整機構が移動期間に移動中調整量だけフォーカスを調整できるか否かを判断した結果に基づいて、描画工程を実行することの適否を判断するように、描画方法を構成しても良い。これによって、描画工程(描画動作)を実行することの適否を的確に判断することができる。
また、判断工程において描画工程を実行することが不適と判断された場合には、描画工程の実行が不適と判断された旨を作業者に報知する報知工程をさらに備えるように、描画方法を構成しても良い。かかる構成では、作業者は、描画工程の実行が不適であることを把握することができる。その結果、作業者は必要な対応作業を適切に実行することが可能となり、作業者の作業効率の向上を図ることができる。
また、判断工程において描画工程を実行することが適当と判断された場合には、描画工程を実行するように、描画方法を構成しても良い。かかる構成では、適切に調整されたフォーカスで所望の精度を満たす描画を実行することができる。
以上のように、本発明によれば、複数の描画領域を有する描画対象物の各描画領域に対して光を照射することで描画を実行する描画方法および描画装置において、フォーカスの調整に関する問題に適切に対応することが可能となっている。
図1は本発明を適用したパターン描画装置を模式的に示す側面図である。図2は図1のパターン描画装置が備える電気的構成を示すブロック図である。このパターン描画装置1(描画装置)は、例えば特開2003−78069号公報や特許第4724988号等に記載されている疑似ウエハに対してパターンの描画を実行することができる。同図および以下に示す図では、XYZ直交座標系を適宜設定する。ここで、XY平面が水平面であり、Z軸が矢印の方向を上方とする鉛直軸である。さらに、Z軸周りの回転方向であるθ方向を適宜併記する。また、各座標軸の矢印の方向を正側と適宜称し、矢印と反対の方向を負側と適宜称する。
パターン描画装置1は、描画エンジン100、コンピュータ200およびユーザインターフェース300を有している。コンピュータ200は、ストリップデータと称される分割露光用データを生成して描画エンジン100に与えるデータ処理部としての機能の他、ユーザインターフェース300を制御する機能も司る。ユーザインターフェース300としては、例えばキーボードあるはタッチパネル方式のディスプレイ等の種々のものを用いることができる。
描画エンジン100では、本体フレーム101に対して図示しないカバーが取り付けられて形成される本体内部に装置各部が配置されて本体部が構成されるとともに、本体部の外側(本実施形態では、図1に示すように本体部の右手側)に基板収納カセット110が配置されている。この基板収納カセット110には、パターン描画前の未処理基板Wが1ロット分収納されており、本体内部に配置される搬送ロボット120によって本体部にローディングされる。また、未処理基板Wに対してパターンの描画が実行された後、当該基板Wが搬送ロボット120によって本体部からアンローディングされて基板収納カセット110に戻される。なお、基板収納カセット110に収容される1ロット分の基板Wについては、いずれも同一パターンが描画される基板Wであってもよく、異なるパターンが描画される基板Wが混在していてもよい。
この本体部では、本体内部の右手端部に搬送ロボット120が配置されている。また、この搬送ロボット120の左手側には基台130が配置されている。この基台130の一方端側領域(図1の右手側領域)が、搬送ロボット120との間で基板Wの受け渡しを行う基板受渡領域となっているのに対し、他方端側領域(図1の左手側領域)が基板Wへのパターンの描画を行うパターン描画領域となっている。
基台130上には、上面に載置される基板Wを略水平姿勢に保持するステージ160が設けられている。このステージ160は基台130上でステージ移動機構161によりX方向、Y方向ならびにθ方向に移動される。すなわち、ステージ移動機構161は基台130の上面にY軸駆動部161Y(図5)、X軸駆動部161X(図5)およびθ軸駆動部161T(図5)をこの順序で積層配置したものであり、ステージ160を水平面内で二次元的に移動させて位置決めする。基板Wを保持したステージ160がY方向に水平移動することで、基板Wを基板受渡領域とパターン描画領域との間で移動させることができる。また、ステージ160をθ軸(鉛直軸)に回転させることで、後述する光学ヘッド170に対する相対角度を調整して位置決めすることができる。なお、このようなステージ移動機構161としては、従来多用されているX−Y−θ軸移動機構を用いることができる。
また、基台130の上方には、ヘッド支持部140が設けられている。このヘッド支持部140では、基台130から上方に向け、1対の脚部材141がX方向に互いに離隔して立設されるとともに、それらの脚部材141の頂部を橋渡しするように梁部材143がX方向に横設されている。そして、梁部材143にアライメントユニットUaが取り付けられている。このアライメントユニットUaは、梁部材143のパターン描画領域側側面に固定されたカメラ150を有しており、当該カメラ150によって基板Wの表面に付されたアライメントマークを撮像することができる。
また、このように構成されたヘッド支持部140にヘッドユニットUhが設けられている。このヘッドユニットUhは、ヘッド支持部140のパターン描画領域側に固定された光学ヘッド170(描画部、光照射器)および照明部180を有する。照明部180は、レーザ駆動部181、レーザ発振器182および照明光学系183で構成され、レーザ駆動部181の作動によりレーザ発振器182から射出されたレーザ光は、照明光学系183を介して光学ヘッド170へ向かう。その結果、光学ヘッド170には、照明光学系183により強度分布が均一に整形されたレーザ光が照射される。そして、光学ヘッド170は、照明部180から照射されたレーザ光を、後述するストリップデータに基づき変調する。
つまり、光学ヘッド170は、当該光学ヘッド170の直下位置をステージ160に伴ってY方向に移動する基板Wに対して変調レーザ光を下向きに出射することで、当該基板Wを露光し、基板Wへパターンの描画を実行する。これによって、基板Wに予め形成された下地パターンに対してパターンが重ねて描画される。なお、光学ヘッド170はX方向に複数チャンネルで光を同時に変調し照射可能となっており、X方向を「副走査方向」と称する。また、ステージ160をY方向に移動させることで基板Wに対してY方向に延びるストリップ状のパターンを描画することが可能となっており、Y方向を「主走査方向」と称する。
図3は図1のパターン描画装置の描画対象物である基板を示す図である。図3(a)に示すように、基板Wは、複数のデバイスチップCを樹脂に埋め込んで固定した疑似ウエハであり、略円形状を有する。具体的には、基板Wの表面では、複数のデバイスチップCがXY面内で二次元的に相互に間隔を空けて配列されている。基板Wの表面はフォトレジスト(感光性材料)の膜を有しており、パターン描画装置1は各チップ領域Rcに光を照射することで、各チップ領域Rcにパターンの描画を実行する。なお、デバイスチップCのサイズ、形状、基板Wでの配置数あるいはレイアウト等は図3の例に限られず様々であり、デバイスチップCは半導体チップ等である。
図3(a)右側の拡大図に示すように、各チップ領域Rcには、当該チップ領域Rcの位置を外部から検出可能とするためのアライメントマークAMが設けられている。アライメントマークAMの形状や位置は任意であるが、同図に示すように、チップ領域Rc内でできるだけ離れた2箇所以上に設けられることが好ましい。こうすることで、XY面内でのチップ領域Rcの位置のみでなく、θ方向の回転角度が検出可能となるからである。
一方、光学ヘッド170から基板Wへの描画は、図3(b)に破線で示すようにバンドB1単位でなされる。すなわち、光学ヘッド170はX方向における長さBxの範囲を同時に露光しながら基板Wに対し相対的にY方向に走査移動することで、1バンド分の描画を行う。X方向における基板Wと光学ヘッド170との相対位置を順次変化させながらバンドB1単位の描画を繰り返し行うことで、最終的に基板Wの全面に描画が行われる。バンド幅Bxは装置構成によって決まっており、描画対象物である基板Wにおけるチップ領域Rcのサイズとは必ずしも相関性がない。この1バンド分に相当するデータがストリップデータである。なお、実際のデータは、図3(b)に点線で示すように、バンドB1のサイズよりもさらに細かい分割ブロックB2単位に区分されて処理される。
ここで、1バンド内に複数のチップ領域Rcが含まれ、しかも、それらのチップ領域Rc間で高さ(Z方向における位置)が異なることがある。そこで、本実施形態では、光学ヘッド170は次に詳述するようにチップ領域Rcの高さに応じてフォーカスを調整できるように構成されている。
図4は光学ヘッドが備える構成を模式的に示す図である。同図では、光学ヘッド170の他に基板Wが併せて示されている。光学ヘッド170は、照明部180から照射されたレーザ光Lを反射するミラー171と、ミラー171により反射されたレーザ光Lを変調する回折光学素子172と、回折光学素子172により変調されたレーザ光Lをチップ領域Rcに集光する投影光学系173とを有する。
回折光学素子172は、グレーティング・ライト・バルブで構成されており、ストリップデータに応じて可動リボンのオン・オフを切り換えることで、レーザ光を変調する。そして、回折光学素子172により変調されたレーザ光Lが投影光学系173(光学系)によってチップ領域Rcに集光される。これによって、ストリップデータに応じたパターンがチップ領域Rcに描画される。
投影光学系173では、フォーカシングレンズ(対物レンズ)FLと、レンズアクチュエータ174とが設けられている。このレンズアクチュエータ174は、フォーカシングレンズFLをZ方向に移動させて投影光学系173のフォーカス調整を行う。例えば図4に示すように基板Wにおいて樹脂Mに保持される複数のデバイスチップCの位置がZ方向にばらつき、その結果、複数のチップ領域Rcの高さが異なる場合には、チップ領域Rcの高さに応じてフォーカス調整を行う。つまり、チップ領域Rcごとに、レンズアクチュエータ174はフォーカシングレンズFLの移動および位置決めを行い、投影光学系173のフォーカスを当該チップ領域Rcに合わせる。その結果、いずれのチップ領域Rcに対しても、所定の精度で描画を実行することが可能となっている。
なお、各チップ領域Rcの高さのばらつきは、チップ領域Rcに描画を実行するときのみならず、各チップ領域Rcに付されたアライメントマークAMをカメラ150で認識するにあたっても影響する。そこで、パターン描画装置1は、カメラ150をZ方向へ移動させるカメラアクチュエータ154(図5)を有している。そして、チップ領域Rcごとに、カメラアクチュエータ154はカメラ150のZ方向における位置を調整してカメラ150のフォーカスを当該チップ領域Rcに合わせる。これによって、いずれのチップ領域RcについてもアライメントマークAMの位置を所定の精度で認識することが可能となっている。
続いて、パターン描画装置1の電気的構成の詳細について説明する。図5は、描画エンジンおよびコンピュータが有する電気的構成を示すブロック図である。描画エンジン100は、アライメントユニットUa、ヘッドユニットUhおよびステージ移動機構161等を制御する露光制御部190を有する。アライメントユニットUaはカメラ150のフォーカスを制御するフォーカス制御部400を有する。このフォーカス制御部400は、カメラアクチュエータ154を制御してカメラ150の位置をZ方向に調整することで、カメラ150のフォーカスを調整する。また、ヘッドユニットUhは光学ヘッド170のフォーカスを制御するフォーカス制御部500を有する。このフォーカス制御部500は、レンズアクチュエータ174を制御してフォーカシングレンズFLの位置をZ方向に調整することで、光学ヘッド170のフォーカスを調整する。
一方、コンピュータ200は、CPU(セントラル・プロセシング・ユニット)や記憶部201を有している。そして、CPUが所定のプログラムに従って演算処理を実行することで、ラスタデータ生成部202、補正量算出部203、データ補正部204、ストリップデータ生成部205、アライメントマーク検出部206および高さ情報取得部207等の機能ブロックが実現される。各機能ブロックは次のように動作する。
例えば各チップ領域Rcに対して描画すべきパターンは、外部のCAD(コンピュータ・エイディッド・デザイン)等により生成されたベクトル形式の設計データ211で記述されている。そこで、コンピュータ200は、外部より入力された設計データ211を、記憶部201に書き込んで保存する。そして、ラスタデータ生成部202が設計データ211に基づいて、1枚の基板W全面に相当するラスタデータ212(ビットマップデータ)を作成する。こうして作成されたラスタデータ212は記憶部201に書き込まれて保存される。
また、コンピュータ200は、基板Wの各チップ領域Rcと光学ヘッド170との相対的な位置ずれを修正するための機能ブロックとして、アライメントマーク検出部206、補正量算出部203およびデータ補正部204を備えている。具体的には、アライメントマーク検出部206は、ステージ160に保持された基板Wの各チップ領域Rcをカメラ150で撮像した画像に画像処理を行って、当該画像に含まれるアライメントマークAMのXY座標を検出する。一方、基板Wがステージ160上の正規の位置に位置決めされたときのアライメントマークAMのXY座標を示す情報は、設計位置情報として設計データ211に含まれている。そこで、補正量算出部203は、設計データ211に含まれる設計位置情報と、アライメントマーク検出部206により検出された実際の位置とを比較して、正規の位置からのアライメントマークAMの位置ずれ量を算出し、当該位置ずれ量をキャンセルするために必要な補正量を求める。補正の対象となるのは、光学ヘッド170と基板Wとの物理的な位置関係、およびラスタデータの少なくとも一方である。
光学ヘッド170に対して基板Wの位置を変化させることで位置ずれを修正する場合、補正量算出部203は、そのために必要なステージ160の移動量を補正量として算出する。補正量算出部203で算出された補正量は描画エンジン100の露光制御部190に与えられる。露光制御部190は、与えられた補正量に応じてステージ移動機構161のX軸駆動部161X、Y軸駆動部161Yおよびθ軸駆動部161Tに対してそれぞれX、Y、θ各成分の補正指示を与え、それに基づきX軸駆動部161X、Y軸駆動部161Yおよびθ軸駆動部161Tが動作しステージ160が移動することで、ステージ160上の基板Wの光学ヘッド170に対する位置が補正される。
ラスタデータを補正することで位置ずれを修正する場合、補正量算出部203が例えば特開2012−74615号公報に記載の技術を用いて、ラスタデータを補正する補正量を求める。そして、データ補正部204が補正量算出部203から与えられる補正量に基づき、記憶部201から読み出されたラスタデータを補正する。ストリップデータ生成部205は、補正されたラスタデータをバンドB1単位に分割してストリップデータを生成し、露光制御部190に出力する。そして、露光制御部190が当該ストリップデータに基づいて光学ヘッド170を制御することで、基板Wの位置ずれをキャンセルするように描画が実行される。
このように、基板Wの各チップ領域Rcと光学ヘッド170との相対的な位置ずれを修正する手法としては、光学ヘッド170に対する基板Wの位置補正と、ラスタデータの補正とがある。なお、これらを別々に用いる必要はなく、併用することも可能である。
さらに、本実施形態では、後に詳述するように、チップ領域RcのアライメントマークAMの高さを示す高さ情報Dhに基づく制御が実行される。すなわち、カメラ150によってアライメントマークAMを認識する際に、高さ情報取得部207(情報取得部)が各チップ領域RcのアライメントマークAMの高さを示す高さ情報Dhを取得する。この高さ情報Dhは、ストリップデータ生成部205および露光制御部190に出力される。ストリップデータ生成部205は、受け取った高さ情報Dhをストリップデータ(バンドB1単位のラスタデータ)に付加して描画データDdを生成し、露光制御部190は、受け取った高さ情報Dhに基づいてステージ160のY方向への移動速度や、光学ヘッド170から照射する光量を決定する。そして、こうして求められた描画データDd、移動速度および照射光量に基づいて、チップ領域Rcへの描画が実行される。続いては、このような高さ情報Dhに関する制御を実行するアライメントユニットUaおよびヘッドユニットUhの構成および動作について説明を行う。
図6はアライメントユニットが備える構成を模式的に示すブロック図である。同図では、アライメントユニットUaの他にコンピュータ200および基板Wが併記されている。アライメントユニットUaは、フォーカス制御部400および距離検出部450を有する。距離検出部450はカメラ150に取り付けられており、カメラ150と一体的にZ方向へ移動可能である。距離検出部450の検出位置は、カメラ150の光軸と基板Wの表面との交点あるはその近傍に設定されており、距離検出部450は、基板Wの表面における検出位置とカメラ150とのZ方向への距離を検出する。かかる距離検出部450は、LD駆動部461、レーザダイオード(LD)462、レンズ463およびミラー464で構成される投光系と、ミラー471、レンズ472、ミラー473およびラインセンサ474で構成される受光系とを有する。
LD駆動部461による駆動を受けると、レーザダイオード462は鉛直方向の下側へ向けてレーザ光を射出する。レーザダイオード462から射出されたレーザ光は、レンズ463を通過した後にミラー464により反射され、基板Wに斜め上方から入射する。基板Wに入射したレーザ光は、基板Wにより斜め上方へ反射された後にミラー471へ入射する。ミラー471は、鉛直方向の上側へ向けてレーザ光を反射し、さらにミラー473はミラー471で反射されたレーザ光を水平方向へ反射する。そして、ミラー473で反射されたレーザ光がラインセンサ474に入射する。ラインセンサ474は、Z方向に平行に設けられており、入射したレーザ光を撮像した結果を出力する。
かかる構成では、基板Wの表面の高さが変わると、ラインセンサ474に入射するレーザ光の位置がZ方向に変わる。その結果、ラインセンサ474の撮像結果におけるレーザ光の位置もZ方向に変わる。このように基板Wの表面の高さと撮像結果におけるレーザ光の位置には相関があるため、撮像結果におけるレーザ光のZ方向の位置に基づいて、距離検出部450から基板Wまでの距離が判る。また、上述のとおり、距離検出部450はカメラ150に取り付けられており、これらの相対的な位置関係は固定されている。したがって、ラインセンサ474の撮像結果におけるレーザ光の位置に基づいて、カメラ150から基板Wまでの距離が判る。
そこで、フォーカス制御部400は、基板WのアライメントマークAMを認識するにあたって、カメラ150と基板Wとの距離を距離検出部450により検出した結果に基づいて、カメラ150のフォーカスを調整する。このフォーカス制御部400は、投光制御部410、記憶部420、検出信号処理部430および駆動制御部440を有する。投光制御部410は、光量調節部411を有しており、光量調節部411によってLD駆動部461を制御することで、レーザダイオード462から射出されるレーザ光の光量を調節する。記憶部420は、基準距離Ia0を記憶する。この基準距離Ia0は、ステージ160に載置された水平かつ平坦な表面を有する理想的な基板Wの当該表面にカメラ150のフォーカスを合わせた際のカメラ150と基板Wとの距離であり、例えば特開2013−77677号公報に記載されたキャリブレーションを実行することで求めることができる。
検出信号処理部430は、重心位置算出部431および移動距離算出部432を有する。重心位置算出部431は、ラインセンサ474が出力するレーザ光の撮像結果から、レーザ光のZ方向における重心位置を算出し、カメラ150と基板Wとの実測距離Ia1を当該重心位置から求める。移動距離算出部432は、基板Wの表面にフォーカスを合わせるためにカメラ150を移動させるべき移動量を、実測距離Ia1と基準距離Ia0との差分に基づいて求め、駆動制御部440に出力する。そして、駆動制御部440がカメラアクチュエータ154を制御して、当該移動量だけカメラ150をZ方向に移動させる。こうして、カメラ150のフォーカスが調整される。
このようなアライメントユニットUaは、基板Wに設けられた複数のデバイスチップCそれぞれのアライメントマークAMのXY座標を認識するにあたって、各アライメントマークAMの高さに応じてカメラ150のフォーカスを調整できる。その結果、アライメントマークAMのXY座標を高精度に認識できる。さらに、本実施形態では、アライメントマークAMのXY座標の認識と並行して、アライメントマークAMの高さHの認識も行われる。この点について、図5および図6に図7を併用しつつ説明する。
図7はアライメントマークの認識処理を示すフローチャートである。同図のフローチャートは、露光制御部190が装置各部を制御することで実行する。ステップS101では、アライメントマークAMを識別する識別番号Nが「0」に設定され、ステップS102では、識別番号Nがインクリメントされる。ステップS103では、露光制御部190がステージ移動機構161を制御することで、ステージ160をXY面内で移動させて、識別番号Nに相当するアライメントマークAMをカメラ150の下方に位置させて、カメラ150の視野に収める。そして、ステップS104では、フォーカス制御部400がカメラ150のフォーカスを識別番号NのアライメントマークAMに調整する。具体的には、上述のとおり、実測距離Ia1を計測し、実測距離Ia1と基準距離Ia0との差を計算する。そして、計算された実測距離Ia1と基準距離Ia0との差に基づいて、カメラ150のフォーカスをアライメントマークAMに調整する。ちなみに、実測距離Ia1と基準距離Ia0との差は、ステージ160に載置された理想的な基板Wの表面を基準としたアライメントマークAMの高さHに相当する(H=Ia1−Ia0)。
ステップS105では、カメラ150のフォーカスがアライメントマークAMに調整された状態で、アライメントマーク検出部206がテンプレートマッチング等の技術を用いてアライメントマークAMを検出し、アライメントマークAMのXY座標を認識する。さらに、ステップS105では、アライメントマークAMのXY座標と、ステップS104で求められたアライメントマークAMの高さH(=Ia1−Ia0)とが、コンピュータ200の高さ情報取得部207へ出力されて、相互に関連付けられる。この際、全てのアライメントマークAMについてXY座標および高さHを計測し終えてから、高さ情報取得部207へ出力しても良いし、1個のアライメントマークAMについてXY座標および高さHを計測する度に高さ情報取得部207へ出力しても良い。そして、ステップS106では、ステップS105で取得された結果が高さ情報Dhとして記憶部201に記憶される。
ステップS107では、識別番号NがNmaxより大きいか否かが判断される。ここで、Nmaxは、基板Wに存在するアライメントマークAMの総数に相当する。そして、識別番号NがNmax以下である場合(ステップS107で「NO」の場合)は、ステップS102〜S106が実行されて、別のアライメントマークAMについてXY座標および高さHが求められる。そして、識別番号NがNmaxより大きくなると(ステップS107で「YES」)、図7のフローチャートが終了する。かかるフローチャートを実行することで、基板Wに存在する全アライメントマークAMについて、XY座標と高さHとが関連付けられて、高さ情報Dhが求められる。したがって、高さ情報Dhを参照すれば、各アライメントマークAMのXY座標と高さHが判る。
そして、本実施形態では、ヘッドユニットUhの光学ヘッド170によるチップ領域Rcへの描画が、こうして求められた高さ情報Dhによって制御される。図8はヘッドユニットが備える構成を示すブロック図である。図9は光学ヘッドが実行する描画の内容を模式的に示す図である。なお、図8ではヘッドユニットUhの他に露光制御部190が併記されている。また、図9では、光学ヘッド170がフォーカシングレンズFLで代表して示されており、2個のチップ領域Rcにはそれぞれを区別するために異なる符号Rc(1)、Rc(2)が付されている。図8に示すように、フォーカス制御部500に対しては、露光制御部190が記憶部201(図5)から読み出した高さ情報Dhが出力される。そして、フォーカス制御部500は受け取った高さ情報Dhに基づいてレンズアクチュエータ174を駆動し、フォーカシングレンズFLをZ方向に移動させる。この点について、図9の例を用いて説明すると次のとおりである。
図9の例では、基板W(描画対象物)がY方向正側に移動速度Vsで移動し、光学ヘッド170が直下の照射範囲Riに変調されたレーザ光を照射しつつ、照射範囲Riに順番に到達する各チップ領域Rc(1)、Rc(2)へ描画を実行する。この際、2個のチップ領域Rc(1)、Rc(2)それぞれの高さQ1、Q2は互いに異なっている。ここで、高さQ1、Q2は、ステージ160に載置された理想的な基板の表面を基準とした高さである。したがって、チップ領域Rc(1)、Rc(2)が照射範囲Riに到達するまでに、高さQ1、Q2の違いに応じてフォーカシングレンズFLを移動させて、フォーカスを調整する必要がある。そこで、露光制御部190およびフォーカス制御部500が協働して、フォーカシングレンズFLのフォーカスを高さ情報Dhに基づいて制御する。
まず、図9の「チップ領域Rc(1)を描画」の欄に示すように、チップ領域Rc(1)に描画を実行する際の動作について説明する。チップ領域Rc(1)へ描画を実行するにあたっては、露光制御部190は、チップ領域Rc(1)のアライメントマークAMの高さHを示す高さ情報Dhを駆動制御部540に出力する。そして、駆動制御部540は、高さ情報Dhが示すアライメントマークAMの高さHに基づいて、チップ領域Rc(1)の高さQ1を求める。ちなみに、本実施形態では、1個のチップ領域Rcに2個のアライメントマークAMが設けられている。このような場合には、例えばアライメントマークAMの高さHの平均値を高さQ1として求めることができる。そして、駆動制御部540は、レンズアクチュエータ174によってフォーカシングレンズFLの位置を制御し、光学ヘッド170のフォーカスを高さQ1に調整する。その後、チップ領域Rc(1)が照射範囲Riを通過している間は、光学ヘッド170のフォーカスが高さQ1に維持される。その結果、チップ領域Rc(1)にフォーカスが合った状態で、チップ領域Rc(1)への描画が実行される。
続いて、図9の「チップ領域間の移動期間」に示すように、チップ領域Rc(1)が照射範囲Riを通過し終えると、次に描画すべきチップ領域Rc(2)に向けて光学ヘッド170のフォーカスの調整が開始される。具体的には、チップ領域Rc(1)が照射範囲Riを通過し終えたのをきっかけに、露光制御部190は、チップ領域Rc(2)のアライメントマークAMの高さHを示す高さ情報Dhを駆動制御部540に出力する。駆動制御部540は、チップ領域Rc(1)の場合と同様にして、高さ情報Dhが示すアライメントマークAMの高さHに基づいてチップ領域Rc(2)の高さQ2を求める。そして、駆動制御部540は、レンズアクチュエータ174によってフォーカシングレンズFLをZ方向(ここの例では下側)へ最大速度Vcで移動させ、光学ヘッド170のフォーカスを高さQ2に調整する。ここで、速度Vcは、単位時間あたりに調整可能なフォーカスの調整量の最大値である。
つまり、図9の「チップ領域間の移動期間」では、次に照射範囲Riに到達するチップ領域Rc(2)の高さQ2を求めて光学ヘッド170のフォーカスを調整するフィードフォワード制御が実行される。これによって、照射範囲Riがチップ領域Rc(1)とチップ領域Rc(2)との間の距離Pを移動する移動期間に、光学ヘッド170のフォーカスを高さQ2に調整し終えることができる。なお、光学ヘッド170のフォーカスを移動させる速度は、最大速度Vcである必要は必ずしもないが、最大速度Vcで移動させることで、フォーカスの調整を移動期間に確実に終えることが可能となる。
そして、図9の「チップ領域Rc(2)を描画」の欄に示すように、チップ領域Rc(2)が照射範囲Riを通過している間は、光学ヘッド170のフォーカスが高さQ2に維持される。その結果、チップ領域Rc(2)にフォーカスがあった状態で、チップ領域Rc(2)への描画が実行される。また、図9では示していないが、チップ領域Rc(2)の後に照射範囲Riに順番に到達する各チップ領域Rcに対しても、同様に光学ヘッド170のフォーカスが制御される。
このように本実施形態では、光学ヘッド170(光照射器)のフォーカスを描画データDdに含まれる高さ情報Dhに基づいて制御(フィードフォワード制御)している。したがって、高さ情報Dhが示す各チップ領域Rc(描画領域)の高さHの違いに応じてフォーカスを調整し、照射範囲Riに順番に到達する各チップ領域Rcの高さにフォーカスを追従させることができる。その結果、各チップ領域Rcが照射範囲に順番に到達する時間間隔の間に、各チップ領域Rcの高さHの違いに応じた量だけフォーカスを調整することが可能となる。
ところで、上記の高さ情報Dhは、光学ヘッド170のフォーカスの調整のみならず、種々の用途で有効に用いることができる。具体的には、図9に示した描画を実行するのに先立って、描画に必要となる各種条件が適切か否かを高さ情報Dhに基づき判断できる。そして、その判断結果に基づいて、条件の変更をしたり、あるいは描画の実行を取り止めたりすることができる。続いては、図10のフローチャートを用いてこの点について説明する。
図10は図1のパターン描画装置で実行される動作の一例を示すフローチャートである。ステップS201では、作業者がユーザインターフェース300を介して、後のステップS205においてXY座標および高さHの認識の実行対象となるアライメントマークAMの位置を全デバイスチップCについてコンピュータ200に設定する。なお、図3に示した例では、1個のデバイスチップCに2個のアライメントマークAMが設けられているが、これらアライメントマークAMの全ての位置を設定する必要は無い。ただし、基板WのXY面内での位置ずれとθ方向への傾きをアライメントマークAMから求めるためには、1個のデバイスチップCについて少なくとも2個のアライメントマークAMの位置を設定することが好適である。そして、コンピュータ200は、この設定結果を計測位置レシピとして記憶部201に記憶する。
ステップS202では、作業者がユーザインターフェース300を介して描画レシピをコンピュータ200に設定する。この描画レシピは、描画に用いる設計データ211、描画の際のステージ160の移動速度Vsおよび光量等を示すものであり、コンピュータ200の記憶部201に記憶される。続くステップS203では、作業者がユーザインターフェース300を介して描画レシピを指定して、当該描画レシピに従った描画を実行するようにコンピュータ200に指示する。
ステップS204では、パターン描画装置1へ基板Wが搬入され、ステージ160に保持される。続いてステップS205(情報取得工程)では、高さ情報Dhが取得される。具体的には、ステップS201で設定された計測位置レシピが示す各アライメントマークAMについて図7で示したフローチャートが実行されて、各アライメントマークAMのXY座標および高さの認識が実行され、高さ情報Dhが取得される。
ステップS206では、露光制御部190(制御部)がコンピュータ200の記憶部201から読み出した高さ情報Dhに基づき、各チップ領域Rcの傾きを示す量を算出する。この点について、図11を参照しつつ説明する。ここで、図11は、アライメントマークの高さとデバイスチップの傾きとの関係を模式的に示す図である。図11では、チップ領域RcがZ方向に対して傾いているのに対応して、当該チップ領域Rcに設けられた各アライメントマークAMの間に高さの差ΔHが生じている。かかる高さの差ΔHは、チップ領域Rcが傾いているほど大きくなる。したがって、チップ領域Rcに設けられた複数のアライメントマークAMの高さの差ΔHを求めることで、チップ領域Rcの傾きの程度を認識できる。
この際、チップ領域Rcの傾きが過大であると、チップ領域Rcが光学ヘッド170(の投影光学系173)の焦点深度内に収まらず、当該チップ領域Rcに描画を実行することが適切でない場合も想定される。そこで、ステップS207(算出工程)では、アライメントマークAMの高さの差ΔHを算出した結果に基づいて、光学ヘッド170の焦点深度内に収まらない可能性のあるチップ領域Rcを、基板Wの全チップ領域Rcの中から探索する。具体的には、露光制御部190には、光学ヘッド170の焦点深度が予め記憶されており、露光制御部190は、1未満で0より大きい係数(マージン)を焦点深度に乗じた値よりもアライメントマークAMの高さの差ΔHが大きいチップ領域Rcを、描画不適領域として探知する。ちなみに、アライメントマークAMの高さの差ΔHは、チップ領域RcがZ方向へ占める範囲の幅ΔRcより小さい。また、これらの差は、アライメントマークAMがチップ領域Rcの端に近いか、あるいは中央に近いかに依存する。したがって、焦点深度に乗じる係数の値は、この点を加味して設定することが好適となる。つまり、アライメントマークAMがチップ領域Rcの端に近い場合は、当該係数を比較的大きく(「1」に近い値)に設定し、アライメントマークAMがチップ領域Rcの中央に近い場合は、当該係数を比較的小さく(「0」に近い値)に設定すれば良い。
こうして描画の実行が適切でない描画不適領域を全チップ領域Rcの中から探知した結果に基づいて、ステップS208(判断工程)では、露光制御部190が基板Wに対する描画の実行の適否が判断される。そして、基板Wに描画不適領域が存在する場合には、基板Wへの描画の実行が不適(すなわち「NO」)と判断されて図10のフローチャートが終了する。一方、基板Wに描画不適領域が存在しない場合には、基板Wへの描画の実行が適切(すなわち「YES」)と判断されてステップS209が実行される。
ステップS209では、露光制御部190(制御部)は、光学ヘッド170がレンズアクチュエータ174によってフォーカスを調整できる能力(フォーカス調整能力)に基づき基板Wに対する描画の実行の適否を判断する。これは、照射範囲Riに順番に到達するチップ領域Rcの高さの違いにフォーカスを追従させられるだけのフォーカス調整能力を光学ヘッド170が有しているかを判断するものである。
先に示した図9を参照しつつ説明する。図9では、基板Wが移動速度VsでY方向に移動するのに伴って、チップ領域Rc(1)が照射範囲Riに到達した後に、チップ領域Rc(2)が照射範囲Riに到達する。換言すれば、光学ヘッド170は、チップ領域Rc(1)とチップ領域Rc(2)との間を移動速度Vsで相対的に移動する。したがって、光学ヘッド170はチップ領域Rc(1)、Rc(2)の間の移動期間Tの間に、チップ領域Rc(1)、Rc(2)の高さの差ΔQ(=|Q1−Q2|)だけフォーカスを調整させる必要がある。かかる調整が可能か否かは、例えば下記条件式
ΔQ/T<Vc
が満たされるか否かに基づいて判断できる。ここで、上述のとおり速度Vcは、単位時間あたりに調整可能なフォーカスの調整量の最大値である。ちなみに、移動期間Tは、チップ領域Rc(1)、Rc(2)のY方向の間隔Pを移動速度Vsで除した値となるため、上記条件式は、
ΔQ/P<T/Vs
と変形できる。
この際、順番に照射範囲Riに到達する2個のチップ領域RcのY方向の間隔Pは、設計データ211やステップS205で取得したアライメントマークAMのXY座標から見積もれば良い。また、順番に照射範囲Riに到達する2個のチップ領域Rcの高さの差ΔQ(移動中調整量)は、ステップS205で取得した高さ情報Dhから見積もれば良い。
ちなみに、照射範囲Riには3個以上のチップ領域Rcが順番に到達する。ただし、ステップS209の判断は、照射範囲Riに順番に到達する2個のチップ領域Rcの全ての組み合わせについて行う必要は無く、最も条件が厳しい、換言すればΔQ/Tが最も大きくなる2個のチップ領域Rcの組み合わせについて行えば良い。
そして、ステップS209において光学ヘッド170のフォーカスの調整能力でフォーカスの調整ができると判断されると、ステップS210において基板Wに対する描画の実行が適切(すなわち「YES」)と判断されて、後述するステップS215が実行される。一方、ステップS209において光学ヘッド170のフォーカスの調整能力ではフォーカスの調整ができないと判断されると、ステップS210において基板Wに対する描画の実行が不適(すなわち「NO」)と判断され、ステップS211が実行される。
ステップS211では、ユーザインターフェース300を介して、基板Wに対する描画の実行が不適である旨を作業者に報知するとともに、「描画をキャンセル」あるいは「ステージ速度を落として描画を実行」のいずれかを作業者に選択させる。そして、作業者が前者を選択した場合(ステップS212で「YES」の場合)には、図10のフローチャートが終了する。一方、作業者が後者を選択した場合(ステップS212で「NO」の場合)には、ステップS213が実行される。
ステップS213(速度決定工程)では、フォーカスの調整が追従できる程度にまでステージ160の移動速度Vsの設定値が減ぜられる。先に示した図9を参照しつつ説明すると、同ステップでは、光学ヘッド170が2個のチップ領域Rc(1)、Rc(2)の間を相対的に移動する移動距離Pに対する、フォーカスの移動中調整量ΔQ(=|Q1−Q2|)の比F(=P/ΔQ)が求められる。そして、下記条件式
F<Vc/Vs
が満たされるように移動速度Vsが決定される。特に、最も条件が厳しい、換言すれば、照射範囲Riに順番に到達する2個のチップ領域Rcの全ての組み合わせそれぞれの比Fのうち、最大の比Fmaxについて、下記条件式
Fmax<Vc/Vs
が満たされるように移動速度Vsが決定される。そして、この決定結果に基づいて、露光制御部190の移動速度Vsの設定値が更新される。
ステップS213を実行した結果、移動速度Vsの設定値は減じられる。このような場合、照射範囲Riに到達したチップ領域Rcには、光学ヘッド170からのレーザ光Lがより長い時間照射されることとなる。その結果、過度な量のレーザ光をチップ領域Rcに照射するおそれがある。そこで、ステップS214(光量決定工程)では、露光制御部190は、ステップS213で決定された移動速度Vsに応じて、描画の際に照射範囲Riに照射する光量の設定値を減少する。具体的には、移動速度Vsに対する、照射範囲Riに照射される単位時間当たりの光のエネルギーの比が所定値となるように、あるいは所定範囲に収まるように、照射範囲Riに照射する光量の設定値を決定し、露光制御部190に記憶する。そして、露光制御部190は、当該設定値に基づいてレーザ駆動部181を制御することで、基板Wの各チップ領域Rcに描画を実行する際に、適切な量のレーザ光Lをチップ領域Rcに照射することが可能となる。
そして、ステップS215では、アライメントマークAMのXY座標の計測結果からラスタデータ212を補正し、ステップS216では、ラスタデータ212(ストリップデータ)と高さ情報Dhとを関連付けて描画データDdを生成する。そして、ステップS217(描画工程)では、露光制御部190は、ステップS213で設定された一定の移動速度Vsでステージ160を移動させつつ、ステップS214で設定された光量で照射範囲Riにレーザ光を照射することで、基板Wの各チップ領域Rcへの描画を実行する。なお、これらの詳細は既に上述した通りである。この際、基板Wについて全ての描画データDdが揃ってから描画を開始しても良いし、例えば1バンドB1分の描画データDdが生成されると、当該描画データDdの描画を実行しても良い。
以上に説明したように、本実施形態では、光学ヘッド170が有する投影光学系173によりレーザ光を集光することでチップ領域Rc(描画領域)に描画を実行することができる。ただし、基板W(描画対象物)が有する複数のチップ領域Rcの中に大きく傾いたチップ領域Rcが存在すると、チップ領域Rcが投影光学系173の焦点深度内に収まらず、チップ領域Rcに所望の精度で描画を実行できない場合があった。このような場合、該当チップ領域Rcに描画を実行することは、所望の精度に満たない描画を無駄に行うことになる。
これに対して本実施形態では、チップ領域Rcに設けられた複数のアライメントマークAM(基準点)それぞれの高さを示す高さ情報Dhが取得され(ステップS205)、高さ情報Dhからチップ領域Rcの傾きを示す値(アライメントマークAMの高さの差ΔH)が算出される(ステップS207)。そして、描画領域の傾きを示す値ΔHを算出した結果と焦点深度とに基づいて、チップ領域Rcに描画を実行することの適否が判断される(ステップS208)。このような本実施形態は、所望の精度に満たない描画が無駄に実行されるのを抑制するのに資する。
また、本実施形態では、光学ヘッド170を基板Wに対して相対的に移動させる移動速度Vsを、高さ情報Dhが示すチップ領域Rcの高さの違いに応じて調整する。したがって、各チップ領域Rcが順番に照射範囲Riに到達する時間間隔を長くするといった制御が可能となり、当該時間間隔の間にフォーカスの調整に要する時間を確保することができる。その結果、チップ領域Rcが順番に照射範囲Riに到達する時間間隔の間に、各チップ領域Rcの高さの差ΔQに応じた量だけフォーカスを調整することが可能となる。
具体的には、照射範囲Riで描画が実行される2個のチップ領域Rcの間を光学ヘッド170が相対的に移動する移動期間Tに調整すべきフォーカスの調整量ΔQ(移動中調整量)に基づいて、移動速度Vsが決定される。かかる構成では、2個のチップ領域Rcが順番に照射範囲Riに到達する時間間隔の間に、必要な調整量ΔQのフォーカスの調整を完了することができ、すなわち照射範囲Riに順番に到達する各チップ領域Rcの高さの差ΔHにフォーカスの調整を追従させることが可能となる。
また、本実施形態では、チップ領域Rcの高さを示す高さ情報Dhが取得される(ステップS205)。そして、チップ領域Rcの描画に際して調整すべきフォーカスの調整量を高さ情報Dhから求めた結果と、レンズアクチュエータ174(フォーカス調整機構)のフォーカスの調整能力とに基づいて、基板Wへの描画を実行する適否が判断される(ステップS208、S209)。このような本実施形態は、調整の不十分なフォーカスで所望の精度に満たない描画が無駄に実行されるのを抑制するのに資する。
また、ステップS209で描画の実行が不適と判断された場合には、その旨が作業者に報知される(ステップS211)。したがって、作業者は、描画の実行が不適であることを把握することができる。その結果、作業者は必要な対応作業を適切に実行することが可能となり、作業者の作業効率の向上を図ることができる。
また、ステップS209で描画を実行することが適当と判断された場合には、描画が実行される(ステップS217)。かかる構成では、適切に調整されたフォーカスで所望の精度を満たす描画を実行することができる。
ところで、上記実施形態では、光学ヘッド170のフォーカスが高さ情報Dhに基づいてフィードフォワード制御されていた。これに対して、続いて説明する実施形態では、光学ヘッド170のフォーカスに対して、フィードフォワード制御およびフィードバック制御が実行される。なお、上記実施形態と続く実施形態との違いは主としてフィードバック制御の有無にあるので、以下では差異点を中心に説明を行い、共通点については相当符号を付して適宜説明を省略する。なお、上記実施形態と共通の構成を具備することで、同様の効果を奏する点は言うまでもない。
図12はヘッドユニットが備える構成の変形例を示すブロック図である。なお、図12ではヘッドユニットUhの他に露光制御部190および基板Wが併記されている。変形例にかかるヘッドユニットUhは、フォーカス制御部500の他に距離検出部550を有する。距離検出部550は、光学ヘッド170に取り付けられている。距離検出部550の検出位置は、光学ヘッド170の光軸と基板Wの表面との交点あるいはその近傍に設定されており、光学ヘッド170の照射範囲Riに一致する。つまり、距離検出部550は、基板Wの表面に対して設定された照射範囲Riと光学ヘッド170とのZ方向への距離を測定できる。かかる距離検出部550は、上述の距離検出部450と同様の構成を具備しており、LD駆動部561、レーザダイオード(LD)562、レンズ563およびミラー564で構成される投光系と、ミラー571、レンズ572、ミラー573およびラインセンサ574で構成される受光系とを有する。したがって、ラインセンサ574の撮像結果におけるレーザ光の位置に基づいて、光学ヘッド170から基板Wまでの距離が判る。
そこで、フォーカス制御部500は、基板Wのチップ領域Rcに対して描画を実行するにあたって、光学ヘッド170と基板Wとの距離を距離検出部550により検出した結果に基づいて、光学ヘッド170のフォーカスを調整する。このフォーカス制御部500は、投光制御部510、検出信号処理部530および駆動制御部540を有する。投光制御部510は、光量調節部511を有しており、光量調節部511によってLD駆動部561を制御することで、レーザダイオード562から出射されるレーザ光の光量を調節する。
検出信号処理部530は、重心位置算出部531および移動距離算出部532を有する。重心位置算出部531は、ラインセンサ574が出力するレーザ光の撮像結果から、レーザ光のZ方向における重心位置を算出し、光学ヘッド170と基板Wとの距離を当該重心位置から求める。移動距離算出部532は、基板Wの表面にフォーカスを合わせるためにフォーカシングレンズFLを移動させるべき移動量を、測定された光学ヘッド170と基板Wとの距離に基づいて求め、駆動制御部540に出力する。そして、駆動制御部540がレンズアクチュエータ174を制御して、当該移動量だけフォーカシングレンズFLをZ方向に移動させる。こうして、光学ヘッド170のフォーカスがフィードバック制御される。このようなフィードバック制御は、例えば特開2013−77677号公報に記載のようにして実行できる。
かかる構成では、基板Wまでの距離を検出した結果に基づくフィードバック制御と、高さ情報Dhに基づくフィードフォワード制御とを切り換えて、基板Wのチップ領域Rcへの描画(図10に示したステップS217)が実行される。この点について、先に示した図9を参照しつつ説明する。
図9の「チップ領域Rc(1)を描画」の欄に示すように、チップ領域Rc(1)が照射範囲Riを通過している間は、フィードフォワード制御が停止される一方、フィードバック制御が実行される。したがって、照射範囲Ri内に存在するチップ領域Rc(1)の高さを検出した結果に基づいて、光学ヘッド170のフォーカスがフィードバック制御される。そのため、例えばチップ領域Rc(1)が水平面から傾いている場合であっても、この傾きに応じてフォーカスを調整しつつ、当該チップ領域Rc(1)に描画を実行できる。
一方、図9の「チップ領域間の移動期間」に示すように、チップ領域Rc(1)が照射範囲Riを通過し終えると、フィードバック制御が停止されるとともに、次に描画すべきチップ領域Rc(2)に向けて光学ヘッド170のフォーカスの調整が開始される。具体的には、チップ領域Rc(1)が照射範囲Riを通過し終えたのをきっかけに、駆動制御部540は、移動距離算出部532から出力される移動量をネグレクトすることでフィードバック制御を停止するとともに、光学ヘッド170のフォーカスのフィードフォワード制御を開始する。なお、フィードフォワード制御の内容は、上記実施形態と同様である。
ここで、フィードバック制御を停止する理由は、次のとおりである。つまり、チップ領域Rc(1)が照射範囲Riを通過し終えてから、チップ領域Rc(2)が照射範囲Riに到達するまでの間は、距離検出部550は、チップ領域Rc(1)、Rc(2)の間の樹脂Mの表面を検出する。したがって、フィードバック制御を停止していないと、光学ヘッド17のフォーカスを樹脂Mの表面に合わせようとする制御が働く。その結果、次のチップ領域Rc(2)の高さに応じて光学ヘッド170のフォーカスをスムーズに調整できないおそれがある。そこで、チップ領域Rc(1)、Rc(2)の間を距離検出部550が検出している間は、フィードバック制御を停止することが好適となる。
そして、図9の「チップ領域Rc(2)を描画」の欄に示すように、チップ領域Rc(2)が照射範囲Riに到達すると、フィードフォワード制御が停止される一方、フィードバック制御が開始される。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、図10のステップS208では、描画を実行することが不適と判断された描画不適領域が複数のチップ領域Rcの中に存在する場合には、直ちに図10のフローチャートが終了されていた。しかしながら、描画不適領域が存在する場合には、例えばユーザインターフェース300を介して、その旨を作業者に報知しても良い(報知工程)。かかる構成では、作業者は、描画不適領域の存在を把握することができる。その結果、作業者は必要な対応作業を適切に実行することが可能となり、作業者の作業効率の向上を図ることができる。
さらに、描画不適領域が存在する旨を作業者に報知するとともに、少なくとも描画不適領域以外のチップ領域Rcに描画を実行するか否かを作業者に選択させても良い。かかる構成では、例えば描画不適領域が多い(所定個数以上である)場合には基板Wが有する全チップ領域Rcへの描画を止める一方、描画不適領域が少ない(所定個数未満である)場合には少なくとも描画不適領域以外のチップ領域Rcに描画を実行するといった判断を、作業者が行うことができる。
あるいは、図10のステップS207、S208において描画を実行することが不適と判断された描画不適領域が存在する場合には、ステップS217において描画不適領域以外のチップ領域Rcに描画を実行し、描画不適領域には描画を実行しないように構成しても良い。かかる構成では、所望の精度に満たない描画を描画不適領域に無駄に実行することなく、描画不適領域以外のチップ領域Rcに描画を適切に実行することができる。
また、図10のステップS207、S208において描画を実行することが不適と判断された描画不適領域が存在する場合には、現像処理を行った場合に描画不適領域のフォトレジストが全て除去されることを示すデータを含む描画データDdをステップS215、S216(データ生成工程)で生成しても良い。ここで、描画不適領域のフォトレジストが全て除去されることを示すデータとはネガ型フォトレジストを用いた場合には、描画不適領域に対して露光を実行しないことを示すデータが該当し、ポジ型フォトレジストを用いた場合には、描画不適領域の全体に対して露光を実行することを示すデータが該当する。
そして、ステップS217において、かかる描画データDdに基づいて描画を実行すれば良い。かかる構成では、描画データDdが描画不適領域へ露光を実行する旨を示す場合は、描画不適領域のフォトレジストの全体が露光され、描画データDdが描画不適領域への露光を実行しない旨を示す場合は、描画不適領域のフォトレジストに露光が実行されない。その結果、例えば以後のプロセスにおいて、フォトレジストが全て除去されたチップ領域Rcが描画不適領域であると容易に識別することが可能となる。
なお、上述のとおり描画不適領域は、描画に不適、すなわち露光に不適なチップ領域Rcである。しかしながら、この際の描画不適領域への露光は、フォトレジストの全体を露光できる程度の精度で足りるため(換言すれば、パターンを描画するほどの精度を要しないため)、実行しても構わない。
また、上記実施形態では、光学ヘッド170のフォーカスの調整を高さ情報Dhに基づき制御する構成と、基板Wの移動速度Vsを高さ情報Dhに基づき制御する構成とが併用されていた。しかしながら、これらのうち一方のみを用いても、各構成に対応する効果を奏することが可能である。
ちなみに、高さ情報Dhに基づくフィードフォワード制御を実行しない場合には、次のようにして光学ヘッド170のフォーカスを調整しても良い。つまり、基板Wの移動方向において照射範囲Riよりも上流側の位置の距離を検出するように、距離検出部550を配置する。そして、ステップS217においては、照射範囲Riに到達する前のチップ領域Rcまでの距離を距離検出部550で検出し、その結果に基づいてフォーカスを調整する。その結果、当該チップ領域Rcが照射範囲Riに到達するまでに、光学ヘッド170のフォーカスを調整して、当該チップ領域Rcに所望の精度で描画を実行できる。
また、上記実施形態では、図10のステップS217では、高さ情報Dhから求めた一定の移動速度Vsで基板Wに対して光学ヘッド170を相対的に移動させていた。しかしながら、光学ヘッド170を基板Wに相対的に移動させる移動速度Vsは一定である必要は無く、適宜変化させても良い。例えば、ステップS217において、高さ情報Dhに基づいて当該移動速度Vsをフィードフォワード制御することで、照射範囲Riに順番に到達するチップ領域Rcの間隔の違いに応じて移動速度Vsを調整しても良い。
具体的には、連続して照射範囲Riで描画が実行される2個のチップ領域Rcの組み合わせのそれぞれについて、下記条件式
F<Vc/Vs
を満たす移動速度Vsを求め、ステップS217においては、2個のチップ領域Rcの各組み合わせについて求められた移動速度Vsで光学ヘッド170を各チップ領域Rcの間を相対的に移動させても良い。
また、上記実施形態では、ステージ160によって基板Wを基台130に対して移動させることで、光学ヘッド170を基板Wに対して相対的に移動させていた。しかしながら、光学ヘッド170を基台130に対して移動させることで、光学ヘッド170を基板Wに対して相対的に移動させても良い。
また、上記実施形態では、アライメント用のカメラ150を用いてアライメントマークAMの高さHを求めていた。しかしながら、カメラ150とは別に距離センサを設けておき、カメラ150でアライメントマークAMのXY座標を認識するのと並行して、アライメントマークAMの高さHを距離センサによって求めても良い。
また、1個のチップ領域Rcに設けるアライメントマークAMの個数や配置についても適宜変更が可能である。