JP6304968B2 - 情報取得装置 - Google Patents
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Description
近年、中心波長が異なり、波長差が可変な2波長のパルス光を対象物に照射し、測定対象物からの誘導ラマン散乱やコヒーレントアンチストークスラマン散乱に基づく光を検出し、ラマンスペクトルを得ることで物質同定を行う研究が盛んに行われている。誘導ラマン散乱(Stimulated Raman Scattering)を以下ではSRSと略すことがある。またコヒーレントアンチストークスラマン散乱(Coherent Anti−stokes Raman Scattering)を以下ではCARSと略すことがある。
非特許文献1では以下の方法が開示されている。すなわち、特定波長を持つパルス光を、パルス光の波長に対して正常分散特性を持つフォトニック結晶ファイバーに入射させてスペクトル幅の狭い波長変換光を生成し、波長変換前後の2波長のパルス光を用いてCARSイメージングを行う。
また、特許文献1では以下の方法が開示されている。すなわち、特定波長を持つパルス光を、パルス光の波長に対して異常分散特性を持つ複数のフォトニック結晶ファイバーに入射させてスペクトル幅の広い波長変換光を生成し、波長変換前後の2波長のパルス光を用いてCARSイメージングを行う。
すなわち、非特許文献1に開示の方法では、光源の波長可変範囲が狭く、生体で発生するCARS信号の周波数範囲が狭いという問題があった。
また、光源のノイズ成分が大きく、CARS信号に対するノイズの比(SN比)が低下するという問題があった。
また、特許文献1に開示の方法では、異常分散特性(群速度分散β2<0)を持つフォトニック結晶ファイバーを用いるため、波長変換後の波長幅が広く、用いるパルス光の利用効率が小さいという問題があった。また、光源のノイズ成分が大きく、SN比が低下するという問題があった。
前記光源部から出射される中心波長λcのパルス光を、複数の光路に分岐する分岐部と、
前記複数の光路の各々に設けられた導波路と、
前記複数の光路の各々に設けられた導波路から出射される光を合波する合波部と、
前記合波部により合波され前記物体に照射された光を検出して情報を取得する情報取得部と、
を備え、
前記複数の光路の各々に設けられた導波路が、前記互いにゼロ分散波長が異なる複数の導波路によって構成され、
前記複数の導波路によって、前記中心波長λcのパルス光とは中心波長の異なる複数の波長変換光を発生させ、
前記複数の導波路の前記λcにおける群速度分散をβ2、前記群速度分散β2の2次導関数をβ4とするとき、前記複数の導波路はβ2>0かつβ4<0を満たすことを特徴とする。
本実施形態に係る情報取得装置は、光源部から出射されるパルス光を測定対象物(物体)に照射し、該測定対象物から反射または散乱または透過する光、あるいは該測定対象物において発光する光を検出し、該測定対象物の情報を取得するように構成される。
具体的には、図1(a)に示すように、中心波長λcのパルス光を発する光源部101と、光源部101から発せられたパルス光を複数の光路に分岐する分岐部102と、複数の光路の各々に設けられた、互いにゼロ分散波長が異なる複数の導波路103と、を備える。
更に、複数の導波路103から出た光を合波する合波部104と、合波部104から出射され、測定対象物105に照射されることによって生じた光を検出する光検出部106、107とを有する。そして、光検出部106、107で検出された光の強度に基づいて物体105の情報を取得する情報取得部108と、を備える。光検出部106は主に105
を透過した光など、測定対象物105から光検出部106の方向へ進む光を検出する。光検出部107は主に物体105から反射、散乱された結果、ハーフミラー109に反射されて光検出部107の方向へ進む光を検出する。すなわち、光検出部106、107は様々な要因で発生した光を漏れなく検出するために設けられるものであり、光検出部106、107で検出される光は発生要因に限定されない。したがって、光検出部は106、107以外に設けるようにして、3つ以上あってもよい。
さらに、物体105に照射されることによって生じた光は、物体105が蛍光物質などを含む場合、物体105に照射された光を吸収して発せられた蛍光、燐光なども含む。
光源部101から出射されて物体105に照射されることによって生じる光は、多光子励起蛍光、非線形効果による高次高調波発生、誘導ラマン散乱、コヒーレントアンチストークスラマン散乱などの現象に基づくものを含む。
上記吸収には、通常の散乱角度の違いに基づく吸収、電子励起による吸収、分子振動による吸収、それらの倍波吸収などがある。
なお、物体103によって反射された光、散乱された光を検出しやすくするために、図で示すように、光源部101から物体105へ照射される光の光路上にハーフミラー109を設けてもよい。
なお、光検出部106では反射光、散乱光、透過光、蛍光、燐光のうち少なくともいずれか1種を検出すればよい。
合波部104から互いに異なる中心波長を有する複数のパルス光が合波された光が出射されるため、物体105について、異なる波長に対する光特性に関する情報を同時に取得することができる。
本実施形態において、複数の導波路103の、入射光波長に対する群速度分散をβ2、群速度分散β2の2次導関数をβ4とするとき、導波路103はβ2>0かつβ4<0を満たすようにする。導波路の波長分散特性がβ2>0かつβ4<0を満たす場合、その導波路を経て出るパルス光のスペクトル幅は、図3(b)に示される結果から小さい。そのため、各導波路103を出た各々の光の多くをSRSやCARSに用いることができる。すなわち、パルス光の利用効率が高い。
一方、特許文献1のように、導波路の波長分散特性が異常分散特性(β2<0)を満たす場合、その導波路を経て出るパルス光のスペクトル幅は、図3(c)(d)に示すように大きい。したがって、SARSやCARSに用いることができる光は、大きなスペクトル幅を有するパルス光のうちの一部である。そのためパルス光の利用効率が低い。
以下、詳細を説明する。
図1(b)は、光周波数に対する導波路103の群速度分散β2特性を示すグラフである。
β4<0を満たすとは、図1(b)のグラフが上に凸になることである。
これは導波路103の材料に応じて導波路形状を調整することにより満たすことができる
。
例えば、導波路103として光ファイバーを用いる場合、導波路分散を調整することで実現可能である。
導波路103を全てこのように設定することで、パルス光の波長に対し±Δλだけ離れた箇所に、スペクトル幅の狭い波長変換されたパルス光を生成することができる。波長変換としては3次の非線形現象である四光波混合を利用している。
ここで、四光波混合による波長変換の原理について説明する。
四光波混合とは3次の非線形現象の一つであり、波長の異なる四つの光の相互作用により、ある二つの波長の光のエネルギーが、残り二つの波長の光のエネルギーへと変換される現象のことである。
例えば、周波数ω1とω2の光を導波路103へ入射すると、ω1+ω2=ω3+ω4を満たす周波数ω3とω4の光が新たに発生する。
また、入射光の周波数を一つとし、その周波数をωc=ω1=ω2としたときには、周波数ωcを中心とし、周波数差±Δωだけ離れた光が対称に発生することになる。
一般的に高周波数側をシグナル光、低周波数側をアイドラー光と呼び、シグナル光の周波数はωs=ωc+Δω、アイドラー光の周波数はωi=ωc−Δωと表される。
数式(1)
数式(2)
数式(3)
ここで、数式(2)をグラフにしたものを図2に、数式(3)をグラフにしたものを図3にそれぞれ示す。
図2においては縦軸をΔβ、横軸をΔωとし、図3においては縦軸をG、横軸をΔωとしている。
図2、図3において、β2、β4の正負に対して4通りのグラフをそれぞれ示す。
また、数式(1)で表されるΔβの位相整合条件が成立する範囲も図2に合わせて示す。導波路103の非線形係数γ、入射パルス光のピーク強度P0は共に正の値であるため、数式(1)よりΔβは負の値をとることになる。
すなわち、図3(c)(d)に示すように、ある特定周波数のパルス光を導波路103に入射させると、比較的広い周波数帯域に四光波混合利得Gが存在することになり、広い周波数帯域にわたってシグナル光とアイドラー光が生成される。一方、本発明では図2(b)に示すように、入射パルス光をβ2>0、β4<0を満たす正常分散領域で動作させる。
このとき、数式(1)で表される位相整合条件を満たすΔωの範囲が、入射パルス光の周波数から離れた箇所に比較的狭い領域で存在することがわかる。
すなわち、図3(b)に示すように、ある特定周波数のパルス光を導波路103に入射させると、比較的狭い周波数帯域に四光波混合利得Gが存在することになり、周波数帯域の狭いシグナル光とアイドラー光が生成される。
数式(4)
式(5)より、入射パルス光の波長と導波路103のゼロ分散波長の差を大きくするに従い、その波長シフト量Δλも大きくなることがわかる。
したがって、導波路103として、ゼロ分散波長の異なる複数の導波路103を用いることにより、入射パルス光の波長に対し、中心波長の異なる複数の波長変換光を発生させることができる。
また、入射パルス光の波長を変化させることで、複数の波長変換光をさらに波長シフトさせることができる。
これら複数の波長変換光を用いることで、波長可変範囲をさらに拡大することができる。また、数式(7)より、非線形係数γが小さく、β4の大きな導波路を用いることで、スペクトル幅δλの狭い波長変換光を生成することが可能である。
すなわち、波長変換後の強度は入射光強度の2乗に比例する。したがって、強度の弱い光の変換効率は小さく、強度の強い光のみが効果的に波長変換される。
入射パルス光に自然放出光などのノイズ成分が重畳されていたとしても、強度の小さいノイズ成分の変換効率は極めて低いため、波長変換光のノイズ成分は少なくなる。
波長変換後の信号成分はIs’=k×Is2(kは比例定数)、波長変換後のノイズ成分はIn’=k×In2と表される。
入射光パルスのSN比はIs/Inで表され、波長変換後のSN比はIs’/In’=(Is/In)2で表されるため、入射光パルスのSN比を2乗したものとなり、入射光パルスのSN比よりも大きくなる。
よって、波長変換光のみを情報取得に用いることで良好なSN比を実現できる。以上のように、本実施形態では、ゼロ分散波長の異なる複数の導波路を用い、複数の波長変換光を発生させることで、パルス光の波長可変範囲を拡大できる。
また、波長変換光はノイズ成分が少ないため、波長変換光のみを情報取得に用いることで良好なSN比を実現できる。
本実施形態における光源部は、パルス光を出射するものであれば特に限定されないが、出射される光の波長を変化させることができる波長可変光源であることが好ましい。
本実施形態における光源部から出射されるパルス光のパルス幅は、1ns以下であることが好ましく、100ps以下であることがさらに好ましい。
これは、パルス光のパルス幅が狭いほどパルス光のピーク強度が大きく、測定対象物の非線形効果の有無がわかりやすくなるからである。また、パルス幅は1ps以上であることが好ましい。パルス幅が狭すぎるとスペクトル幅は広がってしまい、スペクトル分解能が低下してしまうからである。ここでいうパルス幅はパルス光の半値幅である。
以上のとおり、光源部から出射されるパルス光のパルス幅は、1ps以上1ns以下の範囲から選択される。
また、本実施形態における光源部から出射される各パルス光の中心波長は、300nm以上1500nm以下であることが好ましく、700nm以上1300nm以下であることが特に好ましい。
また、光源部のパルスレートは、1MHz以上1GHz以下であることが好ましい。
なお、互いに異なる中心波長を有する複数のパルス光を合波する合波器として、光カップラ、回折格子、プリズムなどを用いることができる。
本実施形態における情報取得部108は、光検出部106、107で検出された光の強度の時間波形に基づいて、物体105の情報を取得する。
情報取得部として、CPUを有するコンピュータを備え、このコンピュータが同期検出機能を有するアプリケーションを内蔵する構成例が挙げられる。
他の例として、情報取得部がロックインアンプ(ロックイン検出部)などの同期検出機能を有する装置を有する構成例が挙げられる。一般的に分子のラマン散乱断面積σは小さいため、誘導ラマン散乱によるポンプ光またはストークス光の強度変化も微弱になる。
このため、ポンプ光、ストークス光の強度変化からSRS信号を検出する際、ポンプ光のノイズ成分などに信号が埋もれる場合がある。
したがって、ポンプ光またはストークス光のいずれか一方の強度を一定の周波数で変調し、この周波数に同期して変化するSRS信号を同期検出することが好ましい。
これにより、同期検出した信号を増幅することで、SRS信号を高感度に検出することが可能となる。
なお、ロックインアンプの代わりにFFTアナライザなどを用いることができる。FFTアナライザを用いることで、ロックインアンプに比べ高速にSRS信号を検出することが可能である。
[実施例1]
実施例1として、本発明を適用した波長可変パルスレーザを用いた誘導ラマン分光顕微鏡装置の構成例について、図4を用いて説明する。
本実施例の誘導ラマン分光顕微鏡装置は、中心波長が可変なパルスレーザ401と、光分岐器402と、2つの導波路403、404と、バンドパスフィルタ405、406と、光変調器407と、光合波器408と、ビームエキスパンダ409と、を備える。
更に、Xスキャンミラー410と、Yスキャンミラー411と、対物レンズ412と、ステージ413と、集光レンズ414と、バンドパスフィルタ415と、受光素子416と、同期検出器417と、制御ユニット418と、を備える。
ステージ413上には観察する対象物(測定対象物)419を配置する。この対象物419として生体細胞試料を用いた。
パルスレーザ401の可変波長範囲を1020〜1040nm、スペクトル幅を0.1nm、パルス幅を10ps、ピークパワーを1kW、パルスの繰り返し周波数を100MHzとした。
パルスレーザ401からの出力光は、光分岐器402で2分岐され、2つの導波路403、404に入射される。
導波路403として、ゼロ分散波長が1050nmであるフォトニック結晶ファイバーを用いた。
また、導波路404として、ゼロ分散波長が1080nmであるフォトニック結晶ファイバーを用いた。
また、両方のフォトニック結晶ファイバーの群速度分散β2の1次導関数β3を1E−40(s3/m)、2次導関数β4を−5E−55(s4/m)、非線形係数γを0.01(1/W/km)、ファイバー長さを1mとした。
さらに、パルスレーザ401の波長を1020〜1040nmと変化させたとき、導波路403からは850〜920nm、1190〜1270nmの波長域で可変できる変換光が発生した。
また、導波路404からは800〜850nm、1300〜1400nmの波長域で可変できる変換光が発生した。
これら変換光のスペクトル幅は全て0.1nm程度であった。波長可変幅及びスペクトル幅は、前述の数式(1)、(2)に上記の値を代入して得られる値と同程度であった。
バンドパスフィルタ405は850〜920nmの光を透過し、他の波長域の光は透過しないよう設定され、バンドパスフィルタ406は800〜850nmの光を透過し、他の波長域の光は透過しないよう設定されている。
バンドパスフィルタ405からの出力を誘導ラマン散乱のストークス光、バンドパスフィルタ406からの出力を誘導ラマン散乱のポンプ光として使用する。
光変調器407は、バンドパスフィルタ405からの出力を強度変調し、変調周波数を10MHzとした。
バンドパスフィルタ406と光変調器407からの出力光は、光合波器408で合波され、ビームエキスパンダ409により径の太い光束に変換される。
本実施例では光合波器408として光カップラを用いたが、回折格子やプリズムを用いてもよい。
出力光はXスキャンミラー410、Yスキャンミラー411を通過し、対物レンズ412によりステージ413上の対象物419に向けて集光される。
集光点中央の微小領域から外れると誘導ラマン散乱が生じないので、ポンプ光、ストークス光の強度変化は生じない。
なお、レーザスポットのサイズは、対物レンズ412のNAが大きいほど小さくなり、それに伴い、誘導ラマン散乱が生じる微小領域のサイズも小さくなる。
集光点中央の微小領域で発生した誘導ラマン散乱により強度変化を受けたポンプ光は、対物レンズ412を透過し、集光レンズ414、バンドパスフィルタ415を通過後、受光素子416へ入射する。
バンドパスフィルタ415は、受光素子416に不要な光が入射するのを防ぐ。ポンプ光の波長は800〜850nmであるため、この波長域の光を透過し、他の波長域の光は透過しないよう設定されている。
また、Xスキャンミラー410、Yスキャンミラー411として1対のガルバノミラーを用いている。主走査用のXスキャンミラー410と副走査用のYスキャンミラー411とを、互いの回転軸が直交するように配置し、制御ユニット418によって駆動される。
また、Yスキャンミラー411が駆動されると、集光点が対象物419内部をX方向と垂直なY方向へスキャンされる。
なお、X方向、Y方向は共に対物レンズ412の光軸方向に垂直な方向に設定されている。よって、Xスキャンミラー410の角度を1往復させる毎にYスキャンミラー411の角度を1ピッチ分ずつ変化させれば、集光点で対象物419内部を二次元的にスキャンすることができる。
さらに、一回の二次元スキャン終了後、ステージ413を動かして集光点を光軸方向に所定距離だけ移動させ、同様の2次元スキャンを繰り返すことで、対象物419の三次元画像を得ることが可能となる。
受光素子416で検出された信号は、同期検出器417に入力される。
同期検出器417としてロックインアンプを用い、10MHzの信号成分を測定した。また、本実施例において同期検出器417としてロックインアンプを用いたが、FFTアナライザを用いてもよい。
また、波長変換光は、ノイズ成分が少ないため、波長変換光のみを情報取得に用いることで良好なSN比を実現できる。
さらに、両方のフォトニック結晶ファイバーからの出力はともに短波長側を取り出す構成としているため、2波長の波長差を小さくできる。
したがって、本実施例は低いラマン周波数を観測したいときに有利な構成である。
実施例2として、実施例1と異なる形態の波長可変パルスレーザを用いた誘導ラマン分光顕微鏡装置の構成例について、図5を用いて説明する。
本実施例の誘導ラマン分光顕微鏡装置は、中心波長が可変なパルスレーザ501と、光分岐器502と、2つの導波路503、504と、バンドパスフィルタ505、506と、光変調器507と、光合波器508と、ビームエキスパンダ509と、を備える。
更に、Xスキャンミラー510と、Yスキャンミラー511と、対物レンズ512と、ステージ513と、集光レンズ514と、バンドパスフィルタ515と、受光素子516と、同期検出器517と、制御ユニット518と、を備える。
バンドパスフィルタ505、506以外は、実施例1と同様の構成である。
ステージ513上には観察する対象物(測定対象物)519を配置する。この対象物519として生体細胞試料を用いた。
パルスレーザ501の可変波長範囲を1020〜1040nm、スペクトル幅を0.1nm、パルス幅を10ps、ピークパワーを1kW、パルスの繰り返し周波数を100MHzとした。
パルスレーザ501からの出力光は、光分岐器502で2分岐され、2つの導波路503、504に入射される。導波路503として、ゼロ分散波長が1050nmであるフォトニック結晶ファイバーを用いた。
また、導波路504として、ゼロ分散波長が1080nmであるフォトニック結晶ファイバーを用いた。
また、両方のフォトニック結晶ファイバーの群速度分散β2の1次導関数β3を1E−40(s3/m)、2次導関数β4を−5E−55(s4/m)、非線形係数γを0.01(1/W/km)、ファイバー長さを1mとした。
さらに、パルスレーザ501の波長を1020〜1040nmと変化させたとき、導波路503からは850〜920nm、1190〜1270nmの波長域で可変できる変換光が発生した。
また、導波路504からは800〜850nm、1300〜1400nmの波長域で可変できる変換光が発生した。これら変換光のスペクトル幅は全て0.1nm程度であった。波長可変幅及びスペクトル幅は、前述の数式(1)、(2)に上記の値を代入して得られる値と同程度であった。
バンドパスフィルタ505は1190〜1270nmの光を透過し、他の波長域の光は透過しないよう設定され、バンドパスフィルタ506は800〜850nmの光を透過し、他の波長域の光は透過しないよう設定されている。
バンドパスフィルタ505からの出力を誘導ラマン散乱のストークス光、バンドパスフィルタ506からの出力を誘導ラマン散乱のポンプ光として使用する。
光変調器507は、バンドパスフィルタ505からの出力を強度変調し、変調周波数を10MHzとした。
バンドパスフィルタ506と光変調器507からの出力光は、光合波器508で合波され、ビームエキスパンダ509により径の太い光束に変換される。
本実施例では光合波器508として光カップラを用いたが、回折格子やプリズムを用いてもよい。
出力光はXスキャンミラー510、Yスキャンミラー511を通過し、対物レンズ512によりステージ513上の対象物519に向けて集光される。
集光点中央の微小領域から外れると誘導ラマン散乱が生じないので、ポンプ光、ストークス光の強度変化は生じない。なお、レーザスポットのサイズは、対物レンズ512のNAが大きいほど小さくなり、それに伴い、誘導ラマン散乱が生じる微小領域のサイズも小さくなる。
集光点中央の微小領域で発生した誘導ラマン散乱により強度変化を受けたポンプ光は、対物レンズ512を透過し、集光レンズ514、バンドパスフィルタ515を通過後、受光素子516へ入射する。
バンドパスフィルタ515は、受光素子516に不要な光が入射するのを防ぐ。ポンプ光の波長は800〜850nmであるため、この波長域の光を透過し、他の波長域の光は透過しないよう設定されている。
主走査用のXスキャンミラー510と副走査用のYスキャンミラー511とを、互いの回転軸が直交するように配置し、制御ユニット518によって駆動される。
Xスキャンミラー510が駆動されると、集光点が対象物519内部をX方向へスキャンされる。
また、Yスキャンミラー511が駆動されると、集光点が対象物519内部をX方向と垂直なY方向へスキャンされる。
なお、X方向、Y方向は共に対物レンズ512の光軸方向に垂直な方向に設定されている。
よって、Xスキャンミラー510の角度を1往復させる毎にYスキャンミラー511の角度を1ピッチ分ずつ変化させれば、集光点で対象物519内部を二次元的にスキャンすることができる。
受光素子516で検出された信号は、同期検出器517に入力される。同期検出器517としてロックインアンプを用い、10MHzの信号成分を測定した。
また、本実施例において同期検出器517としてロックインアンプを用いたが、FFTアナライザを用いてもよい。
また、波長変換光はノイズ成分が少ないため、波長変換光のみを情報取得に用いることで良好なSN比を実現できる。
さらに、一方のフォトニック結晶ファイバーからの出力は短波長側、もう一方のフォトニック結晶ファイバーからの出力は長波長側を取り出す構成としているため、2波長の波長差を大きくできる。
したがって、本実施例は高いラマン周波数を観測したいときに有利な構成である。
102:分岐部
103:導波路
104:合波部
105:測定対象物
106:光検出部
107:光検出部
108:情報取得部
109:ハーフミラー
Claims (11)
- 中心波長λcのパルス光を発生させる光源部と、
前記光源部から出射される中心波長λcのパルス光を、複数の光路に分岐する分岐部と、
前記複数の光路の各々に設けられた導波路と、
前記複数の光路の各々に設けられた導波路から出射される光を合波する合波部と、
前記合波部から出射された光が物体に照射されることで発生する光を検出することによって前記物体の情報を取得する情報取得部と、
を備える情報取得装置であって、
前記複数の光路の各々に設けられた導波路は、互いにゼロ分散波長が異なり、前記複数の光路の各々に設けられた導波路はいずれも、前記中心波長λcのパルス光が前記導波路を経ることによって、前記λcよりも中心波長の短い第一の波長変換光と、前記λcよりも中心波長の長い第二の波長変換光とを発生させるものであり、前記導波路の各々が、前記λcにおける群速度分散をβ2、前記群速度分散β2の2次導関数をβ4とするとき、前記導波路はβ2>0かつβ4<0を満たすことを特徴とする情報取得装置。 - 前記第一の波長変換光及び前記第二の波長変換光の少なくともいずれか一方のみが、前記物体に照射されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の情報取得装置。
- 前記光源部は、前記中心波長λcが可変であるパルスレーザによって構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の情報取得装置。
- 前記光源部から出射されるパルス光のパルス幅は、1ps以上1ns以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の情報取得装置。
- 前記光源部から出射されるパルス光のパルスレートは、1MHz以上1GHz以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の情報取得装置。
- 前記情報取得部は、前記物体に存在する分子の分子振動に基づく誘導ラマン散乱またはコヒーレントアンチストークスラマン散乱に基づく光を検出する検出部を含んでいることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の情報取得装置。
- 前記情報取得部は、ロックイン検出部を含んでいることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の情報取得装置。
- 前記複数の光路は2つの光路を含み構成されており、
前記2つの光路の各々に設けられた導波路から共に、前記第一の波長変換光が出射されるように構成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の情報取得装置。 - 前記複数の光路は2つの光路を含み構成されており、前記2つの光路のうち一方の光路に設けられた導波路から前記第一の波長変換光が出射されるように構成され、前記2つの光路のうち他方の光路に設けられた導波路から前記第二の波長変換光が出射されるように構成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の情報取得装置。
- 前記情報取得装置は、顕微鏡装置を構成していることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の情報取得装置。
- 前記顕微鏡装置が、誘導ラマン分光顕微鏡装置であることを特徴とする請求項10に記載の情報取得装置。
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