以下、本実施形態の除去装置、定着装置、及び画像形成装置の一例を図面に基づき説明する。先ず、画像形成装置の一例の全体構成及び動作を説明し、次いで、本実施形態の要部である除去装置及び定着装置の一例の構成及び動作について説明する。
なお、以下の説明では、図1に矢印Zで示す方向を装置高さ方向、図1に矢印Xで示す方向を装置幅方向とする。また、装置高さ方向及び装置幅方向のそれぞれに直交する方向(Yで示す)を装置奥行き方向とする。そして、画像形成装置10をユーザ(図示省略)が立つ側から見て(正面視して)、装置高さ方向、装置幅方向、装置奥行き方向をZ方向、X方向、Y方向と記載する。
さらに、X方向、Y方向、Z方向のそれぞれ一方側と他方側を区別する必要がある場合は、画像形成装置10を正面視して、上側を+Z側、下側を−Z側、右側を+X側、左側を−X側、奥側を+Y側、前側を−Y側と記載する。
〔全体構成〕
図1に示すように、画像形成装置10は、4つの画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kと、4つの転写装置20Y、20M、20C、20Kと、搬送装置(図示省略)の一部を構成する搬送ロール28と、定着装置40とを有している。画像形成ユニット11Y、11M、11C、11K、及び転写装置20Y、20M、20C、20Kは、画像形成部の一例である。
なお、符号の添え字の「Y」はイエロー用、「M」はマゼンタ用、「C」はシアン用、「K」はブラック用であることを示している。また、画像形成装置10における各色に対応する各ユニットの配置は、後述する用紙Pの搬送方向に沿って上流側から順に、Y、M、C、Kとなっている。
搬送装置(図示省略)は、記録媒体の一例としての用紙Pを予め定められた搬送速度で図示の矢印A方向(搬送方向)に搬送するようになっている。用紙Pは、連張紙であり、一例として、搬送方向における搬送ロール28よりも上流側では、−Z側から+Z側へ搬送され、搬送ロール28よりも下流側では、+Z側から−Z側へ搬送されるようになっている。
また、用紙Pの搬送方向において、搬送ロール28は、4つの画像形成ユニット11Y、11M、11C、11K及び4つの転写装置20Y、20M、20C、20Kの下流側に配置されている。定着装置40は、搬送ロール28の下流側に配置されている。なお、画像形成装置10の各部の動作は、制御部30(図3参照)により制御されるようになっている。
制御部30(図3参照)は、画像形成装置10全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されている。即ち、制御部30は、CPU(Central Processing Unit)、各種プログラムを記憶したROM(Read Only Memory)、プログラム実行時に使用されるRAM(Random Access Memory)、各情報を記憶する不揮発性メモリ、及び入出力インターフェースを有する。なお、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ、及び入出力インターフェースの図示は省略する。また、制御部30には、一例として、操作パネル(図示省略)で入力された使用する用紙Pの種類及び画像の光沢度の情報が送られるようになっている。
画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kは、それぞれ、静電潜像を保持する円筒状の感光体12Y、12M、12C、12Kを有している。また、画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kは、それぞれ、帯電装置14Y、14M、14C、14Kと、露光装置16Y、16M、16C、16Kと、現像装置18Y、18M、18C、18Kとを有している。
(感光体)
感光体12Y、12M、12C、12Kは、それぞれ、図中の矢印+R方向(時計回り方向)に回転可能とされている。また、帯電装置14Y、14M、14C、14K、露光装置16Y、16M、16C、16K及び現像装置18Y、18M、18C、18Kは、+R方向において、この順番で、感光体12Y、12M、12C、12Kの周囲に配置されている。
(帯電装置及び露光装置)
帯電装置14Y、14M、14C、14Kは、感光体12Y、12M、12C、12Kの外周面を帯電させるものである。露光装置16Y、16M、16C、16Kは、帯電装置14Y、14M、14C、14Kにより帯電された感光体12Y、12M、12C、12Kの外周面を画像データに基づいて露光して、静電潜像を形成するためのものである。
(現像装置)
現像装置18Y、18M、18C、18Kは、露光装置16Y、16M、16C、16Kによって感光体12Y、12M、12C、12Kの外周面に形成された静電潜像を液体現像剤Gにより現像することで、可視のトナー像TAを得るためのものである。
液体現像剤Gは、一例として、粉体のトナーT(図4(A)参照)をキャリア液に分散させて得た液状タイプの現像剤である。キャリア液としては、パラフィン系オイル、エーテル系オイル、シリコーン系オイル、及び植物系オイルなどが挙げられるが、これらに限定されない。本実施形態では、液体現像剤Gの一例として、トナーTが、ポリエステル樹脂を主成分としており、キャリア液が、ジメチルシリコーンオイルを主成分とする不揮発性のオイルとなっている。なお、以後の説明では、キャリア液の一例として、オイルCA(図4(A)参照)と記載する。
(転写装置)
転写装置20Y、20M、20C、20Kは、中間転写ロール22Y、22M、22C、22Kと、バックアップロール24Y、24M、24C、24Kとを有している。なお、転写装置20Yと、転写装置20M、20C、20Kとは、トナーT(図4(A)参照)を除く他の構成が同様となっているため、ここでは、転写装置20Yについて説明し、転写装置20M、20C、20Kの説明を省略する。
中間転写ロール22Yは、感光体12Yの回転方向における帯電装置14Yの上流側で、且つ現像装置18Yの下流側の一次転写位置X1において、感光体12Yに接触し、矢印−Rで示す方向(反時計回り方向)に従動回転するようになっている。これにより、転写装置20Yでは、感光体12Yの表面に現像により形成されたトナー像TAが、一次転写位置X1において、中間転写ロール22Yへと一次転写される。
また、トナー像TAが中間転写ロール22Yへ一次転写される際、オイルCA(図4(A)参照)も中間転写ロール22Yへ移行する。なお、感光体12Yと中間転写ロール22Yとの間には、電源(図示省略)により一次転写電圧(バイアス電圧)が印加されるようになっている。
バックアップロール24Yは、中間転写ロール22Yの感光体12Y側とは反対側において、中間転写ロール22Yに対向して配置されている。そして、バックアップロール24Yは、中間転写ロール22Yとバックアップロール24Yとの間に用紙Pが供給されるとき、矢印+Rで示す方向に回転する。
中間転写ロール22Yと用紙Pとが接触する位置が二次転写位置X2である。そして、中間転写ロール22Yとバックアップロール24Yとの間には、二次転写電圧(バイアス電圧)が印加されるようになっている。これにより、中間転写ロール22Yに一次転写されたトナー像TAが、二次転写位置X2において、用紙Pへと二次転写される。また、トナー像TAが用紙Pに二次転写されるとき、オイルCA(図4(A)参照)も用紙Pへと移行する。
(画像形成動作)
画像形成装置10では、以下のようにして画像が形成される。
画像形成ユニット11Yにおいて、感光体12Yが回転し、帯電装置14Yにより感光体12Yの外周面が帯電される。次いで、帯電された感光体12Yの表面を露光装置16Yによって露光走査することで、感光体12Yの外周面には、第一色(Y)の静電潜像(図示省略)が形成される。この静電潜像は、現像装置18Yによって現像され、感光体12Yの表面には、可視化されたトナー像TAが形成される。
トナー像TAは、感光体12Yの回転により一次転写位置X1に至り、一次転写電圧により中間転写ロール22Yに一次転写される。このとき、既述のように、オイルCA(図4(A)参照)もトナーTと共に中間転写ロール22Yへ移行する。そして、中間転写ロール22Yに転写されたトナー像TAは、中間転写ロール22Yの回転で二次転写位置X2に至り、二次転写電圧により用紙Pに二次転写される。このとき、既述のように、オイルCAも用紙Pへと移行する。
同様にして、画像形成ユニット11M、11C、11Kによって形成される第二色(M)、第三色(C)、及び第四色(K)のトナー像TAが、中間転写ロール22M、22C、22Kを介して、用紙Pに重なるように順次転写される。なお、用紙Pにおいて、各色のトナー像TAの位置がずれないように、用紙Pの搬送速度と、感光体12Y、12M、12C、12Kの回転速度とが同期されているので、用紙Pには、多重のトナー像TAが形成される。多重のトナー像TAは、後述する定着装置40において加熱処理及び加圧処理され、用紙Pに定着される。
中間転写ロール22Yへのトナー像TAの一次転写が終了した感光体12Yは、クリーナー(図示省略)により清掃され、残留しているオイルCAなどが取り除かれる。また、用紙Pへのトナー像TAの二次転写が終了した中間転写ロール22Yの外周面もクリーナー(図示省略)により清掃され、残留しているオイルCAなどが取り除かれる。
なお、用紙Pに単色画像を形成する場合、例えば、黒色(K)の画像を形成する場合には、他の画像形成ユニット11Y、11M、11Cが、中間転写ロール22Y、22M、22Cから離れる(リトラクトされる)。
〔要部構成〕
次に、定着装置40について説明する。
図2に示すように、定着装置40は、一例として、補助加熱部50と、除去装置の一例としての定着前処理部60と、定着部80とを有している。補助加熱部50では、用紙P及び用紙P上のトナー像TAが加熱される。定着前処理部60では、補助加熱部50で加熱されたトナー像TAからオイルCA(図4(A)参照)の一部を除去する前処理が行われる。定着部80では、定着前処理部60による前処理後のトナー像TBが用紙Pに定着される。なお、定着部80で定着された後のトナー像をTCと称する。
<補助加熱部>
補助加熱部50は、一例として、8つのカーボンヒータ52を有している。カーボンヒータ52は、用紙Pの搬送方向における定着前処理部60よりも上流側で、用紙Pの+X側と−X側にそれぞれ4つずつ設けられており、用紙Pに対して非接触配置となっている。そして、カーボンヒータ52は、電源(図示省略)からの通電により用紙Pに向けて赤外線を放射し、用紙P及びトナー像TAを加熱するようになっている。本実施形態では、一例として、用紙Pが90[℃]、及び用紙P上のトナー像TAが110[℃]となるように、カーボンヒータ52の出力が設定されている。
<定着前処理部>
定着前処理部60は、除去手段の一例としての複数のオイル除去部62と、変更手段の一例としての前処理制御部70(図3参照)とを有している。オイル除去部62は、オイルCA(図4(A)参照)の一部を用紙Pから除去する前処理を行うものである。前処理制御部70は、後述する各設定を変更するためのものである。
(オイル除去部)
オイル除去部62は、一例として、用紙Pの搬送方向で補助加熱部50よりも下流側で、該搬送方向に等間隔で並んで6つ配置されている。6つのオイル除去部62は、いずれも同様の構成であるため、図2では1つのオイル除去部62の各部材に符号を付し、他のオイル除去部62の符号を省略する。なお、図2では6つのオイル除去部62を示しているが、画像形成装置10では、オイル除去部62は、一例として、9つまで配置可能となっている。
また、オイル除去部62は、回転体の一例としての金属ロール64と、加圧部材の一例としての加圧ロール65と、金属ロール64を加熱する加熱手段の一例としてのヒータ66とを有している。さらに、オイル除去部62は、金属ロール64及び加圧ロール65を移動させる移動手段の一例としてのリトラクト機構部72(図5(A)参照)を有している。加えて、オイル除去部62は、金属ロール64の外周面を清掃するクリーニングブレード67と、加圧ロール65を加熱するハロゲンヒータ68と、を有している。
金属ロール64は、一例として、アルミニウム製であり、円筒状に形成されている。そして、金属ロール64は、用紙Pの+X側(トナー像TA側)にY方向を軸方向として、モータ63(図3参照)により回転可能に設けられている。また、金属ロール64の外周面は、研磨により鏡面状態とされている。具体的には、金属ロール64の表面粗さは、一例として、Ra≦1.0[μm]が望ましい。さらに、金属ロール64の外径は、加圧ロール65の外径とほぼ同じ大きさとなっている。
用紙Pが無い状態で、金属ロール64と加圧ロール65とが接触する部位を接触部(ニップ部)Nと記載する。また、オイル除去部62には、金属ロール64の回転速度(周速度)を検出する回転速度センサ73(図3参照)が設けられている。ここで、金属ロール64の回転速度は、用紙Pが接触部Nを通過する時間が設定時間となるように、回転速度センサ73の出力に基づいて、後述する前処理制御部70によって、フィードバック制御されるようになっている。
クリーニングブレード67は、耐油性、耐磨耗性に優れた板状のゴム部材で構成され、一例として、フッ素ゴムが使用されている。また、クリーニングブレード67は、一端部が、金属ロール64の回転方向に対して逆方向を向くように、金属ロール64の外周面と接触している。これにより、金属ロール64の外周面に付着したオイルCA(図4(A)参照)が、金属ロール64の回転に伴って、クリーニングブレード67により回収されるようになっている。
加圧ロール65は、一例として、円筒状に形成され、用紙Pの−X側にY方向を軸方向として回転可能に設けられている。また、加圧ロール65は、径方向内側から外側へ向けて、基層65A、弾性層65B、及び離型層65Cを有する多層構造となっている。さらに、加圧ロール65は、用紙Pを挟んで金属ロール64と対向するように設けられており、金属ロール64と共に用紙Pを加圧している。金属ロール64はほぼ一定の速度で回転するが、加圧ロール65は金属ロール64よりも低速で回転するようになっている。
基層65Aは、一例として、SUS(ステンレス鋼)製となっている。弾性層65Bは、一例として、シリコンゴム製となっている。離型層65Cは、一例として、PFA(4フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレンン共重合体)製となっている。
ヒータ66は、一例として、ハロゲンヒータであり、各金属ロール64の内側にY方向に沿って1本ずつ挿入されている。そして、各ヒータ66は、電源(図示省略)からの通電によって発熱し、金属ロール64を内側から加熱するようになっている。また、各ヒータ66は、一例として、金属ロール64の外周面の温度が120[℃]となるように、金属ロール64の温度を検出する温度センサ69の出力に基づいて、後述する前処理制御部70によって、フィードバック制御されるようになっている。
ハロゲンヒータ68は、各加圧ロール65の内側にY方向に沿って挿入されている。そして、ハロゲンヒータ68は、電源(図示省略)からの通電によって発熱し、加圧ロール65を内側から加熱するようになっている。また、ハロゲンヒータ68は、一例として、金属ロール64の外周面の温度が120[℃]に維持されるように、加圧ロール65の温度を検出する温度センサ(図示省略)の出力に基づいて、後述する前処理制御部70によって、制御されるようになっている。
図5(A)に示すように、リトラクト機構部72は、カム74A、74Bと、被押圧部76A、76Bと、引張バネ78とを有している。なお、金属ロール64、クリーニングブレード67、及び温度センサ69は、−X側が開放された箱状の本体部材71A内に収容されている。また、加圧ロール65は、+X側が開放された箱状の本体部材71B内に収容されている。
被押圧部76Aは、本体部材71AからY方向外側へ張り出された直方体状の部位である。被押圧部76Bは、本体部材71BからY方向外側へ張り出された直方体状の部位である。また、被押圧部76Aと被押圧部76Bとには、X方向に沿って、引張バネ78の両端が引っ掛けられている。これにより、金属ロール64及び加圧ロール65には、互いに接触する側へ引張力が作用している。
カム74Aは、一例として、偏心した楕円形状の板材であり、本体部材71AのY方向の外側で、Y方向を軸方向として回転可能に設けられている。また、カム74Aは、被押圧部76Aと接触しており、回転によって、被押圧部76Aを+X側へ押圧するようになっている。カム74Bは、一例として、偏心した楕円形状の板材であり、本体部材71BのY方向の外側でY方向を軸方向として回転可能に設けられている。また、カム74Bは、被押圧部76Bと接触しており、回転によって、被押圧部76Bを−X側へ押圧するようになっている。
カム74A、74Bは、モータ(図示省略)を含むカム駆動部75(図3参照)によって駆動される。また、金属ロール64及び加圧ロール65の位置は、一例として、光学式の位置センサ77(図3参照)によって検知されており、これらの位置情報に基づいて、カム駆動部75がカム74A、74Bを駆動するようになっている。
図5(A)、(B)に示すように、金属ロール64は、外周面が用紙Pから離れた位置を原点位置として、リトラクト機構部72により、−X側(接触側)及び+X側(退避側)の一方に移動可能となっている。同様に、加圧ロール65は、外周面が用紙Pから離れた位置を原点位置として、リトラクト機構部72により、+X側(接触側)及び−X側(退避側)の一方に移動可能となっている。
リトラクト機構部72は、後述する定着部80で定着を行うときに、金属ロール64を−X側に移動させ、加圧ロール65を+X側に移動させて、用紙Pを挟ませる(接近方向の移動)。また、リトラクト機構部72は、定着部80で定着を行わないときに、金属ロール64を+X側に移動させ、加圧ロール65を−X側に移動させて、用紙Pから退避させる(退避方向の移動)。
なお、ヒータ66及びクリーニングブレード67は、金属ロール64に対する配置を維持した状態で移動され、ハロゲンヒータ68は、加圧ロール65に対する配置を維持した状態で移動されるようになっている。即ち、リトラクト機構部72は、使用されるオイル除去部62(図2参照)の数に合わせて、オイル除去部62を用紙Pに対する接近方向又は退避方向に移動させるようになっている。
(前処理制御部)
図3に示すように、前処理制御部70には、温度センサ69、回転速度センサ73、位置センサ77、ヒータ66、モータ63、カム駆動部75、及び制御部30が接続されている。また、前処理制御部70には、後述する第1テーブル79が設定されている。そして、前処理制御部70は、制御部30から送られた用紙Pの種類、要求される画像の光沢度の情報に応じて、第1テーブル79から各パラメータの設定値(条件)を選択し、ヒータ66、モータ63、及びカム駆動部75の動作を制御するようになっている。
第1テーブル79には、図7に示すように、金属ロール64(図2参照)の設定温度[℃]、接触部N(図2参照)の圧力[kPa]、用紙Pが接触部Nを通過する時間[ms(ミリ秒)]、オイル除去部62(図2参照)の数(除去回数)が設定されている。本実施形態では、一例として、上記の設定温度、圧力(金属ロール64及び加圧ロール65による加圧力)、時間、除去回数について、条件1から条件14までの14通りの組み合せが設定されている。なお、時間(t[s]とする)は、金属ロール64の回転方向における接触部Nの幅(W[m]とする)が測定により既知となることから、金属ロール64の回転速度(周速度)をV[m/s]として、t=W/Vで得られる。
制御部30内には、一例として、図8(A)、(B)、(C)に示すように、用紙Pが薄紙(コート紙)、厚紙(コート紙)、普通紙の場合について、定着後の画像の目標光沢度の範囲、及び該範囲に対応するオイル除去部62の条件が設定されている。さらに、制御部30内には、用紙Pが薄紙(コート紙)、厚紙(コート紙)、普通紙の場合について、定着後の画像の目標光沢度の範囲、及び該範囲に対応する後述する定着部80の条件が設定されている。
なお、図8(A)、(B)、(C)において、オイル除去部(62)の条件1から条件14までは、図7の条件1から条件14までに対応しており、定着部(80)の条件Aから条件Hまでは、図9の条件Aから条件Hまでに対応している。
本実施形態では、一例として、目標光沢度が10[%]以上60[%]以下の範囲において、オイル除去部62の設定条件が、条件1から条件9まで設定されている。目標光沢度が60[%]よりも高い場合は、オイル除去部62の設定条件が、条件10から条件12まで設定されている。また、目標光沢度が10[%]よりも低い場合は、オイル除去部62の設定条件が、普通紙を除いて、条件13、14で設定されている。
(オイルの除去性能評価)
次に、定着前処理部60におけるオイルCA(図4(A)参照)の除去性能評価結果について説明する。なお、定着前処理部60の各部材については、図2を参照して説明する。
図10には、用紙Pが既述の接触部Nを通過したオイル量制御回数(除去回数)を0、1、2、3、4、5、6回と変えたときの、定着前のトナー像TA中の残留オイル量[g/m2]が、グラフG1で示されている。つまり、オイル量制御回数とは、1本の金属ロール64と1本の加圧ロール65との接触部Nを用紙Pが通過した回数を1回として、定着前処理部60において用紙Pが通過した接触部Nの合計数である。
金属ロール64及び加圧ロール65は、既述の設定温度で加熱されている。なお、残留オイル量の測定では、用紙Pに転写された直後のトナー像TAに含まれるオイル量を、トナーとオイルとの質量に基づいて算出しておく(これをオイル量WAとする)。続いて、該トナー像TAが転写された用紙Pを接触部Nに通し、該用紙Pが金属ロール64を通過したときに金属ロール64で回収されたオイル量を測定する(これをオイル量WBとする)。そして、オイル量WAとオイル量WBとの差で、残留オイル量を求める。
ここで、グラフG1において、オイル量制御回数が増加するほど、残留オイル量が減少することが確認された。なお、オイル量制御回数(オイル除去部62の使用数)の設定は、後述する定着後の光沢度(画像光沢度)の評価結果に基づいて行われる。
<定着部>
次に、定着部80について説明する。
定着部80は、定着手段の一例としての複数の定着ユニット82と、定着変更手段の一例としての定着制御部90(図3参照)とを有している。
(定着ユニット)
図2に示すように、定着ユニット82は、用紙Pの搬送方向で定着前処理部60よりも下流側で、該搬送方向に等間隔で並んで3つ配置されている。なお、3つの定着ユニット82は、いずれも同様の構成であるため、図2では1つの定着ユニット82の各部材に符号を付し、他の定着ユニット82の符号を省略する。
また、定着ユニット82は、定着回転体の一例としての定着ロール84と、加圧回転体の一例としての対向ロール85と、定着加熱手段の一例としての定着ヒータ86とを有している。さらに、定着ユニット82は、定着ロール84及び対向ロール85を移動させる定着移動手段の一例としてのリトラクト機構部92(図6(A)参照)を有している。加えて、定着ユニット82は、定着ロール84の外周面を清掃するクリーニングブレード87と、対向ロール85を加熱するハロゲンヒータ88と、を有している。
定着ロール84は、円筒状に形成され、用紙Pの+X側にY方向を軸方向として、定着モータ83(図3参照)により回転可能に設けられている。また、定着ロール84は、径方向内側から外側へ向けて、基層84A、弾性層84B、及び離型層84Cを有する多層構造となっている。すなわち、定着ロール84は、弾性層84Bの外周面にトナー像TBと接触する離型層84Cが形成されている。基層84Aは、一例として、SUS製となっている。弾性層84Bは、一例として、シリコンゴム製となっている。離型層84Cは、一例として、PFA製となっている。
定着ヒータ86は、一例として、ハロゲンヒータであり、電源(図示省略)からの通電によって発熱し、定着ロール84を内側から加熱するようになっている。また、定着ヒータ86は、一例として、定着ロール84の外周面の温度が130[℃]に維持されるように、定着ロール84の温度を検出する定着温度センサ89の出力に基づいて、フィードバック制御されるようになっている。
対向ロール85は、一例として、円筒状に形成され、用紙Pの−X側にY方向を軸方向として回転可能に設けられている。また、対向ロール85は、径方向内側から外側へ向けて、基層85A、弾性層85B、及び離型層85Cを有する多層構造となっている。基層85Aは、一例として、SUS製となっている。弾性層85Bは、一例として、シリコンゴム製となっている。離型層85Cは、一例として、PFA製となっている。さらに、対向ロール85は、用紙Pを挟んで定着ロール84と対向しており、定着ロール84と共に用紙Pを加圧している。
また、対向ロール85は、内側にハロゲンヒータ88が設けられている。ハロゲンヒータ88は、電源(図示省略)からの通電によって発熱し、対向ロール85を内側から加熱するようになっている。また、ハロゲンヒータ88は、一例として、定着ロール84の外周面の温度が130[℃]に維持されるように、対向ロール85の温度を検出する温度センサ(図示省略)の出力に基づいて、フィードバック制御されるようになっている。
クリーニングブレード87は、耐油性、耐磨耗性に優れた板状のゴム部材で構成され、一例として、フッ素ゴムが使用されている。また、クリーニングブレード87は、一端部が、定着ロール84の回転方向に対して逆方向を向くように、定着ロール84の外周面と接触している。これにより、定着ロール84の外周面に付着したオイルCA(図4(A)参照)が、定着ロール84の回転に伴って、クリーニングブレード87により回収されるようになっている。
なお、用紙Pが無い状態で、定着ロール84と対向ロール85とが接触する部位を接触部(ニップ部)NPと記載する。また、定着ユニット82には、定着ロール84の回転速度(周速度)を検出する定着回転速度センサ93(図3参照)が設けられている。ここで、定着ロール84の回転速度は、用紙Pが接触部NPを通過する時間が設定時間となるように、定着回転速度センサ93の出力に基づいて、後述する定着制御部90によって、フィードバック制御されるようになっている。
図6(A)に示すように、リトラクト機構部92は、カム94A、94Bと、被押圧部96A、96Bと、引張バネ98とを有している。なお、定着ロール84、クリーニングブレード87、及び定着温度センサ89は、−X側が開放された箱状の本体部材91A内に収容されている。また、対向ロール85は、+X側が開放された箱状の本体部材91B内に収容されている。
被押圧部96Aは、本体部材91AからY方向外側へ張り出された直方体状の部位である。被押圧部96Bは、本体部材91BからY方向外側へ張り出された直方体状の部位である。また、被押圧部96Aと被押圧部96Bとには、X方向に沿って、引張バネ98の両端が引っ掛けられている。これにより、定着ロール84及び対向ロール85には、互いに接触する側へ引張力が作用している。
カム94Aは、一例として、偏心した楕円形状の板材であり、本体部材91AのY方向の外側で、Y方向を軸方向として回転可能に設けられている。また、カム94Aは、被押圧部96Aと接触しており、回転によって、被押圧部96Aを+X側へ押圧するようになっている。カム94Bは、一例として、偏心した楕円形状の板材であり、本体部材91BのY方向の外側でY方向を軸方向として回転可能に設けられている。また、カム94Bは、被押圧部96Bと接触しており、回転によって、被押圧部96Bを−X側へ押圧するようになっている。
カム94A、94Bは、モータ(図示省略)を含む定着カム駆動部95(図3参照)によって駆動される。また、定着ロール84及び対向ロール85の位置は、一例として、光学式の定着位置センサ97(図3参照)によって検知されており、これらの位置情報に基づいて、定着カム駆動部95がカム94A、94Bを駆動するようになっている。
図6(A)、(B)に示すように、定着ロール84は、外周面が用紙Pから離れた位置を原点位置として、リトラクト機構部92により、−X側(接触側)及び+X側(退避側)の一方に移動可能となっている。同様に、対向ロール85は、外周面が用紙Pから離れた位置を原点位置として、リトラクト機構部92により、+X側(接触側)及び−X側(退避側)の一方に移動可能となっている。
リトラクト機構部92は、定着を行うときに、定着ロール84を−X側に移動させ、対向ロール85を+X側に移動させて、用紙Pを挟ませる(接近方向への移動)。また、リトラクト機構部92は、定着を行わないときに、定着ロール84を+X側に移動させ、対向ロール85を−X側に移動させて、用紙Pから退避させる(退避方向への移動)。
なお、定着ヒータ86及びクリーニングブレード87は、定着ロール84に対する配置を維持した状態で移動され、ハロゲンヒータ88は、対向ロール85に対する配置を維持した状態で移動されるようになっている。即ち、リトラクト機構部92は、使用される定着ユニット82(図2参照)の数に合わせて、定着ユニット82を用紙Pに対する接近方向又は退避方向に移動させるようになっている。
(定着制御部)
図3に示すように、定着制御部90には、定着温度センサ89、定着回転速度センサ93、定着位置センサ97、定着ヒータ86、定着モータ83、定着カム駆動部95、及び制御部30が接続されている。また、定着制御部90には、後述する第2テーブル99が設定されている。そして、定着制御部90は、制御部30から送られた用紙Pの種類、画像の光沢度の情報に応じて、第2テーブル99から各パラメータの設定値(条件)を選択し、定着ヒータ86、定着モータ83、及び定着カム駆動部95の動作を制御するようになっている。
第2テーブル99には、図9に示すように、定着ロール84(図2参照)の設定温度[℃]、接触部NP(図2参照)の圧力[kPa]、用紙Pが接触部NPを通過する時間[ms]、定着ユニット82(図2参照)の数(定着回数)が設定されている。なお、本実施形態では、一例として、上記の設定温度、圧力(定着ロール84及び対向ロール85による加圧力)、時間、定着回数について、条件Aから条件Hまでの8通りの組み合せが設定されている。そして、定着制御部90(図3参照)では、要求されるトナー像TC(図2参照)の光沢度に応じて、既述の設定温度、圧力、時間、定着回数のうち少なくとも1つを変更する制御が行われるようになっている。
(トナー像の画像光沢度評価)
次に、定着部80でトナー像TB(図2参照)を定着した後の用紙P上の残留オイル量[g/m2]に対するトナー像TC(図2参照)の画像光沢度[%]の評価結果について説明する。
固定条件として、用紙Pは薄紙コート紙とした。また、金属ロール64(図2参照)の温度は120[℃]、接触部N(図2参照)の圧力は274.4[kPa]、用紙Pが接触部Nを通過する時間は8[ms]とした。さらに、定着ロール84(図2参照)の温度は130[℃]、接触部NP(図2参照)の圧力は274.4[kPa]、用紙Pが接触部NPを通過する時間は10[ms]とした。
図11には、一例として、定着後の残留オイル量が0.3[g/m2]から2.2[g/m2]までの8通りについて、各残留オイル量に対するトナー像TCの画像光沢度[%]が、グラフG2で示されている。また、図12には、グラフG2(図11参照)について、オイルの除去回数、定着回数、残留オイル量、及び画像光沢度のデータが表で示されている。一例として、薄紙、厚紙、コート紙は王子製紙社製のコート紙であり、坪量が70〜200gsm位のものである(例えば、王子製紙社製OKトップコート紙)。
なお、本実施形態における画像光沢度[%]とは、入射角60[°]の条件で測定対象に光を入射し、その反射光を測定した光沢度を表す指標である(JIS Z 8741参照)。また、本実施形態では、一例として、BYK−Gardner社のmicro−TRI−glossを用いて画像光沢度(グロス)を評価している。残留オイル量は、既述の方法で評価した。
図11及び図12に示すように、オイルの除去回数が多くなり、且つ定着回数が多くなるほど、残留オイル量が減少し、画像光沢度が高くなることが確認された。また、グラフG2において、定着後の残留オイル量が1.1[g/m2]以下となる場合に画像光沢度が30[%]よりも高くなることが確認された。
参考として、図13には、定着ユニット82の使用数(定着回数)を0回から3回まで変えたときの定着後の用紙P上の残留オイル量(折れ線グラフ)、及び画像光沢度(棒グラフ)が示されている。なお、画像光沢度及び残留オイル量は、既述の方法で評価した。また、各定着ロール84(図2参照)の温度は130[℃]、接触部NP(図2参照)の圧力は274.4[kPa]、用紙Pが接触部NPを通過する時間は10[ms]とした。
図13に示すように、定着回数が増加するほど、用紙P上の残留オイル量が減少し、画像光沢度が高くなることが確認された。
このような評価結果に基づいて、金属ロール64(図2参照)の設定温度、接触部Nの圧力、接触部Nでの用紙Pの通過の時間、及び除去回数が、第1テーブル79(図3参照)に設定されている。また、定着ロール84(図2参照)の設定温度、接触部NPの圧力、接触部NPでの用紙Pの通過の時間、及び定着回数が、第2テーブル99(図3参照)に設定されている。さらに、制御部30(図3参照)には、要求される(狙いの)画像光沢度に基づいて、第1テーブル79での条件と第2テーブル99での条件との組み合わせが設定されている。
前処理制御部70(図3参照)では、要求される画像光沢度に基づいて、既述の設定温度、圧力、時間、除去回数のうち少なくとも1つを変更する制御が行われるようになっている。また、定着制御部90(図3参照)では、要求される画像光沢度に基づいて、既述の設定温度、圧力、時間、定着回数のうち少なくとも1つを変更する制御が行われるようになっている。
〔作用〕
次に、本実施形態の作用について説明する。
図3に示す画像形成装置10において、一例として、操作パネル(図示省略)で入力された用紙Pの種類が普通紙で、且つ目標光沢度が20[%]から40[%]までの間であったとする。これらの情報は、制御部30に送られる。そして、制御部30では、設定されたテーブル(図8(A)参照)に基づいて、オイル除去部62が条件8、定着部80が条件Cであると判断し、前処理制御部70及び定着制御部90に条件の情報を送る。
続いて、前処理制御部70は、制御部30から送られた条件8の情報に基づいて、第1テーブル79における条件8の設定を選択する。そして、前処理制御部70は、ヒータ66、モータ63、及びカム駆動部75を動作させ、金属ロール64(図2参照)の温度を120[℃]、接触部Nの圧力を274.4[kPa]、用紙Pの接触部Nの通過時間を8[ms]、除去回数を6[回]とする。
一方、定着制御部90は、制御部30から送られた条件Cの情報に基づいて、第2テーブル99における条件Cの設定を選択する。そして、定着制御部90は、定着ヒータ86、定着モータ83、及び定着カム駆動部95を動作させ、定着ロール84(図2参照)の温度を130[℃]、接触部NPの圧力を274.4[kPa]、用紙Pの接触部NPの通過時間を10[ms]とする。さらに、定着制御部90は、定着回数を3[回]とする。
続いて、転写装置20Y、20M、20C、20K(図1参照)によって、図4(A)に示すように、用紙Pにトナー像TAが転写される。なお、図中の符号Tはトナーを、符号CAはオイルを、符号Wは用紙Pに存在する水分を示している。トナーTは、一例として、2層程度に積み重なった状態で用紙Pの表面に付着している。オイルCAは、用紙P及びトナーTの領域に渡って存在している。また、図4(A)から図4(E)までは、トナーTが固化している状態をハッチングで示し、半溶融となっている状態をドットで示している。
転写によりトナーTと共に用紙Pに移行したオイルCAの一部は、図4(A)に示すように、用紙Pの中に浸透してしまう。しかしながら、補助加熱部50により溶融温度以上に加熱されたトナーTは、図4(B)に示すように、固化した状態から溶融した状態に変化する。また、用紙Pに存在する水分Wは、図4(B)に示すように、補助加熱部50(図2参照)により加熱されて、気化し始める。
続いて、図4(C)に示すように、トナーTとオイルCAとは、トナーTのSP値とオイルCAのSP値との差に起因して相互に反発することで、分離し始める。また、トナーTの用紙Pに対する親和性は、オイルCAの用紙Pに対する親和性に比べて高いため、トナーTが溶融した層は、用紙P上に下層として形成され、オイルCAの層はトナーTが溶融した層上に上層として形成される。なお、気化した水分Wは、用紙Pの中に浸透したオイルCAを、用紙Pから補助的に押し出す機能を有する。SP値は、溶解性の尺度として、分子間結合力を示すCED(凝集エネルギー密度)の平方根で示される。
続いて、定着前処理部60(図2参照)では、図4(D)に示すように、トナーTは、用紙Pの表面で溶融してトナーTが溶融した層を形成する。また、オイルCAの一部は、トナーTが溶融した層の外側に平坦なオイルCAの層を形成する。そして、金属ロール64が、用紙Pの表面外側に浮き上がった状態のオイルCAに接触しつつ回転する。
続いて、図4(E)に示すように、浮き上がった状態のオイルCAは、トナーTとの親和性よりも金属ロール64との親和性の方が高いため、その一部が金属ロール64の回転に伴い除去される。これにより、用紙Pに存在するオイルCAが低減される。そして、用紙Pの表面外側に浮き上がった状態のオイルCAが除去されると、気化した水分Wは、用紙Pの外部に放出される。ここで、オイルCAがトナーTよりも金属ロール64に近い側に浮き上がっているため、溶融状態のトナーTが金属ロール64により除去されることが抑制される。
続いて、図2に示すように、設定された数の接触部Nを通過した用紙P上のトナー像TBは、定着部80において、3箇所の接触部NPを通過する。これにより、用紙Pにトナー像TBが定着され、トナー像(画像)TCが得られる。なお、得られたトナー像TCの画像光沢度を既述の方法で評価したところ30[%]であった。
また、表面の光沢度(用紙光沢度)が異なる2種類の用紙A、用紙Bに対して、トナー像TC(図2参照)の画像光沢度を用紙光沢度に近づけるために必要な除去回数及び定着回数を確認したところ、図14に示す結果が得られた。用紙A、Bは、一例として、王子製紙社製のコート紙とグロスコート紙などであり、例えば、用紙A:OKトップコート+(王子製紙社製)、用紙B:OKトップコートN(王子製紙社製)である。
用紙光沢度が30[%]の用紙Aでは、30[%]の画像光沢度を得るために必要な除去回数が6回、定着回数が3回であった。一方、用紙光沢度が20[%]の用紙Bでは、20[%]の画像光沢度を得るために必要な除去回数が4回、定着回数が2回であった。参考として、用紙Aにおいて、用紙光沢度よりも10[%]低い20[%]の画像光沢度を得るために必要な除去回数は4回、定着回数が2回であった。
なお、一例として、普通紙で目標光沢度が20[%]から40[%]までの間の場合について説明したが、この場合に限らず、図7、図8(A)、(B)、(C)、図9に示すように、他の用紙P又は目標光沢度について、条件を選択(設定)してもよい。
以上説明したように、図2及び図3に示す定着前処理部60の前処理制御部70は、要求されるトナー像TCの光沢度に基づいて、各条件の少なくとも1つを変更する。各条件とは、加圧ロール65による接触部Nの圧力、金属ロール64の温度、金属ロール64の回転速度、及び使用されるオイル除去部62の数である。これにより、トナー像TAからのオイルCAの除去が望ましい除去量で行われるので、トナー像TBを定着したときのトナー像TCの光沢度(画像光沢度)が狙いの光沢度に近づく。
また、定着前処理部60のリトラクト機構部72(図5(A)参照)は、使用されるオイル除去部62の数に合わせて、オイル除去部62を用紙Pに接近させ、又は用紙Pから退避させる。これにより、要求されるトナー像TCの光沢度が変わるたびに、オイル除去部62を手動で定着装置40に装着又は離脱させる作業が不要となるので、使用するオイル除去部62の数の変更が容易となる。
定着装置40では、定着前処理部60においてトナー像TAからのオイルCAの除去が望ましい除去量で行われるので、トナー像TBを定着したときのトナー像TCの光沢度(画像光沢度)が狙いの光沢度に近づく。
さらに、定着装置40の定着制御部90は、要求されるトナー像TCの光沢度に基づいて、各条件の少なくとも1つを変更する。各条件とは、対向ロール85による接触部NPの圧力、定着ロール84の温度、定着ロール84の回転速度、及び使用される定着ユニット82の数である。これにより、トナー像TBからのオイルCAの除去が行われると共に、トナー像TBの加熱及び加圧が行われるので、トナー像TCの光沢度が狙いの値に近づく。
また、定着装置40のリトラクト機構部92(図6(A)参照)は、使用される定着ユニット82の数に合わせて、定着ユニット82(定着ロール84、対向ロール85)を用紙Pに接近させ、又は用紙Pから退避させる。これにより、要求されるトナー像TCの光沢度が変わるたびに、定着ユニット82を手動で定着装置40に装着又は離脱させる作業が不要となるので、使用する定着ユニット82の数の変更が容易となる。
画像形成装置10では、定着前処理部60及び定着部80において、オイルCAの除去が望ましい除去量で行われるので、トナー像TCへのオイルCAの残留の過多又は過少に起因する画像不良(画像光沢度の低下)が抑制される。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
補助加熱部50は、カーボンヒータ52を用いた非接触加熱方式に限らず、ロールなどを用いた接触加熱方式であってもよい。また、カーボンヒータ52の数は、8つに限らず、他の数であってもよい。
定着装置40は、補助加熱部50が無く、定着前処理部60及び定着部80を有するものであってもよい。また、定着装置40は、オイル除去部62の数が6つ(最大9つ)のものに限らず、他の数のものであってもよい。さらに、定着装置40は、定着ユニット82の数が3つのものに限らず、他の数のものであってもよい。
複数の金属ロール64の温度は、同じ温度としたものに限らず、各段で異なる温度としてもよい。一例として、設定温度±10[℃]の範囲で各金属ロール64の温度が異なっていてもよい。また、金属ロール64は、アルミニウム製に限らず、SUS製や、他の金属で構成されていてもよい。さらに、金属ロール64は、モータで駆動しても、従動させてもよい。加圧部材は、加圧ロール65に限らず、架設されたベルト材を用いてもよい。また、加圧部材は、回転するものに限らず、固定されたものであってもよい。
オイル除去部62は、クリーニングブレード67が設けられていないものであってもよい。また、オイル除去部62は、ウェブ又はクリーニングロールを用いて金属ロール64からオイルCAを除去するものであってもよい。
定着部80は、定着ロール84を用いたロール方式に限らず、ベルト方式であってもよい。また、定着部80は、トナー像TCの画像光沢度が設定値まで得られる場合は、接触加熱方式に限らず、非接触加熱方式であってもよい。
定着前処理部60、定着部80において、リトラクト機構部72、92を用いずに手動で、各ロールを用紙Pに対して接触位置又は退避位置へ移動させてもよい。リトラクト機構部72は、加圧ロール65及び金属ロール64の一方のみを移動させるものであってもよい。リトラクト機構部92は、対向ロール85及び定着ロール84の一方のみを移動させるものであってもよい。
また、定着前処理部60において、変更するパラメータは、加圧ロール65及び金属ロール64による加圧力、金属ロール64の温度、金属ロール64の回転速度、及びオイル除去部62の数のうち、いずれか1つ、あるいは、複数を組合せたものであってもよい。同様に、定着部80において、変更するパラメータは、対向ロール85及び定着ロール84による加圧力、定着ロール84の温度、定着ロール84の回転速度、及び定着ユニット82の数のうち、いずれか1つ、あるいは、複数を組合せたものであってもよい。
定着部80における各条件が変更されず定着前処理部60のみで各条件が変更される場合は、前処理制御部70の第1テーブル79に各条件と光沢度を対応させた設定をしておき、制御部30からの光沢度の情報に合わせて条件を選択すればよい。また、第1テーブル79及び第2テーブル99は、制御部30内に設定され又は他の記憶部に設定されていてもよい。
トナーTは、ポリエステル樹脂に限らず、他の樹脂であってもよい。また、キャリア液(オイルCA)は、ジメチルシリコーンオイルに限らず、他のオイルを用いてもよい。
定着装置40は、用紙Pの片面に形成された画像を定着するものに限らず、用紙Pの両面に形成された画像を定着するものであってもよい。