JP6302867B2 - フェノール樹脂発泡体積層板及びその製造方法 - Google Patents

フェノール樹脂発泡体積層板及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、フェノール樹脂発泡体積層板及びその製造方法に関し、更に詳しくは、フェノール樹脂発泡体の上下面に配された面材を剥離し易く、かつ、面材を剥離した後の母材表面の平滑性に優れるフェノール樹脂発泡体積層板及びその製造方法に関する。
レゾール型フェノール樹脂を原料とした酸硬化型フェノール樹脂発泡体は、燃え難く、煙の発生が少なく、しかも断熱性も良好なところから、従前より、例えば金属サイディング等の外壁材、間仕切りパネル等の内壁材の他、天井材、防火扉、雨戸等の建材に使用されている。また、酸硬化型フェノール樹脂発泡体は、建材用や工業プラント用の保冷・保温材としても広く使用されている。
ここで、フェノール樹脂発泡体の製造時に使用する発泡剤としては、環境問題の観点から、近年、炭化水素系発泡剤が採用されてきている。そして、断熱性能の更なる向上の観点からは、塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種を発泡剤の構成成分とすることが望ましい。しかし、これらの発泡剤は、レゾール型フェノール樹脂との親和性が高すぎる。そのため、塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種を含む発泡剤を使用して得られる発泡体では、独立気泡率の低下が起きやすく、その結果、特に長期断熱性能が悪化しやすい。
一方、フェノール樹脂発泡体について、独立気泡率の低下を抑制し、長期断熱性能を満足する発泡体を得るために、リン酸トリフェニル、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、ポリエチレングリコール又はポリオールなどからなる可塑剤を添加してセル膜に柔軟性を付与することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特表2015−500356号公報
しかし、塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種を含む発泡剤を用いたフェノール樹脂発泡体について本発明者が鋭意研究を行ったところ、上述した可塑剤の中でもフタル酸系化合物を含む可塑剤を使用すると、発泡剤とフェノール樹脂との親和性の高さに起因した独立気泡率の低下は抑制することができるものの、上下に配置した面材間に発泡性フェノール樹脂組成物を充填し、発泡・硬化させてフェノール樹脂発泡体の上下面に面材を設けてなるフェノール樹脂発泡体積層板を製造する際に、発泡性フェノール樹脂組成物の発泡が促進されて面材間の空間への発泡性フェノール樹脂組成物の充填性が高くなりすぎることが明らかとなった。そして、フタル酸系化合物を含む可塑剤を使用した場合、剛性の高い金属板等を面材として使用する場合には問題は生じないものの、剛性に劣る可撓性面材を利用した場合においては、発泡性を制御しきれず、面材を剥離した後の母材表面が平滑な発泡体積層板を得ることは困難であった。そのため、塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種を含む発泡剤、並びに、フタル酸系化合物を含む可塑剤を使用し、且つ、面材として可撓性面材を使用した発泡体積層板には、特に面材を剥離して母材のみを使用する場合において、母材表面の平滑性の改善が求められていた。
そこで、本発明者は、上記課題を解決すべく更に検討を重ねたところ、塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種と、フタル酸系化合物とを添加し、かつ、可撓性面材を使用した系であっても、発泡及び成形条件を適正化することにより、良好な母材表面平滑性および優れた長期断熱性能を有するフェノール樹脂発泡体積層板を得ることができることを見出した。この方法で得られるフェノール樹脂発泡体積層板では、フタル酸系化合物を添加して独立気泡率の低下を抑制しつつ、面材の物性(剛性等)の制約を殆ど受けずに、あらゆる面材を使用することが可能となる。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[4]を提供する。
[1]フェノール樹脂発泡体の少なくとも上下面に面材が配されたフェノール樹脂発泡体積層板であって、前記フェノール樹脂発泡体は、密度が15kg/m3以上50kg/m3以下、独立気泡率が85%以上の範囲にあり、塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種と、フタル酸系化合物とを含有し、前記面材が可撓性面材であり、前記面材を剥離した母材の平滑性評価レベルが1.5mm以下であることを特徴とする、フェノール樹脂発泡体積層板。
[2]前記面材が紙を含有することを特徴とする、[1]に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
[3]前記面材がガラス繊維を含むことを特徴とする、[1]又は[2]に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
[4]フェノール樹脂と、界面活性剤と、フタル酸系化合物と、塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種を含有する発泡剤と、有機酸を含有する酸性硬化剤とを含む発泡性フェノール樹脂組成物を、混合機を用いて混合する工程と、混合した発泡性フェノール樹脂組成物を面材上に吐出する工程と、前記面材上に吐出した発泡性フェノール樹脂組成物を発泡、硬化させてフェノール樹脂発泡体の少なくとも上下面に面材が配されたフェノール樹脂発泡体積層板を得る工程と、を含み、前記発泡性フェノール樹脂組成物は、前記発泡剤よりも沸点が50℃以上低い発泡核剤を前記発泡剤100質量%に対して0.05質量%以上0.3質量%以下の割合で含み、前記発泡性フェノール樹脂組成物中の前記発泡剤の含有割合が、前記フェノール樹脂と、前記界面活性剤と、前記フタル酸系化合物との合計100質量部当たり10質量部以下であり、前記発泡性フェノール樹脂組成物中の前記有機酸の含有量(b)に対する前記発泡剤の含有量(a)の質量比(a/b)が、0.59以上1.46以下であり、前記面材として可撓性面材を使用する、フェノール樹脂発泡体積層板の製造方法。
本発明によれば、塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種と、フタル酸系化合物とを含有し、かつ、可撓性面材を使用したフェノール樹脂発泡体積層板であって、良好な母材表面平滑性および優れた長期断熱性能を有するフェノール樹脂発泡体積層板を得ることができる。
以下、本発明をその好適な実施形態に則して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
(フェノール樹脂発泡体積層板)
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体積層板(以下、「発泡体積層板」という場合がある。)は、硬化反応によって形成されたフェノール樹脂硬化体中に、多数の気泡が分散した状態で存在するフェノール樹脂発泡体と、当該フェノール樹脂発泡体の少なくとも上下面に設けられた面材とを備える積層体である。
そして、本実施形態の発泡体積層板は、独立気泡率が高く、優れた長期断熱性能を有している。また、本実施形態の発泡体積層板は、上下面材を剥離して得られる母材の表面平滑性が優れており、特に限定されることなく、例えば面材を剥離してなる母材の状態で、難燃性および断熱性に優れる建材などとして使用することができる。なお、発泡体積層板は、面材を剥離することなくそのまま使用してもよい。
<フェノール樹脂発泡体>
本実施形態のフェノール樹脂発泡体積層板のフェノール樹脂発泡体の密度は、15kg/m3以上50kg/m3以下であり、好ましくは20kg/m3以上40kg/m3以下である。密度が15kg/m3以上であると圧縮強度等の機械的強度が確保でき、発泡体の取り扱い時に破損が起こることを回避することができる。一方、密度が50kg/m3以下であると、樹脂部の伝熱が増大しにくいため、断熱性能を保つことができる。なお、フェノール樹脂発泡体の密度は、主に、発泡剤の割合、発泡剤の添加量と酸性硬化剤として用いられる有機酸の添加量との比、硬化条件などの変更により所望の値に調整できる。
フェノール樹脂発泡体積層板のフェノール樹脂発泡体の独立気泡率は、85%以上であり、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。独立気泡率が85%未満であると、フェノール樹脂発泡体中の発泡剤が空気と置換して長期の断熱性能が低下する傾向が生じるという懸念がある。なお、フェノール樹脂発泡体の独立気泡率は、例えば、フタル酸系化合物の配合量、発泡核剤の添加量、発泡剤の添加量と酸性硬化剤として用いられる有機酸の添加量との比などの変更により所望の値に調整できる。
フェノール樹脂発泡体積層板のフェノール樹脂発泡体の平均気泡径は、好ましくは20μm以上200μm以下であり、より好ましくは40μm以上150μm以下である。平均気泡径が20μm以上であると、発泡体の密度が高くなることを抑制できる。この結果、発泡体における樹脂部の伝熱割合を低減できるため、フェノール樹脂発泡体の断熱性能を確保することができる。また、逆に平均気泡径が200μmを超えると、輻射による熱伝導率が増加するようになり、発泡体の断熱性能が低下するおそれがある。なお、フェノール樹脂発泡体の平均気泡径は、例えば、フタル酸系化合物の配合量、発泡核剤の添加量、発泡剤の添加量と酸性硬化剤として用いられる有機酸の添加量との比などの変更により所望の値に調整できる。
そして、フェノール樹脂発泡体積層板のフェノール樹脂発泡体は、塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種、並びに、フタル酸系化合物を含有し、例えば、フェノール樹脂と、界面活性剤と、塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種を含有する発泡剤と、発泡核剤と、フタル酸系化合物と、有機酸を含有する酸性硬化剤とを含む発泡性フェノール樹脂組成物から製造される。なお、発泡性フェノール樹脂組成物は、任意に、上記以外の成分を含有していてもよい。
フェノール樹脂としては、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物によって合成するレゾール型フェノール樹脂を用いる。レゾール型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを原料としてアルカリ触媒により40〜100℃の温度範囲で加熱して合成する。また、必要に応じてレゾール型フェノール樹脂の合成時、もしくは合成後に尿素等の添加剤を添加してもよい。尿素を添加する場合は予めアルカリ触媒でメチロール化した尿素をレゾール型フェノール樹脂に混合することがより好ましい。合成後のレゾール型フェノール樹脂は、通常過剰な水分を含んでいるので、発泡に際し、発泡に適した水分量に調整する。また、フェノール樹脂には、脂肪族炭化水素または高沸点の脂環式炭化水素、或いは、それらの混合物や、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の粘度調整用の希釈剤、その他必要に応じてマテリアルリサイクル粉体や添加剤を添加することもできる。
フェノール樹脂の合成時のフェノール類対アルデヒド類の出発モル比は1:1から1:4.5の範囲内が好ましく、より好ましくは1:1.5から1:2.5の範囲内である。
ここで、本実施形態においてフェノール樹脂合成の際に好ましく使用されるフェノール類は、フェノール自体、及び他のフェノール類であり、他のフェノール類の例としては、レゾルシノール、カテコール、o−、m−及びp−クレゾール、キシレノール類、エチルフェノール類、p−tertブチルフェノール等が挙げられる。また、2核フェノール類も使用できる。
また、アルデヒド類は、アルデヒド源となり得る化合物であればよく、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド自体、及び他のアルデヒド類やその誘導体を用いることが好ましい。他のアルデヒド類の例としては、グリオキサール、アセトアルデヒド、クロラール、フルフラール、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
なお、フェノール樹脂には、添加剤として尿素、ジシアンジアミドやメラミン等を加えてもよい。本明細書において、これらの添加剤を加える場合、「フェノール樹脂」とは添加剤を加えた後のものを指す。そして、本明細書では、「フェノール樹脂」に対して界面活性剤およびフタル酸系化合物を添加したものを「フェノール樹脂組成物」と称し、「フェノール樹脂組成物」に対して発泡剤、発泡核剤および酸性硬化剤を添加して発泡性および硬化性を付与したものを「発泡性フェノール樹脂組成物」と称する。また、フェノール樹脂発泡体形成後の樹脂部分を「フェノール樹脂硬化体」と称する。
フェノール樹脂及びフェノール樹脂組成物の40℃における粘度は、好ましくは5,000mPa・s以上100,000mPa・s以下であり、より好ましくは7,000mPa・s以上50,000mPa・s以下であり、さらに好ましくは9,000mPa・s以上40,000mPa・s以下である。
また、フェノール樹脂及びフェノール樹脂組成物の水分量は1.5質量%以上30質量%以下が好ましい。
発泡性フェノール樹脂組成物に含まれる界面活性剤、発泡剤及び発泡核剤は、フェノール樹脂に予め添加しておいてもよいし、酸性硬化剤と同時に添加してもよい。
界面活性剤としては、フェノール樹脂発泡体の製造に一般に使用されるものを使用できるが、中でもノニオン系の界面活性剤が効果的であり、例えば、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体であるアルキレンオキサイドや、アルキレンオキサイドとヒマシ油との縮合物、アルキレンオキサイドと、ノニルフェノール、ドデシルフェノールのようなアルキルフェノールとの縮合生成物、アルキルエーテル部分の炭素数が14〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテル、更にはポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系化合物、ポリアルコール類等が好ましい。これらの界面活性剤は単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量については特に制限はないが、フェノール樹脂100質量部に対して0.3質量部以上10質量部以下の範囲で好ましく使用される。
発泡剤は、構成成分として、塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンの内の少なくとも一種を含有する。
ここで、塩素化脂肪族炭化水素としては、炭素数が2〜5の直鎖状または分岐状のものを用いることができる。結合している塩素原子の数は、限定されるものではないが、1〜4が好ましく、塩素化脂肪族炭化水素としては、例えば、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリドなどが挙げられる。これらのうち、クロロプロパンであるプロピルクロリド、イソプロピルクロリドがより好ましく用いられる。
また、塩素化ハイドロフルオロオレフィンとしては、具体的には、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(例えば、製品名:Solstice(商標)LBA)などが挙げられる。
更に、非塩素化ハイドロフルオロオレフィンとしては、具体的には、1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(例えば、製品名:Solstice(商標)1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンなどが挙げられる。
なお、これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、発泡剤は、塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィン以外の構成成分、例えば炭化水素などを含んでいてもよい。
上述した塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンの発泡剤中の含有割合は、環境負荷を増加させることなく所望の断熱性能を発現させるために、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
発泡性フェノール樹脂組成物中の発泡剤の量は、発泡剤の種類、フェノール樹脂との相性や、発泡・硬化過程でのロスによりばらつきがあるが、フェノール樹脂と、界面活性剤と、フタル酸系化合物との合計100質量部に対して、10質量部以下であり、4.5質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、6.0質量部以上9.5質量部以下であることがより好ましい。フェノール樹脂、界面活性剤、及びフタル酸系化合物の合計100質量部当たりの発泡剤の量が4.5質量部未満の場合、フェノール樹脂発泡体の密度が高くなりすぎる。また、フェノール樹脂、界面活性剤、及びフタル酸系化合物の合計100質量部当たり10質量部を超える量の発泡剤を添加すると、フェノール樹脂発泡体を適度な強度を有する密度とすることができない上に、気泡壁面が割れやすくなり独立気泡率が低下しやすくなる。更に、面材として可撓性面材を使用した際に、面材を剥離した母材表面の平滑性が悪化しやすくなる。
本実施形態においては、フェノール樹脂発泡体の製造に発泡核剤を使用することが重要である。発泡核剤としては、窒素、ヘリウム、アルゴン、空気などの、発泡剤よりも沸点が50℃以上低い低沸点物質を添加することができる。また、固体発泡核剤として、水酸化アルミニウム粉、酸化アルミニウム粉、炭酸カルシウム粉、タルク、はくとう土(カオリン)、珪石粉、珪砂、マイカ、珪酸カルシウム粉、ワラストナイト、ガラス粉、ガラスビーズ、フライアッシュ、シリカフューム、石膏粉、ホウ砂、スラグ粉、アルミナセメント、ポルトランドセメント等の無機粉、及び、フェノール樹脂発泡体粉のような有機粉を添加することもできる。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
発泡核剤の発泡剤に対する添加量は、発泡剤の量を100質量%として、0.05質量%以上0.3質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.2質量%以下であることがより好ましい。発泡核剤の添加量が0.05質量%未満であると、不均一な発泡が起こりやすく、発泡体積層板としたときの母材表面の平滑性が不良となる。また、発泡核剤の添加量を0.3質量%超とすると、発泡性フェノール樹脂組成物の発泡が促進され、面材間の空間への発泡性フェノール樹脂組成物の充填性が高くなりすぎるため、剛性に劣る可撓性面材を利用する場合においては、発泡性を制御しきれずに平滑な母材表面を有する発泡体積層板を得ることが困難となる。
酸性硬化剤は、フェノール樹脂組成物を硬化できる酸性の硬化剤であればよく、酸成分として有機酸を含有する。有機酸としては、アリールスルホン酸、或いは、これらの無水物が好ましい。アリールスルホン酸およびその無水物としては、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、置換フェノールスルホン酸、キシレノールスルホン酸、置換キシレノールスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等、および、それらの無水物が挙げられ、これらを一種類で用いても、二種類以上組み合わせてもよい。なお、本実施形態では、硬化助剤として、レゾルシノール、クレゾール、サリゲニン(o−メチロールフェノール)、p−メチロールフェノール等を添加してもよい。また、これらの硬化剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の溶媒で希釈してもよい。
酸性硬化剤の使用量は、その種類により異なり、パラトルエンスルホン酸一水和物60質量%とジエチレングリコール40質量%との混合物を使用する場合には、フェノール樹脂と、界面活性剤と、フタル酸系化合物との合計100質量部に対して、好ましくは8質量部以上20質量部以下、より好ましくは10質量部以上15質量部以下で使用される。
発泡剤の配合量(発泡性フェノール樹脂組成物中の発泡剤の含有量a)と、酸性硬化剤としての有機酸の配合量(発泡性フェノール樹脂組成物中の有機酸の含有量b)との質量比(a/b)は、好ましくは0.59以上1.46以下であり、より好ましくは0.68以上1.24以下であり、更に好ましくは0.73以上1.13以下である。a/bが1.46より大きくなると、硬化に対して発泡が促進され過ぎてしまうため、フェノール樹脂発泡体の密度が低くなり易く、また、平均気泡径が大きくなりやすい上、面材を剥離した母材の平滑性評価レベルが悪くなる。一方、a/bが0.59未満であると、発泡に対して硬化が進み過ぎてしまうため、フェノール樹脂発泡体の密度が高くなりやすく、また、独立気泡率が低下しやすい上、設備にスケールが付着しやすくなり、設備が汚れやすくなる。
フタル酸系化合物は、可塑化効果を発揮してセル膜に柔軟性を付与し、独立気泡率の低下を抑制する。その結果、フタル酸系化合物は、塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種を含む発泡剤を使用した場合であっても長期断熱性能を満足する製品を得ることに貢献する。そして、本実施形態で使用するフタル酸系化合物は、前記フェノール樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上5質量部以下、より好ましくは0.01質量部以上3質量部以下、更に好ましくは、0.1質量部以上1質量部以下の割合で配合される。添加するフタル酸系化合物の量が少なくすぎると、可塑化効果が発現せず、得られるフェノール樹脂発泡体積層板の独立気泡率が低下するとともに、平均気泡径も大きくなる。一方、フタル酸系化合物の添加量が多すぎると、発泡性フェノール樹脂組成物の発泡が促進され、発泡性を制御しきれずに得られるフェノール樹脂発泡体積層板の母材の表面平滑性が悪化するとともに、コスト高となり好ましくない。なお、フェノール樹脂発泡体中のフタル酸系化合物は、後述するガスクロマトグラフィー/質量分析測定において同定し、含量を測定することができる。
フタル酸系化合物としては、特に制限されることなく、従来から公知のものが適宜に選択されて使用され得る。具体的には、フタル酸系化合物としては、例えばフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル等を挙げることができ、これらは、単独で用いられても、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。なお、これら例示のフタル酸系化合物の中でも、フタル酸ジオクチル(DOP)にあっては、面材間への充填性に優れた発泡性フェノール樹脂組成物が得られるところから、特に好適に使用される。
<面材>
フェノール樹脂発泡体の少なくとも上下面に配される面材としては、可撓性を有する面材(可撓性面材)が用いられる。使用される可撓性面材としては、主成分がポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン等からなる不織布及び織布や、クラフト紙、ガラス繊維混抄紙、水酸化カルシウム紙、水酸化アルミニウム紙、珪酸マグネシウム紙等の紙類や、ガラス繊維不織布のような無機繊維の不織布等が好ましく、これらは混合(または積層)して用いてもよい。中でも、得られるフェノール樹脂発泡体積層板から面材を剥離し母材のみを利用する場合には、剥離後に廃棄可能な安価な紙類が好ましい。これら面材は、通常ロール状の形態で提供されている。更に、可撓性面材としては、難燃剤等の添加剤を混練したものを用いても構わない。なお、面材とフェノール樹脂発泡体との接着方法は特に限定されるものではなく、フェノール樹脂発泡体が面材表面で熱硬化する際の固着力によるものや、エポキシ樹脂等の接着剤を使用したものでも構わない。
<フェノール樹脂発泡体積層板の性状>
そして、本実施形態のフェノール樹脂発泡体積層板は、上下面材を剥離してなる母材(フェノール樹脂発泡体)の平滑性評価レベルが、1.5mm以下であり、好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下であり、更に好ましくは0.5mm以下である。また、母材の平滑性評価レベルは、通常0.1mm以上である。なお、母材の平滑性評価レベルは、主に、フタル酸系化合物の配合量、発泡核剤の添加量、発泡剤の添加量と酸性硬化剤として用いられる有機酸の添加量との比などの変更により所望の値に調整できる。
ここで、母材の平滑性評価レベルは、得られたフェノール樹脂発泡体積層板の母材について、厚み方向の寸法を以下のように測定して求める。
なお、本実施形態における「厚み方向の寸法」とは、発泡体積層板の三辺のうち最も短い辺の寸法を指し、通常、発泡体積層板の製造時に面材上の発泡性フェノール樹脂組成物が発泡して成長する方向の寸法である。
母材の平滑性評価レベルの測定に際しては、三辺のうち最も寸法が小さな辺(厚み方向)を除く二辺からなる面積が、10,000mm2以上の大きさのフェノール樹脂発泡体積層板を測定対象とする。
測定箇所と測定点数は、測定対象のフェノール樹脂発泡体積層板から面材を剥離して得られた母材に関して、少なくとも10mm以上の間隔をあけて20点とする。そして、各位置において母材の厚み方向の寸法(厚み)を測定し、以下の式(a)により、平滑性評価レベルとして評価する。
平滑性評価レベル(mm)=(最大厚み−最小厚み) ・・・(a)
なお、フェノール樹脂発泡体積層板は、面材を手で剥離できることを前提としており、また、面材剥離時に面材側に樹脂の一部が滲みこむことも考えられるが、実用性を考えるとこの樹脂分は特に考慮せず、剥離後の母材表面の厚みを評価するものとする。
(フェノール樹脂発泡体積層板の製造方法)
次に、上述したフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法について説明する。
フェノール樹脂発泡体積層板の製造方法は、上述した発泡性フェノール樹脂組成物を混合機にて混合する混合工程と、混合した発泡性フェノール樹脂組成物を面材上に吐出する吐出工程と、面材上に吐出したフェノール樹脂組成物からフェノール樹脂発泡体積層板を製造する発泡体積層板製造工程とを備える連続製造方式が一般的であるが、型枠の中で面材を上下に用いたバッチ発泡成形方式を採用することも可能である。
連続製造方式においては、下面材上に吐出したフェノール樹脂組成物を上面材で被覆した後、発泡及び硬化させながら上下方向から均すように予成形し、その後、発泡及び硬化を進めつつ板状に成形していく。
連続製造方式において、予成形や成形を行う方法としては、スラット型ダブルコンベアを利用する方法や、金属ロールもしくは鋼板を利用する方法、さらには、これらを複数組み合わせて利用する方法等、製造目的に応じた種々の方法が挙げられる。このうち、例えば、スラット型ダブルコンベアを利用して成形する場合には、上下の面材で被覆された発泡性フェノール樹脂組成物をスラット型ダブルコンベア中へ連続的に案内した後、加熱しながら上下方向から圧力を加えて、所定の厚みに調整しつつ、発泡及び硬化させ、板状に成形することができる。
ここで、本実施形態のフェノール樹脂発泡体積層板の製造では、可撓性面材を使用し、かつ、塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンの内の少なくとも一種と、フタル酸系化合物とを添加した系であっても所望の長期断熱性能と平滑性評価レベルとを得るために、発泡性フェノール樹脂組成物の配合組成を調整することが重要である。具体的には、発泡性フェノール樹脂組成物中の発泡剤に対する発泡核剤の添加量を、発泡剤の量を100質量%として0.05質量%以上0.3質量%以下とした上で、更に発泡剤の配合量aと、酸性硬化剤としての有機酸の配合量bとの比(a/b)を質量基準で0.59以上1.46以下と調整することが重要である。
本技術により、発泡核剤量を適正化して少なくした上で、酸性硬化剤としての有機酸の量を多くしてセル膜が割れたり破れたりする前に早めに硬化を進行させることで、塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンの内の少なくとも一種と、フタル酸系化合物よりなる可塑剤とを使用した際においても、良好な長期断熱性能を確保しつつ、可撓性面材を剥離した母材の平滑性評価レベルをも向上させることができる。以下、その詳細について説明する。
フタル酸系化合物を利用することで、塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンの内の少なくとも一種を使用した場合でも、セル膜が割れたり破れたりすることを抑制できる。一方で、フタル酸系化合物を含む可塑剤を添加すると、成形時に発泡性フェノール樹脂組成物の発泡が促進されて面材間への充填性が高くなりすぎるため、剛性に劣る可撓性面材を利用する場合においては、発泡性を制御しきれずに平滑な母材表面を有する発泡体積層板が得られ難いという問題があった。
この問題を解決するため鋭意検討を行った結果、上述したように発泡性フェノール樹脂組成物の配合組成を調整し、上下面材間の発泡空間に、発泡性フェノール樹脂組成物が満たされるとほぼ同時に、フェノール樹脂発泡体の表面が滞りなく硬化することが重要であることを見出した。
以下に、実施例及び比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<フェノール樹脂Aの合成>
反応器に52質量%ホルムアルデヒド(52質量%ホルマリン)水溶液3500kgと99質量%フェノール(不純物として水を含む)2743kgを仕込み、プロペラ回転式の攪拌機により攪拌し、温調機により反応器内部液温度を40℃に調整した。次いで50質量%水酸化ナトリウム水溶液を反応液のpHが8.7になるまで加えた。反応液を1.5時間かけて85℃まで昇温し、その後オストワルド粘度が110センチストークス(=110×10-62/s、25℃における測定値)に到達した段階で、反応液を冷却し、尿素を400kg添加した。その後、反応液を30℃まで冷却し、パラトルエンスルホン酸一水和物の50質量%水溶液を、pHが6.4になるまで添加した。得られた反応液を薄膜蒸発機によって濃縮処理し、粘度及び水分量を以下の方法で測定した。その結果、水分量は7.9質量%であり、粘度は20,500mPa・sであった。これをフェノール樹脂Aとする。
<水分量>
フェノール樹脂A中の水分量は、カールフィッシャー水分計MKA−510(京都電子工業(株)製)を用いて測定した。
<粘度>
回転粘度計(東機産業(株)製、R−100型、ローター部は3°×R−14)を用い、40℃で3分間安定させた後の測定値をフェノール樹脂Aの粘度とした。
(実施例1)
フェノール樹脂A100質量部に対して、フタル酸系化合物としてフタル酸ジ−n−オクチル(和光純薬工業株式会社製;DOP)を0.5質量部、界面活性剤としてエチレンオキサイド−プロピレンオキサイドのブロック共重合体とポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテルを質量比率でそれぞれ50%ずつ含有する組成物を3.0質量部の割合で混合した。これをフェノール樹脂組成物とする。上記界面活性剤およびフタル酸系化合物を含むフェノール樹脂組成物100質量部に対して、発泡剤として1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(塩素化ハイドロフルオロオレフィン)を8質量部、発泡核剤として窒素を発泡剤に対して0.10質量%、更に、酸性硬化剤としてキシレンスルホン酸80質量%とジエチレングリコール20質量%の混合物からなる組成物を10質量部添加し、25℃に温調したミキシングヘッドで混合し、得られた発泡性フェノール樹脂組成物をトーナメント配管で分配し、移動する面材上に供給した。面材上に供給した発泡性フェノール樹脂組成物は、面材と接触する面とは反対側の面が、他の面材で被覆されると同時に、二枚の面材で挟み込まれるようにして、83℃に加熱されたスラット型ダブルコンベアに導入され、15分の滞留時間で硬化させた後、110℃のオーブンで2時間キュア(後硬化)させ、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。なお、面材としては、可撓性面材であるクラフト紙面材を使用した。
そして、得られたフェノール樹脂発泡体積層板の特性(フェノール樹脂発泡体の密度、独立気泡率及び平均気泡径、フタル酸系化合物並びに塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンの有無、並びに、母材の平滑性評価レベル)を以下の方法によって評価した。
<フェノール樹脂発泡体の密度>
20cm角のフェノール樹脂発泡体積層板を試料とし、この試料から面材を取り除いた後、JIS K7222に従い質量と見かけ容積を測定して求めた。
<フェノール樹脂発泡体の独立気泡率>
ASTM−D−2856に従い測定した。具体的には、フェノール樹脂発泡体積層板より面材を取り除いた後、直径35mm〜36mmの円柱形試料をコルクボーラーで刳り貫き、高さ30mm〜40mmに切り揃えた後、空気比較式比重計(東京サイエンス社製、1,000型)の標準使用方法により試料容積を測定した。その試料容積から、試料質量とフェノール樹脂硬化体の密度から計算した壁(気泡やボイド以外の部分)の容積を差し引いた値を、試料の外寸から計算した見かけの容積で割った値を独立気泡率とした。ここで、フェノール樹脂硬化体の密度は1.3kg/Lとした。
<フェノール樹脂発泡体の平均気泡径>
平均気泡径は、JIS K6402に記載の方法を参考に、以下の方法で測定した。
フェノール樹脂発泡体積層板の厚み方向のほぼ中央を表裏面に平行に切削して得た試験片の切断面を50倍に拡大した写真を撮影し、得られた写真上にボイドを避けて9cmの長さ(実際の発泡体断面における1,800μmに相当する)の直線を4本引き、各直線が横切った気泡の数に準じて測定したセル数を各直線で求め、それらの平均値で1,800μmを割った値を平均気泡径とした。
<フェノール樹脂発泡体中のフタル酸系化合物の解析>
フェノール樹脂発泡体積層板のフェノール樹脂発泡体中にフタル酸系化合物が含まれているか否かは以下の方法により確認することができる。
フェノール樹脂発泡体積層板のフェノール樹脂発泡体部分から採取した試料1gを粉砕し、メタノール(150mL)にてソックスレー抽出を行う(7時間)。エバポレーターにて40℃で濃縮乾固させた後、真空乾燥(常温、30分間)を行う。乾燥質量を測定した後、メタノール5mLに溶解し、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)測定を行う。GC/MS測定条件は、以下の通りとした。
GC装置;Agilent Technologies 7890A
注入口温度;320℃
カラム;DB−1MS(30m×0.25mmφ)、液相厚0.25μm
カラム温度;40℃(5分保持)、20℃/分昇温、320℃(11分保持)
MS装置;Agilent Technologies 5975C MSD
イオン源温度;230℃
インターフェイス温度;300℃
イオン化方法;電子イオン化法
<フェノール樹脂発泡体中の塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンの解析>
フェノール樹脂発泡体積層板のフェノール樹脂発泡体中に塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンが含まれているか否かは以下の方法により確認することができる。
まず、解析対象となる化合物の標準ガスを用いて、以下のGC/MS測定条件における保持時間を求める。続いて、フェノール樹脂発泡体積層板から面材を剥がして得たフェノール樹脂発泡体の試料10gと、金属製ヤスリとを10L容器(製品名:テドラーバック)に入れて密封し、窒素5Lを注入した。そして、テドラーバックの上からヤスリを使って試料を削り、試料を細かく粉砕した。続いて、81℃に温調された温調機内にテドラーバックを10分間入れた。テドラーバック中で発生したガスを100μL採取し、以下に示すGC/MS測定条件にて分析した。塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンの種類は、事前に求めた保持時間とマススペクトルから同定を行った。
[GC/MS測定条件]
GC/MSの測定は以下のように行った。
ガスクロマトグラフはアジレント・テクノロジー社製のAgilent7890型を用い、カラムはジーエルサイエンス社製InertCap 5(内径0.25mm、膜厚5μm、長さ30m)を用いた。キャリアガスはヘリウムを用い、流量は1.1mL/分とした。注入口の温度は150℃、注入方法はスプリット法(1:50)とし、試料の注入量は100μLとした。カラム温度はまず−60℃で5分間保持し、その後50℃/分で150℃まで昇温し、2.8分保持した。
質量分析計は日本電子社製のQ1000GC型を用いた。イオン化方法:電子イオン化法(70eV)、スキャン範囲:m/Z=10〜500、電圧:−1300V、イオン源温度:230℃、インターフェイス温度:150℃の条件で質量分析を行った。
<母材の平滑性評価レベル>
上面および下面の面積が10,000mm2のフェノール樹脂発泡体積層板を試料とし、当該試料から面材を手で丁寧に剥離した。なお、面材は、手で容易に剥離することができ、面材側への樹脂の滲みは目視では確認できなかった。
そして、試料から面材を剥離して得られた母材に関して、厚みを、10mmの間隔をあけて20点測定し、以下の式(a)により、平滑性評価レベルを求めた。
平滑性評価レベル(mm)=(最大厚み−最小厚み) ・・・(a)
(実施例2)
発泡核剤である窒素を発泡剤に対して0.05質量%添加した以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
(実施例3)
発泡核剤である窒素を発泡剤に対して0.3質量%添加した以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
(実施例4)
酸性硬化剤としての有機酸(キシレンスルホン酸)の配合量を調整することにより、フェノール樹脂組成物に対する発泡剤の配合量aと有機酸の配合量bの比(a/b)を0.59とした以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
(実施例5)
酸性硬化剤としての有機酸(キシレンスルホン酸)の配合量を調整することにより、フェノール樹脂組成物に対する発泡剤の配合量aと有機酸の配合量bの比(a/b)を1.46とした以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
(実施例6)
フェノール樹脂A100質量部に対するフタル酸系化合物(DOP)の添加量を0.4質量部とし、発泡剤を2−クロロプロパン(塩素化脂肪族炭化水素)とし、フェノール樹脂組成物100質量部に対する発泡剤の配合量を9質量部とし、発泡核剤である窒素を発泡剤に対して0.2質量%添加し、面材としてガラス繊維混抄紙を使用した以外は実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
(実施例7)
発泡剤を1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(非塩素化ハイドロフルオロオレフィン)とした以外は実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
(比較例1)
フタル酸系化合物であるフタル酸ジ−n−オクチル(和光純薬工業株式会社製;DOP)を添加しない以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
(比較例2)
フェノール樹脂組成物100質量部に対して、発泡剤である1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(塩素化ハイドロフルオロオレフィン)を10.5質量部添加した以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
実施例1〜7及び比較例1〜2で得られたフェノール樹脂発泡体積層板の特性の評価結果を、表1にまとめた。
Figure 0006302867
表1より、実施例1〜7で得られたフェノール樹脂発泡体積層板のフェノール樹脂発泡体は、比較例1〜2で得られたフェノール樹脂発泡体積層板のフェノール樹脂発泡体よりも独立気泡率が高く、優れた長期断熱性能を有していることが分かる。
また、表1より、実施例1〜7で得られたフェノール樹脂発泡体積層板の母材は、比較例2で得られたフェノール樹脂発泡体積層板の母材よりも優れた平滑性を有していることが分かる。

Claims (4)

  1. フェノール樹脂発泡体の少なくとも上下面に面材が配されたフェノール樹脂発泡体積層板であって、
    前記フェノール樹脂発泡体は、密度が15kg/m3以上50kg/m3以下、独立気泡率が85%以上の範囲にあり、塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種と、フタル酸系化合物とを含有し、
    前記面材が可撓性面材であり、
    前記面材を剥離した母材の平滑性評価レベルが1.5mm以下であることを特徴とする、フェノール樹脂発泡体積層板。
  2. 前記面材が紙を含有することを特徴とする、請求項1に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
  3. 前記面材がガラス繊維を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
  4. フェノール樹脂と、界面活性剤と、フタル酸系化合物と、塩素化脂肪族炭化水素、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種を含有する発泡剤と、有機酸を含有する酸性硬化剤とを含む発泡性フェノール樹脂組成物を、混合機を用いて混合する工程と、
    混合した発泡性フェノール樹脂組成物を面材上に吐出する工程と、
    前記面材上に吐出した発泡性フェノール樹脂組成物を発泡、硬化させてフェノール樹脂発泡体の少なくとも上下面に面材が配されたフェノール樹脂発泡体積層板を得る工程と、
    を含み、
    前記発泡性フェノール樹脂組成物は、前記発泡剤よりも沸点が50℃以上低い発泡核剤を前記発泡剤100質量%に対して0.05質量%以上0.3質量%以下の割合で含み、
    前記発泡性フェノール樹脂組成物中の前記発泡剤の含有割合が、前記フェノール樹脂と、前記界面活性剤と、前記フタル酸系化合物との合計100質量部当たり10質量部以下であり、
    前記発泡性フェノール樹脂組成物中の前記有機酸の含有量(b)に対する前記発泡剤の含有量(a)の質量比(a/b)が、0.59以上1.46以下であり、
    前記面材として可撓性面材を使用する、フェノール樹脂発泡体積層板の製造方法。
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