以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一側面としての露光装置100の構成を示す概略図である。露光装置100は、レチクル1を保持するレチクルステージ2と、基板3を保持する基板ステージ4と、レチクルステージ2に保持されたレチクル1を照明する照明光学系5とを有する。また、露光装置100は、レチクル1のパターン(の像)を基板ステージ4に保持された基板3に投影する投影光学系6と、露光装置100の全体の動作を統括的に制御する制御部17とを有する。
露光装置100は、本実施形態では、レチクル1と基板3とを走査方向に互いに同期走査しながら(即ち、ステップ・アンド・スキャン方式で)、レチクル1のパターンを基板3に転写する走査型露光装置(スキャナー)である。但し、露光装置100は、レチクル1を固定して(即ち、ステップ・アンド・リピート方式で)、レチクル1のパターンを基板3に投影する露光装置(ステッパー)であってもよい。
以下では、投影光学系6の光軸と一致する方向(光軸方向)をZ軸方向、Z軸方向に垂直な平面内でレチクル1及び基板3の走査方向をY軸方向、Z軸方向及びY軸方向に垂直な方向(非走査方向)をX軸方向とする。また、X軸周り、Y軸周り及びZ軸周りのそれぞれの方向を、θX方向、θY方向及びθZ方向とする。
照明光学系5は、レチクル1、具体的には、レチクル上の所定の照明領域を、均一な照度分布の光(露光光)で照明する。
レチクルステージ2は、投影光学系6の光軸に垂直な平面内、即ち、XY平面内で2次元移動可能に、且つ、θZ方向に回転可能に構成される。レチクルステージ2は、リニアモータなどの駆動装置(不図示)によって1軸駆動又は6軸駆動される。
レチクルステージ2には、ミラー7が配置されている。また、ミラー7に対向する位置には、レーザ干渉計9が配置されている。レチクルステージ2の2次元方向の位置及び回転角はレーザ干渉計9によってリアルタイムで計測され、かかる計測結果は制御部17に出力される。制御部17は、レーザ干渉計9の計測結果に基づいて駆動装置を制御し、レチクルステージ2に保持されたレチクル1を位置決めする。
投影光学系6は、複数の光学素子を含み、レチクル1のパターンを所定の投影倍率βで基板3に投影する。投影光学系6は、本実施形態では、投影倍率βとして、例えば、1/4又は1/5を有する縮小光学系である。
基板ステージ4は、チャックを介して基板3を保持するZステージと、Zステージを支持するXYステージと、XYステージを支持するベースとを含む。基板ステージ4は、リニアモータなどの駆動装置によって駆動される。
基板ステージ4には、ミラー8が配置されている。また、ミラー8に対向する位置には、レーザ干渉計10及び12が配置されている。基板ステージ4のX軸方向、Y軸方向及びθZ方向の位置はレーザ干渉計10によってリアルタイムで計測され、かかる計測結果は制御部17に出力される。同様に、基板ステージ4のZ軸方向の位置、θX方向及びθY方向の位置はレーザ干渉計12によってリアルタイムに計測され、かかる計測結果は制御部17に出力される。制御部17は、レーザ干渉計10及び12の計測結果に基づいて駆動装置を制御し、基板ステージ4に保持された基板3を位置決めする。
レチクルアライメント検出系13は、レチクルステージ2の近傍に配置される。レチクルアライメント検出系13は、レチクルステージ2に保持されたレチクル1の上のレチクル基準マーク(不図示)と、投影光学系6を介して基板ステージ4に配置されたステージ基準プレート11の上の基準マーク38とを検出する。
レチクルアライメント検出系13は、基板3を実際に露光する際に用いられる光源と同一の光源を用いて、レチクル1の上のレチクル基準マークと、投影光学系6を介して基準マーク38とを照明する。また、レチクルアライメント検出系13は、レチクル基準マーク及び基準マーク38からの反射光を撮像素子(例えば、CCDカメラなどの光電変換素子)で検出する。かかる撮像素子からの検出信号に基づいて、レチクル1と基板3との位置合わせ(アライメント)が行われる。この際、レチクル1の上のレチクル基準マークとステージ基準プレート11の上の基準マーク38の位置及びフォーカスを合わせることで、レチクル1と基板3との相対的な位置関係(X、Y、Z)を合わせることができる。
レチクルアライメント検出系14は、基板ステージ4に配置される。レチクルアライメント検出系14は、透過型の検出系であって、基準マーク38が透過型のマークである場合に使用される。レチクルアライメント検出系14は、基板3を実際に露光する際に用いられる光源と同一の光源を用いて、レチクル1の上のレチクル基準マーク及び基準マーク38を照明し、かかるマークからの透過光を光量センサで検出する。この際、基板ステージ4をX軸方向(又はY軸方向)及びZ軸方向に移動させながら、レチクルアライメント検出系14は、透過光の光量を検出する。これにより、レチクル1の上のレチクル基準マークとステージ基準プレート11の上の基準マーク38との位置及びフォーカスを合わせることができる。
このように、レチクルアライメント検出系13、或いは、レチクルアライメント検出系14のどちらを用いても、レチクル1と基板3との相対的な位置関係(X、Y、Z)を合わせることができる。
ステージ基準プレート11は、基板3の表面(第1面)とほぼ同じ高さになるように、基板ステージ4のコーナーに配置される。ステージ基準プレート11は、基板ステージ4の1つのコーナーに配置されていてもよいし、基板ステージ4の複数のコーナーに配置されていてもよい。
ステージ基準プレート11は、図2に示すように、レチクルアライメント検出系13又は14によって検出される基準マーク38と、基板アライメント検出系16によって検出される基準マーク39とを有する。ステージ基準プレート11は、複数の基準マーク38や複数の基準マーク39を有していてもよい。また、基準マーク38と基準マーク39との位置関係(X軸方向及びY軸方向)は、所定の位置関係に設定されている(即ち、既知である)。なお、基準マーク38と基準マーク39とは、共通のマークであってもよい。
フォーカス検出系15は、基板3の表面に光を投射する投射系と、基板3の表面で反射した光を受光する受光系とを含み、基板3のZ軸方向の位置を検出し、かかる検出結果を制御部17に出力する。制御部17は、フォーカス検出系15の検出結果に基づいて基板ステージ4を駆動する駆動装置を制御し、基板ステージ4に保持された基板3のZ軸方向の位置及び傾斜角を調整する。
基板アライメント検出系16は、基板3に形成されたアライメントマークやステージ基準プレート11の上の基準マーク39を照明する照明系、かかるマークからの光によりマークの像を形成する結像系などの光学系を含む。基板アライメント検出系16は、基板3に形成されたアライメントマークや基準マーク39の位置を検出し、かかる検出結果を制御部17に出力する。制御部17は、基板アライメント検出系16の検出結果に基づいて基板ステージ4を駆動する駆動装置を制御し、基板ステージ4に保持された基板3のX軸方向及びY軸方向の位置を調整する。
また、基板アライメント検出系16は、基板アライメント検出系用のフォーカス検出系(AF検出系)41を含む。AF検出系41は、フォーカス検出系15と同様に、基板3の表面に光を投射する投射系と、基板3の表面で反射した光を受光する受光系とを含む。フォーカス検出系15は、投影光学系6のフォーカス合わせに用いるのに対して、AF検出系41は、基板アライメント検出系16のフォーカス合わせに用いる。
基板3の裏面又は基板内の面(第2面)に形成されたアライメントマーク(以下、「裏面側マーク(第2被検マーク)」とする)に基板アライメント検出系16のフォーカス(焦点)を合わせる場合には、イメージオートフォーカス計測を用いる。AF検出系41は、基板3の表面に斜入射で光を投射し、その反射光(の位置)をセンサで検出する。基板3の裏面側に基板アライメント検出系16のフォーカスを合わせるためには、AF検出系41を用いて基板3の表面に基板アライメント検出系16のフォーカスを合わせた後、基板ステージ4を基板3の厚さに対応する距離だけZ軸方向に移動すればよい。但し、基板3の面内の厚さのばらつきがフォーカス合わせ誤差になってしまう可能性がある。このような場合には、基板アライメント検出系16の画像コントラストを検出するイメージオートフォーカス計測を実施すればよい。イメージオートフォーカス計測は、ベストフォーカス位置において、アライメントマークのコントラストが最も高くなるという原理を利用している。従って、基板3の面内の厚さのばらつきの影響を受けないため、フォーカス合わせ誤差の問題を回避することができる。なお、ここでの「裏面側マーク」とは、上述したように、基板3を表側から見たときの裏側の外面に形成されたアライメントマークだけではなく、基板3の内部の面(例えば、多層膜の面)に形成されているアライメントマークも含むものである。
また、基板アライメント検出系の構成は、一般的には、オフアクシスアライメント(OA)検出系、及び、TTL(Through the Lens Auto Alignment)検出系の2つに大別される。OA検出系は、投影光学系を介さずに、基板に形成されたアライメントマークを光学的に検出する。TTL検出系は、投影光学系を介して、露光光の波長とは異なる波長の光を用いて基板に形成されたアライメントマークを検出する。基板アライメント検出系16は、本実施形態では、OA検出系であるが、本発明は、アライメントの検出方式を限定するものではない。例えば、基板アライメント検出系16がTTL検出系である場合には、投影光学系6を介して、基板に形成されたアライメントマークを検出するが、基本的な構成は、OA検出系と同様である。
図3を参照して、基板アライメント検出系16について詳細に説明する。図3は、基板アライメント検出系16の具体的な構成を示す概略図である。基板アライメント検出系16は、基板3の位置を検出する検出装置として機能する。ここでは、基板アライメント検出系16が基板3の表面側に形成されたアライメントマーク(以下、「表面側マーク(第1被検マーク)」とする)19を検出する場合を例に説明する。但し、表面側マーク19の検出と同様にして、基板アライメント検出系16は、基板3に形成された裏面側マークを検出することもできる。また、基板3は、Siウエハであるものとする。
光源20は、基板3を透過しない波長の第1光として可視光(例えば、400nm〜800nmの波長の光)、及び、基板3を透過する波長の第2光として赤外光(例えば、800nm〜1500nmの波長の光)を射出する。光源20から射出された光は、第1リレー光学系21、波長フィルタ板22及び第2リレー光学系23を通過して、基板アライメント検出系16の瞳面(物体面に対する光学的なフーリエ変換面)に位置する開口絞り板24に到達する。
波長フィルタ板22には、透過させる光の波長帯域が互いに異なる複数のフィルタが配置され、制御部17の制御下において、複数のフィルタから1つのフィルタが選択されて基板アライメント検出系16の光路に配置される。本実施形態では、可視光を透過する可視光用のフィルタ及び赤外光を透過する赤外光用のフィルタを波長フィルタ板22に配置し、これらのフィルタを切り替えることで、可視光及び赤外光のいずれか一方の光でアライメントマークを照明する。なお、波長フィルタ板22は、新たなフィルタを追加することが可能な構成を有する。
開口絞り板24には、互いに照明σが異なる複数の開口絞りが配置され、制御部17の制御下において、基板アライメント検出系16の光路に配置する開口絞りを切り替えることで、アライメントマークを照明する光の照明σを変更することができる。なお、開口絞り板24は、新たな開口絞りを追加することが可能な構成を有する。
開口絞り板24に到達した光は、第1照明系25及び第2照明系27を介して、偏光ビームスプリッター28に導かれる。偏光ビームスプリッター28に導かれた光のうち紙面に垂直なS偏光は、偏光ビームスプリッター28で反射され、NA絞り26及びλ/4板29を透過して円偏光に変換される。λ/4板29を透過した光は、対物レンズ30を通過して、基板3に形成された表面側マーク19を照明する。なお、NA絞り26は、制御部17の制御下において、絞り量を変えることでNAを変更することができる。
表面側マーク19からの反射光、回折光及び散乱光は、対物レンズ30を通過し、λ/4板29を透過して紙面に平行なP偏光に変換され、NA絞り26を介して、偏光ビームスプリッター28を透過する。偏光ビームスプリッター28を透過した光は、リレーレンズ31、第1結像系32及び第2結像光学系33を介して、光電変換素子(例えば、CCDセンサで構成された検出部)34の上に表面側マーク19の像を形成する。光電変換素子34は、表面側マーク19の像を撮像(検出)して検出信号(表面側マーク信号(第1被検マーク信号))を取得する。また、光電変換素子34の上に裏面側マークの像が形成される場合には、光電変換素子34は、裏面側マークの像を撮像して検出信号(裏面側マーク信号(第2被検マーク信号))を取得する。
処理部35は、光電変換素子34で取得される検出信号、及び、記憶部36に記憶された下地信号に基づいて、基板3に形成された表面側マーク19の位置及び裏面側マークの位置のそれぞれを求める。記憶部36には、複数のアライメント条件のそれぞれに対応する複数の下地信号や互いに異なる厚さを有する複数の基板のそれぞれに対応する複数の下地信号が記憶されている。ここで、下地信号とは、基板上のアライメントマークが存在しない領域(非マーク領域)を基板アライメント検出系16で検出して得られる検出信号である。換言すれば、下地信号は、アライメントマークに対する照明むら、光電変換素子34の感度むら、基板アライメント検出系16の光学系を構成するレンズの膜むら、光学系へのごみの付着などに起因する歪みなどのノイズ成分を表す信号である。また、下地信号は、本実施形態では、表面側下地信号(第1面側下地信号)と、裏面側下地信号(第2面側下地信号)とを含む。表面側下地信号は、基板3の表面の表面側マーク19が形成されていない表面側非マーク領域(第1面側非マーク領域)を可視光で照明し、かかる表面側非マーク領域からの光を光電変換素子34で検出して取得される。裏面側下地信号は、基板3の裏面の裏面側マークが形成されていない裏面側非マーク領域(第2面側非マーク領域)を赤外光で照明し、かかる裏面側非マーク領域からの光を光電変換素子34で検出して取得される。処理部35は、基板3の表面や裏面のアライメント面のZ軸方向の位置を、制御部17から取得することができる。処理部35は、後述するように、記憶部36に記憶された複数の下地信号から最適な下地信号を選択し、かかる下地信号を光電変換素子34で取得された検出信号から減算(除去)する(下地補正)。そして、処理部35は、下地信号が減算された検出信号(補正信号)に基づいて、基板3(に形成されたアライメントマーク)の位置を求める。なお、基板3の厚さは、計測部37で計測される。計測部37は、例えば、表面計測部と、裏面計測部とで構成される。表面計測部は、基板3の表面で反射された光の光量を検出する光量センサを含み、基板アライメント検出系16の光軸方向における基板3の表面の位置を計測する。裏面計測部は、基板3の裏面を撮像する撮像素子を含み、基板アライメント検出系16の光軸方向における基板3の裏面の位置を計測する。従って、計測部37は、基板3の表面と裏面との相対距離、即ち、基板3の厚さを計測することができる。
基板アライメント検出系16が基板3に形成された表面側マーク19を検出する場合、表面側マーク19の上には、レジスト(透明層)が塗布(形成)されているため、単色光又は狭い波長帯域の光では干渉縞が発生してしまう。従って、光電変換素子34からの表面側マーク信号に干渉縞の信号が加算され、表面側マーク19(の位置)を高精度に検出することができなくなる。そこで、一般的には、広帯域の波長の光を射出する光源を光源20として用いて、光電変換素子34からのマーク信号に干渉縞の信号が加算されることを低減している。
また、基板3に形成された表面側マーク19を高精度に検出するためには、光電変換素子34において表面側マーク19の像を明確に検出しなければならない。換言すれば、基板アライメント検出系16のフォーカスが表面側マーク19に合っていなければならない。そこで、AF検出系41を用いて、表面側マーク19を基板アライメント検出系16のベストフォーカスに位置させた状態で、表面側マーク19を検出する。
図4(a)乃至図4(d)を参照して、基板3に形成された表面側マーク19の位置を求める場合における下地補正について説明する。図4(a)は、表面側マーク19の断面構造を示す図であって、横方向が位置を示し、縦方向が高さを示している。また、図4(b)は、表面側マーク19を基板アライメント検出系16で検出して得られる表面側マーク信号を示す図であって、横軸が位置を示し、縦軸が表面側マーク信号の強度を示している。表面側マーク19を基板アライメント検出系16で検出した場合、通常、図4(b)に示すように、表面側マーク信号には歪みが生じている。かかる歪みは、アライメントマークに対する照明むら、光電変換素子34の感度むら、基板アライメント検出系16の光学系を構成するレンズの膜むら、光学系へのごみの付着などに起因し、アライメント誤差となる。
そこで、基板3の表面の表面側マーク19が形成されていない表面側非マーク領域を基板アライメント検出系16で検出して、図4(c)に示すような表面側下地信号(即ち、基板アライメント検出系16が有するノイズ成分)を記憶部36に予め記憶させる。例えば、表面側下地信号は、ステージ基準プレート11の上の基準マーク39に基板アライメント検出系16のフォーカスを合わせてから、基板アライメント検出系16の視野に表面側非マーク領域が位置するように基板ステージ4を移動させて取得する。そして、図4(c)に示す表面側下地信号を図4(b)に示す表面側マーク信号から減算して、図4(d)に示すような表面側補正信号を生成する。下地補正後の表面側補正信号(図4(d))は、下地補正前の表面側マーク信号(図4(b))と比較して、歪みが低減されている。従って、アライメント誤差が低減され、高精度なアライメントが可能となる。
図5(a)乃至図5(d)を参照して、基板3に形成された裏面側マーク40の位置を求める場合において、裏面側マーク信号を表面側下地信号で補正する際の問題点について説明する。図5(a)は、裏面側マーク40の断面構造を示す図であって、横方向が位置を示し、縦方向が高さを示している。また、図5(b)は、裏面側マーク40を基板アライメント検出系16で検出して得られる裏面側マーク信号を示す図であって、横軸が位置を示し、縦軸が裏面側マーク信号の強度を示している。裏面側マーク40を検出する場合(裏面アライメント)、表面側マーク19を検出する場合(表面アライメント)と比較して、基板3の表面での反射が大きい。従って、基板アライメント検出系16のデフォーカス面に位置する基板3の表面で反射される光が光電変換素子34で検出されるため、ノイズ成分が多くなる傾向がある。これにより、図5(b)に示す裏面側マーク信号は、図4(b)に示す表面側マーク信号よりも歪みが大きくなる。ここで、図5(c)に示すような表面側下地信号を用いて、図5(b)に示す裏面側マーク信号を下地補正することを考える。但し、表面アライメントと裏面アライメントとの間では、下地信号が異なるため、図5(c)に示す表面側下地信号を図5(b)に示す裏面側マーク信号から減算しても、図5(d)に示すように、補正残差(歪み)が残り、アライメント誤差となってしまう。
図6(a)及び図6(b)を参照して、表面アライメントと裏面アライメントとの間で下地信号が異なる理由について説明する。図6(a)は、表面アライメント時に基板3の表面で反射された光の経路を示す図であって、図6(b)は、裏面アライメント時に基板3の表面で反射された光の経路を示す図である。図6(a)及び図6(b)に点線で示すように、裏面アライメント時に基板3の表面で反射された光の経路は、表面アライメント時に基板3の表面で反射された光の経路と異なる。下地信号には、基板アライメント検出系16の光学系を構成するレンズの膜むらなどに起因するノイズ成分が含まれているため、基板3の表面で反射された光の基板アライメント検出系16における通過位置が異なると、下地信号も異なることになる。換言すれば、表面アライメントと裏面アライメントとでは、下地信号が異なる。
また、互いに異なる厚さを有する基板3のそれぞれについて、裏面アライメント時に基板3の表面で反射された光の経路を図7(a)乃至図7(c)に示す。基板3の厚さが異なると、図7(a)乃至図7(c)に示すように、基板3の表面に入射する光の位置(即ち、反射位置)が異なるため、基板3の表面で反射された光の基板アライメント検出系16における通過位置が異なる。従って、基板3の厚さに応じて、下地信号が異なることになる。
例えば、基板3の厚さが厚い場合、図7(a)に示すように、基板3の表面で反射された光は、基板アライメント検出系16の中心付近の特定の位置を通過する。但し、基板3の厚さが薄くなると、図7(b)に示すように、基板3の表面で反射された光は、基板3の厚さが厚い場合(図7(a))よりも、基板アライメント検出系16の外側の位置を通過する。基板3の厚さが更に薄くなると、基板3の表面で反射された光は、基板3の厚さが薄い場合(図7(b))よりも、基板アライメント検出系16の更に外側の位置を通過する。
そこで、本実施形態では、図8(a)乃至図8(c)に示すように、基板ステージ4を移動させて基板3のZ軸方向の位置を変更しながら下地信号を取得する。具体的には、基板アライメント検出系16の光軸方向に基板3を移動させて基板3の表面と裏面との間の複数の位置のそれぞれに基板アライメント検出系16からの赤外光を集光する。そして、かかる複数の位置のそれぞれに対応して基板3の表面で反射される赤外光を光電変換素子34で検出して取得された複数の検出信号を、複数の裏面側下地信号として記憶部36に記憶させる。なお、基板3の表面と複数の位置のそれぞれとの距離は、基板3の厚さに対応している。例えば、図8(a)と図7(a)とでは、基板3の表面で反射された光の基板アライメント検出系16における通過位置が同じである。また、図8(b)と図7(b)とでは、基板3の表面で反射された光の基板アライメント検出系16における通過位置が同じである。同様に、図8(c)と図7(c)とでは、基板3の表面で反射された光の基板アライメント検出系16における通過位置が同じである。このように、本実施形態では、互いに異なる厚さを有する複数の基板を準備することなく、1つの基板のZ軸方向の位置を変更することによって、任意の厚さの基板に対応する裏面側下地信号を取得して記憶部36に記憶させることができる。
図9(a)乃至図9(d)を参照して、基板3に形成された裏面側マーク40の位置を求める場合における下地補正について説明する。図9(a)は、裏面側マーク40の断面構造を示す図であって、横方向が位置を示し、縦方向が高さを示している。また、図9(b)は、裏面側マーク40を基板アライメント検出系16で検出して得られる裏面側マーク信号を示す図であって、横軸が位置を示し、縦軸が裏面側マーク信号の強度を示している。図9(c)は、基板3の表面と裏面との相対的な距離、即ち、基板3の厚さに応じて、記憶部36に記憶された複数の裏面側下地信号から選択された最適な裏面側下地信号を示す図である。図9(d)は、図9(c)に示す裏面側下地信号を図9(b)に示す裏面側マーク信号から減算して生成される裏面側補正信号を示す図である。図9(d)に示す裏面側補正信号は、図5(d)に示す信号(表面側下地信号を裏面側マーク信号から減算した信号)と比較して、歪みが低減されている。従って、アライメント誤差が低減され、高精度なアライメントが可能となる。
以下、基板3に形成された裏面側マーク40の位置を求める場合における下地補正を詳細に説明する。まず、露光装置100において裏面アライメントを実施する前に、裏面側下地信号を取得するための基板を露光装置100に搬入する。かかる基板は、裏面アライメントの対象となる基板3であってもよいし、基板3の表面の反射特性と同等な反射特性を有する基板であってもよい。これは、表面アライメントと裏面アライメントとで下地信号が異なるのは、上述したように、基板3の表面で反射される光が原因だからである。裏面側下地信号を取得するための基板は、実際の基板3の厚さと同等な厚さを有し、標準的には、775μmの厚さを有する。これにより、基板の表面のZ軸方向の位置と裏面側下地信号の取得時の基板アライメント検出系16のベストフォーカスの位置との相対距離を大きく変化させることができる。従って、より広範囲な基板の厚さに対応した裏面側下地信号を取得することができる。
次いで、AF検出系41を用いて、裏面側下地信号を取得するための基板の表面を基板アライメント検出系16のベストフォーカスに合わせる。そして、基板ステージ4をZ軸方向に移動させて、基板アライメント検出系16のベストフォーカスが基板の内部(即ち、基板の表面と裏面との間)に位置するようにする。この状態において、基板の裏面側非マーク領域を基板アライメント検出系16で検出して裏面側下地信号を取得し、かかる裏面側下地信号を取得したときの基板ステージ4のZ軸方向の位置を、例えば、制御部17のメモリなどに記憶する。このような処理を基板ステージ4のZ軸方向の位置を変更しながら行って、基板の表面からの相対距離に応じた裏面側下地信号を記憶部36に記憶する。
次に、裏面アライメントの対象となる基板3を露光装置100に搬入する。そして、AF検出系41を用いて、基板3の表面のZ軸方向の位置を取得し、予め取得した基板3の屈折率及び厚さに基づいて、基板ステージ4を移動させる。なお、イメージオートフォーカス計測を実施して、基板3に形成された裏面側マーク40のZ軸方向の位置を取得してもよい。次いで、基板3の厚さ、又は、基板3の表面と裏面との相対距離に基づいて、記憶部36に記憶された複数の裏面側下地信号から、基板3の厚さに対応する最適な裏面側下地信号(図9(c))を選択する。ここで、露光装置100で処理される基板3の厚さ、又は、基板3の表面と裏面との相対距離は、例えば、計測部37で予め計測され、制御部17のメモリや記憶部36などに記憶されている。換言すれば、制御部17のメモリや記憶部36は、露光装置100で処理される複数の基板3と複数の基板3のそれぞれの厚さとの関係を管理する管理部として機能する。従って、処理部35は、かかる管理部で管理された関係に基づいて、記憶部36に記憶された複数の裏面側下地信号から、裏面側マーク40の位置を求める基板3の厚さに対応する最適な裏面側下地信号を選択することができる。
次いで、基板3に形成された裏面側マーク40を検出して裏面側マーク信号(図9(b))を取得し、かかる裏面側マーク信号から選択した裏面側下地信号を減算して裏面側補正信号(図9(d))を生成する。裏面側補正信号は、上述したように、裏面側マーク信号と比較して、歪みが低減されている。従って、裏面側補正信号に基づいて、基板3に形成された裏面側マーク40を高精度に求めることによって、アライメント誤差が低減され、高精度なアライメントが可能となる。
本実施形態では、基板3に形成された裏面側マーク40を検出する際には、800nm以上の波長の光、即ち、赤外光で裏面側マーク40を照明している。但し、基板3が10μm以下の厚さのSiウエアである場合には、基板3の内部での照明光の吸収が少ないため、可視光を用いることも可能である。
また、本実施形態では、基板3がSiウエハである場合について説明したが、基板3がSiC、GaNなどの化合物ウエハである場合やボロン、ヒ素などのドーパント材を加えたウエハである場合にも同様な効果を発揮する。なお、基板3は、表面が研磨されたウエハであってもよいし、ウエハとガラス基板とが貼り合わせてあってもよい。
また、本実施形態では、裏面側下地信号を予め取得して記憶部36に記憶させているが、基板3に形成された裏面側マーク40を検出するときに取得してもよい。この場合、かかる基板3に対応する裏面側下地信号(即ち、最適な裏面側下地信号)を常に取得することができるため、基板3の厚さなどを計測する必要はない。
露光装置100による露光処理について説明する。光源から発せられた光は、照明光学系5を介して、レチクル1を照明する。レチクル1を通過してパターンを反映する光は、投影光学系6を介して、基板3に結像される。この際、基板3は、基板アライメント検出系16の検出結果に基づいて、高精度に位置決めされている。従って、露光装置100は、高いスループットで経済性よく高品位なデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)などの物品を提供することができる。かかるデバイスなどの物品は、露光装置100を用いてフォトレジスト(感光剤)が塗布された基板(ウエハ、ガラスプレート等)を露光する工程と、露光された基板を現像する工程と、その他の周知の工程と、を経ることにより製造される。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。