以下、本発明の実施形態に係る濾過システム1について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る濾過システム1の概略を示す図である。図2は、本発明の一実施形態に係る膜濾過装置群2の概略を示す図である。図3は、本発明の一実施形態に係る膜濾過装置20の概略を示す図である。図4は、各工程における各弁の開閉状態を説明する図である。図5は、濾過工程と逆洗工程とにおいて、膜モジュール21の膜詰まりの程度を膜間差圧の変化で示したグラフである。
まず、本発明の濾過システム1の全体構成につき、図1を参照しながら説明する。
図1に示すように、濾過システム1は、被処理水としての原水W1から透過水W2を製造可能な複数(5台)の膜濾過装置(濾過装置)20を含む膜濾過装置群(濾過装置群)2と、複数の原水ポンプ3と、複数の第1インバータ4と、複数の膜濾過装置20において製造された透過水W2を処理水W6として集合させる処理水タンク16と、この処理水タンク16の内部に貯留された処理水W6(透過水W2)の水位を検出する水位センサ17と、逆洗水用タンク7と、逆洗水ポンプ5と、第2インバータ6と、薬剤添加装置8と、膜濾過装置群2により製造される透過水W2の通水流量を制御する制御部32を有する台数制御装置30と、を備える。
また、濾過システム1は、原水ラインL11と、ローカル原水ラインL12と、透過水ラインL21と、ローカル透過水ラインL22と、逆洗水ラインL3と、配水ラインL7と、を備える。なお、本明細書における「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
原水ラインL11は、原水W1を複数の膜濾過装置20に供給するラインである。原水ラインL11の上流側の端部は、原水W1の供給源(不図示)に接続されている。原水ラインL11の下流側の端部は、複数の膜濾過装置20に向けてそれぞれローカル原水ラインL12に分岐される。原水ラインL11を流通する原水W1は、複数のローカル原水ラインL12を介して、造水運転中において、複数の膜濾過装置20にそれぞれ分配される。
複数のローカル原水ラインL12には、それぞれ、原水ポンプ3が設けられている。
原水ポンプ3は、ローカル原水ラインL12を流通する原水W1を吸入し、膜濾過装置20へ向けて圧送(吐出、送出)する装置である。原水ポンプ3には、第1インバータ4から周波数が変換された駆動電力が供給される。原水ポンプ3は、入力された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
第1インバータ4は、原水ポンプ3に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路(又はその回路を持つ装置)である。第1インバータ4は、膜濾過装置20のローカル制御部22(後述)それぞれと電気的に接続されている。第1インバータ4には、ローカル制御部22(後述)から周波数指定信号(すなわち、指令信号)が入力される。第1インバータ4は、信号線53を介して、ローカル制御部22(後述)により入力された周波数指定信号(電流値信号又は電圧値信号)に対応する駆動周波数の駆動電力を、原水ポンプ3に出力する。
ここで、各膜濾過装置20に備えられた流量センサ12(後述、図3参照)からの流量検知信号に基づいて、第1インバータ4に周波数指定信号を入力することにより、原水ポンプ3の回転速度を可変させることができる。この構成によれば、流量センサ12により検出される透過水W2の流量に基づくフィードバック制御により、透過水W2の流量を一定に維持するように制御を行うことができる。これにより、各膜モジュール21の膜表面でのケーキ層の成長につれて、膜間の通水抵抗が増加しても、原水ポンプ3の回転数が自動的に調整されて、透過水W2の流量を一定に制御することができる。
複数の膜濾過装置20は、図1に示すように、それぞれ、複数(4本)の膜モジュール21を備える。本実施形態においては、複数の膜濾過装置20は、原水W1から、それぞれ、同じ定格流量で透過水W2を製造可能である。また、複数の膜濾過装置20は、それぞれ、台数制御装置30と電気的に接続されている。膜濾過装置20の詳細については後述する。
透過水ラインL21は、複数の膜濾過装置20で製造された透過水W2を処理水タンク16へ送出するラインである。透過水ラインL21の上流側の端部は、複数のローカル透過水ラインL22に分岐し、膜濾過装置20それぞれの膜モジュール21に接続されている。透過水ラインL21の下流側の端部は、処理水タンク16に接続されている。透過水ラインL21には、上流側から順に、接続部J4、処理水タンク16が設けられている。
膜濾過装置群2は、負荷機器としての処理水使用設備18に供給する透過水W2を製造する。膜濾過装置群2により製造された透過水W2は、透過水ラインL21を介して処理水タンク16に補給される。
接続部J4には、逆洗水ラインL3の上流側の端部が接続されている。逆洗水ラインL3は、接続部J4において透過水ラインL21から分岐され、後述する逆洗水用タンク7を経由して、膜濾過装置20の内部の接続部J3(図3参照)において透過水ラインL21に合流されるラインである。逆洗水ラインL3の上流側の端部は、接続部J4に接続されている。逆洗水ラインL3の下流側の端部は分岐されており、それぞれ、膜濾過装置20の内部において透過水ラインL21の接続部J3に接続されている(図3参照)。逆洗水ラインL3には、膜モジュール21における逆洗工程(逆洗プロセス)(後述)を実行するために、複数の膜モジュール21において製造された透過水W2の一部が流通される。
逆洗水ラインL3には、図1に示すように、上流側から順に、接続部J4、逆洗水用タンク7、逆洗水ポンプ5、接続部J5、複数の膜濾過装置20が設けられている。
逆洗水用タンク7は、逆洗工程のために、複数の膜モジュール21において製造された透過水W2の一部を、逆洗水ラインL3を流通させて、逆洗水W3(透過水W2)として貯留するタンクである。
逆洗水ポンプ5は、逆洗工程において、逆洗水ラインL3を流通する逆洗水W3(透過水W2)を吸入し、複数の膜モジュール21へ向けて圧送(吐出、送出)する装置である。逆洗水ポンプ5は、逆洗排水W4の流量を変更可能である。逆洗水ポンプ5には、第2インバータ6から周波数が変換された駆動電力が供給される。逆洗水ポンプ5は、入力された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
第2インバータ6は、逆洗水ポンプ5に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路(又はその回路を持つ装置)である。第2インバータ6は、信号線54を介して、台数制御装置30と電気的に接続されている。第2インバータ6には、台数制御装置30から周波数指定信号が入力される。第2インバータ6は、信号線54を介して、ローカル制御部22により入力された周波数指定信号(電流値信号又は電圧値信号)に対応する駆動周波数の駆動電力を逆洗水ポンプ5に出力する。
接続部J5には、薬剤添加装置8が接続されている。薬剤添加装置8は、逆洗工程において、複数の膜モジュール21へ流入する逆洗水W3に薬剤を添加(供給)する装置である。逆洗工程において逆洗水W3に薬剤を添加することにより、複数の膜モジュール21の濾過性能を維持するために、膜の表面に堆積した汚濁物質を化学的な洗浄により除去する。薬剤としては、例えば、酸化剤が利用され、酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウム等が用いられる。
薬剤添加装置8は、例えば複数回の逆洗工程に対して1回の頻度で、逆洗水ラインL3を流通する逆洗水W3の流量に比例して逆洗水W3に薬剤を供給する。薬剤の添加は、例えば複数回の逆洗工程に対して1回の頻度で、例えば1日に1回程度の頻度で実行される。薬剤添加装置8は、信号線55を介して、台数制御装置30と電気的に接続されている。薬剤添加装置8における薬剤の添加は、台数制御装置30により制御されている。
処理水タンク16は、膜濾過装置群2で製造された透過水W2を集合させて処理水W6として貯留する。処理水タンク16は、透過水ラインL21を介して、膜濾過装置群2を構成する複数の膜濾過装置20に接続されている。
この処理水タンク16の下流側は、配水ラインL7を介して、処理水使用設備18に接続されている。処理水タンク16に貯留された処理水W6(透過水W2)は、配水ラインL7を介して、処理水W6として、処理水使用設備18に供給される。
処理水タンク16には、水位センサ17が設けられている。水位センサ17は、処理水タンク16に貯留された処理水W6(透過水W2)の水位を検出する機器である。水位センサ17は、台数制御装置30のローカル制御部22と電気的に接続されている。水位センサ17で測定された処理水タンク16の水位(以下、「検出水位値」ともいう)は、台数制御装置30のローカル制御部22へ検出信号として出力される。
水位センサ17は、信号線51を介して、台数制御装置30に電気的に接続されている。水位センサ17は、処理水タンク16の内部に貯留された処理水W6(膜濾過装置群2で製造されて貯留された処理水W6(透過水W2))の水位を測定し、測定した水位に係る信号(水位信号)を、信号線51を介して台数制御装置30に送信する。本実施形態において、水位センサ17は、例えば、連続式レベルセンサであり、例えば、静電容量式センサ、圧力式センサ、超音波式センサ等が用いられる。図1では、水位センサ17として、静電容量式センサを設けた例を示す。
台数制御装置30は、信号線52を介して、複数の膜濾過装置20と電気的に接続されている。この台数制御装置30は、水位センサ17により測定される処理水タンク16の内部に貯留された処理水W6の水位に基づいて、各膜濾過装置20により製造される透過水W2の通水流量を制御する。台数制御装置30の詳細については、後述する。
以上の濾過システム1は、膜濾過装置群2で製造された透過水W2を、処理水タンク16を介して、処理水使用設備18に供給可能とされている。
濾過システム1において要求される負荷(要求負荷)は、処理水使用設備18における処理水W6の消費量であって、需要箇所(処理水使用設備18)から要求された処理水W6(透過水W2)の通水流量である。台数制御装置30は、この処理水W6の消費量の変動に対応して生じる処理水タンク16の内部に貯留された処理水W6の水位の変動を、水位センサ17が測定する処理水タンク16の内部に貯留された処理水W6の水位(物理量)に基づいて算出し、膜濾過装置群2を構成する各膜濾過装置20により製造される透過水W2の通水流量(処理水W6の水量)を制御する。
具体的には、処理水使用設備18の需要の増大により要求負荷(処理水W6の消費量、処理水使用設備18から要求された処理水W6の通水流量)が増加し、処理水タンク16に供給される処理水W6の水量が不足すれば、処理水タンク16の内部に貯留された処理水W6の水位が低下することになる。一方、処理水使用設備18の需要の低下により要求負荷(処理水W6の消費量、処理水使用設備18から要求された処理水W6の通水流量)が減少し、処理水タンク16に供給される処理水W6が過剰になれば、処理水タンク16の内部に貯留された処理水W6の水位が上昇することになる。従って、濾過システム1は、水位センサ17により測定された処理水タンク16の内部に貯留された処理水W6の水位の変動に基づいて、要求負荷の変動をモニターすることができる。そして、濾過システム1は、処理水タンク16の内部に貯留された処理水W6の水位に基づいて、処理水使用設備18の処理水W6の消費量(要求負荷)に応じて必要とされる処理水量である必要通水流量を算出する。
ここで、本実施形態の濾過システム1を構成する複数の膜濾過装置20について説明する。本実施形態の膜濾過装置20は、負荷率を連続的に変更して原水W1から透過水W2を製造可能な比例制御を実行可能な膜濾過装置からなる。膜濾過装置20における負荷率とは、膜濾過装置20の定格流量に対する透過水W2の通水流量の割合である。
図2に示すように、比例制御を実行可能な膜濾過装置20とは、少なくとも、最小通水状態S1(定格通水状態S3における定格流量に対して最も小さい通水状態)から最大通水状態S2(定格通水状態S3における定格流量に対して最も大きい通水状態)の範囲で、通水量が連続的に制御可能とされている膜濾過装置である。
本実施形態においては、最小通水状態S1の負荷率と最大通水状態S2の負荷率との間の範囲を、最適運転負荷率ゾーンに設定する。
最小通水状態S1の負荷率は、各膜濾過装置20の定格流量に対して、膜濾過装置20の通水流量の検出の精度を確保できる下限流量の割合である。膜濾過装置20の通水流量を正確に把握できないと、濾過システム1を、各膜濾過装置20の負荷率に基づいて制御できないため、最小通水状態S1の負荷率が設定される。本実施形態においては、例えば、最小通水状態S1の負荷率を、膜濾過装置20の定格流量の20%に設定する。
最大通水状態S2の負荷率は、膜濾過装置20の膜の細孔内への懸濁物質の押し込みが起こらない上限流量の割合である。膜濾過装置20の膜の細孔内への懸濁物質の押し込みが生じると、膜に不可逆的な膜閉塞が生じて、膜の回復が不可能になってしまうため、最大通水状態S2の負荷率が設定される。本実施形態においては、例えば、最大通水状態S2の負荷率を、膜濾過装置20の定格流量の80%に設定する。
比例制御を実行可能な膜濾過装置20は、例えば、後述する膜濾過装置20の原水弁V1(図3参照)の開度を制御することにより、ローカル原水ラインL12を流通する原水W1の通水量を調整するようになっている。
また、通水量を連続的に制御するとは、後述のローカル制御部22における演算や信号がデジタル方式とされて段階的に取り扱われる場合(例えば、膜濾過装置20の出力(透過水W2の流量)が1%刻みで制御される場合)であっても、事実上連続的に出力を制御可能な場合を含む。
本実施形態では、膜濾過装置20の通水停止状態S0と最小通水状態S1との間の通水状態の変更は、膜濾過装置20の通水をオン/オフ(原水弁V1の弁体を開閉)することで制御される。そして、最小通水状態S1から最大通水状態S2の最適運転負荷率ゾーンの範囲においては、通水量が連続的に制御可能となっている。
より具体的には、複数の膜濾過装置20それぞれには、変動可能な通水流量の単位である単位通水流量Uが設定されている。これにより、膜濾過装置20は、最小通水状態S1から最大通水状態S2の範囲においては、単位通水流量U単位で、通水流量を変更可能となっている。
単位通水流量Uは、膜濾過装置20の定格通水状態S3における定格流量に応じて適宜設定できるが、濾過システム1における出力通水流量の必要通水流量に対する追従性を向上させる観点から、膜濾過装置20の定格流量の1%〜5%に設定されることが好ましい。また、同様の観点から、単位通水流量Uは、定格流量が2000L/hの膜濾過装置の場合であれば、20L/h〜100L/hに設定されることが好ましい。
尚、出力通水流量とは、膜濾過装置群2により出力される通水流量を示し、この出力通水流量は、複数の膜濾過装置20それぞれから出力される通水流量の合計値により表される。
また、複数の膜濾過装置20には、それぞれ優先順位が設定されている。優先順位は、通水指示や通水停止指示を行う膜濾過装置20を選択するために用いられる。優先順位は、例えば整数値を用いて、数値が小さいほど優先順位が高くなるよう設定することができる。図2に示すように、膜濾過装置20の1号機〜5号機のそれぞれに「1」〜「5」の優先順位が割り当てられている場合、1号機の優先順位が最も高く、5号機の優先順位が最も低い。この優先順位は、通常の場合、後述の制御部32の制御により、所定の時間間隔(例えば、24時間間隔)で変更される。
次に、本実施形態の濾過システム1による複数の膜濾過装置20により製造される透過水W2の通水流量の制御の詳細について説明する。
台数制御装置30は、水位センサ17からの水位信号に基づいて、要求負荷(処理水使用設備18から要求された処理水W6(透過水W2)の通水流量)に応じた運転台数、及び膜濾過装置群2の必要通水流量(負荷率)を算出し、各膜濾過装置20(後述のローカル制御部22)に台数制御信号を送信する。この台数制御装置30は、図1に示すように、記憶部31と、制御部32と、を備える。
記憶部31は、台数制御装置30(制御部32)の制御により各膜濾過装置20に対して行われた指示の内容や、各膜濾過装置20から受信した運転状態等の情報、複数の膜濾過装置20の通水パターンの設定条件等の情報、複数の膜濾過装置20の優先順位の設定の情報、優先順位の変更(ローテーション)に関する設定の情報等を記憶する。
制御部32は、信号線52を介して各膜濾過装置20に各種の指示を行ったり、各膜濾過装置20から各種のデータを受信したりして、5台の膜濾過装置20の通水状態や優先順位を制御する。各膜濾過装置20は、台数制御装置30から通水状態の変更指示の信号を受けると、その指示に従って当該膜濾過装置20を制御する。
制御部32は、逆洗水ポンプ5の駆動周波数を演算し、当該駆動周波数の演算値に対応する周波数指定信号(電流値信号又は電圧値信号)を第2インバータ6に出力する。
図1に示すように、制御部32は、優先順位設定部321と、出力制御部322と、を含んで構成される。
優先順位設定部321は、膜詰まり程度検出部222により検出された膜濾過装置20の膜詰まりの程度に基づいて、複数の膜濾過装置20に対して優先順位を設定する。優先順位設定部321は、膜モジュール21の膜詰まりの程度に基づいて、複数の膜モジュール21の膜詰まりの進行度を比較し、膜詰まりの進行している膜モジュール21を有する膜濾過装置20ほど、膜濾過装置20を運転する優先順位を上位に設定する。具体的には、優先順位設定部321は、各膜濾過装置20の膜詰まり程度検出部222(後述)により検出された複数の膜濾過装置20の膜詰まりの程度に関するデータを取得する。優先順位設定部321は、各膜濾過装置20の膜詰まり程度検出部222(後述)により検出された複数の膜濾過装置20の膜詰まりの程度に関するデータに基づいて、複数の膜モジュール21の膜詰まりの進行度を比較する。そして、優先順位設定部321は、膜詰まりの進行している膜モジュール21を有する膜濾過装置20ほど、膜濾過装置20を運転する優先順位を上位に設定する。
出力制御部322は、設定された優先順位に従い膜濾過装置20の通水流量を制御することで、膜濾過装置群2から出力する通水流量を制御する。本実施形態において、出力制御部322は、要求負荷(処理水W6の消費量、処理水使用設備18から要求された処理水W6の通水流量)が増大した場合には、優先順位の高い膜濾過装置20から順に通水流量(負荷率)を上昇させ、膜濾過装置群2から出力する通水流量を増加して、要求負荷が低下した場合には、優先順位の低い膜濾過装置20から順に通水流量(負荷率)を低下させ、膜濾過装置群2から出力する通水流量を減少する。
次に、複数の膜濾過装置20の構成について、図3及び図4を参照して説明する。ここでは、1つの膜濾過装置20を代表して構成を説明するが、他の膜濾過装置20も同じ構成である。図3は、本発明の一実施形態に係る膜濾過装置20の概略を示す図である。図4は、各工程における各弁の開閉状態を説明する図である。
図3に示すように、本実施形態の膜濾過装置20は、複数の膜モジュール21と、ローカル制御部22と、を備える。また、図3に示すように、膜濾過装置20は、ローカル原水ラインL12と、ローカル透過水ラインL22と、逆洗水ラインL3と、第1排出ラインL4と、第2排出ラインL6と、洗浄エア供給ラインL5と、を備える。
また、膜濾過装置20は、原水弁V1と、透過水弁V2と、逆洗水弁V3と、第1排出弁V4と、第2排出弁V6と、エア流量調整弁V5と、温度検出手段としての温度センサ11と、流量検出手段としての流量センサ12と、第1圧力センサ13と、第2圧力センサ14と、を備える。
図3では、電気的な接続の経路を省略するが、ローカル制御部22は、原水弁V1、透過水弁V2、逆洗水弁V3、第1排出弁V4、第2排出弁V6、エア流量調整弁V5、第1インバータ4(図1参照)、温度センサ11、流量センサ12、第1圧力センサ13、第2圧力センサ14等と電気的に接続される。
図3に示すように、ローカル原水ラインL12には、被処理水としての原水W1が流通する。ローカル原水ラインL12は、原水W1を、複数の膜モジュール21へ流通させるラインである。ローカル原水ラインL12は、原水W1の供給源(不図示)と膜モジュール21とを、原水ラインL11を介してつなぐラインである。ローカル原水ラインL12の上流側の端部は、原水ラインL11(図1参照)の下流側の端部に接続されている。また、ローカル原水ラインL12の下流側の端部は分岐されており、それぞれ、膜モジュール21に接続されている。
ローカル原水ラインL12における分岐前の部分には、図3に示すように、上流側から順に、原水弁V1、接続部J13が設けられている。
原水弁V1は、例えば電動弁からなり、ローカル制御部22の制御により、ローカル原水ラインL12を開閉するように構成されている。
接続部J13において、ローカル原水ラインL12には、第1圧力センサ13が接続されている。第1圧力センサ13は、複数の膜モジュール21に流入する原水W1の圧力を計測する機器である。接続部J13は、原水弁V1と複数の膜モジュール21との間に配置されている。第1圧力センサ13は、ローカル制御部22と電気的に接続されている。第1圧力センサ13で測定された原水W1の圧力は、ローカル制御部22へ検出信号として送信される。
複数の膜モジュール21は、処理水使用設備18(図1参照)が要求する処理水W6の要求負荷に対応するため、処理水量を増加させるように、並列接続されている。
膜モジュール21には、原水W1が供給される。膜モジュール21は、原水ポンプ3により圧送された原水W1から、汚濁物質が除去された透過水W2を製造する。膜モジュール21は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)製の中空糸膜の束をベッセル内に収容し、ベッセル両端部においてベッセル内周面と中空糸膜外周面との間に封止剤を充填して形成される。膜モジュール21は、外圧式又は内圧式のいずれでも使用できるが、中空糸内部が閉塞しにくい外圧式が好ましい。また、濾過方式としては、全量濾過方式又はクロスフロー濾過方式のいずれでもよい。一般に、全量濾過方式は、濾過操作時のエネルギー消費量が少ないが、ケーキ層の成長が速いため、逆洗浄の実施間隔や順洗浄(フラッシング)の実施間隔を短くする必要がある。これに対し、クロスフロー濾過方式は、濾過操作時の水循環のためにエネルギー消費量が多いが、ケーキ層の成長が緩やかなため、逆洗浄の実施間隔や順洗浄の実施間隔を延ばすことができる。
膜モジュール21に組み込まれる中空糸膜には、逆浸透膜(「RO膜」ともいう)よりも細孔が粗い膜が用いられる。膜モジュールとして、限外濾過膜を有するUF膜モジュールや、精密濾過膜を有するMF膜モジュール等を適用することができる。なお、本実施形態においては、膜モジュール21を全量濾過方式の外圧式UF膜モジュールとして、以降の装置構成や動作等を説明する。
ローカル原水ラインL12における下流側の分岐後の部分には、それぞれ、洗浄エア供給ラインL5が接続されている。洗浄エア供給ラインL5は、ローカル原水ラインL12を介して、膜モジュール21にエアA1を供給するラインである。洗浄エア供給ラインL5の上流側の端部は、不図示のエアコンプレッサーに接続されている。洗浄エア供給ラインL5の下流側の端部は分岐されており、それぞれ、ローカル原水ラインL12における下流側の分岐後の部分に接続されている。洗浄エア供給ラインL5における上流側の分岐前の部分には、エア流量調整弁V5が設けられている。エア流量調整弁V5は、例えば電磁弁からなり、ローカル制御部22の制御により、洗浄エア供給ラインL5を流通するエアA1の量を調整するように開閉するように構成されている。
ローカル透過水ラインL22は、複数の膜モジュール21において製造された透過水W2を、透過水ラインL21及び処理水タンク16(図1参照)を介して、処理水使用設備18に流通させるラインである。透過水ラインL21は、膜モジュール21と処理水タンク16とをつなぐラインである。透過水ラインL21の上流側の端部は複数のローカル透過水ラインL22に分岐されており、それぞれ、膜モジュール21に接続されている。また、透過水ラインL21の下流側の端部は、処理水タンク16(図1参照)に接続されている。ローカル透過水ラインL22には、図3に示すように、膜濾過装置20の内部において、上流側から順に、複数の膜モジュール21、接続部J14、接続部J1、接続部J2、接続部J3、透過水弁V2が設けられており、図1に示すように、透過水ラインL21における膜濾過装置20と処理水タンク16との間には、接続部J4が設けられている。
接続部J14において、ローカル透過水ラインL22には、第2圧力センサ14が接続されている。第2圧力センサ14は、複数の膜モジュール21から流出する透過水W2の圧力を計測する機器である。接続部J14は、複数の膜モジュール21と接続部J3との間に配置されている。第2圧力センサ14は、ローカル制御部22と電気的に接続されている。第2圧力センサ14で測定された透過水W2の圧力は、ローカル制御部22へ検出信号として送信される。
図3に示すように、接続部J1において、ローカル透過水ラインL22には、温度センサ11が接続されている。接続部J1は、複数の膜モジュール21と接続部J3との間に配置されている。温度センサ11は、ローカル制御部22と電気的に接続されている。温度センサ11で検出された透過水W2の温度(検出温度値)は、ローカル制御部22へ検出信号として送信される。
接続部J2において、ローカル透過水ラインL22には、流量センサ12が接続されている。流量センサ12は、後述する濾過工程において、ローカル透過水ラインL22を流通する透過水W2の流量を検出する機器である。流量センサ12は、後述する逆洗工程において、ローカル透過水ラインL22を流通する逆洗水W3の流量を検出する機器である。接続部J2は、複数の膜モジュール21と接続部J3との間に配置されている。流量センサ12は、ローカル制御部22と電気的に接続されている。流量センサ12で検出された透過水W2又は逆洗水W3の流量(検出流量値)は、ローカル制御部22へ検出信号として送信される。
接続部J3には、逆洗水ラインL3の下流側の端部が接続されている。逆洗水ラインL3には、膜濾過装置20の内部において、上流側から順に、逆洗水弁V3、接続部J3が設けられている。
第1排出ラインL4は、逆洗工程で発生した逆洗排水W4又はバブリング工程(後述)で発生したエアA2が流通するラインである。第1排出ラインL4には、逆洗工程で発生した逆洗排水W4又はバブリング工程で発生したエアA2が系外に排出されるように流通される。第1排出ラインL4の上流側の端部は分岐されており、それぞれ、膜モジュール21に接続される。第1排出ラインL4における下流側の合流した部分には、第1排出弁V4が設けられている。第1排出弁V4は、例えば電磁弁からなり、ローカル制御部22の制御により、第1排出ラインL4を開閉するように構成されている。
第2排出ラインL6は、逆洗工程やバブリング工程において、中空糸膜から除去した汚濁物質を、系外に排出するラインである。第2排出ラインL6には、懸濁物質を含む排水W5が系外に排出するように流通される。第2排出ラインL6の上流側の端部は分岐されており、それぞれ、膜モジュール21に接続される。第2排出ラインL6は、懸濁物質を含む排水W5を系外に排出する。第2排出ラインL6の途中には、第2排出弁V6が設けられている。第2排出弁V6は、例えば電磁弁からなり、ローカル制御部22の制御により、第2排出ラインL6を開閉するように構成されている。
膜濾過装置20は、各弁(原水弁V1、透過水弁V2、逆洗水弁V3、第1排出弁V4、エア流量調整弁V5及び第2排出弁V6)を切り替えることで、水張り工程と、濾過工程(濾過プロセス)と、逆洗工程(逆洗プロセス)と、バブリング工程と、排水工程と、を実行可能である。例えば、通常運転時において、30分間の濾過工程と、5分間のその他の工程(逆洗工程、バブリング工程、排水工程及び水張り工程)との繰り返しが、交互に行われる。膜濾過装置20は、定流量での濾過を一定時間継続すると、中空糸膜の外側でケーキ層(汚濁物質の堆積層)が成長することで、膜間差圧が上昇する。そのため、濾過工程を一定時間継続した後には、逆洗工程、バブリング工程及び排水工程に移行して、中空糸膜の外側のケーキ層を系外に排出して、通水抵抗を回復させる工程が実施される。その後、濾過工程に備えて、水張り工程が実施される。
以下に、水張り工程、濾過工程、逆洗工程、バブリング工程及び排水工程について具体的に説明する。
水張り工程は、膜モジュール21の内部に原水W1を供給して、膜モジュール21の内部を原水W1で満たす工程である。具体的には、図4に示すように、透過水弁V2、逆洗水弁V3、エア流量調整弁V5及び第2排出弁V6を閉鎖して、原水弁V1及び第1排出弁V4を開放して、原水ポンプ3を駆動して、原水W1を膜モジュール21の内部に供給するように操作される。
濾過工程は、膜モジュール21の内部に原水W1を供給して、膜モジュール21の中空糸膜の外側から内側に原水を通過させて、原水W1から透過水W2を製造する工程、すなわち濾過処理を行う工程である。具体的には、図4に示すように、濾過工程は、逆洗水弁V3、第1排出弁V4、エア流量調整弁V5及び第2排出弁V6を閉鎖して、原水弁V1及び透過水弁V2を開放して、原水ポンプ3を駆動して、原水W1を膜モジュール21に圧送するように操作される。
逆洗工程は、逆洗水ポンプ5により逆洗水W3(透過水W2)を膜モジュール21に供給して、膜モジュール21の中空糸膜の内側から外側に向かって逆洗水W3を流通させる工程、すなわち逆洗処理を行う工程である。逆洗工程は、膜モジュールの膜表面に付着した汚濁物質を押し流す。具体的には、図4に示すように、逆洗工程は、原水弁V1、透過水弁V2、エア流量調整弁V5及び第2排出弁V6を閉鎖して、逆洗水弁V3及び第1排出弁V4を開放して、逆洗水ポンプ5を駆動して、逆洗水W3を膜モジュール21に圧送するように操作される。これにより、中空糸膜の外側表面で成長したケーキ層が剥離される。洗浄後の逆洗排水W4は、第1排出ラインL4を介して、系外に排出される。
逆洗工程においては、薬剤添加装置8は、例えば複数回の逆洗工程に対して1回の頻度で、逆洗水ラインL3を流通する逆洗水W3の流量に比例して逆洗水W3に薬剤を供給する。薬剤添加装置8による薬剤の添加は、例えば、1日に1回程度の頻度で実行される。
バブリング工程は、膜モジュール21の下部からエアA1を供給して、中空糸膜の束を揺動させる工程である。これにより、逆洗工程後の膜モジュール2において、中空糸膜同士の隙間や膜の表面に残留している汚濁物質を除去する。具体的には、図4に示すように、バブリング工程は、原水弁V1、透過水弁V2、逆洗水弁V3及び第2排出弁V6を閉鎖し、第1排出弁V4及びエア流量調整弁V5を開放するように操作される。
排水工程は、逆洗工程やバブリング工程において、中空糸膜から除去した汚濁物質を、逆洗排水W4、エアA2及び排水W5として、第1排出弁V4及び第2排出弁V6を介して系外に排出する。具体的には、図4に示すように、排水工程は、原水弁V1、透過水弁V2、逆洗水弁V3及びエア流量調整弁V5を閉鎖し、第1排出弁V4及び第2排出弁V6を開放するように操作される。
ここで、濾過工程及び逆洗工程を繰り返す場合において、膜モジュール21における膜詰まりの進行を、膜モジュール21の膜間差圧(膜モジュール21の一次側と二次側との差圧)の変化により示した場合について、図5を参照しながら説明する。本説明においては、膜間差圧と膜状態の関係について説明する。
図5に示すように、濾過工程及び逆洗工程について、例えば、タイミングt0〜t1において1回目の濾過工程が実行され、タイミングt1において1回目の逆洗工程が実行される。その後、タイミングt1〜t2において2回目の濾過工程が実行され、タイミングt2において2回目の逆洗工程が実行される。その後、タイミングt2〜t3において3回目の濾過工程が実行され、タイミングt3において3回目の逆洗工程が実行される。これらの工程が繰り返されて実行されている。
なお、逆洗工程は、所定の設定時間に基づいて実行されるが、図5では、便宜上逆洗工程の開始及び終了タイミングを同一のものとして示している。また、1回目の濾過工程とは、新設された膜濾過装置20の試運転時に行われる濾過工程、薬剤が添加されて実行された逆洗工程(後述)を経た後の初回の濾過工程、又は膜モジュール21を新品に交換した後の初回の濾過工程のいずれかをいう。更に、これらのいずれかに該当する1回目の濾過工程に続いて実行される逆洗処理を1回目の逆洗工程という。
例えば、図5に示すタイミングt0〜t1において、1回目の濾過工程が、所定時間T(例えば30分間)、実行される。濾過工程では、膜モジュール21に原水W1が供給されて、透過水W2が製造される。1回目の濾過工程においては、開始時(膜モジュール21が通水初期の状態にあるとき、タイミングt0)において膜間差圧がP0であり、終了時(タイミングt1)において膜間差圧がP0+c1であり、膜間差圧の上昇分はc1である。膜モジュール21においては、1回目の濾過工程の実行時において、図5に示すように、タイミングt0〜t1の間において、時間経過に伴って、通水初期の膜間差圧P0から通水終期の膜間差圧P0+c1に向けて上昇する傾向を示す。そのため、濾過工程では、膜モジュール21の表面では、ケーキ層(汚濁物質の堆積層)の成長が進行しているといえる。
1回目の濾過工程が終了すると、タイミングt1において、1回目の逆洗工程が実行される。逆洗工程では、膜モジュール21の表面で成長したケーキ層を除去するように、膜モジュール21の中空糸膜の内側から外側に向かって逆洗水W3を流通させる。これにより、膜モジュール21の膜の表面からケーキ層が除去されて、膜モジュール21の通水抵抗が回復される。
1回目の逆洗工程の実行後、タイミングt1〜t2において、2回目の濾過工程が、所定時間T(例えば30分間)、実行される。2回目の濾過工程においては、開始時(膜モジュール21が通水初期の状態にあるとき:タイミングt1)において膜間差圧がP1であり、終了時(タイミングt2)において膜間差圧がP1+c2であり、膜間差圧の上昇分はc2である。膜間差圧P1は、1回目の濾過工程における通水初期の膜間差圧P0からa1だけ上昇した値である(P1=P0+a1)。また、膜間差圧P1は、1回目の濾過工程における通水終期の膜間差圧P0+c1からb1だけ下降した値である(P1=P0+c1−b1)。したがって、図5から明らかなように、c1=a1+b1の関係である。
そのため、1回目の逆洗工程の終了時においては、膜モジュール21の通水抵抗が差圧b1分だけ回復されているが、1回目の濾過工程における通水初期の膜間差圧P0まで回復されていない。つまり、濾過工程で上昇した差圧c1のうち、差圧a1の分は、逆洗浄では解消しなかった不可逆的な通水抵抗の上昇分として残存した状態である。この1回目の逆洗工程後の通水抵抗の上昇分は、多くの場合、1回目の濾過工程の実行中に汚濁物質が膜の細孔内に侵入し、細孔内で付着したままになっていることによるものである。
ここで、図5における1回目の逆洗工程の実行後においては、タイミングt1において、膜モジュール21の回復率(通水抵抗の回復率)は、(b1/c1)×100[%]と算出できる。膜モジュール21の回復率は、濾過工程の実行による通水抵抗の上昇量(タイミングt0からt1の間の上昇量c1)に対する逆洗工程の実行後の通水抵抗の下降量(タイミングt1の下降量b1)の割合であり、回復率が100%(すなわち、b1=c1)であれば、逆洗浄によって膜の表面や細孔内から汚濁物質が完全に除去されたことを意味する。
2回目の濾過工程が終了すると、タイミングt2において、2回目の逆洗工程が実行される。これにより、膜モジュール21の膜の表面で成長したケーキ層が除去されて、膜モジュール21の通水抵抗が回復される。
2回目の逆洗工程の実行後、タイミングt2〜t3において、3回目の濾過工程が、所定時間T(例えば30分間)、実行される。3回目の濾過工程においては、開始時(膜モジュール21が通水初期の状態にあるとき、タイミングt2)において膜間差圧がP2であり、終了時(タイミングt3)において膜間差圧がP2+c3であり、差圧の上昇分はc3である。膜間差圧P2は、2回目の濾過工程における通水初期の膜間差圧P1からa2だけ上昇した値である(P2=P1+a2)。また、膜間差圧P2は、2回目の濾過工程における通水終期の膜間差圧P1+c2からb2だけ下降した値である(P2=P1+c2−b2)。したがって、図5から明らかなように、c2=a2+b2の関係である。
そのため、2回目の逆洗工程の終了時においては、膜モジュール21の通水抵抗が差圧b2分だけ回復されているが、2回目の濾過工程における通水初期の膜間差圧P1まで回復されていない。つまり、濾過工程で上昇した差圧c2のうち、差圧a2の分は、逆洗浄では解消しなかった不可逆的な通水抵抗の上昇分として残存した状態である。この2回目の逆洗工程後の通水抵抗の上昇分は、多くの場合、2回目の濾過工程の実行中に汚濁物質が膜の細孔内に侵入し、細孔内で付着したままになっていることによるものである。
図5における2回目の逆洗工程の実行後においては、タイミングt2において、膜モジュール21の回復率は、(b2/c2)×100[%]と算出できる。
3回目の濾過工程が終了すると、タイミングt3において、3回目の逆洗工程が実行される。これにより、膜モジュール21の膜の表面で成長したケーキ層が除去されて、膜モジュール21の通水抵抗が回復される。
3回目の逆洗工程の実行後、4回目の濾過工程が実行され、その後、順次、同様に、濾過工程及び逆洗工程が繰り返されて実行される。
このように、膜濾過装置20は、汚濁物質のケーキ層が付着した膜モジュール21に対し、逆洗工程で通水抵抗を回復させながら、原水W1から透過水W2を製造している。一方、膜モジュール21は、不可逆的な通水抵抗の上昇分(a1,a2,a3)について累積傾向が見られる場合、徐々に膜詰まりが進行している。
ここで、各回の濾過工程において、膜モジュール21が通水初期の状態にあるときの膜間差圧が所定の閾値を超えて上昇したときには、膜濾過装置20の運転性能を維持できない。例えば、原水圧力を一定に制御している場合には、透過水W2の流量が低下するし、透過水流量を一定に制御している場合には、原水ポンプ3の消費電力が増大する。そのため、本実施形態においては、2回目以降の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P1,P2,P3,…が1回目の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P0に対して増加傾向にあり(P0<P1<P2<P3<…)、且つ、2回目以降の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P1,P2,P3,…と1回目の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P0との差分[P1−P0(=a1);P2−P0(=a1+a2);P3−P0(=a1+a2+a3);…]が所定の閾値を上回るときに、膜濾過装置20の運転性能を維持できないものとして、警報を報知するように制御することが好ましい。これにより、警報が報知された際に、膜モジュール21を薬品で洗浄する薬品洗浄を実行することや、膜モジュール21を新しいものに交換することなどの対応を行うことができる。ここで、所定の閾値は、例えば、膜濾過装置20の運転性能を維持できなくなる膜間差圧上昇量の下限値に設定される。
次に、ローカル制御部22について説明する。ローカル制御部22は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。ローカル制御部22において、マイクロプロセッサのCPUは、メモリから読み出した所定のプログラムに従って、後述する各種の制御を実行する。ローカル制御部22において、マイクロプロセッサのメモリには、膜濾過装置20を制御するためのデータや各種プログラムが記憶される。また、ローカル制御部22のマイクロプロセッサには、時間の計時等を管理するインテグレーテッドタイマユニット(以下、「ITU」ともいう)が組み込まれている。
ローカル制御部22は、原水ポンプ3の駆動周波数を演算し、当該駆動周波数の演算値に対応する周波数指定信号(電流値信号又は電圧値信号)を第1インバータ4に出力する。
ローカル制御部22は、要求負荷に応じて、膜濾過装置20により製造される透過水W2の通水流量を変更させる。具体的には、ローカル制御部22は、信号線52を介して台数制御装置30から送信される台数制御信号に基づいて、第1インバータ4に周波数指定信号を入力することにより、原水ポンプ3の回転速度を制御して、膜濾過装置20により製造される透過水W2の通水流量を制御する。
また、ローカル制御部22は、台数制御装置30で用いられる信号を、信号線52を介して台数制御装置30に送信する。台数制御装置30で用いられる信号としては、膜濾過装置20の実際の通水状態、及びその他のデータが挙げられる。
ローカル制御部22は、原水弁V1、透過水弁V2、逆洗水弁V3、第1排出弁V4、エア流量調整弁V5、第2排出弁V6、温度センサ11、及び、流量センサ12に電気的に接続されている。
ローカル制御部22は、水張り工程、濾過工程、逆洗工程、バブリング工程、及び排水工程を順次行うように、流路切替手段としての、原水弁V1、透過水弁V2、逆洗水弁V3、第1排出弁V4、エア流量調整弁V5、第2排出弁V6を制御する。
ローカル制御部22は、濾過工程時差圧算出部221と、膜詰まり程度検出手段としての膜詰まり程度検出部222と、を備える。
濾過工程時差圧算出部221は、第1圧力センサ13及び第2圧力センサ14で測定された検出圧力値に基づいて、濾過工程(逆洗工程の実行直後の濾過工程を含む)において、開始時(膜モジュール21が通水初期の状態にあるとき)における膜モジュール21の膜間差圧と、終了時における膜モジュール21の膜間差圧と、を算出する。
膜詰まり程度検出部222は、濾過工程時差圧算出部221により算出された各膜モジュール21の膜間差圧に基づいて、膜濾過装置20の膜詰まりの程度を検出する。
各膜濾過装置20の膜詰まりの程度は、逆洗工程が実施される場合において、例えば、膜モジュール21の膜間差圧の経時変化や、膜モジュール21の回復率や、膜モジュール21の回復率の経時変化等により算出される。なお、各膜濾過装置20の膜詰まりの程度は、これらに限定されず、例えば、膜モジュール21により製造される透過水W2の流量を計測している場合には、膜間流量差の経時変化であってもよい。
本実施形態においては、前述のように、台数制御装置30の優先順位設定部321により、膜詰まりが進行している順に、膜濾過装置20の優先順位を設定する。そのため、本実施形態においては、膜詰まり程度検出部222は、優先順位の順番を設定可能とするために、膜モジュール21の膜詰まりの程度を数値化するように算出する。膜詰まり程度検出部222により検出される膜モジュール21の膜詰まりの程度は、図5を参照して、例えば、次のように算出される。
(i)膜詰まりの程度を膜間差圧の経時変化で算出する場合
膜詰まりの程度を膜間差圧の経時変化で算出する理由は、複数回数の逆洗工程が実行されているにも関わらず、濾過工程における通水初期の膜間差圧が増加傾向にある場合には、濾過工程の実行中に膜の細孔内に侵入した汚濁物質が付着したままで、膜詰まりが進行していると考えられるためである。
図5に示すように、濾過工程及び逆洗工程を繰り返す場合において、タイミングt1における1回目の逆洗工程の終了時においては、膜モジュール21の通水抵抗が差圧b1分だけ回復されて膜間差圧P1となっているが、1回目の濾過工程における通水初期の膜間差圧P0まで回復されていない。つまり、濾過工程で上昇した差圧c1のうち、差圧a1の分は、逆洗浄では解消しなかった不可逆的な通水抵抗の上昇分として残存した状態である。
タイミングt2における2回目の逆洗工程の終了時においては、膜モジュール21の通水抵抗が差圧b2分だけ回復されて膜間差圧P2となっているが、2回目の濾過工程における通水初期の膜間差圧P1まで回復されていない。つまり、濾過工程で上昇した差圧c2のうち、差圧a2の分は、逆洗浄では解消しなかった不可逆的な通水抵抗の上昇分として残存した状態である。
タイミングt3において3回目の逆洗工程を実行した場合に、3回目の逆洗工程の終了時においては、膜モジュール21の通水抵抗が差圧b3分だけ回復されて膜間差圧P3となっているが、3回目の濾過工程における通水初期の膜間差圧P2まで回復されていない。つまり、濾過工程で上昇した差圧c3のうち、差圧a3の分は、逆洗浄では解消しなかった不可逆的な通水抵抗の上昇分として残存した状態である。ここで、例えば、1回目から3回目までの連続した3回の逆洗工程を実行した場合には、2回目以降の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P1,P2,P3,・・・が1回目の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P0に対して増加傾向にある(P0<P1<P2<P3<・・・)。
ここで、タイミングt0〜t1、t1〜t2、t2〜t3、・・・において、各膜濾過装置20における膜間差圧の経時変化を見るために、膜間差圧の上昇傾向の度合として、2回目以降の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P1,P2,P3,・・・と1回前の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P0,P1,P2,・・・との差分[P1−P0(=a1);P2−P1(=a2);P3−P2(=a3);・・・]の時間変化率を算出する。時間変化率が大きいほど、膜間差圧の上昇傾向の度合が大きいと考えらえるためである。
タイミングt0〜t1の期間Tにおいて、時間変化率=[P1−P0(=a1)]/Tと算出できる。
タイミングt1〜t2の期間Tにおいて、時間変化率=[P2−P1(=a2)]/Tと算出できる。
タイミングt2〜t3の期間Tにおいて、時間変化率=[P3−P2(=a3)]/Tと算出できる。
ここで、膜詰まりの程度としては、膜モジュール21の膜間圧力の時間変化率のバラツキを抑制するため、各膜濾過装置20において、所定期間内(例えば各週の所定の1日間)において、複数回数の逆洗工程を実行した場合の膜モジュール21の膜間圧力の時間変化率の平均を算出する。これにより、膜モジュール21の膜詰まりの程度を数値化する。
このようにして、膜詰まり程度検出部222は、各膜濾過装置20において、複数回数の連続した逆洗工程における膜間差圧の時間変化率を算出する。そして、膜間差圧の時間変化率の値が大きい順又は小さい順に並べる。膜詰まり程度検出部222は、各膜濾過装置20のうち、膜間差圧の時間変化率が大きな値であるほど膜詰まりが進行しているという膜詰まりの程度を算出することができる。これにより、台数制御装置30の優先順位設定部321は、膜詰まり程度検出部222により検出された各膜濾過装置20の膜詰まりの程度に基づいて、膜詰まりの進行している膜濾過装置20ほど優先順位を上位に設定することができる。
(ii)膜詰まりの程度を膜モジュール21の回復率で算出する場合
膜詰まりの程度を膜モジュール21の回復率で算出する理由は、複数回数の逆洗工程が実行されているにも関わらず、濾過工程における通水初期の回復率が小さい場合には、濾過工程の実行中に膜の細孔内に侵入した汚濁物質が付着したままで、膜詰まりが進行していると考えられるためである。
図5に示すように、濾過工程及び逆洗工程を繰り返す場合において、前述のように、図5における1回目の逆洗工程の実行後においては、タイミングt1において、膜モジュール21の回復率(通水抵抗の回復率)は、(b1/c1)×100[%]と算出できる。
また、同様に、図5における2回目の逆洗工程の実行後においては、タイミングt2において、膜モジュール21の回復率(通水抵抗の回復率)は、(b2/c2)×100[%]と算出できる。
また、同様に、図5における3回目の逆洗工程の実行後においては、タイミングt3において、膜モジュール21の回復率(通水抵抗の回復率)は、(b3/c3)×100[%]と算出できる。
ここで、膜詰まりの程度としては、膜モジュール21の回復率のバラツキを抑制するため、各膜濾過装置20において、所定期間内(例えば各週の所定の1日間)において、複数回数の逆洗工程を実行した場合の膜モジュール21の回復率(通水抵抗の回復率)の平均を算出する。これにより、膜モジュール21の膜詰まりの程度を数値化する。
このようにして、膜詰まり程度検出部222は、各膜濾過装置20において、複数回数の連続した逆洗工程における膜モジュール21の回復率を算出する。そして、膜モジュール21の回復率の値が大きい順又は小さい順に並べる。膜詰まり程度検出部222は、各膜濾過装置20のうち、膜モジュール21の回復率が小さな値であるほど膜詰まりが進行しているという膜詰まりの程度を算出することができる。これにより、台数制御装置30の優先順位設定部321は、膜詰まり程度検出部222により検出された各膜濾過装置20の膜詰まりの程度に基づいて、膜詰まりの進行している膜濾過装置20ほど優先順位を上位に設定することができる。
(iii)膜詰まりの程度を膜モジュール21の回復率の経時変化で示す場合
膜詰まりの程度を膜モジュール21の回復率の経時変化で算出する理由は、複数回数の逆洗工程が実行されているにも関わらず、濾過工程における通水初期の回復率の経時変化が小さい場合には、回復率の上昇度合が鈍くなっており、濾過工程の実行中に膜の細孔内に侵入した汚濁物質が付着したままで、膜詰まりが進行していると考えられるためである。
前述の(ii)において、膜モジュール21の回復率は、図5に示すように、時間経過の順に、[(b1/c1)×100%](タイミングt1における1回目の逆洗工程の実行後)、[(b2/c2)×100%](タイミングt2における2回目の逆洗工程の実行後)、[(b3/c3)×100%](タイミングt3における3回目の逆洗工程の実行後)となっている。ここで、膜モジュール21の膜詰まりが進行すると、逆洗工程を実行しても膜モジュール21の通水抵抗の回復の程度が鈍くなり、膜モジュール21の回復率の上昇度合が鈍くなると考えられる。
膜モジュール21の回復率が、時間経過の順に、[(b1/c1)×100%](タイミングt1)、[(b2/c2)×100%](タイミングt2)、[(b3/c3)×100%](タイミングt3)である場合において、膜モジュール21の回復率の変化率を算出する。
タイミングt1からt2の間において、回復率が[(b1/c1)×100%](タイミングt1)から[(b2/c2)×100%](タイミングt2)に変化したときの回復率の変化率は、タイミングt1における回復率[(b1/c1)×100%]に対して、[{[(b2/c2)×100%]−[(b1/c1)×100%]}/[(b1/c1)×100%]]×100%と算出できる。
回復率が[(b2/c2)×100%](タイミングt2)から[(b3/c3)×100%](タイミングt3)に変化したときの回復率の変化率は、タイミングt2における回復率[(b2/c2)×100%]に対して、[{[(b3/c3)×100%]−[(b2/c2)×100%]}/[(b2/c2)×100%]]×100%と算出できる。
ここで、膜詰まりの程度としては、膜モジュール21の回復率の変化率のバラツキを抑制するため、各膜濾過装置20において、所定期間内(例えば各週の所定の1日間)において、複数回数の逆洗工程を実行した場合の膜モジュール21の回復率(通水抵抗の回復率)の変化率の平均を算出する。これにより、膜モジュール21の膜詰まりの程度を数値化する。
ここで、膜詰まりの程度を膜モジュール21の回復率の経時変化で示す場合について、具体的な回復率の値により例示する。例えば、膜モジュール21の回復率(通水抵抗の回復率)が、時間経過の順に、80%(タイミングt1における回復率程)、70%(タイミングt2における回復率)、60%(タイミングt3における回復率)となっているとする。
タイミングt1からt2の間において、回復率が80%から70%に変化したときの回復率の変化率は、タイミングt1における回復率80%に対して、((70%−80%)/80%)×100%=−12.5%と算出できる。
タイミングt2からt3の間において、回復率が70%から60%に変化したときの回復率の変化率は、タイミングt2における回復率70%に対して、((60%−70%)/60%)×100%=−16.7%と算出できる。
回復率の変化率の平均は、((−12.5%)+(−16.7%))/2=−14.6と算出できる。
このようにして、膜詰まり程度検出部222は、各膜濾過装置20において、複数回数の連続した逆洗工程における膜モジュール21の回復率の経時変化による変化率を算出する。そして、膜モジュール21の回復率の変化率が大きい順又は小さい順に並べる。膜詰まり程度検出部222は、各膜濾過装置20のうち、膜モジュール21の回復率の変化率が小さい値であるほど回復率の上昇度合が鈍くなっており、膜詰まりが進行しているという膜詰まりの程度を算出することができる。これにより、台数制御装置30の優先順位設定部321は、膜詰まり程度検出部222により検出された各膜濾過装置20の膜詰まりの程度に基づいて、膜詰まりの進行している膜濾過装置20ほど優先順位を上位に設定することができる。
(iv)膜詰まりの程度を膜モジュール21の膜間流量差で算出する場合
膜詰まりの程度を膜間流量差で算出する理由は、複数回数の逆洗工程が実行されているにも関わらず、濾過工程における通水初期の膜間流量差が増加傾向にある場合には、濾過工程の実行中に膜の細孔内に侵入した汚濁物質が付着したままで、膜詰まりが進行していると考えられるためである。
膜詰まりの程度を算出する場合として、前記(i)〜(iii)について説明したが、これらに制限されない。膜詰まりの程度を算出する場合において、例えば、膜間差圧に代えて、膜モジュール21へ流入する原水W1の流量と、膜モジュール21から流出する透過水W2の流量とを測定して、その膜間流量差とすることで、前記(i)〜(iii)で説明したことを援用することができる。すなわち、膜濾過装置20が通水初期の状態にあるときと逆洗工程の実行後とにおける膜濾過装置20により製造される透過水W2の流量の経時変化や、透過水W2の流量に基づいて算出された回復率や、透過水W2の流量に基づいて算出された回復率の経時変化により、膜詰まりの程度を示してもよい。
(v)膜詰まりの程度を膜モジュール21のその他の方法で算出する場合
膜間差圧は、基準となる一定の通水流量の水を膜モジュール21に通水させるのであれば、膜モジュール21の下流側にのみ圧力センサを設けて、圧力センサにより透過水W2の圧力の絶対値を算出することができる。これにより、前記(i)〜(iii)で説明した膜間差圧に代えて、透過水W2の圧力の絶対値として、前記(i)〜(iii)で説明したことを援用することができる。
また、膜間流量は、基準となる一定の操作圧力で水を膜モジュール21に通水させるのであれば、膜モジュール21の下流側にのみ流量センサを設けて、流量センサにより透過水W2の流量の絶対値を算出することができる。これにより、前記(iv)で説明した膜間流量に代えて、透過水W2の圧力の絶対値として、前記(iv)で説明したことを援用することができる。
次に、膜詰まりの進行している膜濾過装置20ほど優先順位を上位に設定する制御について説明する。図6は、台数制御装置30における制御部32において、膜詰まりの進行している膜濾過装置20ほど優先順位を上位に設定する処理手順を示すフローチャートである。図6に示すフローチャートの処理は、濾過システム1の運転中において繰り返し実行される。台数制御装置30における制御部32は、メモリから読み出した運転台数の増減処理のプログラムに基づいて、図6に示すフローチャートの処理を実行する。
図6に示すステップST1において、各膜濾過装置20は、台数制御装置30の制御部32からの指示に基づいて、所定時間(例えば30分間)、濾過工程を実行する。ここでは、台数制御装置30の制御部32は、処理水使用設備18が要求する流量の処理水W6を製造するように、運転台数を決定し、初期に設定される優先順位に基づいて、各膜濾過装置20を制御する。ここでは、例えば、台数制御装置30の制御部32は、複数の膜濾過装置20それぞれの各濾過工程の時間帯を例えば10分間ずつずらして、濾過工程を実行するように制御する。
ステップST2において、ローカル制御部22は、濾過工程の開始時(各膜濾過装置20の膜モジュール21が通水初期の状態にあるとき)及び終了時において、第1圧力センサ13及び第2圧力センサ14で検出された検出圧力値を取得する。
ステップST3において、各膜濾過装置20の濾過工程時差圧算出部221は、第1圧力センサ13及び第2圧力センサ14で検出された検出圧力値に基づいて、濾過工程の開始時(各膜濾過装置20が通水初期の状態にあるとき)及び終了時における各膜濾過装置20の膜モジュール21の膜間差圧を算出する。
ステップST4において、各膜濾過装置20は、濾過工程の実行後に、逆洗工程を実行する。ここでは、例えば、台数制御装置30の制御部32は、複数の膜濾過装置20それぞれの各逆洗工程の時間帯を例えば10分間ずつずらして、逆洗工程を実行するように制御する。
ステップST5において、各膜濾過装置20は、逆洗工程の実行後に、台数制御装置30の制御部32からの指示に基づいて、濾過工程を実行する。
ステップST6において、ローカル制御部22は、各膜濾過装置20の逆洗工程の直後の濾過工程の実行の開始時において、すなわち各膜濾過装置20が通水初期の状態であるときにおいて、第1圧力センサ13及び第2圧力センサ14で検出された検出圧力値を取得する。
ステップST7において、各膜濾過装置20の濾過工程時差圧算出部221は、第1圧力センサ13及び第2圧力センサ14で検出された検出圧力値に基づいて、逆洗工程の直後の濾過工程の開始時における各膜濾過装置20の膜モジュール21の膜間差圧を算出する。
ステップST8において、逆洗工程の実行回数が膜詰まりの程度を検出するために必要な設定回数に達したかを判定する。設定回数に達した場合(YES)には、処理は、ステップST9へ移行する。設定回数に達しない場合(NO)には、処理は、ステップST4へ移行して、ステップST4〜ST7を繰り返す。
ステップST9において、膜詰まり程度検出部222は、ステップST3で算出された濾過工程の開始時の通水初期の状態における膜モジュール21の膜間差圧及びステップST7で算出された逆洗工程の直後の濾過工程の開始時における各膜濾過装置20の膜モジュール21の膜間差圧に基づいて、各膜濾過装置20の膜詰まりの程度を検出する。そして、膜詰まり程度検出部222は、詰まりの程度の値が大きい順又は小さい順に並べる。各膜濾過装置20の膜詰まりの程度は、逆洗工程が実施される場合において、例えば、膜モジュール21の回復率や、膜モジュール21の回復率の経時変化や、膜モジュール21の膜間差圧の経時変化等により算出される。なお、各膜濾過装置20の膜詰まりの程度は、これらに限定されず、例えば、膜モジュール21により製造される透過水W2の流量を計測している場合には、膜間流量差の経時変化であってもよい。各膜詰まり程度検出部222で検出された各膜濾過装置20の膜詰まりの程度の情報は、台数制御装置30の制御部32に送信される。
ステップST10において、優先順位設定部321は、膜詰まり程度検出部222により検出された各膜濾過装置20の膜詰まりの程度に基づいて、膜詰まりの進行している膜濾過装置20ほど優先順位を上位に設定する。
膜詰まりの程度を膜モジュール21の回復率で判断する場合には、回復率が小さな値であるほど、膜モジュール21は、通水初期の状態に回復されていないため、膜詰まりが進行しているといえる。
膜詰まりの程度を膜モジュール21の回復率の経時変化で判断する場合には、膜モジュール21の膜詰まりが進行すると、逆洗工程を実行しても膜モジュール21の通水抵抗の回復の程度が鈍くなるため、膜モジュール21の回復率の変化率が小さな値であるほど、膜詰まりが進行しているといえる。
膜詰まりの程度を膜モジュール21の膜間差圧の経時変化で判断する場合には、膜間差圧の変化率が大きな値であるほど、膜モジュール21は、通水初期の状態に回復されていないため、膜詰まりが進行しているといえる。
このような膜詰まりの進行の判断基準に基づいて、優先順位設定部321は、膜詰まりの進行している膜濾過装置20ほど優先順位を上位に設定する。
そして、台数制御装置30の制御部32は、設定された優先順位で、優先順位が上位の膜濾過装置20から順に通水流量を多くするように制御する。これにより、複数の膜モジュール21について膜詰まりが均等に生じることを抑制して、優先順位が上位の特定の膜濾過装置20の膜モジュール21に、膜詰まりを集中化させることができる。ステップST10の後に、処理は終了する(ステップST1へリターンする)。
上述した実施形態に係る濾過システム1によれば、例えば、以下のような効果が奏される。
本実施形態においては、負荷率を連続的に変更して原水W1から透過水W2を製造可能な複数の膜濾過装置20を備える膜濾過装置群2と、要求された透過水W2の通水流量である要求負荷に応じて濾過装置群2により製造される透過水W2の通水流量を制御する制御部32と、を備える濾過システム1であって、複数の膜濾過装置20は、それぞれ、該膜濾過装置20の膜詰まりの程度を検出する膜詰まり程度検出部222を有し、制御部32は、膜詰まり程度検出部222により検出された膜濾過装置20の膜詰まりの程度に基づいて、膜詰まりの進行している膜濾過装置20ほど優先順位を上位に設定する優先順位設定部321を有する。
そのため、複数の膜モジュール21について膜詰まりが均等に生じることを抑制して、膜詰まりの進行している膜濾過装置20への通水を集中させて、特定の膜濾過装置20の膜モジュール21に膜詰まりを集中化させることができる。その結果、薬品洗浄及び膜モジュール21の膜交換等のメンテナンスを行う膜濾過装置20の数を最低限の数にして、薬品に要するコスト及び膜交換等のメンテナンスに要する費用を低減することができる。
また、本実施形態においては、膜濾過装置20の膜詰まりの程度は、逆洗工程が実行される場合において、膜濾過装置20の膜への水の通りやすさの初期値に対する逆洗工程の実行後の膜への水の通りやすさの値の割合である回復率である。これにより、膜濾過装置20の膜詰まりの程度を、膜モジュール21の回復率により、簡易に判断することができる。
また、本実施形態においては、膜濾過装置20の膜詰まりの程度は、膜モジュール21の回復率の経時変化である。そのため、膜詰まりの程度を膜モジュール21の回復率の経時変化で判断することで、膜モジュール21の回復率の経時変化が小さくなれば、膜モジュール21の通水抵抗の回復の程度が鈍くなっている。その結果、膜濾過装置20の膜詰まりの程度を、膜モジュール21の回復率の経時変化で判断することで、より正確に判断することができる。
また、膜濾過装置20の膜詰まりの程度は、複数回数の逆洗工程が実行される場合において、膜濾過装置20の膜が通水初期の状態にあるときと逆洗工程の実行後とにおける膜濾過装置20の一次側と二次側との膜間差圧の経時変化である。これにより、膜濾過装置20の膜詰まりの程度を、膜モジュール21の膜間差圧の経時変化により、簡易に判断することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、本実施形態に係る濾過システム1は、5台の濾過装置20を備えている。これに限らず、濾過システム1の濾過装置は、少なくとも2台あればよい。また、濾過システム1の濾過装置を6台以上設けた構成としてもよい。
本実施形態に係る濾過システム1においては、複数の濾過装置20が、それぞれ4本の膜モジュール21を備えている。これに限らず、濾過システム1において、複数の膜濾過装置20が、それぞれ、1本〜3本、又は5本以上の膜モジュールを備える構成であってもよい。
本実施形態に係る濾過システム1においては、処理水使用設備18で消費される透過水W2の水量を、処理水タンク16に設けた水位センサ17により検出する。これに限らず、濾過システム1において、処理水使用設備18で消費される透過水W2の水量を、配水ラインL7に設けた流量センサにより検出するように構成してもよい。
本実施形態に係る濾過システム1においては、処理水タンク16と逆洗水用タンク7とを別々に設けたが、これに制限されず、処理水タンク16と逆洗水用タンク7とを共用する1つのタンクとして構成してもよい。