図1を参照して、本発明の実施形態の膜濾過装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態の膜濾過装置1を示す概略構成図である。図2は、各工程における各弁の開閉状態を説明する図である。図3は、濾過工程と逆洗工程を繰り返す場合において、膜モジュール2の膜詰まりの進行を膜間差圧の変化で示したグラフである。
図1に示すように、本実施形態の膜濾過装置1(除濁装置)は、流量可変手段としての原水ポンプ3と、第1インバータ4と、膜モジュール2と、逆洗水用タンク7と、流量可変手段としての逆洗水ポンプ5と、流量可変手段としての第2インバータ6と、第1薬剤添加装置8と、洗浄液供給ポンプ21と、洗浄液タンク22と、第2薬剤添加装置23と、制御部30と、を備える。また、図1に示すように、膜濾過装置1は、原水ラインL1と、透過水ラインL2と、逆洗水ラインL3と、第1排出ラインL4と、第2排出ラインL6と、洗浄エア供給ラインL5と、洗浄液導入ラインL11と、透過水補給ラインL12と、洗浄液戻りラインL7と、薬剤供給ラインL13と、を備える。なお、本明細書における「ライン」とは、流路、径路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。また、図1においては、1本の膜モジュール2を搭載した状態を例示しているが、複数本の膜モジュール2を搭載するように変更可能である。この場合、各ラインL1〜L7,L12に対して、複数本の膜モジュール2を並列に接続する。
また、膜濾過装置1は、原水弁V1と、流量可変手段としての透過水弁V2と、逆洗水弁V3と、第1排出弁V4と、第2排出弁V6と、エア流量調整弁V5と、洗浄液戻り弁V7と、洗浄液導入弁V8と、透過水補給弁V9と、温度センサ11と、流量センサ12と、第1圧力センサ13と、第2圧力センサ14と、第3圧力センサ15と、を備える。
図1では、電気的な接続の経路を省略するが、制御部30は、原水弁V1、透過水弁V2、逆洗水弁V3、第1排出弁V4、第2排出弁V6、エア流量調整弁V5、洗浄液戻り弁V7、洗浄液導入弁V8、透過水補給弁V9、温度センサ11、流量センサ12、第1圧力センサ13、第2圧力センサ14、第3圧力センサ15等と電気的に接続される。
図1に示すように、原水ラインL1には、被処理水としての原水W1が流通する。原水ラインL1は、原水W1を、膜モジュール2へ流通させるラインである。原水ラインL1は、原水W1の供給源(不図示)と膜モジュール2とをつなぐラインである。原水ラインL1の上流側の端部は、原水W1の供給源(不図示)に接続されている。また、原水ラインL1の下流側の端部は、膜モジュール2の一次側に接続されている。
原水ラインL1には、図1に示すように、上流側から順に、原水ポンプ3、接続部J11、原水弁V1、接続部J12、接続部J6及び接続部J13が設けられている。
原水ポンプ3は、原水ラインL1を流通する原水W1を吸入し、膜モジュール2へ向けて圧送(吐出、送出)する機器である。原水ポンプ3には、第1インバータ4から周波数が変換された駆動電力が供給される。原水ポンプ3は、入力された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
第1インバータ4は、原水ポンプ3に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路(又はその回路を持つ装置)である。第1インバータ4は、制御部30と電気的に接続されている。第1インバータ4には、制御部30から周波数指定信号が入力される。第1インバータ4は、制御部30により入力された周波数指定信号(電流値信号又は電圧値信号)に対応する駆動周波数の駆動電力を、原水ポンプ3に出力する。
本実施形態においては、第1インバータ4は、原水ポンプ3を一定の駆動周波数に固定した回転速度で駆動するように、駆動電力を原水ポンプ3に出力する。
原水弁V1は、例えば電動弁からなり、制御部30の制御により、原水ラインL1を開閉するように構成されている。
接続部J11において、原水ラインL1には、全有機炭素計(以下「TOC計」ともいう)16が接続されている。TOC計16は、原水ラインL1を流通する原水W1の全有機炭素濃度(以下「TOC濃度」ともいう)を測定する機器である。TOC濃度は、水中に存在する有機物中の全量を炭素量で示したものである。つまり、TOC計16は、水中の有機物を構成している炭素量を検出する機器である。
接続部J12において、原水ラインL1には、後述する洗浄液導入ラインL11が接続されている。洗浄液導入ラインL11の上流側の端部は、洗浄液タンク22に接続されている。洗浄液導入ラインL11の下流側の端部は、原水ラインL1の接続部J12に接続されている。
接続部J13において、原水ラインL1には、第1圧力センサ13が接続されている。第1圧力センサ13は、膜モジュール2に流入する原水W1の圧力を計測する機器である。第1圧力センサ13は、後述する製造工程において、膜モジュール2に通水される前の原水W1の圧力を検知する。第1圧力センサ13は、後述する薬液洗浄工程において、膜モジュール2に通液される前の洗浄液W6の圧力を検知する。接続部J13は、原水弁V1と膜モジュール2との間に配置されている。第1圧力センサ13は、制御部30と電気的に接続されている。第1圧力センサ13で測定された原水W1の圧力は、制御部30へ検出信号として送信される。
膜モジュール2には、原水W1が供給(導入)される。膜モジュール2は、原水ポンプ3により圧送された原水W1から、汚濁物質が除去された透過水W2を製造する。つまり、膜濾過装置1は、膜モジュール2に原水W1を導入することにより、原水W1に含まれる汚濁物質を除去して、透過水W2を製造する。膜モジュール2は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)製の中空糸膜の束をベッセル内に収容し、ベッセル両端部においてベッセル内周面と中空糸膜外周面との間に封止剤を充填して形成される。膜モジュール2は、外圧式又は内圧式のいずれでも使用できるが、中空糸内部が閉塞しにくい外圧式が好ましい。また、濾過方式としては、全量濾過方式又はクロスフロー濾過方式のいずれでもよい。一般に、全量濾過方式は、濾過操作時のエネルギー消費量が少ないが、ケーキ層の成長が速いため、逆洗浄の実施間隔や順洗浄(フラッシング)の実施間隔を短くする必要がある。これに対し、クロスフロー濾過方式は、濾過操作時の水循環のためにエネルギー消費量が多いが、ケーキ層の成長が緩やかなため、逆洗浄の実施間隔や順洗浄の実施間隔を延ばすことができる。
膜モジュール2に組み込まれる中空糸膜には、逆浸透膜(「RO膜」ともいう)よりも細孔が粗い膜が用いられる。膜モジュールとして、限外濾過膜を有するUF膜モジュールや、精密濾過膜を有するMF膜モジュール等を適用することができる。なお、本実施形態においては、膜モジュール2を全量濾過方式の外圧式UF膜モジュールとして、以降の装置構成や動作等を説明する。
透過水ラインL2は、膜モジュール2において製造された透過水W2を、需要箇所の装置等に流通させるラインである。透過水ラインL2は、膜モジュール2と需要箇所の装置等(不図示)とをつなぐラインである。透過水ラインL2の上流側の端部は、膜モジュール2の二次側に接続されている。また、透過水ラインL2の下流側の端部は、需要箇所の装置等(不図示)に接続されている。透過水ラインL2には、上流側から順に、膜モジュール2、接続部J14、接続部J17、接続部J1、接続部J2、接続部J3、透過水弁V2、接続部J4が設けられている。
接続部J14において、透過水ラインL2には、第2圧力センサ14が接続されている。第2圧力センサ14は、膜モジュール2から流出する透過水W2の圧力を計測する機器である。第2圧力センサ14は、後述する製造工程において、膜モジュール2に通水された後の透過水W2の圧力を検知する。接続部J14は、膜モジュール2と接続部J17との間に配置されている。第2圧力センサ14は、制御部30と電気的に接続されている。第2圧力センサ14で測定された透過水W2の圧力は、制御部30へ検出信号として送信される。
接続部J17において、透過水ラインL2には、後述する洗浄液タンク22へ透過水W2を補給する透過水補給ラインL12が接続されている。透過水補給ラインL12の上流側の端部は、透過水ラインL2の接続部J17に接続されている。透過水補給ラインL12の下流側の端部は、洗浄液タンク22に接続されている。
接続部J1において、透過水ラインL2には、温度センサ11が接続されている。温度センサ11は、後述する濾過工程において、透過水ラインL2を流通する透過水W2の温度を検出する機器である。温度センサ11は、後述する逆洗工程において、透過水ラインL2を流通する逆洗水W3(透過水W2)の温度を検出する機器である。接続部J1は、膜モジュール2と接続部J3との間に配置されている。温度センサ11は、制御部30と電気的に接続されている。温度センサ11で検出された透過水W2の温度(検出温度値)は、制御部30へ検出信号として送信される。
接続部J2において、透過水ラインL2には、流量センサ12が接続されている。流量センサ12は、後述する濾過工程において、透過水ラインL2を流通する透過水W2の流量を検出する機器である。流量センサ12は、後述する逆洗工程において、透過水ラインL2を流通する逆洗水W3の流量を検出する機器である。接続部J2は、膜モジュール2と接続部J3との間に配置されている。流量センサ12は、制御部30と電気的に接続されている。流量センサ12で検出された透過水W2又は逆洗水W3の流量(検出流量値)は、制御部30へ検出信号として送信される。
接続部J3には、逆洗水ラインL3の下流側の端部が接続されている。接続部J4には、逆洗水ラインL3の上流側の端部が接続されている。逆洗水ラインL3は、接続部J4において透過水ラインL2から分岐され、後述する逆洗水用タンク7を経由して、接続部J3において透過水ラインL2に合流されるラインである。逆洗水ラインL3には、膜モジュール2における逆洗工程を実行するために、膜モジュール2において製造された透過水W2の一部が流通される。
透過水弁V2は、比例制御弁で構成され、透過水ラインL2を流通する透過水W2の流量を調整する弁である。透過水弁V2は、制御部30と電気的に接続されている。透過水弁V2の弁開度は、制御部30から送信される弁開度指定信号により制御される。制御部30から電流値信号(例えば、4〜20mA)又は電圧値信号(例えば、0〜10V)を透過水弁V2の弁体駆動部に送信して、弁開度を制御することにより、透過水W2の流通流量を調整することができる。
本実施形態の濾過工程においては、原水ポンプ3を一定の駆動周波数に固定した回転速度で駆動して原水ラインL1を流通する原水W1を一定の圧力で加圧しながら、比例制御弁からなる透過水弁V2の弁開度を調整することで、原水W1を膜モジュール2に送出し、透過水W2を製造する。そのため、原水ポンプ3及び透過水弁V2は、透過水W2の流量を変更可能な流量可変手段として機能する。ここで、後述する流量センサ12からの流量検知信号に基づいて、比例制御弁からなる透過水弁V2の弁開度を調整することができる。この構成によれば、流量センサ12により検出される透過水W2の流量に基づくフィードバック制御により、透過水W2の流量を一定に維持するように制御を行うことができる。これにより、膜モジュール2の膜表面でのケーキ層の成長と共に、膜間の通水抵抗が増加しても、比例制御弁からなる透過水弁V2の弁開度が自動的に調整されて、透過水W2の流量を一定に制御することができる。
逆洗水ラインL3には、上流側から順に、接続部J4、逆洗水用タンク7、逆洗水ポンプ5、接続部J5、逆洗水弁V3、接続部J3が設けられている。
逆洗水用タンク7は、逆洗工程のために、膜モジュール2において製造された透過水W2の一部を、逆洗水ラインL3を流通させて、逆洗水W3(透過水W2)として貯留するタンクである。
逆洗水ポンプ5は、逆洗工程において、逆洗水ラインL3を流通する逆洗水W3(透過水W2)を吸入し、膜モジュール2へ向けて圧送(吐出、送出)する装置である。逆洗水ポンプ5は、逆洗排水W4の流量を変更可能である。逆洗水ポンプ5には、第2インバータ6から周波数が変換された駆動電力が供給される。逆洗水ポンプ5は、入力された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
第2インバータ6は、逆洗水ポンプ5に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路(又はその回路を持つ装置)である。第2インバータ6は、制御部30と電気的に接続されている。第2インバータ6には、制御部30から周波数指定信号が入力される。第2インバータ6は、制御部30により入力された周波数指定信号(電流値信号又は電圧値信号)に対応する駆動周波数の駆動電力を逆洗水ポンプ5に出力する。
接続部J5には、第1薬剤添加装置8が接続されている。第1薬剤添加装置8は、後述する逆洗工程(透過水W2のみによる逆洗工程:水逆洗工程)に代えて実行される薬液逆洗工程において、膜モジュール2へ流入する逆洗水W3に薬剤を添加(供給)する装置である。薬液逆洗工程において逆洗水W3に薬剤を添加することにより、UF膜の細孔内に付着した汚濁物質を化学的に除去し、膜モジュール2の洗浄効果を高める。逆洗水W3に添加される薬剤としては、次亜塩素酸ナトリウムや、有機酸(例:シュウ酸,クエン酸)又は無機酸(例:塩酸,硫酸,硝酸)などが挙げられる。
第1薬剤添加装置8は、例えば複数回の逆洗工程(水逆洗工程)に対して1回の頻度で、逆洗水ラインL3を流通する逆洗水W3の流量に比例して逆洗水W3に薬剤を供給する。薬液逆洗工程は、例えば1日に1回程度の頻度で実行される。第1薬剤添加装置8における薬剤の添加は、後述の制御部30により制御されている。
洗浄液導入ラインL11は、後述する薬液洗浄工程において、洗浄液タンク22に貯留された洗浄液W6を、原水ラインL1の接続部J12から下流側の部分を介して、膜モジュール2に導入するラインである。洗浄液導入ラインL11の上流側の端部は、洗浄液タンク22に接続されている。洗浄液導入ラインL11の下流側の端部は、原水ラインL1の接続部J12に接続されている。洗浄液導入ラインL11には、上流側から順に、洗浄液タンク22、洗浄液供給ポンプ21、洗浄液導入弁V8及び接続部J12が設けられている。
洗浄液タンク22は、後述する薬液洗浄工程において用いられる洗浄液W6を貯留するタンクである。洗浄液タンク22には、透過水補給ラインL12(後述)を介して透過水W2が補給される。洗浄液タンク22には、薬剤供給ラインL13を介して第2薬剤添加装置23(後述)により薬剤が供給される。洗浄液タンク22に貯留される洗浄液W6は、第2薬剤添加装置23により供給された薬剤が透過水W2で希釈されることにより調製される。
第2薬剤添加装置23は、洗浄液タンク22に薬剤を供給(添加)する装置である。第2薬剤添加装置23は、不図示の複数の薬剤タンクを備えており、複数の薬剤タンクには、複数の種類の薬剤が貯留される。第2薬剤添加装置23は、薬剤の種類を選択可能に構成される。例えば、第2薬剤添加装置23により添加される薬剤としては、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤や、有機酸(例:シュウ酸,クエン酸)又は無機酸(例:塩酸,硫酸,硝酸)等の酸や、界面活性剤などの複数種類の薬剤が挙げられる。
第2薬剤添加装置23は、後述する薬剤洗浄工程において、後述する薬剤優先順位決定部33により決定された薬剤の優先順位に基づいて、膜モジュール2の洗浄に用いる所定の種類及び量の薬剤を洗浄液タンク22に供給する。第2薬剤添加装置23は、後述の制御部30に接続されている。第2薬剤添加装置23における薬剤の供給は、制御部30により制御されている。
洗浄液供給ポンプ21は、薬液洗浄工程において、洗浄液導入ラインL11を流通する洗浄液W6を吸入し、膜モジュール2へ向けて圧送(吐出、送出)する装置である。洗浄液供給ポンプ21は、後述の制御部30に接続されている。洗浄液供給ポンプ21の駆動は、制御部30により制御されている。
洗浄液導入弁V8は、例えば電動弁からなり、制御部30の制御により、洗浄液導入ラインL11を開閉するように構成されている。
洗浄液戻りラインL7は、後述する薬液洗浄工程において、膜モジュール2に通液された洗浄液W6を洗浄液タンク22へ戻すラインである。洗浄液戻りラインL7の上流側の端部は、膜モジュール2に接続されている。洗浄液戻りラインL7の下流側の端部は、洗浄液タンク22に接続されている。洗浄液戻りラインL7には、上流側から順に、膜モジュール2、接続部J15、接続部J16、洗浄液戻り弁V7及び洗浄液タンク22が設けられている。
接続部J15において、洗浄液戻りラインL7には、第3圧力センサ15が接続されている。第3圧力センサ15は、膜モジュール2から流出する洗浄液W6の圧力を計測する機器である。第3圧力センサ15は、後述する薬液洗浄工程において、膜モジュール2に通液された後の洗浄液W6の圧力を検知する。接続部J15は、膜モジュール2と洗浄液タンク22との間(膜モジュール2と接続部J16との間)に配置されている。第3圧力センサ15は、制御部30と電気的に接続されている。第3圧力センサ15で測定された洗浄液W6の圧力は、制御部30へ検出信号として送信される。
接続部J16には、第1排出ラインL4の上流側の端部が接続されている。第1排出ラインL4は、逆洗工程(水洗浄工程)で発生した逆洗排水W4、バブリング工程(後述)で発生したエアA2又は薬液洗浄工程(後述)で使用された洗浄液W6が流通するラインである。第1排出ラインL4には、洗浄液戻りラインL7の接続部J16から上流側の部分を介して、逆洗工程で発生した逆洗排水W4、バブリング工程で発生したエアA2又は薬液逆洗工程で使用された洗浄液W6が膜モジュール2の外部に排出されるように流通される。第1排出ラインL4の途中には、第1排出弁V4が設けられている。第1排出弁V4は、例えば電動弁からなり、制御部30の制御により、第1排出ラインL4を開閉するように構成されている。
洗浄液戻り弁V7は、例えば電動弁からなり、制御部30の制御により、洗浄液戻りラインL7を開閉するように構成されている。
透過水補給ラインL12は、膜モジュール2で製造された透過水W2の一部を、洗浄液タンク22へ補給するラインである。透過水補給ラインL12の上流側の端部は、接続部J17において、透過水ラインL2に接続されている。透過水補給ラインL12の下流側の端部は、洗浄液タンク22に接続されている。透過水補給ラインL12には、上流側から順に、接続部J17及び透過水補給弁V9が設けられている。
第2排出ラインL6は、逆洗工程やバブリング工程において、中空糸膜から除去した汚濁物質を、系外に排出するラインである。第2排出ラインL6には、汚濁物質を含む排水W5が系外に排出するように流通される。第2排出ラインL6の上流の端部は、膜モジュール2の二次側に接続される。第2排出ラインL6は、汚濁物質を含む排水W5を系外に排出する。第2排出ラインL6の途中には、第2排出弁V6が設けられている。第2排出弁V6は、例えば電動弁からなり、制御部30の制御により、第2排出ラインL6を開閉するように構成されている。
原水ラインL1における原水弁V1と膜モジュール2との間(接続部J12と接続部J13との間)には、接続部J6が設けられる。接続部J6において、原水ラインL1には、洗浄エア供給ラインL5が接続されている。洗浄エア供給ラインL5は、原水ラインL1を介して、膜モジュール2にエアA1を供給するラインである。洗浄エア供給ラインL5の上流側の端部は、不図示のエアコンプレッサーに接続されている。洗浄エア供給ラインL5の下流側の端部は、接続部J6において、原水ラインL1に接続されている。洗浄エア供給ラインL5の途中には、エア流量調整弁V5が設けられている。エア流量調整弁V5は、例えば電動弁からなり、制御部30の制御により、洗浄エア供給ラインL5を開閉するように構成されている。エア流量調整弁V5と接続部J6の間には、エアA1の流量を調整するレギュレータ(不図示)が設けられている。
膜濾過装置1は、各弁(原水弁V1、透過水弁V2、逆洗水弁V3、第1排出弁V4、エア流量調整弁V5、第2排出弁V6、洗浄液戻り弁V7、洗浄液導入弁V8及び透過水補給弁V9)を切り替えることで、製造工程と、停止工程と、薬液洗浄工程と、を実施可能である。製造工程、停止工程及び薬液洗浄工程は、本発明に係る膜濾過装置1における膜モジュール2を洗浄する洗浄方法に含まれる工程である。
製造工程は、水張り工程と、濾過工程(濾過処理)と、逆洗工程(逆洗処理;水逆洗工程又は薬液逆洗工程を実行)と、バブリング工程と、排水工程と、を含む。例えば、製造工程の通常運転時において、30分間の濾過工程と、5分間のその他の工程(逆洗工程、バブリング工程、排水工程及び水張り工程)との繰り返しが、交互に行われる。膜濾過装置1は、定流量での濾過を一定時間継続すると、中空糸膜の外側でケーキ層(汚濁物質の堆積層)が成長することで、膜間差圧が上昇する。そのため、濾過工程を一定時間継続した後には、逆洗工程、バブリング工程及び排水工程に移行して、中空糸膜の外側のケーキ層を系外に排出して、通水抵抗を回復させる工程が実施される。その後、濾過工程に備えて、水張り工程が実施される。なお、薬液逆洗工程は、所定のタイミングで、水逆洗工程に代えて実行される。
以下に、製造工程、停止工程及び薬液洗浄工程について具体的に説明する。まず、製造工程について説明する。製造工程は、水張り工程、濾過工程、逆洗工程(水逆洗工程又は薬液逆洗工程)、バブリング工程及び排水工程を含む。製造工程は、洗浄液戻り弁V7、洗浄液導入弁V8及び透過水補給弁V9を閉鎖した状態で、実行される。
水張り工程は、膜モジュール2の内部に原水W1を供給して、膜モジュール2の内部を原水W1で満たす工程である。具体的には、図2に示すように、水張り工程は、透過水弁V2、逆洗水弁V3、エア流量調整弁V5及び第2排出弁V6を閉鎖して、原水弁V1及び第1排出弁V4を開放して、原水ポンプ3を駆動して、原水W1を膜モジュール2の内部に供給するように操作される。
濾過工程は、膜モジュール2の内部に原水W1を供給して、膜モジュール2の中空糸膜の外側から内側に原水を通過させて、原水W1から透過水W2を製造する工程、すなわち濾過処理を行う工程である。具体的には、図2に示すように、濾過工程は、逆洗水弁V3、第1排出弁V4、エア流量調整弁V5及び第2排出弁V6を閉鎖して、原水弁V1及び透過水弁V2を開放して、原水ポンプ3を駆動して、原水W1を膜モジュール2に圧送するように操作される。
逆洗工程(主として水逆洗工程)は、逆洗水ポンプ5により逆洗水W3(透過水W2)を膜モジュール2に供給して、膜モジュール2の中空糸膜の内側から外側に向かって逆洗水W3を流通させる工程、すなわち逆洗処理を行う工程である。逆洗工程は、膜モジュールの膜表面に付着した汚濁物質を押し流す。具体的には、図2に示すように、逆洗工程は、原水弁V1、透過水弁V2、エア流量調整弁V5及び第2排出弁V6を閉鎖して、逆洗水弁V3及び第1排出弁V4を開放して、逆洗水ポンプ5を駆動して、逆洗水W3を膜モジュール2に圧送するように操作される。これにより、中空糸膜の外側表面で成長したケーキ層が剥離される。洗浄後の逆洗排水W4は、第1排出ラインL4を介して、系外に排出される。
薬液逆洗工程は、水逆洗工程に代えて実行される工程である。薬液逆洗工程においては、第1薬剤添加装置8は、例えば複数回の水逆洗工程に対して1回の頻度で、逆洗水ラインL3を流通する逆洗水W3の流量に比例して逆洗水W3に薬剤を供給する。第1薬剤添加装置8による薬剤の添加は、例えば、1日に1回程度の頻度で実行される。薬液逆洗工程は、例えば、工場の稼働率が低い深夜や、工場の終業時に膜濾過装置1を停止させる直前などに、実行される。薬液逆洗工程においては、水逆洗工程を実行する流路に各弁を切り替えた状態から、第1排出弁V4を閉鎖状態に切り替えて、逆洗水ポンプ5を所定時間駆動させることで、薬剤を含む逆洗水W3(薬液)を膜モジュール2に供給する。その後、逆洗水ポンプ5を停止させて、膜モジュール2を、薬液に所定時間浸漬させる。膜モジュール2を薬液に所定時間浸漬させた後には、第1排出弁V4を開放するように操作すると共に逆洗水ポンプ5を駆動して、膜モジュール2を逆洗水W3で濯ぐ水逆洗工程を適宜回数実行する。
バブリング工程は、膜モジュール2の下部からエアA1を供給して、中空糸膜の束を揺動させる工程である。これにより、逆洗工程後の膜モジュール2において、中空糸膜同士の隙間や膜の表面に残留している汚濁物質を除去する。具体的には、図2に示すように、バブリング工程は、原水弁V1、透過水弁V2、逆洗水弁V3及び第2排出弁V6を閉鎖し、第1排出弁V4及びエア流量調整弁V5を開放するように操作される。
排水工程は、逆洗工程やバブリング工程において、中空糸膜から除去した汚濁物質を、逆洗排水W4、エアA2及び排水W5として、第1排出弁V4及び第2排出弁V6を介して系外に排出する。具体的には、図2に示すように、排水工程は、原水弁V1、透過水弁V2、逆洗水弁V3及びエア流量調整弁V5を閉鎖し、第1排出弁V4及び第2排出弁V6を開放するように操作される。
ここで、濾過工程及び逆洗工程を繰り返す場合において、膜モジュール2における膜詰まりの進行を、膜モジュール2の膜間差圧(膜モジュール2の一次側と二次側との差圧)の変化により示した場合について、図3を参照しながら説明する。本説明においては、膜間差圧と膜状態の関係について説明する。
図3に示すように、濾過工程及び逆洗工程について、例えば、タイミングt0〜t1において1回目の濾過工程が実行され、タイミングt1において1回目の逆洗工程が実行される。その後、タイミングt1〜t2において2回目の濾過工程が実行され、タイミングt2において2回目の逆洗工程が実行される。その後、タイミングt2〜t3において3回目の濾過工程が実行され、タイミングt3において3回目の逆洗工程が実行される。これらの工程が繰り返されて実行されている。
なお、逆洗工程は、所定の設定時間に基づいて実行されるが、図3では、便宜上逆洗工程の開始及び終了タイミングを同一のものとして示している。また、1回目の濾過工程とは、新設された膜濾過装置1の試運転時に行われる濾過工程、薬液洗浄工程(後述)を経た後の初回の濾過工程、又は膜モジュール2を新品に交換した後の初回の濾過工程のいずれかをいう。更に、これらのいずれかに該当する1回目の濾過工程に続いて実行される逆洗処理を1回目の逆洗工程という。
例えば、図3に示すタイミングt0〜t1において、1回目の濾過工程が、所定時間T(例えば30分間)、実行される。濾過工程では、膜モジュール2に原水W1が供給されて、透過水W2が製造される。1回目の濾過工程においては、開始時(膜モジュール2が通水初期の状態にあるとき:タイミングt0)において膜間差圧がP0であり、終了時(タイミングt1)において膜間差圧がP0+c1であり、膜間差圧の上昇分はc1である。膜モジュール2においては、1回目の濾過工程の実行時において、図3に示すように、タイミングt0〜t1の間において、時間経過に伴って、通水初期の膜間差圧P0から通水終期の膜間差圧P0+c1に向けて上昇する傾向を示す。そのため、濾過工程では、膜モジュール2の表面では、ケーキ層(汚濁物質の堆積層)の成長が進行しているといえる。
1回目の濾過工程が終了すると、タイミングt1において、1回目の逆洗工程が実行される。逆洗工程では、膜モジュール2の表面で成長したケーキ層を除去するように、膜モジュール2の中空糸膜の内側から外側に向かって逆洗水W3を流通させる。これにより、膜モジュール2の膜の表面からケーキ層が除去されて、膜モジュール2の通水抵抗が回復される。
1回目の逆洗工程の実行後、タイミングt1〜t2において、2回目の濾過工程が、所定時間T(例えば30分間)、実行される。2回目の濾過工程においては、開始時(膜モジュール2が通水初期の状態にあるとき:タイミングt1)において膜間差圧がP1であり、終了時(タイミングt2)において膜間差圧がP1+c2であり、膜間差圧の上昇分はc2である。膜間差圧P1は、1回目の濾過工程における通水初期の膜間差圧P0からa1だけ上昇した値である(P1=P0+a1)。また、膜間差圧P1は、1回目の濾過工程における通水終期の膜間差圧P0+c1からb1だけ下降した値である(P1=P0+c1−b1)。したがって、図3から明らかなように、c1=a1+b1の関係である。
そのため、1回目の逆洗工程の終了時においては、膜モジュール2の通水抵抗が差圧b1分だけ回復されているが、1回目の濾過工程における通水初期の膜間差圧P0まで回復されていない。つまり、濾過工程で上昇した差圧c1のうち、差圧a1の分は、逆洗浄では解消しなかった不可逆的な通水抵抗の上昇分として残存した状態である。この1回目の逆洗工程後の通水抵抗の上昇分は、多くの場合、1回目の濾過工程の実行中に汚濁物質が膜の細孔内に侵入し、細孔内で付着したままになっていることによるものである。
ここで、図3における1回目の逆洗工程の実行後においては、タイミングt1において、膜モジュール2の回復率(通水抵抗の回復率)は、(b1/c1)×100[%]と算出できる。膜モジュール2の回復率は、濾過工程の実行による通水抵抗の上昇量(タイミングt0からt1の間の上昇量c1)に対する逆洗工程の実行後の通水抵抗の下降量(タイミングt1の下降量b1)の割合であり、回復率が100%(すなわち、b1=c1)であれば、逆洗浄によって膜の表面や細孔内から汚濁物質が完全に除去されたことを意味する。
2回目の濾過工程が終了すると、タイミングt2において、2回目の逆洗工程が実行される。これにより、膜モジュール2の膜の表面で成長したケーキ層が除去されて、膜モジュール2の通水抵抗が回復される。
2回目の逆洗工程の実行後、タイミングt2〜t3において、3回目の濾過工程が、所定時間T(例えば30分間)、実行される。3回目の濾過工程においては、開始時(膜モジュール2が通水初期の状態にあるとき:タイミングt2)において膜間差圧がP2であり、終了時(タイミングt3)において膜間差圧がP2+c3であり、差圧の上昇分はc3である。膜間差圧P2は、2回目の濾過工程における通水初期の膜間差圧P1からa2だけ上昇した値である(P2=P1+a2)。また、膜間差圧P2は、2回目の濾過工程における通水終期の膜間差圧P1+c2からb2だけ下降した値である(P2=P1+c2−b2)。したがって、図3から明らかなように、c2=a2+b2の関係である。
そのため、2回目の逆洗工程の終了時においては、膜モジュール2の通水抵抗が差圧b2分だけ回復されているが、2回目の濾過工程における通水初期の膜間差圧P1まで回復されていない。つまり、濾過工程で上昇した差圧c2のうち、差圧a2の分は、逆洗浄では解消しなかった不可逆的な通水抵抗の上昇分として残存した状態である。この2回目の逆洗工程後の通水抵抗の上昇分は、多くの場合、2回目の濾過工程の実行中に濁物質が膜の細孔内に侵入し、細孔内で付着したままになっていることによるものである。
図3における2回目の逆洗工程の実行後においては、タイミングt2において、膜モジュール2の回復率は、(b2/c2)×100[%]と算出できる。
3回目の濾過工程が終了すると、タイミングt3において、3回目の逆洗工程が実行される。これにより、膜モジュール2の膜の表面で成長したケーキ層が除去されて、膜モジュール2の通水抵抗が回復される。
3回目の逆洗工程の実行後、4回目の濾過工程が実行され、その後、順次、同様に、濾過工程及び逆洗工程が繰り返されて実行される。
このように、膜濾過装置1は、汚濁物質のケーキ層が付着した膜モジュール2に対し、逆洗工程で通水抵抗を回復させながら、原水W1から透過水W2を製造している。一方、膜モジュール2は、不可逆的な通水抵抗の上昇分(a1,a2,a3)について累積傾向が見られる場合、徐々に膜詰まりが進行している。
ここで、各回の濾過工程において、膜モジュール2が通水初期の状態にあるときの膜間差圧が所定の閾値を超えて上昇したときには、膜濾過装置1の運転性能を維持できない。例えば、原水圧力を一定に制御している場合には、透過水W2の流量が低下するし、透過水流量を一定に制御している場合には、原水ポンプ3の消費電力が増大する。そのため、本実施形態においては、2回目以降の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P1,P2,P3,…が1回目の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P0に対して増加傾向にあり(P0<P1<P2<P3<…)、且つ、2回目以降の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P1,P2,P3,…と1回目の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P0との差分[P1−P0(=a1);P2−P0(=a1+a2);P3−P0(=a1+a2+a3);…]が所定の第2閾値を上回るときに、後述する停止工程が実行され、その後、後述する薬液洗浄工程が実行される。ここで、第2閾値は、例えば、膜濾過装置1の運転性能を維持できなくなる膜間差圧上昇量の下限値に設定される。
次に、停止工程について説明する。停止工程は、所定のタイミングで製造工程を停止させる工程である。停止工程は、例えば、原水ポンプ3の駆動を停止させ、各バルブV1〜V6を閉鎖することで実行される。ここで、停止工程に移行する所定のタイミングは、前回の薬液洗浄工程の実行時から所定の経過期間(例えば、半年毎や1年毎の定期的な期間)が経過したときや、後述する製造時差圧算出部31における製造時差圧算出処理により算出された製造時の差圧が所定の条件を満たしたときである。
停止工程に移行する所定のタイミングに係る所定の条件は、後述する製造時差圧算出部31における製造時差圧算出処理により算出されたものである。具体的な所定の条件は、2回目以降の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P1,P2,P3,…が1回目の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P0に対して増加傾向にあり、且つ、2回目以降の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P1,P2,P3,…と1回目の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P0との差分が所定の第2閾値を上回るときである。この場合には、UF膜の細孔の閉塞等によって、膜モジュール2の不可逆的な通水抵抗の上昇が進行しており、膜濾過装置1の運転性能を維持できないことから、薬剤洗浄工程を実行する必要があるためである。
次に、薬液洗浄工程について説明する。薬液洗浄工程は、停止工程による製造工程の停止に応じて、膜モジュール2に対して所定の薬剤を含む洗浄液を通液することにより膜モジュール2を、特にUF膜の細孔内部を洗浄する工程である。薬液洗浄工程は、原水弁V1、透過水弁V2、逆洗水弁V3、第1排出弁V4、エア流量調整弁V5、第2排出弁V6及び透過水補給弁V9を閉鎖し、洗浄液戻り弁V7及び洗浄液導入弁V8を開放するように操作される。そして、制御部30は、薬液洗浄工程として、洗浄液供給ポンプ21を一定時間駆動させる。
これにより、洗浄液タンク22に貯留される洗浄液W6を、洗浄液供給ポンプ21を駆動させることにより、洗浄液導入ラインL11、接続部J12、原水ラインL1の接続部J12から下流側の部分、膜モジュール2、洗浄液戻りラインL7、洗浄液タンク22の順に、循環させる。これにより、中空糸膜の外側から内側に向かって洗浄液W6を通液させて、膜モジュール2を洗浄する。膜モジュール2を洗浄した後には、膜モジュール2を逆洗水W3(透過水W2)で濯ぐ逆洗工程を適宜回数実行する。
次に、制御部30について説明する。制御部30は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。制御部30において、マイクロプロセッサのCPUは、メモリから読み出した所定のプログラムに従って、後述する各種の制御を実行する。制御部30において、マイクロプロセッサのメモリには、膜濾過装置1を制御するためのデータや各種プログラムが記憶される。また、制御部30のマイクロプロセッサには、時間の計時等を管理するインテグレーテッドタイマユニット(以下、「ITU」ともいう)が組み込まれている。
制御部30は、原水ポンプ3、原水弁V1、透過水弁V2、逆洗水ポンプ5、洗浄液供給ポンプ21、逆洗水弁V3、第1排出弁V4、エア流量調整弁V5、第2排出弁V6、洗浄液戻り弁V7、洗浄液導入弁V8、透過水補給弁V9、第1薬剤添加装置8、第2薬剤添加装置23、温度センサ11、流量センサ12、第1圧力センサ13、第2圧力センサ14及び第3圧力センサ15に電気的に接続されている。
制御部30は、製造工程、停止工程及び薬液洗浄工程を実行するように、流路切替手段としての各弁(原水弁V1、透過水弁V2、逆洗水弁V3、第1排出弁V4、エア流量調整弁V5、第2排出弁V6、洗浄液戻り弁V7、洗浄液導入弁V8及び透過水補給弁V9)を制御する。また、制御部30は、製造工程において、水張り工程、濾過工程(濾過処理)、逆洗工程(逆洗処理;水逆洗工程又は薬液逆洗工程を実行)、バブリング工程及び排水工程を実行するように、各弁V1〜V9を制御する。
制御部30は、原水ポンプ3の駆動周波数を演算し、当該駆動周波数の演算値に対応する周波数指定信号(電流値信号又は電圧値信号)を第1インバータ4に出力する。本実施形態においては、制御部30は、原水ポンプ3を一定の駆動周波数に固定した回転速度で駆動するように、原水ポンプ3の駆動周波数を演算し、当該駆動周波数の演算値に対応する周波数指定信号(電流値信号又は電圧値信号)を第1インバータ4に出力する。
制御部30は、所定の開度となるように、比例制御弁としての透過水弁V2を制御する。
制御部30は、逆洗水ポンプ5の駆動周波数を演算し、当該駆動周波数の演算値に対応する周波数指定信号(電流値信号又は電圧値信号)を第2インバータ6に出力する。
制御部30は、図1に示すように、製造時差圧算出部31と、洗浄時差圧算出部32と、薬剤優先順位決定部33と、を備える。
製造時差圧算出部31は、製造工程の濾過処理中において、製造時の膜間差圧(通水時膜間差圧)を算出する製造時差圧算出処理を実行する。製造時差圧算出部31は、製造時差圧算出処理において、第1圧力センサ13により原水W1の圧力を取得し、第2圧力センサ14により透過水W2の圧力を取得し、これらの圧力に基づいて製造時の膜間差圧を算出する。具体的には、製造時差圧算出部31は、製造時差圧算出処理において、第1圧力センサ13及び第2圧力センサ14で測定された検出圧力値に基づいて、各回の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧(例えば、通水開始から1分後の膜間差圧)を算出する。そして、制御部30は、算出された通水初期の膜間差圧に基づく所定の条件を満足したときに、薬液洗浄工程を実行する。この所定の条件を満足したときとは、2回目以降の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P1,P2,P3,…が1回目の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P0に対して増加傾向にあり、且つ、2回目以降の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P1,P2,P3,…と1回目の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P0との差分が所定の第2閾値を上回るときである。
洗浄時差圧算出部32は、薬液洗浄工程の洗浄処理中において、洗浄時の膜間差圧(通液時膜間差圧)を算出する洗浄時差圧算出処理を実行する。洗浄時差圧算出部32は、洗浄時差圧算出処理において、第1圧力センサ13により膜モジュール2に通液される前の洗浄液W6の圧力を取得し、第3圧力センサ15により膜モジュール2に通液された後の洗浄液W6の圧力を取得し、これらの圧力に基づいて洗浄時の膜間差圧を算出する。具体的には、洗浄時差圧算出部32は、洗浄時差圧算出処理において、第1圧力センサ13及び第3圧力センサ15で測定された検出圧力値に基づいて、洗浄処理中の膜間差圧をリアルタイムに算出する。そして、制御部30は、算出された洗浄時の膜間差圧が所定の第1閾値を下回る場合には、薬液洗浄工程を終了させる洗浄終了処理を実行する。所定の第1閾値は、例えば、膜モジュール2の不可逆的な通水抵抗の上昇分が解消されたと認定できる通液時膜間差圧に設定される。
薬剤優先順位決定部33は、後述する管理サーバ40に記憶処理により記憶された汚濁物質の濃度に基づいて、膜モジュール2の洗浄に用いる所定の薬剤の優先順位を決定する。そして、制御部30は、薬剤優先順位決定部33により決定した所定の薬剤の優先順位に基づいて、所定の薬剤を含む洗浄液W6を用いて、薬液洗浄工程を実行する。
具体的には、薬剤優先順位決定部33は、例えば、〔1〕次亜塩素酸ナトリウム、〔2〕有機酸(例:シュウ酸,クエン酸)又は無機酸(例:塩酸,硫酸,硝酸)、〔3〕界面活性剤の順に、薬剤の優先順位の1位〜3位を決定する。
次亜塩素酸ナトリウムは、膜モジュール2の不可逆的な通水抵抗上昇の原因物質(以下、「汚染原因物質」という。)が有機物主体の場合に有効な薬剤である。水浄化におけるUF膜の有機物汚染の発生頻度は非常に高いため、次亜塩素酸ナトリウムを、優先順位の1位として決定する。
有機酸(例:シュウ酸,クエン酸)又は無機酸(例:塩酸,硫酸,硝酸)は、汚染原因物質が無機物(例:二酸化マンガン)主体の場合に有効な薬剤である。水浄化におけるUF膜の無機物汚染の発生頻度は比較的高いため、有機酸(例:シュウ酸,クエン酸)又は無機酸(例:塩酸,硫酸,硝酸)を、優先順位の2位として決定する。
界面活性剤は、汚染原因物質が油分の場合に有効な薬剤である。水浄化におけるUF膜の油分汚染の発生頻度は比較的低いため、界面活性剤を、優先順位の3位として決定する。なお、界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を単独で、或いは二種以上を組み合わせて使用することができる。
また、制御部30は、図1に示すように、管理サーバ40に接続されている。管理サーバ40は、膜モジュール2に導入される原水W1に含まれる汚濁物質の濃度に係る測定データを記憶する記憶処理を実行する。管理サーバ40に記憶された測定データは、制御部30へ送信される。
汚濁物質の濃度測定については、通常運転時(例:濾過工程の30分間と、その他の工程(逆洗工程、バブリング工程、排水工程、水張り工程)の5分間の繰り返し)において、原水ラインL1を流通する原水W1に対し、UF膜の汚染原因物質となり得る水質項目(例:有機物(TOC),マンガン,油分等の水質項目)の濃度を定期的(例:1〜3日毎)に測定する。
TOC濃度は、水中に存在する有機物中の全量を炭素量で示したものである。原水W1から採取したサンプル水のTOC濃度は、例えば膜濾過装置1に組み込まれたTOC計16により測定される。
マンガン濃度は、水中に存在するマンガンの濃度を示したものである。原水W1から採取したサンプル水のマンガン濃度は、例えば膜濾過装置1に組み込まれたマンガン計(不図示)で測定される。マンガン計は、水中のマンガン濃度を測定する機器である。マンガン計は、例えば、サンプル水に試薬を添加し、過ヨウ素酸カリウム吸光光度法等を用いて、サンプル水中のマンガン濃度を測定するものを用いることができる。
油分濃度は、水中に存在する油分の濃度を示したものである。原水W1から採取したサンプル水の油分濃度は、例えば膜濾過装置1に組み込まれた油分計(不図示)で測定される。油分計は、水中の油分濃度を測定する機器である。油分計は、例えば、サンプル水に試薬を添加し、所定の吸光光度法等により、サンプル水中の油分濃度を測定するものを用いることができる。
原水W1に含まれる汚濁物質の濃度に係る測定データは、膜濾過装置1に組み込まれた各種濃度計(TOC計,マンガン計,油分計)で得られるもののほか、採取したサンプル水を外部の分析センター(不図示)に送って分析した測定データなどがある。
分析センターは、サンプル水の分析を採水現場以外で行うものであり、送付されたサンプル水を所要の分析機器を使用して分析し、汚濁物質の濃度に係る測定データを得る施設である。サンプル水の採取と送付は、例えば、膜濾過装置1のユーザとメンテナンス契約を締結している管理会社のサービスエンジニアが定期的に客先を訪問して行う。分析センターで得られた測定データは、分析センターに備え付けの専用端末を介して管理サーバ40に送信され、管理サーバ40に記録される。
制御部30は、管理サーバ40に記憶されている前回の薬液洗浄工程の実施以降の各水質項目(UF膜の汚染原因物質となり得る有機物(TOC),マンガン,油分等の水質項目)の測定値に基づいて、汚染原因物質の候補となる水質項目を選出する。制御部30が採用可能な汚染原因の候補となる水質項目の選出方法としては、例えば、次の(i)又は(ii)のような方法がある。制御部30は、次の(i)又は(ii)のいずれかを採用可能である。
(i)制御部30は、前回の薬液洗浄工程の実施以降の各水質項目の測定値について、測定が行われる毎に移動平均値(例えば、単純移動平均値,加重移動平均値,指数移動平均値等)を算出する。制御部30は、薬液洗浄工程の実施時期(例えば、製造工程から停止工程に移行したタイミング)において、移動平均値を基準値と比較し、移動平均値が基準値を超過している場合に、その水質項目を汚染原因物質の候補として選出する。
(ii)制御部30は、前回の薬液洗浄工程の実施以降の各水質項目の測定値について、基準値を超えた回数をカウントする。制御部30は、薬液洗浄工程の実施時期(例えば、製造工程から停止工程に移行したタイミング)において、ある水質項目についての基準値を超えた回数が規定値以上の場合に、その水質項目を汚染原因物質の候補として選出する。
制御部30は、前記(i)又は(ii)の水質項目の選出方法で汚染原因物質の候補として選出された水質項目について、薬液の種類を選択し、その使用順序を設定する。例えば、汚染原因物質の候補として、有機物、マンガン及び油分が選出された場合について、薬液の種類の選択及びその使用順序を次の表1を参照しながら説明する。なお、前述のように、薬剤の優先順位の1位〜3位は、例えば、〔1〕次亜塩素酸ナトリウム、〔2〕有機酸(例:シュウ酸,クエン酸)又は無機酸(例:塩酸,硫酸,硝酸)、〔3〕界面活性剤の順に、決定している。
[薬液の選択と使用順序]
表1において、〈A〉は、汚染原因物質の候補として、有機物、マンガン及び油分が選出されたパターンである。〈A〉の選出パターンの場合には、薬液の種類を、例えば、「次亜塩素酸ナトリウム」、「有機酸/無機酸」、「界面活性剤」の順に変えながら、薬液洗浄工程を所定時間(例:各3時間)実行する。
表1において、〈B〉は、汚染原因物質の候補として、有機物及びマンガンが選出され、油分が選出されなかったパターンである。〈B〉の選出パターンの場合には、薬液の種類を、例えば、「次亜塩素酸ナトリウム」、「有機酸/無機酸」の順に変えながら、薬液洗浄工程を所定時間(例:各3時間)実行する。
表1において、〈C〉は、汚染原因物質の候補として、有機物及び油分が選出され、マンガンが選出されなかったパターンである。〈C〉の選出パターンの場合には、薬液の種類を、例えば、「次亜塩素酸ナトリウム」、「界面活性剤」の順に変えながら、薬液洗浄工程を所定時間(例:各3時間)実行する。
表1において、〈D〉は、汚染原因物質の候補として、マンガン及び油分が選出され、有機物が選出されなかったパターンである。〈D〉の選出パターンの場合には、薬液の種類を、例えば、「有機酸/無機酸」、「界面活性剤」の順に変えながら、薬液洗浄工程を所定時間(例:各3時間)実行する。
表1において、〈E〉は、汚染原因物質の候補として、有機物が選出され、マンガン及び油分が選出されなかったパターンである。〈E〉の選出パターンの場合には、薬液の種類を、例えば、「次亜塩素酸ナトリウム」のみを選択して、薬液洗浄工程を所定時間(例:2時間)実行する。
表1において、〈F〉は、汚染原因物質の候補として、マンガンが選出され、有機物及び油分が選出されなかったパターンである。〈F〉の選出パターンの場合には、薬液の種類を、例えば、「有機酸/無機酸」のみを選択して、薬液洗浄工程を所定時間(例:2時間)実行する。
表1において、〈G〉は、汚染原因物質の候補として、油分が選出され、有機物及びマンガンが選出されなかったパターンである。〈G〉の選出パターンの場合には、薬液の種類を、例えば、「界面活性剤」のみを選択して、薬液洗浄工程を所定時間(例:2時間)実行する。
表1において、〈H〉は、汚染原因物質の候補として、有機物、マンガン及び油分のいずれもが選出されなかったパターンである。〈H〉の選出パターンの場合には、薬液の種類を、例えば、「次亜塩素酸ナトリウム」のみを選択して、薬液洗浄工程を所定時間(例:1時間)実行する。
なお、〈A〉〜〈D〉は、複合的な汚染が生じている可能性が高いため、各薬剤の洗浄時間を長めの3時間としている。〈E〉〜〈G〉は、複合的な汚染が生じている可能性が低いため、各薬剤の洗浄時間を中程度の2時間としている。〈H〉は、汚染の程度は低いと考えられるため、頻度の高い有機物汚染を想定した上で、各薬剤の洗浄時間を短く1時間としている。
次に、本実施形態に係る洗浄方法について説明する。図4は、本実施形態に係る洗浄方法の処理手順を示すフローチャートである。
図4に示すステップST1において、制御部30は、濾過工程(濾過処理)及び逆洗工程(逆洗処理)を含む製造工程を実行する。
ステップST2において、管理サーバ40は、前回の薬液洗浄工程から、逐次、原水W1に含まれる汚濁物質の濃度に係る測定データを蓄積している。管理サーバ40には、UF膜の汚染原因物質となり得る水質項目として、有機物(TOC),マンガン,油分等の濃度に係る測定データが蓄積される。
ステップST3において、制御部30は、所定のタイミングに達したか否かを判定する。所定のタイミングとは、前回の薬液洗浄工程からの所定の経過期間(例えば、半年毎や1年毎の定期的な期間)が経過したときや、製造時差圧算出部31における製造時差圧算出処理により算出された製造時の差圧が所定の条件を満たしたときである。具体的な所定の条件は、2回目以降の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P1,P2,P3,…が1回目の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P0に対して増加傾向にあり、且つ、2回目以降の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P1,P2,P3,…と1回目の濾過工程(濾過処理)における通水初期の膜間差圧P0との差分が所定の第2閾値を上回るときである。これらの場合には、膜モジュール2において、不可逆的な通水抵抗の上昇が起こっており、薬剤洗浄工程を実行して膜詰まりを解消する必要が生じる。そこで、所定のタイミングに達したと判定された場合(YES)には、処理は、ステップST4に移行する。所定のタイミングに達していないと判定された場合(NO)には、処理は、ステップST3における判定を繰り返す。
ステップST4において、制御部30は、製造工程を停止させる停止工程を実行する。これにより、膜モジュール2を洗浄する薬液洗浄工程を実行可能な状態となる。
ステップST5において、制御部30は、管理サーバ40に蓄積された汚濁物質の濃度に係る測定データに基づいて、汚染原因物質の候補として選出された水質項目に対応した薬剤を選択し、薬剤の使用順序を決定する。そして、選択された薬剤の使用順序に基づく優先順位で薬剤の種類を変更しながら、薬液洗浄工程を実行する。まず、優先順位が1位の薬剤を第2薬剤添加装置23により洗浄液タンク22に添加し、その優先順位が1位の薬剤が含まれた洗浄液W6を用いて、所定の洗浄時間(例えば、1〜3時間)の間、薬液洗浄工程を実行する。薬液洗浄工程においては、洗浄液供給ポンプ21を駆動させることにより、洗浄液タンク22に貯留される洗浄液W6を洗浄液タンク22から、洗浄液導入ラインL11、接続部J12、原水ラインL1の接続部J12から下流側の部分、膜モジュール2、洗浄液戻りラインL7、洗浄液タンク22の順に循環させる。これにより、膜モジュール2に洗浄液W6を通液させて、膜モジュール2を洗浄する。
ステップST6において、洗浄時差圧算出部32は、薬液洗浄工程の洗浄処理中において、洗浄時の膜間差圧(通液時膜間差圧)を算出する洗浄時差圧算出処理を実行する。
ステップST7において、制御部30は、所定の洗浄時間(例えば、1〜3時間)の間、通液時膜間差圧が第1閾値を下回ったか否かを判定する。通液時膜間差圧が第1閾値を下回った場合(YES)には、処理は、ステップST8に移行する。所定の洗浄時間(例えば、1〜3時間)が経過しても、通液時膜間差圧が第1閾値を下回らない場合(NO)には、処理は、ステップST9に移行する。
ステップST8において、制御部30は、薬液洗浄工程を終了させる洗浄終了処理を実行する。ステップST8の後に、処理は終了する。
ステップST9において、制御部30は、選択した全種類の薬剤を使用したか否かを判定する。選択した全種類の薬剤を使用した場合(YES)には、処理は、ステップST10へ移行する。選択した全種類の薬剤を使用していない場合(NO)には、処理は、ステップST12へ移行する。
ステップST10において、全種類の薬剤を使用し、且つ十分な時間をかけても細孔内の汚濁物質を取り除けないため、制御部30は、洗浄液W6の通液を停止して、薬液洗浄工程を強制的に終了させる洗浄終了処理を実行する。
ステップST11において、制御部30は、膜モジュール2の通水抵抗が回復しない旨の報知や膜モジュール2の交換を促す旨の報知等を行い、処理は終了する。
ステップST9において全種類の薬剤を使用していない場合(NO)に、ステップST12において、薬剤の種類を、優先順位が次点の薬剤に変更する。そして、処理は、ステップST5に戻り、変更した薬剤が含まれた洗浄液W6を用いて、ステップST5における薬液洗浄工程を実行する。その後、ステップST6以降の処理を前記の処理内容と同様に実行する。
上述した本実施形態に係る洗浄方法によれば、例えば、以下のような効果が奏される。
本実施形態は、膜モジュール2に原水W1を導入することにより原水W1に含まれる汚濁物質を除去して透過水W2を製造する膜濾過装置1における膜モジュール2を洗浄する方法であって、膜モジュール2による原水W1の濾過処理と、膜モジュール2に対する逆洗処理とを交互に行って透過水W2を製造する製造工程と、所定のタイミングで製造工程を停止させる停止工程と、停止工程による製造工程の停止に応じて、膜モジュール2に所定の薬剤を含む洗浄液W6を通液する薬液洗浄工程と、を有し、薬液洗浄工程は、通液前の洗浄液W6の圧力と通液後の洗浄液W6の圧力とに基づいて洗浄時の膜間差圧を算出する洗浄時差圧算出処理と、洗浄時差圧算出処理により算出された洗浄時の膜間差圧が所定の第1閾値を下回る場合に、薬液洗浄工程を終了させる洗浄終了処理と、を含む。
そのため、洗浄時差圧算出処理により算出された洗浄時の膜間差圧が所定の第1閾値を下回る場合に、薬液洗浄工程が終了される。これにより、濾過膜の細孔内の汚濁物質が十分に取り除かれ、膜モジュール2の通水液抵抗が回復した時点で薬液洗浄工程が終了される。この結果、薬液洗浄工程が所定時間を経過するまで継続されることがなくなり、薬剤の無駄な消費を抑制することができる。
また、本実施形態においては、製造工程は、原水W1の圧力と透過水W2の圧力とに基づいて製造時の膜間差圧を算出する製造時差圧算出処理を更に有し、停止工程に移行する所定のタイミングは、製造時差圧算出処理により算出された製造時の膜間差圧が所定の条件を満たしたときである。そのため、膜モジュール2の膜間差圧を条件とした簡易な判定手段で、膜モジュール2の膜詰まりの進行が進んでいる場合に停止工程に移行させて、薬液洗浄工程を実行できる。
また、停止工程に移行する所定のタイミングに係る所定の条件は、製造時差圧算出処理により算出された、2回目以降の濾過処理における通水初期の膜間差圧が1回目の濾過処理における通水初期の膜間差圧に対して増加傾向にあり、且つ、2回目以降の濾過処理における通水初期の膜間差圧と1回目の濾過処理における通水初期の膜間差圧との差分が所定の第2閾値を上回るときである。そのため、製造工程の実行時において膜モジュール2の不可逆的な通水抵抗の上昇が起こり、膜濾過装置1の運転性能を維持できなくなった時点で、薬液洗浄工程を実行することができる。その結果、膜モジュール2の通水抵抗を膜詰まりのない状態に回復させて、膜濾過装置1の運転性能を維持することができる。
また、製造工程は、原水W1の汚濁物質の濃度を測定して、測定した汚濁物質の濃度を記憶する記憶処理を更に有し、薬液洗浄工程は、記憶処理により記憶された汚濁物質の濃度に基づいて、膜モジュール2の洗浄に用いる所定の薬剤の優先順位を決定し、決定した優先順位に基づいて所定の薬剤を含む洗浄液W6の通液を行う。これにより、汚染原因物質の候補に基づいて薬剤の優先順位を決定するため、膜モジュール2の膜詰まりを短時間で解消するために最も効果的な薬剤を用いて、薬液洗浄工程を実行することができる。その結果、膜詰まりを解消する効果が少ない薬剤の使用を回避して、薬剤の無駄な消費を一層抑制することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
流路切替手段としては、本実施形態に示すように複数のバルブを切り替える方式のほか、一体型のコントロールバルブ方式を用いてもよい。
前記実施形態においては、濾過方式として、全量濾過方式を採用した例について説明したが、これに制限されない。例えば、濾過方式として、クロスフロー濾過方式を採用してもよい。