図1を参照して、本発明の実施形態の膜濾過装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態の膜濾過装置1を示す概略構成図である。図2は、各工程における各弁の開閉状態を説明する図である。
図1に示すように、本実施形態の膜濾過装置1(除濁装置)は、流量可変手段としての原水ポンプ3と、第1インバータ4と、膜モジュール2と、逆洗水用タンク7と、流量可変手段としての逆洗水ポンプ5と、流量可変手段としての第2インバータ6と、薬剤添加装置8と、制御部30と、を備える。また、図1に示すように、膜濾過装置1は、原水ラインL1と、透過水ラインL2と、逆洗水ラインL3と、第1排出ラインL4と、第2排出ラインL6と、洗浄エア供給ラインL5と、を備える。なお、本明細書における「ライン」とは、流路、径路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。また、図1においては、1本の膜モジュール2を搭載した状態を例示しているが、複数本の膜モジュール2を搭載するように変更可能である。この場合、各ラインL1〜L6に対して、複数本の膜モジュール2を並列に接続する。
また、膜濾過装置1は、原水弁V1と、流量可変手段としての透過水弁V2と、逆洗水弁V3と、第1排出弁V4と、第2排出弁V6と、エア流量調整弁V5と、濁質濃度センサ11と、流量センサ12と、を備える。
図1では、電気的な接続の経路を省略するが、制御部30は、原水弁V1、透過水弁V2、逆洗水弁V3、第1排出弁V4、第2排出弁V6、エア流量調整弁V5、濁質濃度センサ11、流量センサ12等と電気的に接続される。
図1に示すように、原水ラインL1には、被処理水としての原水W1が流通する。原水ラインL1は、原水W1を、膜モジュール2へ流通させるラインである。原水ラインL1は、原水W1の供給源(不図示)と膜モジュール2とをつなぐラインである。原水ラインL1の上流側の端部は、原水W1の供給源(不図示)に接続されている。また、原水ラインL1の下流側の端部は、膜モジュール2の一次側に接続されている。
原水ラインL1には、図1に示すように、上流側から順に、原水ポンプ3、原水弁V1、接続部J1及び接続部J6が設けられている。
原水ポンプ3は、原水ラインL1を流通する原水W1を吸入し、膜モジュール2へ向けて圧送(吐出、送出)する機器である。原水ポンプ3には、第1インバータ4から周波数が変換された駆動電力が供給される。原水ポンプ3は、入力された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
第1インバータ4は、原水ポンプ3に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路(又はその回路を持つ装置)である。第1インバータ4は、制御部30と電気的に接続されている。第1インバータ4には、制御部30から周波数指定信号が入力される。第1インバータ4は、制御部30により入力された周波数指定信号(電流値信号又は電圧値信号)に対応する駆動周波数の駆動電力を、原水ポンプ3に出力する。
本実施形態においては、第1インバータ4は、原水ポンプ3を一定の駆動周波数に固定した回転速度で駆動するように、駆動電力を原水ポンプ3に出力する。
原水弁V1は、例えば電動弁からなり、制御部30の制御により、原水ラインL1を開閉するように構成されている。
接続部J1において、原水ラインL1には、濁質濃度センサ11が接続されている。濁質濃度センサ11は、原水ラインL1を流通する原水W1の濁質濃度を測定する機器である。接続部J1は、原水弁V1と膜モジュール2との間に配置されている。
濁質濃度は、汚濁物質の濃度であり、濁度として測定可能なものである。濁度は、JIS K0101「工業用水試験方法」において、「濁度とは水の濁りの程度を表すもので、視覚濁度、透過光濁度、散乱光濁度及び積分球濁度に区分し表示する」とされている。濁度を検出する濁度センサとしては、例えば、JIS K0101に示されているような、試料水の濁り度合を透過光強度から判定する透過光式センサや、散乱光強度から判定する散乱光式光センサや、散乱光強度と透過光強度との比から判定する積分球式センサなどを用いることができる。濁質濃度センサ11は、制御部30と電気的に接続されている。濁質濃度センサ11で測定された原水W1の濁質濃度(濁度測定値)は、制御部30へ測定値信号として送信される。
膜モジュール2には、原水W1が供給(導入)される。膜モジュール2は、原水ポンプ3により圧送された原水W1から、汚濁物質が除去された透過水W2を製造する。つまり、膜濾過装置1は、膜モジュール2に原水W1を導入することにより、原水W1に含まれる汚濁物質を除去して、透過水W2を製造する。膜モジュール2は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)製の中空糸膜の束をベッセル内に収容し、ベッセル両端部においてベッセル内周面と中空糸膜外周面との間に封止剤を充填して形成される。膜モジュール2は、外圧式又は内圧式のいずれでも使用できるが、中空糸内部が閉塞しにくい外圧式が好ましい。また、濾過方式としては、全量濾過方式又はクロスフロー濾過方式のいずれでもよい。一般に、全量濾過方式は、濾過操作時のエネルギー消費量が少ないが、ケーキ層の成長が速いため、逆洗浄の実施間隔や順洗浄(フラッシング)の実施間隔を短くする必要がある。これに対し、クロスフロー濾過方式は、濾過操作時の水循環のためにエネルギー消費量が多いが、ケーキ層の成長が緩やかなため、逆洗浄の実施間隔や順洗浄の実施間隔を延ばすことができる。
膜モジュール2に組み込まれる中空糸膜には、逆浸透膜(「RO膜」ともいう)よりも細孔が粗い膜が用いられる。膜モジュールとして、限外濾過膜を有するUF膜モジュールや、精密濾過膜を有するMF膜モジュール等を適用することができる。なお、本実施形態においては、膜モジュール2を全量濾過方式の外圧式UF膜モジュールとして、以降の装置構成や動作等を説明する。
透過水ラインL2は、膜モジュール2において製造された透過水W2を、需要箇所の装置等に流通させるラインである。透過水ラインL2は、膜モジュール2と需要箇所の装置等(不図示)とをつなぐラインである。透過水ラインL2の上流側の端部は、膜モジュール2の二次側に接続されている。また、透過水ラインL2の下流側の端部は、需要箇所の装置等(不図示)に接続されている。透過水ラインL2には、上流側から順に、膜モジュール2、接続部J2、接続部J3、透過水弁V2、接続部J4が設けられている。
接続部J2において、透過水ラインL2には、流通検知部及び流量検知部としての流量センサ12が接続されている。流量センサ12は、膜モジュール2の水の流通の有無を原水W1の流量パルスにより検知可能であり、流通検知部として機能する。また、流量センサ12は、膜モジュール2の通水流量を、透過水W2の流量パルスにより検知可能であり、流量検知部としても機能する。流量センサ12は、制御部30と電気的に接続されている。流量センサ12で検出された透過水W2の流量(検出流量値)は、制御部30へ検出信号として送信される。流量センサ12は、瞬間流量及び積算水量を検出可能に構成された流量センサであり、例えば、接線式流量センサや軸流式流量センサを利用することができる。なお、本実施形態での流量センサ12は、流通検知部としての機能のみを求める場合には、流量センサに替えて、接点信号をオンオフ出力するフロースイッチを採用することもできる。
また、本実施形態での流量センサ(流量センサ12)は、透過水ラインL2に代えて、原水ラインL1に設けることもできる。流量センサを原水ラインL1に設けた場合には、膜モジュール2の流入水量を原水W1の流量パルスにより検知する流量検知部して機能する。つまり、膜モジュール2に対して、流量センサは、原水ラインL1又は透過水ラインL2のいずれか一方に設けられていればよい。
接続部J3には、逆洗水ラインL3の下流側の端部が接続されている。接続部J4には、逆洗水ラインL3の上流側の端部が接続されている。逆洗水ラインL3は、接続部J4において透過水ラインL2から分岐され、後述する逆洗水用タンク7を経由して、接続部J3において透過水ラインL2に合流されるラインである。逆洗水ラインL3には、膜モジュール2における逆洗工程を実行するために、膜モジュール2において製造された透過水W2の一部が流通される。
透過水弁V2は、比例制御弁で構成され、透過水ラインL2を流通する透過水W2の流量を調整する弁である。透過水弁V2は、制御部30と電気的に接続されている。透過水弁V2の弁開度は、制御部30から送信される弁開度指定信号により制御される。制御部30から電流値信号(例えば、4〜20mA)又は電圧値信号(例えば、0〜10V)を透過水弁V2の弁体駆動部に送信して、弁開度を制御することにより、透過水W2の流通流量を調整することができる。
本実施形態の濾過工程においては、原水ポンプ3を一定の駆動周波数に固定した回転速度で駆動して原水ラインL1を流通する原水W1を一定の圧力で加圧しながら、比例制御弁からなる透過水弁V2の弁開度を調整することで、原水W1を膜モジュール2に送出し、透過水W2を製造する。そのため、原水ポンプ3及び透過水弁V2は、透過水W2の流量を変更可能な流量可変手段として機能する。ここで、後述する流量センサ12からの流量検知信号に基づいて、比例制御弁からなる透過水弁V2の弁開度を調整することができる。この構成によれば、流量センサ12により検出される透過水W2の流量に基づくフィードバック制御により、透過水W2の流量を一定に維持するように制御を行うことができる。これにより、膜モジュール2の膜表面でのケーキ層の成長と共に、膜間の通水抵抗が増加しても、比例制御弁からなる透過水弁V2の弁開度が自動的に調整されて、透過水W2の流量を一定に制御することができる。
逆洗水ラインL3には、上流側から順に、接続部J4、逆洗水用タンク7、逆洗水ポンプ5、接続部J5、逆洗水弁V3、接続部J3が設けられている。
逆洗水用タンク7は、逆洗工程のために、膜モジュール2において製造された透過水W2の一部を、逆洗水ラインL3を流通させて、逆洗水W3(透過水W2)として貯留するタンクである。
逆洗水ポンプ5は、逆洗工程において、逆洗水ラインL3を流通する逆洗水W3(透過水W2)を吸入し、膜モジュール2へ向けて圧送(吐出、送出)する装置である。逆洗水ポンプ5は、逆洗排水W4の流量を変更可能である。逆洗水ポンプ5には、第2インバータ6から周波数が変換された駆動電力が供給される。逆洗水ポンプ5は、入力された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
第2インバータ6は、逆洗水ポンプ5に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路(又はその回路を持つ装置)である。第2インバータ6は、制御部30と電気的に接続されている。第2インバータ6には、制御部30から周波数指定信号が入力される。第2インバータ6は、制御部30により入力された周波数指定信号(電流値信号又は電圧値信号)に対応する駆動周波数の駆動電力を逆洗水ポンプ5に出力する。
接続部J5には、薬剤添加装置8が接続されている。薬剤添加装置8は、逆洗工程に替えて実行される薬液洗浄工程(後述)において、膜モジュール2へ流入する逆洗水W3に薬剤を添加(供給)する装置である。薬液洗浄工程において逆洗水W3に薬剤を添加して洗浄液W6を調製することにより、UF膜の細孔内に付着した汚濁物質を化学的に除去し、膜モジュール2の洗浄効果を高める。逆洗水W3に添加される薬剤としては、次亜塩素酸ナトリウムや、有機酸(例:シュウ酸,クエン酸)又は無機酸(例:塩酸,硫酸,硝酸)や、界面活性剤(例:非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤)などが挙げられる。
薬剤添加装置8は、逆洗水ラインL3を流通する逆洗水W3の流量に比例して逆洗水W3に薬剤を供給して洗浄液W6を調製する。薬剤添加装置8における薬剤の添加は、後述する薬液洗浄工程が実行される際に、後述の制御部30により制御されている。
第1排出ラインL4は、逆洗工程で発生した逆洗排水W4、バブリング工程(後述)で発生したエアA2又は薬液洗浄工程(後述)で使用された洗浄液W6が流通するラインである。第1排出ラインL4には、逆洗工程で発生した逆洗排水W4、バブリング工程で発生したエアA2又は薬液洗浄工程で使用された洗浄液W6が膜モジュール2の外部に排出されるように流通される。第1排出ラインL4の上流側の端部は、膜モジュール2の一次側に接続される。第1排出ラインL4の途中には、第1排出弁V4が設けられている。第1排出弁V4は、例えば電動弁からなり、制御部30の制御により、第1排出ラインL4を開閉するように構成されている。
第2排出ラインL6は、逆洗工程やバブリング工程において、中空糸膜から除去した汚濁物質を、系外に排出するラインである。第2排出ラインL6には、汚濁物質を含む排水W5が系外に排出するように流通される。第2排出ラインL6の上流の端部は、膜モジュール2の二次側に接続される。第2排出ラインL6は、汚濁物質を含む排水W5を系外に排出する。第2排出ラインL6の途中には、第2排出弁V6が設けられている。第2排出弁V6は、例えば電動弁からなり、制御部30の制御により、第2排出ラインL6を開閉するように構成されている。
原水ラインL1における原水弁V1と膜モジュール2との間(接続部J1と膜モジュール2との間)には、接続部J6が設けられる。接続部J6において、原水ラインL1には、洗浄エア供給ラインL5が接続されている。洗浄エア供給ラインL5は、原水ラインL1を介して、膜モジュール2にエアA1を供給するラインである。洗浄エア供給ラインL5の上流側の端部は、不図示のエアコンプレッサーに接続されている。洗浄エア供給ラインL5の下流側の端部は、接続部J6において、原水ラインL1に接続されている。洗浄エア供給ラインL5の途中には、エア流量調整弁V5が設けられている。エア流量調整弁V5は、例えば電動弁からなり、制御部30の制御により、洗浄エア供給ラインL5を開閉するように構成されている。エア流量調整弁V5と接続部J6の間には、エアA1の流量を調整するレギュレータ(不図示)が設けられている。
膜濾過装置1は、各弁(原水弁V1、透過水弁V2、逆洗水弁V3、第1排出弁V4、エア流量調整弁V5、第2排出弁V6)を切り替えることで、水張り工程と、濾過工程と、逆洗工程と、バブリング工程と、排水工程と、を実行可能である。例えば、通常運転時において、30分間の濾過工程と、5分間のその他の工程(逆洗工程、バブリング工程、排水工程及び、水張り工程)との繰り返しが交互に行われる。膜濾過装置1は、定流量での濾過を一定時間継続すると、中空糸膜の外側でケーキ層(汚濁物質の堆積層)が成長することで、膜間差圧が上昇する。そのため、濾過工程を一定時間継続した後には、逆洗工程、バブリング工程及び排水工程に移行して、中空糸膜の外側のケーキ層を系外に排出して、透過流束を回復する工程が実施される。その後、濾過工程に備えて、水張り工程が実施される。なお、本実施形態における薬液洗浄工程は、所定のタイミングで、逆洗工程に替えて実行され、洗浄液W6を通液する際の各弁V1からV6の開閉状態は、逆洗工程と同じである。
まず、水張り工程、濾過工程、逆洗工程、バブリング工程及び排水工程について具体的に説明する。
水張り工程は、膜モジュール2の内部に原水W1を供給して、膜モジュール2の内部を原水W1で満たす工程である。具体的には、図2に示すように、水張り工程は、透過水弁V2、逆洗水弁V3、エア流量調整弁V5及び第2排出弁V6を閉鎖して、原水弁V1及び第1排出弁V4を開放して、原水ポンプ3を駆動して、原水W1を膜モジュール2の内部に供給するように操作される。
濾過工程は、膜モジュール2の内部に原水W1を供給して、膜モジュール2の中空糸膜の外側から内側に原水を通過させて、原水W1から透過水W2を製造する工程、すなわち濾過処理を行う工程である。具体的には、図2に示すように、濾過工程は、逆洗水弁V3、第1排出弁V4、エア流量調整弁V5及び第2排出弁V6を閉鎖して、原水弁V1及び透過水弁V2を開放して、原水ポンプ3を駆動して、原水W1を膜モジュール2に圧送するように操作される。
逆洗工程は、逆洗水ポンプ5により逆洗水W3(透過水W2)を膜モジュール2に供給して、膜モジュール2の中空糸膜の内側から外側に向かって逆洗水W3を流通させる工程、すなわち逆洗処理を行う工程である。逆洗工程は、膜モジュールの膜表面に付着した汚濁物質を押し流す。具体的には、図2に示すように、逆洗工程は、原水弁V1、透過水弁V2、エア流量調整弁V5及び第2排出弁V6を閉鎖して、逆洗水弁V3及び第1排出弁V4を開放して、逆洗水ポンプ5を駆動して、逆洗水W3を膜モジュール2に圧送するように操作される。これにより、中空糸膜の外側表面で成長したケーキ層が剥離される。洗浄後の逆洗排水W4は、第1排出ラインL4を介して、系外に排出される。
バブリング工程は、膜モジュール2の下部からエアA1を供給して、中空糸膜の束を揺動させる工程である。これにより、逆洗工程後の膜モジュール2において中空糸膜同士の隙間や膜の表面に残留している汚濁物質を除去する。具体的には、図2に示すように、バブリング工程は、原水弁V1、透過水弁V2、逆洗水弁V3及び第2排出弁V6を閉鎖し、第1排出弁V4及びエア流量調整弁V5を開放するように操作される。
排水工程は、逆洗工程やバブリング工程において、中空糸膜から除去した汚濁物質を、逆洗排水W4、エアA2及び排水W5として、第1排出弁V4及び第2排出弁V6を介して系外に排出する。具体的には、図2に示すように、排水工程は、原水弁V1、透過水弁V2、逆洗水弁V3及びエア流量調整弁V5を閉鎖し、第1排出弁V4及び第2排出弁V6を開放するように操作される。
続いて、薬液洗浄工程について具体的に説明する。薬液洗浄工程は、膜モジュール2の濾過工程における負荷量が所定の閾値を上回る場合に、逆洗工程に替えて実行される工程である。薬液洗浄工程においては、逆洗工程を実行する流路に各弁V1〜V6を切り替えた状態で、逆洗水ポンプ5及び薬剤添加装置8を所定時間駆動させることで、薬剤を含む洗浄液W6を膜モジュール2に供給する。その後、逆洗水ポンプ5及び薬剤添加装置8を停止させると共に、逆洗水弁V3及び第1排出弁V4を閉鎖状態に切り替えて、膜モジュール2を洗浄液W6、すなわち薬液に所定時間浸漬させる。膜モジュール2を薬液に所定時間浸漬させた後には、逆洗水弁V3及び第1排出弁V4を開放するように操作すると共に逆洗水ポンプ5を駆動して、膜モジュール2を逆洗水W3で濯ぐ逆洗工程を適宜回数実行する。
次に、制御部30について説明する。制御部30は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。制御部30において、マイクロプロセッサのCPUは、メモリから読み出した所定のプログラムに従って、後述する各種の制御を実行する。制御部30において、マイクロプロセッサのメモリには、膜濾過装置1を制御するためのデータや各種プログラムが記憶される。また、制御部30のマイクロプロセッサには、時間の計時等を管理するインテグレーテッドタイマユニット(以下、「ITU」ともいう)が組み込まれている。
制御部30は、原水ポンプ3、原水弁V1、透過水弁V2、逆洗水ポンプ5、逆洗水弁V3、第1排出弁V4、エア流量調整弁V5、第2排出弁V6、薬剤添加装置8、濁質濃度センサ11及び流量センサ12に電気的に接続されている。
制御部30は、水張り工程、濾過工程、逆洗工程、バブリング工程、排水工程及び薬液洗浄工程を行うように、流路切替手段としての、原水弁V1、透過水弁V2、逆洗水弁V3、第1排出弁V4、エア流量調整弁V5及び第2排出弁V6を制御する。
制御部30は、原水ポンプ3の駆動周波数を演算し、当該駆動周波数の演算値に対応する周波数指定信号(電流値信号又は電圧値信号)を第1インバータ4に出力する。本実施形態においては、制御部30は、原水ポンプ3を一定の駆動周波数に固定した回転速度で駆動するように、原水ポンプ3の駆動周波数を演算し、当該駆動周波数の演算値に対応する周波数指定信号(電流値信号又は電圧値信号)を第1インバータ4に出力する。
制御部30は、所定の開度となるように、比例制御弁としての透過水弁V2を制御する。
制御部30は、逆洗水ポンプ5の駆動周波数を演算し、当該駆動周波数の演算値に対応する周波数指定信号(電流値信号又は電圧値信号)を第2インバータ6に出力する。
制御部30は、濾過工程における負荷量を測定し、当該負荷量が所定の閾値を上回る場合に、逆洗工程に替えて、所定の薬剤を含む洗浄液W6を膜モジュール2に通液する薬液洗浄工程を実行させる。
ここで、本実施形態においては、薬液洗浄工程の頻度を適正化するため、負荷量が、以下の(i)〜(iii)から選ばれた所定の条件を満足すると、次回の逆洗工程に替えて薬液洗浄工程を実施する。
(i)の条件は、1日の最大使用水量(設定値)に対して、その日の濾過水量(透過水W2の水量)の合計が所定割合(例:80〜95%の範囲から選ばれた割合)に達したという条件である。(i)の条件の場合には、負荷量は、前回の薬液洗浄工程の実行後における透過水W2の積算水量であり、制御部30は、濾過工程において、負荷量として測定された透過水W2の積算水量が所定の第1閾値(閾値)を上回る場合に、逆洗工程に替えて薬液洗浄工程を実行させる。所定の第1閾値は、例えば、1日の最大使用水量(設定値)に対して、その日の濾過水量の合計が所定割合(例:80〜95%の範囲から選ばれた割合)となるような値が設定される。
ここで、制御部30は、(i)の条件を判定する前に、負荷量として、流量センサ12により検知された水量に基づいて積算水量を算出する。詳細には、制御部30は、流量センサ12からの流量パルスの入力がある状態が所定時間(例えば、10秒間)継続した場合に、積算水量の計測を開始する。制御部30は、流量センサ12からの流量パルスの入力信号を計数して、膜モジュール2に導入される原水W1の積算水量を算出する。また、制御部30は、薬液洗浄工程が実行された場合に、それまで算出された積算水量をリセットする。
また、制御部30は、(i)の条件を満たした場合に、逆洗工程を実施可能な設定時間帯に、次回の逆洗工程に替えて、薬液洗浄工程を行わせる。ここで、本実施形態においては、逆洗工程を実施可能な設定時間帯を設定している。逆洗工程を実施可能な設定時間帯としては、工場の稼働率が高い時間帯(水使用量の高い時間帯、例えば、13時〜15時)を避けた時間帯を設定する。制御部30は、現在の日時(現在時刻)をカウントする時計機能を有するカレンダータイマーを内蔵しており、逆洗工程を実施可能な設定時間帯になった場合に、逆洗工程に替えて、薬液洗浄工程を実行する。
(ii)の条件は、1日の最大使用時間(設定値)に対して、その日の濾過時間(透過水W2の採水時間)の合計が所定割合(例:80〜95%の範囲から選ばれた割合)に達したという条件である。(ii)の条件の場合には、負荷量は、前回の薬液洗浄工程の実施後において、膜濾過装置1により透過水W2を製造した累積時間であり、制御部30は、濾過工程において、負荷量として測定された累積時間が所定の第2閾値(閾値)を上回る場合に、逆洗工程に替えて薬液洗浄工程を実行させる。所定の第2閾値は、例えば、1日の最大使用時間(設定値)に対して、その日の濾過時間の合計が所定割合例:80〜95%の範囲から選ばれた割合)となるような値が設定される。
ここで、制御部30は、(ii)の条件を判定する前に、負荷量として、流量センサ12により検知された水の流通状態(水の流通の有無)に基づいて累積時間を算出する。詳細には、制御部30は、流量センサ12からの流量パルスの入力の累積時間を内部時計により計数して、膜モジュール2に導入される原水W1の累積時間を算出する。また、制御部30は、薬液洗浄工程が実行された場合に、それまで算出された累積時間をリセットする。
また、制御部30は、(ii)の条件を満たした場合に、前述の(i)の条件を満たした場合と同様に、逆洗工程を実施可能な設定時間帯に、次回の逆洗工程に替えて、薬液洗浄工程を行わせる。
(iii)の条件は、1日の最大捕捉量(設定値)に対して、その日の濁質捕捉量の合計が所定割合(例:80〜95%の範囲から選ばれた割合)に達したという条件である。(iii)の条件の場合には、負荷量は、前回の薬液洗浄工程の実行後の原水W1の濁質濃度及び透過水W2の水量に基づく積算濁質捕捉量であり、制御部30は、濾過工程において、負荷量として測定された積算濁質捕捉量が所定の第3閾値(閾値)を上回る場合に、逆洗工程に替えて薬液洗浄工程を実行させる。所定の第3閾値(閾値)は、例えば、1日の最大捕捉量(設定値)に対して、その日の濁質捕捉量の合計が所定割合例:80〜95%の範囲から選ばれた割合)となるような値が設定される。
ここで、制御部30は、(iii)の条件を判定する前に、負荷量として、濁質濃度センサ11により検知された原水W1の濁質濃度と、流量センサ12により検知された透過水W2の水量(流量パルス(L/p))とをリアルタイムに積算して、現時点での積算濁質捕捉量を算出する。また、制御部30は、薬液洗浄工程が実行された場合に、それまで算出された積算濁質捕捉量をリセットする。
また、制御部30は、(iii)の条件を満たした場合に、前述の(i)及び(ii)の条件を満たした場合と同様に、逆洗工程を実施可能な設定時間帯に、次回の逆洗工程に替えて、薬液洗浄工程を行わせる。
次に、膜濾過装置1を用いた洗浄方法における第1動作例〜第3動作例について説明する。まず、膜濾過装置1を用いた洗浄方法における第1動作例について説明する。図3は、膜濾過装置1を用いた洗浄方法における第1動作例の処理手順を示すフローチャートである。図3に示すフローチャートの処理は、膜濾過装置1を用いた洗浄方法の実行中において、繰り返し実行される。膜濾過装置1を用いた洗浄方法における第1動作例は、薬液洗浄工程の実施頻度を適正化するために、前記(i)の条件を満足すると、次回の逆洗工程に替えて薬液洗浄工程を実施する場合の動作例である。
図3におけるステップST11において、制御部30は、濾過工程を実行する。
ステップST12において、流量センサ12は、濾過工程中における透過水W2の水量を検知する。
ステップST13において、制御部30は、流量センサ12からの流量パルスの入力信号を計数して、透過水W2の積算水量を算出する。
ステップST14において、制御部30は、積算水量が第1閾値を上回るか否かを判定する。所定の第1閾値は、例えば、1日の最大使用水量(設定値)に対して、その日の濾過水量(透過水W2の水量)の合計が所定割合(例:80〜95%の範囲から選ばれた割合)となるような値が設定される。積算水量が第1閾値を上回る場合(YES)には、処理は、ステップST15に移行する。積算水量が第1閾値を上回らない場合(NO)には、処理は、ステップST14を繰り返す。
ステップST15において、逆洗工程を実施可能な設定時間帯に、次回の逆洗工程に替えて、薬液洗浄工程を実行する。本実施形態においては、逆洗工程を実施可能な設定時間帯として、工場の稼働率が高い時間帯(水使用量の高い時間帯、例えば、13時〜15時)を避けた時間帯を設定している。薬液洗浄工程においては、逆洗工程を実行する流路に各弁V1〜V6を切り替えた状態で、逆洗水ポンプ5及び薬剤添加装置8を所定時間駆動させることで、薬剤を含む洗浄液W6を膜モジュール2に供給する。その後、逆洗水ポンプ5及び薬剤添加装置8を停止させると共に、逆洗水弁V3及び第1排出弁V4を閉鎖状態に切り替えて、膜モジュール2を洗浄液W6、すなわち薬液に所定時間浸漬させる。膜モジュール2を薬液に所定時間浸漬させた後には、逆洗水弁V3及び第1排出弁V4を開放するように操作すると共に逆洗水ポンプ5を駆動して、膜モジュール2を逆洗水W3で濯ぐ逆洗工程を適宜回数実行する。ステップST15の処理の後に、処理は終了する(ステップST11へリターンする)。
次に、膜濾過装置1を用いた洗浄方法における第2動作例について説明する。図4は、膜濾過装置1を用いた洗浄方法における第2動作例の処理手順を示すフローチャートである。図4に示すフローチャートの処理は、膜濾過装置1を用いた洗浄方法の実行中において、繰り返し実行される。膜濾過装置1を用いた洗浄方法における第2動作例は、薬液洗浄工程の実施頻度を適正化するために、前記(ii)の条件を満足すると、次回の逆洗工程に替えて薬液洗浄工程を実施する場合の動作例である。
図4におけるステップST21において、制御部30は、濾過工程を実行する。
ステップST22において、流量センサ12は、濾過工程中における透過水W2の流量の有無を検知する。
ステップST23において、制御部30は、流量センサ12からの流量パルスの入力の累積時間を内部時計により計数して、透過水W2を製造した累積時間を算出する。
ステップST24において、制御部30は、累積時間が第2閾値を上回るか否かを判定する。第2閾値は、例えば、1日の最大使用時間(設定値)に対して、その日の濾過時間(透過水W2の採水時間)の合計が所定割合例:80〜95%の範囲から選ばれた割合)となるような値が設定される。累積時間が第2閾値を上回る場合(YES)には、処理は、ステップST25に移行する。累積時間が第2閾値を上回らない場合(NO)には、処理は、ステップST24を繰り返す。
ステップST25において、前記第1動作例のステップST15と同様に、逆洗工程を実施可能な設定時間帯に、次回の逆洗工程に替えて、薬液洗浄工程を実行する。ステップST25の処理の後に、処理は終了する(ステップST21へリターンする)。
次に、膜濾過装置1を用いた洗浄方法における第3動作例について説明する。図5は、膜濾過装置1を用いた洗浄方法における第3動作例の処理手順を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートの処理は、膜濾過装置1を用いた洗浄方法の実行中において、繰り返し実行される。膜濾過装置1を用いた洗浄方法における第3動作例は、薬液洗浄工程の実施頻度を適正化するために、前記(iii)の条件を満足すると、次回の逆洗工程に替えて薬液洗浄工程を実施する場合の動作例である。
図5におけるステップST31において、制御部30は、濾過工程を実行する。
ステップST32において、濁質濃度センサ11は、濾過工程中における原水W1の濁質濃度を検知する。
ステップST33において、流量センサ12は、濾過工程中における透過水W2の水量を検知する。
ステップST34において、制御部30は、濁質濃度センサ11により検知された原水W1の濁質濃度と、流量センサ12により検知された透過水W2の水量(流量パルス(L/p))とをリアルタイムに積算して、現時点での積算濁質捕捉量を算出する。
ステップST35において、制御部30は、積算濁質捕捉量が第3閾値を上回るか否かを判定する。第3閾値(閾値)は、例えば、1日の最大捕捉量(設定値)に対して、その日の濁質捕捉量の合計が所定割合例:80〜95%の範囲から選ばれた割合)となるような値が設定される。積算濁質捕捉量が第3閾値を上回る場合(YES)には、処理は、ステップST36に移行する。積算濁質捕捉量が第3閾値を上回らない場合(NO)には、処理は、ステップST35を繰り返す。
ステップST36において、前記第1動作例のステップST15及び前記第2動作例のステップST25と同様に、逆洗工程を実施可能な設定時間帯に、次回の逆洗工程に替えて、薬液洗浄工程を実行する。ステップST36の処理の後に、処理は終了する(ステップST31へリターンする)。
上述した本実施形態に係る洗浄方法によれば、例えば、以下のような効果が奏される。
本実施形態は、膜モジュール2に原水W1を導入することにより原水W1に含まれる汚濁物質を除去して透過水W2を製造する膜濾過装置1における膜モジュール2を洗浄する方法であって、膜モジュール2に通水して透過水W2を得る濾過工程と、膜モジュール2を透過水W2の一部で逆洗浄する逆洗工程と、濾過工程における負荷量を測定し、当該負荷量が所定の閾値を上回る場合に、逆洗工程に替えて、所定の薬剤を含む洗浄液W6を膜モジュール2に通液する薬液洗浄工程と、を有する。そのため、負荷量が所定の閾値を上回らない場合には、薬液洗浄工程は実行されない。よって、薬液洗浄工程が過剰に実施されることを回避して、薬剤の無駄な消費を抑制することができる。
また、本実施形態においては、負荷量は、前回の薬液洗浄工程の実施後における透過水W2の積算水量であり、薬液洗浄工程は、負荷量として測定された透過水W2の積算水量が所定の第1閾値を上回る場合に、逆洗工程に替えて実行される。そのため、透過水W2の積算水量が所定の第1閾値を上回らない場合には、薬液洗浄工程は実行されない。よって、薬液洗浄工程が過剰に実施されることを回避して、薬剤の無駄な消費を抑制することができる。また、透過水W2の積算水量を負荷量としており、透過水W2の積算水量に基づいて薬液洗浄工程を実行するか否かを判定しているため、簡易な構成で、薬剤の無駄な消費を抑制することができる。
また、本実施形態においては、負荷量は、前回の薬液洗浄工程の実施後に、除濁装置1により透過水W2を製造した累積時間であり、薬液洗浄工程は、負荷量として測定された累積時間が所定の第2閾値を上回る場合に、逆洗工程に替えて実行される。そのため、透過水W2を製造した累積時間が所定の第2閾値を上回らない場合には、薬液洗浄工程は実行されない。よって、薬液洗浄工程が過剰に実施されることを回避して、薬剤の無駄な消費を抑制することができる。また、透過水W2を製造した累積時間を負荷量としており、透過水W2を製造した累積時間に基づいて薬液洗浄工程を実行するか否かを判定しているため、簡易な構成で、薬剤の無駄な消費を抑制することができる。
また、本実施形態においては、負荷量は、前回の薬液洗浄工程の実施後における原水W1の濁質濃度及び透過水W2の水量に基づく積算濁質捕捉量であり、薬液洗浄工程は、負荷量として測定された積算濁質捕捉量が所定の第3閾値を上回る場合に、逆洗工程に替えて実行される。そのため、積算濁質捕捉量が所定の第3閾値を上回らない場合には、薬液洗浄工程は実行されない。よって、薬液洗浄工程が過剰に実施されることを回避して、薬剤の無駄な消費を抑制することができる。また、積算濁質捕捉量を負荷量としており、積算濁質捕捉量に基づいて薬液洗浄程を実行するか否かを判定しているため、簡易な構成で、薬剤の無駄な消費を抑制することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
流路切替手段としては、本実施形態に示すように複数のバルブを切り替える方式のほか、一体型のコントロールバルブ方式を用いてもよい。
前記実施形態においては、負荷量として、膜モジュール2に製造される透過水W2の積算水量を測定していたが、これに制限されず、負荷量として、膜モジュール2に導入される原水W1の積算水量を測定してもよい。
前記実施形態においては、薬液洗浄工程として、逆洗工程において逆洗水W3(透過水W2)に替えて薬剤を含む洗浄液W6を使用することにより、薬液による逆洗浄が実行されるように構成したが、これに制限されない。例えば、薬液洗浄工程として、原水ラインL1から膜モジュール2に対して順方向に薬剤を含む洗浄液を通水させて第1排出ラインL4から排出するように流路を構成して、薬液による順洗浄が実行されるようにしてもよい。
前記実施形態においては、濾過方式として、全量濾過方式を採用した例について説明したが、これに制限されない。例えば、濾過方式として、クロスフロー濾過方式を採用してもよい。