JP6299448B2 - ペースト押出成形用テトラフルオロエチレン共重合体、該共重合体の製造方法および成形物 - Google Patents

ペースト押出成形用テトラフルオロエチレン共重合体、該共重合体の製造方法および成形物 Download PDF

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本発明は、ペースト押出成形用テトラフルオロエチレン共重合体、該共重合体の製造方法および成形物に関する。
ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」とも記す。)のファインパウダーは、水性媒体中で乳化剤を用いて重合する乳化重合法により、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」とも記す。)を重合して重合体微粒子を得て、該重合体微粒子を凝集させる方法で製造される。
PTFEは、溶融粘度が極めて高く、一般の熱可塑性樹脂に適用される押出成形等の成形方法では成形できない。そのため、PTFEの成形方法としては、PTFEのファインパウダーに潤滑剤を混ぜて予備成形物を得て、該予備成形物を押出成形することにより成形物を得る、ペースト押出成形が採用される。ペースト押出成形で成形される成形物としては、たとえば電線の被覆、チューブ、シール材等が挙げられる。
PTFEをペースト押出成形する際の成形性を改良するために、TFEと共重合可能な少量のコモノマーを用いて、PTFEを変性する方法が知られている。コモノマーとしては、たとえば、ヘキサフルオロプロピレン(以下、「HFP」ともいう。)を代表とするパーフルオロアルキルトリフルオロエチレンコモノマー;パーフルオロアルキルオキシトリフルオロエチレン;クロロトリフルオロエチレン(以下、「CTFE」ともいう。);ω−ヒドロパーフルオロオレフィン;フッ化ビニリデン等が挙げられる。
ところが、PTFEを変性した場合、得られたTFE共重合体の耐熱性が低下する場合がある。そこで、耐熱性の低下を抑制する方法として、たとえば、特許文献1には、Rfa−CH=CH(Rfaはパーフルオロアルキル基)で示されるパーフルオロアルキルエチレンをコモノマーとして使用し、PTFEを変性する方法が提案されている。特許文献2には、コモノマーとしてパーフルオロブチルエチレン(以下、「PFBE」とも記す。)を使用してコアを形成し、コモノマーとしてHFPを使用してシェルを形成し、粒子をコア−シェル構造とする方法が開示されている。
一方、TFE共重合体を電線の被覆に使用する場合には、TFE共重合体が芯線(導体)との密着性に優れることが求められる。
たとえば特許文献3には、電線の被覆向けの技術として、パーフルオロアルキルエチレンとフルオロアルキルビニルエーテルまたはフルオロオレフィンとを用いて、PTFEを変性する方法が記載されている。
特開昭60−42446号公報 特開平9−87334号公報 特表平11−509245号公報
しかしながら、特許文献1および2の技術では、変性に使用するコモノマーの量が多いこと等から、得られたTFE共重合体粒子の一次粒子径が小さく、そのため、ペースト押出成形時の押出圧力が高くなる傾向がある。押出圧力が高くなると、押出成形を安定に行うことが困難となり、その結果、得られる成形物の表面に波打ちが認められる等、表面平滑性が低下しやすい。このような傾向は、たとえば電線の被覆等を高速、かつ、高いRR比で成形する際に顕著となり、生産性と品質の維持との両立が困難である。
なお、RR比とは、押出成形におけるリダクション比であり、絞り比とも呼ばれる。
また、特許文献2の技術で用いられるHFPは、じょ限量0.1ppmの毒性ガスであるとともに、通常は液化高圧ガスとして存在する物質であり、取り扱いが難しい。そのため、HFPをコモノマーとして使用する場合には、特殊な設備を用いる必要があり、製造設備が高コスト化する傾向にあった。
特許文献3の実施例で製造されたTFE共重合体は、標準比重(以下、「SSG」とも記す。)の値が大きく、分子量が小さいと考えられる。SSGは分子量の指標であり、SSGが大きいほど、分子量が小さいことを意味する。そのため、特許文献3の実施例の共重合体は、被覆と芯線との密着性が不充分であると推測される。
本発明は、高速、かつ、高RR比でのペースト押出成形においても、低い押出圧力で表面平滑性に優れる成形物を成形でき、電線の被覆に用いた場合には、芯線との密着性に優れる成形物(被覆)を形成でき、耐熱性にも優れるペースト押出成形用TFE共重合体とその製造方法および成形物の提供を目的とする。
本発明者は鋭意検討した結果、コモノマーとしてごく微量のパーフルオロアルキルエチレンのみを用いて変性を行ったTFE共重合体からなるコアと、分子量が低く制御されたPTFEからなるシェルとを有するコア−シェル構造を形成するとともに、SSGが適度な範囲に制御されたTFE共重合体が、各種特性をバランス良く備え、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の構成[1]〜[7]を有する。
[1]テトラフルオロエチレンに基づく単位と、下記一般式(I)で表されるモノマーに基づく単位とからなり、
テトラフルオロエチレンに基づく単位の含有量を100mol%とした場合に、一般式(I)で表されるモノマーに基づく単位の含有量が0.009〜0.011mol%であり、
標準比重が2.140〜2.170であり、
下記測定方法によるペースト押出圧力が20〜40MPaであることを特徴とするペースト押出成形用テトラフルオロエチレン共重合体。
CH=CH−C2n+1 (I)
(式中、nは4または6である。)
[ペースト押出圧力の測定方法]
(1)試料226.8gと、イソパラフィン炭化水素100%からなり、初留点180℃、乾点188℃、引火点54℃、密度(15℃)0.758g/cm、KB値26、アニリン点85℃、芳香族含有量<0.01質量%である潤滑剤43.2gとをガラス瓶中で混合し、25℃で8時間熟成する。
(2)内径39.4mmのシリンダー(a)に、上記(1)で熟成した混合物を充填し、シリンダー(a)に挿入したピストンに55kgf(539N)の荷重を加え、2分間保持する。
(3)シリンダー(a)から上記混合物を取出し、シリンダー(b)(内径40.3mm)付の押出ダイ(ダイ角:20°、オリフィスの直径:1.274mm)に入れて、ラムスピード20mm/分、ダイ温度40℃で上記混合物を押出し、ひも状物(ビード)を得る。なお、リダクション比(RR比)は1000である。
(4)押出圧力が平衡状態になった際の押出力をシリンダー(b)の内径基準の断面積で除した値をペースト押出圧力(MPa)とする。
[2][1]に記載のペースト押出成形用テトラフルオロエチレン共重合体がペースト押出成形されたことを特徴とする成形物。
[3][1]に記載のペースト押出成形用テトラフルオロエチレン共重合体からなることを特徴とする電線被覆材料。
[4]ペースト押出成形用テトラフルオロエチレン共重合体の製造方法であって、
前記ペースト押出成形用テトラフルオロエチレン共重合体は、テトラフルオロエチレンに基づく単位と、下記一般式(I)で表されるモノマーに基づく単位とからなり、
テトラフルオロエチレンに基づく単位の含有量を100mol%とした場合に、一般式(I)で表されるモノマーに基づく単位の含有量が0.009〜0.011mol%であり、
前記テトラフルオロエチレンと、前記一般式(I)で表されるモノマーとを連鎖移動剤の非存在下で重合する工程(c)と、
該工程(c)の後に、テトラフルオロエチレンのみを連鎖移動剤の存在下で重合する工程(s)と、を有し、
前記ペースト押出成形用テトラフルオロエチレン共重合体の重合に使用するテトラフルオロエチレンの全量の80質量%を重合反応容器に投入した以降に、前記連鎖移動剤を前記重合反応容器に添加して、前記工程(s)を行う、ペースト押出成形用テトラフルオロエチレン共重合体の製造方法。
CH=CH−C2n+1 (I)
(式中、nは4または6である。)
[5][4]に記載の製造方法で製造されたペースト押出成形用テトラフルオロエチレン共重合体がペースト押出成形されたことを特徴とする成形物。
[6][4]に記載の製造方法で製造されたペースト押出成形用テトラフルオロエチレン共重合体からなることを特徴とする電線被覆材料。
[7]芯線に、[3]または[6]に記載の電線被覆材料を用いてなる被覆が設けられたことを特徴とする電線。
本発明によれば、高速、かつ、高RR比でのペースト押出成形においても、低い押出圧力で表面平滑性に優れる成形物を成形でき、電線の被覆に用いた場合には、芯線との密着性に優れる成形物(被覆)を形成でき、耐熱性にも優れるペースト押出成形用TFE共重合体とその製造方法および成形物を提供できる。
電線引き抜き強度の測定法を説明する概略図である。
<ペースト押出成形用TFE共重合体>
本発明のペースト押出成形用TFE共重合体(以下、単に「TFE共重合体」とも記す。)は、TFEに基づく単位(以下、「TFE単位」とも記す。)と、下記一般式(I)で表されるモノマー(以下、「モノマー(I)」とも記す。)に基づく単位(以下、「単位(I)」とも記す。)とからなり、TFE単位の含有量を100mol%とした場合に、単位(I)の含有量が0.009〜0.011mol%で、標準比重(SSG)が2.140〜2.170で、後述の測定方法によるペースト押出圧力が20〜40MPaである。
CH=CH−C2n+1 (I)
(式中、nは2〜6の整数である。)
モノマー(I)は、TFEとの充分な共重合反応性を有する。モノマー(I)をコモノマーとして用いることにより、TFE共重合体の一次粒子の粒径が均一になり、粒度分布がシャープになり、一次粒子中の異形粒子が減少することが期待される。そのため、TFE共重合体のペースト押出成形性が向上し、高速、かつ、高RR比でペースト押出成形を行った際にも、低い押出圧力で押出成形を安定に行って、表面平滑性に優れる成形物を製造できると考えられる。また、モノマー(I)をコモノマーとして用いることにより、TFE共重合体は耐熱性を維持できる。
なお、高RR比とは、RR比が1000以上のことをいう。
式(I)中のnは、2〜6の整数であり、TFE共重合体のペースト押出成形性がより優れる点から、4〜6の整数が好ましく、4が特に好ましい。nが4の場合のモノマー(I)は、PFBEである。
モノマー(I)は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
TFE共重合体中の単位(I)の含有量は、TFE単位の含有量を100mol%とした場合に、0.009〜0.011mol%であり、0.010〜0.011mol%が好ましく、0.010mol%が特に好ましい。これによりTFE共重合体は、ペースト押出成形性に優れ、高速、かつ、高RR比でペースト押出成形を行った際にも、低い押出圧力で押出成形を安定に行って、表面平滑性に優れる成形物を製造できる。そのため、生産性と品質の維持とを両立できる。また、TFE共重合体は耐熱性を備え、たとえば自動車等の車両に使用される電線の被覆材料等、高い耐熱性が要求される用途にも好適に使用できる。
単位(I)の含有量が上記範囲を超えると、得られるTFE共重合体の一次粒子径が小さくなる。その結果、ペースト押出成形性が低下して押出圧力が高くなり、押出成形を安定に行うことが困難となり、得られる成形物の表面に波打ちが認められる等、表面平滑性が低下しやすい。また、単位(I)は、水素原子を有する単位であるため、その含有量が過度に増加すると、TFE共重合体の耐熱性が低下することが懸念される。
単位(I)の含有量が上記範囲の下限値未満では、モノマー(I)を共重合させることによる効果が得られ難く、一次粒子の粒径がばらつき、粒度分布がブロードになると考えられ、押出成形の安定性が不充分となり、表面平滑性が低下する。また、得られるTFE共重合体中に白点が生じ、それにより、成形物の透明性も低下し、成形物外観が悪化しやすい。
TFE共重合体の単位(I)の含有量は、後述のように、TFE共重合体の赤外吸収スペクトル分析により求められる。
TFE共重合体のSSGは、2.140〜2.170であり、2.150〜2.170が好ましく、2.150〜2.160が特に好ましい。SSGは分子量の指標であり、SSGが大きいほど、分子量が小さいことを意味する。SSGが上記範囲の下限値未満では、ペースト押出成形性が低下して押出圧力が高くなり、押出成形を安定に行うことが困難となり、得られる成形物の表面に波打ちが認められる等、表面平滑性が低下しやすい。SSGが上記範囲の上限値を超えると、たとえば電線被覆材料として用いた場合に、被覆と芯線との密着性が低下し、後述の電線引き抜き強度が低下する。
TFE共重合体のSSGは、TFE共重合体を製造する際の重合条件(重合圧力等。)を制御することで、上記範囲内に調整できる。また、詳しくは後述するように、TFE共重合体を重合する際に、重合に使用するTFEの全量の80質量%を重合反応容器に投入した以降に、連鎖移動剤を重合反応容器に添加する方法によれば、得られるTFE共重合体のSSGを上記上限値以下に制御しやすい。
TFE共重合体のSSGは、ASTM D4895−04に準拠して測定する。
TFE共重合体の下記測定方法によるペースト押出圧力は20〜40MPaであり、25〜40MPaが好ましく、25〜32MPaが特に好ましい。ペースト押出圧力が上記範囲の下限値未満であると、ペースト押出成形により得られる成形物にミクロボイドが発生したり、成形物の機械的性質が低下したりする。ペースト押出圧力が上記範囲を超えると、ペースト押出成形を安定に行うことが困難となり、得られる成形物の表面に波打ちが認められる等、表面平滑性が低下しやすい。
[ペースト押出圧力の測定方法]
(1)試料226.8gと、イソパラフィン炭化水素100%からなり、初留点180℃、乾点188℃、引火点54℃、密度(15℃)0.758g/cm、KB(カウリ・ブタノール値)26、アニリン点85℃、芳香族含有量<0.01質量%である潤滑剤43.2gとをガラス瓶中で混合し、25℃で8時間熟成する。
なお、各値は、下記規格に準拠して測定した値である。
初留点:JIS−K−2254
乾点:JIS−K−2254
引火点:ASTM D−56
密度:JIS−K−2249
KB値:ASTM D1133−61
アニリン点:JIS−K−2256
芳香族含有量:JIS−K−2536
(2)内径39.4mmのシリンダー(a)に、上記(1)で熟成した混合物を充填し、シリンダー(a)に挿入したピストンに55kgf(539N)の荷重を加え、2分間保持する。
(3)シリンダー(a)から上記混合物を取出し、シリンダー(b)(内径40.3mm)付の押出ダイ(ダイ角:20°、オリフィスの直径:1.274mm)に入れて、ラムスピード20mm/分、ダイ温度40℃で上記混合物を押出し、ひも状物(ビード)を得る。なお、リダクション比(RR比)は1000である。
シリンダー(a)からの混合物の取出しは、たとえばコルクスクリューが有するようなスクリュー棒(ステンレス製)を備えた治具を用い、混合物をシリンダー(a)の上部から引き抜く方法で行った。
(4)押出後半において、押出圧力が平衡状態になった際の押出力をシリンダー(b)の内径基準の断面積で除した値をペースト押出圧力(MPa)とする。
上記(1)で使用する潤滑剤としては、「アイソパー(登録商標)H」(Exxon社製、cas番号:64742−48−9)が挙げられる。
TFE共重合体の平均一次粒子径は、0.10〜0.50μmの範囲が好ましく、0.20〜0.25μmの範囲が特に好ましい。平均一次粒子径が上記範囲の下限値以上であると、低い押出圧力でペースト押出成形でき、表面に波打ち等のない、表面平滑性に優れた成形物が得られやすい。平均一次粒子径が上記範囲の上限値以下であると、押出時の粒子間の空隙が少なくなるため、押出安定性に優れ、結果として表面平滑性に優れた成形物が得られやすい。
TFE共重合体の平均一次粒子径は、試料として、TFE共重合体の乳化分散液を用い、レーザー散乱法粒子径分布分析計により測定する。
後述の方法で測定されるTFE共重合体の電線引き抜き強度は、20〜40Nの範囲が好ましく、25〜35Nが好ましい。電線引き抜き強度が上記範囲内であると、電線の被覆を形成した場合に、TFE共重合体を用いてなる被覆と芯線の密着性に優れる。
電線引き抜き強度の測定方法は、実施例にて説明する。
TFE共重合体の熱不安定指数(以下、「TII」とも記す。)は、0〜10の範囲が好ましく、0〜8がより好ましい。TIIは耐熱性の指標であり、TIIが小さいほど、耐熱性に優れることを意味する。TIIが上記範囲内であると、たとえば自動車等の車両に使用される電線の被覆等、高い耐熱性が要求される用途にも好適に使用できる。
TFE共重合体のTIIは、ASTM D4895−04に準拠して測定する。
<ペースト押出成形用TFE共重合体の製造方法>
本発明のTFE共重合体は、TFEとモノマー(I)とを連鎖移動剤の非存在下で重合する工程(c)と、該工程(c)の後に、TFEのみを連鎖移動剤の存在下で重合する工程(s)とを有する方法により製造できる。
工程(c)および工程(s)において、TFE共重合体の重合に使用するTFEは、連続的または断続的に重合反応容器に投入する。連鎖移動剤は、詳しくは後述するように、TFE共重合体の重合に使用するTFEの全量の80質量%を重合反応容器に投入した以降に、添加する。
モノマー(I)は、詳しくは後述のとおり、初期一括添加が好ましい。モノマー(I)は重合反応性が高いため、工程(c)の途中までに、その全量がTFEと共重合する。そのため、工程(c)には、連鎖移動剤の非存在下でTFEとモノマー(I)とが共重合する段階(m1)と、該段階(m1)の後に、連鎖移動剤の非存在下でTFEのみが重合する段階(m2)とが存在する。
工程(c)および工程(s)は、同一の重合反応容器内で連続的に行う。
TFE共重合体の重合方法としては、乳化重合法が好ましい。乳化重合法は、重合反応時に、水性媒体、乳化剤、安定化助剤および重合開始剤等を用いる方法である。
乳化剤としては、たとえば下記一般式(II)で表される含フッ素系乳化剤が好ましい。乳化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
XCFCF(O)CFCFOCFCOOA (II)
式中、Xは水素原子またはフッ素原子、Aは水素原子、アルカリ金属またはNHであり、mは0〜1の整数である。
一般式(II)で表される含フッ素系乳化剤としては、従来使用されてきたパーフルオロオクタン酸塩類と比較して生物蓄積性が低く、環境負荷が低い、CFCFOCFCFOCFCOONH(以下、「EEA」とも記す。)が挙げられる。
乳化剤の使用量は、重合に使用するTFEの全量に対して、質量基準で、1500〜20000ppmが好ましく、さらに好ましくは5000〜15000ppmが好ましく、7000〜12000ppmが特に好ましい。乳化剤の使用量が多すぎると一次粒子が棒状形状を呈するようになり、水性乳化液が不安定となる。
安定化助剤としては、パラフィンワックス、フッ素系オイル、フッ素系溶剤、シリコーンオイル等が好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。安定化助剤は、1種を単独で使用しても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
パラフィンワックスの性状としては、室温で液体でも、半固体でも、固体であってもよいが、炭素数12以上の飽和炭化水素からなるパラフィンワックスが好ましい。パラフィンワックスの融点は、通常40〜65℃が好ましく、50〜65℃がより好ましい。
安定化助剤の使用量は、重合反応容器に仕込んだ水の質量を100質量%としたときに、0.1〜12質量%が好ましく、0.1〜8質量%がより好ましい。
重合開始剤としては、水溶性ラジカル開始剤、水溶性酸化還元系触媒等が好ましい。水溶性ラジカル開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、ジコハク酸過酸化物、ビスグルタル酸過酸化物、tert−ブチルヒドロパーオキシド等の水溶性有機過酸化物が好ましい。
重合開始剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、過硫酸塩とジコハク酸過酸化物の混合系が好ましい。
重合開始剤の使用量は、重合に使用するTFEの全量を100質量%としたときに、0.01〜0.20質量%が好ましく、0.01〜0.15質量%がより好ましい。
(工程(c))
工程(c)では、TFEとモノマー(I)とを連鎖移動剤の非存在下で重合する。モノマー(I)は、該工程(c)の段階(m1)において、その全量(仕込み量の全量)がTFEと共重合する。これにより、工程(c)の段階(m1)で、TFE単位と単位(I)とからなるTFE共重合体により、粒子のコアが形成される。段階(m1)の後の段階(m2)では、TFEのみが連鎖移動剤の非存在下で重合することにより、段階(m1)で形成されたコアの外側に、コアと同程度の分子量を有し、TFE単位のみからなるPTFE層が形成される。
工程(c)では、連鎖移動剤を用いない。連鎖移動剤を用いて重合を行うと、一般に、生成する重合体の分子量が小さくなる。工程(c)では、連鎖移動剤の非存在下で共重合を行うことにより、コアの分子量の低下を抑制でき、最終的に得られるTFE共重合体のSSGを上記範囲の上限値以下に制御できる。そのため、得られたTFE共重合体を用いて電線の被覆を形成した場合に、被覆と芯線との密着性が優れる。
仮に、連鎖移動剤の存在下で共重合すると、得られたTFE共重合体は、粒子全体が低分子量化し、芯線との密着性が低下する。また、過度にペースト押出成形時の押出圧力が下がり、成形物におけるミクロボイドの発生、成形物の機械的性質の低下が生じる懸念がある。
モノマー(I)の添加方法としては、重合反応を開始する前に、その全量を重合反応容器に仕込んでおく、初期一括添加が好ましい。初期一括添加することにより、モノマー(I)の全量が、工程(c)でTFEと共重合しやすく、コアのみがモノマー(I)で変性される。コアのみが変性されて得られるTFE共重合体は、一次粒子の粒径が均一になり、異形粒子の生成も抑制され、ペースト押出成形性に優れる。
仮に、モノマー(I)を重合反応の開始前だけでなく、重合反応の開始後にも逐次添加すると、最終的に得られるTFE共重合体の一次粒子径が小さくなったり、異形粒子が生成したりしやすく、その結果、ペースト押出成形性が低下し、上記測定方法によるペースト押出圧力が上記範囲の上限値を超えやすい。このようにして得られたTFE共重合体をペースト押出成形すると、得られる成形物の表面に波打ちが認められる等、表面平滑性が低下しやすい。
TFEは、常法により、重合反応容器に添加する。具体的には、重合圧力が所定の圧力となるように、連続的または断続的に添加する。
(工程(s))
工程(s)は、TFEのみを連鎖移動剤の存在下で重合する工程である。連鎖移動剤の存在下で重合を行うことにより、工程(c)で形成されたコアおよびPTFE層の外側に、コアおよびPTFE層よりも分子量の低いシェルを形成でき、ペースト押出成形性に優れるTFE共重合体を製造できる。仮に、工程(s)において、モノマー(I)を共重合した場合、ペースト押出成形時、特に電線被覆等の高速成形時における成形物の表面平滑性が損なわれる等の可能性がある。また、水素原子を分子内に有するモノマー(I)の過剰添加を抑制できるため、耐熱性も維持できる。
工程(s)は、重合に使用するTFEの全量の80質量%を重合反応容器に投入した以降に、連鎖移動剤を重合反応容器に添加することにより行う。
連鎖移動剤は、重合に使用するTFEの全量の80〜95質量%を重合反応容器に投入した時点で添加することが好ましく、85〜95質量%を重合反応容器に投入した時点で添加することがより好ましく、85〜90質量%を重合反応容器に投入した時点で添加することが特に好ましく、88〜90質量%を重合反応容器に投入した時点で添加することが最も好ましい。
なお、「重合に使用するTFEの全量の80〜95質量%を重合反応容器に投入した時点」とは、具体的には、「重合に使用するTFEの全量の80質量%を重合反応容器に投入した時点以降から、重合に使用するTFEの全量の95質量%超を重合反応容器に投入する前の時点まで」である。
連鎖移動剤は、一括添加、連続添加、断続添加のいずれにより添加してもよい。連鎖移動剤を連続添加または断続添加する場合には、少なくとも最初の添加が、上記範囲内の割合のTFEを重合反応容器に投入した時点で行われ、すなわち、上記範囲内の割合のTFEを重合反応容器に投入した時点で、連鎖移動剤の添加が開始され、かつ、TFEの全量が重合してしまう前までに、連鎖移動剤の全量の添加が終了することが必要である。たとえば、連鎖移動剤は、重合に使用するTFEの全量の100質量%を重合反応容器に投入した時点で添加してもよいが、投入されたTFEの全量が重合する前までに、連鎖移動剤の全量の添加が終了することが必要である。
重合の進行にともなって、より分子量を低減でき、ペースト押出成形性に優れるTFE共重合体を製造できる点からは、連続添加が好ましい。
上記範囲の下限値以上の割合のTFEを投入した時点で、連鎖移動剤を添加すると、TFE共重合体の粒子のより外側部分のみを低分子量化できる。より外側部分のみが低分子量化されているため、ペースト押出成形時の押出圧力が下がり過ぎることがなく、押出圧力が低すぎることによる、成形物におけるミクロボイドの発生、成形物の機械的性質の低下を抑制できる。また、シェルよりも内側に位置する、分子量が高い部分(コアおよびPTFE層)の割合が大きくなるため、TFE共重合体のSSGが大きくなり過ぎない。そのため、芯線との密着性に優れる被覆を形成でき、耐熱性にも優れるTFE共重合体が得られる。上記範囲の上限値以下の割合のTFEを投入した時点で、連鎖移動剤を添加すると、シェルを充分に低分子量化できる。連続添加または断続添加の場合、連鎖移動剤の全量の添加が、重合に使用するTFEの全量の95質量%超を重合反応容器に投入する前の時点までに完了することが、シェルの低分子量化を充分に行う点から、好ましい。
連鎖移動剤としては、メタノールを始めとした水溶性有機化合物、メタン、エタン、プロパン等のアルカン、水素、各種ハロゲン化炭化水素などが挙げられ、特にメタノールが好ましい。
連鎖移動剤の添加量は、重合に使用するTFEの全量を100質量%とした場合に、0.002〜0.3質量%が好ましく、0.005〜0.3質量%がより好ましく、0.006〜0.25質量%が特に好ましい。連鎖移動剤の添加量が上記範囲の下限値以上であれば、シェルを充分に低分子量化できる。上記範囲の上限値以下であれば、粒子のより外側部分のみを低分子量化でき、ペースト押出成形時の押出圧力が下がり過ぎることがなく、押出圧力が低すぎることによる、得られる成形物におけるミクロボイドの発生、成形物の機械的性質の低下を抑制できる。
(モノマーの仕込み量)
TFEとモノマー(I)のトータルの仕込み量は、得られるTFE共重合体におけるTFE単位の含有量を100mol%とした場合に、単位(I)の含有量が上記範囲内となるように決定する。具体的には、仕込み比(モル比)として、TFE:モノマー(I)を100:0.009〜0.011とすることが好ましく、100:0.010〜0.011とすることがより好ましく、100:0.010とすることが特に好ましい。
(重合条件)
重合条件としては、工程(c)〜工程(s)を通じて、重合温度は10〜95℃が好ましく、重合圧力は0.3〜4.0MPaが好ましい。工程(c)および工程(s)を合せた全重合時間は100〜520分が好ましい。
乳化重合により得られる乳化分散液中のTFE共重合体の濃度は、10〜45質量%が好ましい。TFE共重合体の濃度が過度に低いと、TFE共重合体を凝析させることが困難であり、過度に高いと、凝析されなかったTFE共重合体が残り、凝析液が白濁する。TFE共重合体の濃度は、15〜45質量%がより好ましく、20〜43質量%がさらに好ましい。
(凝析)
乳化重合で得られた乳化分散液からのファインパウダーの取得は、公知の方法で行える。
すなわち、TFE共重合体を含む乳化分散液のTFE共重合体の濃度が10〜20質量%になるように、水で希釈するなどして調整した後、激しく撹拌して凝集させる。この際、必要に応じてpHを調節してもよい。また、電解質や水溶性の有機溶剤などの凝集助剤を加えて行ってもよい。
その後、適度な撹拌を行うことによって、凝集した重合体微粒子を水から分離し、得られた湿潤粉末(ウェットファインパウダー)を必要に応じて造粒および整粒し、次いで乾燥する。これによりTFE共重合体のファインパウダーが得られる。
乾燥は、湿潤粉末をあまり流動させない状態、好ましくは静置して行う。乾燥方法としては、真空乾燥、高周波乾燥、熱風乾燥が挙げられる。
TFE共重合体のファインパウダーは、通常、小さな剪断力でも簡単にフィブリル化して、元の結晶構造を失う性質を有している。特に高い温度でのファインパウダー同士の接触および摩擦は、フィブリル化を進行させる傾向があり、フィブリル化の進行は、ペースト押出成形時の押出圧力の増加を防止する観点からは、好ましくない。そのため、乾燥は、10〜250℃、特には100〜200℃で行うことが好ましい。
<成形物>
本発明の成形物は、TFE共重合体のファインパウダーをペースト押出成形することにより得られる。
ペースト押出成形とは、TFE共重合体のファインパウダーを潤滑剤と混合し、TFE共重合体のファインパウダーに流動性を持たせ、これを押出成形することにより、たとえばフィルム、チューブ等の成形物を成形する方法である。
潤滑剤の混合割合は、TFE共重合体のファインパウダーが流動性を有するように適宜選定すればよく、たとえば、TFE共重合体のファインパウダーと潤滑剤の合計量を100質量%とした場合、10〜30質量%であることが好ましく、15〜20質量%が特に好ましい。
潤滑剤としては、ナフサ、乾点が100℃以上の石油系炭化水素が好ましい。
混合物には、着色を目的として顔料等の添加剤を添加してもよく、強度および導電性等の付与を目的として各種充填剤を添加してもよい。
押出成形後には、通常、公知の方法で、潤滑剤を除去する除去工程と、焼成工程とを行う。
ペースト押出成形により得られる成形物の形状としては、たとえばチューブ状、シート状、フィルム状、繊維状などの種々の形状が挙げられる。用途としては、チューブ、電線の被覆、シール材、多孔膜、フィルターなどが挙げられる。特に、本発明のTFE共重合体は、電線の被覆を形成する電線被覆材料に好適である。電線は、本発明のTFE共重合体を用いたペースト押出成形により、芯線の外周に被覆を形成する方法で製造できる。
以下に、実施例および比較例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
各種測定方法および評価方法は下記のとおりである。
(A)TFE共重合体の平均一次粒子径(μm):
TFE共重合体の乳化分散液を試料とし、レーザー散乱法粒子径分布分析計(堀場製作所製、商品名「LA−920」)を用いて測定した。
(B)標準比重(SSG):
ASTM D4895−04に準拠して測定した。
12.0gの試料(ファインパウダー)を計量し、内径28.6mmの円筒金型で34.5MPaで2分間保持する。これを290℃のオーブンへ入れて120℃/hrで昇温する。380℃で30分間保持した後、60℃/hrで降温して294℃で24分間保持する。23℃のデシケーター中で12時間保持した後、23℃での成形物の水に対する比重値を測定し、これを標準比重とする。SSGの値が小さいほど、分子量が大きいことを示す。
(C)熱不安定指数(TII):
ASTM D4895−04に準拠して測定した。拡張比重(以下、「ESG」と記す。)のサンプル調整は、380℃での保持時間を360分間とする以外は、上記SSGと同様に行った。
TII=(ESG−SSG)×1000で算出する。
TIIの値が小さいほど、380℃での保持時間が長くなった場合、分子量が変化しないことを示す。すなわち、耐熱性に優れることを示す。
(D)ペースト押出圧力(MPa):
先に説明した方法で測定した。
(E)透明性および表面平滑性(成形性):
(1)評価用試料の作製
試料(ファインパウダー)の700gに、18質量%の割合(試料と潤滑剤との合計を100質量%とする。)で、潤滑剤である「アイソパー(登録商標)H」(Exxon社製)を加え、100rpmで30分間回転させることにより、混合物を得た。該混合物を室温で8時間熟成させた。熟成後の混合物を予備成形し、芯線(ワイヤー(ニッケルメッキされている0.202mmのストランド19本からなり、外径が1.01mmのAWG20))に対して、押出成形機を用いてRR比が1200の条件下に連続的に被覆した。それを250℃の潤滑剤除去用オーブンに通した後、425℃オーブンで焼成し、室温に急冷し、評価用試料とした。
(2)透明性の評価
得られた評価用試料の被覆を目視観察し、以下の「A」、「B」、「C」の3段階で評価し、表2に記載した。
A:被覆が透明で、ワイヤーの原色が見える外観。
C:被覆が乳白色であり、ワイヤーの原色に白味が加わり、元々の原色を確認できない外観。
B:上記「A」と「C」の中間的な状況と判断される外観、または、被覆が乳白色と透明色の混ざった斑状の外観。
(3)表面平滑性の評価
得られた評価用試料を片方の手の親指と人差し指で軽く挟持し、もう一方の手で該評価用試料を30cm程度引張って上記親指と人差し指の間を通過させ、通過させた際の上記親指と人差し指の感触(凹凸感)から、評価用試料の被覆の表面平滑性を以下の「A」、「B」、「C」の3段階で評価し、表2に記載した。
A:凹凸感が感じられない。
B:1〜5か所の凹凸を感じる。
C:6か所以上の凹凸を感じる。
(F)コモノマーに基づく単位の含有量(mol%):
(1)測定用試料の作製
乾燥した試料(ファインパウダー)の1.75gを直径2.85cmの円筒型中にいれ、30秒間圧力をかけて次第に増加させて、最後の圧力が約1470kg/cm(約144MPa)になるようにし、この最終圧力をかけたまま2分間保持し、測定用試料を得た。測定用試料の赤外線スペクトルを測定した。
(2)コモノマーがPFBEの場合
以下の式よりPFBEに基づく単位の含有量を質量基準で求めた。その後、モル基準に換算した。
PFBE含有量(質量%)=(Sa/Aa)×(As/Ss)×0.03
Sa:試料の波長11.36μm付近の吸光度のピークの面積
Aa:試料の波長10.7μmにおける吸光度
Ss:標準試料(PFBE含有量既知)の波長11.36μm付近の吸光度のピーク面積
As:標準試料の波長10.7μmにおける吸光度
(3)コモノマーがHFPの場合
以下の式よりHFPに基づく単位の含有量を質量基準で求めた。その後、モル基準に換算した。
HFP含有量(質量%)=(A1/A2)×(AS2/AS1)×0.126
A1:試料の波長10.18μmにおける吸光度
A2:試料の波長10.7μmにおける吸光度
AS1:標準試料(HFP含有量既知)の波長10.18μmにおける吸光度
AS2:標準試料の10.7μmにおける吸光度
(4)コモノマーがCTFEの場合
CTFEに基づく単位の含有量は、特公平4−3765号公報記載の方法に準じて、957cm−1における吸光度/2360cm−1における吸光度の比の値に0.58を乗じて、質量基準で求め、その後、モル基準に換算した。
(G)電線引き抜き強度:
(1)電線の作製
ふるいがけしたファインパウダーの700gをガラス製ボトルに入れた。該ボトルに、後述する押出条件での押出圧力が27MPaとなるようにナフサを133〜164g(ファインパウダーとナフサの合計を100質量%とした場合、16〜19質量%に相当。)注ぎ込んで蓋をし、これをボールミルに乗せて30分間攪拌し、混合物を得た。
次に予備成形および押出加工を行うに先立って、上記混合物を24℃で8時間熟成させた。
熟成させた混合物を予備成形してロッドを生じさせた後、このロッドをラム式のペースト押出成形機のバレルに仕込み、バレルをマスターダイスで閉じた。
押出機のラムにより、上記ロッド(ペースト)を押出機の先端部のダイス(内径2.0mm)に通し、ラム速度3.0mm/分で、芯線(ワイヤー)に面するように押出し、連続的に被覆した。ワイヤーとしては、ニッケルメッキされている外径0.202mmのストランド19本からなり、外径が1.01mmのAWG20規格のものを用いた。
RR比は、押出機のラム部面積S1と先端部吐出面積S2との比で表わされるが、電線押出の場合、ロッドの中心部にワイヤーが通るため、S1、S2ともに、外円の面積からワイヤー部分の円の面積を差し引いたドーナツ型の部分の面積となる。S1の外円の直径は60.1mm、S1の内円(ワイヤー部分)の直径は12.0mmである。S2の外円の直径は2.0mm、S2の内円(ワイヤー部分)の直径は1.01mmである。これらの値からRRを算出するとRR=S1/S2=1164となる。
その後、長さ1.7mのナフサ除去用オーブンに通した後、長さ1.7mの焼成用オーブンに通した。各オーブンに通す際の速度(ワイヤー速度)は、2.5m/分とした。
このようにして得られた電線を室温で冷却し、先端から25m以降の部分から、長さ140mmの電線を3本切り出した。電線の被覆の厚みは、約500μmとした。
ナフサ除去用オーブンは、140℃、160℃、210℃の各温度ゾーンを有し、焼成用オーブンは、340℃、360℃、420℃の各温度ゾーンを有する。
(2)測定方法
上記(1)で切り出した長さ140mmの3本の電線のそれぞれについて、一方の端部から40mmまでの部分の被覆を剥がし、40mmの長さのワイヤーを露出させ、3本の測定用試料を作製した。そして、引張試験機(ASTM D638に記載されている装置)を用いて、クロスヘッドの速度50mm/minの条件において、測定用試料に対して、ワイヤーを被覆から引き抜く力を加え、その際の応力−ひずみ曲線を得た。そして、該曲線における応力のピーク値を求めた。なお、測定は3本の測定用試料についてそれぞれ行い、3本について得られたピーク値の平均値を電線引き抜き強度とし、表2に記載した。
具体的には、下記のように行った。
図1(a)に示すように、クランプ取付板11と測定試料保持板12とを有する金属製の測定補助板10を用意した。クランプ取付板11に対して、測定試料保持板12は、垂直配置されている。
測定試料保持板12には、測定用試料のワイヤーは通ることができ、被覆が形成された部分は通ることのできないサイズの貫通孔13を形成した。該貫通孔13の内径は、ワイヤーの直径の1.05〜1.1倍とした。
ついで、図1(b)に示すように、上記測定補助板10を用いて、測定用試料20を引張試験機にセットした。
すなわち、測定補助板10を、クランプ取付板11が上方、測定試料保持板12が下方となるように位置させ、測定用試料20のワイヤー21の部分を貫通孔13の上方から下方に通した。これにより、測定用試料20において被覆22が形成された部分は、貫通孔13より上方に位置する。ついで、貫通孔13から下方に出ているワイヤー21を引張試験機の下部クランプ31で挟み、一方、測定補助板10のクランプ取付部11を引張試験機の上部クランプ32で挟み、図1(b)のようにセットした。なお、下部のクランプ31でワイヤー21を挟む時には、ワイヤー21を潰さないように注意を払った。
そして、張力モードにて、クロスヘッドの速度を上述のとおり50mm/minに設定して、測定用試料に対して、ワイヤーを被覆から引き抜く力を加え、応力−ひずみ曲線を記録した。
なお、測定補助板10としては、このような測定の間に変形せず、測定用試料を安定に保持できるものを使用した。
(実施例1)
邪魔板、撹拌機を備えた、100Lのステンレス鋼製オートクレーブに、乳化剤として旭硝子(株)製のEEAの4g、安定化助剤としてパラフィンワックスの570g、脱イオン水の60リットルを仕込んだ。オートクレーブを窒素置換した後減圧にして、モノマー(I)としてPFBE5.6gを仕込んだ。更にTFEで0.15MPaまで加圧し、撹拌しながら70℃に昇温した。次いでTFEを1.86MPaまで昇圧し、重合開始剤としてジコハク酸過酸化物の5.0gと過硫酸アンモニウムの0.21gを注入した。なお、ジコハク酸過酸化物としてはその溶液(80質量%濃度)を用い、ジコハク酸過酸化物の正味量として5.0gを添加した。0.02MPaの内圧降下を確認の後、内圧を1.86MPaに保つようにTFEを添加しながら重合を進行させた。重合初期ではPFBEの重合が進行し、内圧の低下がほとんど見られず、TFEの連続的な添加に至るまで22分の時間を要した。
本初期反応完了後、TFEを2.6kg添加したところで、EEA185gを重合槽に追加添加し、反応を継続させた。TFEを23.1kgまで添加したところで、一旦TFEの添加を停止し、重合槽内圧が0.40MPaとなるまで重合槽内のTFEを消費させた。
重合槽内圧が0.40MPaに低下したところで、過硫酸アンモニウムの6.3gと連鎖移動剤としてメタノールの8.4gを10分間かけて連続的に重合槽に添加した。また、メタノールの添加を開始後、TFEの添加も開始し、メタノールを添加している間も、TFEの添加は継続した。その後は内圧を0.40MPaに保つようにTFEを添加しながら重合を進行させた。また、TFEの添加量が25.7kgになったところで反応を終了させた。重合時間は3時間21分であった。
表1に実施例1の実施条件を示す。
なお、メタノールの添加は、TFEの全量25.7kgのうち、23.1kgを投入した時点で行った。すなわち、TFEの全量の90質量%を重合反応容器に投入した時点で、メタノールを添加した。表1には「添加時期」として記載する。
得られたTFE共重合体の乳化分散液を冷却し、上澄みのパラフィンワックスを除去した。乳化分散液の固形分濃度(TFE共重合体の濃度)は約29質量%であった。また、乳化分散液中のTFE共重合体の平均一次粒子径を表2に示す。
該乳化分散液を純水で固形分濃度12質量%に希釈し、30℃に調整して撹拌し、ウエットのファインパウダーを取得、乾燥した。
得られたTFE共重合体ファインパウダーのSSG、TII、ペースト押出圧力、電線引き抜き強度を表2に示す。実施例1のファインパウダーは、耐熱性、電線引き抜き強度、表面平滑性、透明性に優れ、耐熱電線の被覆に必要とされる物性をバランスよく高レベルで有していた。
(実施例2)
PFBEの仕込み量を6.2gとする以外は、実施例1にしたがって重合反応を進行させた。重合初期でのPFBEを消費するまでの初期反応時間には28分要した。また、重合時間は3時間40分であった。表1に実施例2の実施条件を示す。
得られたTFE共重合体の乳化分散液を冷却し、上澄みのパラフィンワックスを除去した。乳化分散液の固形分濃度は約28質量%であった。また、乳化分散液中のTFE共重合体の平均一次粒子径を表2に示す。
該乳化分散液を純水で固形分濃度12質量%に希釈し、30℃に調整して撹拌し、ウエットのファインパウダーを取得、乾燥した。
得られたTFE共重合体ファインパウダーのSSG、TII、ペースト押出圧力、電線引き抜き強度を表2に示す。実施例2のファインパウダーは、耐熱性、電線引き抜き強度、表面平滑性、透明性に優れ、耐熱電線の被覆に必要とされる物性をバランスよく高レベルで有していた。
(実施例3)
PFBEの仕込み量を7.1gとする以外は、実施例1にしたがって重合反応を進行させた。重合初期でのPFBEを消費するまでの初期反応時間は28分の時間を要した。また、重合時間は3時間47分であった。表1に実施例3の実施条件を示す。
得られたTFE共重合体の乳化分散液を冷却し、上澄みのパラフィンワックスを除去した。乳化分散液の固形分濃度は約29質量%であった。また、乳化分散液中のTFE共重合体の平均一次粒子径を表2に示す。
該乳化分散液を純水で固形分濃度12質量%に希釈し、30℃に調整して撹拌し、ウエットのファインパウダーを取得、乾燥した。
得られたTFE共重合体ファインパウダーのSSG、TII、ペースト押出圧力、電線引き抜き強度を表2に示す。実施例3のファインパウダーは、耐熱性、電線引き抜き強度、表面平滑性、透明性に優れ、耐熱電線の被覆に必要とされる物性をバランスよく高レベルで有していた。
(実施例4)
邪魔板、撹拌機を備えた、100Lのステンレス鋼製オートクレーブに、乳化剤として実施例1で使用したものと同じEEAの118g、安定化助剤としてパラフィンワックスの570g、脱イオン水の60リットルを仕込んだ。オートクレーブを窒素置換した後減圧にして、モノマー(I)としてパーフルオロヘキシルエチレン8.7gを仕込んだ。更にTFEで0.15MPaまで加圧し、撹拌しながら70℃に昇温した。次いでTFEを1.86MPaまで昇圧し、ジコハク酸過酸化物の5.0gと過硫酸アンモニウムの0.21gを注入した。なお、ジコハク酸過酸化物としてはその溶液(80質量%濃度)を用い、ジコハク酸過酸化物の正味量として5.0gを添加した。0.02MPaの内圧降下を確認の後、内圧を1.86MPaに保つようにTFEを添加しながら重合を進行させた。重合初期ではパーフルオロヘキシルエチレンの重合が進行し、内圧の低下がほとんど見られず、TFEの連続的な添加に至るまで9分の時間を要した。
本初期反応完了後、TFEを2.6kg添加したところで、EEA168gを重合槽に追加添加し、反応を継続させた。その後、TFEを21.5kgまで添加したところで、一旦TFEの添加を停止し、重合槽内圧が0.77MPaとなるまで重合槽内のTFEを消費させた。重合槽内圧が0.77MPaに低下したところで、過硫酸アンモニウムの6.3gと連鎖移動剤としてメタノールの8.4gを10分間かけて連続的に重合槽に添加した。この間も、TFEの添加は継続した。その後は内圧を0.77MPaに保つようにTFEを添加しながら重合を進行させた。TFEの添加量が25.7kgになったところで反応を終了させた。重合時間は2時間8分であった。
表1に実施例4の実施条件を示す。
なお、メタノールの添加は、TFEの全量25.7kgのうち、21.5kgを投入した時点で行った。すなわち、TFEの全量の84質量%を重合反応容器に投入した時点で、メタノールを添加した。表1には「添加時期」として記載する。
得られたTFE共重合体の乳化分散液を冷却し、上澄みのパラフィンワックスを除去した。乳化分散液の固形分濃度は約30質量%であった。また、乳化分散液中のTFE共重合体の平均一次粒子径を表2に示す。
該乳化分散液を純水で濃度12質量%に希釈し、30℃に調整して撹拌し、ウエットのファインパウダーを取得、乾燥した。
得られたTFE共重合体ファインパウダーのSSG、TII、ペースト押出圧力、電線引き抜き強度を表2に示す。実施例4のファインパウダーは、耐熱性、電線引き抜き強度、表面平滑性、透明性に優れ、耐熱電線の被覆に必要とされる物性をバランスよく高レベルで有していた。
(比較例1)
PFBEの仕込み量を12.4gとする以外は、実施例1にしたがって重合反応を進行させた。重合初期でのPFBEを消費するまでの初期反応時間は50分の時間を要した。また、重合時間は4時間10分であった。表1に比較例1の実施条件を示す。
得られたTFE共重合体の乳化分散液を冷却し、上澄みのパラフィンワックスを除去した。乳化分散液の固形分濃度は約29質量%であった。また、乳化分散液中のTFE共重合体の平均一次粒子径を表2に示す。
該乳化分散液を純水で固形分濃度12質量%に希釈し、30℃に調整して撹拌し、ウエットのファインパウダーを取得、乾燥した。
得られたTFE共重合体ファインパウダーのSSG、TII、ペースト押出圧力、電線引き抜き強度を表2に示す。比較例1のファインパウダーは、コア変性量が大きく、そのため、平均一次粒子径が小さく、ペースト押出圧力が高く、電線成形時の押出安定性に劣った。そのため、表面平滑性が劣り、透明性も劣った。
(比較例2)
PFBEの仕込み量を5.0gとする以外は、実施例1にしたがって重合反応を進行させた。重合初期でのPFBEを消費するまでの初期反応時間は18分の時間を要した。また、重合時間は2時間53分であった。表1に比較例2の実施条件を示す。
得られたTFE共重合体の乳化分散液を冷却し、上澄みのパラフィンワックスを除去した。乳化分散液の固形分濃度は約29質量%であった。また、乳化分散液中のTFE共重合体の平均一次粒子径を表2に示す。
該乳化分散液を純水で固形分濃度12質量%に希釈し、30℃に調整して撹拌し、ウエットのファインパウダーを取得、乾燥した。
得られたTFE共重合体ファインパウダーのSSG、TII、ペースト押出圧力、電線引き抜き強度を表2に示す。比較例2のファインパウダーは、コアの変性が不充分であるため、電線成形時の押出安定性が悪く、表面平滑性が劣った。また、白点クラックが生じ、透明性も劣った。
(比較例3)
邪魔板、撹拌機を備えた、100Lのステンレス鋼製オートクレーブに、乳化剤としてパーフルオロオクタン酸アンモニウム(以下、「APFO」とも記す。)の8g、安定化助剤としてパラフィンワックスの570g、脱イオン水の60リットルを仕込んだ。オートクレーブを窒素置換した後減圧にして、PFBE15gを仕込んだ。更にTFEで0.15MPaまで加圧し、撹拌しながら80℃に昇温した。次いでTFEを1.96MPaまで昇圧し、重合開始剤としてジコハク酸過酸化物の12.8gと過硫酸アンモニウムの0.64gを注入した。なお、ここでジコハク酸過酸化物としてはその溶液(80質量%濃度)を用い、ジコハク酸過酸化物の正味量として12.8gを添加した。0.02MPaの内圧降下を確認の後、TFEで内圧を1.96MPaに維持し、TFEの添加量が0.2kgの時点から、APFOの77gを約50分かけて添加した。オートクレーブ内圧は、重合進行と共に、1.10MPaまで下げた。
TFEの添加量が27kgになった時点で、HFPを69g添加し、オートクレーブ内圧を、1.67MPaに保持した。また、重合開始剤としてジコハク酸過酸化物の6.4gと過硫酸アンモニウム0.32gを注入した。TFEの添加量が30kgになったところで反応を終了させた。重合時間は2時間9分であった。なお、ここでジコハク酸過酸化物としてはその溶液(80質量%濃度)を用い、ジコハク酸過酸化物の正味量として6.4gを添加した。
表1に比較例3の実施条件を示す。
なお、HFPの添加は、TFEの全量30kgのうち、27kgを投入した時点で行った。すなわち、TFEの全量の90質量%を重合反応容器に投入した時点で、HFPを添加した。表1には「添加時期」として記載する。
得られたTFE共重合体の乳化分散液を冷却し、上澄みのパラフィンワックスを除去した。乳化分散液の固形分濃度は約31質量%であった。また、乳化分散液中のTFE共重合体の平均一次粒子径を表2に示す。
該乳化分散液を純水で固形分濃度12質量%に希釈し、30℃に調整して撹拌し、ウエットのファインパウダーを取得、乾燥した。
得られたTFE共重合体ファインパウダーのSSG、TII、ペースト押出圧力、電線引き抜き強度を表2に示す。比較例3のファインパウダーは、コア変性量が大きく、そのため、平均一次粒子径が小さく、ペースト押出圧力が高く、電線成形時の押出安定性に劣った。また、表面平滑性も劣った。
なお、比較例3について、表2中のコモノマーに基づく単位の含有量は、PFBEに基づく単位の含有量とHFPに基づく単位の含有量の合計である。
(比較例4)
邪魔板、撹拌機を備えた、100Lのステンレス鋼製オートクレーブに、乳化剤としてAPFOの176g、安定化助剤としてパラフィンワックスの750g、脱イオン水60リットルを仕込んだ。オートクレーブを窒素置換した後減圧にして、CTFEの9gを仕込んだ。更にTFEで0.15MPaまで加圧し、撹拌しながら75℃に昇温した。次いでTFEを0.74MPaまで昇圧し、重合開始剤としてジコハク酸過酸化物の4.1gと過硫酸アンモニウム0.21gを注入した。なお、ここでジコハク酸過酸化物としてはその溶液(80質量%濃度)を用い、ジコハク酸過酸化物の正味量として4.1gを添加した。約10分ほどで内圧が0.72MPaまで降下した。オートクレーブ内圧を0.74MPaに保つようにTFEを添加しながら重合を進行させた。
TFEの添加量が27kgになった時点から、CTFEを複数回に分けて添加した。この複数回の添加量の合計は56gとした。TFEの添加量が29kgになったところで反応を終了させた。重合時間は3時間7分であった。
表1に比較例4の実施条件を示す。
なお、CTFEの2回目の添加は、TFEの全量29kgのうち、27kgを投入した時点で行った。すなわち、TFEの全量の93質量%を重合反応容器に投入した時点で、CTFEを添加した。表1には「添加時期」として記載する。
得られたTFE共重合体の乳化分散液を冷却し、上澄みのパラフィンワックスを除去した。乳化分散液の固形分濃度は約31質量%であった。また、乳化分散液中のTFE共重合体の平均一次粒子径を表2に示す。
該乳化分散液を純水で固形分濃度12質量%に希釈し、30℃に調整して撹拌し、ウエットのファインパウダーを取得、乾燥した。
得られたTFE共重合体ファインパウダーのSSG、TII、ペースト押出圧力、電線引き抜き強度を表2に示す。比較例4のファインパウダーは、コモノマーとしてCTFEを用いたため、耐熱性が非常に劣った。
なお、比較例4について、表2中のコモノマーに基づく単位の含有量は、コアにおけるCTFEに基づく単位の含有量と、シェルにおけるCTFEに基づく単位の含有量の合計である。
(比較例5)
メタノールの添加をTFEの全量25.7kgのうち、19.9kgを投入した時点で行う以外は、実施例2にしたがって重合反応を進行させた。すなわち、TFEの全量の77質量%を重合反応容器に投入した時点で、メタノールを添加した。重合初期でのPFBEを消費するまでの初期反応時間は25分を要した。また、重合時間は3時間32分であった。表1に比較例5の実施条件を示す。
得られたTFE共重合体の乳化分散液を冷却し、上澄みのパラフィンワックスを除去した。乳化分散液の固形分濃度は約29質量%であった。また、乳化分散液中のTFE共重合体の平均一次粒子径を表2に示す。
該乳化分散液を純水で固形分濃度12質量%に希釈し、30℃に調整して撹拌し、ウエットのファインパウダーを取得、乾燥した。
得られたTFE共重合体ファインパウダーのSSG、TII、ペースト押出圧力、電線引き抜き強度を表2に示す。比較例5のファインパウダーは、連鎖移動剤の添加時期が早く、得られるTFE共重合体の分子量が低下するため、SSGが大きく、電線との密着強度が不充分で、電線引き抜き強度が低かった。
Figure 0006299448
Figure 0006299448
本発明のペースト押出成形用TFE共重合体は、高速、かつ、高RR比でのペースト押出成形においても、低い押出圧力で表面平滑性に優れる成形物を成形でき、電線の被覆に用いた場合には、芯線との密着性に優れる成形物を形成でき、耐熱性にも優れる。よって、チューブ、電線の被覆、シール材、多孔膜、フィルター等をペースト押出成形する用途に好適に使用される。

Claims (7)

  1. テトラフルオロエチレンに基づく単位と、下記一般式(I)で表されるモノマーに基づく単位とからなり、
    テトラフルオロエチレンに基づく単位の含有量を100mol%とした場合に、一般式(I)で表されるモノマーに基づく単位の含有量が0.009〜0.011mol%であり、
    標準比重が2.140〜2.170であり、
    下記測定方法によるペースト押出圧力が20〜40MPaであることを特徴とするペースト押出成形用テトラフルオロエチレン共重合体。
    CH=CH−C2n+1 (I)
    (式中、nは4または6である。)
    [ペースト押出圧力の測定方法]
    (1)試料226.8gと、イソパラフィン炭化水素100%からなり、初留点180℃、乾点188℃、引火点54℃、密度(15℃)0.758g/cm、KB値26、アニリン点85℃、芳香族含有量<0.01質量%である潤滑剤43.2gとをガラス瓶中で混合し、25℃で8時間熟成する。
    (2)内径39.4mmのシリンダー(a)に、上記(1)で熟成した混合物を充填し、シリンダー(a)に挿入したピストンに55kgf(539N)の荷重を加え、2分間保持する。
    (3)シリンダー(a)から上記混合物を取出し、シリンダー(b)(内径40.3mm)付の押出ダイ(ダイ角:20°、オリフィスの直径:1.274mm)に入れて、ラムスピード20mm/分、ダイ温度40℃で上記混合物を押出し、ひも状物(ビード)を得る。なお、リダクション比(RR比)は1000である。
    (4)押出圧力が平衡状態になった際の押出力をシリンダー(b)の内径基準の断面積で除した値をペースト押出圧力(MPa)とする。
  2. 請求項1に記載のペースト押出成形用テトラフルオロエチレン共重合体がペースト押出成形されたことを特徴とする成形物。
  3. 請求項1に記載のペースト押出成形用テトラフルオロエチレン共重合体からなることを特徴とする電線被覆材料。
  4. ペースト押出成形用テトラフルオロエチレン共重合体の製造方法であって、
    前記ペースト押出成形用テトラフルオロエチレン共重合体は、テトラフルオロエチレンに基づく単位と、下記一般式(I)で表されるモノマーに基づく単位とからなり、
    テトラフルオロエチレンに基づく単位の含有量を100mol%とした場合に、一般式(I)で表されるモノマーに基づく単位の含有量が0.009〜0.011mol%であり、
    前記テトラフルオロエチレンと、前記一般式(I)で表されるモノマーとを連鎖移動剤の非存在下で重合する工程(c)と、
    該工程(c)の後に、テトラフルオロエチレンのみを連鎖移動剤の存在下で重合する工程(s)と、を有し、
    前記ペースト押出成形用テトラフルオロエチレン共重合体の重合に使用するテトラフルオロエチレンの全量の80質量%を重合反応容器に投入した以降に、前記連鎖移動剤を前記重合反応容器に添加して、前記工程(s)を行う、ペースト押出成形用テトラフルオロエチレン共重合体の製造方法。
    CH=CH−C2n+1 (I)
    (式中、nは4または6である。)
  5. 請求項4に記載の製造方法で製造されたペースト押出成形用テトラフルオロエチレン共重合体がペースト押出成形されたことを特徴とする成形物。
  6. 請求項4に記載の製造方法で製造されたペースト押出成形用テトラフルオロエチレン共重合体からなることを特徴とする電線被覆材料。
  7. 芯線に、請求項3または請求項6に記載の電線被覆材料を用いてなる被覆が設けられたことを特徴とする電線。
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