JP6299226B2 - 金属張積層基板、配線基板、および多層配線基板 - Google Patents
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近年の電子部品が処理する信号の高周波化に伴い、ポリイミドでは十分に高周波特性を発揮できないでいる。そこで、高周波における誘電損失が低いといった電気特性に優れていることから、シクロオレフィンポリマーフィルムは、フレキシブル配線基板などのプリント配線基板向けの絶縁フィルムへの展開が検討されている。
シクロオレフィンポリマーフィルムを用いた配線基板を得るには、基材にシクロオレフィンポリマーフィルムを用いた金属張積層基板を、いわゆるサブトラクティブ法やセミアディティブ法で配線加工することで実現できる。
このような状況の中で、本発明の課題とするところは、シクロオレフィンポリマーの優れた誘電特性を発揮できる金属張積層基板、配線基板および多層配線基板を提供することである。
本発明にかかる金属張積層基板は、基材となるシクロオレフィンポリマーフィルムの少なくとも一方の表面に接着剤を介することなく金属層が積層された金属張積層基板において、そのシクロオレフィンポリマーフィルムの金属層が設けられる側の表面の二乗平均粗さ(RMS)が50nm以下、且つ算術平均粗さ(Ra)が50nm以下であり、前記金属層の表面の二乗平均粗さ(RMS)が50nm以下、且つ算術平均粗さ(Ra)が50nm以下であることを特徴とする。
金属層は、基材のシクロオレフィンポリマーの表面粗さに追従する。
さらに、金属層の表面は、二乗平均粗さ(RMS)が50nm以下、且つ算術平均粗さ(Ra)が50nm以下である。金属層は、基材側も表面側も二乗平均粗さ(RMS)が50nm以下、且つ算術平均粗さ(Ra)が50nm以下となる。
すなわち、金属層は、10nm単位以下での平滑性を備えるのである。
市場で入手可能な銅箔などの金属箔の表面粗さRaは200nm程度である。銅箔がこのような表面粗さとなるのは、基材との密着性確保のためである。しかし、密着性のための表面粗さは誘電特性には不適切である。
金属層は、配線加工されて配線基板の導体となるので、導電性の優れる銅からなる銅層を用いることが望ましい。その銅層の厚みは、配線の加工性や配線の抵抗値などを考慮して適宜選択することができるが、0.1μm〜12μmが望ましい。
下地金属層を設ける場合、金属層は、基材側から下地金属層と銅層の順に積層された積層構造となる。
下地金属層の膜厚は、2nm以上であることが望ましく、上限としては30nm以下であることが望ましい。
本発明にかかる金属張積層基板の製造方法は、基材の表面に乾式めっき法もしくは乾式めっき法と湿式めっき法を併用する。
機材の表面粗さ(平滑性)が規定されたシクロオレフィンポリマーフィルムの表面に、スパッタリング法などの乾式めっき法で2nm〜1000nmの金属層の一部となる金属薄膜を成膜し、さらに、前記金属薄膜の表面に電気めっき等の湿式めっき法で成膜を行い金属層が完成となる。
基材のシクロオレフィンポリマーフィルムの表面に金属層を設けるので、金属層は、シクロオレフィンポリマーフィルムの表面粗さに追従する表面粗さ(平滑性)を備えることとなる。
ロールツーロール方式の装置の場合、フィルムの幅方向に均一な処理をするため、通常はリニアタイプのイオンビーム源が使用される。イオンビーム電極に導入するガス流量は電極のサイズに依存する。たとえば、イオンビームの有効長さが500mmの場合、導入するガス流量は、10〜200sccmであることが望ましく、20〜100sccmの範囲がより望ましい。流量が少ないと放電の維持が難しく、流量が多すぎるとアークが発生したり、ビームの拡散が広がるためである。
プラズマによる表面処理におけるガス圧は0.5Pa以上が望ましく、ガス圧の下限は、使用するガス種によって異なり、放電持続可能な圧力とする必要がある。
これは、電子衝撃による気体の電離断面積や、電極表面や放電空間の状態によって変化する。また、電源の周波数にも依存し、例えば、直流放電プラズマより高周波放電プラズマの方が、より低圧で放電可能である。ガス圧の上限は特にないが、直流放電プラズマでは、アーク放電が発生する圧力より低圧にすることが望ましい。
公知のスパッタリングウェブコーターを用いて、シクロオレフィンポリマーフィルムの表面に下地金属層を成膜し、下地金属層の表面に銅層の一部を構成する銅薄膜層を成膜してスパッタリング成膜は終了する。スパッタリング成膜が施されたシクロオレフィンポリマーフィルムの銅薄膜層の表面に銅電気めっきにより銅層の一部を構成する銅電気めっき層を成膜する。銅薄膜層と銅電気めっき層の膜厚を目的の膜厚まで成膜すると、金属張積層基板が完成する。
金属張積層基板からサブトラクティブ法などで配線加工する際に、基材と金属層間に必要な密着性が、200N/m以上なのである。この配線基板の金属層の密着性は高いことが望ましいことは勿論であるが、より高い密着性を確保するために、強いプラズマ処理やイオンビーム処理等によって、シクロオレフィンポリマーフィルムの表面粗さが粗くなることやシクロオレフィンポリマーの変質に起因する誘電特性の劣化は、基材にシクロオレフィンポリマーを用いるメリットを失うことになってしまう。
基材に用いるシクロオレフィンポリマーは、炭素原子で形成される環構造を有し、その環構造中に重合性の炭素−炭素二重結合を1つ有するシクロオレフィンモノマーが重合した熱可塑性樹脂である。
なお、環構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲である。
シクロオレフィンポリマーを構成するシクロオレフィンモノマーは、炭素原子で形成される環構造を有し、かつ該環構造中に重合性の炭素−炭素二重結合を1つ有する化合物である。ここで、「重合性の炭素−炭素二重結合」とは、連鎖重合(開環重合)可能な炭素−炭素二重結合をいう。
シクロオレフィンモノマーの環構造としては、単環、多環、縮合多環、橋かけ環及びこれらの組み合わせ多環などが挙げられる。環構造を構成する炭素原子数には特に限定はないが、通常、4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個である。
これらのシクロオレフィンモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、本発明の効果を損失しない範囲であれば、シクロオレフィンモノマーと共重合可能な任意のモノマーをさらに用いることができる。
金属張積層基板は、サブトラクティブ法またはセミアディティブ法で配線加工を施されて、配線基板となる。
このサブトラクティブ法とは、一般に金属張積層基板の金属層を化学エッチング処理して不要部分を除去する方法である。
即ち、金属張積層基板の金属層のうち導体配線として残したい部分の表面にレジストを設け、銅に対応するエッチング液による化学エッチング処理と水洗を経て、金属層の不要部分を選択的に除去して導体配線を形成するものである。
なお、カバーレイフィルムと配線基板の間に粘着層を挟むことがある。このカバーレイフィルムには、低誘電率化や低誘電損失化が達成できる誘電特性に優れた材料を選択すればよい。例えば、カバーレイフィルムの基材にシクロオレフィンポリマー、液晶ポリマー、フッ素樹脂を用い、粘着層には、低誘電損失の為の、ポリエステル樹脂、ニトリルゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等を選択できる。
実施例においては、シクロオレフィンポリマーフィルム表面および金属層表面の二乗平均粗さ(RMS)及び算術平均粗さ(Ra)、シクロオレフィンポリマーフィルム−金属層間の密着強度は以下の方法により測定した。
日本ビーコ株式会社製「NanoscopeV」及びNANOWORLD社製「プローブSEIHR(ばね定数:12−13N/m、共振周波数123−125kHz)」にて、シクロオレフィンポリマーフィルム表面をタッピングモードにて測定し、2μm×2μm角内のRMS及びRaを算出した。なお測定は各2回行った。
銅層側に1mm幅のマスキングを行った後、温度40℃で比重40°ボーメの塩化第二鉄溶液に30秒間浸漬し、金属層をエッチングして除去することで、1mm幅の金属層を配線とする配線基板を得た。
株式会社島津製作所製 オートグラフEZ Graphにて、JIS C 6471−1995に記載されている90°方向引き剥がし方法で、金属層を20mm/min、90°方向に引っ張り、得られた引き剥がし荷重を試料幅1mmで除した値を接着強度(N/m)とした。なお、測定は各2回行った。
特性インピーダンスが50Ωのマイクロストリップ線路を長さ100mm形成し、Agilent Technologies社製のネットワークアナライザーE8363Bにより、各周波数(5、20、40GHz)での伝送損失を求めた。
界面の表面粗さとしてプラズマ処理後のシクロオレフィンポリマーフィルム表面の2μm×2μm角内におけるRMS及びRaを算出した結果を表1に示す。また銅層形成後の銅層表面における表面粗さを同様に測定し、結果を表1に示す。
プラズマ処理後のシクロオレフィンポリマーフィルム表面および銅表面の表面粗さ、密着強度、伝送損失を測定した結果を表1に示す。
プラズマ処理後のシクロオレフィンポリマーフィルム表面および銅表面の表面粗さ、密着強度、伝送損失を測定した結果を表1に示す。
プラズマ処理後のシクロオレフィンポリマーフィルム表面および銅表面の表面粗さ、密着強度、伝送損失を測定した結果を表1に示す。
プラズマ処理後のシクロオレフィンポリマーフィルム表面および銅表面の表面粗さ、密着強度、伝送損失を測定した結果を表1に示す。
プラズマ処理後のシクロオレフィンポリマーフィルム表面および銅表面の表面粗さ、密着強度、伝送損失を測定した結果を表1に示す。
実施例1と同じシクロオレフィンポリマーフィルムの両面に、粗化面の最大表面粗さ(Rz)が1.5μmで、厚みが9μmの銅箔を張り合わせて、金属張積層基板を得た。
界面の表面粗さとして、銅箔の粗化面および金属張積層基板の表面の2μm×2μm角内におけるRMS及びRaを算出した結果を表1に示す。また金属張積層基板の銅表面における表面粗さを同様に測定し、結果を表1に示す。
次に、この金属張積層基板をエッチング加工して所定のパターンを形成し、密着強度、伝送損失を測定した。その結果を表1に纏めて示す。
基材に東レ・デュポン社製「ポリイミドフィルム(カプトンEN カプトン:登録商標)」を用いた以外は、実施例1と同じ操作で金属張積層基板を得た。
プラズマ処理後のポリイミドフィルム表面および銅表面の表面粗さを測定した結果を表1に示す。
次に、この金属張積層基板をエッチング加工して所定のパターンを形成し、密着強度、伝送損失を測定した。その結果を表1に纏めて示す。
Claims (7)
- シクロオレフィンポリマーフィルムの少なくとも一方の表面に接着剤を介することなく表面の二乗平均粗さ(RMS)が50nm以下、且つ算術平均粗さ(Ra)が50nm以下である金属層が積層された金属張積層基板において、
前記シクロオレフィンポリマーフィルムの金属層を設ける側の表面の二乗平均粗さ(RMS)が50nm以下、且つ算術平均粗さ(Ra)が50nm以下であることを特徴とする金属張積層基板。 - 前記金属層が、銅からなる銅層であることを特徴とする請求項1に記載の金属張積層基板。
- 前記金属層が、前記シクロオレフィンポリマーフィルム表面に設けられた下地金属層と前記下地金属層の表面に設けられた銅からなる銅層の積層体であることを特徴とする請求項1に記載の金属張積層基板。
- シクロオレフィンポリマーフィルムの少なくとも一方の表面に接着剤を介することなく表面の二乗平均粗さ(RMS)が50nm以下、且つ算術平均粗さ(Ra)が50nm以下である金属層からなる配線が配された配線基板において、
前記シクロオレフィンポリマーフィルムの金属層を設ける側の表面の二乗平均粗さ(RMS)が50nm以下、且つ算術平均粗さ(Ra)が50nm以下であることを特徴とする配線基板。 - 前記金属層が、銅からなる銅層であることを特徴とする請求項4に記載の配線基板。
- 前記金属層が、前記シクロオレフィンポリマーフィルム表面に設けられた下地金属層と前記下地金属層の表面に設けられた銅からなる銅層の積層体であることを特徴とする請求項4に記載の配線基板。
- 請求項4から6のいずれか1項に記載の配線基板を複数個積層した多層配線基板。
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