図1は、本発明の第1実施例である半導体モジュール20の構成図を示す。尚、図1には、金属板がケースから分離されている場合の斜視図を示す。また、図2は、本実施例の半導体モジュール20の平面図及び断面図を示す。尚、図2(A)には半導体モジュール20を上方から見た際の平面図(透視図)を、図2(B)には半導体モジュール20を図2(A)に示すA−Aで切断した際の断面図を、また、図2(C)には半導体モジュール20を図2(A)に示すB−Bで切断した際の断面図を、それぞれ示す。
本実施例の半導体モジュール20は、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車等に搭載されており、直流バッテリとモータとの間で電力変換を行うインバータ装置や昇圧又は降圧コンバータ装置などの電力変換装置に適用される。
半導体モジュール20は、平板状に形成されたベースプレートである金属板22を備えている。金属板22は、熱伝導性の比較的良い材料により構成されている。金属板22上には、モータの各相に対応して複数の基板24が載置されている。基板24は、モータが三相交流モータである場合は、上アーム及び下アームそれぞれに3つずつ(合計6個)設けられる。以下、基板24は6個設けられているものとする。また適宜、上アームの基板24を基板24Uと、下アームの基板24を基板24Dと、それぞれ称す。
半導体モジュール20は、また、共に半導体素子であるスイッチング素子26及びダイオード素子28を備えている。スイッチング素子26及びダイオード素子28は共に、半導体チップにより構成されている。各基板24にはそれぞれ、スイッチング素子26及びダイオード素子28が一つずつ配置されている。スイッチング素子26とダイオード素子28とは、回路構成上、互いに並列接続されている。スイッチング素子26は、IGBTなどのパワー素子であって、制御装置から指令に従って、当該相に流れる電流を生成すべくスイッチング駆動される。
上アームの3つの基板24Uは、金属板22の一方の面(表面)上に第1方向Xに並んで載置されている。また、下アームの3つの基板24Dは、金属板22の表面上に上記第1方向Xに並んで載置されている。上アームの基板24Uと下アームの基板24Dとは、金属板22の表面上に上記第1方向Xに直交する第2方向Yに隙間30を空けて配置されている。
上アームの各基板24Uには、スイッチング素子26とダイオード素子28とが上記第2方向Yに並んで配置されている。また、下アームの各基板24Dには、スイッチング素子26とダイオード素子28とが上記第2方向Yに並んで配置されている。各基板24において、スイッチング素子26は第2方向Yの隙間30から遠い側に配置されると共に、ダイオード素子28は第2方向Yの隙間30から近い側に配置される。隙間30は、上アームの基板24U上の半導体素子と下アームの基板24D上の半導体素子との絶縁距離を確保するために必要な距離に設定されている。
金属板22の、基板24が載置される表面とは反対側の他方の面(裏面)には、冷却フィン32が一体に設けられている。冷却フィン32は、金属板22の裏面から突起する部位を有し、後述の冷媒との間で熱交換を促進させる形状及び機能を有している。冷却フィン32は、その金属板22の裏面に、金属板22の表面に載置される基板24(特に、半導体素子26,28(更に、特に、発熱し易いスイッチング素子26))が占める領域に対応して設けられており、具体的には、その金属板22の裏面の略全域に亘って設けられている。
半導体モジュール20は、また、水などの冷媒が流れる冷媒流路34を備えている。冷媒流路34は、金属板22の裏面に接するように設けられている。半導体モジュール20は、スイッチング素子26及びダイオード素子28がそれぞれ配置された6つの基板24を載置した金属板22が方形枡形のケース36に取り付けられることにより構成される。冷媒流路34は、金属板22の裏面とケース36との間に形成される。金属板22の裏面に設けられる冷却フィン32は、その突起先端が、金属板22がケース36に取り付けられた状態でケース36の底面に接するように形成されている。冷媒流路34を流れる冷媒は、冷却フィン32との間で熱交換を行うことにより、金属板22の表面側にあるスイッチング素子26及びダイオード素子28を冷却する。
ケース36には、冷媒が流入する2つの流入口40,42と、冷媒が流出する一つの流出口44と、が設けられている。流入口40,42及び流出口44はそれぞれ、略円形状の穴である。流入口40,42には、流入配管46,48が連通しており、流入配管46,48内を流れた冷媒が流入する。流入配管46,48は、同じ冷媒溜りに連通する配管であって、分岐点で分岐されたものである。流出口44には、流出配管50が連通している。流出口44から流出した冷媒は、流出配管50内を流れて排出される。
流入口40は、ケース36の底面の、金属板22の表面に載置される上アームの基板24Uが占める領域に対応したその基板24Uに対向する対向位置に設けられている。流入口40が設けられるその対向位置は、ケース36の底面の、第2方向Yにおける上アームの基板24Uのスイッチング素子26側すなわちケース36の方形枡形の側壁に近い側であって、かつ、第1方向Xにおける略中央である。
流入口42は、ケース36の底面の、金属板22の表面に載置される下アームの基板24Dが占める領域に対応したその基板24Dに対向する対向位置に設けられている。流入口42が設けられるその対向位置は、ケース36の底面の、第2方向Yにおける下アームの基板24Dのスイッチング素子26側すなわちケース36の方形枡形の側壁に近い側であって、かつ、第1方向Xにおける略中央である。
また、流出口44は、ケース36の底面の、金属板22の表面に載置される上アームの基板24Uと下アームの基板24Dとの間の隙間30が占める領域に対応したその隙間30に対向する対向位置に設けられている。流出口44が設けられるその対向位置は、ケース36の底面の、第2方向Yにおける略中央であって、かつ、第1方向Xにおける略中央である。
上記構造において、流入配管46から流入口40に流入した冷媒は、ケース36と金属板22の裏面との間を、上アームの基板24Uのスイッチング素子26側から隙間30側へ向けて流れた後、流出口44から流出配管50へ排出される。金属板22の表面上の基板24Uの半導体素子26,28は、流入配管46から流入口40に流入した冷媒が金属板22の裏面の冷却フィン32との間で熱交換を行うことにより冷却される。
また、流入配管48から流入口42に流入した冷媒は、ケース36と金属板22の裏面との間を、下アームの基板24Dのスイッチング素子26側から隙間30側へ向けて流れた後、流出口44から流出配管50へ排出される。金属板22の表面上の基板24Dの半導体素子26,28は、流入配管48から流入口42に流入した冷媒が金属板22の裏面の冷却フィン32との間で熱交換を行うことにより冷却される。
すなわち、金属板22の裏面とケース36との間の冷媒流路34は、流入配管46に連通する、上アームの基板24Uのスイッチング素子26側から隙間30側へ向けて冷媒が流れる第1の流路34aと、流入配管48に連通する、下アームの基板24Dのスイッチング素子26側から隙間30側へ向けて冷媒が流れる第2の流路34bと、を有している。
冷媒流路34は、また、流出口44に連通する出口側チャンバ52を有している。出口側チャンバ52は、流出口44を介して流出配管50へ排出する冷媒を溜める部位であって、流路断面積の比較的大きい部位である。ケース36の底面には、溝54が設けられている。溝54は、金属板22の表面に載置される上アームの基板24Uと下アームの基板24Dとの間の隙間30が占める領域に対応して、その隙間30に沿って第1方向Xに延びるように形成されている。上記の出口側チャンバ52は、溝54により形成されており、隙間30に沿って第1方向Xに延びている。
このように、本実施例の半導体モジュール20においては、金属板22の裏面とケース36との間の冷媒流路34が、流入配管46に連通する第1の流路34aと、流入配管48に連通する第2の流路34bと、を有する。第1の流路34aでは、冷媒は、上アームの基板24Uのスイッチング素子26側から隙間30側へ向けて流れる。また、第2の流路34bでは、冷媒は下アームの基板24Dのスイッチング素子26側から隙間30側へ向けて流れる。
かかる構造によれば、第2方向Yに並んだ2つの基板24U,24Dの半導体素子26,28(特に、スイッチング素子26)へそれぞれ独立して流入配管46,48から冷媒が供給されるので、金属板22の表面上の基板24U,24Dの双方それぞれに向けて冷たい冷媒を供給することができ、それらの基板24U,24Dの半導体素子26,28を効率的にかつ確実に冷却することができる。このため、本実施例の構成によれば、第2方向Yに並んだ2つの基板24U,24Dの半導体素子26,28へ一つの流入配管から冷媒が供給される構成とは異なり、金属板22の表面上の第2方向Yに並ぶ基板24U側と基板24D側とで半導体素子26,28の冷却の均等化を図ることができる。
また、上記の構造によれば、冷媒流路34に連通する流入配管46,48が二つ設けられるので、冷媒流路に連通する流入配管が一つしか設けられていない構造と比べて、流入口40,42から流出口44までの距離を短く(具体的には、半分に)することができる。このため、本実施例の構成によれば、冷媒流路に連通する流入配管が一つしか設けられていない構造と異なり、金属板22の表面上のすべての半導体素子26,28を適切に冷却するのに流入口40,42での冷媒圧力を高くすることは不要であるので、冷媒流路34での冷媒の圧力損失を低く抑えることができる。
また、本実施例の半導体モジュール20においては、冷媒流路34が、流出口44に連通する、隙間30に沿って第1方向Xに延びる出口側チャンバ52を有する。かかる構造によれば、出口側チャンバ52で冷却フィン32を通過した冷媒を所定量まで溜めることができ、半導体素子26,28との熱交換により温められた冷媒が冷却フィン32に接した状態で滞留するのを抑制することができる。このため、本実施例の構成によれば、かかる出口側チャンバ52が設けられていない構造に比べて、冷媒流路34での冷媒の圧力損失を低く抑えることができると共に、基板24U,24Dの半導体素子26,28の冷却を効率的にかつ確実に行うことができる。
また、上記の出口側チャンバ52は、金属板22の表面上で上アームの3つの基板24Uが並びかつ下アームの3つの基板24Dが並ぶ第1方向Xに延びているので、第1の流路34aで冷媒が流入口40から流出口44へ向けて流れかつ第2の流路34bで冷媒が流入口42から流出口44へ向けて流れる第2方向Yに直交する方向に延びている。このため、本実施例の構成によれば、流入口40から第1の流路34aに流入した冷媒及び流入口42から第2の流路34bに流入した冷媒を共に、冷媒流路34内で第1方向X全域に亘って延ばした状態で流通させて出口側チャンバ52に回収することができるので、金属板22の表面上で第1方向Xに延びる上アームの3つの基板24Uの半導体素子26,28を均等に冷却することができると共に、金属板22の表面上で第1方向Xに延びる下アームの3つの基板24Dの半導体素子26,28を均等に冷却することができる。
また、上記の出口側チャンバ52は、金属板22の表面上で、上アームの基板24Uや下アームの基板24Dが設けられていない隙間30に沿って第1方向Xに延びている。かかる構造においては、第1方向X及び第2方向Yそれぞれに直交する方向から半導体モジュール20を見た場合に、平面上で基板24と出口側チャンバ52とが互いに重ならないので、基板24の半導体素子26,28の直下で冷媒と冷却フィン32とが熱交換し難くなるのを回避することができる。このため、本実施例によれば、平面上で基板24と出口側チャンバ52とが互いに重なる構造と比べて、基板24の半導体素子26,28が温度上昇し易くなるのを抑制することができる。
更に、本実施例においては、冷媒との間で熱交換を行う冷却フィン32は、金属板22の裏面の略全域に亘って設けられている。このため、本実施例によれば、冷却フィン32と冷媒との間の熱交換を行う性能を最大なものとすることができるので、金属板22の表面上の基板24U,24Dの半導体素子の冷却を効率的に行うことができる。
尚、上記の第1実施例においては、スイッチング素子26及びダイオード素子28が特許請求の範囲に記載した「第1の半導体チップ」及び「第2の半導体チップ」に、ケース36が特許請求の範囲に記載した「流路形成体」に、それぞれ相当している。
ところで、上記の第1実施例においては、ケース36の底面に、隙間30に沿って第1方向Xに延びる溝54を設け、この溝54により冷媒流路34に流出口44に連通する出口側チャンバ52を形成することとしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、ケース36の底面に、略円形状の流出口44を複数(例えば、図3及び図4に示す例では、7個)設けつつ、それら複数の流出口44を隙間30に沿って第1方向Xに並べ、それら複数の流出口44により冷媒流路34に出口側チャンバ52を形成することとしてもよい。尚、図3には、金属板がケースから分離されている場合の半導体モジュール200の斜視図を示す。また、図4(A)には本変形例の半導体モジュール200を上方から見た際の平面図(透視図)を、また、図4(B)には半導体モジュール200を図4(A)に示すA−Aで切断した際の断面図を、それぞれ示す。
かかる変形例においても、上記した第1実施例と同様の効果を得ることが可能である。例えば、出口側チャンバ52で冷却フィン32を通過した冷媒を所定量まで溜めることができ、半導体素子26,28との熱交換により温められた冷媒が冷却フィン32に接した状態に滞留するのを抑制することができる。このため、本変形例の構成によれば、かかる出口側チャンバ52が設けられていない構造に比べて、冷媒流路34での冷媒の圧力損失を低く抑えることができると共に、基板24U,24Dの半導体素子26,28の冷却を効率的にかつ確実に行うことができる。
また、上記の変形例においては、出口側チャンバ52を構成する複数の流出口44が、金属板22の表面上で上アームの3つの基板24Uが並びかつ下アームの3つの基板24Dが並ぶ第1方向Xに並んでおり、第1の流路34aで冷媒が流入口40から流出口44へ向けて流れかつ第2の流路34bで冷媒が流入口42から流出口44へ向けて流れる第2方向Yに直交する方向に並んでいる。このため、本変形例の構成によれば、流入口40から第1の流路34aに流入した冷媒や流入口42から第2の流路34bに流入した冷媒を、冷媒流路34内で第1方向Xに延びた状態で流通させることができるので、金属板22の表面上で第1方向Xに延びる上アームの3つの基板24Uの半導体素子26,28を均等に冷却することができると共に、金属板22の表面上で第1方向Xに延びる下アームの3つの基板24Dの半導体素子26,28を均等に冷却することができる。
更に、上記の変形例においては、出口側チャンバ52を構成する複数の流出口44が、金属板22の表面上で、上アームの基板24Uや下アームの基板24Dが設けられていない隙間30に沿って第1方向Xに並んでいる。かかる構造においては、第1方向X及び第2方向Yそれぞれに直交する方向から半導体モジュール200を見た場合に、平面上で基板24と出口側チャンバ52とが互いに重ならないので、基板24の半導体素子26,28の直下で冷媒と冷却フィン32とが熱交換し難くなるのを回避することができる。このため、本変形例によれば、平面上で基板24と出口側チャンバ52とが互いに重なる構造と比べて、基板24の半導体素子26,28が温度上昇し易くなるのを抑制することができる。
図5は、本発明の第2実施例である半導体モジュール100の構成図を示す。尚、図5には、金属板がケースから分離された斜視図を示す。また、図6は、本実施例の半導体モジュール100の平面図及び断面図を示す。尚、図6(A)には半導体モジュール100を上方から見た際の平面図(透視図)を、図6(B)には半導体モジュール100を図6(A)に示すA−Aで切断した際の断面図を、また、図6(C)には半導体モジュール100を図6(A)に示すB−Bで切断した際の断面図を、それぞれ示す。
本実施例の半導体モジュール100は、上記第1実施例の半導体モジュール20において、出口側チャンバ52に代えて出口側チャンバ108を用いることとしている。尚、図5及び図6において、上記図1及び図2に示す構成と同一の構成部分については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
半導体モジュール100は、金属板22を備えている。金属板22の裏面には、冷却フィン102が一体に設けられている。冷却フィン102は、金属板22の裏面から突起する部位を有し、冷媒との間で熱交換を促進させる形状及び機能を有している。冷却フィン102は、その金属板22の裏面に、金属板22の表面に載置される基板24(特に、半導体素子26,28(更に、特に、発熱し易いスイッチング素子26))が占める領域に対応して設けられており、具体的には、隙間30に対向する部位を除いて設けられている。すなわち、冷却フィン102は、上アームの基板24Uに対応する冷却フィン102aと、下アームの基板24Dに対応する冷却フィン102bと、を有する。
半導体モジュール100は、水などの冷媒が流れる冷媒流路104を備えている。冷媒流路104は、金属板22の裏面に接するように設けられている。半導体モジュール100は、スイッチング素子26及びダイオード素子28がそれぞれ配置された6つの基板24を載置した金属板22が方形枡形のケース106に取り付けられることにより構成される。冷媒流路104は、金属板22の裏面とケース106との間に形成される。金属板22の裏面に設けられる冷却フィン102は、その突起先端が、金属板22がケース106に取り付けられた状態でケース106の底面に接するように形成されている。冷媒流路104を流れる冷媒は、冷却フィン102との間で熱交換を行うことにより、金属板22の表面側にあるスイッチング素子26及びダイオード素子28を冷却する。
ケース106には、2つの流入口40,42と、一つの流出口44と、が設けられている。流入配管46から流入口40に流入した冷媒は、ケース106と金属板22の裏面との間を、上アームの基板24Uのスイッチング素子26側から隙間30側へ向けて流れた後、流出口44から流出配管50へ排出される。金属板22の表面上の基板24Uの半導体素子26,28は、流入配管46から流入口40に流入した冷媒が金属板22の裏面の冷却フィン102aとの間で熱交換を行うことにより冷却される。また、流入配管48から流入口42に流入した冷媒は、ケース106と金属板22の裏面との間を、下アームの基板24Dのスイッチング素子26側から隙間30側へ向けて流れた後、流出口44から流出配管50へ排出される。金属板22の表面上の基板24Dの半導体素子26,28は、流入配管48から流入口42に流入した冷媒が金属板22の裏面の冷却フィン102bとの間で熱交換を行うことにより冷却される。
すなわち、金属板22の裏面とケース106との間の冷媒流路104は、流入配管46に連通する、上アームの基板24Uのスイッチング素子26側から隙間30側へ向けて冷媒が流れる第1の流路104aと、流入配管48に連通する、下アームの基板24Dのスイッチング素子26側から隙間30側へ向けて冷媒が流れる第2の流路104bと、を有している。
冷媒流路104は、また、流出口44に連通する出口側チャンバ108を有している。出口側チャンバ108は、流出口44を介して流出配管50へ排出する冷媒を溜める部位であって、流路断面積の比較的大きい部位である。上記の如く、冷却フィン102は、金属板22の裏面に、隙間30に対向する部位を除いて設けられている。出口側チャンバ108は、金属板22の裏面の隙間30に対向する部位に冷却フィン102が設けられていないことにより形成される空間部であって、隙間30に沿って第1方向Xに延びている。
このように、本実施例の半導体モジュール100においては、金属板22の裏面とケース106との間の冷媒流路104が、流入配管46に連通する第1の流路104aと、流入配管48に連通する第2の流路104bと、を有する。第1の流路104aでは、冷媒は、上アームの基板24Uのスイッチング素子26側から隙間30側へ向けて流れる。また、第2の流路104bでは、冷媒は下アームの基板24Dのスイッチング素子26側から隙間30側へ向けて流れる。
かかる構造においても、金属板22の表面上の基板24U,24Dの双方それぞれに向けて冷たい冷媒を供給することができ、それらの基板24U,24Dの半導体素子26,28を効率的にかつ確実に冷却することができる。このため、本実施例の構成によれば、上記した第1実施例と同様に、金属板22の表面上の第2方向Yに並ぶ基板24U側と基板24D側とで半導体素子26,28の冷却の均等化を図ることができる。また、冷媒流路34に連通する流入配管46,48が二つ設けられるので、流入口40,42から流出口44までの距離を短く(具体的には、半分に)することができる。このため、本実施例の構成によれば、上記した第1実施例と同様に、金属板22の表面上のすべての半導体素子26,28を適切に冷却するのに流入口40,42での冷媒圧力を高くすることは不要であるので、冷媒流路104での冷媒の圧力損失を低く抑えることができる。
また、本実施例の半導体モジュール100においては、冷媒流路104が、流出口44に連通する、隙間30に沿って第1方向Xに延びる出口側チャンバ108を有する。かかる構造によれば、冷却フィン102を通過した冷媒を所定量まで溜めることができ、半導体素子26,28との熱交換により温められた冷媒が冷却フィン102に接しながら滞留するのを抑制することができる。このため、本実施例の構成によれば、かかる出口側チャンバ108が設けられていない構造に比べて、冷媒流路104での冷媒の圧力損失を低く抑えることができると共に、基板24U,24Dの半導体素子26,28の冷却を効率的にかつ確実に行うことができる。
また、上記の出口側チャンバ108は、金属板22の表面上で上アームの3つの基板24Uが並びかつ下アームの3つの基板24Dが並ぶ第1方向Xに延びているので、第1の流路104aで冷媒が流入口40から流出口44へ向けて流れかつ第2の流路104bで冷媒が流入口42から流出口44へ向けて流れる第2方向Yに直交する方向に延びている。このため、本実施例の構成によれば、流入口40から第1の流路104aに流入した冷媒や流入口42から第2の流路104bに流入した冷媒を、冷媒流路104内で第1方向Xに延びた状態で流通させることができるので、金属板22の表面上で第1方向Xに延びる上アームの3つの基板24Uの半導体素子26,28を均等に冷却することができると共に、金属板22の表面上で第1方向Xに延びる下アームの3つの基板24Dの半導体素子26,28を均等に冷却することができる。
また、上記の出口側チャンバ108は、金属板22の表面上で、上アームの基板24Uや下アームの基板24Dが設けられていない隙間30に沿って第1方向Xに延びている。かかる構造においては、第1方向X及び第2方向Yそれぞれに直交する方向から半導体モジュール100を見た場合に、平面上で基板24と出口側チャンバ108とが互いに重ならないので、基板24の半導体素子26,28の直下で冷媒と冷却フィン102とが、平面上で基板24と出口側チャンバ108とが互いに重なる場合のように熱交換し難くなるのを回避することができる。このため、本実施例によれば、平面上で基板24と出口側チャンバ52とが互いに重なる構造と比べて、基板24の半導体素子26,28が温度上昇し易くなるのを抑制することができる。
尚、上記の第2実施例においては、ケース106が特許請求の範囲に記載した「流路形成体」に相当している。
ところで、上記の第1及び第2実施例においては、ケース36,106に、金属板22の上アームの基板24Uに対応して略円形状の流入口40が一つ設けられ、かつ、下アームの基板24Dに対応して略円形状の流入口42が一つ設けられる。すなわち、金属板22の上アームの基板24U及び下アームの基板24Dに対応して略円形状の流入口40,42が一つずつ設けられる。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、ケース36,106に、金属板22の上アームの基板24Uに対応して略円形状の流入口40が複数設けられ、かつ、下アームの基板24Dに対応して略円形状の流入口42が複数設けられることとしてもよい。
例えば、図7及び図8に示す如く、ケース36,106に、金属板22の上アームの基板24Uに対応して略円形状の流入口40が3つ設けられ、かつ、下アームの基板24Dに対応して略円形状の流入口42が3つ設けられること、すなわち、金属板22の上アームの基板24U及び下アームの基板24Dに対応して略円形状の流入口40,42が3つずつ設けられることとしてもよい。この場合、各流入口40,42は、基板24ごとに設けられ、各基板24に対向した位置に配置されることが、半導体素子26,28の冷却性を高めるうえで好適である。尚、図7には、金属板がケースから分離されている場合の半導体モジュール300の斜視図を示す。また、図8(A)には本変形例の半導体モジュール300を上方から見た際の平面図(透視図)を、また、図8(B)には半導体モジュール300を図8(A)に示すC−Cで切断した際の断面図を、それぞれ示す。また、図7及び図8には、第1実施例の場合を示す。
上記の変形例においても、上記の第1及び第2実施例と同様の効果を得ることが可能となる。
また、上記の第1及び第2実施例においては、ケース36,106に金属板22の上アームの基板24U及び下アームの基板24Dに対応して設けられる流入口40,42に、冷媒を溜めることが可能なチャンバ(入口側チャンバ)が連通されておらず、冷媒流路34,104が、流入口40,42に連通する入口側チャンバを有していない。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、図9に示す如く、冷媒流路34,104が、流入口40に連通する入口側チャンバ400を有すると共に、流入口42に連通する入口側チャンバ402を有することとしてもよい。尚、図9には、第1実施例の場合を示す。
この変形例において、入口側チャンバ400は、流入口40に連通しつつ第1方向Xに延びていると共に、入口側チャンバ402は、流入口42に連通しつつ第1方向Xに延びている。尚、かかる変形例において、入口側チャンバ400は、金属板22の表面に載置される上アームの基板24U(特に、その基板24U上のスイッチング素子26)に平面視上で重なる位置に設けられることとしてもよく、また、入口側チャンバ402は、金属板22の表面に載置される下アームの基板24D(特に、その基板24D上のスイッチング素子26)に平面視上で重なる位置に設けられることとしてもよい。
かかる変形例によれば、上記した第1及び第2実施例と同様の効果を得ることができる。また、流入口40,42に連通する入口側チャンバ400,402がそれぞれ第1方向Xに延びているので、流入口40から第1の流路34aに流入する冷媒及び流入口42から第2の流路34bに流入する冷媒を共に、第1方向X全域に亘って延ばした状態で流通させ易くすることができるので、金属板22の表面上で第1方向Xに延びる上アームの3つの基板24Uの半導体素子26,28を均等に冷却することができると共に、金属板22の表面上で第1方向Xに延びる下アームの3つの基板24Dの半導体素子26,28を均等に冷却することができる。また、入口側チャンバ400,402での冷媒圧力を低く抑えられるので、冷媒流路34での冷媒の圧力損失を低く抑えることができる。
また、上記の第1及び第2実施例においては、ケース36,106に設けられる流入口40,42及び流出口44の位置がそれぞれ、第1方向Xにおける略中央である。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、ケース36,106に設けられる流入口40,42及び流出口44の位置が、第1方向Xにおける端を含むものであってもよい。例えば、図10に示す如く、流入口40,42が共に第1方向における一方側の端(すなわち、左端)に設けられ、かつ、流出口44が第1方向における他方側の端(すなわち、右端)に設けられていてもよい。尚、図10には、第1実施例の場合を示す。また、流入口40,42の位置と流出口44の位置とが第1方向Xにおいてオフセットされていることが、ケース36,106と金属板22との間に形成される冷媒流路34,104内に冷媒を行き渡らせるうえで望ましい。
また、上記の第1及び第2実施例においては、流入口40に流入配管46を連通し、かつ、流入口42に流入配管48を連通することとしている。これらの流入配管46,48は、互いに同じ冷媒溜りに連通する配管であって、互いに分岐点Dで分岐されたものであるが、流入配管46の分岐点Dから流入口40までの全長と、流入配管48の分岐点Dから流入口42までの全長と、は互いに異なるものであってもよい。
一般的に、流入配管の全長が長いほど、冷媒の配管抵抗が大きくなるので、全長が比較的長い流入配管に対応する基板24の半導体素子26,28が、全長が比較的短い流入配管に対応する基板24の半導体素子26,28に比べて温度上昇し易い。そこで、例えば、図11に示す如く、流入配管48の分岐点Dから流入口42までの全長が、流入配管46の分岐点Dから流入口40までの全長に比べて長い場合は、半導体モジュール20,100の温度を検出するために用いられる温度センサを、全長の比較的長い流入配管48に対応する下アームの基板24Dの半導体素子26,28側にのみ配設することとすればよい。尚、図11には、第1実施例の場合を示す。
かかる変形例においては、半導体モジュール20,100の温度を検出して所定温度に達するか否かを判定するのに、基板24や半導体素子26,28ごとに温度センサを配設することは不要であり、温度センサを、温度上昇し易い半導体素子26,28側にのみ配設することとすれば十分である。かかる変形例によれば、簡素な構成で半導体モジュール20,100を構成することができ、基板面積の低減や製造コストの削減を図ることができる。
更に、上記の第1及び第2実施例においては、半導体モジュール20,100として、三相交流モータに適用した6個の基板24を有するものとした。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、半導体モジュール20,100として、少なくとも第2方向Yに並んだ2個以上の基板24を有するものであればよい。
尚、以上の実施例に関し、更に以下を開示する。
(1)金属板[22]と、前記金属板[22]の一方の面上に互いに隙間[30]を空けて配置される第1の半導体チップ[26,28]及び第2の半導体チップ[26,28]と、前記金属板[22]の他方の面に接するように設けられた、冷媒が流れる冷媒流路[34,104]と、を備え、前記冷媒流路[34,104]は、前記第1の半導体チップ[24]側から前記隙間[30]側へ向けて冷媒が流れる第1の流路[34a,104a]と、前記第2の半導体チップ[24]側から前記隙間[30]側へ向けて冷媒が流れる第2の流路[34b,104b]と、前記金属板[22]を介して前記隙間[30]に対向する位置に設けられた、流出口[44]に連通する出口側チャンバ[52,108]と、を有する半導体モジュール[20,100]。
上記(1)記載の構成によれば、第1の流路から第1の半導体チップ側へ向けて冷媒を供給し、かつ、第2の流路から第2の半導体チップ側へ向けて冷媒を供給することができるので、金属板の表面上の第1の半導体チップの冷却と第2の半導体チップの冷却との均等化を図ることができると共に、冷媒流路での冷媒の圧力損失を低く抑えることができる。また、流出口に連通する出口側チャンバを設けたことにより、冷媒流路での冷媒の圧力損失を低く抑えることができる。
(2)上記(1)記載の半導体モジュール[20]において、前記冷媒流路[34]は、前記金属板[22]と流入口[40,42]及び流出口[44]が設けられた流路形成体[36]との間に形成される流路であると共に、前記出口側チャンバ[52]は、前記流路形成体[36]に設けられた溝[54]により形成される半導体モジュール[20]。
(3)上記(1)記載の半導体モジュール[100]において、前記金属板[22]の他方の面に前記隙間[30]に対向する部位を除いて設けられた冷却フィン[102]を備え、前記冷媒流路[104]は、前記金属板[22]と流入口[40,42]及び流出口[44]が設けられた流路形成体[106]との間に形成される流路であると共に、前記出口側チャンバ[108]は、前記金属板[22]の他方の面の前記部位に前記冷却フィン[102]が設けられていないことにより形成される空間部である半導体モジュール[100]。
(4)上記(1)乃至(3)の何れか一項記載の半導体モジュール[20,100]において、前記第1の半導体チップ[26,28]は、前記金属板[22]の一方の面上において所定方向[X]に複数並んで配置されており、かつ、前記第2の半導体チップ[26,28]は、前記金属板[22]の一方の面上において前記所定方向[X]に複数並んで配置されていると共に、前記出口側チャンバ[52,108]は、前記所定方向[X]に沿って延びた形状を有する半導体モジュール[20,100]。
上記(4)記載の構成によれば、出口側チャンバが、第1の半導体チップや第2の半導体チップが複数並ぶ所定方向と同じ方向に沿って延びるので、流入口から冷媒流路に流入した冷媒を所定方向全域に亘って延ばした状態で流通させて出口側チャンバに回収することができる。このため、所定方向に並ぶ複数の第1の半導体チップや第2の半導体チップを均等に冷却することができる。
(5)上記(1)乃至(4)の何れか一項記載の半導体モジュール[20,100]において、前記冷媒流路[34,104]の流入口[40,42]は、前記第1の半導体チップ[26,28]側及び前記第2の半導体チップ[26,28]側それぞれに設けられる半導体モジュール[20,100]。
(6)上記(5)記載の半導体モジュール[20,100]において、前記冷媒流路[34,104]の流入口[40,42]に連通する流入配管[46,48]は、互いに分岐点で分岐された、前記第1の流路[34a,104a]に連通する長さが比較的短い第1の流入配管と、前記第2の流路に連通する長さが比較的長い第2の流入配管と、を有し、前記第2の半導体チップに生じている温度を検出する温度センサを備える半導体モジュール[20,100]。
上記(6)記載の構成によれば、温度センサを用いて、温度上昇し易い第2の半導体チップに生じている温度を検出することができるので、半導体チップごとに温度センサを配設することは不要であり、簡素な構成で半導体モジュールを構成することができる。