以下、本発明の一例である実施の形態について説明する。なお、実施の形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
<実施の形態1>
≪光電変換素子の構造≫
図1に、実施の形態1の光電変換素子の模式的な断面図を示す。実施の形態1の光電変換素子は、光入射側の光透過性の第1の支持体1と、第1の支持体1と向かい合う第2の支持体10と、第1の支持体1上の光電変換層21と、光電変換層21上の集電電極5と、集電電極5上の多孔質絶縁層6と、多孔質絶縁層6上の対極7と、第1の支持体1と第2の支持体10との間のキャリア輸送材料9とを備えている。なお、図1において、キャリア輸送材料9は、対極7と第2の支持体10との間の領域だけでなく、第1の支持体1と第2の支持体10との間の領域全体に存在している。
光電変換層21は、第1の支持体1上の第1の多孔質半導体層2と、第1の多孔質半導体層2の表面2aの一部に設けられた第2の多孔質半導体層3と、第1の多孔質半導体層2の表面2aの他の一部に設けられた第3の多孔質半導体層4とを備えている。第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4は、第1の多孔質半導体層2と集電電極5とにそれぞれ接するようにして、第1の多孔質半導体層2と集電電極5との間に設けられている。
第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4は、第1の多孔質半導体層2の表面2aから、第1の多孔質半導体層2の表面2aに対して垂直方向に延在している。
第2の多孔質半導体層3のヘイズ率と、第3の多孔質半導体層4のヘイズ率とは異なっている。ヘイズ率とは、少なくとも可視光領域または近赤外領域にスペクトルを有する光線(例えば、標準光源D65や標準光源C)を測定資料に入射した際の拡散透過率を、全光線透過率で割った値であり、0〜1の間の値もしくは0〜100%の百分率で表示される。多孔質半導体層および多孔質絶縁層のヘイズ率は、光電変換素子における光の入射光側、本実施の形態では第1の支持体1側から光を入射したときの全光線透過率および拡散透過率を測定することにより求めることができる。全光線透過率および拡散透過率の測定は、光源と光量測定部を有する装置とによって簡単に測定することができる。たとえば測定試料に密着した積分球と、積分球の測定試料とは反対側にライトトラップ(暗箱)若しくは標準板を備えた装置により測定することができる。すなわち、標準板をセットした状態において、測定試料が無い場合の入射光線の光量T1および測定試料が有る場合の全光線透過光の光量T2を測定し、ライトトラップをセットした状態において、測定試料が無い場合の装置からの拡散光の光量T3および測定試料が有る場合の拡散透過光の光量T4を測定して、全光線透過率Tt=T2/T1および拡散透過率Td=[T4−T3(T2/T1)]/T1を計算して、ヘイズ率H=Td/Ttを求めることができる。測定試料がない場合の装置からの拡散光の光量T3が無視できる場合は、Td=T4/T1となる。
多孔性半導体層および多孔質絶縁層のヘイズ率としては、その層に対して垂直な方向から光を入射して測定するヘイズ率(以下、「面ヘイズ率」と言う。)がある。複数層の面ヘイズ率の算出方法として、まず、複数層全体のヘイズ率を算出し、そこから、光の入射側と反対側の層から1層ずつ削ってヘイズ率を算出していく方法が挙げられる。この場合には、あらかじめ、複数層の側面のSEM(透過型電子顕微鏡)または顕微鏡写真を撮影して各層の膜厚を確認することができる。
また、ヘイズ率には方向依存性がないため、ヘイズ率のより正確な算出方法として、複数層を垂直方向に切断して、複数層の水平方向のヘイズ率(以下、「層ヘイズ率」と言う。)を算出することもできる。この場合の切片の厚さは10nmとする。
具体的には、まず、複数層の多孔質半導体層または多孔質絶縁層をマイクロカッターで適当な大きさに切断して試料を作製する。若しくは、さらにマイクロカッターで切断し、同じ大きさに切断したサンプルを複数層の多孔質半導体層または多孔質絶縁層が向き合うようにし、エポキシ樹脂でこれらを貼り合わせて試料を作製することもできる。
次に、ディスクグラインダー若しくはディンプルグラインダーを用いる方法、または市販のレーザスクライブ装置を用いる方法によって、試料を薄膜化して、測定試料を作製する。このとき、測定試料の断面方向の厚みは所望の膜厚と同等の膜厚とする。たとえば所望の膜厚が10μmである場合には測定試料の断面方向の厚みを10μmとする。
その後、複数層の多孔質半導体層または多孔質絶縁層の断面方向より、前述の測定方法を用いて、層ヘイズ率を測定する。このとき、測定試料に入射した光は、集光装置などを用いて、複数層の多孔質半導体層または多孔質絶縁層の各層に当てるようにするとよい。測定試料に密着した積分球においても、測定する層の膜厚と同じかあるいは狭い幅のスリットやスリット幅を変えることができる可動式のスリット等を設置しておくことが好ましい。なお、このような近赤外領域に発光スペクトルを持つ光源としては、たとえば、キセノン(Xe)ランプ、水銀キセノンランプ若しくはハロゲン・タングステンランプなどの光源または近赤外線レーザなどを挙げることができる。
以上のようにして、多孔性半導体層および多孔質絶縁層の面ヘイズ率および層ヘイズ率を測定することができる。また、多孔性半導体層および多孔質絶縁層の面ヘイズ率の値と層ヘイズ率の値とはほぼ同等となるため、多孔性半導体層および多孔質絶縁層のヘイズ率としては、面ヘイズ率および層ヘイズ率のいずれのヘイズ率を適用してもよい。
第1の支持体1上には、第1の支持体1から突出する形状を有する封止部8aが間隔を空けて設けられている。封止部8aの間の領域に、第1の多孔質半導体層2、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4が配置されている。
第2の支持体10上には、第2の支持体10から突出する形状を有する封止部8bが間隔を空けて設けられている。封止部8bは、キャリア輸送材料9の外部への流出を防いでいる。
≪第1の支持体≫
光入射側の第1の支持体1は、光透過性を有する材料であればよく、たとえば、ソーダガラス、溶融石英ガラスまたは結晶石英ガラスなどのガラス基板であってもよく、耐熱性樹脂材料からなる可撓性フィルムであってもよい。第1の支持体1の光透過性は、少なくとも後述の光増感剤に実効的な感度を有する波長の光を実質的に透過する(当該光の透過率がたとえば80%以上、好ましくは90%以上)ものであればよく、必ずしも全ての波長の光に対して透過性を有する必要はない。支持体1の厚さは特に限定されず、たとえば0.2mm以上5mm以下とすることができる。
第1の支持体1に用いられる可撓性フィルム(以下、「フィルム」という)としては、たとえば、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PA)、ポリエーテルイミド(PEI)、フェノキシ樹脂またはテフロン(登録商標)などからなるフィルムを用いることができる。
加熱を伴って支持体1の上に他の層を形成する場合、たとえば250℃程度の加熱を伴って第1の支持体1上に第1の多孔質半導体層2を形成する場合には、上記のフィルムを構成する材料の中でも250℃以上の耐熱性を有するテフロン(登録商標)を用いることが特に好ましい。
≪光電変換層≫
光電変換層21は、多孔質半導体層と、多孔質半導体層上の光増感剤とを有している。多孔質半導体層は、第1の多孔質半導体層2と、第1の多孔質半導体層2の表面2aの一部に設けられた第2の多孔質半導体層3と、第1の多孔質半導体層2の表面2aの他の一部に設けられた第3の多孔質半導体層4とから構成されている。光増感剤は、第1の多孔質半導体層2の表面上、第2の多孔質半導体層3の表面上および第3の多孔質半導体層4の表面上にそれぞれ吸着等により設置されていればよい。
[多孔質半導体層]
第1の多孔質半導体層2、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4は、多孔質の半導体材料から構成されている。ここで、上述のように、第2の多孔質半導体層3と第3の多孔質半導体層4とは互いにヘイズ率が異なっている。
第1の多孔質半導体層2、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4を構成する半導体材料としては、たとえば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉄、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化タングステン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム、硫化鉛、硫化亜鉛、リン化インジウム、銅−インジウム硫化物(CuInS2)、CuAlO2およびSrCu2O2などの化合物半導体材料のうち1つを単独で、若しくは2つ以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、光電変換素子の光電変換効率、安定性および安全性を向上させる観点からは、第1の多孔質半導体層2、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4を構成する半導体材料として酸化チタンを用いることが好ましい。なお、酸化チタンとしては、たとえば、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、無定形酸化チタン、メタチタン酸、オルソチタン酸、水酸化チタンおよび含水酸化チタンからなる群から選択された1つを単独で、若しくは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
第1の多孔質半導体層2、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4の気孔率は特に限定されないが、それぞれ20%以上とすることが好ましい。第1の多孔質半導体層2、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4のそれぞれの層の気孔率が20%以上である場合には、光電変換層21にキャリア輸送材料9を十分に拡散することができるため、光電変換層21に電子をよりスムーズに戻すことができる。なお、第1の多孔質半導体層2、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4の気孔率は、JIS M 8716(1990)の気孔率の算出方法にしたがって算出される。
また、第1の多孔質半導体層2、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4の比表面積は特に限定されないが、それぞれ、0.5m2/g以上300m2/g以下とすることが好ましい。第1の多孔質半導体層2、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4の比表面積がそれぞれ0.5m2/g以上300m2/g以下である場合には、より多くの光増感剤を担持することができるため、太陽光などの光をより効率的に吸収することができる。なお、第1の多孔質半導体層2、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4の比表面積は、JIS Z 8830(2013)にしたがって算出される。
[光増感剤]
光増感剤としては、たとえば、多孔質半導体層に吸着等されて光増感剤として機能し、可視光領域および赤外光領域の少なくとも一方の領域の光を吸収可能な有機色素および金属錯体色素の少なくとも一方の色素を用いることができる。
有機色素としては、たとえば、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、ペリレン系色素、インジゴ系色素およびナフタロシアニン系色素からなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。有機色素の吸光係数は、一般に、遷移金属に分子が配位結合された形態を有する金属錯体色素の吸光係数よりも大きい。
金属錯体色素としては、たとえば、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、V(バナジウム)、Sn(錫)、Si(珪素)、Ti(チタン)、Ge(ゲルマニウム)、Cr(クロム)、Zn(亜鉛)、Ru(ルテニウム)、Mg(マグネシウム)、Al(アルミニウム)、Pb(鉛)、Mn(マンガン)、In(インジウム)、Mo(モリブデン)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、Sb(アンチモン)、La(ランタン)、W(タングステン)、Pt(白金)、Ta(タンタル)、Ir(イリジウム)、Pd(パラジウム)、Os(オスミウム)、Ga(ガリウム)、Tb(テルビウム)、Eu(ユーロピウム)、Rb(ルビジウム)、Bi(ビスマス)、Se(セレン)、As(ヒ素)、Sc(スカンジウム)、Ag(銀)、Cd(カドミウム)、Hf(ハフニウム)、Re(レニウム)、Au(金)、Ac(アクチニウム)、Tc(テクネチウム)、Te(テルル)またはRh(ロジウム)などの金属原子に配位子が配位結合されたものを単独で、若しくは複数組み合わせて用いることができる。金属錯体色素は、たとえば、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素またはナフタロシアニン系色素であることが好ましく、これらの中でもフタロシアニン系色素またはルテニウム系色素であることがより好ましく、ルテニウム系金属錯体色素であることがさらに好ましい。
金属錯体色素は、化学式(1)〜(3)で表されるルテニウム系金属錯体色素であることが特に好ましい。市販のルテニウム系金属錯体色素として、たとえば、Solaronix社製の商品名Ruthenium535色素、Ruthenium535−bisTBA色素、またはRuthenium620−1H3TBA色素などが挙げられる。
色素を多孔質半導体層に強固に吸着させるためには、色素は、分子中にカルボキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、エステル基、メルカプト基またはホスホニル基などのインターロック基を有することが好ましい。一般に、インターロック基は、色素が多孔質半導体層に固定される際に色素と多孔質半導体層との間に存在し、色素の励起状態と多孔質半導体層を構成する半導体材料の伝導帯との間の電子の移動を容易にする電気的結合を提供する。
色素の吸着量は、1×10-8mol/cm2以上1×10-6mol/cm2以下であることが好ましく、5×10-8mol/cm2以上5×10-7mol/cm2以下であることがより好ましい。色素の吸着量が1×10-8mol/cm2以上である場合、特に5×10-8mol/cm2以上である場合には、光電変換素子の光電変換効率が向上する傾向にある。また、色素の吸着量が1×10-6mol/cm2以下である場合、特に5×10-7mol/cm2以下である場合には光電変換素子の開放電圧が向上する傾向にある。
≪集電電極≫
集電電極5としては、キャリア輸送材料9に対して腐食性を示さず、かつ複数の細孔を有する金属を用いることが好ましい。キャリア輸送材料9に対して腐食性を示さない金属としては、たとえば、Ti、NiおよびTaからなる群から選択された少なくとも1種の金属を挙げることができる。
集電電極5の厚さは、特に限定されないが、たとえば0.02μm以上50μm以下とすることができる。また、集電電極5のシート抵抗値は低ければ低いほどF.F(曲線因子)が向上するため好ましく、特に40Ω/□以下であることが好ましい。
集電電極5の細孔は、キャリア輸送材料9のパスとして機能するため、キャリア輸送材料9は、集電電極5の細孔を通って、光電変換層21の多孔質半導体層と対極6との間を移動することができる。
≪多孔質絶縁層≫
多孔質絶縁層6としては、光電変換層21から対極7へのリーク電流を低減する材料を用いることができ、たとえば、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化珪素、酸化アルミニウムおよびチタン酸バリウムからなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。
多孔質絶縁層6は、1×1012Ω・cm以下の導電率を有する材料で形成されていることが好ましい。このような導電率の低い材料で多孔質絶縁層6を形成することにより、光電変換層21から対極7へのリーク電流を低減することができる。
多孔質絶縁層6の厚さは、0.2μm以上5μm以下であることが好ましく、0.5μm以上2μm以下であることがより好ましい。多孔質絶縁層6の厚さが0.2μm以上である場合、特に0.5μm以上である場合には光電変換層21から対極7へのリーク電流を低減することができる傾向にある。また、多孔質絶縁層6の厚さが5μm以下である場合、特に2μm以下である場合には、キャリア輸送材料9によって構成されるキャリア輸送層の抵抗が低下し、光電変換素子のF.F(フィルファクター)が向上する傾向にある。
≪対極≫
対極7は、集電電極5とは反対側の極性を有する電極であって、キャリア輸送材料9と接するようにして設けられている。対極7としては、集電電極5を構成する材料と同様の材料を用いることができる。
対極7は、触媒層と導電層との積層体であることが好ましい。ここで、触媒層は、キャリア輸送材料9と導電層との間に設けられていることが好ましく、電解質の酸化還元反応を活性化させる働きを有することが好ましく、たとえば、白金(プラチナ)、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、またはフラーレンなどからなることが好ましい。なお触媒層が導電性を有する場合には、対極7は触媒層のみから構成されていてもよい。ここで、導電層としては、上記の触媒層として用いた材料の他に、たとえば、金属および/または導電性酸化物を用いることもできる。導電層に用いられる金属としては、たとえば、チタン、タンタルまたはニッケルなどのキャリア輸送材料9に対して耐腐食性を有する金属を挙げることができる。また、導電層に用いられる導電性酸化物としては、たとえば、インジウム錫複合酸化物(ITO)、酸化錫(SnO2)、フッ素をドープした酸化錫(FTO)、または酸化亜鉛(ZnO)などを挙げることができる。
≪キャリア輸送材料≫
キャリア輸送材料9としては、酸化還元種を含む液体電解質などの流動性を有する電解質を用いることができる。
酸化還元種としては、たとえば、I-/I3-系、Br2-/Br3-系、Fe2+/Fe3+系、またはキノン/ハイドロキノン系などを用いることができる。酸化還元種としては、たとえば、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化カリウム(KI)またはヨウ化カルシウム(CaI2)などの金属ヨウ化物とヨウ素(I2)との組み合わせを用いることができる。また、酸化還元種としては、たとえば、テトラエチルアンモニウムアイオダイド(TEAI)、テトラプロピルアンモニウムアイオダイド(TPAI)、テトラブチルアンモニウムアイオダイド(TBAI)またはテトラヘキシルアンモニウムアイオダイド(THAI)などのテトラアルキルアンモニウム塩とヨウ素との組み合わせを用いることができる。さらに、酸化還元種としては、臭化リチウム(LiBr)、臭化ナトリウム(NaBr)、臭化カリウム(KBr)または臭化カルシウム(CaBr2)などの金属臭化物と臭素との組み合わせを用いることができる。なかでも、酸化還元種としては、LiIとI2との組み合わせを用いることが特に好ましい。
酸化還元種を溶解可能な溶媒としては、たとえば、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、アセトニトリルなどのニトリル化合物、エタノールなどのアルコール類、水または非プロトン極性物質などを用いることができる。なかでも、酸化還元種を溶解可能な溶媒としては、カーボネート化合物またはニトリル化合物を用いることが特に好ましい。酸化還元種を溶解可能な溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
≪第2の支持体≫
第2の支持体10は、キャリア輸送材料9を外部に流出させない材料であれば特に限定なく用いることができ、たとえば、第1の支持体1を構成する材料と同様の材料を用いることができる。ただし、第2の支持体10には必ずしも光透過性は必要とされないため、金属などの不透光性の材料を用いてもよい。
≪封止部≫
封止部8a,8bとしては、第1の支持体1と第2の支持体10との間のキャリア輸送材料9が外部に流出するのを防止することができる材料を用いることができ、たとえば熱硬化型樹脂または光硬化型樹脂などの樹脂を用いることができる。封止部8a,8bに用いられる樹脂としては、たとえば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソブチレン系樹脂、アクリル樹脂、スリーボンド社製の型番:31X−101、およびスリーボンド社製の型番:31X−088からなる群から選択された少なくとも1種を含む樹脂を用いることができる。また、封止部8a,8bとしては、ガラスフリットを含む樹脂を用いることもできる。
≪光電変換素子の製造方法≫
図2に、実施の形態1の光電変換素子の製造方法の一例のフローチャートを示す。図2に示すように、実施の形態1の光電変換素子の製造方法は、封止部形成工程(S11)と、多孔質半導体層形成工程(S12)と、集電電極形成工程(S13)と、多孔質絶縁層形成工程(S14)と、対極形成工程(S15)と、光増感剤設置工程(S16)と、第1の支持体と第2の支持体との接合工程(S17)と、キャリア輸送材料設置工程(S18)とを含んでおり、S11、S12、S13、S14、S15、S16、S17およびS18の順に行なわれる。実施の形態1の光電変換素子の製造方法の一例には、S11、S12、S13、S14、S15、S16、S17およびS18以外の工程が含まれていてもよい。また、工程の順序も、上記の工程の順序に限定されない。
[封止部形成工程]
封止部形成工程(S11)は、図1に示すように、第1の支持体1の一方の表面上に互いに間隔を空けて封止部8aを形成することにより行なうことができる。
封止部8aの形成は、たとえば、第1の支持体10の表面の所望の位置にガラスフリットを含む樹脂を塗布した後に硬化することなどにより行なうことができる。
[多孔質半導体層形成工程]
多孔質半導体層形成工程(S12)は、図1に示すように、第1の支持体1の表面の封止部8aが形成されている箇所以外の箇所に第1の多孔質半導体層2を形成するとともに、第1の多孔質半導体層2の表面上に第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4を形成することにより行なうことができる。
多孔質半導体層形成工程は、たとえば以下のようにして行なうことができる。まず、第1の支持体1の表面に対応する位置に開口部を有するようにスクリーンを設置し、当該スクリーンを用いて第1の多孔質半導体層2を構成する半導体粒子を含むペーストを塗布する。
次に、図3に示す帯状の開口部31と帯状の非開口部(開口していない部分)32とが交互に配列されたスクリーン30aを設置し、スクリーン30aを用いて第2の多孔質半導体層3を構成する半導体粒子を含むペーストを塗布する。このとき、スクリーン30aの開口部31に対応する箇所のみにペーストが塗布されるため、第2の多孔質半導体層3を構成する半導体粒子を含むペーストは、第1の多孔質半導体層2を構成する半導体粒子を含むペースト上に、ストライプ状に塗布される。
次に、図4に示す帯状の開口部31と帯状の非開口部32とが交互に配列されたスクリーン30bを設置し、スクリーン30bを用いて第3の多孔質半導体層4を構成する半導体粒子を含むペーストを塗布する。このとき、スクリーン30bの開口部31に対応する箇所のみにペーストが塗布されるため、第3の多孔質半導体層4を構成する半導体粒子を含むペーストは、第1の多孔質半導体層2を構成する半導体粒子を含むペースト上において、第2の多孔質半導体層3を構成する半導体粒子を含むペーストが塗布されていない領域に、ストライプ状に塗布される。
なお、第2の多孔質半導体層3を構成する半導体粒子を含むペーストの塗布時に図4に示すスクリーン30bを用い、第3の多孔質半導体層4を構成する半導体粒子を含むペーストの塗布時に図3に示すスクリーン30aを用いてもよい。
最後に、上述のようにして塗布された第1の多孔質半導体層2を構成する半導体粒子を含むペースト、第2の多孔質半導体層3を構成する半導体粒子を含むペーストおよび第3の多孔質半導体層4を構成する半導体粒子を含むペーストを焼成することによって、第1の多孔質半導体層2、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4をそれぞれ形成することができる。
なお、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4の形成に用いられるスクリーンとしては、図5の模式的平面図に示すスクリーン30cを用いてもよい。図5に示すスクリーン30cにおいては、正方形状の開口部31と正方形状の非開口部32とが縦方向および横方向にそれぞれ交互に配置されていることを特徴としている。
また、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4の形成に用いられるスクリーンとしては、図6の模式的平面図に示すスクリーン30dを用いてもよい。図6に示すスクリーン30dにおいては、正方形状または矩形状の開口部31と、正方形状の非開口部32とが縦方向および横方向にそれぞれ交互に配置されているとともに、開口部31および非開口部32の大きさが異なっていることを特徴としている。
さらに、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4の形成に用いられるスクリーンとしては、図7の模式的平面図に示すスクリーン30eを用いてもよい。図7に示すスクリーン30eにおいては、円形状の非開口部32が縦方向および横方向にそれぞれ間隔を空けて配置されており、非開口部32以外の領域が開口部31となっていることを特徴としている。
なお、スクリーン30c,30d,30eのいずれにおいても、第2の多孔質半導体層3を構成する半導体粒子を含むペーストの塗布時と、第3の多孔質半導体層4を構成する半導体粒子を含むペーストの塗布時とでは、開口部31と非開口部32との位置が逆になるスクリーンが用いられることは、上記と同様である。
また、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4は、互いにヘイズ率が異なるように、たとえば、第2の多孔質半導体層3を構成する半導体粒子を含むペーストおよび第3の多孔質半導体層4を構成する半導体粒子を含むペーストをそれぞれ調整することにより作製することができる。
[集電電極形成工程]
集電電極形成工程(S13)は、図1に示すように、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4の表面、封止部8aの表面および第1の支持体1の表面を覆うようにして集電電極5を形成することにより行なうことができる。
集電電極5の形成は、たとえば、メタルマスクを用いて、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4の表面、封止部8aの表面および第1の支持体1の表面を覆うように金属を蒸着することなどにより行なうことができる。
[多孔質絶縁層形成工程]
多孔質絶縁層形成工程(S14)は、図1に示すように、集電電極5の表面、封止部8aの表面、および第1の支持体1の表面を覆うようにして多孔質絶縁層6を形成することにより行なうことができる。
多孔質絶縁層6は、たとえば、多孔質絶縁層6を構成する絶縁性粒子を含むペーストを集電電極5の表面、封止部8aの表面、および第1の支持体1の表面を覆うように塗布した後に、焼成することによって形成することができる。
[対極形成工程]
対極形成工程(S15)は、図1に示すように、多孔質絶縁層6の表面および第1の支持体1の表面を覆うようにして対極7を形成することにより行なうことができる。
対極7の形成は、たとえば、メタルマスクを用いて、多孔質絶縁層6の表面および第1の支持体1の表面を覆うように金属および/または導電性酸化物を蒸着することなどにより行なうことができる。
[光増感剤設置工程]
光増感剤設置工程(S16)は、第1の多孔質半導体層2の表面、第2の多孔質半導体層3の表面、および第3の多孔質半導体層4の表面に光増感剤を設置することにより行なうことができる。
光増感剤の設置は、たとえば、色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に、第1の多孔質半導体層2、第2の多孔質半導体層3の表面および第3の多孔質半導体層4を浸漬させることなどによって行なうことができる。このとき、色素吸着用溶液を第1の多孔質半導体層2、第2の多孔質半導体層3の表面および第3の多孔質半導体層4内の細孔の奥部まで浸透させるために、色素吸着用溶液を加熱してもよい。
[第1の支持体と第2の支持体との接合工程]
第1の支持体と第2の支持体との接合工程(S17)は、図1に示すように、第1の支持体1の封止部8aの設置側と第2の支持体10とを封止部8bによって接合することにより行なわれる。
第1の支持体1と第2の支持体10との接合は、たとえば、第2の支持体10の一方の表面上の所望の位置に熱硬化型樹脂または光硬化型樹脂などの液状の樹脂を塗布した後に当該樹脂上に、第1の支持体1の封止部8aの設置側を載置し、熱硬化型樹脂であれば加熱することにより、光硬化型樹脂であれば光を照射することにより、塗布された液状の樹脂を硬化して行なうことができる。ここで、第1の支持体1と第2の支持体10との接合工程は、対極7と第2の支持体10との間に空間を設けるようにして行なわれる。
[キャリア輸送材料設置工程]
キャリア輸送材料設置工程(S18)は、第1の支持体1と第2の支持体10との間の領域にキャリア輸送材料9を充填することにより行なうことができる。
キャリア輸送材料9は、たとえば、任意の箇所に設けられた注入口(図示せず)から、第1の支持体1と第2の支持体10との間の領域にキャリア輸送材料9を注入することなどにより設置することができる。以上の工程により、実施形態1の光電変換素子を製造することができる。
≪作用効果≫
従来の特許文献2のように、光入射側の透明導電膜を用いずに、細孔の径およびシート抵抗が一様な集電電極のみを用いて電子を収集する場合には、集電電極を厚くすると細孔が塞がるために色素吸着用溶液および電解液の透過が妨げられる。また、集電電極を薄くすると細孔の径が大きくなるために集電電極のシート抵抗が高くなって、電子の収集が妨げられる。そのため、従来の特許文献2のように、光入射側の透明導電膜を用いずに細孔の径およびシート抵抗が一様な集電電極を用いる場合には、光入射側の透明導電膜に電子の収集機能を持たせた場合と比べて短絡電流密度が低くなり、集電電極の厚さを最適な厚さとした場合でも短絡電流密度の上限はある程度低い値に制限されてしまう。
一方、実施の形態1の光電変換素子においては、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4のうちヘイズ率の低い方の多孔質半導体層上の集電電極5の領域をシート抵抗が低い領域とすることができるため、当該領域を、光の入射により光電変換層21で発生した電子を収集する領域とすることができる。また、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4のうちヘイズ率の高い方の多孔質半導体層上に形成された集電電極5の領域を細孔の径が大きい領域とすることができるため、当該領域を、色素吸着用溶液およびキャリア輸送材料9が透過する領域とすることができる。
そのため、実施の形態1の光電変換素子においては、集電電極5に、電子を効率的に収集できる領域と、色素吸着用溶液およびキャリア輸送材料9を効率的に透過することができる領域とを兼ね備えさせることができるため、従来の特許文献2の場合よりも高い短絡電流密度を実現することができる。
なお、実施の形態1の光電変換素子においては、集電電極5に接している第2の多孔質半導体層3のヘイズ率と、第3の多孔質半導体層4のヘイズ率とが異なっているために、第2の多孔質半導体層3上に形成される集電電極5(以下、「第1の集電電極領域」と言う。)の表面形態と、第3の多孔質半導体層4上に形成される集電電極5(以下、「第2の集電電極領域」と言う。)の表面形態とを異なるものとすることができる。
すなわち、たとえば、第2の多孔質半導体層3のヘイズ率が第3の多孔質半導体層4のヘイズ率よりも小さい場合には、第1の集電電極領域は密に形成され、第2の集電電極領域は疎に形成される。この場合には、第1の集電電極領域は、細孔の径が小さく、シート抵抗が小さな電極領域となり、第2の集電電極領域は、細孔の径が大きく、シート抵抗が大きな電極領域となる。
また、たとえば、第2の多孔質半導体層3のヘイズ率が第3の多孔質半導体層4のヘイズ率よりも大きい場合には、第1の集電電極領域は疎に形成され、第2の集電電極領域は密に形成される。この場合には、第1の集電電極領域は、細孔の径が大きく、シート抵抗が大きな電極領域となり、第2の集電電極領域は、第1の集電電極領域と比べて、細孔の径が小さく、シート抵抗が小さな電極領域となる。
さらに、実施の形態1の光電変換素子においては、互いに異なる性質を有する複数の領域からなる集電電極5を蒸着などの1つのプロセスで容易に形成することができる。
<実施の形態2>
≪光電変換素子の構造≫
図8に、実施の形態2の光電変換素子の模式的な断面図を示す。実施の形態2の光電変換素子は、多孔質絶縁層6が、対極7上の第1の多孔質半導体層13と、第1の多孔質半導体層13の表面6aの一部に設けられた第2の多孔質絶縁層11と、第1の多孔質半導体層13の表面6aの他の一部に設けられた第3の多孔質絶縁層12とを備え、第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12は集電電極5に接しており、第2の多孔質絶縁層11と第3の多孔質絶縁層12とのヘイズ率が異なっていることを特徴としている。
実施の形態2の光電変換素子においては、第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12が、第1の多孔質絶縁層13の表面6aから、第1の多孔質絶縁層13の表面6aに対して垂直方向に延在している。
実施の形態2の光電変換素子は、図8に示すように、集電電極5の表面上に第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12を形成し、第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12上に第1の多孔質絶縁層13を形成することにより多孔質絶縁層6を形成すること以外は実施の形態1と同様にして作製することができる。
≪光電変換素子の製造方法≫
実施の形態2における多孔質半導体層形成工程は、たとえば以下のようにして行なうことができる。まず、図3に示す帯状の開口部31と帯状の非開口部32とが交互に配列されたスクリーン30aを設置し、スクリーン30aを用いて第2の多孔質絶縁層11を構成する絶縁体粒子を含むペーストを塗布する。このとき、スクリーン30aの開口部31に対応する箇所のみにペーストが塗布されるため、第2の多孔質絶縁層11を構成する絶縁体粒子を含むペーストは、集電電極5の表面上に、ストライプ状に塗布される。
次に、図4に示す帯状の開口部31と帯状の非開口部32とが交互に配列されたスクリーン30bを設置し、スクリーン30bを用いて第3の多孔質絶縁層12を構成する絶縁体粒子を含むペーストを塗布する。このとき、スクリーン30bの開口部31に対応する箇所のみにペーストが塗布されるため、第3の多孔質絶縁層12を構成する絶縁体粒子を含むペーストは、集電電極5の表面上に、第2の多孔質絶縁層11を構成する絶縁体粒子を含むペーストが塗布されていない領域に、ストライプ状に塗布される。
なお、第2の多孔質絶縁層11を構成する絶縁体粒子を含むペーストの塗布時に図4に示すスクリーン30bを用い、第3の多孔質絶縁層12を構成する絶縁体粒子を含むペーストの塗布時に図3に示すスクリーン30aを用いてもよい。
次に、第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12の表面に対応する位置に開口部を有するようにスクリーンを設置し、当該スクリーンを用いて第1の多孔質絶縁層13を構成する絶縁体粒子を含むペーストを塗布する。
最後に、上述のようにして塗布された第1の多孔質絶縁層13を構成する絶縁体粒子を含むペースト、第2の多孔質絶縁層11を構成する絶縁体粒子を含むペーストおよび第3の多孔質絶縁層12を構成する絶縁体粒子を含むペーストを焼成することによって、第1の多孔質半導体層13、第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12をそれぞれ形成することができる。
また、第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12の形成に用いられるスクリーンとしては、図5に示すスクリーン30c、図6に示すスクリーン30dおよび図7に示すスクリーン30eを用いてもよい。なお、スクリーン30c,30d,30eのいずれにおいても、第2の多孔質絶縁層11を構成する絶縁体粒子を含むペーストの塗布時と、第3の多孔質絶縁層12を構成する絶縁体粒子を含むペーストの塗布時とでは、開口部31と非開口部32との位置が逆になるスクリーンが用いられることは、上記と同様である。
また、第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12は、互いにヘイズ率が異なるように、たとえば、第2の多孔質絶縁層11を構成する絶縁体粒子を含むペーストおよび第3の多孔質絶縁層12を構成する絶縁体粒子を含むペーストをそれぞれ調整することにより作製することができる。
≪作用効果≫
実施の形態2の光電変換素子においては、集電電極5上に設けられた互いにヘイズ率の異なる第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12と、第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12上に設けられた第1の多孔質絶縁層13とから多孔質絶縁層6が構成されている。これにより、実施の形態2の光電変換素子においては、実施の形態1の光電変換素子と比べて色素吸着用溶液およびキャリア輸送材料9をより効率的に透過することができる場合があるため、実施の形態1の光電変換素子よりも高い短絡電流密度と高い変換効率を得ることができる場合がある。たとえば、実施の形態1における1層のみからなる多孔質絶縁層6のヘイズ率が20%であり、実施の形態2における集電電極5に接している第2の多孔質絶縁層11のヘイズ率および第3の多孔質絶縁層12のヘイズ率をそれぞれ20%および60%であるとする。このとき、ヘイズ率が20%の1層のみからなる多孔質絶縁層6を用いた場合よりは、ヘイズ率が60%の第3の多孔質絶縁層12を有する多孔質絶縁層6を流れるキャリア輸送材料9の量が多くなるため、短絡電流密度が増加する。したがって、この場合には、実施の形態2の光電変換素子の短絡電流密度および変換効率が高くなる。
実施の形態2における上記以外の説明は実施の形態1と同様であるため、その説明については繰り返さない。
<実施の形態3>
図9に、実施の形態3の光電変換素子の模式的な断面図を示す。実施の形態3の光電変換素子は、実施の形態1および実施の形態2の光電変換素子と積層順序が異なっていることを特徴としている。
≪光電変換素子の製造方法≫
図10に、実施の形態3の光電変換素子の製造方法の一例のフローチャートを示す。図10に示すように、実施の形態3の光電変換素子の製造方法は、対極形成工程(S21)と、封止部形成工程(S22)と、多孔質絶縁層形成工程(S23)と、集電電極形成工程(S24)と、多孔質半導体層形成工程(S25)と、光増感剤設置工程(S26)と、第1の支持体と第2の支持体との接合工程(S27)と、キャリア輸送材料設置工程(S28)とを含んでおり、S21、S22、S23、S24、S25、S26、S27およびS28の順に行なわれる。実施の形態3の光電変換素子の製造方法の一例には、S21、S22、S23、S24、S25、S26、S27およびS28以外の工程が含まれていてもよい。また、工程の順序も、上記の工程の順序に限定されない。
[対極形成工程]
対極形成工程(S21)は、図9に示すように、第2の支持体10の表面の一部に対極7を形成することにより行なうことができる。
対極7の形成は、たとえば、メタルマスクを用いて、第2の支持体10の表面の一部を覆うように金属および/または導電性酸化物を蒸着することなどにより行なうことができる。
[封止部形成工程]
封止部形成工程(S22)は、図9に示すように、第2の支持体10の一方の表面上および対極7の表面上にそれぞれに互いに間隔を空けて封止部8bを形成することにより行なうことができる。
封止部8bの形成は、たとえば、第2の支持体10および対極7の表面の所望の位置にガラスフリットを含む樹脂を塗布した後に硬化することなどにより行なうことができる。
[多孔質絶縁層形成工程]
多孔質絶縁層形成工程(S23)は、図9に示すように、封止部8bの間の対極7の表面上に第1の多孔質絶縁層13を形成し、第1の多孔質絶縁層13の表面上に第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12を形成することにより行なうことができる。なお、第1の多孔質絶縁層13、第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12の形成方法についての説明は実施の形態2と同様である。
[集電電極形成工程]
集電電極形成工程(S24)は、図9に示すように、第2の多孔質絶縁層11、第3の多孔質絶縁層12および封止部8bの表面を覆うようにして集電電極5を形成することにより行なうことができる。
集電電極5の形成は、たとえば、メタルマスクを用いて、第2の多孔質絶縁層11、第3の多孔質絶縁層12および封止部8bの表面を覆うように金属を蒸着することなどにより行なうことができる。
[多孔質半導体層形成工程]
多孔質半導体層形成工程(S25)は、図9に示すように、集電電極5の表面上に第2の多孔質半導体層3を形成するとともに、第2の多孔質半導体層3の表面上に第1の多孔質半導体層2を形成することにより行なうことができる。
多孔質半導体層形成工程は、たとえば以下のようにして行なうことができる。まず、集電電極5の表面に対応する位置に開口部を有するスクリーンを設置し、当該スクリーンを用いて第2の多孔質半導体層3を構成する半導体粒子を含むペーストを塗布する。
次に、第2の多孔質半導体層3を構成する半導体粒子を含むペーストの表面に対応する位置に開口部を有するスクリーンを設置し、当該スクリーンを用いて第1の多孔質半導体層2を構成する半導体粒子を含むペーストを塗布する。
最後に、上述のようにして塗布された第2の多孔質半導体層3を構成する半導体粒子を含むペーストおよび第1の多孔質半導体層2を構成する半導体粒子を含むペーストを焼成することによって、第1の多孔質半導体層2および第2の多孔質半導体層3をそれぞれ形成することができる。
[光増感剤設置工程]
光増感剤設置工程(S26)は、第1の多孔質半導体層2の表面および第2の多孔質半導体層3の表面に光増感剤を設置することにより行なうことができる。
光増感剤の設置は、たとえば、色素吸着用溶液に、第1の多孔質半導体層2および第2の多孔質半導体層3を浸漬させることなどによって行なうことができる。このとき、色素吸着用溶液を第1の多孔質半導体層2および第2の多孔質半導体層3内の微細孔の奥部まで浸透させるために、色素吸着用溶液を加熱してもよい。
[第1の支持体と第2の支持体との接合工程]
第1の支持体と第2の支持体との接合工程(S27)は、図9に示すように、第2の支持体10の封止部8bの設置側と第1の支持体1とを封止部8aによって接合することにより行なわれる。
第1の支持体1と第2の支持体10との接合は、たとえば、第1の支持体1の一方の表面上の所望の位置に熱硬化型樹脂または光硬化型樹脂などの液状の樹脂を塗布した後に当該樹脂上に、第2の支持体10の封止部8bの設置側を載置し、熱硬化型樹脂であれば加熱することにより、光硬化型樹脂であれば光を照射することにより、塗布された液状の樹脂を硬化して行なうことができる。ここで、第1の支持体1と第2の支持体10との接合工程は、第1の支持体1と第1の多孔質半導体層2との間に空間を設けるようにして行なわれる。
[キャリア輸送材料設置工程]
キャリア輸送材料設置工程(S28)は、第1の支持体1と第1の多孔質半導体層2との間の領域にキャリア輸送材料9を設置することにより行なうことができる。
キャリア輸送材料9は、たとえば、任意の箇所に設けられた注入口(図示せず)から、第1の支持体1と第1の多孔質半導体層2との間の領域にキャリア輸送材料9を注入することなどにより設置することができる。以上の工程により、実施形態3の光電変換素子を製造することができる。
≪作用効果≫
実施の形態3の光電変換素子においては、第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12のうちヘイズ率の低い方の多孔質絶縁層上の集電電極5の領域をシート抵抗が低い領域とすることができるため、当該領域を、光の入射により光電変換層21で発生した電子を収集する領域とすることができる。また、第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12のうちヘイズ率の高い方の多孔質絶縁層上の集電電極5の領域を細孔の径が大きい領域とすることができるため、当該領域を、キャリア輸送材料9が透過する領域とすることができる。
そのため、実施の形態3の光電変換素子においては、集電電極5に、電子を効率的に収集できる領域と、キャリア輸送材料9を効率的に透過することができる領域とを兼ね備えさせることができるため、従来の特許文献2の場合よりも高い短絡電流密度を実現することができる。
さらに、実施の形態3の光電変換素子においても、互いに異なる性質を有する複数の領域からなる集電電極5を蒸着などの1つのプロセスで容易に形成することができる。
実施の形態3における上記以外の説明は実施の形態1および実施の形態2と同様であるため、その説明については繰り返さない。
<実施の形態4>
≪光電変換素子の構造≫
図11に、実施の形態4の光電変換素子の模式的な断面図を示す。実施の形態4の光電変換素子は、光電変換層21が、集電電極5上の第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12と、第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12上の第1の多孔質半導体層13とを備えていることを特徴としている。
≪光電変換素子の製造方法≫
実施の形態4の光電変換素子は、図11に示すように、集電電極5上に第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12を形成し、第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12上に第1の多孔質絶縁層13を形成すること以外は実施の形態3と同様にして作製することができる。
≪作用効果≫
実施の形態4の光電変換素子においても、第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12のうちヘイズ率の低い方の多孔質絶縁層上の集電電極5の領域(以下、「第3の集電電極領域」という。)をシート抵抗が低い領域とすることができるため、当該領域を、光の入射により光電変換層21で発生した電子を効率的に収集する領域とすることができる。また、第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12のうちヘイズ率の高い方の多孔質絶縁層上に形成された集電電極5の領域(以下、「第4の集電電極領域」という。)を細孔の径が大きい領域とすることができるため、当該領域を、キャリア輸送材料9が効率的に透過する領域とすることができる。
そのため、実施の形態4の光電変換素子においても、集電電極5に、電子を効率的に収集できる領域と、キャリア輸送材料9を効率的に透過させることができる領域とを兼ね備えさせることができるため、従来の特許文献2の場合よりも高い短絡電流密度を実現することができる。
さらに、実施の形態4の光電変換素子においては、第3の集電電極領域上に第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12のうちヘイズ率の低い方の多孔質絶縁層を設置し、第4の集電電極領域上に第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12のうちヘイズ率の高い方の多孔質絶縁層を設置することによって、集電電極5における電子収集領域とキャリア輸送材料透過領域との間の機能差をより明確にすることができるため、より高い短絡電流密度の実現を可能とすることができる。
さらに、実施の形態4の光電変換素子においても、互いに異なる性質を有する複数の領域からなる集電電極5を蒸着などの1つのプロセスで容易に形成することができる。
実施の形態4における上記以外の説明は実施の形態3と同様であるため、その説明については繰り返さない。
<実施例1>
実施例1においては、図1に示す構造を有する色素増感太陽電池を作製した。まず、第1の支持体1として、幅51mm×長さ70mm×厚さ1mmのガラス基板(コーニング社製の7059)を用意した。
次に、ガラス基板上であって多孔質半導体層が形成される箇所の周囲に、開口部の幅が0.5mmであるスクリーンを設置した。そして、スクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製の型式:LS−34TVA)を用いてガラスフリットを含む樹脂をガラス基板の上に塗布し、室温で1時間のレベリングを行なった。そして、レベリング後の得られたガラスフリットを80℃で20分予備乾燥した後、450℃で一時間焼成した。これにより、図1に示すように、第1の支持体1の表面上に封止部8aを形成した。
次に、幅5mm×長さ5mmの正方形状の開口部を有するスクリーンを設置し、封止部8aの間の第1の支持体1の表面上に第1の多孔質半導体層2を構成する酸化チタン粒子を含むペースト(Solaronix社製のT/SPペースト)をスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製の型式:LS−34TVA)を用いたスクリーン印刷により塗布した。
次に、図3に示す帯状の開口部31(幅0.5mm×長さ5mm)と帯状の非開口部32(幅0.5mm×長さ5mm)とが交互に1本ずつ、合計5本ずつ配列されたスクリーン30aを設置し、スクリーン30aを用いて第2の多孔質半導体層3を構成する酸化チタン粒子を含むペースト(Solaronix社製のD/SPペースト)をスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製の型式:LS−34TVA)を用いたスクリーン印刷により塗布した。
次に、図4に示す帯状の開口部31(幅0.5mm×長さ5mm)と帯状の非開口部32(幅0.5mm×長さ5mm)とが交互に1本ずつ、合計5本ずつ配列されたスクリーン30bを設置し、スクリーン30bを用いて第3の多孔質半導体層4を構成する酸化チタン粒子を含むペースト(Solaronix社製のR/SPペースト)をスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製の型式:LS−34TVA)を用いたスクリーン印刷により塗布した。
その後、上記のようにして塗布された酸化チタン粒子を含むペーストを80℃で20分間予備乾燥した後、450℃で1時間焼成した。これにより、第1の支持体1の表面上に酸化チタンからなる正方形状の第1の多孔質半導体層2(厚さ5μm)を形成し、第1の多孔質半導体層2の正方形状の表面上に酸化チタンからなる帯状の第2の多孔質半導体層3(厚さ5μm)と酸化チタンからなる帯状の第3の多孔質半導体層4(厚さ5μm)とを形成した。
なお、第1の多孔質半導体層2、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4の波長800nmの光に対するヘイズ率を前述の層ヘイズ率の測定方法によって測定して算出した。ヘイズ率の測定には、検出器として暗箱の中に入れた積分球(Labsphere社製GPSシリーズ4ポート)を用い、測定波長はXeランプ(浜松ホトニクス株式会社製のL2195)からの光を分光器(分光計器株式会社製のM50型)で分光した800nmとした。その結果、第1の多孔質半導体層2、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4の波長800nmの光に対するヘイズ率は、それぞれ、2%、8%および85%であった。
次に、幅6mm×長さ10mmの開口部を有するメタルマスクを用意した。そして、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4の表面がメタルマスクの開口部から露出するようにメタルマスクを設置した。そして、電子ビーム蒸着器ei−5(アルバック株式会社製)を用いて、ターゲットをチタンとし、蒸着速度を50nm/sとして、チタンからなる集電電極5を形成した。
次に、多孔質絶縁層6を構成する絶縁性粒子(シグマアルドリッチ社製の酸化ジルコニウムをテルピネオールに分散させ、さらにエチルセルロースを混合してペーストを調製した。酸化ジルコニウム微粒子とテルピネオールとエチルセルロースの重量比は、65:30:5であった。)を含むペーストを集電電極5の表面、封止部8aの表面、および第1の支持体1の表面を覆うように塗布した後に120℃で20分間予備乾燥した後、500℃で1時間焼成することによって多孔質絶縁層6を形成した。
次に、幅6mm×長さ10mmの開口部を有するメタルマスクを用いて、電子ビーム蒸着器ei−5(アルバック株式会社製)を用いて、ターゲットをプラチナとし、蒸着速度を5nm/sとして、プラチナからなる対極7を形成した。
次に、アセトニトリル(Aldrich Chemical Company製)とt−ブチルアルコール(Aldrich Chemical Company製)との混合溶剤(体積比1:1)に、濃度が4×10-4モル/リットルになるように、色素(Solaronix社製の商品名:Ruthenium620−1H3TBA)を上記混合溶剤に溶解させることにより色素吸着用溶液を得た。そして、多孔質絶縁層6側から集電電極5の細孔を通して、第1の多孔質半導体層2、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4を色素吸着用溶液に40℃の温度条件で20時間浸漬させることによって、色素を第1の多孔質半導体層2、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4に吸着させた。その後、エタノール(Aldrich Chemical Company製)で第1の多孔質半導体層2、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4を洗浄し、約80℃で約10分間乾燥させた。このようにして、厚さ10μmの光電変換層21を形成した。
次に、紫外線硬化剤(スリーボンド社製、型番:31X−101)を第2の支持体10(コーニング社製の7059)の表面上に塗布し、第1の支持体1の封止部8aの設置側を第2の支持体10の表面上に塗布された紫外線硬化剤上に設置し、紫外線硬化剤に紫外線を照射した。これにより、第1の支持体1と第2の支持体10とを接合した。
次に、溶剤としてのアセトニトリルに、濃度が0.1モル/リットルとなるようにLiI(酸化還元種、Aldrich Chemical Company製)を溶解させ、濃度が0.01モル/リットルとなるようにI2(酸化還元種、東京化成工業株式会社製)を溶解させた。さらに、上記アセトニトリルに、濃度0.5モル/リットルとなるようにt−ブチルピリジン(添加剤、TBP(4−tert−butylpyridine)、Aldrich Chemical Company製)を溶解させ、濃度0.6モル/リットルとなるようにジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド(DMPII、四国化成工業株式会社製)を溶解させた。これにより、液体電解質からなるキャリア輸送材料9を作製した。
最後に、第2の支持体10に予め設けてあった注入口からキャリア輸送材料9を注入し、紫外線硬化樹脂(スリーボンド社製、型番:31X−101 229)を用いて注入口を封止した。これにより、実施例1の色素増感太陽電池が完成した。
実施例1の色素増感太陽電池に、1kW/m2のエネルギー密度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射したところ、短絡電流密度は19.0mA/cm2であり、光電変換効率は9.0%であった。その結果を表1に示す。
<実施例2>
第2の多孔質半導体層3を構成する酸化チタン粒子を含むペーストとして(Solaronix社製のD/SPペースト)に代えて、Solaronix社製のT/SPペーストを90質量%含み、Solaronix社製のR/SPペーストを10質量%含む酸化チタン粒子を含む混合ペーストを用いて第2の多孔質半導体層3を作製したこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で実施例2の色素増感太陽電池を作製した。
実施例2の色素増感太陽電池の第2の多孔質半導体層3の波長800nmの光に対するヘイズ率を実施例1と同一の方法および同一の条件で測定したところ12%であった。
また、実施例2の色素増感太陽電池に、1kW/m2のエネルギー密度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射したところ、短絡電流密度は19.1mA/cm2であり、光電変換効率は9.1%であった。その結果を表1に示す。
<実施例3>
第2の多孔質半導体層3を構成する酸化チタン粒子を含むペーストとして(Solaronix社製のD/SPペースト)に代えて、Solaronix社製のT/SPペーストを80質量%含み、Solaronix社製のR/SPペーストを20質量%含む酸化チタン粒子を含む混合ペーストを用いて第2の多孔質半導体層3を作製したこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で実施例3の色素増感太陽電池を作製した。
実施例3の色素増感太陽電池の第2の多孔質半導体層3の波長800nmの光に対するヘイズ率を実施例1と同一の方法および同一の条件で測定したところ18%であった。
また、実施例3の色素増感太陽電池に、1kW/m2のエネルギー密度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射したところ、短絡電流密度は19.1mA/cm2であり、光電変換効率は9.1%であった。その結果を表1に示す。
<実施例4>
第2の多孔質半導体層3を構成する酸化チタン粒子を含むペーストとして(Solaronix社製のD/SPペースト)に代えて、Solaronix社製のT/SPペーストを70質量%含み、Solaronix社製のR/SPペーストを30質量%含む酸化チタン粒子を含む混合ペーストを用いて第2の多孔質半導体層3を作製したこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で実施例4の色素増感太陽電池を作製した。
実施例4の色素増感太陽電池の第2の多孔質半導体層3の波長800nmの光に対するヘイズ率を実施例1と同一の方法および同一の条件で測定したところ28%であった。
また、実施例4の色素増感太陽電池に、1kW/m2のエネルギー密度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射したところ、短絡電流密度は19.2mA/cm2であり、光電変換効率は9.2%であった。その結果を表1に示す。
<実施例5>
第2の多孔質半導体層3を構成する酸化チタン粒子を含むペーストとして(Solaronix社製のD/SPペースト)に代えて、Solaronix社製のT/SPペーストを60質量%含み、Solaronix社製のR/SPペーストを40質量%含む酸化チタン粒子を含む混合ペーストを用いて第2の多孔質半導体層3を作製したこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で実施例5の色素増感太陽電池を作製した。
実施例5の色素増感太陽電池の第2の多孔質半導体層3の波長800nmの光に対するヘイズ率を実施例1と同一の方法および同一の条件で測定したところ34%であった。
また、実施例5の色素増感太陽電池に、1kW/m2のエネルギー密度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射したところ、短絡電流密度は19.2mA/cm2であり、光電変換効率は9.2%であった。その結果を表1に示す。
<実施例6>
第2の多孔質半導体層3を構成する酸化チタン粒子を含むペーストとして(Solaronix社製のD/SPペースト)に代えて、Solaronix社製のT/SPペーストを50質量%含み、Solaronix社製のR/SPペーストを50質量%含む酸化チタン粒子を含む混合ペーストを用いて第2の多孔質半導体層3を作製したこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で実施例6の色素増感太陽電池を作製した。
実施例6の色素増感太陽電池の第2の多孔質半導体層3の波長800nmの光に対するヘイズ率を実施例1と同一の方法および同一の条件で測定したところ41%であった。
また、実施例6の色素増感太陽電池に、1kW/m2のエネルギー密度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射したところ、短絡電流密度は19.1mA/cm2であり、光電変換効率は9.0%であった。その結果を表1に示す。
<実施例7>
第2の多孔質半導体層3を構成する酸化チタン粒子を含むペーストとして(Solaronix社製のD/SPペースト)に代えて、Solaronix社製のT/SPペーストを40質量%含み、Solaronix社製のR/SPペーストを60質量%含む酸化チタン粒子を含む混合ペーストを用いて第2の多孔質半導体層3を作製したこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で実施例7の色素増感太陽電池を作製した。
実施例7の色素増感太陽電池の第2の多孔質半導体層3の波長800nmの光に対するヘイズ率を実施例1と同一の方法および同一の条件で測定したところ50%であった。
また、実施例7の色素増感太陽電池に、1kW/m2のエネルギー密度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射したところ、短絡電流密度は19.1mA/cm2であり、光電変換効率は9.1%であった。その結果を表1に示す。
<実施例8>
第2の多孔質半導体層3を構成する酸化チタン粒子を含むペーストとして(Solaronix社製のD/SPペースト)に代えて、Solaronix社製のT/SPペーストを30質量%含み、Solaronix社製のR/SPペーストを70質量%含む酸化チタン粒子を含む混合ペーストを用いて第2の多孔質半導体層3を作製したこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で実施例8の色素増感太陽電池を作製した。
実施例8の色素増感太陽電池の第2の多孔質半導体層3の波長800nmの光に対するヘイズ率を実施例1と同一の方法および同一の条件で測定したところ59%であった。
また、実施例8の色素増感太陽電池に、1kW/m2のエネルギー密度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射したところ、短絡電流密度は19.1mA/cm2であり、光電変換効率は9.0%であった。その結果を表1に示す。
<実施例9>
第2の多孔質半導体層3を構成する酸化チタン粒子を含むペーストとして(Solaronix社製のD/SPペースト)に代えて、Solaronix社製のT/SPペーストを20質量%含み、Solaronix社製のR/SPペーストを80質量%含む酸化チタン粒子を含む混合ペーストを用いて第2の多孔質半導体層3を作製したこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で実施例9の色素増感太陽電池を作製した。
実施例9の色素増感太陽電池の第2の多孔質半導体層3の波長800nmの光に対するヘイズ率を実施例1と同一の方法および同一の条件で測定したところ65%であった。
また、実施例9の色素増感太陽電池に、1kW/m2のエネルギー密度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射したところ、短絡電流密度は19.0mA/cm2であり、光電変換効率は8.8%であった。その結果を表1に示す。
<実施例10>
第2の多孔質半導体層3を構成する酸化チタン粒子を含むペーストとして(Solaronix社製のD/SPペースト)に代えて、Solaronix社製のT/SPペーストを10質量%含み、Solaronix社製のR/SPペーストを90質量%含む酸化チタン粒子を含む混合ペーストを用いて第2の多孔質半導体層3を作製したこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で実施例10の色素増感太陽電池を作製した。
実施例10の色素増感太陽電池の第2の多孔質半導体層3の波長800nmの光に対するヘイズ率を実施例1と同一の方法および同一の条件で測定したところ73%であった。
また、実施例10の色素増感太陽電池に、1kW/m2のエネルギー密度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射したところ、短絡電流密度は18.9mA/cm2であり、光電変換効率は8.7%であった。その結果を表1に示す。
<実施例11>
第3の多孔質半導体層4を構成する酸化チタン粒子を含むペーストとして(Solaronix社製のR/SPペースト)に代えて、Solaronix社製のT/SPペーストを40質量%含み、Solaronix社製のR/SPペーストを60質量%含む酸化チタン粒子を含む混合ペーストを用いて第3の多孔質半導体層4を作製したこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で実施例11の色素増感太陽電池を作製した。
実施例11の色素増感太陽電池の第3の多孔質半導体層4の波長800nmの光に対するヘイズ率を実施例1と同一の方法および同一の条件で測定したところ50%であった。
また、実施例11の色素増感太陽電池に、1kW/m2のエネルギー密度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射したところ、短絡電流密度は19.1mA/cm2であり、光電変換効率は9.2%であった。その結果を表1に示す。
<実施例12>
第3の多孔質半導体層4を構成する酸化チタン粒子を含むペーストとして(Solaronix社製のR/SPペースト)に代えて、Solaronix社製のT/SPペーストを30質量%含み、Solaronix社製のR/SPペーストを70質量%含む酸化チタン粒子を含む混合ペーストを用いて第3の多孔質半導体層4を作製したこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で実施例12の色素増感太陽電池を作製した。
実施例12の色素増感太陽電池の第3の多孔質半導体層4の波長800nmの光に対するヘイズ率を実施例1と同一の方法および同一の条件で測定したところ59%であった。
また、実施例12の色素増感太陽電池に、1kW/m2のエネルギー密度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射したところ、短絡電流密度は19.0mA/cm2であり、光電変換効率は9.0%であった。その結果を表1に示す。
<実施例13>
第3の多孔質半導体層4を構成する酸化チタン粒子を含むペーストとして(Solaronix社製のR/SPペースト)に代えて、Solaronix社製のT/SPペーストを20質量%含み、Solaronix社製のR/SPペーストを80質量%含む酸化チタン粒子を含む混合ペーストを用いて第3の多孔質半導体層4を作製したこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で実施例13の色素増感太陽電池を作製した。
実施例13の色素増感太陽電池の第3の多孔質半導体層4の波長800nmの光に対するヘイズ率を実施例1と同一の方法および同一の条件で測定したところ65%であった。
また、実施例13の色素増感太陽電池に、1kW/m2のエネルギー密度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射したところ、短絡電流密度は19.2mA/cm2であり、光電変換効率は9.1%であった。その結果を表1に示す。
<実施例14>
第3の多孔質半導体層4を構成する酸化チタン粒子を含むペーストとして(Solaronix社製のR/SPペースト)に代えて、Solaronix社製のT/SPペーストを10質量%含み、Solaronix社製のR/SPペーストを90質量%含む酸化チタン粒子を含む混合ペーストを用いて第3の多孔質半導体層4を作製したこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で実施例14の色素増感太陽電池を作製した。
実施例14の色素増感太陽電池の第3の多孔質半導体層4の波長800nmの光に対するヘイズ率を実施例1と同一の方法および同一の条件で測定したところ73%であった。
また、実施例14の色素増感太陽電池に、1kW/m2のエネルギー密度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射したところ、短絡電流密度は19.2mA/cm2であり、光電変換効率は9.2%であった。その結果を表1に示す。
<比較例>
光電変換層21を構成する多孔質半導体層として第2の多孔質半導体層2および第3の多孔質半導体層を形成せずに厚さ10μmの第1の多孔質半導体層2のみを形成したこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で比較例の色素増感太陽電池を作製した。
比較例の色素増感太陽電池に、1kW/m2のエネルギー密度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射したところ、短絡電流密度は15.0mA/cm2であり、光電変換効率は6.0%であった。その結果を表1に示す。
<実施例15>
多孔質絶縁層6を以下のようにして形成したこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で図8に示す構造を有する実施例15の色素増感太陽電池を作製した。まず、図3に示す帯状の開口部31と帯状の非開口部32とが交互に配列されたスクリーン30aを設置し、スクリーン30aを用いて第2の多孔質絶縁層11を構成する絶縁体粒子を含むペースト(シグマアルドリッチ社製の酸化ジルコニウムをテルピネオールに分散させ、さらにエチルセルロースを混合してペーストを調製した。酸化ジルコニウム微粒子とテルピネオールとエチルセルロースの重量比は、65:30:5であった。)をスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製の型式:LS−34TVA)を用いたスクリーン印刷により集電電極5の表面上に塗布した。
次に、図4に示す帯状の開口部31と帯状の非開口部32とが交互に配列されたスクリーン30bを設置し、スクリーン30bを用いて第3の多孔質絶縁層12を構成する絶縁体粒子を含むペースト(第一稀元素化学工業株式会社製のUEP−100をテルピネオールに分散させ、さらにエチルセルロースを混合してペーストを調製した。酸化ジルコニウム微粒子とテルピネオールとエチルセルロースの重量比は、65:30:5であった。)をスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製の型式:LS−34TVA)を用いたスクリーン印刷により集電電極5の表面上に塗布した。
次に、幅5mm×長さ5mmの正方形状の開口部を有するスクリーンを第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12の表面が露出するように設置し、当該スクリーンを用いて第1の多孔質絶縁層13を構成する絶縁体粒子を含むペースト(シグマアルドリッチ社製の酸化ジルコニウムをテルピネオールに分散させ、さらにエチルセルロースを混合してペーストを調製した。酸化ジルコニウム微粒子とテルピネオールとエチルセルロースの重量比は、65:30:5であった。)をスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製の型式:LS−34TVA)を用いたスクリーン印刷により第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12の表面上に塗布した。
最後に、上述のようにして塗布された第1の多孔質絶縁層13を構成する絶縁体粒子を含むペースト、第2の多孔質絶縁層11を構成する絶縁体粒子を含むペーストおよび第3の多孔質絶縁層12を構成する絶縁体粒子を含むペーストを焼成することによって、第1の多孔質絶縁層13、第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12からなる多孔質絶縁層6を形成した。
実施例15の色素増感太陽電池に、1kW/m2のエネルギー密度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射したところ、短絡電流密度は19.3mA/cm2であり、光電変換効率は9.3%であった。
<実施例16>
実施例16においては、図9に示す構造を有する色素増感太陽電池を作製した。まず、第2の支持体10として、幅51mm×長さ70mm×厚さ1mmのガラス基板(コーニング社製の7059)を用意した。
次に、ガラス基板上であって対極7が形成される箇所が露出する位置に開口部を有するメタルマスクを設置し、電子ビーム蒸着器ei−5(アルバック株式会社製)を用いて、ターゲットをプラチナとし、蒸着速度を5nm/sとして、プラチナからなる対極7を形成した。
次に、ガラス基板および対極7上であって封止部8bが形成される箇所の周囲に、開口部の幅が0.5mmであるスクリーンを設置した。そして、スクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製の型式:LS−34TVA)を用いてガラスフリットを含む樹脂をガラス基板の上に塗布し、室温で1時間のレべリングを行なった。そして、レべリング後の得られたガラスフリットを80℃で20分予備乾燥した後、450℃で一時間焼成した。これにより、図9に示すように、第2の支持体10および対極7の表面上に封止部8bを形成した。
次に、幅5mm×長さ5mmの正方形状の開口部を有するスクリーンを設置し、封止部8bの間の対極7の表面上に第1の多孔質絶縁層13を構成する絶縁体粒子を含むペースト(シグマアルドリッチ社製の酸化ジルコニウムをテルピネオールに分散させ、さらにエチルセルロースを混合してペーストを調製した。酸化ジルコニウム微粒子とテルピネオールとエチルセルロースの重量比は、65:30:5であった。)をスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製の型式:LS−34TVA)を用いたスクリーン印刷により塗布した。
次に、図3に示す帯状の開口部31(幅0.5mm×長さ5mm)と帯状の非開口部32(幅0.5mm×長さ5mm)とが交互に1本ずつ、合計5本ずつ配列されたスクリーン30aを設置し、スクリーン30aを用いて第2の多孔質絶縁層11を構成する絶縁体粒子を含むペースト(シグマアルドリッチ社製の酸化ジルコニウムをテルピネオールに分散させ、さらにエチルセルロースを混合してペーストを調製した。酸化ジルコニウム微粒子とテルピネオールとエチルセルロースの重量比は、65:30:5であった。)をスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製の型式:LS−34TVA)を用いたスクリーン印刷により塗布した。
次に、図4に示す帯状の開口部31(幅0.5mm×長さ5mm)と帯状の非開口部32(幅0.5mm×長さ5mm)とが交互に1本ずつ、合計5本ずつ配列されたスクリーン30bを設置し、スクリーン30bを用いて第3の多孔質絶縁層12を構成する絶縁体粒子を含むペースト(第一稀元素化学工業株式会社製のUEP−100をテルピネオールに分散させ、さらにエチルセルロースを混合してペーストを調製した。酸化ジルコニウム微粒子とテルピネオールとエチルセルロースの重量比は、65:30:5であった。)をスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製の型式:LS−34TVA)を用いたスクリーン印刷により塗布した。
その後、上記のようにして塗布された絶縁体粒子を含むペーストを120℃で20分間予備乾燥した後、500℃で1時間焼成した。これにより、対極7の表面上に酸化ジルコニウムからなる正方形状の第1の多孔質絶縁層13(厚さ5μm)を形成し、第1の多孔質半導体層13の正方形状の表面上に酸化ジルコニウムからなる帯状の第2の多孔質絶縁層11(厚さ4μm)と酸化ジルコニウムからなる帯状の第3の多孔質絶縁層12(厚さ4μm)とを形成した。
次に、実施例1と同一の方法および同一の条件で第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12の表面上に集電電極5を形成した。
次に、幅5mm×長さ5mmの正方形状の開口部を有するスクリーンを設置し、集電電極5の表面上に第2の多孔質半導体層3を構成する酸化チタン粒子を含むペースト(Solaronix社製のD/SPペースト)をスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製の型式:LS−34TVA)を用いたスクリーン印刷により塗布した。
次に、幅5mm×長さ5mmの正方形状の開口部を有するスクリーンを設置し、第2の多孔質半導体層3を構成する酸化チタン粒子を含むペーストの表面上に第1の多孔質半導体層2を構成する酸化チタン粒子を含むペースト(Solaronix社製のT/SPペースト)をスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製の型式:LS−34TVA)を用いたスクリーン印刷により塗布した。
その後、上記のようにして塗布された酸化チタン粒子を含むペーストを80℃で20分間予備乾燥した後、450℃で1時間焼成した。これにより、集電電極5の表面上に酸化チタンからなる正方形状の第2の多孔質半導体層3(厚さ5μm)を形成し、第2の多孔質半導体層3の正方形状の表面上に酸化チタンからなる正方形状の第1の多孔質半導体層2を形成した。
次に、実施例1と同一の方法および同一の条件で調製した色素吸着用溶液に第1の多孔質半導体層2および第2の多孔質半導体層3を40℃の温度条件で20時間浸漬させることによって、色素を第1の多孔質半導体層2および第2の多孔質半導体層3に吸着させた。その後、エタノール(Aldrich Chemical Company製)で第1の多孔質半導体層2および第2の多孔質半導体層3を洗浄し、約80℃で約10分間乾燥させた。このようにして、厚さ10μmの光電変換層21を形成した。
次に、紫外線硬化剤(スリーボンド社製、型番:31X−101)を第1の支持体1(コーニング社製の7059)の表面上に塗布し、第2の支持体10の封止部8bの設置側を第1の支持体1の表面上に塗布された紫外線硬化剤上に設置し、紫外線硬化剤に紫外線を照射した。これにより、第1の支持体1と第2の支持体10とを接合した。
最後に、実施例1と同一の方法および同一の条件で調製したキャリア輸送材料9を第2の支持体10に予め設けてあった注入口から注入し、紫外線硬化樹脂(スリーボンド社製、型番:31X−101 229)を用いて注入口を封止した。これにより、実施例16の色素増感太陽電池が完成した。
実施例16の色素増感太陽電池に、1kW/m2のエネルギー密度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射したところ、短絡電流密度は18.0mA/cm2であり、光電変換効率は8.7%であった。
<実施例17>
第1の多孔質半導体層2、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4を以下のようにして形成したこと以外は実施例16と同一の方法および同一の条件で図11に示す構造を有する実施例17の色素増感太陽電池を作製した。
すなわち、まず、図3に示す帯状の開口部31と帯状の非開口部32とが交互に配列されたスクリーン30aを設置し、スクリーン30aを用いて第2の多孔質半導体層3を構成する酸化チタン粒子を含むペースト(Solaronix社製のD/SPペースト)をスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製の型式:LS−34TVA)を用いたスクリーン印刷により集電電極5の表面上に塗布した。
次に、図4に示す帯状の開口部31と帯状の非開口部32とが交互に配列されたスクリーン30bを設置し、スクリーン30bを用いて第3の多孔質半導体層4を構成する酸化チタン粒子を含むペースト(Solaronix社製のR/SPペースト)をスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製の型式:LS−34TVA)を用いたスクリーン印刷により集電電極5の表面上に塗布した。
次に、幅5mm×長さ5mmの正方形状の開口部を有するスクリーンを第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4の表面が露出するように設置し、当該スクリーンを用いて第1の多孔質半導体層2を構成する酸化チタン粒子を含むペースト(Solaronix社製のT/SPペースト)をスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製の型式:LS−34TVA)を用いたスクリーン印刷により第2の多孔質絶縁層11および第3の多孔質絶縁層12の表面上に塗布した。
最後に、上述のようにして塗布された第1の多孔質半導体層2を構成する酸化チタン粒子を含むペースト、第2の多孔質半導体層3を構成する酸化チタン粒子を含むペーストおよび第3の多孔質半導体層4を構成する酸化チタン粒子を含むペーストを80℃で20分間予備乾燥した後、450℃で1時間焼成することによって、第1の多孔質半導体層2、第2の多孔質半導体層3および第3の多孔質半導体層4をそれぞれ形成した。
実施例17の色素増感太陽電池に、1kW/m2のエネルギー密度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射したところ、短絡電流密度は18.4mA/cm2であり、光電変換効率は8.8%であった。
<付記>
(1)本発明の第1の態様によれば、第1の支持体と、第1の支持体と向かい合う第2の支持体と、第1の支持体上の光電変換層と、光電変換層上の集電電極と、集電電極上の多孔質絶縁層と、多孔質絶縁層上の対極と、第1の支持体と第2の支持体との間のキャリア輸送材料とを備え、第1の支持体は光透過性であり、光電変換層は、多孔質半導体層と、多孔質半導体層上の光増感剤とを有しており、集電電極に接している多孔質半導体層の領域および集電電極に接している多孔質絶縁層の領域の少なくとも一方がヘイズ率が異なる複数の領域を有している光電変換素子を提供することができる。本発明の第1の態様の光電変換素子においては、集電電極に、電子をより効率的に収集できる領域と、キャリア輸送材料をより効率的に透過することができる領域とを兼ね備えさせることができるため光入射側の透明導電膜を用いない場合であっても、従来の特許文献2のように細孔の径およびシート抵抗が一様な集電電極を用いた場合と比べて、高い短絡電流密度を実現することができる。
(2)本発明の第1の態様においては、多孔質半導体層が、第1の支持体上の第1の多孔質半導体層と、第1の多孔質半導体層の表面の一部に設けられた第2の多孔質半導体層と、第1の多孔質半導体層の表面の他の一部に設けられた第3の多孔質半導体層とを備え、第2の多孔質半導体層および第3の多孔質半導体層が集電電極に接しており、第2の多孔質半導体層と第3の多孔質半導体層とのヘイズ率が異なっていてもよい。この場合にも、集電電極に、電子をより効率的に収集できる領域と、キャリア輸送材料をより効率的に透過することができる領域とを兼ね備えさせることができるため、光入射側の透明導電膜を用いない場合であっても、従来の特許文献2のように細孔の径およびシート抵抗が一様な集電電極を用いた場合と比べて、高い短絡電流密度を実現することができる。
(3)本発明の第1の態様において、第2の多孔質半導体層および第3の多孔質半導体層は、第1の多孔質半導体層の表面から、第1の多孔質半導体層の表面に対して垂直方向に延在していてもよい。この場合にも、集電電極に、電子をより効率的に収集できる領域と、キャリア輸送材料をより効率的に透過することができる領域とを兼ね備えさせることができるため、光入射側の透明導電膜を用いない場合であっても、従来の特許文献2のように細孔の径およびシート抵抗が一様な集電電極を用いた場合と比べて、高い短絡電流密度を実現することができる。
(4)本発明の第1の態様において、多孔質絶縁層は、対極上の第1の多孔質絶縁層と、第1の多孔質絶縁層の表面の一部に設けられた第2の多孔質絶縁層と、第1の多孔質絶縁層の表面の他の一部に設けられた第3の多孔質絶縁層とを備え、第2の多孔質絶縁層および第3の多孔質絶縁層は集電電極に接しており、第2の多孔質絶縁層と第3の多孔質絶縁層とはヘイズ率が異なっていてもよい。この場合にも、集電電極に、電子をより効率的に収集できる領域と、キャリア輸送材料をより効率的に透過することができる領域とを兼ね備えさせることができるため、光入射側の透明導電膜を用いない場合であっても、従来の特許文献2のように細孔の径およびシート抵抗が一様な集電電極を用いた場合と比べて、高い短絡電流密度を実現することができる。
(5)本発明の第1の態様において、第2の多孔質絶縁層および第3の多孔質絶縁層は、第1の多孔質絶縁層の表面から、第1の多孔質絶縁層の表面に対して垂直方向に延在していてもよい。この場合にも、集電電極に、電子をより効率的に収集できる領域と、キャリア輸送材料をより効率的に透過することができる領域とを兼ね備えさせることができるため、光入射側の透明導電膜を用いない場合であっても、従来の特許文献2のように細孔の径およびシート抵抗が一様な集電電極を用いた場合と比べて、高い短絡電流密度を実現することができる。
(6)本発明の第2の態様によれば、光増感剤が色素である上記のいずれかの光電変換素子を含む色素増感太陽電池を提供することができる。この場合には、光入射側の透明導電膜を用いない場合であっても、従来の特許文献2のように細孔の径およびシート抵抗が一様な集電電極を用いた場合と比べて、高い短絡電流密度を実現することができる色素増感太陽電池を提供することができる。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および各実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。