JP6290592B2 - 浸炭窒化処理方法 - Google Patents

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Description

本件発明は、浸炭窒化処理方法に関し、特に、必要な炭素量及び窒素量を迅速に鋼中に浸透させることが可能な浸炭窒化処理方法に関する。
従来から、鋼製ワークを浸炭浸窒性雰囲気中で加熱し、当該鋼製ワークの表面に炭素と窒素とを浸透させ、当該炭素及び窒素を当該鋼製ワーク表面の結晶組織内に内部拡散させ、その後焼入処理を行う事によって、当該鋼製ワークの内部組織には、鋼材が本来持つ靭性、伸び等の物理的特性を維持しつつ、表層組織を硬くする浸炭窒化処理方法が知られている。なお、鋼製ワークに浸炭窒化処理を施すにあたり、必要な炭素量及び窒素量を鋼中に迅速に浸透させることで処理時間の短縮が図られ、製品コストを低減することが可能となる。
例えば、特許文献1には、短時間で大きな窒化深さを得ることが出来る浸炭窒化処理方法について開示されている。具体的には、特許文献1の浸炭窒化処理方法は、「浸炭処理に適する温度の下で行われる浸炭工程と、該浸炭工程後の降温工程と、の少なくともいずれかの工程でNHガスを供給して被処理材に窒化処理を施すガス浸炭窒化方法であって、前記熱処理炉の窒化ポテンシャルを算出し、この算出値を基に、目標窒化深さに応じて前記被処理材の窒素濃度を目標値に到達せしめるのに必要な窒化時間を定め、前記被処理材の降温速度と設定降温終了温度とから前記降温工程の終了時点を予測し、該降温工程予測終了時点から前記必要窒化時間を差し引くことにより得られた時点から前記NHガスの供給を開始し、前記降温工程の終了時まで前記NHガスを供給して窒化処理を行う」ことを特徴とするものである(特許文献1の請求項1参照のこと。)。
特許第3849742号
特許文献1には、短時間で大きな窒化深さを得ることができ、鋼製ワークに施す浸炭窒化処理の総処理時間を短縮することが出来るガス浸炭窒化方法の開示がされている。特許文献1に開示の浸炭窒化処理方法は、鋼製ワークに浸炭窒化処理を施すにあたって炉加熱処理を採用するものである。しかし、迅速な浸窒処理を行うには未分解のNH濃度及び処理温度を高めることが重要であるが、特許文献1に開示の浸炭窒化処理方法のように炉加熱処理を採用した場合には、大量のNHガスを高温の炉内に投入してもNHが分解されてしまうため、効率的ではない。また、炉加熱処理においては、炉材寿命等の観点から高温で処理を行うことは好ましくなく、また昇温に長時間を要する。更に、炉加熱ゆえに、部分処理も容易でない。そのため、特許文献1に開示のガス浸炭窒化方法では、処理時間の短縮が十分に達成されていなかった。
そこで、本件発明は、必要な炭素量及び窒素量を迅速に鋼中に浸透させることができ、浸炭窒化処理の大幅な短時間化が可能な方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、以下の浸炭窒化処理方法を採用することで上記課題を達成するに到った。
本件発明に係る浸炭窒化処理方法は、鋼製ワークの表面に浸炭窒化層を形成する浸炭窒化処理方法であって、当該鋼製ワークの周辺に炭素及び窒素の供給源を含む浸炭浸窒用溶液を噴霧して、当該鋼製ワークの表面を浸炭浸窒用溶液に接触させ、当該鋼製ワークを高周波誘導加熱し、当該鋼製ワークの表面に炭素及び窒素を浸透させることを特徴とする。
この場合、本件発明に係る浸炭窒化処理方法は、前記浸炭窒化処理方法が、前記鋼製ワークの表面に、800℃〜1140℃の温度で900秒間以下浸炭窒化処理を行う浸炭窒化工程と、当該浸炭窒化工程後に、当該鋼製ワークの表面を常温まで冷却させる焼入工程とを備えたことが好ましい。
また、本件発明に係る浸炭窒化処理方法において、前記焼入工程では、前記鋼製ワークの表面を浸炭浸窒用溶液に接触させた状態で高周波誘導加熱の出力を停止して焼入れを行うことが可能である。ここで、これらの処理後に、結晶粒微細化のための再焼入れを行うことも可能である。
本件発明に係る浸炭窒化処理方法は、鋼製ワークの表面に浸炭窒化層を形成する浸炭窒化処理方法であって、当該鋼製ワークを炭素及び窒素の供給源を含む浸炭浸窒用溶液中に浸漬して、当該鋼製ワークの表面を浸炭浸窒用溶液に接触させ、当該鋼製ワークを高周波誘導加熱し、当該鋼製ワークの表面に炭素及び窒素を浸透させる浸炭窒化処理を行う浸炭窒化工程と、当該浸炭窒化工程後に、当該鋼製ワークの表面を常温まで冷却させる焼入工程とを備え、当該焼入工程では、当該鋼製ワークの表面を浸炭浸窒用溶液に接触させた状態で高周波誘導加熱の出力を停止して焼入れを行うことを特徴とする。ここで、これらの処理後に、結晶粒微細化のための再焼入れを行うことも可能である。
この場合、本件発明に係る浸炭窒化処理方法は、前記浸炭窒化工程では、前記鋼製ワークの表面に、800℃〜1140℃の温度で900秒間以下浸炭窒化処理を行うことが好ましい。
本件発明に係る浸炭窒化処理方法において、前記浸炭窒化工程では、前記鋼製ワークの表面に対して行う浸炭及び浸窒を同時又は連続して行うことが可能である。
本件発明に係る浸炭窒化処理方法において、前記浸炭窒化処理方法は、前記浸炭浸窒用溶液が含有する浸炭成分及び浸窒成分の濃度を変更することにより、前記鋼製ワークの表面近傍の炭素濃度及び窒素濃度を制御することが可能である。
本件発明に係る浸炭窒化処理方法において、前記浸炭浸窒用溶液は、炭素供給用としてメタノール及びエタノールから選択される少なくとも1種を用いることが可能である。
本件発明に係る浸炭窒化処理方法において、前記浸炭浸窒用溶液は、窒素供給用として窒素原子を含む化合物の溶液を用いることが可能である。特に、窒素原子を含む化合物として尿素を用いる場合には、これを水又はメタノールに溶解して用いることが可能である。
本件発明に係る浸炭窒化処理方法を採用することで、必要な炭素量及び窒素量を迅速に鋼中に浸透させることが可能となる。従って、本件発明に係る浸炭窒化処理方法を用いて製造された鋼製品は、処理時間が短縮することで生産性の向上が図られたものとなり、また、短い処理時間でも耐摩耗性及び耐疲労特性を向上させることが出来る。
本件発明に係る浸炭窒化処理方法を説明するための時間と温度との関係を示す図である。 本件発明の浸炭窒化処理装置の一実施形態を示す概略構成図である。
以下、本件発明に係る浸炭窒化処理方法の実施の形態を説明する。
本件発明に係る浸炭窒化処理方法: 本件発明に係る浸炭窒化処理方法は、鋼製ワークの表面に浸炭窒化層を形成する浸炭窒化処理方法であって、当該鋼製ワークの表面を浸炭浸窒用溶液に接触させ、当該鋼製ワークを高周波誘導加熱し、当該鋼製ワークの表面に炭素及び窒素を浸透させることを特徴としている。
本件発明に係る浸炭窒化処理方法は、鋼製ワークの表面を加熱する際に、高周波誘導加熱法を採用する。ここで言う高周波誘導加熱とは、鋼製ワークの周りにコイルを配置し、当該コイルに高周波電流を流すことで当該コイルに近い鋼製ワーク表面に誘導電流が生じ、ジュール熱で加熱するものである。この高周波誘導加熱は、公知の急速加熱手段であり、浸炭窒化処理を行う所望温度まで、鋼製ワークの表面を秒単位の短時間で昇温することが可能である。また、高周波誘導加熱は、炉加熱に比べて、短時間で浸炭窒化処理温度まで昇温が可能であり、加熱温度も高温化が容易となる。従って、本件発明に係る浸炭窒化処理方法によれば、鋼製ワークを高周波誘導加熱により急速加熱することで、鋼製ワーク表面近傍の炭素濃度及び窒素濃度を短時間で一気に高めることが出来る。
なお、ここで言う「浸炭浸窒用溶液」は、鋼製ワークの炭素及び窒素の供給源となりうる溶液状態のものであれば、使用することが可能である。例えば、鋼製ワーク表面近傍への炭素侵入量の安定化を図ることを考慮すれば、浸炭浸窒用溶液の浸炭成分として、アルコール又はアルコール水溶液等の有機溶剤を好適に用いることが出来る。ここで、「アルコール水溶液」は、アルコール成分と水との混合溶媒を意味する。このアルコール水溶液を用いることで、浸炭成分として使用可能な純メタノール等の有機溶剤に比べて、浸炭の進行速度が過剰にならないため、鋼製ワーク表面に浸透させる炭素量の制御が容易になる。
また、本件発明に係る浸炭窒化処理方法は、鋼製ワークを炭素及び窒素の供給源を含む浸炭浸窒用溶液中に浸漬して、当該鋼製ワークの表面を浸炭浸窒用溶液に接触させるものである。
本件発明に係る浸炭窒化処理方法は、鋼製ワークを浸炭浸窒用溶液中に浸漬して、当該鋼製ワークの表面を浸炭浸窒用溶液に接触させた状態で、当該鋼製ワークの浸炭窒化処理対象表面を高周波誘導加熱により急速加熱することが出来る。このときに、当該鋼製ワークの周囲にある浸炭浸窒用溶液が熱分解して、活性炭素と活性窒素とを含む状態でガス化した浸炭性ガス及び浸窒性ガスとなり、当該鋼製ワークの外周を覆う状態となる。そして、ガス中の活性炭素及び活性窒素が、当該鋼製ワークの表面から結晶組織内に侵入することで、浸炭窒化処理に要する時間を大幅に短縮することが出来る。
また、本件発明に係る浸炭窒化処理方法は、鋼製ワークの周辺に炭素及び窒素の供給源を含む浸炭浸窒用溶液を噴霧して、当該鋼製ワークの表面を浸炭浸窒用溶液に接触させるものである。
本件発明に係る浸炭窒化処理方法は、高周波誘導加熱された鋼製ワークの周辺に浸炭浸窒用溶液を噴霧して、当該鋼製ワークの表面を浸炭浸窒用溶液に接触させた状態で、当該鋼製ワークの浸炭窒化処理対象表面を高周波誘導加熱により急速加熱することが出来る。このときに、当該鋼製ワークの周囲にある浸炭浸窒用溶液が熱分解して、活性炭素と活性窒素とを含む状態でガス化した浸炭性ガス及び浸窒性ガスとなり、当該鋼製ワークの外周を覆う状態となる。そして、ガス中の活性炭素及び活性窒素が、当該鋼製ワークの表面から結晶組織内に侵入することで、浸炭窒化処理に要する時間を大幅に短縮することが出来る。
また、本件発明に係る浸炭窒化処理方法は、鋼製ワークの表面に、800℃〜1140℃の温度で900秒間以下浸炭窒化処理を行う浸炭窒化工程と、当該浸炭窒化工程後に、当該鋼製ワークの表面を常温まで冷却させる焼入工程とを備えたことが好ましい。
図1は、本件発明に係る浸炭窒化処理方法を説明するための時間と温度との関係を示す図である。図1に示すように、本件発明に係る浸炭窒化処理方法は、浸炭窒化工程と焼入工程とを備えている。以下に、これら工程について、説明していく。
〈浸炭窒化工程〉
本件発明に係る浸炭窒化処理方法における浸炭窒化工程は、鋼中に炭素、窒素を浸透させ、製品として必要な浸炭浸窒深さを確保するための工程である。そのために、鋼製ワークの表面は、800℃〜1140℃になるまで加熱される。なお、本件発明の浸炭窒化工程では、鋼製ワークの表面近傍がオーステナイト単相となる。鋼製ワークの表面近傍がオーステナイト単相となることで、当該鋼製ワーク中に炭素、窒素を浸透させ易くなり好ましい。そして、当該鋼製ワークの表面の温度が800℃〜1140℃になるまで加熱された時点から900秒間以下保持されて、浸炭窒化処理が行われる。本件発明の浸炭窒化工程では、このような温度条件を満たすことで、当該鋼製ワーク中に浸透させる炭素及び窒素の量や浸炭浸窒深さを短時間で適切なものとすることが可能になる。
ここで、本件発明の浸炭窒化工程において、鋼製ワークの表面温度が800℃未満では、浸炭が効率的に行われず、当該鋼製ワーク中に炭素が浸透する速度が低下し、短時間で浸炭窒化処理を行うことが困難となる。また、当該鋼製ワークの表面温度が1140℃を超えると、鋼製ワークの結晶粒が粗大化し易くなり、製品の靱性や疲労特性の低下を招くこととなる。そして、当該鋼製ワークの表面の温度が800℃〜1140℃になるまで加熱された時点から、この温度を保持する時間が900秒を超えると、高周波誘導による加熱が長時間となり、経済的観点から望ましくない。
以上、本件発明に係る浸炭窒化処理方法が備える浸炭窒化工程について述べたが、本件発明に係る浸炭窒化処理方法は、必要に応じて、浸炭窒化工程の後に拡散処理を行うことも可能である。本件発明に係る浸炭窒化処理方法では、鋼製ワーク表面の炭素濃度及び窒素濃度を短時間で一気に高めた後に拡散処理を行うことによって、当該鋼製ワークの表面近傍の炭素及び窒素の濃度や浸炭浸窒深さを最適にし、また、窒素を鋼製ワークの内部へ十分に拡散することが出来る。
〈焼入工程〉
本件発明に係る浸炭窒化処理方法における焼入工程では、浸炭窒化工程後に、鋼製ワークの表面を常温まで急冷させることにより、当該鋼製ワークの組織をマルテンサイトにし、当該鋼製ワークの表層組織を硬くして、当該鋼製ワーク表層の耐摩耗性・耐傷性等を向上させることが出来る。ここで、本件発明の焼入工程では、鋼製ワークの表面を冷却させる方法に関して限定されず、例えばガス冷却等を採用することが出来る。また、本件発明の焼入工程では、鋼製ワークに対して浸炭窒化処理を行った後に、浸炭窒化処理装置から取り出して高周波焼入れを行うことも出来る。ちなみに、本件発明の焼入工程では、急冷することが好ましい。
また、本件発明に係る浸炭窒化処理方法において、浸炭窒化工程では、鋼製ワークの表面に対して行う浸炭及び浸窒を同時又は連続して行うことが可能である。
本件発明に係る浸炭窒化処理方法は、浸炭窒化工程において、浸炭と浸窒とを同時に実施することで、より迅速に浸炭窒化処理を行うことが可能となる。
また、本件発明に係る浸炭窒化処理方法は、浸炭窒化工程において、浸炭と浸窒とを別々に連続して実施することで鋼中に浸透させる炭素量及び窒素量をより正確に制御することが可能となる。
また、本件発明に係る浸炭窒化処理方法において、浸炭浸窒用溶液が含有する浸炭成分及び浸窒成分の濃度を変更することにより、鋼製ワークの表面近傍の炭素濃度及び窒素濃度を制御することが可能である。
本件発明に係る浸炭窒化処理方法は、浸炭浸窒用溶液が含有する浸炭成分及び浸窒成分の濃度を変更して、鋼中に浸透させる炭素量及び窒素量を制御することが出来るため、品質管理が容易となる。また、本件発明に係る浸炭窒化処理方法は、鋼中に浸透させる炭素量及び窒素量を制御可能であることから、例えばガス浸炭処理を施した鋼製品に対して、複合処理として窒素を浸透拡散させることも可能である。なお、鋼製ワーク表面近傍の炭素濃度及び窒素濃度の制御は、上述した浸炭浸窒用溶液の濃度を調整して行う他、浸炭窒化処理温度を調整して行うことも出来る。
また、本件発明に係る浸炭窒化処理方法において、浸炭浸窒用溶液は、炭素供給用としてメタノール及びエタノールから選択される少なくとも1種を用いることが可能である。
本件発明の浸炭浸窒用溶液は、炭素供給用としてメタノール(CH−OH)やエタノール(CH−CH−OH)のように粘性が低く、流動性に富み、且つ、沸点が比較的低い性質のものを選択的に用いることで、鋼製ワークが加熱を受けている間に、当該鋼製ワークの表面から炭素を安定して浸透させることが出来る。ちなみに、メタノールは、市場において、安価で、且つ、入手が容易であり、人体に与える影響も少ないため、作業者の身体に深刻な影響を与える薬品ではなく、廃棄の時の環境負荷も抑制できるため、炭素供給用としてより好適に用いることが出来る。
また、本件発明に係る浸炭窒化処理方法において、浸炭浸窒用溶液は、窒素供給用として窒素原子を含む化合物の溶液を用いることが可能である。
本件発明の浸炭浸窒用溶液は、窒素供給用として窒素原子を含む化合物の溶液を用いることが出来るが、特に、窒素原子を含む化合物として尿素を用い、この尿素を水又はメタノールに溶解して用いることが好ましい。本件発明の浸炭浸窒用溶液として、尿素を水又はメタノールに溶解して得られる溶液を用いることで、鋼製ワークが加熱を受けている間に当該鋼製ワーク周囲の尿素が熱分解してNH及びCOが発生し、当該鋼製ワークの表面から窒素及び炭素を同時に浸透させることが出来る。なお、本件発明の窒素供給用として用いる尿素を含む溶液は、メタノールや水等に希釈して用いることが出来るが、このときに例えば尿素水溶液や尿素メタノール水溶液の尿素濃度が低すぎると窒素を鋼中に迅速に浸透させることが困難となる。ちなみに、本件発明の窒素供給用として尿素を含む溶液(例えば尿素水溶液や尿素メタノール水溶液)を用いる場合には、その尿素濃度が500g/L以上であることが、窒素を鋼中に迅速に浸透させる上で好ましい。
また、本件発明に係る浸炭窒化処理方法において、焼入工程では、鋼製ワークの表面を浸炭浸窒用溶液に接触させた状態で高周波誘導加熱の出力を停止して焼入れを行うことが可能である。
本件発明の焼入工程では、浸炭窒化工程で加熱された鋼製ワークの表面を、浸炭浸窒用溶液に接触させた状態で高周波誘導加熱の出力を停止して急冷することで、浸炭窒化処理時間の短縮が図られ、生産性をより向上させることが出来る。
以下、本件発明の実施例を示し、本件発明をより詳細に説明する。但し、本件発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例1では、浸炭浸窒用溶液として尿素水溶液をメタノールで希釈した混合液を用い、鋼製ワークを浸炭浸窒用溶液中に浸漬して、当該鋼製ワークの表面を浸炭浸窒用溶液に接触させた。そして、本件発明の効果を確認するために、当該浸炭浸窒用溶液中のメタノール濃度を60%と一定とし、当該浸炭浸窒用溶液中の尿素濃度、浸炭窒化工程における加熱温度及び加熱時間についてはそれぞれ異なる条件で浸炭窒化処理を行ったときの、鋼製ワーク表面の窒素濃度及び炭素濃度を測定した。
ここで、この実施例1で用いる鋼製ワーク(試料)としては、クロムモリブデン鋼製(SCM420)で、直径10mm、長さ80mmの円柱状のものを用いた。そして、この実施例1では、当該試料を浸炭浸窒用溶液に浸漬させ、当該試料を高周波誘導コイルの内部に挿入した状態で当該高周波誘導コイルに通電して高周波誘導加熱して、浸炭窒化処理を行った。また、当該試料の温度測定は、当該試料の表面近傍に温度測定用の穴を設けて、この穴内部に熱電対を挿入配置して測定した。
以下に示す表1には、試料を浸炭浸窒用溶液中に浸漬して当該試料の表面を浸炭浸窒用溶液に接触させた状態で浸炭窒化処理を行った場合において、条件(尿素濃度、加熱温度、加熱時間)の違いが試料表面の窒素濃度及び炭素濃度に及ぼす影響を示す。
Figure 0006290592
まず、試料1及び試料2の結果より、浸炭浸窒用溶液の尿素濃度が650g/Lでは、850℃、1050℃のいずれの加熱温度でも浸窒量が少なく、加熱時間180secで窒素を鋼中に十分に浸透させるには尿素濃度が低いことが分かる。一方、試料4の結果より、浸炭浸窒用溶液の尿素濃度が800g/Lでは、1050℃の加熱温度で、表面窒素濃度0.15wt%を得ており、加熱時間180secでも窒素が鋼中に十分に浸透していることが分かる。これらの結果より、1050℃の加熱温度で加熱時間を180secとした場合には、尿素濃度は800g/L以上とすることが好ましいことが分かった。なお、試料3の結果より、加熱時間が60secでは、浸炭浸窒用溶液の尿素濃度が800g/Lで1050℃の加熱温度でも浸窒量が少なく、少なくとも試料3の尿素濃度及び加熱温度の条件では加熱温度は60sec以上が好ましいことが分かる。また、試料5の結果より、浸炭浸窒用溶液の尿素濃度が950g/Lでは、加熱時間180sec、1050℃の加熱温度で、表面窒素濃度0.20wt%を得ており、尿素濃度が高いほど、短時間で窒素を鋼中に十分に浸透させられることが分かる。ちなみに、試料4及び試料5においては、表面窒素濃度が比較的高いにもかかわらず、表面炭素濃度0.6wt%程度が得られている。
実施例2では、浸炭浸窒用溶液として尿素水溶液を用い、鋼製ワークの周辺に浸炭浸窒用溶液を噴霧して、当該鋼製ワークの表面を浸炭浸窒用溶液に接触させた。そして、本件発明の効果を確認するために、当該浸炭浸窒用溶液中の尿素濃度を1000g/Lとし、浸炭窒化工程における加熱温度を850℃、加熱時間を300secとして浸炭窒化処理を行ったときの、鋼製ワーク表面の窒素濃度及び炭素濃度を測定した。
ここで、この実施例2で用いる鋼製ワーク(試料)としては、炭素鋼製(S15C)で、直径10mm、長さ80mmの円柱状のものを用いた。そして、この実施例2では、当該試料に浸炭浸窒用溶液を噴霧し、当該試料を高周波誘導コイルの内部に挿入した状態で当該高周波誘導コイルに通電して高周波誘導加熱して、浸炭窒化処理を行った。また、当該試料の温度測定は、当該試料の表面近傍に温度測定用の穴を設けて、この穴内部に熱電対を挿入配置して測定した。
図2は、本件発明の浸炭窒化処理装置の一実施形態を示す概略構成図である。この実施例2で用いる浸炭窒化処理装置1は、図2に例示する如く、尿素水溶液を供給タンク6に入れ、加圧ポンプ7にて昇圧を行い、浸炭窒化処理槽2内に設けられた噴霧ノズル4から当該尿素水溶液を鋼製ワーク10に吹きかけることが可能である。当該尿素水溶液は、細かな霧状で供給されるため、浸炭窒化処理槽2内に滞留し、当該鋼製ワーク10が回転(図2中矢印方向参考のこと。)することで当該鋼製ワーク10の表面全体に接触して浸炭窒化ガスが発生し、浸炭窒化が行われる。図2に示すように、本件発明に係る浸炭窒化処理方法は、鋼製ワーク10を浸炭浸窒用溶液中に浸漬させて当該鋼製ワーク10表面を浸炭浸窒用溶液に接触させるだけでなく、当該鋼製ワーク10の周辺に浸炭浸窒用溶液を噴霧して当該鋼製ワーク10の表面を浸炭浸窒用溶液に接触させることが出来る。
以下に示す表2には、試料の周辺に浸炭浸窒用溶液を噴霧して当該試料の表面を浸炭浸窒用溶液に接触させた状態で浸炭窒化処理を行った場合において、上述した条件(尿素濃度、加熱温度、加熱時間)での試料表面の窒素濃度及び炭素濃度を示す。
Figure 0006290592
試料6の結果より、加熱時間が300secでは、浸炭浸窒用溶液の尿素濃度が1000g/Lで加熱温度が850℃でも表面窒素濃度0.20wt%を得ており、窒素を鋼中に十分に浸透させることが出来ていることが分かる。また、この手法を用いて、鋼製ワークの周辺に浸炭浸窒用溶液を噴霧させながら浸炭窒化処理を行った場合、鋼製ワークを浸炭浸窒用溶液中に浸漬させて浸炭窒化処理を行った場合と比較して、加熱効率を改善することが出来る。
以上のことから、浸炭窒化処理を行う際に、鋼製ワークの表面を浸炭浸窒用溶液に接触させた状態で高周波誘導加熱を行うことで、効率的に炭素及び窒素を短時間で鋼中に浸透させることが可能であることが分かった。また、浸炭窒化処理を行う際の、浸炭浸窒用溶液中浸炭成分及び浸窒成分の濃度、加熱温度、加熱時間の各条件が、鋼製ワーク表面の窒素濃度及び炭素濃度に影響を及ぼすことが分かった。すなわち、本件発明に係る浸炭窒化処理方法によれば、高周波誘導加熱法を用い、浸炭窒化処理を行う際の条件を本件発明で規定する条件範囲内で適宜調整することで、鋼製ワークに形成する浸炭窒化層の炭素濃度及び窒素濃度を短時間で目的の値にすることの出来ることが実証された。
本件発明に係る浸炭窒化処理方法によれば、必要な炭素量及び窒素量を迅速に鋼中に浸透させて、浸炭窒化処理の大幅な短時間化が可能であるため、耐摩耗性や耐疲労特性等に優れた鋼製品を低コストで提供することが出来る。従って、本件発明に係る浸炭窒化処理方法は、自動車のカムやベアリング等様々な機械部品、摺動用部品に好適に用いることが出来る。
1 浸炭窒化処理装置(噴霧用)
2 浸炭窒化処理槽
3 加熱コイル
4 噴霧用ノズル
5 高周波電源
6 浸炭浸窒用溶液供給タンク
7 加圧ポンプ
10 鋼製ワーク

Claims (9)

  1. 鋼製ワークの表面に浸炭窒化層を形成する浸炭窒化処理方法であって、
    当該鋼製ワークの周辺に炭素及び窒素の供給源を含む浸炭浸窒用溶液を噴霧して、当該鋼製ワークの表面を浸炭浸窒用溶液に接触させ、当該鋼製ワークを高周波誘導加熱し、当該鋼製ワークの表面に炭素及び窒素を浸透させることを特徴とする浸炭窒化処理方法。
  2. 前記浸炭窒化処理方法が、
    前記鋼製ワークの表面に、800℃〜1140℃の温度で900秒間以下浸炭窒化処理を行う浸炭窒化工程と、
    当該浸炭窒化工程後に、当該鋼製ワークの表面を常温まで冷却させる焼入工程とを備えた請求項1に記載の浸炭窒化処理方法。
  3. 前記焼入工程では、前記鋼製ワークの表面を浸炭浸窒用溶液に接触させた状態で高周波誘導加熱の出力を停止して焼入れを行う請求項2に記載の浸炭処理方法。
  4. 鋼製ワークの表面に浸炭窒化層を形成する浸炭窒化処理方法であって、
    当該鋼製ワークを炭素及び窒素の供給源を含む浸炭浸窒用溶液中に浸漬して、当該鋼製ワークの表面を浸炭浸窒用溶液に接触させ、当該鋼製ワークを高周波誘導加熱し、当該鋼製ワークの表面に炭素及び窒素を浸透させる浸炭窒化処理を行う浸炭窒化工程と、
    当該浸炭窒化工程後に、当該鋼製ワークの表面を常温まで冷却させる焼入工程とを備え、
    当該焼入工程では、当該鋼製ワークの表面を浸炭浸窒用溶液に接触させた状態で高周波誘導加熱の出力を停止して焼入れを行うことを特徴とする浸炭窒化処理方法。
  5. 前記浸炭窒化工程では、前記鋼製ワークの表面に、800℃〜1140℃の温度で900秒間以下浸炭窒化処理を行う請求項に記載の浸炭処理方法。
  6. 前記浸炭窒化工程では、前記鋼製ワークの表面に対して行う浸炭及び浸窒を同時又は連続して行う請求項2〜請求項5のいずれかに記載の浸炭窒化処理方法。
  7. 前記浸炭窒化処理方法は、前記浸炭浸窒用溶液が含有する浸炭成分及び浸窒成分の濃度を変更することにより、前記鋼製ワークの表面近傍の炭素濃度及び窒素濃度を制御するものである請求項1〜請求項のいずれかに記載の浸炭窒化処理方法。
  8. 前記浸炭浸窒用溶液は、炭素供給用としてメタノール及びエタノールから選択される少なくとも1種を用いた請求項1〜請求項のいずれかに記載の浸炭処理方法。
  9. 前記浸炭浸窒用溶液は、窒素供給用として窒素原子を含む化合物の溶液を用いた請求項1〜請求項のいずれかに記載の浸炭処理方法。
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