JP2004052023A - 窒化処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、窒化炉を用いて耐食性により優れた窒化硬化層を、より短時間で処理する窒化処理方法を提供することである。
【解決手段】鉄鋼材料の表面を改質するガス窒化法,イオン窒化法及び塩浴窒化法の何れかにおいて、深い窒化硬化層を短時間で形成するための高温処理と、耐食性を確保するための低温処理の複合処理を行うことにより、深い窒化硬化層と表面の耐食性を有することを特徴とする窒化処理方法。更には、高温処理が、処理温度が
500℃以上で窒化処理を行うこと、低温処理が、処理温度が300℃以上450℃未満で窒化処理を行うこと。
【効果】窒化炉を用いて耐食性により優れた窒化硬化層を、より短時間で処理する窒化処理方法を提供することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】鉄鋼材料の表面を改質するガス窒化法,イオン窒化法及び塩浴窒化法の何れかにおいて、深い窒化硬化層を短時間で形成するための高温処理と、耐食性を確保するための低温処理の複合処理を行うことにより、深い窒化硬化層と表面の耐食性を有することを特徴とする窒化処理方法。更には、高温処理が、処理温度が
500℃以上で窒化処理を行うこと、低温処理が、処理温度が300℃以上450℃未満で窒化処理を行うこと。
【効果】窒化炉を用いて耐食性により優れた窒化硬化層を、より短時間で処理する窒化処理方法を提供することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化処理方法に関する。特に、耐摩耗性と耐食性の何れにも優れた窒化層を得ることが出来る窒化処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平2−294463号では、第1窒化処理を550〜600℃の比較的高い温度で行い、深い硬化層を得た後、第1窒化処理よりも低い450〜530℃で窒化処理を行うことによって、表面層の硬さを大幅に向上させている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
第2窒化処理が450℃以上では、耐食性向上の効果は少ない。また、耐食性の向上には、窒化炉以外の装置を設置する必要がある。
【0004】
本発明の目的は、窒化炉を用いて耐食性により優れた窒化硬化層を、より短時間で処理する窒化処理方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明では、まず第1に500℃以上の高温で窒化処理を行い、次いで、450℃未満の温度で窒化処理を行う。これにより、第1の処理では、より深い窒化硬化層を得ることができ、また、第2の処理では、より表面の耐食性を向上させることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
発明者らは、ガス窒化法,イオン窒化法,塩浴窒化法等の窒化処理方法について種々検討を行った。
【0007】
構造部材の耐摩耗性,耐衝撃性等を向上させ、さらに耐食性も向上させる手段として、イオンプレーティングなどによる窒化チタンや窒化クロムなどの皮膜を形成する方法,ニッケルめっきやクロムめっきを形成する方法などがある。しかし、いずれも皮膜であるために剥離の問題や、ピンホール状欠陥による耐食性低下の問題がある。
【0008】
また、窒化処理法には、ガス窒化法,イオン窒化法,塩浴窒化法があるが、いずれも耐摩耗性,耐衝撃性,疲労強度等の機械的性質の向上を目的としている。いずれの処理法においても、450℃未満の低温で処理を行うと、耐食性に優れた窒化層を得ることができる。しかし低温での処理は、窒素の拡散速度が遅く、深い窒化硬化層深さを得るためには長時間の処理が必要となり経済的に有効ではない。
【0009】
ガス窒化法においては、窒化ガスであるNH3 ガスを、NH3 分解触媒と接触させて分解し、活性窒素発生させることで、窒素原子がより迅速かつ均一に金属表面に吸着・浸透することにより、低温で迅速に均一な窒化層を形成させることができると提案されている。
【0010】
しかし、この方法では、NH3 分解触媒が必要であることや、窒化法がガス窒化法に限定されてしまう問題点がある。
【0011】
また、第1窒化処理を550〜600℃の比較的高い温度で行い、深い硬化層を得た後、第1窒化処理よりも低い450〜530℃で窒化処理を行うことによって、表面層の硬さを大幅に向上させることも提案されている。しかし、第2窒化処理が450℃以上では、耐食性向上の効果は少ないという問題点がある。
【0012】
以下、イオン窒化法を用いた実施態様を説明する。
【0013】
(実施態様1)
窒化処理方法は、ガス窒化法,イオン窒化法,塩浴窒化法のいずれでもよい。イオン窒化法を用いた手段を以下に示す。
【0014】
図2に、本発明を実施するのに用いた装置の概略を示す。装置は、真空容器4とその内部に設けられたワークテーブル5を有し、真空容器4とワークテーブル5は絶縁体6によって互いに絶縁されている。真空容器4には排気管8と排気バルブ9が設けられ、排気管8は真空ポンプに接続されている。また、真空容器4には、ガス導入管10とガス導入バルブ11が設けられ、ガス導入管10はN2 ガス,H2 ガスおよびArガスの混合ガス源に接続されている。真空容器4とワークテーブル5間には、真空容器4を陽極、ワークテーブル5を陰極とする電源7を有し、直流電源を印加できるようになっている。また、真空容器4に設けられたのぞき窓12を通して、被処理物14の表面温度を測定する赤外線放射温度計13で構成される。
【0015】
窒化処理を行うときには、ワークテーブル5の上に、被処理物14を設置し、排気バルブ9を開き真空ポンプにより真空容器4の内部を13.3Pa 以下の圧力とした後、N2 ガス,H2 ガスおよびArガスの混合ガスを導入し、真空容器4の内部のガス置換を行う。そして、電源7を用いて被処理物14と真空容器4の間に100〜700Vの直流電圧をかけてグロー放電を被処理物14の陰極周囲に発生させてイオン窒化を行う。イオン窒化処理中の被処理物14は、イオンの衝撃エネルギーにより加熱される。この時の被処理物14の温度を赤外線放射温度計13により測定し、窒化温度が一定になるように印加電圧を制御する。
【0016】
前記イオン窒化において、500℃以上の高温処理を行った後、450℃未満の低温処理を行うことにより、深い窒化硬化層と表面の耐食性を有する窒化層を得ることができる。
【0017】
同様に、ガス窒化法,塩浴窒化法においても、窒化温度を制御することによって、深い窒化硬化層と表面の耐食性を有する窒化層を得ることができる。
【0018】
(実施態様2)
実験は、高合金工具鋼SKD11材およびオーステナイト系ステンレス鋼
SUS304材のテストピースを用いて行った。テストピース形状は、20×
20×5〔mm〕で、脱脂洗浄後、図1に示すイオン窒化炉内のワークテーブル5上に、20×5の面が下になるようにセットした。
【0019】
図2に、本発明の窒化処理による温度と時間の条件を示す。処理温度および処理時間は、高温処理:550℃×3h,低温処理:400℃×1hで行った。ガス組成比,ガス圧力は、高温処理,低温処理共通で、N2 /H2 /Ar=1/1/0,ガス圧力1333Paで行い、昇温開始からテストピース取出しまでトータル6時間40分を要した。
【0020】
図3に、比較として行った低温処理のみの窒化処理の温度と時間の条件を示す。処理温度および処理時間は、400℃×10hで行った。温度以外の条件は、本発明の窒化処理による実験と同じ条件で行った。昇温開始からテストピース取出しまでトータル12時間30分を要した。
【0021】
図1に、SKD11材に本発明の窒化処理を行った断面構成および硬さ分布を示す。低温処理領域1を含む全硬化層2は、約130μmとなっており、以下母材硬さ領域3となっている。この時の表面硬さは、1200Hvであった。
【0022】
図5に、SKD11材に低温処理のみの窒化処理を行った断面構成および硬さ分布を示す。この実験の場合、低温処理領域1と全硬化層2は同一で、約60
μmとなっており、以下母材硬さ領域3となっている。この時の表面硬さは、
1200Hvであった。
【0023】
図6に、SUS304材に本発明の窒化処理を行った断面構成および硬さ分布を示す。低温処理領域1を含む全硬化層2は、約75μmとなっており、以下母材硬さ領域3となっている。この時の表面硬さは、1300Hvであった。
【0024】
図7に、SUS304材に低温処理のみの窒化処理を行った断面構成および硬さ分布を示す。この実験の場合、低温処理領域1と全硬化層2は同一で、約6
μmとなっており、以下母材硬さ領域3となっている。この時の表面硬さは、
1300Hvであった。
【0025】
図8に、表面処理なし、高温窒化処理,低温窒化処理および本発明の窒化処理を行ったSKD11材とSUS304材の自然電位および孔食電位を示す。電位測定は、JIS G 0577 ステンレス孔食電位測定方法を参考にした分極測定を行った。これにより、高温窒化処理品は、SKD11材,SUS304材いずれも低い耐食性であるのに対し、低温窒化品は、高い耐食性を示していることが分かり、本発明の窒化処理を行ったものは、低温窒化品と同等の耐食性を有していることが分かる。
【0026】
図9に、SKD11材とSUS304材を用いて、第1窒化処理を550℃で行った後、第2窒化の処理温度を変化させた場合の孔食電位を示す。図8同様に電位測定は、JIS G 0577 ステンレス孔食電位測定方法を参考にした分極測定を行った。これにより、第2窒化処理温度は、SKD11材,SUS304材いずれも430℃以下で行うことにより優れた耐食性を示したが、450℃以上では耐食性改善の効果が無いことが明らかとなった。
【0027】
以上から窒化処理を行ったSKD11材およびSUS304材は、耐食性に優れた窒化層を短時間で形成することが出来ることが分かった。
【0028】
また、高温窒化処理と低温窒化処理は、同一炉による連続処理でない場合や、ガス窒化法,イオン窒化法および塩浴窒化法のどの組み合わせによる処理でも同じ効果が得られる。
【0029】
以上述べた実施態様によれば、ガス窒化法,イオン窒化法および塩浴窒化法のいずれかの方法において、また、装置改造や特別な付属品など必要とせずに、通常の窒化炉を用いて耐食性に優れた深い窒化硬化層を、短時間で処理することを特徴とする窒化処理方法を提供することができる。
【0030】
また、以上述べた窒化方法を用いることにより、耐食性に優れた、深い窒化硬化層を短時間で形成することが可能である。更には、窒化処理費を低減することができる。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、窒化炉を用いて耐食性により優れた窒化硬化層を、より短時間で処理する窒化処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】SKD11に窒化処理を行った断面構成および硬さ分布を示す。
【図2】窒化処理を実施するのに用いた装置の概略を示す。
【図3】窒化処理による温度と時間の条件を示す。
【図4】低温処理のみの窒化処理の温度と時間の条件を示す。
【図5】SKD11に低温処理のみの窒化処理を行った断面構成および硬さ分布を示す。
【図6】SUS304に窒化処理を行った断面構成および硬さ分布を示す。
【図7】SUS304に低温処理のみの窒化処理を行った断面構成および硬さ分布を示す。
【図8】表面処理なし、高温窒化処理,低温窒化処理および窒化処理を行ったSKD11材とSUS304材の自然電位および孔食電位を示す。
【図9】SKD11およびSUS304を用いた場合の、第1窒化処理後の第2窒化温度による孔食電位の変化を示す。
【符号の説明】
1…低温処理領域、2…全硬化層、3…母材硬さ領域、4…真空容器、5…ワークテーブル、6…絶縁体、7…電源、8…排気管、9…排気バルブ、10…ガス導入管、11…ガス導入バルブ、12…のぞき窓、13…赤外線放射温度計、14…被処理物。
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化処理方法に関する。特に、耐摩耗性と耐食性の何れにも優れた窒化層を得ることが出来る窒化処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平2−294463号では、第1窒化処理を550〜600℃の比較的高い温度で行い、深い硬化層を得た後、第1窒化処理よりも低い450〜530℃で窒化処理を行うことによって、表面層の硬さを大幅に向上させている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
第2窒化処理が450℃以上では、耐食性向上の効果は少ない。また、耐食性の向上には、窒化炉以外の装置を設置する必要がある。
【0004】
本発明の目的は、窒化炉を用いて耐食性により優れた窒化硬化層を、より短時間で処理する窒化処理方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明では、まず第1に500℃以上の高温で窒化処理を行い、次いで、450℃未満の温度で窒化処理を行う。これにより、第1の処理では、より深い窒化硬化層を得ることができ、また、第2の処理では、より表面の耐食性を向上させることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
発明者らは、ガス窒化法,イオン窒化法,塩浴窒化法等の窒化処理方法について種々検討を行った。
【0007】
構造部材の耐摩耗性,耐衝撃性等を向上させ、さらに耐食性も向上させる手段として、イオンプレーティングなどによる窒化チタンや窒化クロムなどの皮膜を形成する方法,ニッケルめっきやクロムめっきを形成する方法などがある。しかし、いずれも皮膜であるために剥離の問題や、ピンホール状欠陥による耐食性低下の問題がある。
【0008】
また、窒化処理法には、ガス窒化法,イオン窒化法,塩浴窒化法があるが、いずれも耐摩耗性,耐衝撃性,疲労強度等の機械的性質の向上を目的としている。いずれの処理法においても、450℃未満の低温で処理を行うと、耐食性に優れた窒化層を得ることができる。しかし低温での処理は、窒素の拡散速度が遅く、深い窒化硬化層深さを得るためには長時間の処理が必要となり経済的に有効ではない。
【0009】
ガス窒化法においては、窒化ガスであるNH3 ガスを、NH3 分解触媒と接触させて分解し、活性窒素発生させることで、窒素原子がより迅速かつ均一に金属表面に吸着・浸透することにより、低温で迅速に均一な窒化層を形成させることができると提案されている。
【0010】
しかし、この方法では、NH3 分解触媒が必要であることや、窒化法がガス窒化法に限定されてしまう問題点がある。
【0011】
また、第1窒化処理を550〜600℃の比較的高い温度で行い、深い硬化層を得た後、第1窒化処理よりも低い450〜530℃で窒化処理を行うことによって、表面層の硬さを大幅に向上させることも提案されている。しかし、第2窒化処理が450℃以上では、耐食性向上の効果は少ないという問題点がある。
【0012】
以下、イオン窒化法を用いた実施態様を説明する。
【0013】
(実施態様1)
窒化処理方法は、ガス窒化法,イオン窒化法,塩浴窒化法のいずれでもよい。イオン窒化法を用いた手段を以下に示す。
【0014】
図2に、本発明を実施するのに用いた装置の概略を示す。装置は、真空容器4とその内部に設けられたワークテーブル5を有し、真空容器4とワークテーブル5は絶縁体6によって互いに絶縁されている。真空容器4には排気管8と排気バルブ9が設けられ、排気管8は真空ポンプに接続されている。また、真空容器4には、ガス導入管10とガス導入バルブ11が設けられ、ガス導入管10はN2 ガス,H2 ガスおよびArガスの混合ガス源に接続されている。真空容器4とワークテーブル5間には、真空容器4を陽極、ワークテーブル5を陰極とする電源7を有し、直流電源を印加できるようになっている。また、真空容器4に設けられたのぞき窓12を通して、被処理物14の表面温度を測定する赤外線放射温度計13で構成される。
【0015】
窒化処理を行うときには、ワークテーブル5の上に、被処理物14を設置し、排気バルブ9を開き真空ポンプにより真空容器4の内部を13.3Pa 以下の圧力とした後、N2 ガス,H2 ガスおよびArガスの混合ガスを導入し、真空容器4の内部のガス置換を行う。そして、電源7を用いて被処理物14と真空容器4の間に100〜700Vの直流電圧をかけてグロー放電を被処理物14の陰極周囲に発生させてイオン窒化を行う。イオン窒化処理中の被処理物14は、イオンの衝撃エネルギーにより加熱される。この時の被処理物14の温度を赤外線放射温度計13により測定し、窒化温度が一定になるように印加電圧を制御する。
【0016】
前記イオン窒化において、500℃以上の高温処理を行った後、450℃未満の低温処理を行うことにより、深い窒化硬化層と表面の耐食性を有する窒化層を得ることができる。
【0017】
同様に、ガス窒化法,塩浴窒化法においても、窒化温度を制御することによって、深い窒化硬化層と表面の耐食性を有する窒化層を得ることができる。
【0018】
(実施態様2)
実験は、高合金工具鋼SKD11材およびオーステナイト系ステンレス鋼
SUS304材のテストピースを用いて行った。テストピース形状は、20×
20×5〔mm〕で、脱脂洗浄後、図1に示すイオン窒化炉内のワークテーブル5上に、20×5の面が下になるようにセットした。
【0019】
図2に、本発明の窒化処理による温度と時間の条件を示す。処理温度および処理時間は、高温処理:550℃×3h,低温処理:400℃×1hで行った。ガス組成比,ガス圧力は、高温処理,低温処理共通で、N2 /H2 /Ar=1/1/0,ガス圧力1333Paで行い、昇温開始からテストピース取出しまでトータル6時間40分を要した。
【0020】
図3に、比較として行った低温処理のみの窒化処理の温度と時間の条件を示す。処理温度および処理時間は、400℃×10hで行った。温度以外の条件は、本発明の窒化処理による実験と同じ条件で行った。昇温開始からテストピース取出しまでトータル12時間30分を要した。
【0021】
図1に、SKD11材に本発明の窒化処理を行った断面構成および硬さ分布を示す。低温処理領域1を含む全硬化層2は、約130μmとなっており、以下母材硬さ領域3となっている。この時の表面硬さは、1200Hvであった。
【0022】
図5に、SKD11材に低温処理のみの窒化処理を行った断面構成および硬さ分布を示す。この実験の場合、低温処理領域1と全硬化層2は同一で、約60
μmとなっており、以下母材硬さ領域3となっている。この時の表面硬さは、
1200Hvであった。
【0023】
図6に、SUS304材に本発明の窒化処理を行った断面構成および硬さ分布を示す。低温処理領域1を含む全硬化層2は、約75μmとなっており、以下母材硬さ領域3となっている。この時の表面硬さは、1300Hvであった。
【0024】
図7に、SUS304材に低温処理のみの窒化処理を行った断面構成および硬さ分布を示す。この実験の場合、低温処理領域1と全硬化層2は同一で、約6
μmとなっており、以下母材硬さ領域3となっている。この時の表面硬さは、
1300Hvであった。
【0025】
図8に、表面処理なし、高温窒化処理,低温窒化処理および本発明の窒化処理を行ったSKD11材とSUS304材の自然電位および孔食電位を示す。電位測定は、JIS G 0577 ステンレス孔食電位測定方法を参考にした分極測定を行った。これにより、高温窒化処理品は、SKD11材,SUS304材いずれも低い耐食性であるのに対し、低温窒化品は、高い耐食性を示していることが分かり、本発明の窒化処理を行ったものは、低温窒化品と同等の耐食性を有していることが分かる。
【0026】
図9に、SKD11材とSUS304材を用いて、第1窒化処理を550℃で行った後、第2窒化の処理温度を変化させた場合の孔食電位を示す。図8同様に電位測定は、JIS G 0577 ステンレス孔食電位測定方法を参考にした分極測定を行った。これにより、第2窒化処理温度は、SKD11材,SUS304材いずれも430℃以下で行うことにより優れた耐食性を示したが、450℃以上では耐食性改善の効果が無いことが明らかとなった。
【0027】
以上から窒化処理を行ったSKD11材およびSUS304材は、耐食性に優れた窒化層を短時間で形成することが出来ることが分かった。
【0028】
また、高温窒化処理と低温窒化処理は、同一炉による連続処理でない場合や、ガス窒化法,イオン窒化法および塩浴窒化法のどの組み合わせによる処理でも同じ効果が得られる。
【0029】
以上述べた実施態様によれば、ガス窒化法,イオン窒化法および塩浴窒化法のいずれかの方法において、また、装置改造や特別な付属品など必要とせずに、通常の窒化炉を用いて耐食性に優れた深い窒化硬化層を、短時間で処理することを特徴とする窒化処理方法を提供することができる。
【0030】
また、以上述べた窒化方法を用いることにより、耐食性に優れた、深い窒化硬化層を短時間で形成することが可能である。更には、窒化処理費を低減することができる。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、窒化炉を用いて耐食性により優れた窒化硬化層を、より短時間で処理する窒化処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】SKD11に窒化処理を行った断面構成および硬さ分布を示す。
【図2】窒化処理を実施するのに用いた装置の概略を示す。
【図3】窒化処理による温度と時間の条件を示す。
【図4】低温処理のみの窒化処理の温度と時間の条件を示す。
【図5】SKD11に低温処理のみの窒化処理を行った断面構成および硬さ分布を示す。
【図6】SUS304に窒化処理を行った断面構成および硬さ分布を示す。
【図7】SUS304に低温処理のみの窒化処理を行った断面構成および硬さ分布を示す。
【図8】表面処理なし、高温窒化処理,低温窒化処理および窒化処理を行ったSKD11材とSUS304材の自然電位および孔食電位を示す。
【図9】SKD11およびSUS304を用いた場合の、第1窒化処理後の第2窒化温度による孔食電位の変化を示す。
【符号の説明】
1…低温処理領域、2…全硬化層、3…母材硬さ領域、4…真空容器、5…ワークテーブル、6…絶縁体、7…電源、8…排気管、9…排気バルブ、10…ガス導入管、11…ガス導入バルブ、12…のぞき窓、13…赤外線放射温度計、14…被処理物。
Claims (5)
- 鉄鋼材料の表面を改質するガス窒化法,イオン窒化法及び塩浴窒化法の何れかにおいて、深い窒化硬化層を短時間で形成するための高温処理と、耐食性を確保するための低温処理の複合処理を行うことにより、深い窒化硬化層と表面の耐食性を有することを特徴とする窒化処理方法。
- 請求項1において、前記高温処理が、処理温度が500℃以上で窒化処理を行うことであることを特徴とする窒化処理方法。
- 請求項1において、前記低温処理が、処理温度が300℃以上450℃未満で窒化処理を行うことであることを特徴とする窒化処理方法。
- 請求項1乃至3の何れかにおいて、前記低温処理と前記高温処理を同一炉内で行うことを特徴とする窒化処理方法。
- 約5%硝酸アルコール溶液による断面組織観察において、腐食される部分が、強腐食される高温処理領域及び耐食性に優れほとんど腐食されない部分とが明瞭に判別できる窒化硬化層を形成する請求項1乃至3の何れかに記載の窒化処理方法。
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Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN102517541A (zh) * | 2011-12-19 | 2012-06-27 | 台州市百达热处理有限公司 | 一种11Cr17不锈钢滑片的气体氮化处理方法 |
CN102747316A (zh) * | 2012-07-30 | 2012-10-24 | 鹰普航空零部件(无锡)有限公司 | 耐腐蚀不锈钢零件盐浴氮化预处理与气体氮化复合热处理工艺 |
JP2015100797A (ja) * | 2013-11-21 | 2015-06-04 | オーエスジー株式会社 | 転造ダイス |
CN105937018A (zh) * | 2016-06-27 | 2016-09-14 | 温州兰理工科技园有限公司 | 一种奥氏体不锈钢低温离子渗氮的方法 |
CN114892123A (zh) * | 2022-05-23 | 2022-08-12 | 太原理工大学 | 一种消除小孔打弧风险的离子氮化方法 |
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2002
- 2002-07-18 JP JP2002209027A patent/JP2004052023A/ja active Pending
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