JP5295813B2 - 鉄族系合金の窒化処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄族系合金の窒化処理方法に関し、特に、鉄族系合金の表面から不動態膜を除去するとともに、プラズマ窒化(イオン窒化)により鉄族系合金の表面を窒化する方法に関する。
従来、ステンレス鋼などの鉄族系合金からなる被処理材の表面の窒化処理を行って、耐摩耗性や疲労強度などを向上させることが知られている。このような窒化処理の方法として、被処理材をアンモニアガス中で加熱するガス窒化法、被処理材をシアン酸塩などで処理する塩浴窒化法(タフトライド法など)、グロー放電を利用して窒素プラズマ中に被処理材を保持するプラズマ窒化法(イオン窒化法)などが知られている。
しかし、ステンレス鋼のようにクロムなどを含む鉄族系合金からなる被処理材の表面には、クロムなどの酸化皮膜の生成による自己不動態化が生じて(金属酸化皮膜や腐食皮膜を含む)不動態膜が形成されている。このような不動態膜は、窒化処理を阻害するため、窒化処理を行う前に不動態膜を除去する必要がある。
このような不動態膜を除去するために、ガス窒化法では、塩素系ガスまたはフッ素系ガスを使用している。しかし、これらのガスは腐食性ガスであるため、ガス窒化装置が腐食され、大量の被処理材を安定して処理するには問題がある。また、シアン酸塩などによる塩浴窒化(タフトライド法など)では、シアン酸塩などを使用することによる環境上の問題がある。
また、不動態膜を除去した後、窒化処理を行う前に被処理材を空気中に置くと、被処理材の表面に不動態膜が再生するため、不動態膜を除去した後に連続的に窒化処理を行う必要がある。このように不動態膜を除去した後に連続的に窒化処理を行う場合、従来のプラズマ窒化では、不動態膜を部分的に除去することができるが、安定的に除去することが困難であった。
そのため、一般に原子量が大きい原子を用いる方が、スパッタリング効果が良好であることから、プラズマ窒化炉に被処理材を投入した後、アルゴンスパッタリングにより酸素原子をたたき出して、不動態膜を除去した後に窒化処理を行う方法が知られている。
しかし、この方法では、十分に且つ安定して不動態膜を除去することができず、窒化処理によって良質な窒化層を得ることができず、所望の表面硬さを得ることができないとともに、窒化層の表面硬さにバラツキが発生し易いという問題がある。特に、オーステナイト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼、その他のクロムを多量に含有する高合金鋼や超合金では、強固な不動態膜が生成し易いため、窒化処理によって安定した品質の窒化層を得ることができなかった。
また、アルゴンスパッタリングは、通常、プラズマ窒化処理温度に近い温度(例えば350℃)にならないと安定して行うことができないため、図1に示すように、アルゴンスパッタリングに最適な温度になるまでの昇温時間を要し、全体として窒化処理が長時間化する傾向にあった。
さらに、窒素ガスおよびアルゴンガス中には、通常、若干の水蒸気(HO)が含まれており、このHOはプラズマ窒化炉中でグロー放電によってイオン化されて活性酸素を発生させ、この活性酸素が不動態膜の再生に寄与して不動態膜の除去を阻害するおそれがある。
これらの問題を解消するために、図2に示すように、プラズマ窒化炉内に水素ガスを導入して350℃より低い温度から水素スパッタリングを行って不動態膜を除去した後、プラズマ窒化炉内に窒素ガスを導入して350〜400℃の温度でプラズマ窒化による窒化層の初期形成を行い、その後、温度を高くして窒化層の二次形成を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許第3553549号公報(段落番号0019−0023)
しかし、特許文献1の方法では、鉄族系合金からなる被処理材がクロムを含む耐熱鋼などの場合には、被処理材の表面に耐摩耗性に優れた硬度の高い表面被覆層(窒化層)を均一に形成するのが困難な場合があった。
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、クロムを含む耐熱鋼などの鉄族系合金の表面に耐摩耗性に優れた硬度の高い表面被覆層(窒化層)を均一に且つ短時間で形成することができる、鉄族系合金の窒化処理方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、鉄族系合金からなる被処理材を炉内に装入し、炉内を昇温させる過程で被処理材の表面から不動態膜を除去するとともに、被処理材の表面に窒化層を形成する窒化処理方法において、炉内に水素ガスを導入しながら炉内を昇温させて水素スパッタリングにより被処理材の表面から不動態膜を除去する工程と、炉内に水素ガスと炭化水素ガスを導入しながら炉内を昇温させて被処理材の表面を炭化する工程と、炉内に水素ガスと窒素ガスと炭化水素ガスを導入しながら炉内を昇温させて被処理材の表面への窒化層の形成を開始する工程と、炉内に水素ガスと窒素ガスと炭化水素ガスを導入しながら炉内を所定の温度にして被処理材の表面に窒化層を形成する工程とを備えた方法により、クロムを含む耐熱鋼などの鉄族系合金の表面に耐摩耗性に優れた硬度の高い表面被覆層(窒化層)を均一に且つ短時間で形成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明による鉄族系合金の窒化処理方法は、鉄族系合金からなる被処理材を炉内に装入し、炉内を昇温させる過程で被処理材の表面から不動態膜を除去するとともに、被処理材の表面に窒化層を形成する窒化処理方法において、炉内に水素ガスを導入しながら炉内を昇温させて水素スパッタリングにより被処理材の表面から不動態膜を除去する工程と、炉内に水素ガスと炭化水素ガスを導入しながら炉内を昇温させて被処理材の表面を炭化する工程と、炉内に水素ガスと窒素ガスと炭化水素ガスを導入しながら炉内を昇温させて被処理材の表面への窒化層の形成を開始する工程と、炉内に水素ガスと窒素ガスと炭化水素ガスを導入しながら炉内を所定の温度にして被処理材の表面に窒化層を形成する工程とを備えたことを特徴とする。
この鉄族系合金の窒化処理方法において、窒化層がプラズマ窒化により形成されるのが好ましく、炉がプラズマ窒化炉であるのが好ましい。また、所定の温度が450〜600℃の温度であるのが好ましく、被処理材の表面から不動態膜を除去する工程において炉内を昇温させる温度が350℃以下の温度であるのが好ましい。また、被処理材の表面を炭化する工程において炉内を昇温させる温度が250℃以上の温度であるのが好ましく、被処理材の表面への窒化層の形成を開始する工程において炉内を昇温させる温度が350℃以上の温度であるのが好ましい。さらに、鉄族系合金が、クロムを含む耐熱鋼であるのが好ましい。
本発明によれば、クロムを含む耐熱鋼などの鉄族系合金の表面に耐摩耗性に優れた硬度の高い表面被覆層(窒化層)を均一に且つ短時間で形成することができる。
アルゴンスパッタリングより不動態膜を除去した後に窒化処理を行う従来の方法における温度パターンを示す図である。 水素スパッタリングにより不動態膜を除去した後に窒化処理を行う特許文献1の方法における温度パターンを示す図である。 本発明による鉄族系合金の窒化処理方法の実施の形態における温度パターンを示す図である。 本発明による鉄族系合金の窒化処理方法の実施の形態における温度パターンの変形例を示す図である。 本発明による鉄族系合金の窒化処理方法の実施例に使用したプラズマ窒化炉を概略的に示す図である。
本発明による鉄族系合金の窒化処理方法の実施の形態は、鉄族系合金からなる被処理材をプラズマ窒化炉内に装入し、炉内を昇温させる過程で被処理材の表面から不動態膜を除去するとともに、被処理材の表面に窒化層を形成する窒化処理方法において、炉内に水素ガスを導入しながら炉内を昇温させて水素スパッタリングにより被処理材の表面から不動態膜を除去する工程(不動態膜除去処理工程)と、炉内に水素ガスと炭化水素ガスを導入しながら炉内を昇温させて被処理材の表面を炭化する工程(炭化処理工程)と、炉内に水素ガスと窒素ガスと炭化水素ガスを導入しながら炉内を昇温させて被処理材の表面への窒化層の形成を開始する工程(初期窒化処理工程)と、炉内に水素ガスと窒素ガスと炭化水素ガスを導入しながら炉内を所定の温度に維持して被処理材の表面に窒化層を形成する工程(窒化処理工程)を備えている。なお、本発明による鉄族系合金の窒化処理方法の実施の形態では、図3に示すように、処理時間を短縮するために、水素スパッタリングによる不動態膜の除去と、被処理材の表面の炭化と、被処理材の表面への窒化層の形成の開始(初期窒化)を、それぞれ昇温させながら行うのが好ましいが、図4に示すように、それぞれ所定時間だけ一定の温度に維持してもよい。
本発明による鉄族系合金の窒化処理方法の実施の形態は、自動車部品や金型部品などの耐摩耗性を向上させる必要がある鉄族系合金の部品などの処理に適用することができる。
鉄族系合金には、鉄を主体とする鋼に代表される鉄系合金やステンレス鋼の他、鉄以外の鉄族を基とするニッケル基合金やクロム基合金などの超合金(超耐熱合金)も含まれる。すなわち、鉄族系合金としては、ステンレス鋼や(ハイニッケル鋼やハイクロム鋼などの)耐熱鋼のような鉄基の合金鋼や(多量の合金元素を含む)高合金鋼の他、クロム基合金やニッケル基合金などの超合金を使用することができる。また、鉄族系合金は、クロム、アルミニウム、モリブデン、バナジウムなどの合金元素を含むのが好ましい。これらの合金元素は、窒化物を形成することにより、FeNなどの窒化鉄とともに、表面硬さや耐熱性の向上に寄与することができる。また、鉄族系合金は、ニッケルを含んでもよい。ニッケルは、表面硬さの向上に殆ど寄与しないが、鉄族系合金の性質を向上させるために、上記の合金元素とともに併用することが多い。
特に、鉄族系合金として、クロムを含む耐熱鋼を使用するのが好ましいが、炭素鋼や低炭素鋼などを使用することもできる。耐熱鋼は窒化し難く、本発明による鉄族系合金の窒化処理方法の実施の形態のように、炭化水素ガスを導入しないと、安定した品質の窒化膜を形成するのが困難である。
具体的には、鉄族系合金として、ステンレス鋼(SUS)、ニッケルクロム鋼(SNC)、ニッケルクロムモリブデン鋼(SNMC)、アルミニウムクロムモリブデン鋼(SACM)、耐食耐熱超合金(NCF)、オーステナイト系耐熱鋼(SUH)などを使用することができる。なお、鉄族系合金として、マルテンサイト系ステンレス鋼やフェライト系ステンレス鋼を使用してもよい。
これらの鉄族系合金のうち、合金元素として3質量%以上のクロムを含む鉄族系合金、特に、オーステナイト系ステンレス鋼や析出硬化系ステンレス鋼の他、15質量%以上の多量のクロムを含む高合金鋼や超合金を使用するのが好ましい。これらの高合金鋼には、強固な不動態膜(酸化膜)が形成され易く、従来のアルゴンスパッタリングでは除去するのが困難である。
以下、本発明による鉄族系合金の窒化処理方法の実施の形態を工程順に説明する。
(1)清浄化処理工程
鉄族系合金からなる被処理材は、一般に機械加工によって製造されているので、機械加工時に使用した加工油や他の汚れが被処理材の表面に付着している。これらを除去するために、不動態膜を除去する前に、脱脂処理などによって、被処理材の表面の窒化を阻害するおそれがある汚れを除去する清浄化処理を行うのが好ましい。脱脂処理としては、トリクロロエチレンによる有機溶剤脱脂、エマルション脱脂、アルカリ脱脂液による加熱アルカリ脱脂、電解脱脂などの通常の脱脂処理を使用することができる。これらの脱脂処理は、スプレー洗浄、浸漬、バレル洗浄などによって行うことができる。
(2)不動態膜除去処理工程
清浄化処理工程により表面を清浄化した鉄族系合金からなる被処理材をプラズマ窒化炉内に装入した後、炉内に水素ガスを導入しながら炉内を昇温させて350℃以下の雰囲気温度(ガス温度)で水素スパッタリング(水素ガスのグロー放電によるイオン化)により被処理材の表面から不動態膜を除去する。この水素スパッタリングは、150℃より低い低温(例えば常温のような低温)から開始するのが好ましく、炉内を昇温させて好ましくは350℃以下の雰囲気温度、さらに好ましくは300℃の雰囲気温度まで行う。
この水素スパッタリングは、電流密度を0.1〜7.0mA/cm、好ましくは0.3〜2.0mA/cm、電圧を100〜800V、好ましくは200〜600V、真空度(炉内圧)を10〜2000Pa、好ましくは50〜1000Pa、水素ガス圧を炉内圧の70〜100%、好ましくは95〜100%、さらに好ましくは100%、被処理材の昇温速度を1〜20℃/分、好ましくは3〜15℃/分として行い、処理時間を短縮するために、後述する炭化処理工程、初期窒化処理工程および窒化処理工程を行う際にも継続して行うのが好ましく、合計で0.1〜3時間、好ましくは0.3〜2時間行う。なお、水素ガス圧が100%ではない場合には、残りのガスとして、アルゴンガスや窒素ガスなどを水素スパッタリングに影響がない程度に導入してもよい。
(3)炭化処理工程
その後、連続して炉内に水素ガスと炭化水素ガスを導入しながら炉内をさらに昇温させて250℃以上の雰囲気温度で被処理材の表面を炭化する。この炭化処理では、雰囲気温度250℃以上でスーティングが生じない程度に炭化水素ガスを導入するのが好ましい。なお、スーティングが生じなければ、さらに低い温度から炭化水素ガスを炉内に導入してもよいが、雰囲気温度が低いと、スーティングが生じ易く、また、被処理材の表面の炭化が起こらないので無駄になる。この炭化処理工程では、耐熱鋼からなる被処理材のように、表面に強固な酸化被膜があっても、炭化水素系ガスによって、表面の不動態膜(酸化膜)を還元し、炭化物の生成または炭素の固溶が起こり、それによって、次の窒化処理工程において安定した品質の窒化物を容易に形成することができると考えられる。なお、炭化水素ガスとして、メタンガス、プロパンガス、アセチレンガスなどを使用することができるが、安価なプロパンガスを使用するのが好ましい。
この炭化処理は、電流密度を0.1〜7.0mA/cm、好ましくは0.3〜2.0mA/cm、電圧を100〜800V、好ましくは200〜600V、真空度(炉内圧)を10〜2000Pa、好ましくは50〜1000Pa、水素ガス圧を炉内圧の90〜99.9%、好ましくは95〜99.9%、炭素ガス圧を炉内圧の0.1〜10%、好ましくは0.1〜5%、処理物の昇温速度を1〜20℃/分、好ましくは3〜15℃/分として行い、後述する初期窒化処理工程および窒化処理工程を行う際にも継続して行うのが好ましく、合計で0.1〜5時間、好ましくは0.2〜5時間行う。
(4)初期窒化処理工程
その後、連続して炉内に水素ガスと窒素ガスと炭化水素ガスを導入しながら炉内をさらに昇温させて350℃以上の雰囲気温度で被処理材の表面への窒化層の形成を開始する。なお、350℃より低い雰囲気温度では、被処理材の窒化が殆ど起こらない。また、この初期窒化処理の開始温度が低過ぎると、水素スパッタリングによる(金属酸化物の還元による)不動態膜の除去が十分に行われないうちに、窒化層の初期形成が行われ、安定した品質の窒化層を得ることが困難になる。一方、この初期窒化処理の開始温度が高過ぎると、不動態膜と窒化層との形成速度が競合して、安定した品質の窒化層を得ることが困難になる。
この初期窒化処理は、電流密度を0.1〜7.0mA/cm、好ましくは0.3〜4.0mA/cm、電圧を100〜800V、好ましくは200〜500V、真空度(炉内圧)を10〜2000Pa、好ましくは50〜1000Pa、水素ガス圧を炉内圧の10〜90%、好ましくは30〜70%、窒素ガス圧を炉内圧の10〜90%、好ましくは30〜70%、炭素ガス圧を炉内圧の0.1〜10%、好ましくは0.1〜5%、処理物の昇温速度を1〜20℃/分、好ましくは3〜15℃/分として、0.1〜5時間、好ましくは0.2〜2時間行う。
(5)窒化処理工程
その後、連続して炉内に水素ガスと窒素ガスと炭化水素ガスを導入しながら炉内をさらに昇温させて450〜600℃の雰囲気温度、好ましくは500℃以上の雰囲気温度に維持して、被処理材の表面に所望の深さの窒化層を形成する。雰囲気温度が450℃より低いと、窒化膜の形成速度が遅く、600℃より高いと歪の発生が大きくなる。
この窒化処理は、電流密度を0.1〜7.0mA/cm、好ましくは0.5〜4.0mA/cm、電圧を100〜800V、好ましくは200〜500V、真空度(炉内圧)を10〜2000Pa、好ましくは100〜1000Pa、水素ガス圧を炉内圧の10〜90%、好ましくは10〜80%、窒素ガス圧を炉内圧の10〜90%、好ましくは20〜90%、炭素ガス圧を炉内圧の0.1〜10%、好ましくは0.1〜5%、処理物の昇温速度を1〜20℃/分、好ましくは3〜15℃/分として、0.5〜5時間、好ましくは0.6〜2時間行う。
なお、上述した本発明による鉄族系合金の窒化処理方法の実施の形態により、ビッカース硬さHV900以上、好ましくは1200以上の鉄族系合金を得ることができ、十分な耐摩耗性の鉄族系合金を得ることができる。
以下、本発明による鉄族系合金の窒化処理方法の実施例について詳細に説明する。
[実施例1]
まず、被処理材としてクロムを含む耐熱鋼であるオーステナイト系耐熱鋼SUH35(21Cr−3.5Ni−9Mn−0.4N−0.5C)からなる略矩形の板状の試験片を用意し、トリクロロエチレン蒸気洗浄によって脱脂処理した。
次に、図5に示すように、真空ポンプにより減圧可能で且つ水素ガスと窒素ガスと炭化水素ガスを導入可能なチャンバ12を備えたプラズマ窒化炉(株式会社セム製の横形プラズマ窒化炉)10のチャンバ12内に、断熱材14およびその内側のヒータ16に取り囲まれるように、上記の脱脂処理後の被処理材18を装入した。
次に、炉10内を減圧した後、被処理材18と炉10の間に電流密度0.5mA/cm、電圧450Vを印加し、水素ガスの炉内圧が100Paになるように水素ガスを炉10内に供給しながら、炉10内の温度を30分間で常温から280℃まで昇温させて、炉10内の圧力100Paで水素スパッタリングを行って、被処理材18上の不動態膜を除去した。
その後、被処理材18と炉10の間に電流密度0.5mA/cm、電圧450Vを印加したまま、水素ガスの炉内圧が99.5Pa、プロパンガスの炉内圧が0.5Paになるように、それぞれのガスを炉10内に供給しながら、炉10内の温度を15分間で280℃から400℃まで昇温させて、炉10内の圧力100Paで被処理材18の炭化処理を行った。
その後、被処理材18と炉10の間に電流密度0.75mA/cm、電圧400Vを印加して、水素ガスの炉内圧が74.6Pa、窒素ガスの炉内圧が74.6Pa、プロパンガスの炉内圧が0.75Paになるように、それぞれのガスを炉10内に供給しながら、炉10内の温度を15分間で400℃から550℃まで昇温させて、炉10内の圧力約150Paでプラズマ窒化による被処理材18の初期窒化処理を行った。
その後、被処理材18と炉10の間に電流密度1.0mA/cm、電圧350Vを印加して、水素ガスの炉内圧が38.5Pa、窒素ガスの炉内圧が304.5Pa、プロパンガスの炉内圧が7Paになるように、それぞれのガスを炉10内に供給しながら、炉10内の温度550℃、圧力約350Paで60分間プラズマ窒化による被処理材18の窒化処理を行った。
このようにして窒化処理を行った被処理材18から、JIS B6901(炉内温度分布測定法)における測定位置に対応する位置の9個を抜き取って、表面硬さと、表面の(炭化および窒化による)化合物層深さの評価を行った。なお、表面硬さは、押し付け荷重Fを50gとし、それぞれの被処理材18について、JIS G0563に基づいてビッカース硬さ(HV)を測定して、9個の被処理材18の平均値から評価した。また、化合物層深さは、JIS G0562に基づいて、測定倍率1000倍の金属組織の金属顕微鏡写真から化合物層深さを測定して、9個の被処理材18の平均値から評価した。その結果、ビッカース硬さがHV1245、化合物層深さが22μmであり、金属組織写真から均一な厚さの化合物層が形成されていることがわかった。
[実施例2]
被処理材18としてクロムを含む耐熱鋼であるオーステナイト系耐熱鋼SUH3(11Cr−2Si−1Mo−0.4C)からなる略矩形の板状の試験片を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、被処理材18を処理して、表面硬さと、化合物層深さの評価を行った。その結果、ビッカース硬さがHV1102、化合物層深さが11μmであり、金属組織写真から均一な厚さの化合物層が形成されていることがわかった。
[実施例3、4]
窒化処理における水素ガスの炉内圧を85.4Pa、窒素ガスの炉内圧を255.9Pa、プロパンガスの炉内圧を8.8Paとした以外は、それぞれ実施例1および2と同様の方法により、被処理材18を処理して、表面硬さと、化合物層深さの評価を行った。その結果、実施例3では、ビッカース硬さがHV1223、化合物層深さが18μm、実施例4では、ビッカース硬さがHV1102、化合物層深さが40μmであり、いずれも金属組織写真から均一な厚さの化合物層が形成されていることがわかった。
[実施例5、6]
窒化処理における水素ガスの炉内圧を68.6Pa、窒素ガスの炉内圧を274.4Pa、プロパンガスの炉内圧を7Paとした以外は、それぞれ実施例1および2と同様の方法により、被処理材18を処理して、表面硬さと、化合物層深さの評価を行った。その結果、実施例5では、ビッカース硬さがHV1386、化合物層深さが30μm、実施例6では、ビッカース硬さがHV1250、化合物層深さが43μmであり、いずれも金属組織写真から均一な厚さの化合物層が形成されていることがわかった。
[実施例7、8]
初期窒化処理において580℃まで昇温させ、580℃で窒化処理を行った以外は、それぞれ実施例1および2と同様の方法により、被処理材18を処理して、表面硬さと、化合物層深さの評価を行った。その結果、実施例7では、ビッカース硬さがHV968、化合物層深さが19μm、実施例8では、ビッカース硬さがHV1275、化合物層深さが36μmであり、いずれも金属組織写真から均一な厚さの化合物層が形成されていることがわかった。
[実施例9、10]
初期窒化処理において500℃まで昇温させ、500℃で窒化処理を行った以外は、実施例1と同様の方法により、被処理材18を処理して、表面硬さと、化合物層深さの評価を行った。その結果、実施例9では、ビッカース硬さがHV1345、化合物層深さが18μm、実施例10では、ビッカース硬さがHV1256、化合物層深さが10μmであり、いずれも金属組織写真から均一な厚さの化合物層が形成されていることがわかった。
[比較例1]
プロパンガスを導入しなかった以外は、実施例9と同様の方法により、被処理材18を処理して、表面硬さと、化合物層深さの評価を行った。その結果、ビッカース硬さがHV850、化合物層深さが10μmであり、金属組織写真から5〜15μmの不均一な厚さの化合物層が形成されていることがわかった。
このように、実施例1〜10では、クロムを含む耐熱鋼などの鉄族系合金の表面に耐摩耗性に優れた硬度の高い表面被覆層(窒化層)を均一に且つ短時間で形成することができた。
10 プラズマ窒化炉
12 チャンバ
14 断熱材
16 ヒータ
18 被処理材

Claims (8)

  1. 鉄族系合金からなる被処理材を炉内に装入し、炉内を昇温させる過程で被処理材の表面から不動態膜を除去するとともに、被処理材の表面に窒化層を形成する窒化処理方法において、炉内に水素ガスを導入しながら炉内を昇温させて水素スパッタリングにより被処理材の表面から不動態膜を除去する工程と、炉内に水素ガスと炭化水素ガスを導入しながら炉内を昇温させて被処理材の表面を炭化する工程と、炉内に水素ガスと窒素ガスと炭化水素ガスを導入しながら炉内を昇温させて被処理材の表面への窒化層の形成を開始する工程と、炉内に水素ガスと窒素ガスと炭化水素ガスを導入しながら炉内を所定の温度にして被処理材の表面に窒化層を形成する工程とを備えたことを特徴とする、鉄族系合金の窒化処理方法。
  2. 前記窒化層がプラズマ窒化により形成されることを特徴とする、請求項1に記載の鉄族系合金の窒化処理方法。
  3. 前記炉がプラズマ窒化炉であることを特徴とする、請求項1または2に記載の鉄族系合金の窒化処理方法。
  4. 前記所定の温度が450〜600℃の温度であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の鉄族系合金の窒化処理方法。
  5. 前記被処理材の表面から不動態膜を除去する工程において炉内を昇温させる温度が350℃以下の温度であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の鉄族系合金の窒化処理方法。
  6. 前記被処理材の表面を炭化する工程において炉内を昇温させる温度が250℃以上の温度であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の鉄族系合金の窒化処理方法。
  7. 前記被処理材の表面への窒化層の形成を開始する工程において炉内を昇温させる温度が350℃以上の温度であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の鉄族系合金の窒化処理方法。
  8. 前記鉄族系合金が、クロムを含む耐熱鋼であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の鉄族系合金の窒化処理方法。
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