[車両の概略構成]
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る車両用ヘッドライト制御装置を詳細に説明する。先ずは、本実施形態のヘッドライト制御装置が適用される車両について説明する。図1は、車両1及び車両1の前方に存在する歩行者Hの検出態様を模式的に示す図である。車両1は、例えば四輪自動車である。車両1は、車両ボディ10と、この車両ボディ10の前部に配置されたヘッドライトユニット2(ヘッドライト)と、車両1の前方の物標情報を検出するセンシング要素としての単眼カメラ3及びミリ波レーダ4と、ヘッドライトユニット2の動作制御するECU5(車両用ヘッドライト制御装置;図4参照)とを備えている。
本実施形態のヘッドライトユニット2は、夜間走行時において、車両1の前方を照らす照明機能と、車両1の前方に存在する歩行者Hに対してマーキングライトを照射する歩行者マーキングの機能とを備えている。図2(A)は、ヘッドライトユニット2の一例を模式的に示す図である。ヘッドライトユニット2は、車両ボディ10前方の左右端部付近に配置されるが、そのうちの一つの正面図を図2(A)では示している。ヘッドライトユニット2は、ロービームユニット21(ロービーム光源)及びハイビームユニット22(ハイビーム光源)を備えている。
ロービームユニット21は、車両前方のやや下方を指向するロービームを発する。前記ロービームは、車両1に比較的近い車両前方を照射する。ロービームユニット21は、前記ロービームを発する図略のLED光源及び反射鏡などを備えている。ハイビームユニット22は、車両前方の概ね水平方向を指向するハイビームを発する。前記ハイビームは、車両1から比較的遠い車両前方を照射する。ハイビームユニット22は、前記ハイビームを発する光源として、LEDアレイ23を備えている。
図2(B)は、LEDアレイ23の模式図である。LEDアレイ23は、照射範囲(角度)の異なる複数のLED素子23Aを単位光源として含んでいる。図2(B)では、横方向に一列に配列されたパッケージ番号1〜11の区画に、各々LED素子23Aが配置されている例を示している。勿論、前記区画は複数個あれば良く、11個より少なくても、或いは多くても良い。パッケージ番号1〜11の区画は、独立して発光の光量を制御することができる単位光源を収容する区画である。従って、パッケージ番号1〜11の区画に各々配置されるLED素子23Aは、1個でも複数個でも良い。また、前記単位光源を収容する区画は、m行×n列のマトリクス状の配置としても良い。
図3は、ハイビームの照射範囲を説明するための図である。図3では、車両1の左右ヘッドライトユニット2L、2Rのうち、右ヘッドライトユニット2R(ハイビームユニット22)によるハイビーム照射範囲Aを模式的に示し、各LED素子23Aの照射範囲(角度)を示す表を付記している。照射角度は、車両1の走行ラインRに対する傾きで示している。ハイビーム照射範囲Aは、パッケージ番号1〜11のLED素子23Aが各々発するハイビームの合成によって作られている。
例えば、パッケージ番号1のLED素子23Aは、その照射範囲の走行方向左側の限界が走行ラインRに対して−10度、走行方向右側の限界が+2度であること、つまり−10度〜+2の範囲が照射範囲であることを示している。パッケージ番号2のLED素子23Aの照射範囲は、+0度〜+12度の範囲であり、パッケージ番号1の照射範囲と一部重複している。パッケージ番号3以下のLED素子23A相互間においても同様である。
パッケージ番号1〜11のLED素子23Aの全てを点灯させると、その合成照射範囲は、図3に示すようなハイビーム照射範囲A、つまり通常のハイビーム照射範囲となる。一方、パッケージ番号1〜11のLED素子23Aの一部だけを点灯させると狭い照射範囲のハイビームが得られ、また一部だけを減光させると減光領域を備えたハイビームを得ることができる。例えば、パッケージ番号5のLED素子23Aだけを点灯させると、+30度〜+42度の範囲だけをスポットライト的に照射するハイビームを得ることができ、逆にそれだけを減光させると、+30度〜+42度の範囲だけが減光領域とされたハイビームを得ることができる。
図2(C)は、他の実施形態に係るヘッドライトユニット2A(ヘッドライト)の模式図である。ヘッドライトユニット2Aは、上述のロービームユニット21及びハイビームユニット22に加えて、マーキングライトユニット24を備えている。つまり、ヘッドライトユニット2Aは、ハイビームを利用してマーキングライトを形成するのではなく、マーキングライト専用の光源を備えている。マーキングライトユニット24は、LEDアレイ25を有する。LEDアレイ25の構成は、図2(B)に示したLEDアレイ23と同様であり、照射範囲(角度)の異なる複数のLED素子を単位光源として含んでいる。ヘッドライトユニット2Aが車両1に適用される場合は、マーキングライトはマーキングライトユニット24から発せられる。
単眼カメラ3は、CMOSエリアセンサ等の撮像センサを含み、車両1の所定位置(例えば車室内のバックミラー付近)に配置され、車両1の前方の画像を撮像する。図1では、歩行者Hの光像3Aが単眼カメラ3に撮像されている状態を模式的に示している。単眼カメラ3の撮像センサに入射した光像は、逐次画像データに光電変換され、ECU5(図4)へ送信される。
ミリ波レーダ4は、ミリ波帯の電波を車両前方の空間に発信すると共に、その反射波を受信することによって、車両1の前方に存在する物標を検出する装置である。ミリ波レーダ4は、例えば車両ボディ10の前端部(フロントバンパー付近)に配置される。図1では、歩行者Hからの反射波4Aがミリ波レーダ4で受信されている例を模式的に示している。反射波4Aの受信データは、ECU5へ送信される。反射波4Aの到達時間から求められる距離情報及び基準方位に対する角度情報等から、歩行者Hの位置を求めることができる。また、反射波4Aに基づくレーダ反射断面積(RCS)より、前方に存在する物標が、立体物又は平面物であるかの判別、並びに、歩行者H、対向車両或いは障害物のいずれであるかの判別を行うことが可能である。なお、ミリ波レーダ4は、電波にて物標を探知するセンシング要素の一例であり、これに代えて例えばレーザレーダを用いることができる。
[第1実施形態]
<制御装置の構成>
図4は、第1実施形態に係るヘッドライトユニットの制御装置の構成を示すブロック図である。第1実施形態では、図2(A)ヘッドライトユニット2(2R、2L)が車両1に適用され、ハイビームユニット22が発するハイビームを利用してマーキングライトが形成される例を示す。第1実施形態の制御装置は、2つのヘッドライト点灯回路26、ヘッドライトスイッチ27及びECU5(車両用ヘッドライト制御装置)を備える。
ヘッドライト点灯回路26は、ECU5と左右ヘッドライトユニット2L、2Rの各々との間に組み入れられ、ECU5から点灯制御信号が入力される。ヘッドライト点灯回路26は、ECU5から与えられる制御信号に従って、ヘッドライトユニット2L、2Rのロービームユニット21の前記LED光源及びハイビームユニット22のLEDアレイ23を点灯させる駆動信号を生成する。
ヘッドライトスイッチ27は、ドライバーから、ヘッドライトユニット2L、2RのON、OFFの切り換え操作、並びにロービームユニット21又はハイビームユニット22のいずれを点灯させるかの操作を受け付けるスイッチである。なお、環境照度に応じてヘッドライトユニット2L、2Rを自動点灯させるオートヘッドライト機能、及び、歩行者や対向車両の存在に応じてハイビーム/ロービームを自動切り替えする機能を具備する車両1の場合は、ヘッドライトスイッチ27は、前記自動点灯及び前記自動切り替え機能を実行する所定のオート回路に代替される。
ECU5は、単眼カメラ3及びミリ波レーダ4から入力されるデータ、ヘッドライトスイッチ27から与えられる操作信号等に基づいて、ヘッドライトユニット2L、2Rによる照射動作を制御する。ECU5は、所定の動作プログラムが実行されることにより、歩行者検出部51、対向車両検出部52、ヘッドライト制御部53、判定部54及びマーキングライト制御部55を機能的に具備する。
歩行者検出部51は、単眼カメラ3及びミリ波レーダ4から入力されるデータ(物標情報)に基づいて、車両前方の歩行者Hの位置を検出する。具体的には歩行者検出部51は、単眼カメラ3が取得した画像データに対してエッジ検出処理、特徴量抽出を伴うパターン認識処理などの画像処理を施し、歩行者Hを識別する。また、歩行者検出部51は、ミリ波レーダ4から取得した反射波に関するデータ(到達時間、方位、レーダ反射面積等)に基づき、歩行者Hの位置を検出する処理を実行する。歩行者検出部51は、歩行者Hの位置を特定すると、その位置情報を車両1の走行ラインRに対する角度情報に変換する。歩行者検出部51は、このような角度情報の導出処理を、所定のサンプリング周期毎に逐次実行する。前記角度情報は、後述のマーキングライトの照射の際に活用される。
単眼カメラ3とミリ波レーダ4とを組み合わせて用いることにより、歩行者Hを高精度に且つ高速で検出することができる。ミリ波レーダ4の反射波に関するデータに基づいて、立体物と平面物とを区別することができる。そして、単眼カメラ3の画像データから人物を探索する画像領域を、前記立体物の領域に絞り込むことで画像処理時間を高速化することができる。また、2つのセンシング要素で歩行者Hの検出が行われることになるので、検出精度も向上する。
対向車両検出部52は、車両1に対して前方側から接近し、やがて車両1とすれ違うことになる対向車両1A(図9、図10)を検出する。対向車両検出部52も、単眼カメラ3及びミリ波レーダ4から入力されるデータに基づいて対向車両1Aを検出する。すなわち、対向車両検出部52は、単眼カメラ3が取得した画像データに対するパターン認識処理、及び、ミリ波レーダ4から取得した反射波に関するデータに基づき、車両前方の対向車両1Aの認識と、車両1とのすれ違いまでの位置追跡とを行う。
ヘッドライト制御部53は、ヘッドライト点灯回路26を通して、ヘッドライトユニット2(2L、2R)の照射動作を制御する。ヘッドライト制御部53は、ヘッドライトスイッチ27に与えられている操作に応じて(或いは、前記オート回路の制御信号に応じて)、ヘッドライトユニット2のロービームユニット21又はハイビームユニット22を点灯させる。
判定部54は、ヘッドライトユニット2の照射状態がハイビームかロービームかを判定する。すなわち、現状でヘッドライト制御部53が、左右ヘッドライトユニット2L、2Rのロービームユニット21又はハイビームユニット22のいずれを点灯させているかを判定する。
マーキングライト制御部55は、ハイビームユニット22の照射状態(ヘッドライトの照射状態)を制御することによって、歩行者マーキングを実行するための所要のマーキングライトを生成する。第1実施形態では、図2(C)のマーキングライトユニット24のようなマーキングライト専用の光源を用いるのではなく、マーキングライト制御部55が、ハイビームユニット22のLEDアレイ23をLED素子23A単位で点灯制御することによって、マーキングライトを歩行者Hに照射させる。また、マーキングライト制御部55は、歩行者マーキングの実行中に対向車両1Aが到来したとき、対向車両1Aのドライバーを幻惑させないよう、前記マーキングライトの照射を停止させる。対向車両1Aとすれ違い後、マーキングライト制御部55は前記マーキングライトの照射を再開させる。
マーキングライト制御部55は、ヘッドライトユニット2の照射状態及び対向車両1Aの存在に応じて、少なくとも次の4つの制御を実行する。
・スポット制御;判定部54が「ロービーム」と判定している状態において、歩行者検出部51が歩行者Hを検出したとき、ハイビームの一部が当該歩行者Hにスポットライト的に照射されるように、ハイビーム(LEDアレイ23)の照射状態を制御する。
・減光制御(第1制御);判定部54が「ハイビーム」と判定している状態において、歩行者検出部51がハイビームの照射範囲内で歩行者Hを検出したとき、歩行者Hにハイビームの一部を照射させると共に当該歩行者Hの周辺が減光されるように、ハイビーム(LEDアレイ23)の照射状態を制御する。
・停止制御(第2制御);減光制御の実行中において、対向車両検出部52が対向車両1Aを検出し且つ当該対向車両1Aがマーキングライトの照射範囲を通過する状態となったとき、前記マーキングライトの照射を停止させる。
・再検出制御(第3制御);対向車両検出部52が対向車両1Aの通過を検出した後に、歩行者検出部51による歩行者Hの再検出動作が実行される間、歩行者Hの周辺の減光を停止させる。
<歩行者マーキングの具体例>
以下、上記スポット制御、減光制御、停止制御及び再検出制御による歩行者マーキングの具体例について、図5〜図11を参照して説明する。図5及び図6は、車両1がロービーム走行を行っている状態における歩行者マーキングを示す図、図7及び図8は、車両1がハイビーム走行を行っている状態における歩行者マーキングを示す図、図9は、ハイビーム走行からロービーム走行への切り換え時の歩行者マーキングを示す図である。これらの図においては、ハイビームユニット22が照らす範囲をハイビーム照射範囲A、ロービームユニット21が照らす範囲をロービーム照射範囲Bとして簡略的に示している。
図5は、車両1のロービーム走行時における、ある時刻T11のヘッドライトユニット2R、2Lの照射状況を示している。時刻T11では、単眼カメラ3及びミリ波レーダ4が、車両1の前方の、対向車線側の歩道に歩行者Hが存在していることを検出しているものとする。ロービーム走行であるので、ヘッドライトユニット2R、2Lの前照状況はロービーム照射範囲Bである。つまり、ヘッドライト制御部53がロービームユニット21を点灯させており、判定部54は「ロービーム」と判定していることになる。従って、マーキングライト制御部55は、上記「スポット制御」を実行する。
マーキングライト制御部55は、時刻T11における歩行者Hの位置情報(車両1に対する角度情報)に基づき、ハイビームユニット22のLEDアレイ23が備える複数のLED素子23Aのうち、いずれを点灯させるかを決定する。この決定の際には、図3に示したような、各LED素子23Aの照射範囲(角度)が参照される。例えば、時刻T11において歩行者Hが走行ラインRに対して35度の方位に存在する場合は、右ヘッドライトユニット2Rの、パッケージ番号5のLED素子23Aが点灯される。これにより、右ヘッドライトユニット2Rは、現状のロービームに加えて、歩行者Hにスポットライト的に照射するマーキングライトMLも発することになる。マーキングライトMLが歩行者Hに照射されることで、暗闇の中で当該歩行者Hは際立つことになる。従って、車両1のドライバーは、ロービーム照射範囲Bの外に存在する歩行者Hを容易に認識できるようになる。
図6は、時刻T11からある時間が経過した時刻T12(ロービーム走行は継続)における、ヘッドライトユニット2R、2Lの照射状況を示している。時間経過により車両1が進行し、歩行者Hも移動するので、車両1と歩行者Hとの相対位置も変化する。マーキングライト制御部55は、時刻T12における歩行者Hの位置情報に基づき、点灯させるLED素子23Aを決定する。例えば、時刻T12において歩行者Hが走行ラインRに対して45度の方位に存在するよう相対位置が変化してれば、右ヘッドライトユニット2Rの、パッケージ番号6のLED素子23Aが点灯される。従って、歩行者Hは、パッケージ番号6のLED素子23Aが発するマーキングライトMLで照射されるようになる。このように、車両1と歩行者Hとの相対位置の変化に応じて点灯されるLED素子23Aが順次シフトされて行き、車両1と歩行者Hとがすれ違うまで歩行者マーキングが継続される。
図7は、車両1のハイビーム走行時における、ある時刻T21のヘッドライトユニット2R、2Lの照射状況を示している。時刻T21では、単眼カメラ3及びミリ波レーダ4が、車両1の前方の、対向車線側の歩道に歩行者Hが存在していることを検出しているものとする。ハイビーム走行であるので、ヘッドライトユニット2R、2Lの前照状況はハイビーム照射範囲Aである。つまり、ヘッドライト制御部53がハイビームユニット22を点灯させており、判定部54は「ハイビーム」と判定していることになる。従って、マーキングライト制御部55は、上記「減光制御」を実行する。
マーキングライト制御部55は、時刻T21における歩行者Hの位置情報に基づき、ハイビームユニット22のLEDアレイ23が備える複数のLED素子23Aのうち、いずれを減光させるかを決定する。つまり、ハイビーム走行では、複数のLED素子23Aの全てが点灯されている状態であるが、これらのうち歩行者Hの周辺を照射範囲としているLED素子23Aが減光対象として指定される。一方、歩行者Hの存在位置を照射範囲としているLED素子23Aについては、減光対象には指定されない。ここで、減光の態様は様々採用できるが、例えば減光対象のLED素子23Aの発光量を通常時に比べて50%以下に低減させる、あるいは消灯するなどの態様を例示することができる。
例えば、時刻T21において歩行者Hが走行ラインRに対して35度の方位に存在しているとする。この場合、右ヘッドライトユニット2Rの、35度の方位を照射範囲に含むパッケージ番号5のLED素子23Aは減光対象には指定されない。一方、パッケージ番号5に隣接するパッケージ番号4及び6のLED素子23Aが減光対象として指定される(単位光源の一部減光)。もちろん、パッケージ番号5に加え、パッケージ番号4及び6以外の他のLED素子23Aも減光対象には指定されない。
これにより、歩行者Hの周辺、すなわち歩行者Hの両側部(走行ラインに近い側の側部及びその反対側の側部)に、パッケージ番号4及び6のLED素子23Aが減光されたことに伴う減光領域RL1、RL2が形成される。また、歩行者Hは、パッケージ番号5のLED素子23Aの照射範囲Anに存在することから、あたかもマーキングライトMLが当該歩行者Hに照射された状態となる。すなわち、歩行者Hの両側部に減光領域RL1、RL2を作るというマーキング減光が実行されることで、歩行者Hにスポットライト的なハイビームが実質的に照射される状態を形成する(歩行者の周辺が減光されるようヘッドライト(ハイビーム)の照射状態を制御する)。
全灯したLEDアレイ23が作る通常のハイビームにて歩行者Hが照射された場合、車両1の前方空間の全体が照らされるので、当該歩行者Hとその周囲との明るさのコントラストは比較的低くなる。これに対し、歩行者Hの周辺が減光されることにより、歩行者Hとその周囲とのコントラストが高くなり、当該歩行者Hを目立たせることができる。従って、車両1のドライバーは、ハイビーム照射範囲A内に存在する歩行者Hを容易に認識できるようになる。
図8は、時刻T21からある時間が経過した時刻T22(ハイビーム走行は継続)における、ヘッドライトユニット2R、2Lの照射状況を示している。時間経過により車両1と歩行者Hとの相対位置も変化するので、マーキングライト制御部55は、時刻T22における歩行者Hの位置情報に基づき、減光させるLED素子23Aを決定する。例えば、時刻T22において歩行者Hが走行ラインRに対して45度の方位に存在するよう相対位置が変化したとする。この場合、右ヘッドライトユニット2Rの、パッケージ番号6のLED素子23Aが、所要のマーキングライトMLに相当する照射範囲An+1を持つことになる。従って、マーキングライト制御部55は、時刻T22においては、パッケージ番号6のLED素子23Aは減光対象とせず、パッケージ番号6に隣接するパッケージ番号5及び7のLED素子23Aを減光対象として指定する。これにより、歩行者Hは、パッケージ番号6のLED素子23Aが発するハイビームにて照射されるようになる。このように、車両1と歩行者Hとの相対位置の変化に応じて減光されるLED素子23Aが順次シフトされて行き、車両1と歩行者Hとがすれ違うまで歩行者マーキングが継続される。
図9は、ヘッドライトスイッチ27に代えて、ハイビーム/ロービームの自動切り替え機能を実現する前記オート回路が車両1に搭載されている場合に実行可能な歩行者マーキングの例を示している。図9では、図8の時刻T22からさらに時間が経過した時刻T23におけるヘッドライトユニット2R、2Lの照射状況を示している。自動切り替え機能が具備されている場合、歩行者検出部51により歩行者Hがハイビーム照射範囲Aからロービーム照射範囲Bに入ったことが検出されると、ヘッドライト制御部53は、ヘッドライトユニット2L、2Rの照射状態をハイビームからロービームに自動切り替えする。つまり、時刻T22のハイビーム走行からロービーム走行へ自動切り替えされる。図9は、この自動切り替え後の状態を示しており、ヘッドライトユニット2R、2Lの前照状況はロービーム照射範囲Bである。
時刻T23においてマーキングライト制御部55は、歩行者マーキングとして、ハイビームの一部が歩行者Hにスポットライト的に照射されるように、ハイビームユニット22の照射状態を制御する。すなわち、先に説明したスポット制御と同様に、マーキングライト制御部55は、時刻T23における歩行者Hの位置情報に基づき、LEDアレイ23の複数のLED素子23Aのうち、点灯させるLED素子23Aを指定する。そして、指定したLED素子23Aを点灯させることでマーキングライトMLを生成し、歩行者Hを照射させる。これにより、単にロービームが歩行者Hに照射されている場合に比べて、マーキングライトMLが重畳的に照射されることで当該歩行者Hとその周囲とのコントラストが高められる。このため、ロービームの照射下において歩行者Hを目立たせることができる。
<対向車両とのすれ違い時の制御>
図10及び図11は、対向車両とのすれ違い時の照射制御を説明するための図である。歩行者マーキングが実行されている際に、車両1が対向車両1Aとすれ違うことがある。この場合、図7に示すように、ハイビームの一部を用いて、対向車線側の歩道に存在する歩行者HにマーキングライトMLを照射している状態であると、対向車両1Aのドライバーを幻惑させてしまうことになる。従って、対向車両1AがマーキングライトMLの照射範囲を通過する状況となった場合、このマーキングライトの照射を停止させる必要がある。そもそも、ハイビーム走行時において、対向車両1Aとすれ違う際は、対向車両1Aのドライバーを幻惑させないように、ヘッドライトの照射状態を制御する必要がある。このような状況において、マーキングライト制御部55は、上記「停止制御」を実行する。
図10は、上記「停止制御」が実行されている状態を示している。この状態は、図7の「減光制御」が実行されている際に、対向車両検出部52により対向車両1Aが検出された場合を想定している。図7では、ハイビームユニット22のLEDアレイ23において、パッケージ番号4及び6のLED素子23Aが減光されて減光領域RL1、RL2を作り、パッケージ番号5のLED素子23Aが発するハイビームが実質的にマーキングライトMLとなる旨を説明した。
これに対し、図10の停止制御では、パッケージ番号5のLED素子23Aも減光され、マーキングライトMLの照射が停止される。つまり、パッケージ番号4〜6のLED素子23Aが減光され、これにより、対向車両1Aの通過領域にはグレアフリー領域GFが形成されている。このグレアフリー領域GFは、自車両1と対向車両1Aとの位置関係に応じて順次シフトされる。このように、ハイビームの、対向車両1Aの通過領域を照射する部分を少なくとも減光することで、対向車両1Aのドライバーの幻惑を防止することができる。
図10に示すように、自車両1と歩行者Hとの間を対向車両1Aが通過し、しかもマーキングライトMLの照射が停止されると、歩行者検出部51は当該歩行者Hの高精度な検出を継続できない可能性が高くなる。すなわち、歩行者Hがグレアフリー領域GFに入ってしまうと、当然に歩行者Hは暗闇に埋もれてしまって目立たなくなり、単眼カメラ3が取得する画像から歩行者Hを抽出する難易度は高くなる。また、ミリ波レーダ4が発する電波の歩行者Hからの反射波も、対向車両1Aの介在によって途切れ得る。このため、マーキングライト制御部55は、対向車両1Aとのすれ違いの後、つまり上記停止制御の後に、歩行者Hの高精度な検出を優先させるために、上記「再検出制御」を実行する。
図11は、上記「再検出制御」が実行されている状態を示している。この再検出制御では、ハイビームユニット22が通常のハイビームを照射する状態となる。すなわち、前記減光制御では、歩行者Hの周辺が減光されるよう、LEDアレイ23の一部のLED素子23Aが減光されていたものが、この再検出制御では前記減光が停止され、ハイビームの通常の照射状態に復帰されている。これにより歩行者Hは、ハイビームによって照らされることになる。
このような再検出制御が実行されることで、単眼カメラ3が取得する画像から当該歩行者Hを抽出する難易度を低くすることができる。つまり、歩行者Hがハイビームで照らされることで、画像データに対するパターン認識処理の精度が上がり、歩行者Hであると決定できる確率が向上する。このため、歩行者Hの検出が一時的に困難な状態に陥ったとしても、再び歩行者Hを高精度に検出できる状態に復帰させることができる。このようなハイビームの通常照射(再検出制御)は、対向車両検出部52が対向車両1Aの通過を検出した後、歩行者検出部51が再び歩行者Hを高精度に検出するまでの再検出動作の間、或いは、再検出動作のために予め割り当てられた一定時間の経過後まで、継続される。
マーキングライト制御部55は、前記再検出制御が実行された後、歩行者検出部51が歩行者Hを再検出したならば、その再検出した歩行者Hを対象として、前記減光制御(図7)を再度実行させる。つまり、マーキングライト制御部55は、再検出された歩行者Hの位置情報に基づき、LEDアレイ23が備える複数のLED素子23Aのうち、いずれを減光させるかを決定する。これにより、歩行者Hの周辺に減光領域RL1、RL2が形成される。もし、歩行者Hがロービーム照射範囲Bに至っていたら、前記スポット制御(図5)を実行させる。
<動作フローの説明>
図12A、図12B及び図12Cは、第1実施形態に係る歩行者マーキング動作を示すフローチャートである。ECU5は、車両1の夜間走行時に歩行者マーキングを実行する。なお、単眼カメラ3及びミリ波レーダ4は、車両1の走行時には常時動作し、歩行者検出部51は歩行者Hの検出動作を常時実行している。なお、ここでは車両1が、ハイビーム/ロービームの自動点灯及び切り替えを行う前記オート回路を具備しているものとして、動作フローを説明する。
まずECU5は、車両1の走行環境の明るさを検知する図略のセンサの検知結果に基づき、夜間(薄暮を含む)であるか否かを判定する(ステップS1)。夜間でないと判定された場合は(ステップS1でNO)、待機する。夜間であると判定された場合(ステップS1でYES)、歩行者検出部51が歩行者Hを検出しているか否かが判定される(ステップS2)。ここで、夜間であると判定されると、前記オート回路はヘッドライトユニット2L、2Rを自動点灯させる。
歩行者検出部51が歩行者Hを検出していない場合(ステップS2でNO)、待機する。一方、歩行者検出部51が歩行者Hを検出している場合(ステップS2でYES)、歩行者マーキングが開始される。この場合、判定部54が、ヘッドライトユニット2L、2Rの照射状態がハイビーム又はロービームのいずれであるかを判定する(ステップS3)。照射状態が「ロービーム」である場合、つまり、ヘッドライト制御部53がロービームユニット21を点灯させている場合、マーキングライト制御部55は上述の「スポット制御」を実行する。
マーキングライト制御部55は、歩行者検出部51が導出した歩行者Hの位置(角度)情報に基づき、ハイビーム光源であるLEDアレイ23が備える複数のLED素子23Aのうち、点灯させるLED素子23Aを指定する(ステップS4)。そして、マーキングライト制御部55は、指定されたLED素子23Aを点灯させるよう、ヘッドライト点灯回路26に制御信号を出力する(ステップS5)。これにより、図5に例示するように、ロービームの照射下において、マーキングライトMLが歩行者Hに照射される。
引き続き、歩行者検出部51の検出結果に基づき、歩行者Hがマーキングをすべき範囲から外れたか(歩行者不在)否かが確認される(ステップS6)。例えば、歩行者Hが車道から大きく離れた場合は、もはや歩行者マーキングは不要である。従って、歩行者不在であると判定された場合(ステップS6でYES)、ECU5は歩行者マーキングを終了する(ステップS7)。
歩行者検出部51が、歩行者マーキングが必要な範囲において歩行者Hの存在を検出し続けている場合(ステップS6でNO)、マーキングライト制御部55は、その歩行者HがステップS4で指定したLED素子23Aのマーキング範囲(照射範囲)の外へ相対的に移動したか否を判定する(ステップS8)。図5の例で言えば、パッケージ番号5のLED素子23Aの照射範囲の外に歩行者Hが移動したか否かが確認される。まだ照射範囲から外れていなければ(ステップS8でNO)、パッケージ番号5のLED素子23Aの点灯が継続され、ステップS5に戻って処理が継続される。
一方、歩行者Hが指定LED素子23Aの照射範囲から外れた位置に移動した場合(ステップS8でYES)、マーキングライト制御部55は、その時点の歩行者Hの位置情報に応じて、点灯させるLED素子23Aを新たに指定する(ステップS4に戻る)。例えば、図6に示すように、歩行者Hがパッケージ番号6のLED素子23Aの照射範囲へ相対的に移動している場合は、マーキングライト制御部55はパッケージ番号6のLED素子23Aを指定し、これを点灯させる。なお、隣接するLED素子23Aの照射範囲のボーダー付近に歩行者Hが存在しているような場合は、その隣接するLED素子23Aの双方を点灯させるようにしても良い。
ステップS3において、照射状態が「ハイビーム」である場合、つまり、ヘッドライト制御部53がハイビームユニット22を点灯させている場合、マーキングライト制御部55は上述の「減光制御」を実行する。当然のことながら、この減光制御は、歩行者検出部51が、ハイビーム(ヘッドライト)の照射範囲内において歩行者Hを検出していることを前提に実行される。
マーキングライト制御部55は、歩行者検出部51が導出した歩行者Hの位置情報に基づき、全点灯状態にある複数のLED素子23Aのうち、減光(消灯)させるLED素子23Aを指定する(ステップS11)。そして、マーキングライト制御部55は、指定されたLED素子23Aを減光させるよう、ヘッドライト点灯回路26に制御信号を出力する(ステップS12)。これにより、図7に例示するように、ハイビームの照射下において、歩行者Hの両側部に減光領域RL1、RL2を作り出すマーキング減光が形成される。その結果、減光領域RL1、RL2間に照射範囲Anを持つLED素子23A(図7の例ではパッケージ番号5のLED素子23A)が発するハイビームが実質的なマーキングライトMLとなり、歩行者Hがマーキングされる。
その後、マーキングライト制御部55は、対向車両検出部52が対向車両1Aを検出しているか否かを確認する(ステップS13)。対向車両検出部52が対向車両1Aを検出していない場合(ステップS13でNO)、前記減光制御が継続される。
すなわち、ステップS6と同様に、歩行者検出部51の検出結果に基づき、歩行者Hがマーキングをすべき範囲から外れたか(歩行者不在)否かが確認される(ステップS14)。歩行者不在であると判定された場合(ステップS14でYES)、ECU5は歩行者マーキングを終了する(ステップS15)。
歩行者検出部51が、歩行者マーキングが必要な範囲において歩行者Hの存在を検出し続けている場合(ステップS14でNO)、マーキングライト制御部55は、その歩行者HがステップS11で減光を指定した一対のLED素子23A間に位置するLED素子23Aのマーキング範囲(照射範囲)の外へ相対的に移動したか否を判定する(ステップS16)。図7の例で言えば、パッケージ番号5のLED素子23Aの照射範囲の外に歩行者Hが移動したか否かが確認される。まだ照射範囲から外れていなければ(ステップS16でNO)、パッケージ番号4、6のLED素子23Aの減光が継続され、ステップS12に戻って処理が継続される。
一方、歩行者Hが減光指定のLED素子23A間に配置されたLED素子23Aの照射範囲から外れた位置に移動した場合(ステップS16でYES)、当該歩行者Hがロービーム照射範囲Bに位置しているか否かが判定される(ステップS17)。歩行者Hがハイビーム照射範囲A内に位置している場合(ステップS17でNO)、マーキングライト制御部55は、その時点の歩行者Hの位置情報に応じて、点灯させるLED素子23Aを新たに指定する(ステップS11に戻る)。例えば、図8に示すように、歩行者Hがパッケージ番号6のLED素子23Aの照射範囲へ相対的に移動している場合は、マーキングライト制御部55はパッケージ番号5及び7のLED素子23Aを減光対象として指定し、これらを減光させる。
歩行者Hがロービーム照射範囲B内に位置している場合(ステップS17でYES)、図9で例示した制御が実行される。この場合、ヘッドライト制御部53は、ヘッドライトユニット2L、2Rの照射状態をハイビームからロービームに切り替える(ステップS18)。マーキングライト制御部55は、ステップS4に移行して、ロービーム走行時の歩行者マーキング処理を実行する。
一方、ステップS13において、対向車両検出部52が対向車両1Aを検出している場合(ステップS13でYES)、マーキングライト制御部55は、歩行者検出部51から歩行者Hの現在位置情報を取得すると共に、検出された対向車両1Aの位置情報から、歩行者Hと対向車両1Aとの位置関係を判定する(ステップS21)。続いてマーキングライト制御部55は、両者の位置関係から、マーキングライトMLが対向車両1Aに照射されるか否かを判定する(ステップS22)。
マーキングライトMLが対向車両1Aに照射される位置関係ではない場合(ステップS22でNO)、ステップS14に移行して、上述の減光制御の処理が実行される。例えば、歩行者Hが、自車両1の走行車線側の歩道を歩行している場合、対向車線を走行する対向車両1AにはマーキングライトMLは照射されない。このような場合は、上述のマーキング減光を継続させる。但し、この場合でもハイビームによる対向車両1Aのドライバーの幻惑を防止する必要があるので、図10に示したようなグレアフリー領域GFが形成されるよう、ハイビームの照射状態が制御される。
一方、マーキングライトMLが対向車両1Aに照射される位置関係である場合(ステップS22でYES)、上記停止制御及び再検出制御が実行されることになる。この場合、マーキングライト制御部55は、ハイビームユニット22において、実質的にマーキングライトMLを出射しているLED素子23Aを減光させ(ステップS23)、停止制御を実行する。これに付随して、マーキングライト制御部55は、対向車両1Aの通過領域にグレアフリー領域GFが形成させる制御信号をヘッドライト点灯回路26に与える。
続いてマーキングライト制御部55は、対向車両検出部52が検出する対向車両1Aの位置情報に基づき、当該対向車両1Aが通過したか(すれ違ったか)否かを判定する(ステップS24)。対向車両1Aとのすれ違いが完了していない場合(ステップS24でNO)、上記停止制御が継続される。この場合、自車両1と対向車両1Aとの位置関係に応じて、グレアフリー領域GFをシフトさせる制御が実行される。
これに対し、対向車両1Aとのすれ違いが完了した場合は(ステップS24でYES)、上記再検出制御が実行される。マーキングライト制御部55は、ハイビームユニット22のLEDアレイ23が備える全てのLED素子23Aを点灯させる。つまり、減光領域を形成せず、通常のハイビームの照射状態に復帰させる(ステップS25)。
引き続きマーキングライト制御部55は、歩行者検出部51が所定の検出精度で歩行者Hを再検出したか否かを判定する(ステップS26)。この判定のために、例えば、単眼カメラ3及びミリ波レーダ4が捉えた物標が歩行者Hであると決定できる確率に関する評価値を参照することができる。例えば照明不足によるコントラストの低下や障害物の介在により、単眼カメラ3が取得した画像に基づく歩行者Hのエッジ検出処理の精度が低下すると、物標が真の歩行者Hであると決定できる確率が低下する。この場合、前記評価値は低い値となる。一方、再検出制御によって歩行者Hがハイビームで照らされると、コントラストが向上するので、前記評価値は高い値となる。従って、マーキングライト制御部55に、予め定められた閾値よりも前記評価値が上回り、所定の検出精度で歩行者Hを検出できる状態に復帰していることをもって、歩行者Hを再検出したと判定させるようにすることができる。
歩行者Hが再検出されていない場合(ステップS26でNO)、通常のハイビームの照射状態が継続される。これに対し、歩行者Hが再検出されたならば(ステップS26でYES)、ステップS5に戻って前記減光制御に復帰する。ステップS9では、歩行者Hが再検出された時点における歩行者Hの位置情報に基づいて、減光対象のLED素子23Aが指定される。
<作用効果>
以上説明した第1実施形態に係るヘッドライトユニット2の制御装置によれば、前記減光制御(第1制御)において、歩行者Hをハイビームの一部(マーキングライトML)でスポットライト的に照射しつつ、当該歩行者Hの周辺に減光領域RL1、RL2が形成されるようハイビームの照射状態(ヘッドライトの照射状態)が制御される。このため、歩行者Hとその周囲との明るさのコントラストが高められ、マーキングライトMLの照射対象の歩行者Hを目立たせることができる。
また、自車両1と対向車両1Aとのすれ違い時において、対向車両1AがマーキングライトMLの照射範囲を通過する場合には、前記停止制御(第2制御)が適用されて、マーキングライトMLの照射が停止される。従って、対向車両1Aのドライバーに対する幻惑を防止できる。さらに、前記再検出制御(第3制御)においては、歩行者検出部51による歩行者の再検出動作が実行される間は、歩行者Hの周辺の減光が停止される。これにより、歩行者検出部51が正確に歩行者Hを検出し易い状態が形成される。すなわち、歩行者Hの位置を正確に捉えて中断後の歩行者マーキングの制御に繋げることができる。
また、マーキングライト制御部55は、前記再検出制御の実行後、歩行者検出部51により再検出された歩行者Hを対象として、前記減光制御を再度実行する。つまり、歩行者Hが高精度で検出された段階で、歩行者Hの周辺が減光されるマーキング減光が再度実行される。従って、再開後の歩行者マーキングを的確に実行させることができる。
さらに、ハイビームユニット22が備えるLEDアレイ23の照射状態を制御することによってマーキングライトMLが生成される。このため、マーキングライト専用の光源を用いる場合に比べて部品点数を減らすことができる。また、前記再検出制御も、ハイビームを通常の照射状態に復帰させるだけで済むので、制御も容易である。
[第2実施形態]
図13は、第2実施形態に係る歩行者マーキングを示す図である。第1実施形態と相違する点は、図2(C)に示したような、マーキングライト用の専用光源を含むヘッドライトユニット2Aが用いられる点である。図13では、上述の減光制御が実行されている状態を示している。但し、対向車両1Aがハイビーム照射範囲Aに入りかけており、まもなく自車両1と歩行者Hとの間の対向車線を通過する状態である。
第2実施形態の歩行者マーキングでは、ヘッドライトユニット2Aが備えるマーキングライトユニット24から専用マーキングライトEMLが発せられる。図13では、ハイビーム走行時において、歩行者検出部51が検出した歩行者Hに対し、マーキングライトユニット24が備えるLEDアレイ25の特定のLED素子から出射された専用マーキングライトEMLが照射されている状態を示している。つまり、マーキングライト制御部55が、歩行者Hの位置情報に基づき、マーキングライトユニット24のLEDアレイ25の照射状態を制御して、当該歩行者Hに専用マーキングライトEMLを照射させている。
また、第1実施形態と同様に、歩行者Hの周辺には減光領域RL1、RL2が形成されている。これら減光領域RL1、RL2は、ハイビームユニット22が備えるLEDアレイ23のうちの一部のLED素子23Aが減光されることによって形成されている。なお、減光されたLED素子23Aに挟まれ、歩行者Hの存在位置付近を照射範囲としているLED素子23Aについては、減光対象としても良いし、減光対象としなくても良い。後者の場合、専用マーキングライトEMLに加えて、ハイビームユニット22のLED素子23Aが発するハイビームによって歩行者Hは照射され、歩行者Hをより高い輝度とすることが可能となる。
図14は、第2実施形態における、対向車両1Aとのすれ違い時の照射制御を説明するための図である。ここでは、対向車両1Aが歩行者Hに対する専用マーキングライトEMLの照射範囲を横切っている状態を示している。この状態ではマーキングライト制御部55は、上記停止制御を実行する。すなわち、マーキングライトユニット24が発している専用マーキングライトEMLを消灯させると共に、ハイビームユニット22のLEDアレイ23の照射状態を制御し、対向車両1Aの通過領域を減光してグレアフリー領域GFを形成させる。これにより、対向車両1Aのドライバーへの幻惑が防止される。
自車両1に対して対向車両1Aがすれ違った後、図14の停止制御に続いて上記再検出制御を実行する。マーキングライト制御部55は、ハイビームユニット22のLEDアレイ23を全灯状態とし、歩行者Hをハイビームで照射する。この再検出制御が実行されている状態は、先に図11で示した状態と同じである。これにより、前記停止制御によって歩行者Hの位置情報が取得できていない状態に至ったとしても、歩行者Hを直ちに検出可能な状態とすることができる。そして、歩行者Hが再検出されたならば、図13に示した減光制御、すなわち専用マーキングライトEMLの歩行者Hへの照射、及び当該歩行者Hの周辺への減光領域RL1、RL2の形成が再開されるものである。
以上説明した本発明に係る車両用ヘッドライト制御装置によれば、対向車両1Aへの影響を考慮しつつ、常に的確な歩行者マーキングを行うことができる。すなわち、自車両1と対向車両1Aとのすれ違いの際に歩行者マーキングが一旦中断された場合でも、引き続き的確な歩行者マーキングを行わせることが可能となる。
[他の変形実施形態の説明]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば下記のような変形実施形態を取ることができる。
(1)上記実施形態では、ハイビーム走行時の歩行者マーキングにおいて、歩行者Hの周辺に減光領域RL1、RL2を形成させる例を示した。ロービーム走行時の歩行者マーキング(図9)においても、ロービームユニット21の照射状態を制御して、歩行者Hの周辺に減光領域を形成させても良い。
(2)上記実施形態では、歩行者マーキングの際に、歩行者Hの両側部に減光領域RL1、RL2が形成される例を示した。減光領域は、歩行者Hの両側部のうち、少なくとも一方に形成されれば良い。この場合、歩行者Hの両側部のうち、車両の走行ラインに対して近い側の側部を減光させる方が、歩行者Hの存在領域とその隣接領域とのコントラストが比較的高くなるので好ましい。
(3)上記実施形態では、車両前方に一人の歩行者Hが存在する場合の歩行者マーキングを例示した。車両前方に複数の歩行者Hが存在する場合には、複数の歩行者Hのうち、車両1に最も近い歩行者Hを対象として歩行者マーキングを実行することが望ましい。或いは、車両1に対する実質的な危険度(各歩行者Hが車両1の走行ラインに進入する可能性)に関する評価値を導出し、この評価値に基づきマーキング対象の歩行者を決定するようにしても良い。