JP6284157B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

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Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
有機エレクトロルミネッセンス素子は、ディスプレイ、バックライト、および照明用途等に広く用いられている。
一般に、有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と、陰極と、これらの電極間に設置された有機発光層とを有する。電極間に電圧を印加すると、それぞれの電極から、有機発光層にホールおよび電子が注入される。このホールと電子が有機発光層内で再結合された際に、結合エネルギーが生じ、この結合エネルギーによって有機発光層中の有機発光材料が励起される。励起した発光材料が基底状態に戻る際に発光が生じるため、これを利用することにより、発光素子が得られる。
なお、通常の場合、有機エレクトロルミネッセンス素子は、さらに、ホール注入層および/またはホール輸送層、ならびに電子注入層および/または電子輸送層を有する。ホール注入層およびホール輸送層は、陽極と有機発光層の間に配置され、有機発光層にホールを選択的に注入する役割を有する。また、電子注入層および電子輸送層は、陰極と有機発光層の間に配置され、有機発光層に電子を選択的に注入する役割を有する。従って、これらの層を配置することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率を高めることができる(特許文献1)。
特開平11−102787号公報
前述のように構成される有機エレクトロルミネッセンス素子において、通常、電子注入層には、フッ化リチウム(LiF)のような材料が使用される。
しかしながら、フッ化リチウムは、元来絶縁材料であるため、この材料を有機エレクトロルミネッセンス素子の電子注入層として使用するには、層の厚さを極めて薄くする必要がある(例えば、0.1nm〜0.4nm)。しかしながら、しばしば、このような極めて薄い薄膜を形成することは難しい場合がある。例えば、膜厚が薄くなりすぎると、層状の薄膜を得ることが難しくなる。一方、膜厚が厚い場合、十分な導電性を有する電子注入層を得ることができなくなる。
また、フッ化リチウムは、比較的安定性が悪く、大気に触れると容易に劣化してしまうという問題がある。このため、フッ化リチウム製の電子注入層のハンドリングは、制御された環境下で実施する必要があり、その結果、製造プロセスが煩雑となる。
さらに、このようなフッ化リチウムの特性により、電子注入層に十分な導電性が得られなかった場合、あるいは電子注入層に劣化が生じた場合、有機エレクトロルミネッセンス素子に所望の発光特性が得られなくなったり、有機エレクトロルミネッセンス素子の信頼性が低下したりする可能性がある。
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、従来に比べて良好な安定性を有し、高い信頼性を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
本発明では、有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
陽極、発光層、および陰極をこの順に有し、
前記発光層と前記陰極の間には、電子注入層が配置され、
該電子注入層は、非晶質C12A7エレクトライドで構成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
ここで、本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記発光層と前記電子注入層の間には、電子輸送層が配置され、
該電子輸送層は、金属酸化物で構成されても良い。
また、本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記電子輸送層は、アモルファス、結晶質、またはアモルファスと結晶質の混合相の形態であっても良い。
また、本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記電子輸送層は、ZnO−SiO、In−SiO、SnO−SiO、ZnO、In−Ga−Zn−O、In−Zn−O、またはSnOで構成されても良い。
さらに、本発明では、
有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
陽極、発光層、および陰極をこの順に有し、
前記陰極は、非晶質C12A7エレクトライドで構成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
さらに、本発明では、
基板、電極、非晶質C12A7エレクトライドの層、および金属酸化物の層をこの順に有する、有機エレクトロルミネッセンス素子形成用積層体が提供される。
さらに、本発明では、
陽極、発光層、および陰極をこの順に有し、前記発光層と前記陰極の間に、電子注入層が配置される、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
電子密度が2.0×1018cm−3〜2.3×1021cm−3の結晶質C12A7エレクトライドのターゲットを用いて、低酸素分圧の雰囲気下で、気相蒸着法により成膜することにより、非晶質の薄膜で構成される電子注入層を形成することを特徴とする製造方法が提供される。
さらに、本発明では、
陽極、発光層、および陰極をこの順に有し、
前記発光層と前記陰極の間には、電子注入層が配置され、
該電子注入層は、カルシウム、アルミニウム、および酸素を含む非晶質固体物質の薄膜で構成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
本発明では、従来に比べて良好な安定性を有し、高い信頼性を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
本発明の一実施例による有機エレクトロルミネッセンス素子の構成を概略的に示した断面図である。 非晶質C12A7エレクトライドの概念的な構造を示した模式図である。 非晶質C12A7エレクトライドの薄膜の成膜方法のフローを概略的に示した図である。 実施例において作製したサンプル300の構成を概略的に示した図である。 サンプル300および301における、電子注入特性の評価試験結果をまとめて示したグラフである。 サンプル302および303における、電子注入特性の評価試験結果をまとめて示したグラフである。 サンプル304、305、および306における、電子注入特性の評価試験結果をまとめて示したグラフである。 実施例において作製した有機エレクトロルミネッセンス素子400の構成を概略的に示した図である。 有機エレクトロルミネッセンス素子400、401における、発光特性の評価試験結果をまとめて示したグラフである。 有機エレクトロルミネッセンス素子400、401における、発光特性の評価試験結果をまとめて示したグラフである。 有機エレクトロルミネッセンス素子400、401における、発光特性の評価試験結果をまとめて示したグラフである。 結晶質C12A7エレクトライドのターゲットを用いて、低酸素分圧の雰囲気下で、気相蒸着法により成膜された非晶質の薄膜の光吸収係数を示したグラフである。 結晶質C12A7エレクトライドのターゲットを用いて、低酸素分圧の雰囲気下で、気相蒸着法により成膜された非晶質の薄膜の紫外光電子分光法における光電子の運動エネルギースペクトルを示したグラフである。 有機エレクトロルミネッセンス素子402、403における、発光特性の評価試験結果をまとめて示したグラフである。 結晶質C12A7エレクトライドのターゲットを用いて、低酸素分圧の雰囲気下で、気相蒸着法により成膜された非晶質の薄膜の光吸収係数を示したグラフである。 有機エレクトロルミネッセンス素子404、405における、発光特性の評価試験結果をまとめて示したグラフである。 有機エレクトロルミネッセンス素子406、407における、発光特性の評価試験結果をまとめて示したグラフである。
以下、図面を参照して、本発明の構成について詳しく説明する。
(本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子について)
図1には、本発明の一実施例による有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と称する)の概略的な断面図を示す。
図1に示すように、本発明の一実施例による有機エレクトロルミネッセンス素子100は、基板110上に、陽極120、ホール注入層130、ホール輸送層140、発光層150、電子輸送層160、電子注入層170、および陰極180をこの順に積層することにより構成される。
ただし、ホール注入層130、ホール輸送層140および/または電子輸送層160は、省略されても良い。
基板110は、上部に有機EL素子100を構成する各層を支持する役割を有する。
なお、図1において、有機EL素子100の光取り出し面を下側(すなわち基板110側)とする場合、基板110および陽極120は、透明な材料で構成される。例えば、基板110として、ガラス基板およびプラスチック基板等が使用される。また、陽極120として、例えばITO(インジウムスズ酸化物)のような透明金属酸化物薄膜が使用される。
なお、有機EL素子の作動原理は、当業者には良く知られており、本発明による有機EL素子100の作動原理も、基本的に公知のものと同様である。従って、ここでは、有機EL素子100の作動の説明を省略する。
ここで、本発明の一実施例による有機EL素子100では、電子注入層170が非晶質C12A7エレクトライドの薄膜で構成されているという特徴を有する。
後に詳しく説明するように、有機EL素子100の電子注入層170として使用される非晶質C12A7エレクトライドは、良好な導電性を示す。従って、電子注入層170として非晶質C12A7エレクトライドを使用した場合、従来のフッ化リチウム製電子注入層のように、層の厚さをnm未満のオーダーまで薄くする必要がなくなる。
また、非晶質C12A7エレクトライドは、安定なセラミック材料であり、大気に触れても変質したり、劣化したりすることはない。従って、電子注入層170として非晶質C12A7エレクトライドを使用した場合、従来のフッ化リチウム製電子注入層のように、制御された環境下でハンドリングを行わなければならないという問題が解消される。
さらに、非晶質C12A7エレクトライドは、低い仕事関数を有する。従って、本発明では、陰極180から発光層150への電子注入障壁を低下することが可能となり、発光効率の高い有機EL素子を得ることができる。
加えて、非晶質C12A7エレクトライドは、大きいイオン化ポテンシャルを有する。従って、非晶質C12A7エレクトライドはいわゆるホールブロック効果を有する。すなわち、発光層150で電子と再結合しなかったホールが電子輸送層160を通過し陰極180に到達することを防ぎ、電子とホールの再結合確率が高くなる。そのため、本発明では、発光効率の高い有機EL素子を得ることができる。
このように、本発明では、電子注入層170として非晶質C12A7エレクトライドの薄膜が使用されるという特徴を有する。これにより、本発明では、従来の有機EL素子のように、信頼性が低下したり、所望の発光特性が得られなくなったりすることが生じ難く、ハンドリングが容易で、信頼性の高い有機EL素子を提供することが可能になる。
(用語の定義について)
ここで、本発明において、電子注入層170として使用される非晶質C12A7エレクトライド、およびこれに関連する用語について説明しておく。
(結晶質C12A7)
本願において、「結晶質C12A7」とは、12CaO・7Alの結晶、およびこれと同等の結晶構造を有する同型化合物を意味する。本化合物の鉱物名は、「マイエナイト」である。
本発明における結晶質C12A7は、結晶格子の骨格により形成されるケージ構造が保持される範囲で、C12A7結晶骨格のCa原子および/またはAl原子の一部乃至全部が他の原子に置換された化合物、ならびにケージ中のフリー酸素イオンの一部乃至全部が他の陰イオンに置換された同型化合物であっても良い。なお、C12A7は、Ca12Al1433またはCa24Al2866と表記されることがある。
同型化合物としては、これに限られるものではないが、例えば、下記の(1)〜(4)の化合物が例示される。
(1)結晶中のCa原子の一部乃至全部が、Sr、Mg、および/またはBaなどの金属原子に置換された同型化合物。例えば、Ca原子の一部乃至全部がSrに置換された化合物としては、ストロンチウムアルミネートSr12Al1433があり、CaとSrの混合比が任意に変化された混晶として、カルシウムストロンチウムアルミネートCa12−xSrAl1433(xは1〜11の整数;平均値の場合は0超12未満の数)などがある。
(2)結晶中のAl原子の一部乃至全部が、Si、Ge、Ga、In、およびBからなる群から選択される一種以上の原子に置換された同型化合物。例えば、Ca12Al10Si35などが挙げられる。
(3)12CaO・7Alの結晶(上記(1)、(2)の化合物を含む)中の金属原子および/または非金属原子(ただし、酸素原子を除く)の一部が、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、およびCuからなる群から選択される一種以上の遷移金属原子もしくは典型金属原子、Li、Na、およびKからなる群から選択される一種以上のアルカリ金属原子、またはCe、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbからなる群から選択される一種以上の希土類原子と置換された同型化合物。
(4)ケージに包接されているフリー酸素イオンの一部乃至全部が、他の陰イオンに置換された化合物。他の陰イオンとしては、例えば、H、H 、H2−、O、O 、OH、F、Cl、およびS2−などの陰イオンや、窒素(N)の陰イオンなどがある。
(5)ケージの骨格の酸素の一部が、窒素(N)などで置換された化合物。
(結晶質C12A7エレクトライド)
本願において、「結晶質C12A7エレクトライド」とは、前述の「結晶質C12A7」において、ケージに包接されたフリー酸素イオン(ケージに包接された他の陰イオンを有する場合は、当該陰イオン)の一部乃至全部が電子に置換された化合物を意味する。
結晶質C12A7エレクトライドにおいて、ケージに包接された電子は、ケージに緩く束縛され、結晶中を自由に動くことができる。このため、結晶質C12A7エレクトライドは、導電性を示す。特に、全てのフリー酸素イオンが電子で置き換えられた結晶質C12A7は、[Ca24Al28644+(4e)と表記されることがある。
(非晶質C12A7エレクトライド)
本願において、「非晶質C12A7エレクトライド」とは、結晶質C12A7エレクトライドと同等の組成を有し、非晶質C12A7を溶媒とし、電子を溶質とする溶媒和からなる非晶質固体物質を意味する。
図2には、非晶質C12A7エレクトライドの構造を概念的に示す。
一般に、結晶質C12A7エレクトライドでは、それぞれのケージが面を共有して3次元的に積み重なることにより、結晶格子が構成され、それらのケージの一部に電子が包接される。これに対して、非晶質C12A7エレクトライドの場合、図2に示すように、非晶質C12A7からなる溶媒220中に、バイポーラロン250と呼ばれる特徴的な部分構造が分散された状態で存在する。バイポーラロン250は、2つのケージ230が隣接し、さらにそれぞれのケージ230に、電子(溶質)240が包接されて構成されている。ただし、非晶質C12A7エレクトライドの状態は上記に限られず、ひとつのケージ230に2つの電子(溶質)240が包接されてもよい。
また、これらのケージが複数凝集した状態でもよく、凝集したケージは微結晶とみなすこともできるため、非晶質中に微結晶が含まれた状態も本発明において非晶質とみなす。
非晶質C12A7エレクトライドは、導電性を示し、低い仕事関数を有する。仕事関数は2.4〜4.5eVであっても良く、3〜4eVであっても良い。非晶質C12A7エレクトライドの仕事関数は、2.8〜3.2eVであるのが好ましい。また、非晶質C12A7エレクトライドは、高いイオン化ポテンシャルを有する。イオン化ポテンシャルは7.0〜9.0eVであっても良く、7.5〜8.5eVであっても良い。
バイポーラロン250は、光子エネルギーが1.55eV〜3.10eVの可視光の範囲では光吸収がほとんどなく、4.6eV付近で光吸収を示す。従って、非晶質C12A7エレクトライドの薄膜は可視光において透明である。また、被検査対象であるサンプルの光吸収特性を測定し、4.6eV付近の光吸収係数を測定することにより、サンプル中にバイポーラロン250が存在するかどうか、すなわちサンプルが非晶質C12A7エレクトライドを有するかどうかを確認することができる。
また、バイポーラロン250を構成する隣接する2つのケージ230は、ラマン活性であり、ラマン分光測定の際に186cm−1付近に特徴的なピークを示す。
(C12A7エレクトライド)
本願において、「C12A7エレクトライド」とは、前述の「結晶質C12A7エレクトライド」および「非晶質C12A7エレクトライド」の両方を含む概念を意味する。
なお、結晶質C12A7エレクトライド」は、Ca原子、Al原子、およびO原子を含み、Ca:Alのモル比が13:13〜11:15の範囲であり、Ca:Alのモル比は、12.5:13.5〜11.5:14.5の範囲であることが好ましく、12.2:13.8〜11.8:14.2の範囲であることがより好ましい。
また、「非晶質C12A7エレクトライド」は、Ca原子、Al原子、およびO原子を含み、Ca:Alのモル比が13:12〜11:16の範囲であり、Ca:Alのモル比は、13:13〜11:15の範囲であることが好ましく、12.5:13.5〜11.5:14.5の範囲であることがより好ましい。また、「非晶質C12A7エレクトライド」の薄膜は、全体の67%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上が上記組成範囲にあるCa、Al、およびOで構成されることが好ましい。
(有機EL素子100の各層の構成について)
次に、図1に示した有機EL素子100を構成する各層の構成について詳しく説明する。
(基板110)
基板110は、上部に有機EL素子100を構成する各層を支持することができれば、その材質は特に限られない。ただし、前述のように、有機EL素子100の光取り出し面を基板110側とする場合、基板110は、透明材料で構成される。
透明材料としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板、および樹脂基板等が使用できる。
(陽極120)
陽極120としては、通常、金属または金属酸化物が使用される。使用材料は、仕事関数が4eV以上であるものが好ましい。なお、前述のように、有機EL素子100の光取り出し面を基板110側とする場合、陽極120は、透明である必要がある。
陽極120は、例えば、アルミニウム、銀、錫、金、炭素、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、タングステン、バナジウム、およびそれらの合金のような金属材料であっても良い。あるいは、陽極120は、例えば、ITO、アンチモン酸化物(Sb)、ジルコニウム酸化物(ZrO)、スズ酸化物(SnO)、亜鉛酸化物(ZnO)、IZO(Indium Zinc Oxide)、AZO(ZnO−Al:アルミニウムがドーピングされた亜鉛酸化物)、GZO(ZnO−Ga:ガリウムがドーピングされた亜鉛酸化物)、NbドープTiO、TaドープTiO、およびIWZO(In−WO−ZnO:三酸化タングステンおよび酸化亜鉛がドーピングされたインジウム酸化物)等の金属酸化物材料であっても良い。
陽極120の成膜方法は、特に限られない。陽極120は、蒸着法、スパッタ法、塗布法等の公知の成膜技術により、形成しても良い。
典型的には、陽極120の厚さは、50nm〜150nmの範囲である。透明電極として金属材料を使用する場合の陽極120の厚さは、2nm〜50nmの範囲であるのが好ましい。
(ホール注入層130)
ホール注入層130は、ホール注入性を有する材料から選定される。
ホール注入層130は、有機材料、例えば、CuPcおよびスターバーストアミン等であっても良い。あるいは、ホール注入層130は、金属酸化物材料、例えば、モリブデン、タングステン、レニウム、バナジウム、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、チタンおよびアルミニウムから選定された少なくとも一つの金属を含む酸化物であっても良い。
一般に、有機層の上に成膜されるトップ電極をスパッタ法により成膜する場合、有機層のスパッタダメージにより有機EL素子の特性が劣化することが知られているが、金属酸化物は、有機材料よりもスパッタ耐性が高いため、有機材料の上に金属酸化物を成膜することで、有機層へのスパッタダメージを軽減することができる。
この他にも、ホール注入層130として、公知の各種材料を使用することができる。なお、ホール注入層130は、省略しても良い。
ホール注入層130の成膜方法は、特に限られない。ホール注入層130は、蒸着法または転写法などの乾式プロセスで成膜しても良い。あるいは、ホール注入層130は、スピンコート法、スプレーコート法、グラビア印刷法などの湿式プロセスで成膜しても良い。
典型的には、ホール注入層130の厚さは、1nm〜50nmの範囲である。
(ホール輸送層140)
ホール輸送層140は、ホール輸送性を有する材料から選定される。
ホール輸送層140は、例えば、アリールアミン系化合物、カルバゾール基を含むアミン化合物、およびフルオレン誘導体を含むアミン化合物などであっても良い。具体的には、ホール輸送層140は、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、2−TNATA、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNBなどであっても良い。
この他にも、ホール輸送層140として、公知の各種材料を使用することができる。なお、ホール輸送層140は、省略しても良い。
ホール輸送層140は、従来の一般的な成膜プロセスを用いて成膜することができる。
典型的には、ホール輸送層140の厚さは、1nm〜100nmの範囲である。
(発光層150)
発光層150は、有機エレクトロルミネッセンス素子用の発光材料として知られるいかなる材料で構成されても良い。
発光層150は、例えば、エピドリジン、2,5−ビス[5,7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル]チオフェン、2,2’−(1,4−フェニレンジビニレン)ビスベンゾチアゾール、2,2’−(4,4’−ビフェニレン)ビスベンゾチアゾール、5−メチル−2−{2−[4−(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)フェニル]ビニル}ベンゾオキサゾール、2,5−ビス(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、ペリノン、1,4−ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、アクリジン、スチルベン、2−(4−ビフェニル)−6−フェニルベンゾオキサゾール、アルミニウムトリスオキシン、マグネシウムビスオキシン、ビス(ベンゾ−8−キノリノール)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラールト)アルミニウムオキサイド、インジウムトリスオキシン、アルミニウムトリス(5−メチルオキシン)、リチウムオキシン、ガリウムトリスオキシン、カルシウムビス(5−クロロオキシン)、ポリ亜鉛−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリノリル)メタン、ジリチウムエピンドリジオン、亜鉛ビスオキシン、1,2−フタロペリノン、1,2−ナフタロペリノン等であっても良い。
この他にも、発光層150として、公知の各種材料を使用することができる。
発光層150は、蒸着法または転写法などの乾式プロセスで成膜しても良い。あるいは、発光層150は、スピンコート法、スプレーコート法、グラビア印刷法などの湿式プロセスで成膜しても良い。
典型的には、発光層150の厚さは、1nm〜100nmの範囲である。また、発光層はホール輸送層や電子輸送層と兼用されても良い。
(電子輸送層160)
通常の場合、電子輸送層160は、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)のような有機材料で構成される。しかしながら、一般に、Alq3のような有機材料は、空気に触れると容易に劣化してしまうことがある。
このため、電子輸送層160として、金属酸化物材料を使用することが好ましい。
電子輸送層160用の金属酸化物材料としては、例えば、xZnO−(1−x)SiO(x=0.5〜0.9が好ましい)、xIn−(1−x)SiO(x=0.4〜0.8が好ましい)、xSnO−(1−x)SiO(x=0.4〜0.8が好ましい)、ZnO、In−Ga−Zn−O(In:Ga:Zn:O=1〜4:1:1:1が好ましい)、In−Zn−O、Zn−Mg−O、Zn−Mg−Ga−OおよびSnOから選択される1種以上がある。
これらの金属酸化物材料は、アモルファスの形態であっても良く、結晶質の形態であっても良く、あるいはアモルファスと結晶質相の混合相の形態であっても良い。
特に、金属酸化物材料は、アモルファスの形態であることが好ましい。アモルファスの金属酸化物材料では、比較的平坦な膜を容易に得ることができるからである。
これらの金属酸化物材料の電子親和力は、2.8〜5.0eVであることが好ましく、3.0〜4.0eVであることがより好ましく、3.1eV〜3.5eVであることがさらに好ましい。電子親和力が2.8eV以上であると、電子注入特性が高く、有機EL素子の発光効率が向上する。また、電子親和力が5.0eV以下であると、有機EL素子から十分な発光が得られ易い。
電子輸送層160としてこれらの金属酸化物材料を使用した場合、Alq3のような有機物を使用した場合に比べて、層の安定性が向上し、ハンドリングが容易になるという効果が得られる。
また、Alq3材料は、比較的ホールの易動度が高いという性質がある。これに対して、前述の金属酸化物材料は、いずれも、ホールの移動度が比較的小さく、電子のみを選択的に輸送することができる。このため、これらの金属酸化物材料を電子輸送層160として使用した場合、有機EL素子の発光効率をよりいっそう高めることが可能になる。
また、これらの金属酸化物材料からなる電子輸送層160の厚さは、1nm〜2000nmであっても良く、100nm〜2000nmであることが好ましく、200nm〜1000nmであることがより好ましく、300nm〜500nmであることがさらに好ましい。通常のAlq3のような有機電子輸送層と比較して、上述の金属酸化物材料は、電子移動度が1〜10cm−1−1と数桁大きいので、前述のように厚みを大きくすることが可能である。また、このような厚みとすることで、有機電子輸送層を用いる場合と比較して、有機EL素子の短絡を抑制することが可能である。無機電子輸送層の厚みが2000nmを超えると、薄膜の作製に長時間を要するため、作製される有機EL素子が高コストとなる。
電子輸送層160の成膜方法は、特に限られない。前述のような金属酸化物材料を成膜する場合、例えば、蒸着法、スパッタ法、塗布法等の公知の成膜技術を使用しても良い。
なお、電子輸送層160は、省略しても良い。
(電子注入層170)
前述のように、有機EL100において、電子注入層170には、非晶質C12A7エレクトライドが使用される。
従来の電子注入層170の厚さは、例えば、0.1nm〜0.4nmの範囲である。これは、前述のように、従来から電子注入層として使用されているLiFは、抵抗が高く、極めて薄い状態にしなければ、導電性部材として使用することができないからである。
これに対して、非晶質C12A7エレクトライドで構成される電子注入層170は、導電性を有するため、そのような膜厚の制約はない。従って、比較的均一な厚さの電子注入層170を比較的容易に形成することができる。
非晶質C12A7エレクトライド製の電子注入層170は、例えば、約1nm〜50nmの範囲の厚さを有する。30nm以下でも良く、20nm以下でも良い。2nm以上でも良く、4nm以上でも良く、9nm以上でも良い。
前述のように、非晶質C12A7エレクトライドは、セラミック材料であり、大気に触れても変質することなく安定である。従って、電子注入層170として非晶質C12A7エレクトライドを使用した場合、従来のフッ化リチウム製電子注入層のように、制御された環境下でハンドリングを行わなければならないという問題が解消される。その結果、ハンドリングが容易で、信頼性の高い有機EL素子100を得ることが可能となる。
(電子注入層170の成膜方法)
ここで、電子注入層170用の非晶質C12A7エレクトライドの薄膜の成膜方法の一例について説明する。
図3には、非晶質C12A7エレクトライドの薄膜の成膜方法のフローを概略的に示す。
図3に示すように、非晶質C12A7エレクトライドの薄膜の成膜方法は、
電子密度が2.0×1018cm−3〜2.3×1021cm−3の結晶質C12A7エレクトライドのターゲットを準備する工程(S110)と、
前記ターゲットを用いて、酸素分圧が0.1Pa未満の雰囲気下で、気相蒸着法により、陰極または電子輸送層上に成膜を行う工程(S120)と、
を有する。
以下、それぞれの工程について詳しく説明する。
(工程S110)
まず、以降の工程S120で使用される成膜用のターゲットが準備される。
ターゲットは、結晶質C12A7エレクトライドで構成される。
結晶質C12A7エレクトライド製のターゲットの製造方法は、特に限られない。ターゲットは、例えば、従来のバルク状の結晶質C12A7エレクトライドの製造方法を用いて製造しても良い。例えば、結晶質C12A7の焼結体を、Ti、Al、CaまたはCなどの還元剤の存在下で、1150〜1460℃程度、好ましくは、1200℃〜1400℃程度に加熱処理することにより、結晶質C12A7エレクトライド製のターゲットを製造しても良い。結晶質C12A7の粉体を圧縮して成形した圧粉体をターゲットとして用いてもよい。結晶質C12A7の焼結体を、カーボンおよび金属アルミニウムの存在下で、焼結体と金属アルミニウムが接触しない状態に保ちながら、1230〜1415℃で加熱処理することにより、効率的に大面積の結晶質C12A7エレクトライド製のターゲットを作製できる。好ましくは、直径3インチ(76.2mm)以上の面積、2mm以上の厚みを有するターゲットを作製でき、より好ましくは、直径4インチ(101.6mm)以上の面積、3mm以上の厚みを有するターゲットを作製できる。
ここで、このターゲット、すなわち結晶質C12A7エレクトライドの電子密度は、2.0×1018cm−3〜2.3×1021cm−3の範囲である。結晶質C12A7エレクトライドの電子密度は、1×1019cm−3以上であることが好ましく、1×1020cm−3以上がより好ましく、5×1020cm−3以上がさらに好ましく、1×1021cm−3以上が特に好ましい。ターゲットを構成する結晶質C12A7エレクトライドの電子密度が高いほど、低い仕事関数を有する非晶質C12A7エレクトライドが得られやすくなる。特に、仕事関数が3.0eV以下である非晶質C12A7エレクトライドを得るには、結晶質C12A7エレクトライドの電子密度は、1.4×1021cm−3以上がより好ましく、1.7×1021cm−3以上がさらに好ましく、2×1021cm−3以上が特に好ましい。特に、すべてのフリー酸素イオン(他の陰イオンを有する場合は当該陰イオン)が電子で置換された場合、結晶質C12A7エレクトライドの電子密度は、2.3×1021cm−3となる。結晶質C12A7エレクトライドの電子密度が2.0×1018cm−3を下回ると、成膜によって得られる非晶質C12A7エレクトライド薄膜の電子密度が小さくなる。
なお、C12A7エレクトライドの電子密度は、ヨウ素滴定法により、測定することができる。
このヨウ素滴定法は、5mol/lのヨウ素水溶液中にC12A7エレクトライド製サンプルを浸漬し、塩酸を加えて溶解させた後、この溶液中に含まれる未反応ヨウ素の量を、チオ硫酸ナトリウムで滴定検出する方法である。この場合、サンプルの溶解により、ヨウ素水溶液中のヨウ素は、以下の反応によりイオン化する:

+e→2I (1)式

また、チオ硫酸ナトリウムでヨウ素水溶液を滴定した場合、

2Na+I→2NaI+Na (2)式

の反応により、未反応のヨウ素がヨウ化ナトリウムに変化する。最初の溶液中に存在するヨウ素量から、(2)式で滴定検出されたヨウ素量を差し引くことにより、(1)式の反応で消費されたヨウ素量が算定される。これにより、C12A7エレクトライドのサンプル中の電子濃度を測定することができる。ヨウ素滴定法は、C12A7エレクトライドが結晶質または非晶質のいずれにおいても適用可能である。
結晶質C12A7エレクトライドの電子密度は、光吸収測定法により、測定することができる。結晶質C12A7エレクトライドは、2.8eV付近に特有の光吸収を有するので、その吸収係数を測定することにより、電子密度を求めることができる。特に、試料が焼結体である場合は、焼結体を粉砕して、粉末としたのち、拡散反射法を用いると簡便である。
得られたターゲットは、次工程で非晶質C12A7エレクトライドの薄膜を成膜する際の原料ソースとして使用される。
なお、ターゲットの表面は、使用前に、機械的手段等により研磨されても良い。
一般に、従来の方法で得られた結晶質C12A7エレクトライドのバルク体は、表面に、ごく薄い被膜(異物)を有する場合がある。表面にこのような被膜が形成されたターゲットをそのまま使用して、成膜処理を実施した場合、得られる薄膜の組成が所望の組成比から逸脱する可能性がある。しかしながら、ターゲット表面の研磨処理を実施しておくことにより、このような問題を有意に抑制することができる。
(工程S120)
次に、前述の工程S110において作製されたターゲットを用いて、気相蒸着法により、電子輸送層上に成膜が行われる。
本願において、「気相蒸着法」とは、物理気相成膜(PVD)法、PLD法、スパッタリング法、および真空蒸着法を含む、ターゲット原料を気化させてからこの原料を基板上に堆積させる成膜方法の総称を意味する。
「気相蒸着法」の中でも、特に、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法では、大面積領域に、比較的均一に薄膜を成膜することができる。なお、スパッタリング法には、DC(直流)スパッタリング法、高周波スパッタリング法、ヘリコン波スパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、およびマグネトロンスパッタリング法等が含まれる。
以下、スパッタリング法により成膜を行う場合を例に、工程S120について説明する。
エレクトライドの薄膜を成膜する際の被成膜基板の温度は、特に限られず、室温〜例えば700℃までの範囲の、いかなる温度を採用しても良い。なお、エレクトライドの薄膜を成膜する際に、基板を必ずしも「積極的に」加熱する必要はないことに留意する必要がある。ただし、蒸着源の輻射熱によって、被成膜基板の温度が「付随的に」上昇する場合はあり得る。例えば、被成膜基板の温度は、500℃以下であっても良く、200℃以下であっても良い。
被成膜基板を「積極的に」加熱しない場合、基板の材料として、例えばガラスやプラスチックのような、700℃を超える高温側で耐熱性が低下する材料を使用することが可能になる。
なお、エレクトライドの薄膜を成膜する前に被成膜基板を真空雰囲気で加熱処理してもよい。例えば、大気に暴露した基板を、真空度10−6Paで300℃、10分保持することで、基板に吸着した水分などが脱離するため、下地表面を清浄化することができる。
成膜時の酸素分圧は、0.1Pa未満であることが好ましい。酸素分圧は、0.01Pa以下であることが好ましく、1×10−3Pa以下であることがより好ましく、1×10−4Pa以下であることがさらに好ましく、1×10−5Pa以下であることが特に好ましい。酸素分圧が0.1Pa以上になると、成膜された薄膜に酸素が取り込まれ、電子密度が低下するおそれがある。
一方、成膜時の水素分圧は、0.004Pa未満であることが好ましい。0.004Pa以上であると、成膜された薄膜中に水素またはOH成分が取り込まれ、非晶質C12A7エレクトライド薄膜の電子密度が低下する可能性がある。
使用されるスパッタガスとしては、特に限られない。スパッタガスは、不活性ガスまたは希ガスであっても良い。不活性ガスとしては、例えば、Nガスが挙げられる。また、希ガスとしては、He(ヘリウム)、Ne(ネオン)、Ar(アルゴン)、Kr(クリプトン)、およびXe(キセノン)が挙げられる。これらは、単独で使用しても、他のガスと併用しても良い。あるいは、スパッタガスは、NO(一酸化窒素)のような還元性ガスであっても良い。
スパッタガスの圧力(チャンバー内の圧力)は、特に限られず、所望の薄膜が得られるように、自由に選定することができる。特に、スパッタガスの圧力(チャンバー内の圧力)P(Pa)は、基板とターゲットの間の距離をt(m)とし、ガス分子の直径をd(m)としたとき、

8.9×10−22/(td)<P<4.5×10−20/(td) (3)式

を満たすように選定されても良い。この場合、スパッタ粒子の平均自由行程が、ターゲット〜基板間の距離とほぼ等しくなり、スパッタ粒子が残存酸素と反応することが抑制される。また、この場合、スパッタリング法の装置として、背圧が比較的高く、安価で簡易的な真空装置を用いることが可能となる。
以上の工程により、陰極または電子輸送層160上に、非晶質C12A7エレクトライドの薄膜を形成することができる。
なお、得られた薄膜がC12A7の組成を有することは、薄膜の組成分析により確認することができる。例えば、XPS法、EPMA法またはEDX法等を用いて薄膜のCa/Al比を測定することにより、薄膜がC12A7の組成を有するかどうかを評価することができる。膜厚が100nm以下の場合はXPS法、100nm以上の場合はEPMA法、3μm以上の場合はEDX法による分析が可能である。また、薄膜が非晶質C12A7エレクトライドであることは、前述のように、サンプルの光吸収特性を測定し、4.6eVの光子エネルギー付近での光吸収の有無を判定することにより確認することができる。
なお、膜厚が比較的厚い場合は、ラマン分光測定において、186cm−1付近における特徴的なピークの有無を判定することによっても、薄膜が非晶質C12A7エレクトライドであるかどうかを確認することができる。
以上、スパッタリング法を例に、非晶質C12A7エレクトライドの薄膜を成膜する方法について、簡単に説明した。しかしながら、非晶質C12A7エレクトライドの薄膜の成膜方法は、これに限られるものではなく、前述の2つの工程(工程S110およびS120)を適宜変更したり、あるいは各種工程を追加しても良いことは明らかである。
例えば、前述の工程S120において、スパッタリング法により、非晶質C12A7エレクトライドの成膜を開始する前に、ターゲットに対して、プレスパッタリング処理(ターゲットのドライエッチング処理)が実施されても良い。
プレスパッタリング処理を実施することにより、ターゲットの表面が清浄化され、その後の成膜処理(本成膜)において、所望の組成の薄膜を形成することが容易となる。
例えば、ターゲットを長時間使用すると、ターゲットの表面に酸素が取り込まれ、ターゲットを構成する結晶質C12A7エレクトライドの電子密度が低下する場合がある。このようなターゲットを使用した場合、成膜された薄膜においても、電子密度が低下するおそれがある。また、ターゲットを長時間使用すると、ターゲット(すなわち結晶質C12A7エレクトライド)を構成する各成分のスパッタ速度の違いにより、ターゲットの組成が、最初の組成から逸脱するおそれがある。このようなターゲットを使用した場合、成膜された薄膜においても、組成が所望の値から逸脱するおそれがある。
しかしながら、プレスパッタリング処理を実施することにより、このような問題が抑制される。プレスパッタリング処理は、例えば、新たな成膜を実施する前、あるいはターゲットの使用時間が所定の値に到達する度に、実施されても良い。
なお、プレスパッタリング処理に使用されるガスは、本成膜の際に使用されるスパッタガスと同一であっても異なっていても良い。
特に、プレスパッタリング処理に使用されるガスは、He(ヘリウム)、Ne(ネオン)、N(窒素)、Ar(アルゴン)、および/またはNO(一酸化窒素)であることが好ましい。
この他にも、工程S110およびS120の各種変更、ならびに新たな工程の追加が可能である。
このような方法を経て成膜された非晶質C12A7エレクトライドの薄膜は、電子密度が2.0×1018cm−3以上2.3×1021cm−3以下の範囲であり、4.6eVの光子エネルギー位置において光吸収を示す。電子密度は1×1019cm−3以上がより好ましく、1×1020cm−3以上がさらに好ましい。4.6eVの位置での光吸収値は、100cm−1以上であっても良い。200cm−1以上であっても良い。
なお、非晶質C12A7エレクトライドの薄膜の電子密度は、前述のヨウ素滴定法により測定することができる。ちなみに、非晶質C12A7エレクトライドの薄膜において、バイポーラロンの密度は、測定された電子密度を1/2倍することにより算定することができる。
非晶質C12A7エレクトライドの薄膜は、ケージ中の電子のホッピング伝導により、導電性を有する。非晶質C12A7エレクトライドの薄膜の、室温での直流電気伝導率は、10−9〜10−1S・cm−1であっても良く、また、10−7〜10−3S・cm−1であっても良い。
本発明による非晶質C12A7エレクトライド薄膜は、バイポーラロン5のほかに、部分構造として、酸素欠損に電子が一つ捕獲された、Fセンターを有することがある。Fセンターは複数のCa2+イオンに1つの電子が取り囲まれて構成されており、ケージは有さない。Fセンターは3.3eVを中心として、1.55eV〜3.10eVの可視光の範囲で光吸収を有する。
センターの濃度が5×1018cm−3未満であると、薄膜の透明性が高まるため、好ましい。Fセンターの濃度が、1×1018cm−3以下であるとより好ましく、1×1017cm−3以下であるとさらに好ましい。なお、Fセンターの濃度は、ESRにおける、g値1.998の信号強度により測定できる。
本発明による非晶質C12A7エレクトライド薄膜において、4.6eVの光子エネルギー位置における光吸収係数に対する、3.3eVの位置における光吸収係数の比は、0.35以下であっても良い。
また、非晶質C12A7エレクトライドの薄膜は、結晶粒界を有さないため、平坦性に優れている。非晶質C12A7エレクトライドの薄膜の表面の自乗平均面粗さ(RMS)は、0.1〜10nmであっても良く、0.2〜5nmであることが好ましい。RMSが2nm以下の非晶質C12A7エレクトライドの薄膜で、電子注入層170が構成された場合、有機EL素子100の特性が向上するため、より好ましい。また、RMSが10nm以上の場合、有機EL素子100の特性が低下するおそれがあるため、研磨工程などを追加する必要が生じる。RMSは、例えば、原子間力顕微鏡を用いて測定することができる。
(陰極180)
陰極180は、通常、金属材料で構成される。なお、有機EL素子100の光取り出し面を陰極180側とする場合、陰極180は、透明である必要がある。
陰極180は、例えば、アルミニウム、銀、金、マグネシウム、カルシウム、チタニウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、イッテルビウム、ルテニウム、マンガン、モリブデン、バナジウム、クロム、タンタル、およびこれらの合金であっても良い。あるいは、陰極180は、例えば、ITO、アンチモン酸化物(Sb)、ジルコニウム酸化物(ZrO)、スズ酸化物(SnO)、亜鉛酸化物(ZnO)、IZO(Indium Zinc Oxide)、AZO(ZnO−Al:アルミニウムがドーピングされた亜鉛酸化物)、GZO(ZnO−Ga:ガリウムがドーピングされた亜鉛酸化物)、NbドープTiO、TaドープTiO、およびIWZO(In−WO−ZnO:三酸化タングステンおよび酸化亜鉛がドーピングされたインジウム酸化物)等の金属酸化物材料であっても良い。
陰極180の成膜方法は、特に限られない。陰極180は、例えば、蒸着法(真空蒸着法、電子ビーム蒸着法)、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、またはスパッタ法等により、成膜しても良い。
典型的には、陰極180の厚さは、50nm〜150nmの範囲である。透明電極として金属材料を使用する場合の陰極180の厚さは、2nm〜50nmの範囲であるのが好ましい。
なお、図1の例では、陽極120が基板110により近い側に配置され、陰極180が基板110からより遠い側に配置される場合を例に、有機EL素子の構成について説明した。しかしながら、本発明において、有機EL素子の構成は、これに限られるものではない。例えば、図1の構成とは反対に、陰極180が基板110により近い側に配置され、陽極120が基板110からより遠い側に配置されても良い。この場合、有機EL素子は、図1において、基板110を除く層120〜180の部分が上下反転されたような構成となる。特には、基板上に、(透明)電極、非晶質C12A7エレクトライド、金属酸化物材料からなる電子輸送層の順に連続でスパッタリング成膜を行うと、電極および非晶質C12A7エレクトライドを、化学的耐久性および機械強度が特に優れた、金属酸化物材料からなる電子輸送層により保護することができるため好ましい。このような積層体は、大気中で容易に搬送することが出来るなど安定性に優れているため、有機EL素子の製造が簡便となる。
また、図1の例では、有機EL素子100は、非晶質C12A7エレクトライドの薄膜で構成された電子注入層170を備える。しかしながら、電子注入層170は、必ずしも必要ではなく、この層は、省略されても良い。この場合、陰極180が非晶質C12A7エレクトライドの薄膜で構成される。あるいは、電子注入層170および陰極180の両方が、非晶質C12A7エレクトライドの薄膜で構成されても良い。
(他の実施形態)
また、本発明の他の実施形態として、陽極、発光層、および陰極をこの順に有し、前記発光層と前記陰極の間に、電子注入層が配置される、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、電子密度が2.0×1018cm−3〜2.3×1021cm−3の結晶質C12A7エレクトライドのターゲットを用いて、低酸素分圧の雰囲気下で、気相蒸着法により、陰極または発光層の上に成膜することにより、非晶質の薄膜で構成される電子注入層を形成する製造方法が提供される。
また、本発明の他の実施形態として、陽極、発光層、および陰極をこの順に有する、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、電子密度が2.0×1018cm−3〜2.3×1021cm−3の結晶質C12A7エレクトライドのターゲットを用いて、低酸素分圧の雰囲気下で、気相蒸着法により成膜することにより、非晶質の薄膜で構成される陰極を形成する製造方法が提供される。
電子注入層または陰極を構成する非晶質の薄膜は、カルシウム、アルミニウム、および酸素を含む非晶質固体物質で構成されて良い。すなわち、電子注入層または陰極を構成する非晶質の薄膜は、カルシウム原子およびアルミニウム原子を含む非晶質酸化物のエレクトライドであって良い。非晶質中に微結晶が含まれた状態も本発明において非晶質とみなす。非晶質の薄膜において、Al/Caのモル比は、好ましくは0.5〜4.7であり、より好ましくは0.6〜3であり、さらに好ましくは0.8〜2.5である。薄膜の組成分析は、XPS法、EPMA法またはEDX法等により行うことができる。
非晶質の薄膜の組成は、C12A7の化学量論比と異なっていても良く、製造の際に用いたターゲットの組成比と異なっていても良い。結晶質の場合は、その組成がC12A7の化学量論比と異なる場合は、C12A7結晶と、C3A(3CaO・Al)結晶および/またはCA(3CaO・Al)結晶との混合物となる。C3A結晶およびCA結晶は絶縁体であり、仕事関数も大きいので、結晶質の部位によって電気的な特性が不均質となる。また、これらの結晶はそれぞれ熱的・機械的特性が異なり、不連続な結晶粒界をつくりやすく表面の平坦性も低い。一方、非晶質の薄膜は、その組成がC12A7の化学量論比と異なっていても、C3A結晶およびCA結晶などの異相を生じないので、均質であり、表面の平坦性も高い。
非晶質の薄膜は、電子密度が2.0×1018cm−3以上2.3×1021cm−3以下の範囲で電子を含むことが好ましい。電子密度は1×1019cm−3以上がより好ましく、1×1020cm−3以上がさらに好ましい。
また、非晶質の薄膜は、4.6eVの光子エネルギー位置において光吸収を示すことが好ましい。
非晶質の薄膜は、半導体的な電気的特性を示し、低い仕事関数を有する。仕事関数は2.4〜4.5eVであっても良く、2.8〜3.2eVであっても良い。また、非晶質の薄膜は、高いイオン化ポテンシャルを有する。イオン化ポテンシャルは7.0〜9.0eVであっても良く、7.5〜8.5eVであっても良い。非晶質の薄膜は、5×018cm−3未満のFセンターを有するため、透明性が高い。Fセンターの濃度が、1×1018cm−3以下であるとより好ましく、1×1017cm−3以下であるとさらに好ましい。非晶質の薄膜において、4.6eVの光子エネルギー位置における光吸収係数に対する、3.3eVの位置における光吸収係数の比は、0.35以下であっても良い。
この実施形態における構成、好適態様について、すでに上述した構成、好適態様(例えば、上記工程S110、工程S120にて説明した内容)と同じ内容については、説明を省略する。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、以下のいずれかの構成であって良い。
(1)基板、陽極、および陰極をこの順に有し、基板側を光取出し面とする構成であり、カルシウム、アルミニウム、および酸素を含む非晶質固体物質の非晶質の薄膜が、陽極と陰極の間に存在するか、または陰極を構成する。
(2)基板、陽極、および陰極をこの順に有し、陰極側を光取出し面とする構成であり、カルシウム、アルミニウム、および酸素を含む非晶質固体物質の非晶質の薄膜が、陽極と陰極の間に存在するか、または陰極を構成する。
(3)基板、陰極、および陽極をこの順に有し、基板側を光取出し面とする構成であり、カルシウム、アルミニウム、および酸素を含む非晶質固体物質の非晶質の薄膜が、陽極と陰極の間に存在するか、または陰極を構成する。
(4)基板、陰極、および陽極をこの順に有し、陽極側を光取出し面とする構成であり、カルシウム、アルミニウム、および酸素を含む非晶質固体物質の非晶質の薄膜が、陽極と陰極の間に存在するか、または陰極を構成する。
本発明の有機EL素子は、透明非晶質酸化物半導体を有するTFTと組み合わせて発光装置を構成する場合は、開口率の観点から、上記(2)および(4)の構成をとるのが好ましい。また、発光装置の輝度安定性の観点から、上記(3)または(4)の構成をとるのが好ましい。発光装置は表示装置としても、照明装置としても良い。
以下、本発明の実施例について説明する。
(例1)
以下の方法により、有機EL素子の陰極部分の構成を模擬したサンプルを作製し、その特性を評価した。
(サンプルの作製)
以下の手順で、図4に示す構造のサンプル300を作製した。
まず、基板として、縦50mm×横50mm×厚さ0.7mmのガラス基板(無アルカリガラス製)310を準備した。
次に、このガラス基板310の一方の表面に、スパッタ法により、陰極としての金属アルミニウム層320を成膜した。金属アルミニウム層320の厚さは、約100nmである。
次に、この陰極付きのガラス基板310をスパッタ装置から取り出し、別のスパッタ装置内に導入し、金属アルミニウム層320の上に、電子注入層330として、非晶質C12A7エレクトライドの層を成膜した。
非晶質C12A7エレクトライドの層は、前述の図3に示す方法により成膜した。ターゲットの結晶質C12A7エレクトライドの電子密度は、8.5×1020cm−3である。このターゲットを用いて、スパッタリング法により、約4.3×10−7Pa未満の酸素分圧雰囲気下で、非晶質C12A7エレクトライドの層の成膜を行った。スパッタガスは、Arとし、導入ガスの圧力は、2.13Paとした。なお、Heガスを用いたプレスパッタリング処理を実施した。ガラス基板310は積極的に加熱しなかった。
得られた非晶質C12A7エレクトライドの層の厚さは、約10nmである。
その後、この電子注入層330(および金属アルミニウム層320)付きのガラス基板310をスパッタ装置から取り出した。次に、このガラス基板310を蒸着装置内に導入し、非晶質C12A7エレクトライドの層の上に、蒸着法により、電子輸送層340としてのAlq3層を成膜した。Alq3層の厚さは、約60nmである。なお、Alq3層は、電子注入層330の表面の中央近傍に、メタルマスクを用いて、直径12mmの領域として形成した。
次に、この電子輸送層340付きのガラス基板310に、蒸着法により、縦2mm×横2mmの評価用電極350を設置した。評価用電極350は、金属アルミニウム製であり、評価用電極350の厚さは、約100nmであった。
以上の工程を経て、ガラス基板310、金属アルミニウム層320、電子注入層330、電子輸送層340、および評価用電極350を備えるサンプル300を作製した。
同様の方法により、サンプル301を作製した。ただし、このサンプル301では、作製の際に、非晶質C12A7エレクトライドの層の成膜工程は実施しなかった。従って、サンプル301は、電子注入層330を有さず、金属アルミニウム層320の上に、直接電子輸送層340を有する。
(電子注入特性の評価)
次に、前述のサンプル300、301を用いて、電子注入特性の評価を実施した。
電子注入特性は、各サンプル300、301において、金属アルミニウム層320と評価用電極350の間に所定の値の電圧を印加した際に得られる電流値を測定することにより実施した。印加する電圧は、0Vから10V(金属アルミニウム層320基準)までの範囲とした。
結果を図5に示す。図5において、横軸は、印加電圧(金属アルミニウム層320基準)を示しており、縦軸は、金属アルミニウム層320と評価用電極350間に生じた電流密度を示している。
この結果から、非晶質C12A7エレクトライドからなる電子注入層330を有しないサンプル301に比べて、非晶質C12A7エレクトライドからなる電子注入層330を有するサンプル300では、同電圧における電流密度が有意に向上していることがわかる(特に、6Vよりも大きな印加電圧で顕著)。
このように、電子注入層として、非晶質C12A7エレクトライドからなる電子注入層330を設置した場合、電子注入障壁が低下し、サンプルの電流特性が向上することが確認された。
また、サンプル300では、製造工程において、非晶質C12A7エレクトライドからなる電子注入層330を設置した後、試料を一旦大気開放している。しかしながら、サンプル300において、良好な電子注入特性が得られていることから、非晶質C12A7エレクトライドの層を電子注入層330とした場合、環境による影響を考慮しなくても、比較的安定な有機EL素子を製造することができることが確認された。
(例2)
Alq3層の厚みを150nmとした以外は、例1と同様な方法で素子を作製し、非晶質C12A7エレクトライドからなる電子注入層330を有するサンプル302と、非晶質C12A7エレクトライドからなる電子注入層330を有しないサンプル303を作製した。
図6に示すように、サンプル302の電流電圧特性は、ほぼすべての電圧範囲で、ショットキー接合であることを示すlogJ=J+CV1/2の関係に従うことが分かる。ここで、Jは電流密度、Vは電圧、JとCは定数である。
評価用電極350(陽極)を構成する金属アルミニウムからAlq3へのホール注入障壁は約2.9eVと大きいことが知られており、サンプル302の電流電圧特性は、非晶質C12A7エレクトライドとAlq3の間に形成されたショットキー障壁に支配されていることがわかる。この電流電圧特性から求められたJから、J=ATexp(−ΦSB/kT) (Aはリチャードソン定数、Tは絶対温度、kはボルツマン定数)の関係を用いて、ショットキー障壁高さΦSBを見積もったところ、ΦSBは、約0.98eVとなった。
また、図6に示すように、サンプル303の電流電圧特性は、低電圧側においては、logJ=J+CV1/2の関係に従わず、また、サンプル302よりも電流値が大きく、短絡電流が生じていることが分かる。これは、金属アルミニウムが多結晶体であり、粒界などに起因する表面粗さを持つが、金属アルミニウム上に非晶質C12A7エレクトライド薄膜が形成されたサンプル302では、表面の平坦性が向上しているためである。また、サンプル303において、logJ=J+CV1/2の関係が成り立つ高電圧側の領域の電流電圧特性から、ショットキー障壁高さを見積もったところ、約1.07eVが得られた。
以上のことから、非晶質C12A7エレクトライド薄膜を電子注入層に用いることにより、短絡電流が少なく、ショットキー障壁高さが小さい、電子輸送層への電子注入特性に優れた有機EL素子を作製できることが分かった。
(例3)
以下の方法により、有機EL素子の陰極部分の構成を模擬したサンプルを作製し、その特性を評価した。
(サンプルの作製)
以下の手順で、非晶質C12A7エレクトライドからなる電子注入層330を有するサンプル304と、フッ化リチウムからなる電子注入層330を有するサンプル305と、電子注入層330を有しないサンプル306と、を作製した。
まず、基板として、縦10mm×横10mm×厚さ0.7mmのガラス基板(無アルカリガラス製)310を準備した。
次に、このガラス基板310の一方の表面に、スパッタ法により、陰極としての金属アルミニウム層320を成膜した。金属アルミニウム層320は、縦4mm×横1mm×厚さ100nmである。
次に、この陰極付きのガラス基板310をスパッタ装置から取り出し、別のスパッタ装置内に導入し、金属アルミニウム層320の上に、電子注入層330として、非晶質C12A7エレクトライドの層を成膜した。
非晶質C12A7エレクトライドの層は、前述の図3に示す方法により成膜した。ターゲットの結晶質C12A7エレクトライドの電子密度は、8.5×1020cm−3である。このターゲットを用いて、スパッタリング法により、約4.3×10−7Pa未満の酸素分圧雰囲気下で、非晶質C12A7エレクトライドの層の成膜を行った。スパッタガスは、Arとし、導入ガスの圧力は、2.13Paとした。なお、Heガスを用いたプレスパッタリング処理を実施した。陰極付きのガラス基板310は積極的に加熱しなかった。
得られた非晶質C12A7エレクトライドの層の厚さは、約1nmである。
その後、この電子注入層330(および金属アルミニウム層320)付きのガラス基板310をスパッタ装置から取り出した。次に、このガラス基板310をプラズマ処理可能な蒸着装置内に導入し、プラズマ処理でクリーニング後、蒸着を行った。プラズマ処理は、Heガス0.6Pa、RF電力50Wで1分間行った。
次に、非晶質C12A7エレクトライドの層の上に、蒸着法により、電子輸送層340としてのAlq3層を成膜した。Alq3層の厚さは、約150nmである。なお、Alq3層は、電子注入層330を完全に覆うように、メタルマスクを用いて、2mm×2mmの領域として形成した。蒸着時の真空度は約3×10−6Paであった。
次に、この電子輸送層340付きのガラス基板310に、蒸着法により、縦1mm×横4mm×厚さ80nmの評価用電極350を、陰極と直交するように設置した。すなわち、陰極と評価用電極の重複する1mm×1mmの領域が電圧印加により通電される領域である。評価用電極350は、金属アルミニウム製である。
以上の工程を経て、ガラス基板310、金属アルミニウム層320、非晶質C12A7エレクトライドからなる電子注入層330、電子輸送層340、および評価用電極350を備えるサンプル304を作製した。
次に、以下の方法により、フッ化リチウムからなる電子注入層330を有するサンプル305を作製した。
まず、基板として、縦10mm×横10mm×厚さ0.7mmのガラス基板(無アルカリガラス製)310を準備した。
次に、このガラス基板310の一方の表面に、スパッタ法により、陰極としての金属アルミニウム層320を成膜した。金属アルミニウム層320は縦4mm×横1mm×厚さ100nmである。
その後、この金属アルミニウム層320付きのガラス基板310をスパッタ装置から取り出した。次に、このガラス基板310をプラズマ処理可能な蒸着装置内に導入し、プラズマ処理でクリーニング後、蒸着を行った。プラズマ処理は、Heガス0.6Pa、RF電力50Wで1分間行った。
次に、金属アルミニウム層320の上に、電子注入層330として、蒸着法によりフッ化リチウムの層を成膜した。蒸着時の真空度は約3×10−6Paである。フッ化リチウム層の厚みは約0.5nmとした。
次に、フッ化リチウム層の上に、蒸着法により、電子輸送層340としてのAlq3層および評価用電極350をサンプル304と同様に成膜した。
以上の工程を経て、ガラス基板310、金属アルミニウム層320、フッ化リチウムからなる電子注入層330、電子輸送層340、および評価用電極350を備えるサンプル305を作製した。
更に、以下の方法により、電子注入層330を有しないサンプル306を作製した。
まず、基板として、縦10mm×横10mm×厚さ0.7mmのガラス基板(無アルカリガラス製)310を準備した。
次に、このガラス基板310を蒸着装置内に導入し、一方の表面に、蒸着法により、陰極としての金属アルミニウム層320を成膜した。金属アルミニウム層320は縦4mm
×横1mm×厚さ100nmである。蒸着時の真空度は約3×10−6Paである。
次に、金属アルミニウム層320の上に、蒸着法により、電子輸送層340としてのAlq3層および評価用電極350をサンプル304と同様に成膜した。
以上の工程を経て、ガラス基板310、金属アルミニウム層320、電子輸送層340、および評価用電極350を備えるサンプル306を作製した。サンプル306は、電子注入層330を有さず、金属アルミニウム層320の上に、直接電子輸送層340を有する。
(電子注入特性の評価)
次に、前述のサンプル304、305、306を用いて、電子注入特性の評価を実施した。
電子注入特性は、各サンプル304、305、306において、金属アルミニウム層320と評価用電極350の間に所定の値の電圧を印加した際に得られる電流値を測定することにより実施した。印加する電圧は、0Vから10V(金属アルミニウム層320基準)までの範囲とした。
結果を図7に示す。図7において、横軸は、印加電圧(金属アルミニウム層320基準)を示しており、縦軸は、金属アルミニウム層320と評価用電極350間に生じた電流密度を示している。
この結果から、フッ化リチウムからなる電子注入層330を有するサンプル305や、非晶質C12A7エレクトライドからなる電子注入層330を有しないサンプル306に比べて、非晶質C12A7エレクトライドからなる電子注入層330を有するサンプル304では、同電圧における電流密度が有意に向上していることがわかる(特に、6Vよりも大きな印加電圧で顕著)。
このように、電子注入層として、非晶質C12A7エレクトライドからなる電子注入層330を設置した場合、電子注入障壁が低下し、サンプルの電流特性が向上することが確認された。
(例4)
以下の方法により、有機EL素子を作製し、その特性を評価した。有機EL素子は、ガラス基板上に、ボトム電極として陰極を配置し、その上に順に、電子注入層、電子輸送層兼発光層、ホール輸送層、ホール注入層およびトップ電極としての陽極を配置し、陽極側から光を取り出す構造とした。
(サンプルの作製)
以下の手順で、図8に示す構造の有機EL素子400を作製した。
まず、基板として、縦30mm×横30mm×厚さ0.7mmのガラス基板(無アルカリガラス製)410を準備した。
このガラス基板410を洗浄した後、一方の表面にスパッタ法により、陰極420として金属アルミニウムを成膜した。陰極420は、縦28mm×横2mm×厚さ100nmである。
次に、この陰極付きのガラス基板410をスパッタ装置から大気中に取り出し、加熱処理可能な別のスパッタ装置内に導入し、約3×10−5Paの真空中300℃で10分保持した。約70℃まで冷却した後、陰極420の上に、電子注入層430として、非晶質C12A7エレクトライドの層を成膜した。なお、エレクトライドの層の成膜時に基板を積極的に加熱することはしなかった。
非晶質C12A7エレクトライドの層は、電子密度が1.5×1021cm−3の結晶質C12A7エレクトライドをターゲットとし、スパッタリング法により成膜した。スパッタリング成膜時の雰囲気は、約4.3×10−7Pa未満の酸素分圧とした。スパッタガスはArとし、導入ガスの圧力は、0.21Paとした。なお、本成膜の前に、Arガスを用いてプレスパッタリング処理を実施した。
得られた非晶質C12A7エレクトライドの層の厚さは、約1nmである。
その後、この電子注入層430(および陰極420)付きのガラス基板410をスパッタ装置から大気中に取り出した。次に、このガラス基板410を基板加熱処理が可能な蒸着装置内に導入し、約3×10−6Paの真空中で300℃10分の加熱処理を行った。約70℃まで冷却した後、次の蒸着を行った。
非晶質C12A7エレクトライドの層の上に、蒸着法により、電子輸送層兼発光層440としてのAlq3層を成膜した。Alq3層の厚さは、約50nmである。次に、ホール輸送層450として、α−NPD層を成膜した。α−NPD層の厚さは、約50nmである。さらに、ホール注入層460として、CuPc層を成膜した。CuPc層の厚さは、約30nmである。
なお、Alq3層、α−NPD層およびCuPc層は、電子注入層430を完全に覆うように、メタルマスクを用いて、20mm×20mmの領域として形成した。蒸着時の真空度は約3×10−6Paであった。
次に、縦2mm×横13mm×厚さ5nmの陽極470を、陰極と直交するように蒸着した。すなわち、陰極と陽極の重複する2mm×2mmの領域が電圧印加により通電される領域である。陽極470は、金製である。
以上の工程を経て、ガラス基板410、金属アルミニウムからなる陰極420、非晶質C12A7エレクトライドからなる電子注入層430、Alq3からなる電子輸送層兼発光層440、α−NPDからなるホール輸送層450、CuPcからなるホール注入層460および金からなる陽極470を備える有機EL素子400を作製した。
次に、以下の方法により、フッ化リチウムからなる電子注入層430を有する有機EL素子401を作製した。
まず、基板として、縦30mm×横30mm×厚さ0.7mmのガラス基板(無アルカリガラス製)410を準備した。
このガラス基板410を洗浄した後、一方の表面に、スパッタ法により、金属アルミニウムからなる陰極420を成膜した。陰極420は縦28mm×横2mm×厚さ100nmである。
その後、この陰極420付きのガラス基板410をスパッタ装置から大気中に取り出し、基板加熱処理が可能な蒸着装置内に導入し、約3×10−6Paの真空中で300℃10分の加熱処理を行った。約70℃まで冷却した後、次の蒸着を行った。
電子注入層430として、蒸着法により、フッ化リチウムの層を成膜した。蒸着時の真空度は約3×10−6Paである。フッ化リチウム層の厚みは約0.5nmとした。
次に、フッ化リチウム層の上に、蒸着法により、Alq3からなる電子輸送層兼発光層440、α−NPDからなるホール輸送層450、CuPcからなるホール注入層460および金からなる陽極470を、有機EL素子400と同様に成膜し、有機EL素子401を作製した。
(有機EL素子の特性評価)
次に、前述の有機EL素子400および401を用いて、電流・電圧および輝度を測定した。
測定は、窒素パージしたグローブボックス内において、各有機EL素子400または401の陰極420と陽極470の間に所定の値の電圧を印加した際に得られる電流値および輝度を測定することにより実施した。印加する電圧は、0Vから21V(陰極420基準)までの範囲とした。輝度測定には、TOPCOM社製の輝度計(BM−7A)を使用した。
1枚の基板内に成膜した6つの素子の平均値を図9、図10、および図11に示す。図9において、横軸は印加電圧(陰極420基準)を示しており、縦軸は陰極420と陽極470間に生じた電流密度を示している。図10において、横軸は印加電圧(陰極420基準)を示しており、縦軸は輝度を示している。図11において、横軸は陰極420と陽極470間に生じた電流密度を示しており、縦軸は輝度を示している。
図9および図10から、非晶質C12A7エレクトライドからなる電子注入層430を有する有機EL素子400では、同電圧における電流密度および輝度が有意に向上していることがわかる。
図11から、非晶質C12A7エレクトライドからなる電子注入層430を有する有機EL素子400と、フッ化リチウムからなる電子注入層430を有する有機EL素子401とは、輝度/電流密度の比が同程度である。これは、同電圧における輝度増加が電流密度増加に起因するものであることを示しており、非晶質C12A7エレクトライドの電子注入特性がフッ化リチウムより優れていることを示している。
(非晶質C12A7エレクトライドの特性評価)
上記有機EL素子400を作製した条件と同じスパッタ条件で石英基板上に非晶質C12A7エレクトライドを成膜し、薄膜の光吸収係数を測定した。ただし、分析を容易にするため上記素子を作製した条件とは成膜時間を変え、膜厚を厚くして分析した。
光吸収係数は、各サンプルの光透過率と反射率の測定結果から算定した。より具体的には、光透過率をT、反射率をR、膜厚をtとしたとき、光吸収係数Aは、以下の式で表される:

A=Ln(T/(1−R))/t (4)式

図12から、光子エネルギーが約4.6eVの付近で、光吸収が認められる。前述のように、非晶質C12A7エレクトライドのバイポーラロンは、4.6eVの光子エネルギー付近で光吸収を示す。従って、図12の結果は、薄膜中にバイポーラロンを有することを示唆するものである。また、4.6eVの位置の光吸収係数に対する、3.3eVの位置の光吸収係数の比は、0.35以下であった。
次に、上記有機EL素子を作製した条件と同じスパッタ条件でITO基板に非晶質C12A7エレクトライドを成膜し、紫外光電子分光法(UPS)を用いて、薄膜の仕事関数を測定した。非晶質C12A7エレクトライドの厚みは10nmとした。
清浄な表面を得るため、測定は超高真空下(10−7Pa)で行い、測定前にArスパッタリングにより表面の有機物などを除去した。また、Arスパッタリングの前後でX線光電子分光を行い、薄膜試料に損傷のないことを確認した。さらに、サンプルに直流電圧(バイアス電圧)を印加して、測定器に対して負電位とした。このようなバイアス電圧の印加により、表面のポテンシャルの影響を排除することができる。
図13には、紫外線を照射したサンプルから放出された電子の運動エネルギー分布を示す。ここで、バイアス電圧を5Vから10Vに変化させても、ほぼ同等のスペクトルが得られることから、サンプルは、チャージアップしておらず、スペクトル形状は仕事関数を反映するものであることが分かる。また、この結果は、サンプルが導電性を有していることを示している。図中の光電子の最低の運動エネルギーより、仕事関数は、約2.9eVであることが分かった。
(例5)
以下の方法により、有機EL素子を作製し、その特性を評価した。有機EL素子は、ガラス基板上に、ボトム電極として陰極を配置し、その上に順に、電子注入層、電子輸送層兼発光層、ホール輸送層およびトップ電極としての陽極を配置し、陰極側から光を取り出す構造とした。
(サンプルの作製)
以下の手順で、有機EL素子402および403を作製した。
まず、基板として、縦30mm×横30mmのジオマテック社製Flat−ITO基板を用意した。この基板は、無アルカリガラス上に厚み150nmのITOが成膜してある。
ITO上に幅1mmにカットしたカプトンテープを張り付け、エッチング液に2分間浸漬し、カプトンテープを張り付けていない部分のITOを除去した。エッチング液はFeCl・6HOとイオン交換水を重量で1:1とした水溶液を作製し、さらに水溶液と同重量の濃塩酸を加えたものを使用した。エッチング液の温度は45℃とした。
その後、カプトンテープを取り除き、中性洗剤で5分間超音波洗浄し、純水で5分間の超音波洗浄を2回実施した。さらに、アセトン中で5分間超音波洗浄し、IPA中で5分間の超音波洗浄を2回実施した。最後に、煮沸したアセトン中に浸漬し、ゆっくり取り出した。
この幅1mmのITO(陰極420)が配線されたガラス基板410を、スパッタ製膜室と真空蒸着室とグローブボックスが連結した装置に導入し、約3×10−5Paまで排気した。その後、陰極420の上に、電子注入層430として、非晶質の薄膜を成膜した。
非晶質の薄膜は、電子密度が1.4×1021cm−3の結晶質C12A7エレクトライドを直径2インチのターゲットとし、スパッタリング法により成膜した。スパッタリング成膜時の雰囲気は、約4.3×10−7Pa未満の酸素分圧とした。スパッタガスはArとし、導入ガスの圧力は、0.5Paとした。サンプルとターゲットの間隔(TS距離)は10cmとした。また、RF電源の出力は50Wとした。なお、本成膜の前に、Arガスを用いてプレスパッタリング処理を実施した。ガラス基板410は積極的に加熱しなかった。
得られた非晶質の薄膜の厚さは、約5nmである。
その後、この電子注入層430(および陰極420)付きのガラス基板410を同装置内の真空蒸着室に導入し、電子輸送層兼発光層440としてのAlq3層を成膜した。Alq3層の厚さは、約50nmである。次に、ホール輸送層450として、α−NPD層を成膜した。α−NPD層の厚さは、約50nmである。
なお、Alq3層およびα−NPD層は、電子注入層430を完全に覆うように、メタルマスクを用いて、20mm×20mmの領域として形成した。蒸着時の真空度は約8×10−6Paであった。
次に、幅1mmの陽極470を、陰極と直交するように蒸着した。すなわち、陰極と陽極の重複する1mm×1mmの領域が電圧印加により通電される領域である。陽極470として、金を厚み15nmで成膜した。
以上の工程を経て、ガラス基板410、ITOからなる陰極420、非晶質の薄膜からなる電子注入層430、Alq3からなる電子輸送層兼発光層440、α−NPDからなるホール輸送層450、金からなる陽極470を備える有機EL素子402を作製した。
また、次に、比較例として、電子注入層430を有しない以外は同様に有機EL素子403を作製した。
(有機EL素子の特性評価)
次に、前述の有機EL素子402および403を用いて、電流・電圧および輝度を測定した。測定は、窒素パージしたグローブボックス内において、各有機EL素子402または403の陰極420と陽極470の間に所定の値の電圧を印加した際に得られる電流値および輝度を測定することにより実施した。輝度測定には、TOPCOM社製の輝度計(BM−7A)を使用した。
得られた電流・電圧および輝度を図14に示す。非晶質の薄膜からなる電子注入層を有する有機EL素子402では約15V以上で発光が確認された。一方、電子注入層を有しない有機EL素子403では、40V印加しても電流はほとんど流れず、発光しなかった。このことから、非晶質の薄膜が優れた電子注入特性を有することがわかる。なお、有機EL素子402において、印加電圧15V以下でも電流が流れているが、発光を伴わないことから、リークによるものと考えられる。
(非晶質の薄膜の特性評価)
上記素子を作製した条件と同じスパッタ条件で石英基板とニッケル板上に非晶質の薄膜を成膜した。ただし、分析を容易にするため上記素子を作製した条件とは成膜時間を変え、膜厚を厚くして分析した。得られたサンプルの膜厚は202nmであった。
まず、石英基板に成膜したサンプルについて、前述の(4)式を用いて、薄膜の光吸収係数を測定した。図15から、光子エネルギーが約4.6eVの付近で、光吸収が認められる。前述のように、非晶質C12A7エレクトライドのバイポーラロンは、4.6eVの光子エネルギー付近で光吸収を示す。従って、図15の結果は、薄膜中にバイポーラロンを有することを示唆するものである。また、4.6eVの位置の光吸収係数に対する、3.3eVの位置の光吸収係数の比は、0.35以下であった。
次に、ニッケル基板に成膜したサンプルについて、EPMAで組成を分析した。チャージアップを避けるためカーボンを50nm成膜した。また、下地ニッケルの影響を避けるため、加速電圧を5kVとした。得られた薄膜は、EPMA分析より、Ca、Al、Oを含み、Al/Caのモル比は1.76であった。
(例6)
以下の方法により、有機EL素子を作製し、その特性を評価した。有機EL素子は、ガラス基板上に、ボトム電極として陰極を配置し、その上に順に、電子注入層、電子輸送層兼発光層、ホール輸送層、ホール注入層およびトップ電極としての陽極を配置し、陰極側から光を取り出す構造とした。
(サンプルの作製)
以下の手順で、有機EL素子404および405を作製した。
まず、基板として、縦30mm×横30mmのジオマテック社製Flat−ITO基板を用意した。この基板は、無アルカリガラス上に厚み150nmのITOが成膜してある。
ITO上に幅1mmにカットしたカプトンテープを張り付け、エッチング液に2分間浸漬し、カプトンテープを張り付けていない部分のITOを除去した。エッチング液はFeCl・6HOとイオン交換水を重量で1:1とした水溶液を作製し、さらに水溶液と同重量の濃塩酸を加えたものを使用した。エッチング液の温度は45℃とした。
その後、カプトンテープを取り除き、中性洗剤で5分間超音波洗浄し、純水で5分間の超音波洗浄を2回実施した。さらに、アセトン中で5分間超音波洗浄し、IPA中で5分間の超音波洗浄を2回実施した。最後に、煮沸したIPA中に浸漬し、ゆっくり取り出した。
この幅1mmのITO(陰極420)が配線されたガラス基板410を、スパッタ製膜室と真空蒸着室とグローブボックスが連結した装置に導入し、約3×10−5Paまで排気した。その後、陰極420の上に、電子注入層430として、非晶質の薄膜を成膜した。
非晶質の薄膜は、電子密度が1.4×1021cm−3の結晶質C12A7エレクトライドを直径2インチのターゲットとし、スパッタリング法により成膜した。スパッタリング成膜時の雰囲気は、約4.3×10−7Pa未満の酸素分圧とした。スパッタガスはArとし、導入ガスの圧力は、0.5Paとした。サンプルとターゲットの間隔(TS距離)は10cmとした。また、RF電源の出力は50Wとした。なお、本成膜の前に、Arガスを用いてプレスパッタリング処理を実施した。ガラス基板410は積極的に加熱しなかった。
得られた非晶質の薄膜の厚さは、約5nmである。
その後、この電子注入層430(および陰極420)付きのガラス基板410を同装置内の真空蒸着室に導入し、電子輸送層兼発光層440としてのAlq3層を成膜した。Alq3層の厚さは、約50nmである。次に、ホール輸送層450として、α−NPD層を成膜した。α−NPD層の厚さは、約50nmである。さらに、ホール注入層460としてMoOを製膜した。MoO層の厚さは、約0.8nmである。
なお、Alq3層、α−NPD層およびMoO層は、電子注入層430を完全に覆うように、メタルマスクを用いて、20mm×20mmの領域として形成した。蒸着時の真空度は約8×10−6Paであった。
次に、幅1mmの陽極470を、陰極と直交するように蒸着した。すなわち、陰極と陽極の重複する1mm×1mmの領域が電圧印加により通電される領域である。陽極470として、銀を厚み80nm成膜した。
以上の工程を経て、ガラス基板410、ITOからなる陰極420、非晶質の薄膜からなる電子注入層430、Alq3からなる電子輸送層兼発光層440、α−NPDからなるホール輸送層450、MoOからなるホール注入層460、銀からなる陽極470を備える有機EL素子404を作製した。
また、次に、比較例として、電子注入層430を有しないこと以外は同様に有機EL素子405を作製した。
(有機EL素子の特性評価)
次に、前述の有機EL素子404および405を用いて、電圧および輝度を測定した。測定は、窒素パージしたグローブボックス内において、各有機EL素子404または405の陰極420と陽極470の間に所定の値の電圧を印加した際に得られる輝度を測定することにより実施した。輝度測定には、TOPCOM社製の輝度計(BM−7A)を使用した。
得られた電圧および輝度を図16に示す。非晶質の薄膜からなる電子注入層を有する有機EL素子404では約6.8V以上で発光が確認され、約12Vで2000cd/mの発光が確認された。一方、電子注入層を有しない有機EL素子405では、約7.5V以上で発光が確認され、約9.4Vで60cd/mであった。両者の違いは、電子注入層の有無であることから、非晶質の薄膜によってAlq3への電子注入が増加し、発光特性が改善することが確認できた。
(例7)
以下の方法により、有機EL素子を作製し、その特性を評価した。有機EL素子は、ガラス基板上に、ボトム電極として陰極を配置し、その上に順に、電子注入層、電子輸送層兼発光層、ホール輸送層、ホール注入層および
トップ電極としての陽極を配置し、陽極側から光を取り出す構造とした。
(サンプルの作製)
以下の手順で、有機EL素子406および407を作製した。
基板として、縦30mm×横30mm×厚み0.7mmの無アルカリガラス基板を用意した。この基板を、中性洗剤で5分間超音波洗浄し、純水で5分間の超音波洗浄を2回実施した。さらに、アセトン中で5分間超音波洗浄し、IPA中で5分間の超音波洗浄を2回実施した。最後に、煮沸したIPA中に浸漬し、ゆっくり取り出した。
洗浄後のガラス基板410を、スパッタ製膜室と真空蒸着室とグローブボックスが連結した装置に導入し、約3×10−5Paまで排気した。次に、ガラス基板410を真空蒸着室に導入した。
その後、メタルマスクを用いて、ガラス基板410に陰極420として幅1mmのアルミニウムを真空蒸着法にて厚み80nm成膜した。
次に、陰極420付きのガラス基板410をスパッタ製膜室に導入し、陰極420の上に、電子注入層430として、非晶質の薄膜を成膜した。
非晶質の薄膜は、電子密度が1.4×1021cm−3の結晶質C12A7エレクトライドを直径2インチのターゲットとし、スパッタリング法により成膜した。スパッタリング成膜時の雰囲気は、約4.3×10−7Pa未満の酸素分圧とした。スパッタガスはArとし、導入ガスの圧力は、0.5Paとした。サンプルとターゲットの間隔(TS距離)は10cmとした。また、RF電源の出力は50Wとした。なお、本成膜の前に、Arガスを用いてプレスパッタリング処理を実施した。ガラス基板410は積極的に加熱しなかった。
得られた非晶質の薄膜の厚さは、約2nmである。
その後、この電子注入層430(および陰極420)付きのガラス基板410を同装置内の真空蒸着室に導入し、電子輸送層兼発光層440としてのAlq3層を成膜した。Alq3層の厚さは、約50nmである。次に、ホール輸送層450として、α−NPD層を成膜した。α−NPD層の厚さは、約50nmである。さらに、ホール注入層460としてMoOを製膜した。MoO層の厚さは、約0.8nmである。
なお、Alq3層、α−NPD層およびMoO層は、電子注入層430を完全に覆うように、メタルマスクを用いて、20mm×20mmの領域として形成した。蒸着時の真空度は約8×10−6Paであった。
次に、幅1mmの陽極470を、陰極と直交するように蒸着した。すなわち、陰極と陽極の重複する1mm×1mmの領域が電圧印加により通電される領域である。陽極470として、金を厚み5nm成膜した。
以上の工程を経て、ガラス基板410、アルミニウムからなる陰極420、非晶質の薄膜からなる電子注入層430、Alq3からなる電子輸送層兼発光層440、α−NPDからなるホール輸送層450、MoOからなるホール注入層460、金からなる陽極470を備える有機EL素子406を作製した。
また、次に、比較例として、電子注入層430としてLiFを用いたこと以外は同様に有機EL素子407を作製した。LiFは真空蒸着法にて厚み0.5nm成膜した。
(有機EL素子の特性評価)
次に、前述の有機EL素子406および407を用いて、電圧および輝度を測定した。測定は、窒素パージしたグローブボックス内において、各有機EL素子406または407の陰極420と陽極470の間に所定の値の電圧を印加した際に得られる輝度を測定することにより実施した。輝度測定には、TOPCOM社製の輝度計(BM−7A)を使用した。
得られた電圧および輝度を図17に示す。非晶質の薄膜からなる電子注入層を有する有機EL素子406では約10Vで1600cd/mの発光が確認された。一方、電子注入層にLiFを用いた有機EL素子407では、約10Vで600cd/mであった。両者の違いは、電子注入層であることから、非晶質の薄膜によってAlq3への電子注入が増加し、発光特性が改善することが確認できた。
(例8)
以下の方法により、有機EL素子を作製し、その特性を評価した。有機EL素子は、ガラス基板上に、ボトム電極として陰極を配置し、その上に順に、電子注入層、電子輸送層、発光層、ホール輸送層、ホール注入層および
トップ電極としての陽極を配置し、陽極側から光を取り出す構造とした。例7が電子輸送層兼発光層として厚み50nmのAlq3としたのに対し、この例8では電子輸送層として厚み100nmのZnO−SiO、発光層として厚み30nmのAlq3とした点が異なり、そのほかは同様に作製した。
すなわち、例8と同様にして、ガラス基板上に、陰極および非晶質の薄膜からなる電子注入層を形成した。
次に、ターゲットをZnO−SiOに変更し、電子注入層の上に、電子輸送層として、ZnO−SiOの薄膜を厚みが約100nmとなるように成膜した。
その後、これらの成膜を施したガラス基板を同装置内の真空蒸着室に導入し、発光層としてAlq3層を成膜した。Alq3層の厚さは、約30nmである。
次に、ホール輸送層として、α−NPD層を成膜した。α−NPD層の厚さは、約50nmである。
さらに、ホール注入層としてMoOを製膜した。MoO層の厚さは、約0.8nmである。
なお、Alq3層、α−NPD層およびMoO層は、電子注入層を完全に覆うように、メタルマスクを用いて、20mm×20mmの領域として形成した。蒸着時の真空度は約8×10−6Paであった。
次に、幅1mmの陽極を、陰極と直交するように蒸着した。すなわち、陰極と陽極の重複する1mm×1mmの領域が電圧印加により通電される領域である。陽極として、金を厚み5nm成膜した。
以上の工程を経て、ガラス基板、アルミニウムからなる陰極、非晶質の薄膜からなる電子注入層、ZnO−SiOからなる電子輸送層、Alq3からなる発光層、α−NPDからなるホール輸送層、MoOからなるホール注入層、金からなる陽極を備える有機EL素子408を作製した。
(有機EL素子の特性評価)
次に、有機EL素子408について、直流電圧を印加し、電流および輝度を測定した。測定は、窒素パージしたグローブボックス内において、各有機EL素子の陰極と陽極の間に所定の値の電圧を印加した際に得られる輝度および電流を測定することにより実施した。輝度測定には、TOPCOM社製の輝度計(BM−7A)を使用した。電子輸送層にZnO−SiOを用いた有機EL素子408は電子輸送層にAlq3を用いた場合に比べ、単位電流あたりの輝度が高く、すなわち電流効率(cd/A)が改善することが確認された。
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子等に適用することができる。有機エレクトロルミネッセンス素子は、複数の発光層を中間層で接続し積層したタンデム構造でもよい。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、表示装置の表示素子として用いることができる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を有する表示装置は、様々な電子機器に適用することができる。例えば、テレビ受像機等の表示機器、デジタルカメラ等の撮像機器、コンピュータ等のデジタル情報処理機器、携帯電話等の携帯端末装置などの表示部に、表示装置として組み込むことができる。また、車両内の表示部又はカーナビゲーション装置の表示部などに、表示装置として組み込むことができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた表示装置は、建築構造物又は移動体(車両、航空機もしくは船舶等)の、窓、扉、天井、床、壁、仕切り等に備えられていてもよい。また、広告用表示装置として、公共交通機関車両、街中の広告板、広告塔などに備えられていてもよい。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、照明装置の光源や表示装置の光源として用いてもよい。
本願は、2012年6月20日に出願した日本国特許出願2012−139197号、2012年7月11日に出願した日本国特許出願2012−155830号、2012年9月28日に出願した日本国特許出願2012−217351号、2012年12月7日に出願した日本国特許出願2012−267752号、2013年2月27日に出願した日本国特許出願2013−037852号、および2013年3月29日に出願した日本国特許出願2013−071154号に基づく優先権を主張するものであり、これらの日本国出願の全内容を本願の参照として援用する。
100 有機エレクトロルミネッセンス素子
110 基板
120 陽極
130 ホール注入層
140 ホール輸送層
150 発光層
160 電子輸送層
170 電子注入層
180 陰極
220 溶媒(非晶質C12A7)
230 ケージ
240 電子(溶質)
250 バイポーラロン
300 サンプル
310 ガラス基板
320 金属アルミニウム層
330 電子注入層
340 電子輸送層
350 評価用電極
400 有機エレクトロルミネッセンス素子
410 ガラス基板
420 陰極
430 電子注入層
440 電子輸送層兼発光層
450 ホール輸送層
460 ホール注入層
470 陽極

Claims (3)

  1. 有機エレクトロルミネッセンス素子を有する発光装置であって、
    当該発光装置は、表示装置または照明装置であり、
    前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、
    陽極、発光層、および陰極をこの順に有し、
    前記発光層と前記陰極の間には、電子注入層が配置され、
    該電子注入層は、非晶質C12A7エレクトライドで構成され
    前記発光層と前記電子注入層の間には、電子輸送層が配置され、
    前記電子輸送層は、アモルファスであり、ZnO−SiO 、In −SiO 、SnO −SiO 、In−Ga−Zn−O、またはIn−Zn−Oで構成されることを特徴とする発光装置。
  2. 有機エレクトロルミネッセンス素子を有する発光装置の製造方法であって、
    前記発光装置は、表示装置または照明装置であり、
    前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極、発光層、および陰極をこの順に有し、前記発光層と前記陰極の間に、電子注入層が配置され、
    電子密度が2.0×1018cm−3〜2.3×1021cm−3の結晶質C12A7エレクトライドのターゲットであって、直径3インチ以上の面積を有するターゲットを用いて、0.1Pa未満の酸素分圧の雰囲気下でスパッタリング法により成膜することにより、非晶質エレクトライドの薄膜で構成される電子注入層を形成することを特徴とする製造方法。
  3. 有機エレクトロルミネッセンス素子を有する発光装置であって、
    当該発光装置は、表示装置または照明装置であり、
    前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極、発光層、および陰極をこの順に有し、
    前記発光層と前記陰極の間には、電子注入層が配置され、
    該電子注入層は、カルシウム、アルミニウム、および酸素を含む非晶質固体物質のエレクトライドの薄膜で構成され
    前記発光層と前記電子注入層の間には、電子輸送層が配置され、
    前記電子輸送層は、アモルファスであり、ZnO−SiO 、In −SiO 、SnO −SiO 、In−Ga−Zn−O、またはIn−Zn−Oで構成されることを特徴とする発光装置。
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