実施形態の磁気共鳴イメージング方法は、所定の撮像対象となる被検体のボリュームである撮像対象ボリュームから磁気共鳴イメージングの感度マッププレスキャンデータを取得する。そして、撮像対象ボリュームにおける送信RF磁場不均一性マップ及び受信RF磁場不均一性マップを生成するために、取得された磁気共鳴イメージングの感度マッププレスキャンデータを不均一性マップの3次元幾何学的モデルに基づいて分解する。そして、送信RF磁場不均一性マップ及び受信RF磁場不均一性マップの少なくとも一方を用いて、撮像対象ボリュームを示す磁気共鳴イメージングの診断用スキャンの画像データを対象として輝度補正を行なう。
換言すると、実施形態の磁気共鳴イメージング方法を実行する磁気共鳴イメージングシステムは、磁気共鳴イメージングの感度マッププレスキャンデータから得られた情報に基づいて、撮像対象ボリュームを示す磁気共鳴イメージングの診断用スキャンの画像データを対象として、送信RF磁場不均一性を低減した輝度補正を行なう。ここで、実施形態の磁気共鳴イメージングシステムは、撮像対象ボリュームの部位に応じて、送信RF磁場不均一性の低減方法を変更する。具体的には、実施形態の磁気共鳴イメージングシステムは、撮像対象ボリュームの部位の3次元幾何学的モデルに基づいて、送信RF磁場不均一性の低減方法を変更する。従来では、ACによる感度マップを用いて、本撮像で撮像された画像の感度補正を行なっていたのに対し、実施形態の磁気共鳴イメージング方法は、WBCによるMAPを用いて、本撮像で撮像された画像のB1ムラに起因するアーチファクトを低減するための輝度補正を行なう。以下の実施形態で説明する工程は、システムオペレータが既存の再構成輝度補正アルゴリズムのために使用するものと類似のGUIを、オペレータが経験するように構築されたものである。基本的に、同種のプレスキャンおよびプレスキャンプロトコルを、既存の輝度補正の場合と同程度に使用できる。
ここで説明する工程は、2つの補正部分を含む。一方の部分は、不均一性のB1 RXによる影響を減少させ、他方の部分は、不均一性のB1 TXによる影響を減少させる。従来の既存の補正における物理的目的は、受信用のアレイコイル(AC)の設計のみから、不均一性を減少させることであった。ACは、電磁気学のビオサバールの法則から生じる感度パターンを有し、これらのコイルは、通常、空間的均一性が下がるかわりに局所SNRを上げるように設計される。
以下の実施形態で説明する工程では、病状による画像の特徴を変えることなく、TX RF磁場及びRX RF磁場の不均一性に起因する主なシェーディングの影響が除去される。通常の、すでに入手可能となっているプレスキャンによる感度マップの画像(MAP画像)を使用するため、新たなプレスキャンは不要である。
説明した実施形態によれば、「B1 TX及びRXの輝度補正」は、以下の工程によって成し遂げられるものである。
●頭部または腹部等の一般的な解剖学的組織タイプとして形状モデル(3次元幾何学的モデル)を選択する工程。3.0TのMRIシステムの場合、TXおよびRXの総パターンは、同様に形成されていると見なし、これによって、1つのモデルに適合させた1つのMAP画像は、ボディコイル(body coil)のTX(送信RF磁場)及びボディコイルのRX(受信RF磁場)の両方の中央部におけるシェーディングの推定値を得るのに使用できる。
●(様々な形で一般的に既に行われているように)大型のWBCを用いて特定の被検体のMAPプレスキャン(感度マップスキャン)のデータを収集する工程。
●選択されたモデルに対する幾何学的形状パラメータを、(分離されたTX及びRXの影響を含む)MAPプレスキャン(感度マップスキャン)のデータに適合させることで、この特定の被検体(撮像される被検体)のための合併TX/RX近似補正MAPを提供する工程。
●補正される対象画像に新しいTX補正を適用する工程。
●合併TX/RX近似補正MAPを用いてボディコイルのRXパターンを補正し、その後、アレイコイルRX補正を(例えば、従来の補正アルゴリズムを使って)適用する工程。
このB1輝度補正工程によって、以下のような多くの改良が可能になる。
●ハードウェア交換が全く不要となり、追加のMAPプレスキャン(感度マップスキャン)が全く不要となる。
●複数の供給源から(例えば、WBCのRF TX被検体パターンから、WBCのRF RXパターンから、ACの形状パターンから)、基本的な中央部のシェーディングが除去される。
●病変診断用の本撮像スキャンによる画像の解剖学的特徴が、変更されない。
●特定の被検体寸法、形状、スキャナの位置、脂肪の量、導電性体液の量等を含む多くの係数が調節される。
●基本的な別個のTXによる影響(送信RF磁場による影響)を、多種多様なMRIパルスシーケンスに対してサポート可能である。
●未補正の頭部における25%を超える輝度誤差(腹部ではさらに大きい)は、約10%未満の残留誤差に低減できる。
●未補正頭部では、ハードウェアB1シミングなしで25%を超える(身体ではさらに大きい)輝度誤差を、約10%を下回る残留誤差に低減できる。もちろん、ハードウェアB1シミングを使った場合、これらの誤差は、若干下げられることになる。
MRIにおいて、NMR(Nuclear Magnetic Resonance、核磁気共鳴)によるRF応答信号は、被検体組織を貫通するRF磁場を送出することによって生成される。受信されるRF磁場(すなわち、より正確には、電磁場の振動磁場成分)は、核磁気共鳴現象により生じて、撮像される組織内から出る。かかる信号は、検出可能な磁気共鳴物体、又は、磁気共鳴物体の特性(「磁気共鳴パラメータ」と呼ぶことができる)の測定値と解釈される。磁場強度の高い磁場(例えば、3.0T)では、貫通効果または波長障害効果によって、この磁場における人体又は頭部等の人体の部分における良好な空間的均一性が妨げられる。再構成画像は、検出されたRF信号に依存し、従って、再構成画像の輝度は、送信RF磁場および受信RF磁場の両方の輝度変動によって局所的に影響されることとなる。
従って、未補正の画像は、撮像された組織の輝度を変える(貫通および波長の回折効果等の)様々な因子を有する。そのような疑似輝度効果は、画像の使用者にとって関心事ではない。更に悪いことには、かかる主要な関心事ではない影響による疑似画像変化は、画像診断を誤る可能性を有する。RF信号の不均一性に起因して変化した信号の部位は、画像診断で有用な局所的なMR信号の変化の検出を曖昧としたり、関心事である磁気共鳴パラメータの局所変化と間違って解釈されたりする可能性がある。
以下で説明するRF輝度補正工程では、磁気共鳴画像からRF空間的不均一性の影響が著しく減少される。
まず、従来の低解像度のMAPスキャン(感度マップスキャン)が、WBC(全身コイル)等の既知のコイルおよび既知のパルスシーケンスのパラメータによって実行される。そして、このMAPスキャン(感度マップスキャン)の画像(以下、MAP画像とも記載する)は、形状モデルに適合される。そして、適合する形状のMAP画像のピクセル値は、RX(受信RF磁場)の影響に起因する不均一性成分と、TX(送信RF磁場)の影響に起因する不均一性成分とに分解される。
TX及びRXの空間的マップが類似である(例えば、両マップに同一形状モデルを使用する)ことを前提とすると、MAPスキャン(感度マップスキャン)を利用してWBCのおけるRF−RX MAP(受信RF磁場の感度マップ)及びRF−TX MAP(送信RF磁場の感度マップ)の両方の生成が可能になる。
これらは、本実施形態の改良型RX均一性補正マップの生成に使用され、かつ、診断用MRIデータ収集用スキャン(本撮像スキャン)により再構成されたMRI画像を補正するために好適な新規のTX補正マップを生成するために使用される。取得された1つのMAP(感度マップ)を、使用可能なTXおよびRXの補正マップ成分に分解することは、重要なステップであると考えられる。かかるステップは、MAPスキャン(感度マップスキャン)により取得されたデータを、シンプルであり、一般化されており、かつ、滑らかに変化する3D形状モデルに適合させて、例えば、振幅値、3D形状モデルの形状の幅及び中央パラメータを調節することによって、頭部の強められた中央RFの強度、または腹部の弱められた中央RFの強度等といった基本的な不均一性モデルパラメータを抽出するような重要なステップである。
簡潔に記載すると、基本的な幾何学的形状は、広域ガウス分布プラス均一定数(a broad Gaussian plus a uniform constant)等のように、WBCの感度マップボリュームの画像輝度を適合させる。したがって、推定値は、画像輝度を2つの成分、TX影響成分及びRX影響成分に分解する方法によって生成される。
プレスキャンによるMAP(感度マップ)から、又は、感度マップに一般的に適合する形状から、WBC MAP(WBCを用いた感度マップ)のTX影響又はRX影響の一方(又は両方)の推定値が算出できる。WBCのRX画像不均一性影響は、B1 RX磁場マップ(受信RF磁場感度マップ)自体と同じであるとみなせる(単純な線形関係が両者間に存在する)ので、算出した推定値は、B1 RX磁場マップの推定値を提供する。そして、B1 RXマップは、B1 TXマップとほぼ同一であると見なすことができ、B1 RXマップは、B1 TXマップ(送信RF磁場感度マップ)の推定値として使用できると推定できる。
この新しく推定されたTXマップ又はRXマップは、受信コイル感度における比率補正においてWBCマップの補正として使用される。
しかも、TXマップ又はRXマップの推定値は、対象画像を得るために使用されるMRIシーケンスに対する信号強度モデルとともに使用される。このモデルは、TX B1マップの係数によって特定される理想角度から偏向するRFパルス角を有する代表的な組織パラメータに対するブロッホ方程式によるシミュレーションを実施ことに類似する。このマップは、完全ではないが、最初の試験で、多くの実際に用いられている臨床用のパルスシーケンスから少なくとも多少TX誤差が除去される。補正係数マップが生成されて、乗算用の係数として使用される。
これらのRF磁場の感度マップ及び当該感度マップから中間的に計算される他の計算値は、多くの異なるスライス形状のうちのどれに対しても生成されるものである。中間的な計算に対してはボクセルサイズを選択できる。簡便な形状を選択すると、計算値が迅速かつ簡単に得られる。MAPの解像度(又は、WBCより小さいアレイ)による計算を行うことが、アルゴリズムを加速する方法といえる。等方性であるべきボリュームを再サンプリングすると、適合ステップからいくつかの形状計算を除去できる。アルゴリズムフローのある時点で、感度マップのピクセル形状から対象画像のピクセル形状へ変換が必要になる。これらの形状変換は、多くのステップのうちのどこで行われてもよい。変換には、メモリサイズや格納、計算するピクセル数(計算時間)、幾つかの形状計算の複雑性、解像度および補間誤差の間のトレードオフを伴う。これらのステップのうちの幾つかは、実行する順序を変更でき、同様にサイズの変更も可能である。本明細書の説明に使用される形状操作の順序は、妥当であるが必須ではなく、また、最善であるとは限らない。
もちろん、MRI画像の空間的に依存する変形は、また、そのような変形誤差が、輝度誤差または空間的変形として顕在化していようといまいと、主要磁場(静磁場)の不完全度、又は、傾斜磁場からも生じる。本明細書に記載の輝度補正は、RF磁場(TXおよびRXの両方)に関係していて、傾斜磁場か主要磁場(静磁場)のどちらかに起因する不均一性には関係していない。
補正されるべき次の主なスキャン、すなわち診断スキャン(本撮像用のスキャン)を本明細書では時として「対象スキャン」と呼ぶ。かかるスキャンの結果は、主要な関心事であり、補正工程によって変換される対象(対象画像)である。
図2は、輝度補正工程の実施形態を例示する概略図である。図2は、AC受信画像(アレイコイルが受信したデータにより再構成された本撮像のMRI画像)のTX影響及びRX影響の両方を補正するための工程を概略的に描写した図である。
図2に示す200は、後段の本撮像で撮像される対象画像のボリュームを少なくとも含むボリュームを対象としてMAPスキャン収集(感度マップスキャン収集)を行うことで収集されたデータである。MAPスキャン収集(感度マップスキャン収集)により、被検体(すなわち、被検体の関心領域の解剖学的領域)のWBC−RX画像(図中の「MAP WBCボリューム」)及びAC−RX画像(図中の「MAP ACボリューム」)の両方を含むデータが収集される。感度マッププレスキャンでは、連続的にTR間隔ごとにWBCとACとによるデータ収集が交互に行なわれる。かかる収集のために妥当なMRIパラメータには、200ミリ秒のTR間隔、2〜4ミリ秒のTE間隔、従来のシーケンスタイプ(フィールドエコー、2DFTマルチスライス)、20〜40°のフリップ角度、空間的解像度約1cm、スライス数=20〜45が含まれる。しかし、これらのパラメータまたは選択肢のうちのどれも必須ではない。それらは、単に例示的なものである。パラレルイメージング再構成(SPEEDER、SENSE等)のように他の目的で必要とされた場合に、不均一性補正が適用される否かに関わらず、MAPスキャン(感度マップスキャン)は、別の方法で既に収集されたものであっても良い。
ACボリューム画像(ACにより収集されたボリューム、図中の「MAP ACボリューム」)は、特に、従来技術としてよく知られているように、例えば、Sum−Of−Square組合せアルゴリズム(図中の「S.O.S」)を使って、多重コイルエレメント、又は、多重受信チャンネルの信号から合成されるものであってもよい。
オペレータは、関心領域の一般的な組織(例えば、頭部)を指示できる。或いは、関心領域の指示は、使用されているアレイコイル等の情報から別の方法で推定される場合もある。または、関心領域の情報は、RF不均一性補正が実行されようとしているか否かに関わらず、既にSAR(比吸収率)計算等の他の目的のために特定されている場合もある。
解剖学的組織名称を使用して、予測されるRF不均一性パターンの全体的な構造に対して一般的な3D形状モデルを選択する。3.0Tでは、RF−TX不均一性パターン(送信RF磁場不均一性パターン)及びRF−RX不均一性パターン(受信RF磁場不均一性パターン)の両方で、同じ基本的な形状モデルを使用するという簡素化のための前提が設定される。解剖学的組織名称は、また、例えば、3.0Tにおける解剖学的組織にとっては通常であるT1およびT2等の名目上の組織パラメータが選択されることを利用することができる。
図2に示す202は、非線形最適化などのモデルパラメータを適合する適合工程が実行されたことで得られる「収集されたWBC MAPに適合された3D形状モデル」である。すなわち、図2に示す202は、3D形状モデルがWBC MAPスキャンデータ(収集されたMAP WBC)に適合するように構成される適合工程(好ましくは、最適化工程)が実行されたことで得られるものである。最適の適合が実現されるような値、又は、適合される形状モデルと特定の被検体(撮像対象の被検体)の「WBC−RX MAPスキャンデータ」との間に最小の誤差偏差がもたらされるような値を得るために、形状モデルの様々なパラメータを選択することが望ましい。
一例として、頭部撮像のための1つの好適なモデルは、空間的定数及び3Dガウス分布形状として指定される付加的中央輝度等のパラメータを含むことがあるであろう。直交3軸に沿ったガウス分布形状の幅及び中心位置は、予測される形状を描く。このような一例には、約8つの自由パラメータが挙げられる。それらのパラメータは、以下のものであっても良い。
(1)体積全体にわたる基本的な均一輝度、
(2)中央の強化されたピークを実現するための付加的輝度、
(3〜5)3軸に沿った空間的依存の付加ピークの幅、
(6〜8)3軸に沿ったピークの中心位置座標
ただし、同じ形状をより少ないパラメータで描くこともできる。例えば、中央の形状は、標準化輝度または漸近輝度に対して相対輝度として与えられても良い。この場合、前述の最初の2つのパラメータを単一パラメータ(プラス標準化ステップ)によって置き換えることができるであろう。
この一例では、202の適合工程によって、8つの形状モデルパラメータに対する値が出力される。202の適合工程は、ネルダーミード最適化アルゴリズム等のアルゴリズムを用いて実行するとよい。そのようなアルゴリズムの簡便な解説および実行については、「Numerical Recipes in C(C言語による数値計算のレシピ)」(W. H. Press, B. P. Flannery, S. A. Teukoisky, W. T. Vetterling著、Cambridge University Press, 1988出版)に詳しい。多数の最適化および適合アルゴリズムが知られているが、特定のアルゴリズムの選択が、必須であるとは考えられていない。
図2に示す204は、TX及びRXの依存性を計算し逆数にすることで得られる「推定されたボリュームのTX及びRX MAPの不均一性モデル」である。図2に示す204では、MAPスキャン(感度マップスキャン)において予定されたパラメータと、被検体に対して予測される予定された磁気共鳴(MR)パラメータとに基づいて、MAPスキャンの輝度が、TX(送信RF磁場)及びRX(受信RF磁場)の局所的不均一性に依存することがどのように予測されるかの推測を構築できる。ここでは、TX(送信RF磁場)及びRX(受信RF磁場)が類似の形状パターンを表すという簡素化のための前提を再び使用できる。1つの空間的分布形状をRXおよびTXの両方に使用できる。すなわち、図2に示す204は、WBC MAPスキャンデータに適合された3D形状モデルに基づいて、TX及びRXの依存性を計算し逆数にすることで、TX MAPボリューム及びRX MAPボリュームの不均一性モデル(送信RF磁場不均一性マップ及び受信RF磁場不均一性マップ)を推定した成果物である。
このステップでの重要な要素は、TX及びRXの影響の分解を行うことができ、それによって、MAPスキャン(感度マップスキャン)における所定量の不均一性を2つの部分に割り当てることができ、かつ、2つの部分のそれぞれの大きさを決めることができるようになるということである。これを実行する厳密な方法は必須ではない。
一例として、読み取り(Readout)時間中に(どこかで)輝度が横磁化(transverse magnetization)の量に対応するフィールドエコー(FE)パルスシーケンスに対して輝度方程式を与えることができると考えよう。MAPスキャン(感度マップスキャン)がそのようなフィールドエコースキャンであるとき、予定されたフリップ角度の(1+x)倍である交番核磁気共鳴励磁フリップ角度(alternate NMR excitation flip angle)を使用して、TX不均一性による信号輝度を生成させることができる。ただし、「x」は相対TX RF不均一性(相対的送信RF磁場不均一性)である。感度マップスキャンシーケンスのTX係数に対する信号輝度「T」の一次導関数をこの方法で推定できる。RX用コイル(受信コイル)での観測信号は、TX及びRXの影響の両方に依存するので、総信号依存性(TX及びRXの両方を含む)は、約「1+T」の「x」に関する導関数を有すると推定できる。このことから、いかなる任意の位置のRF不均一性「X」も、感度マップスキャンの(適切な組織基線信号に対する)局所信号偏差の約(1/(1+T))倍であると推定できる。
適合された信号(ステップ202の出力)に分解を適用し、RF磁場MAPを推定することが望ましい。また、例えば、基線に合わせて標準化したWBC画像に、分解を直接的に適用することも妥当と思われる。このような変法は、疑似的局所構造を生み出す可能性があるが、この疑似的局所構造は、例えば、フィルタリング、マスキング、補外法等の画像処理ステップによって除去されるものであろう。
別の方法もまた、適合された感度マップスキャンの信号をTX成分及びRX成分に分解する正確な方法を決定するために使用可能であろう。離散対の表を生成することも可能であろう。多項式表現を適合させて、その多項式表現の反転すること(逆数を算出すること)ができるであろう。信号依存性のために、および信号依存性の反転のために解析公式が発見される可能性もあるであろう。「X」を相対画像輝度に関連付けるための明確な反転の表現に対して、前方依存性方程式プラスルートソルバを使用することが可能である。あるいは、公知のパルスシーケンス信号方程式等を使用する代わりに、ブロッホ方程式の直接シミュレーションを実行することも可能であろう。
いずれの場合も、MAPスキャン(感度マップスキャン)及びMAPスキャンにおける既知の特性から、MAPスキャンの局所信号不均一性に機能的に関連するRF磁場不均一性の影響を推定する方法が得られる。かかる推定によって、全ての感度マップスキャンの不均一性を、TX RF不均一性(送信RF磁場不均一性)の部分及びRX RF不均一性(受信RF磁場不均一性)の部分の両方に効果的に分解することが可能になる。
図2に示す200、202及び204が得られた後、対象画像の撮像(本撮像)が行なわれる。そして、図2に示す206は、ステップ204の出力であるボリュームマップ(送信RF磁場不均一性マップ及び受信RF磁場不均一性マップ)からピクセル部位の値を抽出することによって生成されたRF磁場の不均一性マップスライスである。このスライスの形状は、対象スライスの形状(対象画像が撮像されたスライスと同一位置のスライス)と同一であることが望ましい。このステップでの基本的な数学的作業は、本質的に補間法である。すなわち、図2に示す206は、TX MAPボリューム又はRX MAPボリュームにおいて対象画像が撮像されたスライス(図中の212を参照)のピクセル値を求めることで生成されたTX MAPスライス(対象画像が撮像されたスライスのRF送信磁場の感度マップ)又はRX MAPスライス(対象画像が撮像されたスライスのRF受信磁場の感度マップ)である。このステップにおける基本的な数値演算は、前の結果が離散画像である場合、補間法であってもよいし、或いは、前の204におけるMAPボリュームが、パラメトリック値および汎関数形式として表示されている場合、ピクセル位置における閉形式関数の評価であってもよい。
自明であるが、202および204の取得処理は、補正全体に対して一回で実行できる。実際、感度マップ収集で202および204の取得処理を一回実行すれば、多様な別個の対象収集(同一被検体を異なる撮像法で本撮像した対象画像)を十分補正できる。しかし、206の取得処理は、少なくとも補正される対象収集(同一被検体を異なる撮像法で本撮像した対象画像)それぞれに対して別個の形状を有するスライスごとに実行されることになる。
図2に示す210は、RX補正マップ(RX補正係数スライス)である。210は以下の2つの項目を含む。「(1)分散されたピクセル値のボリュームの形状とは異なり、パラメータに関するモデルの形状であるといえるRX不均一性マップスライス(RX補正係数スライス:受信RF磁場の感度マップスライス)」、及び「(2)RX補正マップによりフィルタリングされてマスキング等が実行される可能性がある補正スキャン(感度マップスキャン)により生成されたWBC画像とAC画像との比率」である。最も基本的な場合、このRX補正マップは、WBCマップピクセル値を取得し、取得したWBCマップピクセル値を、ACマップピクセル値とTXマップ値又はACマップピクセル値とRX RFマップ値とを乗算した結果により除算することで得られるピクセルごとの結果(ピクセルワイズ成果物)である。なお、WBCマップピクセル値は、図中の214に示す『「MAP WBCボリューム」から対象画像が撮像されたスライスと同一位置のスライスをリスライスすることで生成された「WBCマップスライス」』のピクセル値である。また、ACマップピクセル値は、図中の216に示す『「MAP ACボリューム」から対象画像が撮像されたスライスと同一位置のスライスをリスライスすることで生成された「ACマップスライス」』のピクセル値である。また、例えば、ピクセルワイズ成果物は、図2の210に示す「WBC/(AC*RX)」である。この基本的な成果物は、オペレータによって、又は、フィルタリングによって、又は、極端な補正値を課すこと等によって供給される補正率係数に基づいて補正の程度を変更することで、更なる修正が可能であろう。
図2に示す208は、生成されたTX補正マップ(TX補正係数スライス)である。TX補正マップは、ステップ204の出力である「TX RF不均一性マップ(受信RF磁場不均一性マップ)」を使用することによって生成される。「TX RF不均一性マップ」は、信号方程式を用い、及び、該信号方程を変更されたRF送信パルスに適用することによって、補正値に変換される。すなわち、TX補正マップは、本撮像用のパルスシーケンスのパラメータであるシーケンスパラメータ(図中の212を参照)により定まるシーケンス信号強度モデルを「TX RF不均一性マップ(受信RF磁場不均一性マップ)」に適用することで生成される。該「TX RF不均一性マップ」は、感度マップスキャンにおける送信RF磁場(RF TX磁場)と送信RF磁場による画像の輝度の影響(TX画像輝度影響)との間で機能的関係が形成されるサブステップに正確に類似する。しかし、208で使用されるパルスシーケンスは、対象画像撮像時におけるスキャンである「対象スキャン」にて用いられるものであり、感度マップスキャンのパルスシーケンスではない。従って、異なる信号方程式(例えば、「SE(スピンエコー)」、または「FSE(高速スピンエコー)」の信号方程式)を使用してもよい。一般に、異なるTE、異なるTR等の異なるシーケンスパラメータがある。
図2の218は、210のRX補正係数スライス及び208のTX補正係数スライスを対象スキャンスライスに適用することで生成された「輝度補正された対象画像」である。対象スキャンスライスは、図中の212における対象画像であり、該対象画像は、例えば、アレイコイル(AC)により受信されたデータにSum−Of−Square組合せアルゴリズムを適用したデータである。このステップは、対になったピクセルワイズ乗算として実行してもよい。さらにまた、総補正を課すことを選択する、すなわち、TX補正係数スライス及びRX補正係数スライスの積を課す等の改良が可能である。
図2は、ボックス内の事項が主にエンティティ(画像、他のデータ、計算結果)を示す工程の流れを例示する。「処理」は、主に矢印、またはボックスに向かう入力矢印の群に対応する。「TX MAP又はRX MAP」を含むボックス204、206は、RF磁場不均一性の単一推定に対応し、2つの方法に利用される。一方の場合では、TX(送信RF磁場)をTX画像補正(左のボックス208へ下行する矢印に沿って)の促進に使用する。他方の場合では、同じ「TX MAP又はRX MAP」を210でRF RX不一性の影響に対する補正の生成を促進するためにRX不均一性磁場として利用する。上述したように、3.0テスラのシステムでは、RF送信ムラは、1.5テスラのシステムと比較して顕著になる。そこで、本実施形態では、感度マッププレスキャンデータから得られた情報に基づいて、対象画像の輝度補正を行なう。ただし、感度マッププレスキャンと診断用スキャンとは、異なる手法で行なわれることが多い。従って、3.0テスラのシステムでは、感度マッププレスキャンデータから得られた情報とともに、感度マッププレスキャンと診断用スキャンとの間で異なる情報に基づいて、対象画像の輝度補正を行なう必要がある。そこで、本実施形態のMRIシステムは、感度マッププレスキャンと診断用スキャンとの撮像条件又は撮像シーケンスが異なる場合、当該感度マッププレスキャンと当該診断用スキャンとの間で異なる情報に基づいて(例えば208に基づいて)、診断用スキャンの画像データを対象として、送信RF磁場不均一性を低減した輝度補正を行なう。一例を挙げると、感度マッププレスキャンはフィールドエコー系の撮像シーケンスであり、診断用スキャンはスピンエコー系の撮像シーケンスである。
図2に例示する他の工程は、特定のMRIシーケンスパラメータ及び特定のスライス形状に基づくアレイコイル(AC)による212の従来の対象画像の収集である。212の特定のMRIシーケンスパラメータ及び特定のスライス形状は、200の「WBC MAPデータ(MAP WBCボリューム)」及び「AC MAPデータ(MAP CCボリューム)」の生成や、214及び216のスライス処理に用いられる。従来の輝度補正工程では、WBC及びACのMAPスライスデータは、218の輝度補正対象画像を生成するために、210のRX補正工程で使われていた。従来の輝度補正工程では、単純なWBC/ACの比率が、WBCの送信RF磁場(WBC B1 RF磁場)は均一であるとの仮定に基づいて一般に使用されていた。しかし、図2では、適合モデルと、分離されたTX補正及びRX補正とを用いることで、高磁場MRIにおいて、更なる補正を提供する。
212に示すように、対象画像は、対象収集のための完全な画像再構成工程のある中間段階を表してもよい。MAP(感度マップ)ピクセルと対象(対象画像)ピクセルとの間の幾何学的部位の合致は、この補正方法における1つの代表的な構成要素であると考えられる。傾斜磁場形成におけるハードウェア不備に対する幾何学的変形補正なしで、MAP(感度マップ)スキャンが格納されると仮定することは、計算的に有利であるといえる。そのような場合、任意の傾斜磁場の変形における補正が実行されてしまう前の対象画像の総合的な再構成において、どこかの中間ステップでTX補正(送信RF磁場補正)及びRX補正(受信RF磁場補正)を実行することもまた計算的に有利になるであろう。これらのRF均一性補正を既存の再構成工程のどの段階で実行するのが一番有利か選択する場合は、このような考察を考慮に入れるとよい。
MRIスキャナのオペレータには、補正を実行するか否かについての選択肢が与えられる。オペレータは、未補正画像を見ることができて、RX不均一性およびTX不均一性の両方または一方を補正するか否かの独立制御が可能であってもよい。
補正は、対象輝度(又は、対象画像の局所信号対ノイズ比(SNR))の機能として「ロールオフ」を有することができる。SNRが非常に低い領域は、高く持ち上げ過ぎず、画像全体をノイズ過多の状態で表示させないことが望ましい。そのような実施形態の場合、高信号または高SNRの領域は、全面的に補正されるが、低信号および低SNRの領域は、断片的に補正されるのみである。この断片的な補正は、不連続点または急峻なステップを誘導しないように画像全域で滑らかに変動する。
オペレータは、全解剖学的領域の基本的な部位(例えば、「頭部」又は「腹部」又は「骨盤」)を入力できる。この選択に従って、予測される全体的なRF不均一性パターンのための所定のモデルが使用される。所望により、選択されたモデルに加えて、最適化アルゴリズムに固有の付加的パラメータもまた、モデル適合最適化ステップの収束を支援するために選択できる。
必要に応じて、オペレータは、予想されるT1値、又は、予想されるT2値等の予想されるMRIパラメータを指定できる。
必要に応じて、MAPプレスキャン(感度マップのプレスキャン)のサブシーケンスは、予想されるT1値、予想されるT2値等を推定するために少数の付加的パルスを含むことができる。しかし、プレスキャンを高速に保つためには、これらの作業を、例えば、全ボリューム上、または受信用ACコイルの固有感度によって大まかに定められたボリューム上で、撮像なしで、行うとよい。
必要に応じて、形状モデリング及びフィッティングは、対象スキャンで使用したコイルと偶然同じものであるコイル又はコイルセットを1つのみ使用して行うことができる。AC及びWBCの両方の別個のコイルセットの画像があることは、必須ではない。この工程は、例えば、WBCが採用されたときのみに使用するようになっていてもよい。
必要に応じて、使用者は、TXに対して、RXに対して、様々な断片の補正を指定できる、又は、使用者は、TX及びRX両方を同時に制御するための大まかな項目を指定できる。
明確な補償、例えば、真空中で期待できるような主要なz軸ロールオフを、WBCの基本的なTXパターン又はRXパターンに対して組み込むことができる。モデルは、2つの別個の機構を取り巻く態様を含むことができる。あたかも、適用された外部場が、被検体のない状態で完全に均一であるかのように、被検体に関連する、おそらく「誘電共鳴」と大まかに呼ばれる干渉パターンを描写する第1の部分があってもよい。被検体なしで、おおよそ、コイルの空間的不均一性関連を描写する第2の部分があってもよい。例えば、WBCを描写するz軸方向の固有のロールオフがあってもよい。「コイル特有」部分および「被検体特有部分」を含み、かつ、2つの部分は、例えば、乗算によって組み合わせることができるようなモデルを考えることができる。この特別の分解は、基本的にコイル及び被検体の両方の完全合併電磁モデルほど厳密ではないが、有用なモデルであるといえる。このような合併モデルでは、被検体特有部分に関連するパラメータは、被検体のMAPスキャン(感度マップスキャン)により適合でき、コイル特有部分に対するパラメータは、おそらく電磁モデリングによって前もって完全に決定できる。
例示の輝度補正工程で使用されるMAPスキャン(感度マップスキャン)は、パラレルイメージング再構成法または旧式のより単純な1.5T画像補正法等の他の理由のためにおそらくすでに必要とされていたであろうMAPスキャンと同じである。すなわち、更なるプレスキャンを行うための時間は、通常必要ではない。
例示の工程は、架台が1.5テスラ以上の静磁場(例えば、3.0テスラ)を発生する静磁場磁石を含むMRIシステムに適用される。すなわち、例示の工程では、特に、3.0Tでの人間の頭部又は腹部の撮像等の用途の場合、TXおよびRXの両方の誤差の原因のうち大部分の形状が除去される。このことはまた、誤差の主要な原因が被検体から生じている場合に好適であり、該誤差が被検体ごとに変動する状況についても自動的に調整する。
実施形態は、エラーや画像において真の構造と誤って解釈されかねないアーチファクトの原因となり得る新しい詳細を導入しない。実施形態はまた、更なる送信チャンネル等の付加的ハードウェアも必要としないし、追加のスキャン時間や追加のSARの出費も通常招かない。
本実施形態による補正は、様々な対象画像撮像用のパルスシーケンスに対して想定外に異なる形状を必要としない。本実施形態による補正では、対象画像の詳細に関わらず、形状適合等のアルゴリズムの詳細は同一であり、1つの共通マップ収集から得ているとの確証を持って、異なるパルスシーケンスは比較できる。
図3A及び図3Bは、RXおよびTXの輝度補正工程の概略を例示するフローチャートである。例示のB1輝度補正工程は、WBC及びACを用いたMAP画像(感度マップ)の収集後、図3Aの300で始まる。
ステップ302では、幾何学的モデル適合のためにWBCのMAP画像データ(感度マップデータ)を準備する。ステップ302におけるモデルフィッティングのMAP WBCデータを準備するために、ボリュームは、標本化、又は、等方的に再標本化できる。多くの場合、MAP画像は、各2D有効視野(FOV)内のピクセルサイズと比べて厚いスライス、又は、厚いスライス間隔を有してもよい。
MAPスキャンを強制的に傾斜させない規則がスキャン位置決めにある場合、及び、スライスを強制的に均等な間隔を置いて配置させる規則がある場合、リスライスは、おそらく常にz方向であるスライス方向の単純な線形補間であっても良いし、又は、MAPは傾斜していないこと、及び、MAPはz方向に対して特定の配向を有すること等を必須としてもよい。
ボリュームの不均一間隔を説明するためにより複雑な計算を使うことによって、この再標本化ステップを省くことも可能であろう。
MAP収集に関連する別の予備ステップは、おそらくノイズやアーチファクトが多いと思われる領域から、基となる組織に対する比較的確実な信号輝度を有する領域を分離するために、マスクまたは閾値を生成することである。例えば、おそらく組織であるピクセルは識別可能である。被検体の外側に非常に少数のピクセルしか残さない閾値レベルを選択できる。少数を残すことは、その後に行うエロージョン(erosion)のために問題とはならない。
特に、(マスクマップを作るための)そのようなエロージョン(erosion)は、(例えば、特に脳内の)適合品質を向上させるために縁端部を除去する可能性がある。これは、影響されやすいアーチファクトおよび部分的なボリューム効果を含む基本的なRF磁場パターンではない別の原因によるピクセルレベル変動を減少させる。皮膚、頭皮、骨及び洞(sinus)の多くを除去するために、エロージョンするピクセルの数を脳内で選択できる。脳組織をまた除去する場合も、やはりその選択は許容できる。マスク内の残りのピクセルは、脳組織または内部組織であると高い確証をもって言えるピクセルである。
ピクセルの輝度は、また、標準化してもよい。まだ標準化していない場合は、浮動小数点形式に変換すれば、MAPデータの振幅を、後の最適化工程で予測される範囲内にしやすいであろう。
最適化のためには、常に、できるだけ最適条件に近い状態で開始するのが最善である。遠すぎる状態からの開始は、最適化工程を減速させるが、より重要なことは、他の予期しない局所の最小量を発見する機会が格段に増えることである。従って、MAPデータの振幅を、1.0に近いピーク値または平均値を有して使用される前に変倍(scaling)することによって、振幅が1.0近くになるであろうとの開始時推定仮定が最適化で有効に活かされるであろう。
図3Aに示すステップ304では、ステップS306のオペレータ/システム入力(東部、腹部等の選択)により幾何学的形状モデルの選択が行なわれる。「WBC MAP(WBCの感度マップ)」の広い中心部分を表すために、問題となる解剖学的領域に従って数学的モデルを304、306で選択する。その後、モデルを実際の「WBC MAP画像(WBCの感度マップボリューム)」に適合させるために、モデルパラメータの最適化を実行する。すなわち、図3Aに示すステップ308では、WBC MAP画像に適合するように、選択された形状モデルのパラメータを最適化する。脳及び頭部用の1つのモデルと、ボディ/腹部/背骨/骨盤用の1つのモデルがあるとよい。もちろん、解剖学的組織の各領域用のより多くのモデル、または異なるモデル、或いは、その両方を追加してもよい。
選択可能なモデルはそれぞれ、いくつかの定義パラメータ(例えば、振幅、幅、及び中心等)を有する。一般的な最適化探査を308で使用してWBC MAPデータに最適なモデルに対するパラメータ値を見つける。例えば、(組になったパラメータにより評価される)モデルと(例えば、マスク領域のピクセルのみを使用する)WBC MAPとの間の変動を最小化する基本的なコスト関数として、有名なネルダーミード最適化が使用可能である。
固定パラメータは最適化によって改良されないので、あらゆる固定パラメータを初期化することが重要である。最適化が、最終的には良い値を生み出すので、最適化されるパラメータの初期化はあまり重要ではない。しかし、より良い初期化が使われるなら、最適化ルーチンはより迅速に収束し、反復も少なくてすむであろう。
適合されたデータは、望ましくは相対マップだけではなく絶対フリップ角度に関連する値を有するべきである。
後に、MAPモデル適合信号が、送信TX係数(TX補正係数)及び受信RX係数(RX補正係数)に分割された場合、適切な絶対B1 TX係数の推定を有することが望ましい。なお、「B1 RX補正」の場合、B1 RX係数の相対比の使用のみが可能であるが、TX補正の場合は、少なくともフリップ角度の近似値を知ることが重要であるといえる。
一般に、RFレベルのキャリブレーションは、被検体ごとに不変のB1 TX輝度の選択を行うことになっている。B1 TX磁場(送信RF磁場)がいたるところで空間的に均一であった場合、一般に、基準の90°フリップ角度をいたるところで作ることが選択されるであろう。しかし、B1 TXの空間的不均一性、B1 RXの空間的不均一性及び不均一組織パラメータがある場合、最適化が望まれる空間的重み付信号の明確な定義はないといえる。RFレベルを設定する実際的な方法、またはRFレベルが予測される正確な詳細は、別個のMRIスキャナシステム設計によって異なってもよい。
従って、標準的な脳および身体(例えば、参考資料として使用される収集データセットに対して)内で標準的に予測される「B1 TX磁場強度(送信RF磁場強度)」の大まかな概算を310で行う。すなわち、図3Aに示すステップ310では、WBC MAP画像データに適合されたモデルをスケールする。RFレベルを決定するための1つの妥当と思われる方法としては、代表的なB1 TXマップを、単独に取得し(例えば、SPAMM DUAL FASEシーケンスによって)、3つの全ての撮像面(アキシャル面、サジタル面及びコロナル面)で評価して、別のデータセットを標準化するために使用してもよい。
MAP(感度マップ)のピクセル値(未処理バージョン、又は、適合されたモデルバージョンのどちらか)は、B1 RXおよびB1 TXの両方に依存している。ここで、どれだけ画像輝度がB1係数(ただし、B1 MAPスキャン(RF磁場の感度マップスキャン)に対してのみ)の関数として変動するかを示す係数が得られる。
B1 TX磁場(送信RF磁場)の不均一性は、B1 RX磁場(受信RF磁場)の不均一性と同じであるとの仮説を立てる。この仮説は、近似値であり、100%真ではない。次に、RX及びTX両方の効果の組み合わせによる不均一性の量によって一般的な信号がどれだけ変動するかを決定するために、計算を行う。これにより、適合が完了する。
例えば、おそらく頭部では、単純な線形適合によって、相対信号変化は、相対不均一性の約1.4倍である。この数字の逆数を計算すると、「TX RX MAP(送信RF磁場及び受信RF磁場の感度マップ)」の相対不均一性は、WBC MAP画像の相対変化の約0.7倍となると仮定できる。この一例では、「値:0.7」を「分割係数」と呼ぶことができるが、それは、適合マップにおける均一性からの偏差のうちどれだけが、「RF RX場不均一性影響(受信RF磁場の不均一性による影響)」によるものであるかを決定するのに使用できるからである。より一般的には、分割係数は、マップ画像の不均一性または空間的不均一性の関数であるといえる。
適合は、より高次の適合の代わりに線形回帰で行うことができる。より高次の適合は、反転を向上させて、分割係数の線形傾斜を2次方程式のような低次の多項式表現と置き換えることができる。しかし、これは、非常に重要であるとは言えない。より高次の適合を使用する実際の必要性はないといえる。しかし、2次方程式の適合を使用しても支障はない。
かかる処理により、図3Aに示すステップ312では、RX成分及びTX成分の分割係数を計算する。すなわち、次に、312において、各ピクセル位置に対して、該位置のTX RX MAP(送信RF磁場及び受信RF磁場の感度マップの)値を計算する。先ず、適合モデルの値をピクセルごとに計算する。次に、分割係数を使用して、適合モデルの「1.0」からの偏差をTX RX MAPの「1.0」からの対応する偏差に変換する。
モデルに対する平滑3D低分解能マップが以前に生成されている。低分解能マップからの補間を先ず行うことによって、この新しいTX RX MAPを生成することが可能になるであろう。その代りに、前方計算を各ピクセル位置のモデル式及びモデルパラメータから行ってもよい。モデルの前方再計算を行う1つの理由は、WBC MAPデータが取得された領域の外側に形状が延在する場合を扱うからである。
次に、図3Aに示すステップ314では、MAPスキャンの値(感度マップの値)を、MAPスキャンのピクセル部位から対象画像の新しいピクセル部位へ補間する。すなわち、ステップ314では、MAPスキャンの値を対象画像の新しい位置に補間する。
図3Aに示すステップS316では、WBCの感度マップを、「ACの感度マップ(AC)と「TX RX MAP(送信RF磁場及び受信RF磁場の感度マップ)」である「TX_RX_MAP」とを乗算した値」で除算した「WBC/(AC*TX_RX_MAP)比率」を生成して、ローパスフィルタで平滑化することが行なわれる。316では、ACマップで除算されたWBCマップの比率が形成されて、この比率がTX RX MAPで除算される前に、ローパスフィルタの平滑化(例えば、7x7正方ピクセル近傍にわたる平均値)が行なわれても良い。また、平滑化は、比率を得る前に、WBCマップ及びACマップで別々に実行してもよい。ここで、MAP(感度マップ)は、あたかもB1 RXマップの推定値のように扱われる。これは、WBC MAP画像が均一の空間的受信感度を有していないために生じる中央輝度(シェーディング)誤差を低減または除去する。
TX_RX_MAPによる除算は、この工程例によって行われる主要な改良である。残りの工程は、TX補正を行うが、RX補正はより重要であるといえる。
図3Aに示すステップ318では、ステップS320の補正係数(CF:correction factor)の任意オペレータ入力により、1.0より大きい、又は、1.0より小さい補正係数CFによる使用者制御が可能である。すなわち、本実施形態では、ステップ320で、WBCの感度マップから得られる対象画像撮像時の送信ムラのマップと、ACの受信ムラのマップとを、それぞれどの程度用いて、対象画像の輝度補正時に用いるかのCFが、オペレータにより入力される。使用者が、320で1.0より大きいより強いRX補正係数を必要とした場合、MAPを、318でRX補正係数値である「WBC/(AC*TX_RX_MAP)比」のすべてが1.0から遠い値になるよう変更しても良い。
使用者が、補正係数=1.0を必要とした場合、そのとき適用されるRX補正は、まさに上記の理論および概算から推定されたものとなるはずである。すなわち、TX補正係数は、以前に計算した比率と同じになるはずである。
図3Bに示すステップ322では、ステップS324のMRIデータ収集シーケンス公式/データの入力により、B1 TX(送信RF磁場)が高過ぎる、又は、低過ぎる時、予測される信号レベルの変化を計算する。すなわち、対象画像のパルスシーケンス及び選択された解剖学的領域の最も一般的な組織パラメータについては、B1 TXが、B1 TXの少数の個別の値に対して高過ぎるまたは低過ぎる場合、信号レベル変化の量を(324のMRIイメージングシーケンス情報入力に基づいて)322で計算する。この計算は、TX影響に対してのみであり、RX影響は無視される。ブロッホ方程式のシミュレーションからこの計算を生成することは可能であろう。或いは、この計算は、また、最も重要なパルスシーケンスのためのテキストブックの式からも遂行できる。
図3Bに示すステップ326では、形状モデル化された信号レベルをTX不均一性(送信RF磁場不均一性)の関数として適合する。すなわち、モデル化された信号レベルは、326でTX不均一性の関数として適合する。TX RX MAP係数が、1.0であり、かつシーケンスの先端角(tip angle)が全て正確に使用者が要求したものである場合、この信号レベルは、標準化されて、1.0になるように再スケールされる。
2次多項式適合を、標準の適合ルーチンとともに使用してもよい。
図3Bに示すステップ328では、TX RX信号レベルMAP画像データ(送信RF磁場の感度マップのデータ)の計算が行なわれる。すなわち、対象画像のあらゆるピクセル位置で、TX RX MAPの値は、(TX不均一性により生じる対象画像の輝度に比例するマップを生成するために)該ピクセル位置の多項式に適用され、その結果は、新ピクセル値として格納される(図3のステップ328)。このマップは、広く一般的なTXマップ効果によって理想的な信号がどの程度偏向すると予測できるかの推測を示す。
図3Bに示すステップ330では、乗算係数を得るために信号レベルピクセル値を逆数にする。すなわち、信号レベルピクセル値を、次に、基本的なTX補正を行うために乗算係数として使用できる値を得るために反転させる(ステップ330)。非常に強い補正は、平滑な漸減関数のために避けるべきである。補正は、一定限度を超えないように制御されるべきである。
特にSEおよびFSEでは、40%変動するB1 TX係数が、70%以上低下する信号を有することが可能である。従って、多項式をこれに適合した場合、50%変動するB1 TX係数は、ゼロに近い信号レベルを有するように外挿できると予測できる。したがって、f=1.0/(極小)のような補正係数は、巨大になるであろう。画像にほぼ無限大のピクセルがある場合、他の物すべてが、黒に見えるようにスケール化されるといえる。
この種の極端な効果を避けるために、輝度補正は、局所ノイズ構成要素が実質的に所定量を超えて増加しないように、比較的少ない信号対ノイズ比を有する空間領域のより少ない量に限定される。すなわち、この種の極端な効果を避けるために、制限効果(clamp effect)を使うと良い。例えば、双曲線正接関数(TANH)を使うことができる。非常に高い値および非常に低い値を減少させるための別の妥当な関数は、平滑な飽和曲線を含むものである。制限関数が平滑な場合、単純な閾値を制限のために使ったとき、時として現れる疑似線または縁端または境界線を、使用者は決して感じることはないはずである。
最後に、図3Bに示すステップ332で、入力対象画像に、以前計算したように2つの補正係数、RX補正係数及びTX補正係数を乗算する。
図3Bに示すステップ334で、輝度補正された画像が出力(格納、表示、更なる処理)されて、プログラム制御は、図3Bに示すステップ336でモジュール呼び出しコードへ戻される。
この処理によって、新しい「構造体」が画面に表示されることはないはずである。この処理により発生する画像の変化は、非常に平滑である(例えば、漸進的なシェーディングアーティファクトの補正)。輝度補正処理は、小さい病変として誤解される可能性があるいかなる様相も発生させないはずである。補正の平均精度と局所輝点または暗点の防止との間のアルゴリズムにトレードオフがある場合は、常に、この処理方法を選択することによって、局所輝点または暗点は防止できるはずである。
この処理では、不成功に終わった脂肪抑制、不成功に終わった空間的抑制、または不正確な流量感度に対して、詳細の補正はできない。
ここまで示してきた実施例では、送信RF磁場不均一性マップ及び受信RF磁場不均一性マップが所定の機能的相互依存性を有するように抑制されている。具体的には、ここまで示してきた実施例では、実際に実施する際のひとつの選択として、「RF RX不均質性マップ(受信RF磁場不均一性マップ)と「RF TX不均質性マップ(送信RF磁場不均一性マップ)」とが同一であると仮定した。この仮定は必須ではない。人体には、慣例的に高度の左右対称性を含むと考えられる。周知のとおり、「RF TX(送信RF磁場)」及び「RF RX(受信RF磁場)」は、逆回転極性を見せる。少なくとも放射状WBC設計に関しては、被検体が著しい左右対称性を有する程度に、「RF TX(送信RF磁場)」及び「RF RX(受信RF磁場)」は相互の左右鏡映バージョンであるといってもよい。RF磁場のモデルが、幾分、左右非対称である場合、「RF TX(送信RF磁場)」及び「RF RX(受信RF磁場)」は、互いの鏡映複写であると仮定することは妥当である。したがって、基本的には、非鏡映構成要素を含む単一適合モデルは、リファレンス用のMAPスキャン(感度マップスキャン)の不均一性を分割して鏡対称の「TX RFのボリュームマップ」及び「RX RFのボリュームマップ」に分解することが可能である。
例示した輝度補正アルゴリズムは、局所領域の組織間のコントラストを改善しない。例えば、灰色/白色コントラストが、送信パルスが最適条件から遠いゆえに、脳中央で減少した場合、TX補正(送信RF磁場補正)は、このコントラストを復元しない。広い範囲にわたる平均輝度を修正できるだけである。しかし、コントラストが改善されたように思われる場合もある。これは、補正画像の全FOVにわたる全体的な均一性が改善されたときに起こる可能性がある。例えば未補正画像の一部分の全体が明る過ぎるといった場合、この領域の明るさを下げると、ウィンドウ処理及び画像の均一性を改善できるかもしれない。ウィンドウ処理と均一性の改善によって、存在するすべてのコントラストを見ることが容易になる。画像を見る際にさまざまなウィンドウ処理および均一性を選択するこの効果のゆえに、画像のコントラストが実際はどれぐらいかを認識することが困難になる可能性がある。
かかるアルゴリズムは、解剖学的組織がコイル導線部材に非常に近い場合、極局所の輝点または暗点の影響を除去しない。多くの場合、導線に非常に近接している解剖学的組織は明るい。しかし、2つの隣接するコイル部材が部分的に重なり、かつ、互いに位相がずれている場合、解剖学的組織は暗線を有することがある。RX補正は、これらの影響を少し減ずるが、平滑化は、おそらく2cm以下の距離にわたって起きるばらつきを除去しない程度であるといえる。
あるコイル配置では、既に非常に均一な画像平面がある場合がある。そういった画像平面は、既に非常に良好である場合、輝度補正アルゴリズムによって改善できない。これは身体のコロナルスライスにおいて、背骨アレイと前面身体アレイ間のスライスで起こることがある。
あるパルスシーケンスの場合、TX依存性およびRX依存性は、ほとんど正確に互いの逆である可能性がある。これらの画像は、既に非常に良好であり、多くは改善できない。
一般的な感度マッププレスキャン用のMAPシーケンスを少し修正することは有用であるといえる。例えば、サンプリング帯域幅は、広げてもよい(例えば、488Hz/ピクセルから976Hz/ピクセル)。これは、化学シフトを減少させることによって身体FE MAPスキャンの均一性を改善するものである。骨盤では多くの場合、脂肪面内のミス・レジストレーションが、マップを不均一にする大きな効果の1つとなる可能性がある。マップは、より高い読み出し帯域幅を使用するとき、より良く見える場合がある。976Hz/ピクセルは、大部分の画像シーケンスの読み出し帯域幅としては高いと考えられるが、MAPスキャンは一般に非常に多いピクセルを有するものである。したがって、976Hz/ピクセルは、相当短い読み出し時間であるといえるが、それでも他の3.0Tに比べてかなり弱い読み出し傾斜が使われている。また、ミリメートル(mm)単位の距離で測定すると、面内化学シフトは大きい。
本実施形態に係る3次元幾何学的モデルは、平滑に変動する空間的依存性を有する閉論理数学的関数によって定義される。また、本実施形態に係る3次元幾何学的モデルは、撮像対象ボリュームに適合するために、最適化工程で選択される複数の変動可能な幾何学的パラメータ値を含む。また、上記の幾何学的パラメータ値は、撮像対象ボリュームの重心及び特定の幅の両方又は一方を表わすパラメータを含む。また、本実施形態に係る3次元幾何学的モデルは、実質的にガウス分布形状に適合して、平滑に変動する空間的依存性のみを具現化するモデルである。図4は、図3Aおよび3Bで例示した実施形態にてMAPスキャンデータが適合する頭部の幾何学的形状モデルの概略図である。図4を用いて、頭部モデルの一例を以下に詳述する。例えば、「WBC MAPボリュームスキャン(WBCを用いた感度マップ収集用のボリュームスキャン)」を「定数+3Dガウス分布モデル=c1+c2*(exp−(0.5*(((x−c3)*c6_recip)^2+((y−c4)*c7_recip)^2+((z−c5)*c8_recip)^2)))」に適用する。ここで、変数x、y及びzは、等方的に再サンプルされたWBCマップ画像のためのピクセルインデックスである。これにより、頭部モデルは、以下の式(1)により示される(図4も参照)。
マップ画像とモデルとの分散は、ステップ302からのマスキング工程、又は、マスキング及びエロージョン工程で組織として表示された領域内でのみ測定が可能である。すなわち、マスク領域の外側のピクセルは、適合では単に無視してもよい。
最適化探査を変数c1、c2、c6及びc7に対して実行する。c2は、正であることが予測される。
3テスラのMRIシステムである3Tシステムの最適化探査では以下の開始値が可能と考えられる。
c1=0.45
c2=0.55
c3=WBCマップに対して計算されたxの重心
c4=WBCマップに対して計算されたyの重心
c5=WBCマップに対して計算されたzの重心
c6_recip=4.0/(ピクセル単位のxのスキャン幅)
c7_recip=c6_recip
c8_recip=c6_recip
図5は、図5は、図3Aおよび3Bで例示した実施形態にてMAPスキャンデータが適合する腹部の幾何学的形状モデルの概略図である。図5を用いて、腹部モデルの一例を以下に詳述する。例えば、「WBC MAPボリュームスキャン(WBCを用いた感度マップ収集用のボリュームスキャン)」を「定数+2Dガウス分布円筒モデル=c1+c2*(exp−(0.5*(((x−c3)*c6_recip)^2+((y−c4)*c7_recip)^2)))」に適用する。これにより、腹部モデルは、以下の式(2)により示される(図5も参照)。
再び、フィッティングは、エロージョンの領域に制限されるものとし、マスクの外側のピクセルは、無視してもよい。
最適化探査を変数c1、c2、c6及びc7に対して実行する。c2は、負であることが予測される。
最適化探査では以下の開始値が可能と考えられる。
c1=1.0
c2=−0.3
c3=WBCマップに対して計算されたxの重心
c4=WBCマップに対して計算されたyの重心
c6_recip=4.0/(ピクセル単位のxのスキャン幅)
c7_recip=2.0/(ピクセル単位のyのスキャン幅)
プレスキャンまたはキャリブレーションデータを含む他の補正と同様に、データの整合性を上げるためにいくつかの規則を施行するのが有利であるといえる。更なる処理としては、MAPスキャン(感度マップスキャン)と対象スキャンの時間の間、被検体または寝台が不動のままであったかをチェックするとよい。この種の収集制限は、MRIで広く知られている。
図2では、可能であれば、対象画像取得の前に、多くの処理ステップを行うとよい。実際、MAPスキャンの終わりで、できるだけ多くのステップを実施するのが良いといえる。主要な対象画像が利用可能になる前に、いくつかのステップを再構成準備段階として行うことも可能であろう。早期にこれらのステップを行うと、最終の再構成が早まることになるが、より多くの格納部(再構成メモリまたはディスク)に費用がかかることになる。早期にこれらのステップを行えば、1スライス当たり1枚か2枚のMAPを節約できるかも知れない。反対にこれらのMAPを最後に、正にそれらのMAPを必要としたときに計算すれば、格納コストは1スライスに十分なだけで済むかもしれない。いくつかのステップは、再構成の準備段階に、またはシーケンスのコンパイル時にでも実行できる。オペレータが再処理をしているとき、少なくとも1つのステップを再度実行させることも当然可能である。もちろん、218の最終輝度補正は、対象画像を取得して、大部分の再構成を完了した後でしか実施できない。
頭部や腹部のような解剖学的組織の場合、アルゴリズムは、非常に類似的である。しかし、脊椎または身体などの解剖学的組織の場合、ある領域では現れるが他の領域では現れない処理要素が存在する場合がある。
第1の処理要素について、以下説明する。脊椎への適用に関する調査で明白になったことは、FOV、またはスライススタックの範囲が、およそ30cmより大きいとき、Z軸に沿ったWBCのナチュラルロールオフが、有意な要因になるということである。
さて、WBC MAPスキャンは、ある解剖学的組織においては、2つの部分に分けられる。1つは被検体に依存する部分で、波長効果、おそらくは被検体内の若干の減衰に由来する。第2の部分は、WBCコイル自体のフィールド設計、特に、z軸依存性に由来する。
そこで、効果的なTXフィールドまたはRXフィールドのモデルを望ましくは修正し、zに沿った乗算項を含める。Z依存性を多項式によって近似化する。多項式の係数を、電磁モデルを適合させることによって選択する。電磁気のモデル化データをプロットして、一連のz位置に対する各スライス位置の平均値を得る。すなわち、ラージFOVとすることで、Z軸に沿ったWBCのナチュラルロールオフによりFOV辺縁部に生じる輝度の低減を補正するために、3次元幾何学的モデルは、複数の空間的な依存項を含み、依存項のそれぞれが、取得された感度マッププレスキャンデータに独立的に適合する振幅値を含む。図6は、各水平面位置(z軸方向の位置)でB1 TXを平均化するための6次多項式適合を示す図である。図6では、各水平面位置でB1 TXを平均化するための多項式適合を示す。多項式が6次になり、奇数項および偶数項の両方を含むとき、その多項式は、1%未満の誤差耐性に適合できる。
単に乗算可能な電磁場内において2つの別個の要素を有することは厳密には正しくない。モデルの第一の部分は、(まるで外部コイルが非常に均一な磁場を作り出すかのように)被検体に起因するシェーディングとして現れると記述されてきた。モデルのもうひとつの部分は、(まるで被検体が存在せず、ただ空気か真空が存在して無負荷の状態であるかのように)WBCコイルのロールオフとして現れると記述されてきた。従って、2つの項は、単純に「乗算」されてきた。このことは、マクスウェルの方程式に関して、厳密には正しくない。印加された磁場の形状が変化するとき、被検体の負荷減衰および波長効果に対する歪曲の形状もまた変化する。2つの要因は、物理的に独立していない。しかし、これは単にモデルであり、最小二乗適合のための形状として単に使われているので、完全に正確な物理的関係に適合する必要はない。送信場が、主にzに沿って不均質ロールオフを有する間に、被検体に適合するモデルの部分が適用される場合を考える。その影響は、磁場へのわずかに異なる形状関数である。しかし、それは構わない。適合工程は、実際の実験状況に適合できるように、最良状態で実行されるであろう。
あるモデルは、WBCの不均質性がZの関数であると想定されてきた。繰り返すが、これは厳密には真実でない。磁場が、Zにおいて均一でないならば、XおよびYにおいてもまた不均一であるにちがいない。どれほど多くの不均一性がXおよびYに存在するかは分からない。平均磁場値は、z位置ごとに生成される。実際のWBC B1 TX磁場およびWBC B1 RX磁場が、この単純なzの関数からどれだけずれているかを確認するための改善は可能であろう。この改善は、おそらく、FDTD数値モデルのような電磁モデリングを用いて行うことができるであろう。
基本的なWBCコイル導体の形状を調査すれば、z軸に沿った対称性がある。磁場はz軸の周りで対称形であると推測できる。コイルを記述する多項式は偶数項のみを有すると推測できる。しかし、実際のデータは、これが真実でないことを示す。一端に供給されるコイルおよびその端部から抵抗損失を伴って伝播される電圧/電流についての若干の詳細によって、磁場はまた若干の非対称の構成要素も有することになる。望ましくは、磁場の非対称部分(すなわち、z多項式の奇数べき項)を使用して、誤差1%よりも正確な適合を得る。奇数べきの係数は、偶数項より弱いが、よく適合する。コイル磁場パターンは、2、3パーセントの非対称項を含む場合がある。
第2の処理要素について、以下説明する。これらの方法のうちのいずれかに対するRX補正係数は、ほぼACMAPプレスキャンピクセルをWBC MAPプレスキャンピクセルで除算した比率である。腰椎イメージングの場合、RX ACが脊椎ACであり、前方コイルが使用されないとき、RXゲインは、画像全体にわたって約20対1または30対1の率で変動できる。非常に高いRX_補正係数は、局部的にノイズに大量のゲインを与える。すなわち、前方コイルが使用されないときには、脊椎ACから遠い前方部分からの受信信号が低いにも関わらず、従来の輝度補正や、上記の輝度補正が行なわれると、前方部分の輝度が過度に明るくなってしまう。この過度のノイズは、放射線科医が通常診断を試みる部位にはないが、画像全体を「醜く」する。
従って、腰椎などの事例に対しては、望ましくは、以下の追加の処理機能を加える。図7Aは、未補正の画像を示す図であり、図7Bは、ゲインまたはノイズが制限されていない補正画像を示す図であり、図7Cは、ゲインおよびノイズが制限されている補正画像を示す図である。
図7Aおよび図7Bは、RXおよびTX効果に対する未補正画像および補正済画像を示すが、ゲイン係数は制限されておらず、またノイズ増幅も制限されていない。図7Bの点線で囲まれる部分は、補正済画像の過度の画像ノイズの部位を示している。図7Cの画像は、RXおよびTX効果に対してゲインおよびノイズ増幅の量に対する制限を含む補正がされていて、過度の画像ノイズは効果的に除去されている。
図8は、実施形態による腰椎画像に対するRX補正係数の等高線プロットである。
ゲインおよびノイズ増幅を制御する1つの可能な方法は、以下の通りである。
(1)RX補正係数の中間結果の値のヒストグラムを生成する(補正係数を画像とみなす)。
(2)次に、ヒストグラムにカットオフ値を定義し、それによって、ピクセル数のほぼ半数は、そのカットオフ値を下回るRX補正値を有するようになる。このための1つのアルゴリズムは、ヒストグラムの積分値を生成することである。
(3A)RX補正係数を適用するとき、あるピクセルでの係数値が、カットオフより小さい場合、対象画像の補正には通常のRX補正係数を使用する。
(3B)RX補正値がカットオフ値を越えるとき、完全な補正係数で補正しない。その代わりに、補正は、そのピクセル位置における新しいカットオフ値によって乗算するだけに限定する。
図9は、RX補正係数のカットオフレベルパラメータのグラフ描出を示す図である。図9では、RX補正係数のために標本のヒストグラムを使う。標本の腰椎画像(図7と同じ画像)では、脊椎の解剖学的領域のRX補正係数は、約0.6〜約1.5の間である。しかし、前方領域では、RX補正係数の範囲は、おおよそ2.0〜11.5である。補正MAPのピクセル輝度のヒストグラムを生成し、その正規化積分値を図9に示す。適切なカットオフレベルを、縦軸に示すように選択する。この例では、カットオフレベルを0.55とすることで、カットオフパラメータは、約1.7の値を有する。次に、この値は、RX補正係数に対する制限として使用できる。これにより、RX補正係数が1.7以上となる部分については、輝度を過度に増加させる輝度補正が行なわれなくなる。
これまで記述したように、RX補正は、背景ノイズのテクスチャに不要な変動を導入するおそれがある。日常的にMRI画像を見たり解釈したりする医者は、MRI画像の特定の様相に慣れている。MRIによる解剖学的組織画像の臨床的解釈を直接的に妨げないが、背景における疑似テクスチャなどの他の様相もまた、MRI画像に慣れている医者に対して著しいかく乱となる可能性があり、画像の根源的な品質に保証されない疑いさえ投げかける恐れがある。従って、背景の疑似テクスチャを減らすことは、非常に有用である。この変動を除去する手順をこれから説明する。
変動の主要源は、MAPスキャンの比率を形成する際、特に、
「RX_corr_ratio_map=map_WBC/map_AC」
または、
「RX_corr_ratio_map=平滑化(map_WBC)/平滑化(map_AC)」
または、本実施形態で求められる「tx_rx_map」を用いた
「RX_corr_ratio_map=平滑化(map_WBC)/(tx_rx_map*平滑化(map_AC))」
の際に生じる。
被検体の解剖学的組織の外側では、信号はゼロであるが、基本的なMAPスキャンは、ノイズおよびおそらく雑多なアーチファクトを含む。一般に、このノイズは、複素再構成のガウス形であり、実数部と虚数部の両方に発生するが、よくあるように、再構成が強度画像を作り出すとき、MRIで周知のように、複素ガウスノイズは、ライス分布に変換される。単純化のために、強度MAP画像のRMSノイズレベルを約「s」と仮定する。次に、ノイズの統計的分布を、一般におそらく約0.3×s〜1.7×sの範囲に及ぶものと大まかに特徴づけてもよいが、わずかのピクセルは、比較的大きい変動を伴った状態で観察される。これは、単に、ノイズの大まかな略画推定であるが、説明の目的としては有用である。
次に、2つのMAPを除算して形成される比率を観察する。該比率は、「0.3×s/1.7×s=0.176...」〜「1.7xs/0.3xs=5.666...」の近似範囲内のいくつかの値を含む。従って、該比率の全部の値は、0.176〜5.666の近似範囲の比率、あるいは、ところどころのピクセルがより極端な値さえとる状態で、約32:1の範囲係数に及ぶと推定される。
(上で約32:1と推定した)範囲係数比率は、実はsの値から独立しているという事実から分かるように、7x7カーネルによるなどの平滑化は、信号領域のノイズの相対的影響を減らす観点からは非常に貴重であるが、わずかのノイズの変動は低減されない。
しかし、ここで留意すべきは、MAPスキャンにおける空間変動は、MAPスキャン、または(平滑化を使用した場合)平滑化されたMAPそうさスキャンの分解能に匹敵する局所相関関係を示すことである。通常、これらのMAPスキャンは、補正される対象画像より低い分解能になる。従って、計算された補正比率MAPは、主として、MAPスキャンが主にノイズを標本抽出する領域で、2、3ピクセルの距離にわたって局所相関関係を示す。
ここで、相互関連している背景ノイズを減らすための手順を説明する。該手順は、望ましくは、2つの一定のパラメータで組み立てられる。「n」と記述される第1のパラメータは、後段の正則化値に対する閾値を設定する。好ましくは、RMSノイズレベルを、(平滑化前か平滑化後に)使用されるmap_WBCピクセルおよびmap_ACピクセルに対して推定するとよい。再度の単純化のために、これらの値を「s_wbc」および「s_ac」、または、更なる単純化のために、両方とも、単に「s」と仮定する。
第2のパラメータ、「b」は、背景抑制の効果的レベルを設定する。次のステップでは、MAPスキャンがノイズの領域に陥り、「n」で記述された閾値で規定されるとき、比率が、約「1/b」値をとるようになる動作が実行される。その上この動作は、滑らかに変動して、wbcおよびacが局所的に平滑であるならば、抑制動作もまた平滑となり、疑似の境界線や構造体を挿入しないという好ましい特性を有する。
ここで留意すべきは、関数「wbc_正則化=(wbc2+(n*s_wbc)2)の平方根」および「ac_正則化=(ac2+(b*n*s_ac)2)の平方根」は、以下の好ましい特性を有する。wbcが、(n×s_wbc)よりいくぶん大きいとき、wbc_正則化は、wbcと略同じである。wbcが、(n×s_wbc)よりいくぶん小さいとき、wbc_正則化は、大まかに一定値(n×s_wbc)をとる。同様に、acが、(b×n×s_ac)よりいくぶん大きいとき、ac_正則化は、acとほぼ同じである。acが、(b×n×s_ac)よりいくぶん小さいとき、ac_正則化は、大まかに一定値(b×n×s_ac)をとる。図10A〜Gは、実施形態による正則化閾値関数、および結果として生じる背景パターン抑制のグラフ描出を示す図である。上記の制限関数を使う前に、画像化ノイズのパターンを最小化するために、この関数の正則化閾値関数の例として図10A、図10B、および図10Cを参照のこと。
最後に、「rx_corr_ratio_正則化=wbc_正則化/ac_正則化」、または、「rx_corr_ratio_正則化=wbc_正則化/(ac_正則化*tx_rx_map)」の結果を考察する。
単純化のために、「tx_rx_map」の影響を無視すると、分かることは、wbcおよびacがノイズに比べて大きいとき、「rx_corr_ratio_正則化」は、(wbc/ac)に近い値を有することである。wbcおよびacがノイズと比較して大きいとき、「rx_corr_ratio_正則化」は、(s_wc/(s_acxb))または(s/(sxb))に近い値、または、丁度(1/b)を有する。そして、wbcまたはacの値が、中間にあるとき、rx_corr_ratio_正則化は、滑らかで連続的な変動を維持し、従って、疑似の境界線は作られない。
要約すると、効果的に背景を定義するパラメータ「n」と、背景を抑制するために使用される輝度増加係数を効果的に定義する係数「b」とを使用して、補正アルゴリズムを、背景に対して強化できる。b=1の場合、背景の疑似の相関関係または構造体または変動は、除去される。しかし、背景の平均強度は、明確に低減されない。bが1より大きい係数になるように選ばれた場合、「n」からソフトカットオフによって定義されるように、背景の全体的な抑制が生じる。留意点としては、これらの計算を単純化して、必要なら、より少ない近似値やより良好な精度で行うことができることである。しかし、そうすることは、特に貴重ではない場合があるが、それは、背景の様子が、画像ゴースト、運動アーチファクト、点像分布関数などの存在によって、最初に仮定されたノイズ統計情報に正確に追従しない場合があるからである。
(他の特定のアルゴリズムパラメータ選択と併用した)テストによって明らかになったことは、「n」値を3.0または4.0前後、「b」値を1.5または2.0前後にすれば、良好な工学的妥協を得ることができ、画像における背景上の効果はよりクリーンでいくぶん小さい程度となるが、解剖学的組織上の効果はほとんど知覚できない程度になるということである。
更なる留意点としては、この補正は、対象画像に関連するノイズ(および信号)が補正のために抑制されるという前述のノイズ抑制には全く依存しないことである。ここで、MAP走査に関連するノイズは、抑制される。
図10Cは、背景の正則化の効果を簡素化した例を表す。水平軸は、wbcまたはacである。上方の曲線は、図10Aと同じwbc_正則化の例である。中間の曲線は、図10Bと同じac_正則化の例である。下方の曲線は、acおよびwbcがほぼ同等になるように倍率変更され、(かつ、acおよびwbcがノイズの前に示される)特別な単純化事例に対する背景のノイズ低減の効果を示す。「n×s_wbc=1.0、および、b×n×s_ac=2.5」の場合、acおよびwbcが、1.0と比べて小さいとき、正則化比率は、約0.4(=1/2.5)であり、wbcおよびacが、2.5より大きいとき、正則化比率は、約1.0である。この例では、正則化比率が、MAP走査のノイズ特性規模から見てそれほど多くの疑似構造体なしで十分に作用することと、未補正の対象画像内に存在する背景の0.4までの近似低減を有することとを期待できる。
顕著な改善の例として図10D〜図Gを参照すると、図10Dを図10Eと比較し、かつ、図10Fを図10Gと比較することで、背景ノイズの疑似構造体などが本補正により抑制されている。なお、図10Dは、「背景正則化なし」の画像であり、図10Eは、「MAPスキャンデータから求めた比率の正則化および抑制」が行なわれた画像である。また、図10Fは、「背景正則化なし、ただし、背景強調のためのウィンドウおよびレベル変換あり」の画像であり、図10Gは、「MAPスキャンデータから求めた比率の正則化および抑制、ただし、背景強調のためのウィンドウおよびレベル変換あり」の画像である。このように、背景画像ノイズの疑似構造体、および背景ノイズの全体的なレベルの両方または一方は、ノイズの関数として、感度マッププレスキャンデータ、または感度マッププレスキャンデータの比率を正則化することによって低減される。
第3の処理要素について、以下説明する。頸椎(Cspine:cervical spine)で第1の評価のために選ばれた幾何学的モデルは、頭部の3Dガウス形、プラス、首部下部および胸部上部のz軸に沿った1Dガウス形(プラス定数)である。
図11Aは、未補正の頸椎画像を示す図であり、図11Bは、補正された頸椎画像を示す図である。いくつかの例を図11Aおよび図11Bに示す。図11Aおよび図11Bを比較すると、図11Bでは、頭骨からより遠い椎体でのより良好な整合性がある。図12は、TXまたはRX補正MAPの等高線プロットである。
図12は、正中コロナル面またはサジタル面に対するTX_または_RX補正MAPの等高線プロットを表す。軸ラベルは、320x320マトリックス対象画像のための単純なピクセル数である。
2つの形状の構成要素に対するz位置の最初の推定値が生成されると、最適化は十分収束し、これらの関数の最適化適合により最初のテストデータセットに良好なモデルが得られる。2つの形状の構成要素に対するz位置の最初の推定値とは、具体的には、頭部のz位置における中心位置、および、首部のz位置における中心位置である。頸椎モデルは、頭部モデルと比べて2つの重要な変化を有する。第1には、首部の増加した輝度に対する追加項が含まれる。第2には、2つのガウス形の最初の位置を推定するために、新しい計算が導入される。
前提となっていることは、どの方向が頂頭部を指すか、どの方向が足を指すかが分かるように、感度MAPプレスキャンの全体的な配向が十分記述されていることである。
次に、頭部および首部が位置している場所を推定するために、何らかの目印が必要である。感度MAPプレスキャンによってどれほど多くの解剖学的組織が網羅されるかは分からないので、頭部の真の頂部の位置を特定できると想定することは安全ではない。それよりむしろ、首部から肩部へ移行する場所を最も実際的な目印とするとよい。図13は、WBC感度プレスキャンMAPのコロナルMIPの左右の境界線のグラフ描出を示す図である。また、図14は、頭部および肩部のカットオフ幅を示す図である。また、図15は、最良の頭部/肩部カットオフ位置を示すプロットを示す図である。
肩の頂部の位置の推定は、以下のように行うことができる。WBC MAP画像を、Y方向に沿ってMIP画像(最大値投影画像)で投影する。次に、(WBCプレスキャンMAPのコロナルMIPの左右の境界線を描出している)図13に描出されているように、解剖学的組織の近似境界線を発見するために、このコロナル投影を左からおよび右から通過させる。左の境界線と右の境界線との間の差として、幅を計算する。図14に描出されるように、頭部より広いが、肩幅より狭いと想定されるカットオフ幅を推定する。(図14は、WBC高感度予備走査MAPのzピクセルの関数としてのxに沿った幅と、頭部を肩部から区別するためのカットオフ幅とを描出している。ただし、この例では、xに沿った全FOVは64ピクセルであり、カットオフ幅は42ピクセルである。)次に、頭部幅から肩幅を区別する最良の位置を発見するために、Zに沿った位置をテストする。その最良の位置は、図15に描出されるように、頂肩部と推定される部分である。
zに沿ったテストカット位置の関数として、最良のカット位置を図15に描出する。異なるzピクセル位置の関数として、肩から頭部を区分する最良の位置を決定する必要がある。縦軸は、カットが、広い肩から狭い頭部を適切に区分できないと思われる「悪い幅」の数値である。テストカット位置の頭部側の幅が広すぎる場合、またはテストカット位置の肩側のテストカットが狭すぎる場合、悪い幅と分かる。横軸は、zに沿ったピクセルによるカット可能な位置である。ここで、最小値は、z=43ピクセルインデックスに発生している。従って、z_インデックス=43を頂肩部の位置目印、すなわち、どこからが頭で、どこからが肩かの境界の位置目印として使用する。
最後に、頭部の不均一性パターン(3Dガウス形)の中心を、肩部の上方約10〜12cmに置く。首部および身体の不均一性パターン(z上の1Dガウス形)の中心を、肩部の下方約4〜6cmに置く。これらは、パラメータのネルダーミード最適化のための初期推定値として使用できるし、使用してもよい。以上の処理を簡潔に記載すると、WBC MAP画像のMIP画像からエッジを検出し、同一スライスにて検出された2つのエッジの幅を算出する。そして、各スライスのエッジの距離(幅)から、頭部と肩部との境界部となるスライス位置を求め、求めたスライス位置から頭部の中心位置と首部の中心位置を求めて、最適化処理の初期値とする。
腹部モデルと同様、頸椎モデル(cspine model)では、WBC MAPボリュームスキャンは、定数、プラス脳を覆う3Dガウス形、プラス、首部を覆う1Dガウス形に適合する。以下、頚椎モデルを示す。
m=c1+c2*exp(−0.5*(((x―c3)*c6_recip)2+((y−c4)*c7_recip)2))+c9*exp(−0.5*((x―cl0)*11_recip)2)
ここで、「(x−c3)*c6_recip」の代わりに「(x−c3)/c6」のような項を使用することは、より自然であると思われるかも知れないが、それは、c6が標準偏差に類似した、または、「full_width_half_max/2」に類似した素晴らしい身体的な意味を有し、かつ、c6が長さの自然な単位を有すると考えられるからである。しかし、「/c6」の代わりに「*c6_recip」を用いることによって、特に、最適化エンジンにとっては、c6を巨大化させるより良いのだが、c6_recipが非常に小さくなるとき、最適化はより安定的になると思われる。c7_recipおよびc8_recipの場合も同様である。
最適化では、c1、c2、c5、c6_recip、c7_recip、c9、c10および、c11_recipを探索する。c1、c2は、正であると考える。
(c1+c2)は、約1.0である。
探索のための推奨初期値は、以下のとおりである。
c1 = 0.25
c2 = 1.02−c1
c3 = x_center_of_mass
c4 = y_center_of_mass
c5は、肩部目印の計算から得られる。
c6_recip = 4.0/(ピクセルによる走査のx幅)
c7_recip = 0.8*c6_recip
c8_recip = c6_recip
c9 = .035
c10は、肩部目印の計算から得られる。
c11 = 12.0
頭部3D項(c5)用および首部1D項(c10)用の初期z位置を推定するには詳細な計算が必要である。これらの計算は、重要であるといえる。好適な初期値を有することは、ローカルミニマム(局所最小点)の検出を防ぐ1つの方法である。好適な初期値を有しない場合、頭部項および首部項が、逆位置になる恐れがあるという理論的危険性がある。原則として、頭部項の輝度パターンは、被検体の首部に位置する可能性があり、あるいは、首部項の輝度パターンが被検体の頭部に位置する可能性がある。あるいは、その両方が起こる可能性もある。これらのエラーはいずれも、最適化探索において非常に安定した局所最小点を有することになるが、これは正しくないだろう。好適な初期値はまた、計算時間も短縮させることになる。
初期位置c5およびc10のための計算の考え方は、肩部がある位置である被検体上の目印を探すことである。また、この作業をより確実に行うためには、どちらの方向が頭部であり、どちらの方向が足部身体肩部であるかを知るために、被験者位置決め情報を使用する。
図13および図14は、c5およびc10の初期化値の位置を例示する。LR被検体方向(被検体の左右方向)に被検体全体にわたる「幅」を生成すると、図17の第1疑似コードで示されるものに似た曲線が得られる。図17は、第1コードの一例を示す図である。
そして、広い肩部および身体と狭い頭部および首部との間で最良の区分ができる位置を発見するために、width_LRアレイを調べる。上の図15および図18の第2疑似コードを参照のこと。図18は、第2コードの一例を示す図である。
最後に、この目印の上方および下方の標準距離を移動させることによって、c5およびc10の初期値を設定する。図19にc5およびc10の初期値を設定するためのコードの一例を示す。図19は、第3コードの一例を示す図である。
(x,y,z)に対して、および、(c6_recip,c7_recip,c8_recip)に対して、異なる倍率変更を使用できる。(x,y)がcmの場合、(c3,c4)もまたcmであり、(c6_recip,c7_recip)は、 1/cmである。(x,y)が、mi_iso_geomのサイジングのピクセルインデックスである場合、(c3,c4)もまたピクセル刻みであり、(c6_recip,c7_recip)は、1/(ピクセル)である。このように、第3の処理要素において、頚椎モデルを一例とする3次元幾何学的モデルは、画像内に少なくとも1つの所定のモデル特徴を位置付けるための画像特性検出によって誘導される。ここで、画像特性検出は、モデル特徴の位置が決定される目印として、頭部首部の解剖学的組織から肩部の解剖学的組織への移行部で増大する被検体の幅を検出し利用することを含む。
z−ロールオフ機能を頸椎モデルに加えた場合、適合を少し良好にできる場合がある。一般的には、図6で分かるように、z位置が、アイソセンターから+/−12cm以上広がらないとき、ロールオフ項は、10%未満の値を有することができる。
第4の処理要素について、以下説明する。簡単な概念実証によって、例えば、3Tのシステムの本撮像においてACを受信コイルとして使わずに、WBCを受信コイルとして使うとき、この新しい輝度補正によって画像を改善できることが分かる。
原則的には、以前の輝度補正の場合、WBC−RX画像の補正の試みができたとしても、何も起こらない。その理由は、補正MAPが、「rx_corr_old=(wbc受信コイルmap)/(画像受信コイルmap)」の比率の関数だからである。しかし、画像受信コイルが、何らかのACでなくWBCそれ自体であるとき、この比率は、どこでもほとんど正確に1.0となり、画像は不変であるという結果となる。
しかし、新しい補正によって、幾つかの中央明度(または中央暗度)といったRXおよびTX空間的不均一性は除去されるので、新しい補正によって、画像の改善はできる。
原則の証明として、幾つかの「WBC RX対象画像」を収集した。(ACボリュームおよびWBCボリュームの両方をインタリーブして標準的なプレスキャンMAPを収集したが、ACプレスキャンMAP部分は全く使用しなかった。)その後、「WBC RX対象画像」を補正した。ところで、補正は2か所である。
改善されたRX補正の第1部分は、「rx_corr_new=(wbc受信コイルmap)/(画像受信コイルmap×tx_rx_map)」である。これを、「rx_corr_new=1.0/(tx_rx_map)」と単純化する。
また、TX補正も第2の部分として実行する。図16Aは、未補正のWBC_RX事例画像を示す図であり、図16Bは、補正されたWBC_RX事例画像を示す図である。
単純な概念実証の事例画像を図16Bに示す。図16Aは、未補正のWBC RX事例画像である。しかし、図16Bは、補正されており、幾つかの中央暗度は明らかに除去されている。補正によって、全シェーディングアーティファクトの1/2未満は除去されている(しかし、これを数値化することは、誤差または偏差を測定できる優れた標準基準がないので、ほとんど不可能である)。
WBC−RX画像の輝度補正を可能にする1つの方法は、MAPスキャンの形式がWBCだけで得られるようにすることである。
以上、説明したとおり、実施形態によれば、磁気共鳴イメージングのRFシェーディング不均一性に対する空間的輝度補正を行なうことができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。