以下、添付図面を参照して、本願の開示する水洗大便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、実施形態に係る水洗大便器を模式的に示す全体構成図である。図1に示すように、水洗大便器1は、便器本体2と、便器本体2へ洗浄水を供給する給水機能部3とを備える。
便器本体2は、陶器で形成されるとともに、導水路10と、ボウル部11と、排水トラップ管路12とを備える。なお、図1にあっては、図示の簡略化のため、便器本体2が備える便座や便座を覆うカバーなど一部の部材の図示を省略した。また、図1では、床置き式の便器本体2を示したが、これに限定されるものではなく、壁掛け式であってもよい。
導水路10は、リム側導水路10aと、ジェット側導水路10bとを備える。リム側導水路10aおよびジェット側導水路10bには、それぞれ、便器洗浄が行われる場合に、給水機能部3から供給された洗浄水が流通する。
ボウル部11は、導水路10に接続されるとともに、汚物を受けることが可能なボウル状に形成される。詳しくは、ボウル部11は、汚物を受ける汚物受け面13と、汚物受け面13の上縁に形成されるリム部14と、リム吐水口15と、ジェット吐水口16とを備える。
リム吐水口15は、リム部14の内周面14aに開口され、上記したリム側導水路10aに接続される。これにより、リム吐水口15は、リム側導水路10aから供給された洗浄水をボウル部11の汚物受け面13へ吐水して汚物受け面13において旋回流を生じさせる。なお、本明細書では、リム吐水口15から洗浄水が吐水されることを「リム吐水」という場合がある。
ジェット吐水口16は、汚物受け面13の底部13aに設けられ、排水トラップ管路12側に向けて対向するように開口される。また、ジェット吐水口16は、ジェット側導水路10bに接続される。これにより、ジェット吐水口16は、ジェット側導水路10bから供給された洗浄水を排水トラップ管路12へ吐水し、排水トラップ管路12内を洗浄水で急速に満たすことで、サイホン作用を早期に発生させる。なお、本明細書では、ジェット吐水口16から洗浄水が吐水されることを「ジェット吐水」という場合がある。
排水トラップ管路12は、入口部12aと、トラップ上昇部12bと、トラップ下降部12cとを備える。入口部12aは、汚物受け面13の底部13aと連続するように設けられ、ボウル部11からの洗浄水を排水トラップ管路12へ流入させる。トラップ上昇部12bは、入口部12aから斜め上方へ向けて延びるように形成される。トラップ下降部12cは、トラップ上昇部12bから下方へ向けて延びるように形成される。
また、トラップ下降部12cの下端には、排水管17が接続される。したがって、便器洗浄が行われる場合、ボウル部11の洗浄水は、排水トラップ管路12の入口部12a、トラップ上昇部12bおよびトラップ下降部12cを介して排水管17へと排水される。
便器洗浄が行われた後、排水トラップ管路12およびボウル部11には、洗浄水が溜まる。ここで、排水トラップ管路12等に溜まった洗浄水を「溜水」ということとし、図1において符号Wで示す。
図1に示すように、排水トラップ管路12等が溜水Wで満たされることで、溜水Wが封水として機能し、排水管17からの臭気等がボウル部11側へ逆流することを防止する。なお、溜水Wの水面から排水トラップ管路12の入口部12aの上端12a1までの深さを「封水深」ということとし、符号Hで示す。
ここで、上記したリム吐水およびジェット吐水について説明する。便器洗浄が行われる際、まずリム吐水が行われ、ボウル部11の汚物受け面13を洗浄する。以下では、かかるリム吐水を「前リム吐水」といい、前リム吐水による便器洗浄を「前リム洗浄」という場合がある。なお、前リム吐水は、ジェット吐水が終了するまで継続されるが、本明細書では、理解の便宜のため、ジェット吐水の開始までのリム吐水を前リム吐水ということがある。
続いて、前リム吐水と並行して、ジェット吐水が行われる。これにより、上記したように排水トラップ管路12においてサイホン作用が生じ、よって吐水された洗浄水や溜水Wは、汚物とともに排水トラップ管路12から排水管17へ排出される。以下では、ジェット吐水による便器洗浄を「ジェット洗浄」という場合がある。
ジェット吐水の終了後も、引き続きリム吐水が行われる。リム吐水口15から吐水された洗浄水は、ボウル部11の汚物受け面13を再度洗浄するとともに、排水トラップ管路12へ流れる。これにより、排水トラップ管路12の溜水Wが補給されて水位が上昇し、便器洗浄が完了する。以下では、ジェット吐水終了後のリム吐水を「後リム吐水」ということとし、後リム吐水による便器洗浄を「後リム洗浄」という場合がある。
ところで、便器本体2が陶器で形成される場合、具体的には、たとえば、ジェット側導水路10bやジェット吐水口16が陶器で形成される場合、製造ばらつきなどによってジェット側導水路10b等の圧力損失が便器ごとに変動することがある。ジェット側導水路10b等の洗浄水の瞬間流量は、上記した圧力損失の変動に伴って変わる。
そのため、たとえば、ジェット側導水路等の洗浄水の瞬間流量が減少した場合、所定時間内のジェット吐水量が減少して水洗大便器の洗浄性能が低下するおそれがあった。そこで、従来の水洗大便器にあっては、ジェット側導水路等の圧力損失が大きい場合には、たとえば単位時間あたりのジェット吐水量を増加させることで、洗浄性能が損なわれないようにしていた。
しかしながら、近年の水洗大便器においては節水化が求められており、上記のようにジェット吐水量を増加させると、総洗浄水量が増加してしまう場合があり、節水化が十分ではないといった問題が生じていた。
さらに、排水トラップ管路においては、便器洗浄後の封水深Hが一定であることが望ましいが、上記のようにジェット吐水の瞬間流量が増加したり、逆に減少したりすると、ジェット吐水後の封水深Hが変わる。そのため、ジェット吐水終了後のリム吐水量が一定の水量である場合、便器洗浄後の封水深Hが一定にならずにばらつくことがあった。
そこで、実施形態に係る水洗大便器1では、ジェット側導水路10bやジェット吐水口16の状態を検出し、検出結果に基づいてジェット吐水量と後リム吐水量との分配比率を変更することとした。これにより、節水化を図るとともに、洗浄性能の低下や封水深Hのばらつきを抑制することができる。以下、その水洗大便器1の構成について、詳しく説明する。
給水機能部3は、給水路20と、貯水タンク21と、ポンプ22と、コントローラ23とを備える。
給水路20は、一端側が水道管などの給水源Aに接続される。また、給水路20には、弁などの各種器具が設けられる。詳しくは、給水路20は、上流側から順に、止水栓30、ストレーナ31、定流量弁32、電磁弁33および切替弁34が設けられる。
また、給水路20は、切替弁34の下流側において、リム吐水口15へ洗浄水を供給するリム側給水路35と、貯水タンク21へ洗浄水を供給するタンク側給水路36とに分岐される。
止水栓30は、給水源Aから給水路20への洗浄水の流入を停止させるための器具であるが、通常は開けた状態とされる。ストレーナ31は、洗浄水に混入したゴミなどの異物を除去する。定流量弁32は、給水源Aから流入された洗浄水を、所定の流量以下に調整する。
電磁弁33は、コントローラ23からの制御信号に応じて開閉する。切替弁34は、コントローラ23からの制御信号に応じて動作し、洗浄水の流路をリム側給水路35とタンク側給水路36との間で切り替える。
リム側給水路35は、便器本体2のリム側導水路10aに接続される。したがって、リム吐水口15には給水源Aが直結されることとなり、よってリム吐水口15からは、給水源Aの給水圧力により洗浄水が吐水される。
また、リム側給水路35の途中には、リム側バキュームブレーカ37が設けられ、たとえば給水路20に負圧が発生した場合に、リム吐水口15から逆流が生じることを防止する。
タンク側給水路36は、貯水タンク21に接続される。タンク側給水路36の途中にも、タンク側バキュームブレーカ38が設けられ、たとえば給水路20に負圧が発生した場合に、貯水タンク21からの逆流が生じることを防止する。なお、リム側バキュームブレーカ37またはタンク側バキュームブレーカ38から洗浄水が溢れた場合、溢れた洗浄水は戻り管路39を通って貯水タンク21へ流入する。
貯水タンク21は、ジェット吐水用の洗浄水を貯水する。貯水タンク21の内部には、上側フロートスイッチ40と、下側フロートスイッチ41とが配置される。
上側フロートスイッチ40は、貯水タンク21内において、第1の水位L1の位置に配置される。ここで、第1の水位L1は、たとえば便器洗浄前の初期水位である。上側フロートスイッチ40は、貯水タンク21内の水位が第1の水位L1にある場合、オン信号を出力し、水位が第1の水位L1よりも低下した場合、オフ信号を出力する。なお、上記では、第1の水位L1を初期水位としたが、これに限定されるものではなく、たとえば、初期水位よりも低い任意の位置を第1の水位L1としてもよい。
下側フロートスイッチ41は、貯水タンク21内において、第2の水位L2の位置に配置される。第2の水位L2は、第1の水位L1よりも低く設定される。なお、後述するように、ジェット吐水は、貯水タンク21内の水位が第2の水位L2より低下した後も行われる。したがって、水位が第2の水位L2より低下した後のジェット吐水用の洗浄水を確保するため、第2の水位L2は、貯水タンク21の底面から所定距離離間した位置に設定されることが好ましい。
下側フロートスイッチ41は、貯水タンク21内の水位が第2の水位L2以上の場合、オフ信号を出力し、水位が第2の水位L2よりも低下した場合、オン信号を出力する。上記した各フロートスイッチ40,41から出力されたオン・オフ信号は、コントローラ23へ入力される。
貯水タンク21には、ポンプ側給水路42が接続される。かかるポンプ側給水路42は、一端が貯水タンク21の底面付近に配置される一方、他端は便器本体2のジェット側導水路10bに接続される。
ポンプ22は、ポンプ側給水路42の途中に設けられ、コントローラ23からの制御信号に応じて駆動する。したがって、ポンプ22は、駆動を示す制御信号が入力されると、貯水タンク21の洗浄水を加圧し、加圧した洗浄水をポンプ側給水路42、ジェット側導水路10bを介してジェット吐水口16から吐水させる。
コントローラ23は、給水機能部3全体を制御し、たとえば、CPU(Central Processing Unit)などの図示しない演算処理装置や、RAM(Random Access Memory)などの図示しない記憶装置を備える。
具体的にコントローラ23は、吐水量制御部50と、状態検出部51とを備える。吐水量制御部50は、ポンプ22や電磁弁33の開閉動作を制御して、リム吐水口15から吐水される洗浄水のリム吐水量およびジェット吐水口16から吐水される洗浄水のジェット吐水量を制御する。なお、吐水量制御部50は、状態検出部51の検出結果に基づいてリム吐水量およびジェット吐水量を制御するが、これについては後述する。なお、吐水量制御部50は、切替弁34における流路の切り替え動作も制御する。
状態検出部51は、導水路10、詳しくはジェット側導水路10bおよびジェット吐水口16の状態を検出する。ここで、ジェット側導水路10bおよびジェット吐水口16の状態には、ジェット側導水路10b等の圧力損失、ジェット吐水口16のサイズ(開口面積)やジェット側導水路10bの断面積、形状など、ジェット側導水路10b等における種々の特性が含まれる。
そこで、状態検出部51は、ジェット吐水の際、貯水タンク21内の水位が第1の水位L1から第2の水位L2に低下するまでの水位低下時間T1を計測することで、ジェット側導水路10b等の状態を間接的に検出する。
詳しくは、状態検出部51は、ジェット吐水が開始され、貯水タンク21内の水位が第1の水位L1よりも低下して上側フロートスイッチ40からオフ信号が入力されると、内蔵されたカウンタをスタートさせる。続いて状態検出部51は、貯水タンク21内の水位が第2の水位L2よりも低下して下側フロートスイッチ41からオン信号が入力されると、カウンタをストップさせる。このように、状態検出部51は、水位低下時間T1をカウンタで計測する。
ここで、貯水タンク21において第1の水位L1から第2の水位L2までの水量を「基本ジェット吐水量Qb」(図1参照)とした場合、上記した水位低下時間T1は、基本ジェット吐水量Qbの洗浄水をジェット吐水するのに要した時間といえる。このため、状態検出部51は、かかる水位低下時間T1の長短によってジェット側導水路10b等の状態を検出することとした。
次に、上記した状態検出部51での状態検出と、吐水量制御部50でのリム吐水量およびジェット吐水量の制御とについて、図2を参照して詳説する。図2は、ジェット吐水量と後リム吐水量との分配例を示す図である。なお、図2では、水位低下時間T1とジェット側導水路10b等の状態との関係や、ジェット側導水路10b等の状態とリム吐水量およびジェット吐水量との関係も示している。
以下、水位低下時間T1の「長短」や圧力損失の「大小」などと表現するが、これは、たとえば実験を通じて複数の水洗大便器の水位低下時間等を計測し、計測した値の平均値を基準値とした場合において、かかる基準値に対する「長短」や「大小」の意味で用いる。
図2に示すように、水位低下時間T1が短い場合、基本ジェット吐水量Qbの洗浄水が早期にジェット吐水されたといえるので、ジェット側導水路10bおよびジェット吐水口16を流れる洗浄水の瞬間流量は多いといえる。
ジェット側導水路10b等の瞬間流量が多い場合、たとえばジェット吐水口16のサイズが大きく、ジェット側導水路10b等の圧力損失は小さいと推定される。したがって、状態検出部51は、水位低下時間T1が短い場合、ジェット側導水路10b等の状態が圧力損失の小さい状態であることを検出する。なお、上記では、ジェット側導水路10b等の瞬間流量が多い理由としてジェット吐水口16のサイズを挙げたが、これは例示であって、たとえばジェット側導水路10bの形状や水路壁の粗さ等によって瞬間流量が多くなることもある。
他方、水位低下時間T1が長い場合、基本ジェット吐水量Qbの洗浄水がジェット吐水されるのに時間がかかっていることから、ジェット側導水路10b等の洗浄水の瞬間流量は少ないといえる。ジェット側導水路10b等の瞬間流量が少ない場合、たとえばジェット吐水口16のサイズが小さく、ジェット側導水路10b等の圧力損失は大きいと推定される。したがって、状態検出部51は、水位低下時間T1が長い場合、ジェット側導水路10b等の状態が圧力損失の大きい状態であることを検出する。
このように、状態検出部51は、水位低下時間T1を計測し、計測した水位低下時間T1の長短によってジェット側導水路10b等の状態を検出する。これにより、ジェット側導水路10b等の状態を容易に検出することができる。
吐水量制御部50は、状態検出部51の検出結果に基づいてジェット吐水量と後リム吐出量とを制御する。ここでまず、ジェット吐水量の制御について説明する。
ジェット吐水は、基本ジェット吐水量Qbの洗浄水がジェット吐水口16から吐水されて貯水タンク21内の水位が第2の水位L2より低下した後も行われる。すなわち、貯水タンク21内において、第2の水位L2より下方にある洗浄水もジェット吐水される。
吐水量制御部50は、第2の水位L2より下方にある洗浄水の量を増減させて調整し、ジェット吐水量を制御する。以下、吐水量制御部50によって調整される洗浄水の量を「調整ジェット吐水量Qc」ということとする。なお、図1において、第3の水位L3は、ジェット吐水が終了した時点での水位を示しており、上記した調整ジェット吐水量Qcは、第2の水位L2から第3の水位L3までの水量である。
また、図2に示すグラフは、総洗浄水量Qtotalに対する前リム吐水量Qa、ジェット吐水量Qjetおよび後リム吐水量Qdの分配比率を示すグラフである。図2に示すように、前リム吐水量Qaと、ジェット吐水量Qjetと、後リム吐水量Qdとの総和が総洗浄水量Qtotalである。また、ジェット吐水量Qjetは、上記した基本ジェット吐水量Qbに調整ジェット吐水量Qcを加算したものである。
なお、図2においては、説明の便宜のため、前リム吐水量Qa、ジェット吐水量Qjetおよび後リム吐水量Qdの基準となる値を上段に示し、各吐水量の末尾に「0」を付した。また、水位低下時間T1が短い場合の各吐水量の末尾には「1」を、水位低下時間T1が長い場合の各吐水量の末尾には「2」を付した。
以下では、ジェット吐水量Qjet等の「増加」や「減少」などと表現するが、これは、基準となるジェット吐水量Qjet0等に対する「増加」や「減少」の意味で用いる。また、理解の便宜のため、前リム吐水量Qaは、状態検出部51での状態検出結果にかかわらず、一定であるものとする。
状態検出部51において、水位低下時間T1が短く、ジェット側導水路10b等の圧力損失が小さい状態が検出された場合、ジェット吐水によるサイホン作用の時間が短く、水洗大便器1の洗浄性能は低いと考えられる。そこで、吐水量制御部50は、図2に示すように、調整ジェット吐水量Qc1を増加させてジェット吐水量Qjet1を増やし、サイホン作用を持続させるようにした。これにより、ジェット側導水路10b等の圧力損失の変動による影響を受けにくくすることができ、よって洗浄性能の低下を抑制することができる。
吐水量制御部50は、ジェット吐水量Qjet1を増加させた場合、増加させた分だけ後リム吐水量Qd1を減少させる。すなわち、吐水量制御部50は、リム吐水量Qa1+Qd1とジェット吐水量Qjet1との総和(総洗浄水量Qtotal)を一定に維持しつつ、ジェット吐水量Qjet1と後リム吐水量Qd1との分配比率を変更する。これにより、節水化を図ることができ、さらに便器洗浄後における排水トラップ管路12の封水深Hのばらつきを抑制することができる。
すなわち、総洗浄水量Qtotalを一定に維持することから、ジェット吐水量Qjet1を増加させた場合であっても、節水化を図ることができる。また、ジェット吐水量Qjet1を増加させた場合、サイホン作用終了後に排水トラップ管路12に残存する溜水Wが増え、ジェット吐水終了後の封水深Hは深くなる。そのため、後リム吐水量Qd1を減少させても、便器洗浄後の排水トラップ管路12の封水深Hを十分な深さで一定にすることができ、封水深Hのばらつきを抑制することができる。
他方、状態検出部51において、水位低下時間T1が長く、ジェット側導水路10b等の圧力損失が大きい状態が検出された場合、ジェット吐水によるサイホン作用が長く持続されており、水洗大便器1の洗浄性能は高いと考えられる。そこで、吐水量制御部50は、図2に示すように、調整ジェット吐水量Qc2を減少させてジェット吐水量Qjet2を減らすようにした。なお、ジェット吐水量Qjet2を減少させた場合であっても、サイホン作用は既に長く持続されていることから、洗浄性能が低下することはない。
吐水量制御部50は、ジェット吐水量Qjet2を減少させた場合、減少させた分だけ後リム吐水量Qd2を増加させる。これにより、節水化を図ることができ、さらに便器洗浄後における排水トラップ管路12の封水深Hのばらつきを抑制することができる。
すなわち、総洗浄水量Qtotalを一定に維持することから、後リム吐水量Qd2を増加させた場合であっても、節水化を図ることができる。また、ジェット吐水量Qjet2を減少させた場合、サイホン作用が長く持続されていることから、サイホン作用終了後に排水トラップ管路12に残存する溜水Wは減り、ジェット吐水終了後の封水深Hは浅くなる。
そこで、後リム吐水量Qd2を増加させることで、便器洗浄後の排水トラップ管路12の封水深Hを十分な深さで一定にすることができ、よって封水深Hのばらつきを抑制することができる。なお、上記したジェット吐水量Qjetおよび後リム吐水量Qdの増減は、それぞれの吐水時間を調整することで行われるが、これについては後述する。
次いで、水洗大便器1の便器洗浄の動作を図3を参照して具体的に説明する。図3は、便器洗浄の動作手順を示すタイムチャートである。
図3に示すように、便器洗浄前の待機状態において、コントローラ23は、図示しない便器洗浄スイッチが使用者によって操作されて便器洗浄指示を示す洗浄指示信号が時刻t1で入力されると、前リム洗浄を開始する。具体的にはまず、吐水量制御部50が、切替弁34をリム側給水路35側からタンク側給水路36側へ切り替える。
なお、上記では、便器洗浄スイッチからの信号によって前リム洗浄を開始したが、これに限定されるものではなく、たとえば便器本体2に設けられた人体検知センサ(図示せず)からの出力信号に基づいて前リム洗浄を開始してもよい。
次いで、吐水量制御部50は、時刻t2で電磁弁33を開弁させ、給水路20の洗浄水を切替弁34へ流入させる。これにより、給水路20内に溜まっていた空気がタンク側給水路36を介して貯水タンク21内へ排出される。このように、給水路20内の空気を予め排出することで、リム吐水のときに空気の排出音や水はね等が発生することを防止することができる。
次いで、吐水量制御部50は、時刻t3で切替弁34をタンク側給水路36側からリム側給水路35側へ切り替える。これにより、リム吐水口15から洗浄水が吐出される。リム吐水口15から吐出された洗浄水は、ボウル部11の汚物受け面13を旋回しながら流れ、汚物受け面13を洗浄する。
次いで、時刻t4において、コントローラ23はジェット洗浄を開始する。具体的にはまず、吐水量制御部50がポンプ22を起動させる。これにより、ポンプ22によって加圧された洗浄水が、ジェット吐水口16から吐出される。なお、図3に示すように、ジェット洗浄中も電磁弁33は開弁されるとともに、切替弁34はリム側給水路35側へ切り替えられたままであるため、ジェット吐水と並行してリム吐水も行われる。
ジェット洗浄においてポンプ22の回転数は、時刻t5までに比較的低い第1の回転数N1まで上昇され、かかる第1の回転数N1は時刻t6まで維持される。このように、ポンプ22の起動直後の回転数を比較的低くすることで、ポンプ側給水路42に溜まっていた空気がジェット吐水口16から急速に排出されて、空気の排出音が発生することを防止することができる。
また、時刻t5において、貯水タンク21の水位が第1の水位L1よりも低下すると、状態検出部51は、上側フロートスイッチ40からオフ信号が入力されて水位低下時間T1の計測を開始する。なお、上記では、ポンプ22の回転数が第1の回転数N1になるタイミングと、上側フロートスイッチ40からオフ信号が入力されるタイミングとを同じ時刻t5としたが、これは例示であって、必ずしも同じタイミングではない。
次いで、吐水量制御部50は、ポンプ22の回転数を第1の回転数N1よりも高い第2の回転数N2まで上昇させる(時刻t7)。第2の回転数N2は、サイホン起動期間である時刻t7から時刻t8まで維持される。ポンプ22の回転数が上昇することにより、貯水タンク21内の洗浄水は大流量でジェット吐水口16から吐出される。これにより、排水トラップ管路12内は急速に洗浄水で満たされ、サイホン作用が起動される。
続いて、吐水量制御部50は、時刻t8でポンプ22の回転数を第1の回転数N1より高く、かつ、第2の回転数N2より低い第3の回転数N3へ低下させる。第3の回転数N3は、サイホン持続期間である時刻t9まで維持される。上記のようにポンプ22の回転数を低下させると、ジェット吐水口16から吐出される洗浄水の量が低下するが、低下した洗浄水の量はサイホン作用を持続させるには十分な水量であるため、サイホン作用は持続される。
このように、サイホン持続期間においてジェット吐水口16から吐出される洗浄水の量を低下させつつ、サイホン作用を持続させる。これにより、ジェット洗浄に要する洗浄水の量を低く抑えて節水化を図りながら、サイホン作用をできるだけ長く持続させることができる。
次いで、吐水量制御部50は、ポンプ22の回転数を、比較的低い第4の回転数N4まで下降させる(時刻t10)。第4の回転数N4は、ジェット吐水が終了するまで維持される。なお、図3においては、第1の回転数N1と第4の回転数N4とを同じ値としたが、これは例示であって、互いに異なる値であってもよい。
時刻t10以降、サイホン作用が終了してブロー期間が開始される。ここでは、理解の便宜のため、時刻t10からジェット吐水が終了する時刻t12までをブロー期間と称する。
ブロー期間においては、ポンプ22の回転数は、比較的低い第4の回転数N4とされることから、排水トラップ管路12に流入する洗浄水の量は比較的少なく、サイホン作用が再び起動されることはない。また、ブロー期間では、ボウル部11や排水トラップ管路12内に残った汚物をジェット吐水によって排水管17へ押し出す、ブロー洗浄が行われる。
なお、上記では、時刻t10から時刻t12までをサイホン作用終了後のブロー期間としたが、必ずしも時刻t10の時点でサイホン作用が終了している必要はない。ただし、後述する時刻t11までに、サイホン作用が終了していることが好ましい。
ブロー期間において、時刻t11で貯水タンク21の水位が第2の水位L2よりも低下すると、状態検出部51は、下側フロートスイッチ41からオン信号が入力されて水位低下時間T1の計測を終了する。
ここで、吐水量制御部50は、状態検出部51で計測された水位低下時間T1に基づき、調整ジェット吐水量Qcの洗浄水をジェット吐水する調整ジェット吐水時間T2と後リム吐水量Qdの洗浄水をリム吐出する後リム吐水時間T3とを算出する。
詳しくは、吐水量制御部50はまず、水位低下時間T1に基づいてジェット吐水量Qjetと後リム吐水量Qdとの分配比率を変更する。
たとえば、水位低下時間T1と分配比率との関係を示す情報を予め実験等を通じて取得し、取得した情報を記憶装置に記憶させておく。そして、吐水量制御部50は、計測された水位低下時間T1と記憶された情報とに基づき、たとえば「X:Y」といったジェット吐水量Qjetと後リム吐水量Qdとの分配比率を求める。なお、上記した情報は、たとえば、水位低下時間T1と分配比率とを対応付ける表や演算式などであるが、これらに限定されるものではない。また、上記した情報を含んだプログラムを記憶装置に記憶させ、プログラムに従って分配比率を求めることとしてもよい。
次いで、吐水量制御部50は、変更した分配比率に応じたジェット吐水量Qjetから基本ジェット吐水量Qbを減算して調整ジェット吐水量Qcを求め、求めた調整ジェット吐水量Qcの洗浄水をジェット吐水するのに要する調整ジェット吐水時間T2を算出する。また、吐水量制御部50は、変更した分配比率に応じた後リム吐水量Qdを後リム吐水するのに要する後リム吐水時間T3を算出する。
上記では、調整ジェット吐水時間T2および後リム吐水時間T3をそれぞれ算出するようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、たとえば、水位低下時間T1に対応付けられた調整ジェット吐水時間T2および後リム吐水時間T3の情報を予め記憶装置に記憶させておき、計測された水位低下時間T1に応じて情報を読み出して調整ジェット吐水時間T2等を直接得るようにしてもよい。
吐水量制御部50は、時刻t11から上記した調整ジェット吐水時間T2が経過する時刻t12までジェット吐水を継続して行う。このようにして、ジェット吐水の時間(T1+T2)が調整される。
また、吐水量制御部50は、ジェット吐水の時間を、ブロー期間の長さで調整する。ここで、仮に、ジェット吐水の時間をサイホン作用が発生しているサイホン持続期間の長さで調整すると、サイホン作用に影響を与え、洗浄性能が低下するおそれがある。これに対し、吐水量制御部50は、ジェット吐水の時間をサイホン作用終了後のブロー期間の長さで調整することから、サイホン作用自体に影響を与えることはなく、洗浄性能の低下をより一層抑制することができる。
次いで、吐水量制御部50は、時刻t12においてポンプ22を停止させてジェット洗浄を終了するとともに、後リム洗浄を開始する。具体的に吐水量制御部50は、時刻t12から上記した後リム吐水時間T3が経過する時刻t13まで後リム吐水を行う。これにより、ボウル部11内の溜水Wが補給されて水位が上昇する。
このように、水洗大便器1においては、変更した分配比率に応じて調整ジェット吐水時間T2と後リム吐水時間T3とを調整することで、ジェット吐水量Qjetと後リム吐水量Qdとを制御するようにした。これにより、ジェット吐水量Qjetと後リム吐水量Qdとをそれぞれ、簡易な構成で制御することができる。
次いで、吐水量制御部50は、時刻t13において、切替弁34をリム側給水路35側からタンク側給水路36側へ切り替え、後リム洗浄を終了して貯水タンク21への給水を開始する。貯水タンク21の水位が上昇し、時刻t14において第2の水位L2に到達すると、吐水量制御部50には、下側フロートスイッチ41からオフ信号が入力される。さらに水位が上昇して第1の水位L1に到達すると、吐水量制御部50は、上側フロートスイッチ40からオン信号が入力され、電磁弁33を閉弁する(時刻t15)。
そして、吐水量制御部50は、時刻t16で切替弁34をタンク側給水路36側からリム側給水路35側へ切り替えることで、洗浄前の待機状態に復帰し、一連の便器洗浄が完了する。
次に、図4を参照し、水洗大便器1のコントローラ23が実行する処理について説明する。図4は、コントローラ23が実行する処理手順を示すフローチャートである。
図4に示すように、コントローラ23の吐水量制御部50は、洗浄指示信号が入力されたか否かを判定する(ステップS1)。吐水量制御部50は、洗浄指示信号が入力されていないと判定された場合(ステップS1,No)、ステップS1の処理を繰り返す。
一方、吐水量制御部50は、洗浄指示信号が入力されたと判定された場合(ステップS1,Yes)、切替弁34をタンク側給水路36側へ切り替え(ステップS2)、続いて電磁弁33を開弁させる(ステップS3)。
次いで、吐水量制御部50は、切替弁34をリム側給水路35側へ切り替え(ステップS4)、ポンプ22を起動させる(ステップS5)。続いて、コントローラ23の状態検出部51は、上側フロートスイッチ40からオフ信号が入力されたか否かを判定する(ステップS6)。
状態検出部51は、オフ信号が入力されていないと判定された場合(ステップS6,No)、ステップS6を繰り返す一方、入力されたと判定された場合(ステップS6,Yes)、カウンタをスタートさせて水位低下時間T1の計測を開始する(ステップS7)。
次いで、状態検出部51は、下側フロートスイッチ41からオン信号が入力されたか否かを判定する(ステップS8)。状態検出部51は、オン信号が入力されていないと判定された場合(ステップS8,No)、ステップS8を繰り返す。一方、状態検出部51は、オン信号が入力されたと判定された場合(ステップS8,Yes)、カウンタをストップさせて水位低下時間T1の計測を終了する(ステップS9)。
吐水量制御部50は、水位低下時間T1に基づいてジェット吐水量Qjetと後リム吐水量Qdとの分配比率を変更する(ステップS10)。そして、吐水量制御部50は、変更した分配比率に応じて調整ジェット吐水時間T2と後リム吐水時間T3とを算出する(ステップS11)。
続いて、吐水量制御部50は、水位低下時間T1の計測終了後に調整ジェット吐水時間T2が経過したか否かを判定し(ステップS12)、経過していないと判定された場合(ステップS12,No)、ステップS12を繰り返す。他方、吐水量制御部50は、調整ジェット吐水時間T2が経過したと判定された場合(ステップS12,Yes)、ポンプ22を停止させる(ステップS13)。
次いで、吐水量制御部50は、ポンプ22を停止させた後に後リム吐水時間T3が経過したか否かを判定し(ステップS14)、経過していないと判定された場合(ステップS14,No)、ステップS14を繰り返す。他方、吐水量制御部50は、後リム吐水時間T3が経過したと判定された場合(ステップS14,Yes)、切替弁34をタンク側給水路36側へ切り替える(ステップS15)。
次いで、吐水量制御部50は、上側フロートスイッチ40からオン信号が入力されたか否かを判定する(ステップS16)。吐水量制御部50は、オン信号が入力されていないと判定された場合(ステップS16,No)、ステップS16を繰り返す一方、入力されたと判定された場合(ステップS16,Yes)、電磁弁33を閉弁する(ステップS17)。そして、吐水量制御部50は、切替弁34をリム側給水路35側へ切り替え(ステップS18)、便器洗浄が完了する。
上述してきたように、実施形態に係る水洗大便器1は、便器本体2と、吐水量制御部50と、状態検出部51とを備える。便器本体2は、洗浄水が流通する導水路10、および、導水路10に接続されるとともにリム吐水用のリム吐水口15およびジェット吐水用のジェット吐水口16が形成されるボウル部11を備える。吐水量制御部50は、リム吐水口15から吐水される洗浄水のリム吐水量Qa+Qdおよびジェット吐水口16から吐水される洗浄水のジェット吐水量Qjetを制御する。
状態検出部51は、導水路10およびジェット吐水口16の少なくともいずれかの状態を検出する。また、吐水量制御部50は、状態検出部51により検出された検出結果に基づき、リム吐水量Qa+Qdとジェット吐水量Qjetとの総和(総洗浄水量Qtotal)を一定に維持しつつ、ジェット吐水量Qjetとジェット吐水の終了後におけるリム吐水量(後リム吐水量Qd)との分配比率を変更する。
これにより、節水化を図るとともに、洗浄性能の低下および封水深Hのばらつきを抑制することができる。
なお、上記した実施形態においては、調整ジェット吐水量Qcを増減させてジェット吐水量Qjetを制御するようにしたが、これに限られず、たとえば、ポンプ22の回転数を増減させてジェット吐水量Qjetを制御するようにしてもよい。
また、上記では、ジェット側導水路10bおよびジェット吐水口16の状態を水位低下時間T1に基づいて検出するようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、たとえば、ジェット側導水路10bまたはジェット吐水口16に流量計を配置して瞬間流量を計測し、計測した瞬間流量に基づいてジェット側導水路10bおよびジェット吐水口16の状態を検出してもよい。また、ジェット側導水路10bおよびジェット吐水口16のうち、いずれか一方の状態を検出するように構成してもよい。
また、上記では、洗浄指示信号が入力されるたびに、水位低下時間T1を測定し、調整ジェット吐水時間T2と後リム吐水時間T3とを調整するようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、上記した時間計測および時間調整を、たとえば水洗大便器1の出荷前や実際の便器取り付け施工時など任意のタイミングで一度行って、得られた調整ジェット吐水時間T2や後リム吐水時間T3を記憶装置に記憶させておいてもよい。
さらには、所定の期間が経過するごとに上記した時間計測および時間調整を行ってもよい。これにより、調整ジェット吐水時間T2や後リム吐水時間T3を、便器本体2の経年変化に応じて適宜に修正することができる。
また、上記においては、上側フロートスイッチ40および下側フロートスイッチ41を用いて貯水タンク21の水位を検知するようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、たとえば、超音波式、静電容量式や圧力式などその他の種類の水位検出装置を用いて貯水タンク21の水位を検知するようにしてもよい。
また、上記では、貯水タンク21内の洗浄水をポンプ22で加圧してジェット吐水するように構成したが、これに限定されるものではない。すなわち、たとえば、ポンプ22で加圧した洗浄水をリム吐水およびジェット吐水の両方に用いるようにしてもよい。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。