JP6281489B2 - 多層プリント配線板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は多層プリント配線板の製造方法に関する。更に、該多層プリント配線板を用いた半導体装置に関する。
半導体装置に欠くことができない集積回路には多層プリント配線板が使用されており、その主要部品として、金属張積層板が挙げられる。その金属張積層板を製造する方法としては、任意のサイズに断裁することによりプリプレグを準備し、これを1枚あるいは数枚重ね、その上下にプリプレグと同サイズあるいはそれよりも大きいサイズの銅箔を配し、これを熱盤間に多段積層して真空プレス成型するという工法が一般的である。
昨今、半導体装置の小型化、高機能化に伴い、多層プリント配線板において、強度を維持したままの薄層化が求められてきており、金属張積層板のみならず、ビルドアップ層においても、剛性あるプリプレグを積層することが求められている。しかし、プリプレグのビルドアップ積層は、プリプレグ中のシート状繊維基材の存在により、流動性、埋め込み性などのバランスを保つことが難しい。とりわけ、得られる絶縁層の線熱膨張係数を低下させるべく無機充填材を高い含有量(例えば、60質量%以上)にて含む硬化性樹脂組成物を使用する場合には、絶縁層内のボイド生成や絶縁層表面の平滑性といった問題がより顕在化し、斯かるバランスの維持はより困難となる。特許文献1では、プリプレグを積層することについての記載はあるが、プリプレグ自体や製法面での検討は乏しく、得られる絶縁層のガラス転移温度が低いなど、多層プリント配線板の性能としても十分なものではなかった。
特開2009−49365号公報
本発明の課題は、ガラス転移温度が高く線熱膨張係数が低い、ボイドが抑制された、均一な膜厚の絶縁層を有する多層プリント配線板の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のプリプレグと特定の真空積層方法を組み合わせることにより、上記課題が達成できることを見出した。
本発明は、以下の態様を含む。
〔1〕 (A)支持体付きプリプレグを内層回路基板に加熱及び加圧して真空積層する工程、
(B)プリプレグを熱硬化して絶縁層を形成する工程、
を含有することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法であって、
前記プリプレグが硬化性樹脂組成物とシート状繊維基材とを含有し、
前記プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率が30質量%以上85質量%以下であり、
前記硬化性樹脂組成物が無機充填材を含有し、
前記(A)工程において、積層時の真空度が0.001〜0.40kPa、真空到達時間が15秒間以下、積層時の加圧が1〜16kgf/cm、積層時の加熱温度が60〜160℃、積層時の時間が10〜300秒間であることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
〔2〕 前記プリプレグの厚みを1とした場合のシート状繊維基材の厚みが0.25〜0.88であることを特徴とする上記〔1〕に記載の多層プリント配線板の製造方法。
〔3〕 前記プリプレグ中のシート状繊維基材と無機充填材との含有比率(シート状繊維基材の質量/無機充填材の質量)が0.2〜2.5であることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の多層プリント配線板の製造方法。
〔4〕 前記シート状繊維基材がガラスクロス、ガラス不織布、有機織布及び有機不織布からなる群より選択される1種以上を含有することを特徴とする、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
〔5〕 前記シート状繊維基材がEガラス繊維、Sガラス繊維及びQガラス繊維からなる群より選択される1種以上を含有することを特徴とする、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
〔6〕 前記無機充填材の平均粒径が0.01〜2μmであることを特徴とする上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
〔7〕 前記無機充填材の平均粒径が0.01〜0.4μmであることを特徴とする上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
〔8〕 前記無機充填材の含有量が、硬化性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、40〜85質量%であることを特徴とする上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
〔9〕 前記無機充填材の含有量が、硬化性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、60〜85質量%であることを特徴とする上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
〔10〕 前記(A)工程において、
ロール状に巻き取られた支持体付きプリプレグを、保護フィルムが張り合わせてある場合は保護フィルムを剥離し、順次連続的に真空ラミネーターに供給し、支持体付きプリプレグのプリプレグ面を内層回路基板に向かい合わせ、真空ラミネーターを用いて加熱及び加圧して支持体付きプリプレグを内層回路基板に真空積層することを特徴とする上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
〔11〕 前記(B)工程において、
熱硬化時の温度が150〜250℃、熱硬化時の時間が30〜300分間であることを特徴とする上記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
〔12〕 前記(B)工程において、
加熱オーブンを用いてプリプレグを熱硬化して絶縁層を形成することを特徴とする上記〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
〔13〕 前記(B)工程において、
プリプレグを加熱オーブン内で垂直状態に配置し、熱硬化して絶縁層を形成することを特徴とする上記〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
〔14〕 前記(B)工程において、
多層プリント配線板を耐熱治具で固定してプリプレグを熱硬化し、硬化後に治具の内側の多層プリント配線板を切り出すことを特徴とする上記〔1〕〜〔13〕のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
〔15〕 前記絶縁層の線熱膨張係数が15ppm以下であることを特徴とする上記〔1〕〜〔14〕のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
〔16〕 前記絶縁層のガラス転移温度が181℃以上であることを特徴とする上記〔1〕〜〔15〕のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
〔17〕 更に(C)支持体を剥離する工程を含むことを特徴とする上記〔1〕〜〔16〕のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
〔18〕 更に(D)ビアホールを形成する工程を含むことを特徴とする上記〔1〕〜〔17〕のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
〔19〕 更に(E)デスミア工程を含むことを特徴とする上記〔1〕〜〔18〕のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
〔20〕 更に(F)メッキにより導体層を形成する工程を含むことを特徴とする上記〔1〕〜〔19〕のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
〔21〕 上記〔1〕〜〔20〕のいずれかに記載の製造方法で得られた多層プリント配線板を含有することを特徴とする半導体装置。
本発明によれば、特定のプリプレグと特定の真空積層方法を組み合わせることにより、ガラス転移温度が高く線熱膨張係数が低い、ボイドが抑制された、均一な膜厚の絶縁層を有する多層プリント配線板の製造方法を提供することができる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明は、
(A)支持体付きプリプレグを内層回路基板に加熱及び加圧して真空積層する工程、
(B)プリプレグを熱硬化して絶縁層を形成する工程、
を含有することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法であって、
前記プリプレグが硬化性樹脂組成物とシート状繊維基材とを含有し、
前記プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率が30質量%以上85質量%以下であり、
前記硬化性樹脂組成物が無機充填材を含有し、
前記(A)支持体付きプリプレグを内層回路基板に加熱及び加圧して真空積層する工程において、積層時の真空度が0.001〜0.40kPa、真空到達時間が15秒間以下、積層時の加圧が1〜16kgf/cm、積層時の加熱温度が60〜160℃、積層時の時間が10〜300秒間であることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
<(A)工程>
(A)工程は、支持体付きプリプレグを内層回路基板に加熱及び加圧して真空積層する工程である。本発明で使用するプリプレグは、硬化性樹脂組成物とシート状繊維基材を含有している。
[硬化性樹脂組成物]
硬化性樹脂組成物は、特に限定なく使用できるが、中でも、(c)無機充填材を含有する組成物が好ましく、(a)エポキシ樹脂及び(c)無機充填材を含有する組成物がより好ましく、(a)エポキシ樹脂、(b)硬化剤及び(c)無機充填材を含有する組成物が更に好ましい。(a)エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノール類のジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物、及びアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びにこれらのエポキシ樹脂のアルキル置換体、ハロゲン化物及び水素添加物等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
これらの中でも、耐熱性向上、絶縁信頼性向上、機械特性向上、金属箔(導体層)との密着性向上の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂がより好ましい。具体的には、例えば、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「エピコート828EL」)、ナフタレン型2官能エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」)、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4700」、「HP4710」)、ナフトール型エポキシ樹脂(東都化成(株)製「ESN−475V」)、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC(株)製「EXA−7310」、「EXA−7311」、「EXA−7311L」、「EXA7311−G3」)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス(株)製「EX711」、「EX721」、(株)プリンテック製「R540」)、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂(ダイセル化学工業(株)製「PB−3600」)、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000H」、「NC3000L」、三菱化学(株)製「YX4000」)などが挙げられる。
(a)エポキシ樹脂の含有量の上限値は、機械特性向上という観点から、硬化性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。一方、エポキシ樹脂の含有量の下限値は、耐熱性向上、絶縁信頼性向上、金属箔との密着性向上という観点から、硬化性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましい。また、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂を併用することが好ましく、その場合、液状エポキシ樹脂はプリプレグの可とう性を向上させ、プリプレグにおける真空積層方法を可能にするのに好適であり、固体状エポキシ樹脂はプリプレグの剛性を付与するために好適である。斯かる観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂の配合割合(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は質量比で1:0.1〜1:2の範囲が好ましく、1:0.3〜1:1.8の範囲がより好ましく、1:0.6〜1:1.5の範囲が更に好ましい。
なお本発明において、「液状エポキシ樹脂」とは、温度20℃で液状のエポキシ樹脂をいい、「固体状エポキシ樹脂」とは、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂をいう。
(b)硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、グアニジン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、又はこれらのエポキシアダクトやマイクロカプセル化物等を挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
これらの中でも、耐熱性向上、金属箔(導体層)との密着性向上という観点から、フェノール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤が好ましい。
フェノール系硬化剤としては、特に制限されないが、ビフェニル型硬化剤、ナフタレン型硬化剤、フェノールノボラック型硬化剤、ナフチレンエーテル型硬化剤、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤が好ましい。具体的には、ビフェニル型硬化剤としてMEH−7700、MEH−7810、MEH−7851(明和化成(株)製)、ナフタレン型硬化剤としてNHN、CBN、GPH(日本化薬(株)製)、SN170、SN180、SN190、SN475、SN485、SN495、SN375、SN395(東都化成(株)製)、EXB9500(DIC(株)製)、フェノールノボラック型硬化剤としてTD2090(DIC(株)製)、ナフチレンエーテル型硬化剤としてEXB−6000(DIC(株)製)等が挙げられる。トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤の具体例としては、LA3018、LA7052、LA7054、LA1356(DIC(株)製)等が挙げられる。特に、外観向上という点でトリアジン骨格含有フェノール系硬化剤が好適である。
活性エステル系硬化剤には、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル化合物としては、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られる活性エステル化合物が好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル化合物が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル化合物がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。活性エステル化合物は1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。活性エステル化合物としては、特開2004−277460号公報に開示されている活性エステル化合物を用いてもよく、また市販の活性エステル化合物を用いてもよい。市販されている活性エステル化合物としては、例えば、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物、フェノールノボラックのベンゾイル化物などが挙げられる。具体的には、例えば、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、EXB−9451、EXB−9460(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物としてDC808、フェノールノボラックのベンゾイル化物としてYLH1026(三菱化学(株)製)などが挙げられる。
シアネートエステル系硬化剤としては、特に制限はないが、ノボラック型(フェノールノボラック型、アルキルフェノールノボラック型など)シアネートエステル系硬化剤、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル系硬化剤、ビスフェノール型(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型など)シアネートエステル系硬化剤、及びこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、500〜4500が好ましく、600〜3000がより好ましい。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ジシクロペンタジエン構造含有フェノール樹脂等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。市販されているシアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製、PT30、シアネート当量124)、ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー(ロンザジャパン(株)製、BA230、シアネート当量232)、ジシクロペンタジエン構造含有シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製、DT−4000、DT−7000)等が挙げられる。
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体的例としては、F−a、P−d(四国化成(株)製)、HFB2006M(昭和高分子(株)製)などが挙げられる。
(a)エポキシ樹脂と(b)硬化剤の配合比率は、エポキシ樹脂のエポキシ基数を1としたときに硬化剤の反応基数が0.4〜2.0の範囲となる比率が好ましく、0.5〜1.0の範囲となる比率がより好ましい。なお硬化性樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂のエポキシ基数とは、各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値である。また、硬化剤の反応基数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。反応基の比率がこの範囲内であることで、硬化物の機械強度や耐水性が向上する傾向にある。
(c)無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、雲母、マイカ、珪酸塩、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン等が挙げられ、シリカ、アルミナが好ましく、特に無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等のシリカが好ましい。シリカとしては球状のシリカが好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。樹脂組成物への充填性向上の観点から、球状溶融シリカが好ましい。市販されている球状溶融シリカとして、例えば、(株)アドマテックス製「SOC2」、「SOC1」が挙げられる。
(c)無機充填材の平均粒径の上限値は、絶縁信頼性を向上させるという点や、シート状繊維基材への樹脂ワニスの含浸性を向上させる観点から、2μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.8μm以下が更に好ましく、0.6μm以下が更により好ましく、0.4μm以下が殊更好ましく、0.3μm以下が特に好ましい。一方、無機充填材の平均粒径の下限値は、無機充填材の凝集を防止し、分散性を向上させる観点から、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上が更に好ましい。なかでも、シート状繊維基材への樹脂ワニスの含浸性を向上させて絶縁層の線熱膨張係数を低下させる観点から、平均粒径0.01〜0.4μmの無機充填材を併用することが好ましく、平均粒径0.01〜0.3μmの無機充填材を併用することがより好ましい。無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製 LA−500等を使用することができる。
(c)無機充填材の含有量は、シート状繊維基材への含浸性を向上させるという観点、絶縁層の膜厚均一性を向上させるという観点から、硬化性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。一方、絶縁層の線熱膨張率を低下させるという観点、絶縁層に剛性を付与するという観点から、硬化性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(C)無機充填材の含有量の下限値は、40質量%以上が好ましく、45質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましく、55質量%以上が更により好ましく、60質量%以上が特に好ましい。
(c)無機充填材は、その耐湿性を向上させる観点から、エポキシシラン系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等の表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理剤は1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用してもよい。具体的に表面処理剤としては、アミノプロピルメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシジルブチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等のシラン系カップリング剤、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、トリシラザン、シクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルシクロトリシラザン等のオルガノシラザン化合物、ブチルチタネートダイマー、チタンオクチレングリコレート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシチタンビスラクテート、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート等のチタネート系カップリング剤等が挙げられる。これらのなかでもアミノシラン系カップリング剤は耐湿性、分散性、硬化物の特性などに優れていて好ましい。
硬化性樹脂組成物には、プリプレグに適度な可撓性を付与することができるという点で、(d)熱可塑性樹脂をさらに含有させてもよい。例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
(d)熱可塑性樹脂の含有量は、耐熱性向上という観点から、硬化性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。また、硬化性樹脂組成物の粘度を上昇させて均一な膜厚のプリプレグ(ひいては絶縁層)を得るという観点から、(d)熱可塑性樹脂の含有量の下限値は、硬化性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましい。
フェノキシ樹脂としては、例えば、東都化成(株)製の「FX280」、「FX293」、三菱化学(株)製の「YX8100」、「YL6954」、「YL6974」、「YL7213」、「YL6794」、「YL7553」、「YL7482」等が挙げられる。ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、電気化学工業(株)製、電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−C、6000−EP、積水化学工業(株)製エスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリイミドとしては、例えば、新日本理化(株)製の「リカコートSN20」、「リカコートPN20」等が挙げられる。ポリイミドとしてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のもの)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報、特開2000−319386号公報等に記載のもの)等の変性ポリイミドも挙げられる。ポリアミドイミドとしては、例えば、東洋紡績(株)製の「バイロマックスHR11NN」、「バイロマックスHR16NN」等が挙げられる。ポリアミドイミドとしてはまた、日立化成工業(株)製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドも挙げられる。ポリエーテルスルホンとしては、例えば、住友化学(株)製の「PES5003P」等が挙げられる。ポリスルホンとしては、例えば、ソルベンアドバンストポリマーズ(株)製の「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
硬化性樹脂組成物には、エポキシ樹脂や硬化剤を効率良く硬化させるという観点から、(e)硬化促進剤をさらに含有させてもよい。例えば、イミダゾール系化合物、ピリジン系化合物、有機ホスフィン系化合物等が挙げられ、具体例としては、2−メチルイミダゾール、4−ジメチルアミノピリジン、トリフェニルホスフィンなどを挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。(e)硬化促進剤を用いる場合、(a)エポキシ樹脂に対して0.1〜3.0質量%の範囲で用いるのが好ましい。
硬化性樹脂組成物には、絶縁層のクラック防止、応力緩和効果の目的で、(f)ゴム粒子をさらに含有させてもよい。ゴム粒子は、硬化性樹脂組成物を調製する際の有機溶媒に溶解せず、エポキシ樹脂等の硬化性樹脂組成物中の他の成分とも相溶せず、硬化性樹脂組成物のワニス中では分散状態で存在するものが好ましい。このようなゴム粒子は、一般には、ゴム成分の分子量を有機溶剤や樹脂に溶解しないレベルまで大きくし、粒子状とすることで調製される。ゴム粒子としては、例えば、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリルニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。コアシェル型ゴム粒子は、粒子がコア層とシェル層を有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマー、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造のゴム粒子、または外層のシェル層がガラス状ポリマー、中間層がゴム状ポリマー、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のゴム粒子などが挙げられる。ガラス状ポリマーは例えば、メタクリル酸メチルの重合物などで構成され、ゴム状ポリマーは例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)などで構成される。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、スタフィロイドAC3832、AC3816N(ガンツ化成(株)商品名)、メタブレンKW-4426(三菱レイヨン(株)商品名)が挙げられる。アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER-91(平均粒径0.5μm、JSR(株)製)などが挙げられる。スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、XSK-500(平均粒径0.5μm、JSR(株)製)などが挙げられる。アクリルゴム粒子の具体例としては、メタブレンW300A(平均粒径0.1μm)、W450A(平均粒径0.5μm)(三菱レイヨン(株)製)を挙げることができる。
硬化性樹脂組成物には、必要に応じて本発明の効果が発揮される範囲で、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、アクリル樹脂、マレイミド化合物、ビスアリルナジイミド化合物、ビニルベンジル樹脂、ビニルベンジルエーテル樹脂、ブロックイソシアネート化合物などのエポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、難燃剤等を配合してもよい。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。マレイミド樹脂としてはBMI1000、BMI2000、BMI3000、BMI4000、BMI5100(大和化成工業(株)製)、BMI、BMI−70、BMI−80(ケイ・アイ化成(株)製)、ANILIX−MI(三井化学ファイン(株)製)、ビスアリルナジイミド化合物としてはBANI−M、BANI−X(丸善石油化学工業(株)製)、ビニルベンジル樹脂としてはV5000(昭和高分子(株)製)、ビニルベンジルエーテル樹脂としてはV1000X、V1100X(昭和高分子(株)製)が挙げられる。難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。有機リン系難燃剤としては、三光(株)製のHCA、HCA−HQ、HCA−NQ等のホスフィン化合物、昭和高分子(株)製のHFB−2006M等のリン含有ベンゾオキサジン化合物、味の素ファインテクノ(株)製のレオフォス30、50、65、90、110、TPP、RPD、BAPP、CPD、TCP、TXP、TBP、TOP、KP140、TIBP、北興化学工業(株)製のPPQ、クラリアント(株)製のOP930、大八化学(株)製のPX200等のリン酸エステル化合物、東都化成(株)製のFX289、FX310等のリン含有エポキシ樹脂、東都化成(株)製のERF001等のリン含有フェノキシ樹脂等が挙げられる。有機系窒素含有リン化合物としては、四国化成工業(株)製のSP670、SP703等のリン酸エステルアミド化合物、大塚化学(株)製のSPB100、SPE100等のホスファゼン化合物等が挙げられる。金属水酸化物としては、宇部マテリアルズ(株)製のUD65、UD650、UD653等の水酸化マグネシウム、巴工業(株)製のB−30、B−325、B−315、B−308、B−303、UFH−20等の水酸化アルミニウム等が挙げられる。
硬化性樹脂組成物にはまた、本発明の効果が発揮される範囲で、他の成分を含有させてもよい。斯かる他の成分としては、例えば、シリコーンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の充填剤、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シラン系カップリング剤等の密着性付与剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック等の着色剤、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、酢酸エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等)、カルビトール類(セロソルブ、ブチルカルビトール等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の有機溶媒、等を挙げることができる。
硬化性樹脂組成物は、上記成分を適宜混合し、また、必要に応じて三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌手段により混練または混合することにより調製することができる。また、さらに有機溶剤を加えることで樹脂ワニスとしても調製することができる。
[シート状繊維基材]
プリプレグに用いるシート状繊維基材は特に限定されず、ガラス繊維基材、有機繊維基材等が挙げられ、特にガラスクロス、ガラス不織布、有機織布及び有機不織布からなる群より選択される1種以上を含有することが好ましい。プリプレグの線熱膨張係数を低下させるという点からは、ガラス繊維基材、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のシート状繊維基材が好ましく、ガラス繊維基材がより好ましく、ガラスクロスが更に好ましい。ガラス繊維基材に用いるガラス繊維としては、線熱膨張係数を低下させることができるという観点から、Eガラス繊維、Sガラス繊維、Qガラス繊維からなる群より選択される1種以上のガラス繊維が好ましく、Sガラス繊維、Qガラス繊維がより好ましく、Qガラス繊維が更に好ましい。Qガラス繊維とは、二酸化珪素の含有率が90%以上を占めるガラス繊維のことをいう。シート状繊維基材の厚さは、プリプレグを薄膜化するという観点から、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、80μm以下が更に好ましく、50μm以下が更に一層好ましく、40μm以下が殊更好ましい。また、取り扱い性を向上させるという観点やプリプレグの剛性を向上させるという観点から、1μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上が更に好ましい。
シート状繊維基材の具体的な例を以下に挙げる。ガラスクロスとしては、例えば、旭シュエーベル(株)製のスタイル1027MS(経糸密度75本/25mm、緯糸密度75本/25mm、布重量20g/m、厚さ19μm(Eガラス繊維))、旭シュエーベル(株)製のスタイル1037MS(経糸密度70本/25mm、緯糸密度73本/25mm、布重量24g/m、厚さ28μm(Eガラス繊維))、(株)有沢製作所製の1078(経糸密度54本/25mm、緯糸密度54本/25mm、布重量48g/m、厚さ43μm(Eガラス繊維))、(株)有沢製作所製の2116(経糸密度50本/25mm、緯糸密度58本/25mm、布重量103.8g/m、厚さ94μm(Eガラス繊維))、(株)有沢製作所製の1067(経糸密度70本/25mm、緯糸密度70本/25mm、布重量31g/m、厚さ33μm(Eガラス繊維))、信越石英(株)製の石英ガラスクロス(IPC規格2116タイプクロスやIPC規格1035タイプクロス(Qガラス繊維))、日東紡製のTガラスクロス(IPC規格の1078、1035、1037、1027(Tガラス繊維))などが挙げられる。また液晶ポリマー不織布としては、(株)クラレ製のポリアリレート系液晶ポリマーからメルトブローン方式で製造された不織布であるベクルス(目付け量6〜15g/m2)や(株)クラレ製のベクトランを繊維素材とする不織布などが挙げられる。
[支持体]
本発明で使用する支持体は、特に制限されないが、自己支持性を有するフィルムであり、金属箔、プラスチックフィルムが好適に用いられる。金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート等が挙げられ、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましく、安価であることからポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。またプラスチックフィルムは、硬化後の剥離性を向上させる目的で、マット処理、コロナ処理等の表面処理を施した離型プラスチックフィルムが好ましい。また、巻き取りを考慮して、支持体の両面に表面処理を施してもよい。プリプレグと接する側の支持体表面は、プリプレグの膜厚均一性向上という観点から、表面粗さ(Ra値)は50nm以下が好ましく、40nm以下がより好ましく、35nm以下が更に好ましく、30nm以下が更に一層好ましく、25nm以下が殊更好ましい。表面粗さ(Ra値)の下限値は特に限定されるものではないが、支持体の実用性の観点から、0.1nm以上が好ましく、0.5nm以上がより好ましい。表面粗さ(Ra値)の測定は、公知の方法を用いることができ、例えば、非接触型表面粗さ計(例えば、ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300等)などの装置を用いて測定することができる。支持体は市販の支持体を用いてもよく、例えば、T60(東レ(株)製、ポリエチレンテレフタレートフィルム)、A4100(東洋紡(株)製、ポリエチレンテレフタレートフィルム)、Q83(帝人デュポンフィルム(株)製、ポリエチレンナフタレートフィルム)、リンテック(株)製のアルキッド型離型剤(AL−5)付きポリエチレンテレフタレートフィルム、ダイアホイルB100(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、ポリエチレンテレフタレートフィルム)、JTC箔(JX日鉱日石金属(株)製(厚さ18μm))、MT18Ex(三井金属鉱業(株)製)、などが挙げられる。支持体の厚みは、支持体の取り扱い性向上や支持体の剥離性向上という点から、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましい。また、コストパフォーマンスの観点から、70μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
[支持体付きプリプレグ]
本発明で使用する支持体付きプリプレグは、プリプレグ表面に支持体を貼り合わせたものである。したがって一実施形態において、支持体付きプリプレグは、支持体と、該支持体と接合するプリプレグとを含む。該支持体付きプリプレグにおいて、支持体とプリプレグとの間に極薄樹脂層を介しても良い。したがって他の実施形態において、支持体付きプリプレグは、支持体と、該支持体と接合する極薄樹脂層と、該極薄樹脂層と接合するプリプレグとを含む。ここで、極薄樹脂層とは、厚みが1〜10μmの、シート状繊維基材を含有しない樹脂層(絶縁層)のことを示す。支持体付きプリプレグの製造方法は、特に制限されないが、ホットメルト法やソルベント法が挙げられ、以下の方法(i)〜(iv)が好適である。
(i):硬化性樹脂組成物を有機溶剤に溶解することなく、硬化性樹脂組成物を支持体上に一旦コーティングし、それをシート状繊維基材にラミネートする方法
(ii):ダイコーター等により硬化性樹脂組成物をシート状繊維基材上に直接塗工してプリプレグを形成し、その後支持体上にプリプレグをラミネートする方法
(iii):硬化性樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスを調製し、シート状繊維基材を樹脂ワニスに浸漬、含浸、乾燥させてプリプレグを形成し、その後支持体上にプリプレグをラミネートする方法
(iv):支持体上にダイコーター等を用いて樹脂ワニスを直接塗工して硬化性樹脂組成物層を形成し、該硬化性樹脂組成物層をシート状繊維基材の両面からラミネートする方法
上記の方法(i)〜(iv)からなる群より選択される1種以上の方法を用いて、支持体付きプリプレグを作製することが好適である。なお、プリプレグへのごみ等の付着を防止するために、プリプレグ表面に支持体を貼り合わせ、プリプレグの他方の面に保護フィルムを貼りあわせてもよい。保護フィルムは、支持体と同様の物を用いることができる。なお、支持体付きプリプレグが極薄樹脂層を有する場合は、予め支持体上に極薄樹脂層を形成しておくことで、上述した方法と同様にして支持体付きプリプレグを形成することができる。
硬化性樹脂組成物や樹脂ワニスを塗工した場合に、有機溶剤を乾燥させる必要があるが、ラミネート工程において、硬化性樹脂組成物が流動性及び接着性を有しさえすれば、乾燥条件は特に制限はされない。プリプレグ内に有機溶剤が多く残留すると、硬化後に膨れが発生する原因となるため、硬化性樹脂組成物中の有機溶剤の含有割合が0.05〜5質量%となる乾燥条件が好ましく、0.1〜2質量%となる乾燥条件がより好ましい。具体的な乾燥条件は、硬化性樹脂組成物の硬化性やワニス中の有機溶媒量によっても異なるが、80〜180℃で3〜13分間乾燥させるのが好ましく、90〜140℃で3〜10分間乾燥させるのが好ましい。
支持体付きプリプレグにおいて、プリプレグの厚さは、プリプレグとして所望される剛性を確保するという観点から、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、40μm以上が更に好ましい。また、多層プリント配線板を薄膜化するという観点から、200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、100μm以下が更に好ましく、70μm以下が更に一層好ましい。また、プリプレグはラミネート時に内層回路基板の凹凸に追従して積層可能な流動性を持つことが必要であり、プリプレグ中の硬化性樹脂組成物の最低溶融粘度は、200〜30000poiseの範囲であることが好ましく、500〜20000poiseの範囲であることがより好ましく、1000〜10000poiseの範囲であることが更に好ましい。
さらに、プリプレグの剛性を高めるために、プリプレグの厚みを1とした場合のシート状繊維基材の厚み(シート状繊維基材の厚み/プリプレグの厚み)を0.25〜0.88に制御することが好ましい。プリプレグの剛性を高め、低線熱膨張係数を達成する点から、0.3以上がより好ましく、0.35以上が更に好ましく、0.4以上が更に一層好ましい。また、膜厚均一性を向上させ、外観不良を抑制させる点から、0.85以下がより好ましく、0.80以下が更に好ましい。
また、本願発明のプリプレグは内層回路基板の配線パターンを良好に埋め込みながらも絶縁層の膜厚均一性や薄膜化を達成するために、プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率を30〜85質量%に制御することが好ましい。線熱膨張係数を低下させ、薄膜化にも寄与するという観点から、プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率は、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が更に好ましく、70質量%以下が更に一層好ましく、65質量%以下が殊更好ましい。また、内層回路基板との密着性向上、膜厚均一性の向上という観点から、32質量%以上がより好ましく、34質量%以上が更に好ましく、36質量%以上が更に一層好ましく、38質量%以上が殊更好ましく、40質量%以上が特に好ましく、42質量%以上がとりわけ好ましい。
なお、プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率は以下のように定義される。
Figure 0006281489
また、プリプレグの剛性や薄膜化を達成するために、プリプレグ中のシート状繊維基材と無機充填材との含有比率(シート状繊維基材の質量/無機充填材の質量)を0.2〜2.5に制御することが好ましい。さらに、シート状繊維基材の隙間を多くの無機充填材で埋めることで線熱膨張係数を効率的に低下させることができるという点から、上記含有比率は、2.3以下がより好ましく、2.1以下が更に好ましく、1.9以下が更に一層好ましく、1.7以下が更に一層好ましく、1.5以下が殊更好ましい。また、無機充填材が多すぎると硬化性樹脂組成物の溶融粘度を上昇させてしまい、無機充填材が効率良くシート状繊維基材の隙間に入り込みにくくなることから、上記含有比率は、0.3以上がより好ましく、0.4以上が更に好ましく、0.5以上が更に一層好ましい。
このように、プリプレグの構成を制御することで、内層回路基板に加熱及び加圧して真空積層するための好適な支持体付きプリプレグを得ることができ、斯かる支持体付きプリプレグを使用することで、十分な剛性を有しつつ薄層化された多層プリント配線板の製造方法を提供することができる。
[真空積層方法]
(A)工程では、支持体付きプリプレグを内層回路基板に加熱及び加圧して真空積層する。ここで、支持体付きプリプレグに保護フィルムが張り合わせてある場合は、保護フィルムを剥離した後に、支持体付きプリプレグのプリプレグ面を内層回路基板に向かい合わせ、真空ラミネーターを用いて加熱及び加圧して支持体付きプリプレグを内層回路基板に真空積層する。また、生産性向上の点から、(A)工程では、ロール状に巻き取られた支持体付きプリプレグを、保護フィルムが張り合わせてある場合は保護フィルムを剥離し、順次連続的に真空ラミネーターに供給し、支持体付きプリプレグのプリプレグ面を内層回路基板に向かい合わせ、真空ラミネーターを用いて加熱及び加圧して支持体付きプリプレグを真空積層することが好ましい。ここで内層回路基板とは、片面又は両面に配線パターンが形成された導体層を有する基板をいい、多層プリント配線板を製造する際に、当該基板上にさらに絶縁層および導体層が形成されるべき中間製造物を言う。内層回路基板に用いられる基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。内層回路基板の厚みは、十分な剛性を有しつつ薄層化された多層プリント配線板を達成すると言う観点から、0.05〜0.9mmが好ましく、0.05〜0.7mmがより好ましく、0.1〜0.5mmが更に好ましく、0.15〜0.3mmが殊更好ましい。
真空ラミネーターは、バッチ式ラミネーター、ロール式ラミネーターが挙げられるが、得られる絶縁層の平滑性を向上させる点からバッチ式ラミネーターが好ましい。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、(株)名機製作所製 バッチ式真空加圧ラミネーター MVLP−500、ニチゴー・モートン(株)製 バキュームアップリケーター、(株)日立インダストリイズ製 ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製 真空ラミネーター等を挙げることができる。
真空ラミネーターによる積層は、オートカッターにより、内層回路基板にプリプレグを仮付けし、プリプレグが仮付けされた内層回路基板が真空ラミネーターの真空チャンバー内に搬送され、通常、真空チャンバー内で所定の真空度に到達した後、加熱されたSUS鏡板等の金属板を、耐熱ゴム等の弾性材を介して、支持体側からプレスすることにより行うことができる(国際公開第2009/35014号パンフレット等参照)。
積層時の加熱温度は、プリプレグと内層回路基板の接着性を高めるという観点、平滑化を向上させるという観点から、60℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましく、90℃以上が更に好ましく、105℃以上が更に一層好ましい。また、ラミネーター装置に用いられる搬送PETの耐熱性の観点、膜厚均一性を得る観点、硬化性樹脂組成物の染み出しを防止するという観点から、160℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、140℃以下が更に好ましく、130℃以下が更に一層好ましい。
積層時の時間(金属板によるプレス時間)は、樹脂を十分に流動させるという観点から、10秒間以上が好ましく、15秒間以上がより好ましく、20秒間以上が更に好ましく、25秒間以上が更に一層好ましい。また、生産性向上の観点から、300秒間以下が好ましく、250秒間以下がより好ましく、200秒間以下が更に好ましく、150秒間以下が更に一層好ましく、100秒間以下が殊更好ましく、50秒間以下が特に好ましい。
積層時の真空度は、効率的に積層工程を実施し得る観点から、0.001kPa以上が好ましく、0.003kPa以上がより好ましく、0.005kPa以上が更に好ましく、0.007kPa以上が更に一層好ましく、0.01kPa以上が特に好ましい。また、絶縁層への空気の侵入を防いでボイドの発生を抑制するという観点、アンジュレーションを低減させるという観点から、0.40kPa以下が好ましく、0.27kPa以下がより好ましく、0.13kPa以下が更に好ましく、0.11kPa以下が更に一層好ましく、0.080kPa以下が殊更好ましく、0.053kPa以下が特に好ましく、0.035kPa以下又は0.027kPa以下がとりわけ好ましい。
なお、上記所定の真空度への到達時間(以下、「真空到達時間」という。)は、絶縁層中のボイド発生を抑制する観点から、15秒間以下であり、好ましくは14秒間以下、より好ましくは12秒間以下、更に好ましくは10秒間以下、更により好ましくは8秒間以下、特に好ましくは6秒間以下である。真空到達時間は、真空ラミネーターにおいて、真空チャンバーを閉じて真空度が低下し始める時点から所定の真空度に到達する時点までの経過時間をいう。
積層時の加圧は、硬化性樹脂組成物を流動させて配線パターン間に埋め込み、内層回路基板との密着性を向上させるという観点から、1kgf/cm以上が好ましく、1.5kgf/cm以上がより好ましく、2kgf/cm以上が更に好ましく、3kgf/cm以上が更に一層好ましい。また、硬化性樹脂組成物のしみだしを防止し、膜厚の均一な絶縁層を得るという観点から、16kgf/cm以下が好ましく、13kgf/cm以下がより好ましく、11kgf/cm以下が更に好ましく、9kgf/cm以下が更に一層好ましく、7kgf/cm以下が殊更好ましい。
このように、本発明においては、(A)工程において、プリプレグの構成を制御し、かつ真空積層方法をも制御することによって、プリプレグを使用して、ボイドを抑制し、ガラス転移温度が高く線熱膨張係数が低い、均一な膜厚を有する絶縁層を内層回路基板上に形成することができる。したがって本発明の方法によれば、十分な剛性を有しつつ薄層化された多層プリント配線板を製造することができる。
詳細には、上述の特定の構成を有するプリプレグを備えた支持体付きプリプレグを、積層時の真空度が0.001〜0.40kPa、真空到達時間が15秒間以下、積層時の加圧が1〜16kgf/cm、積層時の加熱温度が60〜160℃、積層時の時間が10〜300秒間である特定の真空積層方法により内層回路基板に積層することにより、ボイドを抑制し、ガラス転移温度が高く線熱膨張係数が低い、均一な膜厚を有する絶縁層を内層回路基板上に形成することができ、その結果、十分な剛性を有しつつ薄層化された多層プリント配線板を製造することができる。
<(B)工程>
(B)工程は、プリプレグを熱硬化して絶縁層を形成する工程である。(A)工程の後に(B)工程を行うことで、内層回路基板上に絶縁層を形成することができる。なかでも、加熱オーブンを用いてプリプレグを熱硬化して絶縁層を形成することにより、多層プリント配線板の絶縁層の耐熱性、ガラス転移温度を向上させることができる。さらに、プリプレグを加熱オーブン内で垂直状態に配置し、熱硬化して絶縁層を形成することにより、一度に多くの枚数を加熱オーブン内に投入することができ、(A)工程から(B)工程への連続的でスムーズな作業を可能とし、生産性向上に寄与する。加熱オーブンとして、例えば、クリーンオーブン(ヤマト科学(株)製「クリーンオーブンDE610」)等を用いることができる。
[硬化方法]
熱硬化時の温度は、硬化性樹脂組成物の熱分解を防ぐという観点から、250℃以下が好ましく、240℃以下がより好ましく、230℃以下が更に好ましく、220℃以下が更に一層好ましく、210℃以下が殊更好ましい。また、硬化性樹脂組成物の熱硬化を十分行うという観点から、150℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましく、170度以上が更に好ましく、180℃以上が更に一層好ましく、190℃以上が殊更好ましい。
熱硬化時の時間は、硬化性樹脂組成物の熱分解を防ぐという観点から、300分間以下が好ましく、180分間以下がより好ましく、120分間以下が更に好ましく、110分間以下が更に一層好ましく、100分間以下が殊更好ましい。また、硬化性樹脂組成物の熱硬化を十分行うという観点から、30分間以上が好ましく、60分間以上がより好ましく、70分間以上が更に好ましく、80分間以上が更に一層好ましい。
絶縁層の線熱膨張係数の上限値は、チップ等の実装性向上という観点から、15ppm以下が好ましく、15ppm未満がより好ましく、13ppm以下が更に好ましく、11ppm以下が更により好ましく、10ppm以下が更に一層好ましく、9.5ppm以下が殊更好ましく、9ppm以下が特に好ましく、8.5ppm以下がとりわけ好ましい。本発明によれば、線熱膨張係数が8ppm未満と極めて低い絶縁層であっても実現することもできる。線熱膨張係数の下限値は、特に制限は無いが、一般的に1ppm以上となる。
絶縁層のガラス転移温度の下限値は、絶縁層のクラックを防止し、高温時の反り低減によるチップ等の実装性向上という観点から、181℃以上が好ましく、183℃以上がより好ましく、185℃以上が更に好ましい。そして、絶縁層のガラス転移温度の上限値は、特に制限は無いが、一般的に270℃以下となる。
また、(B)工程においては、多層プリント配線板を耐熱治具で固定してプリプレグを熱硬化し、硬化後に治具の内側の多層プリント配線板を切り出す方法を採用することが更に好ましい。これにより多層プリント配線板を、しわのない平滑な状態にして外観を良好に保つことができる。耐熱治具で固定する方法としては、例えば、多層プリント配線板の4辺の内の少なくとも2辺を耐熱治具で固定する方法、多層プリント配線板の上部2端を挟んで自重で吊るす方法、多層プリント配線板を耐熱治具によって四辺から5mm幅の全ての部分を固定する方法などが挙げられる。なお、(B)工程においていう多層プリント配線板とは、(A)工程においてプリプレグが積層された内層回路基板をいう。
<(C)工程>
本発明の製造方法は、更に(C)支持体を剥離する工程((C)工程)を含んでもよい。これにより絶縁層表面を露出させ、他の工程に進むことができる。(C)工程は、(B)工程の前に行ってもよく、(B)工程の後に行っても良いが、絶縁層の平滑性向上という点から、(B)工程の後に行うことが好ましい。支持体がプラスチックフィルムの場合は、支持体の剥離は手動または自動剥離装置により機械的に除去することによって行うことができる。また、支持体が金属箔の場合は、エッチング液などにより金属箔を溶解して、支持体を剥離、除去することができる。
<(D)工程>
本発明の製造方法は、更に(D)ビアホールを形成する工程((D)工程)を含んでもよい。これにより、絶縁層の層間の導通を行うことができる。(D)工程は、目的が達成される限り特に制限はなく、公知の方法によりビアホールの形成を行うことができる。例えば、機械ドリル、あるいは炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーを用いることができる。また、(D)工程は、(B)工程の後に行うのが好ましい。また、(D)工程は、(C)工程の前に行ってもよく、(C)工程の後に行っても良いが、(C)工程の前に行うことが好ましい。こうすることで、ビア形状を良好に保つことができる。
<(E)工程>
本発明の製造方法は、更に(E)デスミア工程((E)工程)を含んでもよい。これにより、絶縁層表面を粗化処理し、メッキ密着性を向上させ得ると共に、ビアホール内の樹脂残渣を除去することができる。(E)工程はプラズマ処理等のドライ法、酸化剤処理等のウエット法など公知の方法を用いることができるが、酸化剤処理が好ましい。(E)工程において酸化剤処理を行う場合は、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に行うのが好ましい。膨潤液としては特に制限はないが、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液である。該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液が好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)、スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU(Swelling Dip Securiganth SBU)等を挙げることができる。膨潤液による膨潤処理は、特に制限はないが、作業性向上、樹脂が膨潤されすぎないようにする点から、絶縁層表面に50〜80℃の膨潤液を1〜15分間付すことで行うのが好ましい。酸化剤としては特に制限はないが、例えば、水酸化ナトリウム水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液を挙げることができる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、絶縁層表面を60〜80℃に加熱した酸化剤溶液に10〜30分間付すことで行うのが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5〜10質量%とするのが好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクト CP、ドージングソリューション セキュリガンスP等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、中和液としては特に制限はないが、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、アトテックジャパン(株)製のリダクションショリューシン・セキュリガントP(中和液)が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤溶液による粗化処理がなされた処理面に30〜60℃の中和液を5〜20分間付す方法を用いることができる。(E)工程は、(C)工程及び(D)工程の後に行うことが好ましい。こうすることで、絶縁層表面やビア壁面の粗化処理を行うこができ、ビア内の樹脂残渣を除去することが可能となる。
<(F)工程>
本発明の製造方法は、更に(F)メッキにより導体層を形成する工程((F)工程)含んでもよい。(F)工程は、公知の方法により行うことができる。例えば、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせて導体層を形成することができる。あるいはまた、導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成することもできる。その後のパターン形成の方法として、例えば、当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができる。導体層に用いる導体としては、例えば、銅、ニッケル、金、パラジウム等が挙げられるが、銅が特に好ましい。
本発明の製造方法では、適宜上述した工程を繰り返すことで、多層プリント配線板を作製することができる。なお、本発明はビルドアップに適した方法であり、最外層のソルダーレジストも、ビルドアップの一部であるので、適用可能である。
<半導体装置>
本発明の半導体装置の製造方法を説明する。本発明の多層プリント配線板上の接続用電極部分に半導体素子を接合することにより、半導体装置を製造する。半導体素子の搭載方法は、特に限定されないが、例えば、ワイヤボンディング実装、フリップチップ実装、異方性導電フィルム(ACF)による実装、非導電性フィルム(NCF)による実装などが挙げられる。本発明の多層プリント配線板は、ビルドアップ層がプリプレグで構成され、剛性の高い多層プリント配線板となっており、半導体チップの実装性が高く、半導体装置に好適に用いることができる。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何等限定されるものではない。なお、以下の記載中の「部」は「質量部」を意味する。
まず、本明細書での物性評価における測定方法・評価方法について説明する。
<線熱膨張係数の測定及び評価>
実施例及び比較例において作製したプリプレグを、500mmx500mmの大きさに裁断機で裁断した。該プリプレグよりも大きな面積を有する銅箔(三井金属鉱業(株)製 MT18Ex)2枚の間にプリプレグを配し、(株)ニチゴー・モートン製ラミネーター(2ステージビルドアップラミネーター CVP7200)を用いて、各実施例及び比較例の真空ラミネート又は真空プレスと同様の条件にて積層し、同様の条件でプリプレグを熱硬化した。その後、銅箔を塩化鉄(II)水溶液(鶴見曹達(株)製、ボーメ度40)中に浸漬して銅箔を除去し、硬化物サンプルを得た。その硬化物サンプルを、幅約5mm、長さ約15mmの試験片に切断し、熱機械分析装置Thermo Plus TMA8310((株)リガク製)を使用して、引張加重法で熱機械分析を行った。サンプルを前記装置に装着後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における25℃から150℃までの温度範囲における平均の線熱膨張係数(ppm)を算出した。線熱膨張係数の値が、8ppm未満の場合を「◎」、8ppm以上12ppm未満を「○」、12ppm以上15ppm未満を「△」、15ppm以上を「×」と評価した。
<ガラス転移温度の測定及び評価>
上記の硬化物サンプルを、幅5mm、長さ15mmの試験片に切断し、動的粘弾性測定装置(SIIナノテクノロジー(株)製 EXSTAR6000)を使用して引張加重法で熱機械分析を行った。サンプルを前記装置に装着後、荷重200mN、昇温速度2℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における寸法変化シグナルの傾きが変化する点からガラス転移温度(℃)を算出した。ガラス転移温度の値が、185℃以上を「○」、185℃未満を「×」と評価した。
<膜厚均一性の評価>
実施例及び比較例において作製した多層プリント配線板から、支持体を剥離(除去)した。その後、絶縁層表面を200mmx200mmの試験片に切断し、光干渉型表面粗度・表面形状測定装置(日本Veeco(株)製 Wyko NT9300)用いて表面状態を観察し、アンジュレーションが3μm未満の場合を「◎○」、3μm以上5μm未満の場合を「◎」、5μm以上7μm未満の場合を「○」、7μm以上9μm未満の場合を「△」、9μm以上の場合を「×」と評価した。
<外観の評価>
実施例及び比較例において作製した多層プリント配線板から、支持体を剥離(除去)した。その後、絶縁層表面を200mmx200mmの試験片に切断し、マイクロスコープ(KEYENCE(株)製 マイクロスコープVH−5500)を用いて表面状態を観察し、試験片のうちボイドが0個の場合は「◎」、1〜3個の場合は「○」、4〜6個の場合は「△」、7個以上あれば「×」と評価した。
<実施例1>
(1)支持体付きプリプレグの作製
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学(株)製「エピコート828EL」)20部と、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量163、DIC(株)製「HP4710」)25部、フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「YL7553BH30」)5部とをMEK15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂(水酸基当量125、DIC(株)製「LA7054」、窒素含有量約12重量%)の固形分60重量%のMEK溶液15部、ナフトール系硬化剤(水酸基当量215、東都化成(株)製「SN−485」)の固形分60重量%のMEK溶液15部、ナフトール系硬化剤(水酸基当量153、DIC(株)製「EXB―9500」)の固形分50重量%のMEK溶液5部、反応型難燃剤(水酸基当量162、(株)三光製「HCA−HQ」、リン含有量9.5%)10部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SOC2」、アミノシラン処理付き)250部、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製「KS−1」)の固形分15重量%のエタノールとトルエンの1:1溶液5部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。該ワニスを、(株)有沢製作所製1067ガラスクロス(厚み33μm)に含浸し、縦型乾燥炉にて130℃で5分間乾燥させプリプレグを作製した。プリプレグの残留溶剤量はガラスクロスを含まない硬化性樹脂組成物中0.1〜2質量%、プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率は42質量%、プリプレグの厚みは48μm、プリプレグの厚みを1とした場合のシート状繊維基材の厚みは0.69、プリプレグ中のシート状繊維基材と無機充填材との含有比率は1.8であった。その後、厚み38μmのPETフィルム(リンテック(株)製AL5)の離型面と、厚さ15μmのポリプロピレンフィルムとの間にプリプレグを配置し、(株)ニチゴー・モートン製ラミネーター(2ステージビルドアップラミネーター CVP7200)を用いて、貼り合わせながらロール状に巻き取り、ロール状に巻き取られた支持体付きプリプレグを作製した。
(2)内層回路基板の作製
ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板[銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.2mm、松下電工(株)製R1515A]の両面にエッチングにより配線パターンを形成し、さらにマイクロエッチング剤(メック(株)製CZ8100)で粗化処理を行い、内層回路基板を作製した。
(3)支持体付きプリプレグのラミネート
支持体付きプリプレグを、保護フィルムを剥離し、順次連続的に(株)ニチゴー・モートン製ラミネーター(2ステージビルドアップラミネーター CVP7200)に供給し、上記(2)で作製した内層回路基板の両面に、ラミネートした。積層時の真空度0.05kPa、真空到達時間5秒間、加圧7kgf/cm、温度120℃のラミネート条件で30秒間ラミネートして積層した。真空引き時間は0.5分間であった。
(4)硬化性樹脂組成物の硬化
該基板を耐熱治具によって四辺から5mm幅の全ての部分を固定し、次いで、該基板を垂直状態で加熱オーブン内へ投入し、大気圧、210℃で90分間熱硬化することで多層プリント配線板を作製した。
<実施例2>
ガラスクロスへの樹脂ワニスの含浸量を変化させた以外は実施例1と同様にして、支持体付きプリプレグを作製した。プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率は55質量%、プリプレグの厚みは52μm、プリプレグの厚みを1とした場合のシート状繊維基材の厚みは0.63、プリプレグ中のシート状繊維基材と無機充填材との含有比率は1.1となった。そして、実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。
<実施例3>
ガラスクロスへの樹脂ワニスの含浸量を変化させた以外は実施例1と同様にして、支持体付きプリプレグを作製した。プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率は65質量%、プリプレグの厚みは55μm、プリプレグの厚みを1とした場合のシート状繊維基材の厚みは0.6、プリプレグ中のシート状繊維基材と無機充填材との含有比率は0.7となった。そして、実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。
<実施例4>
ガラスクロスへの樹脂ワニスの含浸量を変化させた以外は実施例1と同様にして、支持体付きプリプレグを作製した。プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率は75質量%、プリプレグの厚みは63μm、プリプレグの厚みを1とした場合のシート状繊維基材の厚みは0.52、プリプレグ中のシート状繊維基材と無機充填材との含有比率は0.4となった。そして、実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。
<実施例5>
ガラスクロスへの樹脂ワニスの含浸量を変化させた以外は実施例1と同様にして、支持体付きプリプレグを作製した。プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率は55質量%、プリプレグの厚みは52μm、プリプレグの厚みを1とした場合のシート状繊維基材の厚みは0.63、プリプレグ中のシート状繊維基材と無機充填材との含有比率は1.1となった。そして、積層時の加圧を3kgf/cmに変更した以外は実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。
<実施例6>
ガラスクロスへの樹脂ワニスの含浸量を変化させた以外は実施例1と同様にして、支持体付きプリプレグを作製した。プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率は55質量%、プリプレグの厚みは52μm、プリプレグの厚みを1とした場合のシート状繊維基材の厚みは0.63、プリプレグ中のシート状繊維基材と無機充填材との含有比率は1.1となった。そして、積層時の加圧を15kgf/cmに変更した以外は実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。
<実施例7>
ガラスクロスへの樹脂ワニスの含浸量を変化させた以外は実施例1と同様にして、支持体付きプリプレグを作製した。プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率は55質量%、プリプレグの厚みは52μm、プリプレグの厚みを1とした場合のシート状繊維基材の厚みは0.63、プリプレグ中のシート状繊維基材と無機充填材との含有比率は1.1となった。そして、積層時の真空度を0.03kPaに変更した以外は実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。
<実施例8>
ガラスクロスへの樹脂ワニスの含浸量を変化させた点、およびガラスクロスとして信越石英(株)製、IPC規格で1035タイプの石英ガラスクロス(厚み32μm、Qガラス繊維)を使用した点以外は、実施例1と同様にして、支持体付きプリプレグを作製した。プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率は55質量%、プリプレグの厚みは45μm、プリプレグの厚みを1とした場合のシート状繊維基材の厚みは0.71、プリプレグ中のシート状繊維基材と無機充填材との含有比率は1.1となった。そして、実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。
<実施例9>
ガラスクロスへの樹脂ワニスの含浸量を変化させた点、および支持体として銅箔((株)三井金属鉱業製 MT18Ex)を使用した点以外は実施例1と同様にして、支持体付きプリプレグを作製した。プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率は55質量%、プリプレグの厚みは52μm、プリプレグの厚みを1とした場合のシート状繊維基材の厚みは0.63、プリプレグ中のシート状繊維基材と無機充填材との含有比率は1.1となった。そして、実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。
<実施例10>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学(株)製「エピコート828EL」)20部と、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量163、DIC(株)製「HP4710」)25部を、MEK15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂(水酸基当量125、DIC(株)製「LA7054」、窒素含有量約12重量%)の固形分60重量%のMEK溶液15部、ナフトール系硬化剤(水酸基当量215、東都化成(株)製「SN−485」)の固形分60重量%のMEK溶液15部、ナフトール系硬化剤(水酸基当量153、DIC(株)製「EXB―9500」)の固形分50重量%のMEK溶液5部、球形シリカ(平均粒径0.05μm、(株)アドマテックス製「YA050C−MJA」)の固形分60重量%MEKスラリー溶液250部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。該ワニスを、(株)有沢製作所製1067ガラスクロス(厚み33μm)に含浸し、縦型乾燥炉にて130℃で5分間乾燥させプリプレグ前駆体を作製した。プリプレグ前駆体の厚みは41μmであった。該プリプレグ前駆体をさらに実施例1の樹脂ワニスに含浸し、縦置き乾燥炉にて130℃で5分間乾燥させ、プリプレグを作製した。最終的なプリプレグの残留溶剤量はガラスクロスを含まない硬化性樹脂組成物中0.1〜2質量%、プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有比率は55質量%、プリプレグの厚みは52μm、プリプレグの厚みを1とした場合のシート状繊維基材の厚みは0.63、プリプレグ中のシート状繊維基材と無機充填材との含有比率は1.0であった。その後、実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。
<実施例11>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学(株)製「エピコート828EL」)20部と、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量163、DIC(株)製「HP4710」)20部と、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(エポキシ当量248、DIC(株)製「HP6000」)10部を、MEK15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂(水酸基当量125、DIC(株)製「LA7054」、窒素含有量約12重量%)の固形分60重量%のMEK溶液15部、ナフトール系硬化剤(水酸基当量215、東都化成(株)製「SN−485」)の固形分60重量%のMEK溶液15部、ナフチレンエーテル型硬化剤(水酸基当量155、DIC(株)製「EXB―6000」)の固形分50重量%のMEK溶液5部、球形シリカ(平均粒径0.05μm、(株)アドマテックス製「YA050C−MJA」)の固形分60重量%MEKスラリー溶液250部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。該ワニスを、(株)有沢製作所製1067ガラスクロス(厚み33μm)に含浸し、縦型乾燥炉にて130℃で5分間乾燥させプリプレグを作製した。プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率は55質量%、プリプレグの厚みは52μm、プリプレグの厚みを1とした場合のシート状繊維基材の厚みは0.63、プリプレグ中のシート状繊維基材と無機充填材との含有比率は1.1となった。そして、実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。
<実施例12>
ガラスクロスへの樹脂ワニスの含浸量を変化させた点、およびガラスクロスとして有沢製作所製1015ガラスクロス(厚み15μm)を使用した点以外は、実施例1と同様にして、支持体付きプリプレグを作製した。プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率は81質量%、プリプレグの厚みは50μm、プリプレグの厚みを1とした場合のシート状繊維基材の厚みは0.30、プリプレグ中のシート状繊維基材と無機充填材との含有比率は0.3となった。そして、実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。
<実施例13>
実施例1と同様にして、支持体付きプリプレグを作製した。そして、真空到達時間を10秒間とした以外は実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。すなわち、積層時の真空度0.05kPa、真空到達時間10秒間、加圧7kgf/cm、温度120℃のラミネート条件で30秒間ラミネートした。真空引き時間は0.75分間とした。
<実施例14>
実施例1と同様にして、支持体付きプリプレグを作製した。そして、真空到達時間を15秒間とした以外は実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。すなわち、積層時の真空度0.05kPa、真空到達時間15秒間、加圧7kgf/cm、温度120℃のラミネート条件で30秒間ラミネートした。真空引き時間は0.75分間とした。
<比較例1>
ガラスクロスへの樹脂ワニスの含浸量を変化させた以外は実施例1と同様にして、支持体付きプリプレグを作製した。プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率は65wt%、プリプレグの厚みは55μm、プリプレグの厚みを1とした場合のシート状繊維基材の厚みは0.6、プリプレグ中のシート状繊維基材と無機充填材との含有比率は0.7となった。そして、積層時の真空度を101.3kPaに変更した以外は実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。
<比較例2>
ガラスクロスへの樹脂ワニスの含浸量を変化させた以外は実施例1と同様にして、支持体付きプリプレグを作製した。プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率は65wt%、プリプレグの厚みは55μm、プリプレグの厚みを1とした場合のシート状繊維基材の厚みは0.6、プリプレグ中のシート状繊維基材と無機充填材との含有比率は0.7となった。そして、積層時の加圧を25kgf/cmに変更した以外は実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。
<比較例3>
ガラスクロスへの樹脂ワニスの含浸量を変化させた点、およびガラスクロスとして有沢製作所製1015ガラスクロス(厚み15μm)を使用した点以外は、実施例1と同様にして、支持体付きプリプレグを作製した。プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率は90質量%、プリプレグの厚みは70μm、プリプレグの厚みを1とした場合のシート状繊維基材の厚みは0.21、プリプレグ中のシート状繊維基材と無機充填材との含有比率は1.1となった。そして、実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。
<比較例4>
ガラスクロスへの樹脂ワニスの含浸量を変化させた以外は実施例1と同様にして、支持体付きプリプレグを作製した。プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率は28wt%、プリプレグの厚みは37μm、プリプレグの厚みを1とした場合のシート状繊維基材の厚みは0.89、プリプレグ中のシート状繊維基材と無機充填材との含有比率は3.4となった。そして、実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。
<比較例5>
ガラスクロスへの樹脂ワニスの含浸量を変化させた以外は実施例1と同様にして、支持体付きプリプレグを作製した。プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率は55wt%、プリプレグの厚みは52μm、プリプレグの厚みを1とした場合のシート状繊維基材の厚みは0.63、プリプレグ中のシート状繊維基材と無機充填材との含有比率は1.1となった。そして、積層時の真空度を0.6kPaに変更した以外は実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。
<比較例6>
(1)支持体付きプリプレグの作製
ガラスクロスへの樹脂ワニスの含浸量を変化させた以外は実施例1と同様にして、プリプレグを作製した。プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率は65wt%、プリプレグの厚みは55μm、プリプレグの厚みを1とした場合のシート状繊維基材の厚みは0.6、プリプレグ中のシート状繊維基材と無機充填材との含有比率は0.7となった。その後、銅箔((株)三井金属鉱業製 MT18Ex)の光沢面と、厚さ15μmのポリプロピレンフィルムとの間にプリプレグを配置し、(株)ニチゴー・モートン製ラミネーター(2ステージビルドアップラミネーター CVP7200)を用いて、貼り合わせながらロール状に巻き取り、ロール状に巻き取られた支持体付きプリプレグを作製した。
(2)内層回路基板の作製
実施例1と同様にして内層回路基板を作製した。
(3)支持体付きプリプレグのプレス及び硬化性樹脂組成物の硬化
支持体付きプリプレグを、保護フィルムを剥離した後、上記(2)で作製した内層回路基板の両面に、真空プレス機((株)名機製作所製 MNPC−V−750−750−5−200)を用いて、プレス時の真空度を1kPa、加圧が10kgf/cm、昇温速度3℃/分で25℃から30分間昇温し115℃とした後、加圧を30kgf/cmとし、115℃から昇温速度3℃/分で230℃まで昇温させて90分間保持することで、多層プリント配線板を作製した。
<比較例7>
ガラスクロスへの樹脂ワニスの含浸量を変化させた点、およびガラスクロスとして有沢製作所製1015ガラスクロス(厚み15μm)を使用した点以外は、実施例1と同様にして、支持体付きプリプレグを作製した。プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率は90質量%、プリプレグの厚みは70μm、プリプレグの厚みを1とした場合のシート状繊維基材の厚みは0.21、プリプレグ中のシート状繊維基材と無機充填材との含有比率は1.1となった。そして、比較例6と同様にして多層プリント配線板を作製した。
<比較例8>
実施例1と同様にして、支持体付きプリプレグを作製した。そして、真空到達時間を20秒間とした以外は実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。すなわち、積層時の真空度0.05kPa、真空到達時間20秒間、加圧7kgf/cm、温度120℃のラミネート条件で30秒間ラミネートした。真空引き時間は0.75分間とした。
測定結果を、表1、2に示す。
Figure 0006281489
Figure 0006281489
実施例1〜14により、本発明の製造方法によれば、ガラス転移温度が高く線熱膨張係数が低い、ボイド発生が抑制された、均一な膜厚の絶縁層を有する多層プリント配線板を得ることができた。特定のプリプレグと特定の真空積層方法とを採用することにより、多層プリント配線板を作成できることは、まさに本発明における優れた効果であることが分かる。比較例1は、積層時に減圧されていないため、プリプレグと内層回路基板間に空気が侵入し、外観に不良が生じた。比較例2は、積層時の加圧が大きいため、樹脂のしみだし(フロー)が生じ、膜厚が不均一になり、外観も不良となった。比較例3は、硬化性樹脂組成物含有量が多すぎるため、線熱膨張係数を低くすることが困難となった。比較例4は、硬化性樹脂組成物含有量が少なすぎるため、外観が不良となった。比較例5は、積層時の真空度が不十分なため、プリプレグと内層回路基板間の空気が十分に抜けず、外観に不良が生じた。比較例6は、真空プレス機を用いて積層、加熱を行っているため、真空度が不十分であり、プリプレグと内層回路基板間の空気が十分に抜けず、外観に不良が生じ、ガラス転移温度も向上しなかった。プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率が高く、真空プレス機を用いて積層、熱硬化を行う比較例7は、膜厚均一性、銅箔除去後の外観は良好であるものの、線熱膨張係数が大きく、ガラス転移温度の低い絶縁層に帰着した。比較例8は、積層時の真空到達時間が長いため、ボイドが発生が顕著となり外観が不良となった。
本発明によれば、特定のプリプレグと特定の真空積層方法を組み合わせることにより、ガラス転移温度が高く線熱膨張係数が低い、ボイドを含まぬ、均一な膜厚の絶縁層を有する多層プリント配線板を得ることができるようになった。更に、該多層プリント配線板を搭載した、半導体装置、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ、テレビ、等の電気製品や、自動二輪車、自動車、電車、船舶、航空機、等の乗物も提供できるようになった。

Claims (21)

  1. (A)支持体付きプリプレグを内層回路基板に加熱及び加圧して真空積層する工程、
    (B)プリプレグを熱硬化して絶縁層を形成する工程、
    を含有することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法であって、
    前記プリプレグが硬化性樹脂組成物とシート状繊維基材とを含有し、厚みが70μm以下であり、
    前記プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有率が30質量%以上85質量%以下であり、
    前記硬化性樹脂組成物が無機充填材を含有し、
    前記(A)工程において、積層時の真空度が0.001〜0.40kPa、真空到達時間が15秒間以下、積層時の加圧が1〜16kgf/cm、積層時の加熱温度が60〜160℃、積層時の時間が10〜300秒間であることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
  2. 前記プリプレグの厚みを1とした場合のシート状繊維基材の厚みが0.25〜0.88であることを特徴とする請求項1に記載の多層プリント配線板の製造方法。
  3. 前記プリプレグ中のシート状繊維基材と無機充填材との含有比率(シート状繊維基材の質量/無機充填材の質量)が0.2〜2.5であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層プリント配線板の製造方法。
  4. 前記シート状繊維基材がガラスクロス、ガラス不織布、有機織布及び有機不織布からなる群より選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
  5. 前記シート状繊維基材がEガラス繊維、Sガラス繊維及びQガラス繊維からなる群より選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
  6. 前記無機充填材の平均粒径が0.01〜2μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
  7. 前記無機充填材の平均粒径が0.01〜0.4μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
  8. 前記無機充填材の含有量が、硬化性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、40〜85質量%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
  9. 前記無機充填材の含有量が、硬化性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、60〜85質量%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
  10. 前記(A)工程において、
    ロール状に巻き取られた支持体付きプリプレグを、保護フィルムが張り合わせてある場合は保護フィルムを剥離し、順次連続的に真空ラミネーターに供給し、支持体付きプリプレグのプリプレグ面を内層回路基板に向かい合わせ、真空ラミネーターを用いて加熱及び加圧して支持体付きプリプレグを内層回路基板に真空積層することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
  11. 前記(B)工程において、
    熱硬化時の温度が150〜250℃、熱硬化時の時間が30〜300分間であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
  12. 前記(B)工程において、
    加熱オーブンを用いてプリプレグを熱硬化して絶縁層を形成することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
  13. 前記(B)工程において、
    プリプレグを加熱オーブン内で垂直状態に配置し、熱硬化して絶縁層を形成することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
  14. 前記(B)工程において、
    多層プリント配線板を耐熱治具で固定してプリプレグを熱硬化し、硬化後に治具の内側の多層プリント配線板を切り出すことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
  15. 前記絶縁層の線熱膨張係数が15ppm以下であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
  16. 前記絶縁層のガラス転移温度が181℃以上であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
  17. 更に(C)支持体を剥離する工程を含むことを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
  18. 更に(D)ビアホールを形成する工程を含むことを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
  19. 更に(E)デスミア工程を含むことを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
  20. 更に(F)メッキにより導体層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
  21. 請求項1〜20のいずれか1項に記載の製造方法で得られた多層プリント配線板を含有することを特徴とする半導体装置。
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