一例として示す給気ユニット10の上面図である図1等の添付の図面を参照し、本発明にかかる給気ユニットおよびそれを利用した手術室の空調システム(空調方法)の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、給気ユニット10の側面図であり、図3は、給気ユニット10の底面図である。図4は、図1の4−4線端面図であり、図5は、給気ユニット10に設置される第1および第2スクリーンメッシュ29,31の斜視図である。図1では、頂板11が省略され、図2では、右側板14が省略されている。図1,2では、長さ方向(前後方向)を矢印A、幅方向(横方向)を矢印B(図1のみ)で示し、上下方向を矢印C(図2のみ)で示す。
給気ユニット10は、図6,7および図12,13に示す手術室51(ハイブリッド手術室)の天井52に設置され、手術室51の天井52から床53(手術台58およびその近傍)に向かって清浄かつ温調された空気を給気する。給気ユニット10には、後記する給気ダクト73,74から空気が供給される。なお、給気ユニット10は、手術室51のみならず、他の医療施設や福祉施設、公共施設、宿泊施設等のあらゆる建造物の天井に設置することができ、その建造物の天井から室(床)に向かって清浄な温調空気を給気することができる。
給気ユニット10は、長さ方向へ長い略四角形の頂板11と、幅方向へ長い略四角形の前後側板12,13と、長さ方向へ長い略四角形の左右側板14,15とを有し、それら板11〜15が五面体の箱を形成している。給気ユニット10には、それら壁11〜15に囲繞された所定容積のスペース17(内部空間)と、それら側板12〜15の下端縁に囲繞された開口18(吹出口)とが画成されている。なお、給気ユニット10の大きさについて特に限定はなく、設置する手術室51の容積や天井面積、給気する空気の流量等に合わせてその大きさを自由に設計することができる。
頂板11の四隅(各角部)には、吊りボルトを固定するボルト固定金具19が取り付けられている。前側板12には、給気ダクト73,74を接続するダクト接続部20が作られている。ダクト接続部20には、断面形状が四角形のチャンバー21が連結されている。チャンバー21は、スペース17に収容され、前側板12と後側板13との間において前後方向へ延びている。チャンバー21の側面開口32には、消音ディフューザー22が取り付けられている。給気ユニット10は、手術室51の天井下地材に固定され、天井板に乗せられた状態で設置される。給気ユニット10の他の設置手段としては、ボルト固定金具19に吊りボルトの下端部が固定され、吊りボルトの上端部が天井スラブに固定されることで、天井に吊り下げられた状態で設置される。
給気ユニット10のスペース17には、2つのHEPAフィルタ23A,23Bと2つのLED照明24A,24B(照明器具)と2つスクリーンメッシュ25A,25Bとが取り付けられている。HEPAフィルタ23A,23Bの下方に延びる前後側板12,13の内面と左右側板14,15の内面とには、消音機能および結露防止機能を有する発泡材シート26(PFシート)が貼付されている。
それらHEPAフィルタ23A,23Bは、その平面形状が四角形に成型され、カートリッジに着脱可能に収容されている。HEPAフィルタ23A,23Bは、ダクト接続部20(チャンバー21)の直下(下方)におけるスペース17に配置されている。それらHEPAフィルタ23A,23Bは、カートリッジを介して各側板12〜15に水平に固定され、スペース17において長さ方向と幅方向とへ延びている。それらHEPAフィルタ23A,23Bは、給気ダクト73,74からスペース17に給気された空気に含まれる微細な塵埃(手術室51内に発生した塵埃、花粉やPM2.5を含む)を除去し、塵埃が除去された清浄な空気を作る。
それらLED照明24A,24Bは、HEPAフィルタ23A,23Bとスクリーンメッシュ25A,25Bを取り付けた開口18との間であって左右側板14,15近傍(左右側板14,15の直近)のスペース17に固定治具を介して固定され、長さ方向へ延びている。給気ユニット10には2つのLED照明24A,24Bが設置されているが、給気ユニット10の大きさによっては4つのLED照明がユニット10に設置されていてもよい。この場合は、2つのLED照明が左右側板14,15近傍(左右側板14,15の直近)のスペース17に固定されて前後方向へ延び、2つのLED照明が前後側板12,13近傍(前後側板12,13の直近)のスペース17に固定されて幅方向へ延びる。それらLED照明24A,24Bは、HEPAフィルタ23A,23Bと開口18との間のスペース17に人工光を照射する。
給気ユニット10では、それらLED照明24A,24Bが左右側壁14,15の直近に固定されることで(前後側壁12,13の直近に固定される場合も含む)、LED照明24A,24Bが給気ダクト73,74からスペース17A,17Bに給気された空気の抵抗になることはなく、空気の気流がLED照明24A,24Bによって乱されることはない。さらに、LED照明24A,24Bが熱を発生したとしても、給気ユニットから給気される空気がLED照明24A,24Bの放熱を補助するから、熱によってLED照明24A,24Bが損傷することはなく、発光不良を起こすことはない。
スクリーンメッシュ25Aは、その平面形状が四角形に成型され、四角形のフレーム27Aに緊張状態で取り付けられている。スクリーンメッシュ25Aは、HEPAフィルタ23AやLED照明25A,25Bの下方であってスペース17の開口18近傍(吹出部分近傍)にフレーム27Aを介して着脱可能に固定されている。スクリーンメッシュ25Bは、その平面形状が四角形に成型され、四角形のフレーム27Bに緊張状態で取り付けられている。スクリーンメッシュ25Bは、HEPAフィルタ23BやLED照明25A,25Bの下方であってスペース17の開口18近傍(吹出部分近傍)にフレーム27Bを介して着脱可能に固定されている。それらスクリーンメッシュ25A,25Bは、フレーム27A,27Bによって各側壁12〜15に水平に固定され、スペース17において長さ方向と幅方向とへ延びている。
それらスクリーンメッシュ25A,25Bは、図5に示すように、網目28が長さ方向(一方向)へ延びる第1スクリーンメッシュ29と、網目30が長さ方向(一方向)と交差する幅方向(交差方向)へ延びる第2スクリーンメッシュ31との二枚のスクリーンメッシュ29,31から形成されている。第2スクリーンメッシュ31は、その上面が第1スクリーンメッシュ29の直下であってスクリーンメッシュ29の下面に重なっている。互いに重なり合う第1および第2スクリーンメッシュ29,31の網目28,30によって同形同大の略四角形の複数の網目(通気孔)が画成されている。なお、四角形や六角形等の複数の網目(通気孔)が形成された単一(一枚)のスクリーンメッシュ25A,25Bを使用することもできる。スクリーンメッシュ25A,25Bは、LED照明24A,24Bから照射される人工光を開口18全域(スクリーンメッシュ25A,25B全域)に拡散させる拡散板として機能するとともに、網目28,30(通気孔)に空気を通過させることで空気の流れを整流する整流板として機能をする。スクリーンメッシュ25A,25Bは、網目が長さ方向へ延びる第1スクリーンメッシュと、第1スクリーンメッシュの下面に重なって網目が幅方向へ延びる第2スクリーンメッシュと、第2スクリーンメッシュの下面に重なって網目が長さ方向へ延びる第3スクリーンメッシュと、第3スクリーンメッシュの下面に重なって網目が幅方向へ延びる第4スクリーンメッシュとから形成されていてもよく、前記第1〜第3スクリーンメッシュから形成されていてもよい。
給気ダクト73,74から供給された温調空気は、給気ユニット10のダクト接続部20からチャンバー21に流入し、図4に矢印で示すように、チャンバー21の側面開口32から消音ディフューザー22に当たり、ディフューザー22から頂板11に向かって流動した後、頂板11に当たってUターンし、HEPAフィルタ23A,23Bに向かって流動する。空気が消音ディフューザー22によって誘導されて頂板11に当たることで、空気が直接フィルタ23A,23Bに向かって流動する場合と比較し、空気による風切り音を低減させることができ、側板12〜15の内面に貼付された発泡材シート26の吸音効果との相乗により、給気ユニット10における雑音を消すことができる。
HEPAフィルタ23A,23Bに向かった空気は、それらHEPAフィルタ23A,23Bを通過した後、開口18近傍に取り付けられたスクリーンメッシュ25A,25Bを通過する。空気は、それに含まれる微細な塵埃がHEPAフィルタ23A,23Bによって除去される。塵埃が除去された温調空気は、第1スクリーンメッシュ29の長さ方向へ延びる網目28を通過して整流されるとともに、第2スクリーンメッシュ31の幅方向へ延びる網目30を通過して整流され、スクリーンメッシュ25A,25Bの全域から略一定の流速の規則的な流れとなって手術室51に給気される。LED照明24A,24Bから給気ユニット10のスペース17に照射された人工光は、スクリーンメッシュ25A,25Bに入光し、スクリーンメッシュ25A,25B(第1および第2スクリーンメッシュ29,31)によって拡散され、略均一の照度となってスクリーンメッシュ25A,25B全域から手術室51に照射される。
給気ユニット10は、HEPAフィルタ23A,23Bによって微細な塵埃が除去された清浄な温調空気がスクリーンメッシュ25A,25Bを通って開口18から給気されるとともに、LED照明24A,24Bによる人工光がスクリーンメッシュ25A,25Bによって拡散されて開口18から照射されるから、1台または複数台の給気ユニット10をたとえば手術室51の手術台58およびその近傍の天井52に設置することで、清浄な温調空気を手術台58を含むその近傍全域(手術室51内の空調目的エリア)に継続して給気することができるとともに、手術台58やその近傍の照明を明るくすることができる。給気ユニット10は、クリーンルームと略同等の清浄度が要求される手術室51に好適に使用することができる。
給気ユニット10は、清浄な温調空気がスクリーンメッシュ25A,25Bを通ることで、空気が第1スクリーンメッシュ29の長さ方向へ延びる網目28によって整流されるとともに、空気が第2スクリーンメッシュ31の幅方向へ延びる網目30によって整流され、空気の風速および風向を整えることができるから、スクリーンメッシュ25A,25B全域から流速が略一定の規則的な流れの空気を手術室51に給気することができ、温調された空気の高い清浄度を保持することが可能な垂直層流型空調を実現することができる。
給気ユニット10は、LED照明24A,24Bによる人工光がスクリーンメッシュ25A,25B全域に拡散されるから、スクリーンメッシュ25A,25Bにおいて照明の明暗やちらつきが生じることはなく、スクリーンメッシュ25A,25B全域から略均一の照度の光を手術室51に照射させることができる。
図6,7は、手術室51(ハイブリッド手術室)に設置された空調システム50A(空調方法)を示す構成図である。図6では、手術室51を上方(天井52の側)から示し、図7は、手術室51を前方(前壁54の側)から示す。図6,7では、手術台58や透視装置59(X線アンギオグラフィー)、無影灯60(図7に図示)、照明器具61を点線で示す。図7では、第2バイパスユニット66Bの図示を省略している。図6,7では、前後方向(長さ方向)を矢印A(図6のみ)、横方向(幅方向)を矢印Bで示し、上下方向を矢印C(図7のみ)で示す。
手術室51は、天井52および床53と前後壁54,55および両側壁56.57とに囲繞された所定容積の空調空間を有し、天井52や床53、それら壁54〜57によって室外と気密に仕切られている。手術室51には、移動式または固定式の前後方向へ長い手術台58や可視化手術対応の懸垂型の透視装置59(X線アンギオグラフィー)、無影灯60、照明器具61が設置されているとともに、図示はしていないがその他の手術支援機器が設置されている。それら照明器具61は、一方の側壁57と後記する第1走行レール62Aとの間に延びる天井52に取り付けられ、他方の側壁58と後記する第2走行レール62Bとの間に延びる天井52に取り付けられている。手術台58は、それら走行レール62A,62Bの間に配置される。
透視装置59は、手術室51の天井52に敷設された第1および第2走行レール62A,62Bと、それら走行レール62A,62Bに取り付けられた走行器62と、走行器62に垂下された天井走行アーム64(Cアーム)とを有する。第1および第2走行レール62A,62Bは、手術台58の直上の手術室51の天井52に取り付けられ、横方向へ離間対向して前後方向へ延びている。それら走行レール62A,62Bは、その前端部が前壁54近傍に達し、その後端部が後壁55近傍に達している。走行器63は、図6に矢印Lで示すように、走行レール62A,62Bに垂下された状態で前後方向へ往復移動し、天井走行アーム64は、走行器63の往復移動にともなって移動する。
空調システム50A(空調方法)は、第1〜第8給気ユニット65A〜65H(第1〜第n給気ユニット)と、第1〜第2バイパスユニット66A,66B(第1〜第n給気バイパスユニット)と、第1〜第4空調装置67A〜67D(第1〜第n空調装置)と、第1〜第8近接センサ68A〜68H(第1〜第n近接センサ)と、コントローラ69(制御装置)とから形成されている。第1〜第8給気ユニット65A〜65Hや第1〜第2バイパスユニット66A,66Bには、図1〜図3に示す給気ユニット10が使用されている。
第1〜第4給気ユニット65A〜65Dは、第1および第2走行レール62A,62Bの間に延びる天井52に取り付けられ、それら走行レール62A,62Bに並行して(走行レール62A,62Bに沿って)前後方向へ一列に並んでいる。第5〜第8給気ユニット65E〜65Hは、第1〜第4給気ユニット65A〜65Dに並列するとともに、第1および第2走行レール62A,62Bの間に延びる天井52に取り付けられ、それら走行レール62A,62Bに並行して(走行レール62A,62Bに沿って)前後方向へ一列に並んでいる。なお、給気ユニット65A〜65Hの台数を図示のそれに限定するものではなく、手術室51の容積や天井52に対する機器の配置、給気ユニットの空気給気量等により、給気ユニットの台数を図示のそれよりも多くすることもでき、図示のそれよりも少なくすることもできる。
第1バイパスユニット66Aは、第1走行レール62Aの外側近傍であって走行レール62と側壁56との間に延びる天井52に取り付けられている。第2バイパスユニット66Bは、第2走行レール62Bの外側近傍であって走行レール62Bと側壁57との間に延びる天井52に取り付けられている。なお、バイパスユニット66A,66Bの台数を図示のそれに限定するものではなく、手術室51の容積や天井52に対する機器の配置、バイパスユニットの空気給気量等により、バイパスユニットの台数を図示のそれよりも多くすることもでき、図示のそれよりも少なくすることもできる。
第1〜第4空調装置67A〜67Dは、手術室51の四隅(各角部)に設置されている。それら空調装置67A〜67Dは、温調された空気を第1〜第8給気ユニット65A〜65Hおよび第1〜第2バイパスユニット66A,66Bに供給する。それら空調装置67A〜67Dは、給気ファン70と冷却加熱コイル71と還気空気取入口72とを有する(図7参照)。還気空気取入口72は、手術室51内の床53近傍(床53の直近)に位置し、手術室51の中央に向かって開口している。なお、空調装置67A〜67Dの台数を図示のそれに限定するものではなく、空調装置の能力により、空調装置の台数を図示のそれよりも多くすることもでき、図示のそれよりも少なくすることもできる。第1および第2空調装置67A,67Bは、第1給気ダクト73によって連結され、第3および第4空調装置67C,67Dは、第2給気ダクト74によって連結されている。
第1〜第8近接センサ68A〜68Hは、第1走行レール62Aの内側近傍に設置され、走行レール62Aに並行して前後方向へ一列に並んでいる。それら近接センサ68A〜68Hは、制御信号線75を介してコントローラ69に接続されている。近接センサ68A〜68Hには、超音波センサや光電センサを使用することができる。第1近接センサ68A(前設置近接センサ)は、第1および第5給気ユニット65A,65Eの前端に位置するように配置され、第2近接センサ68B(後設置近接センサ)は、第1および第5給気ユニット65A,65Eの後端に位置するように配置されている。
第3近接センサ68C(前設置近接センサ)は、第2および第6給気ユニット65B,65Fの前端に位置するように配置され、第4近接センサ68D(後設置近接センサ)は、第2および第6給気ユニット65B,65Fの後端に位置するように配置されている。第5近接センサ68E(前設置近接センサ)は、第3および第7給気ユニット65C,65Gの前端に位置するように配置され、第6近接センサ68F(後設置近接センサ)は、第3および第7給気ユニット65C,65Gの後端に位置するように配置されている。第7近接センサ68G(前設置近接センサ)は、第4および第8給気ユニット65D,65Hの前端に位置するように配置され、第8近接センサ68H(後設置近接センサ)は、第4および第8給気ユニット65D,65Hの後端に位置するように配置されている。
コントローラ69は、中央処理装置(CPUまたはMPU)とメインメモリおよびキャッシュメモリとを有して独立したオペレーティングシステム(OS)によって動作する物理的なコンピュータである。コントローラ69には、各種データを入力するための入力装置、入力確認のための表示装置がインターフェイスを介して接続されている(図示せず)。コントローラ69は、メインメモリに格納されたアプリケーションを起動し、起動したアプリケーションに従って、後記する各手段(各工程)を実行する。
第1および第5給気ユニット65A,65Eは、第1給気ダクト73によって第1および第2空調装置67A,67Bに連結され、第2および第6給気ユニット65B,65Fは、第1給気ダクト73によって第1および第2空調装置67A,67Bに連結されている。第1バイパスユニット66Aは、第1給気ダクト73によって第1および第2空調装置67A,67Bに連結されている。
第1および第5給気ユニット65A,65Eを連結する第1給気ダクト73には、第1モーターダンパ76A(MD)が設置され、第2および第6給気ユニット65B,65Fを連結する第1給気ダクト73には、第2モーターダンパ76Bが設置されている。第1バイパスユニット66Aにつながる第1給気ダクト73には、第1風量調節ダンパ77A(VD)が設置されている。
第3および第7給気ユニット65C,65Gは、第2給気ダクト74によって第3および第4空調装置67C,67Dに連結され、第4および第8給気ユニット65D,65Hは、第2給気ダクト74によって第3および第4空調装置67C,67Dに連結されている。第2バイパスユニット66Bは、第2給気ダクト74によって第3および第4空調装置67C,67Dに連結されている。
第3および第7給気ユニット65C,65Gを連結する第2給気ダクト74には、第3モーターダンパ76Cが設置され、第4および第8給気ユニット65D,65Hを連結する第2給気ダクト74には、第4モーターダンパ76Dが設置されている。第2バイパスユニット66Bにつながる第2給気ダクト74には、第2風量調節ダンパ77Bが設置されている。
第1〜第4モーターダンパ76A〜76Dは、モジュトロールモーターと、そのモーターの駆動力によって旋回する旋回羽根と、旋回羽根の旋回によって開閉される空気流路と、旋回羽根の旋回を制御する制御部とを有する。第1〜第4モーターダンパ76A〜76Dの制御部は、制御信号線75を介してコントローラ69に接続されている。第1および第2風量調節ダンパ77A,77Bは、第1および第2バイパスユニット66A,66Bにつながる第1および第2給気ダクト73,74内を通過する空気の風量を調整する。システム50Aでは、風量調節ダンパ77A,77Bのダンパ開度が一定に保持されている。
第1〜第4モーターダンパ76A〜76Dの制御部は、コントローラ69から出力された開閉信号によってモジュトロールモーターが回転し、それによって旋回羽根の旋回角度(ダンパ開度)を変更することで、空気流路を開放または閉鎖する。コントローラ69から開信号が出力され、それらモーターダンパ76A〜76Dの空気流路が開放されると、給気ダクト73,74が開放され、空気が給気ダクト73,74を通って各給気ユニット65A〜65Hや各バイパスユニット66A,66Bに流入する。コントローラ69から閉信号が出力され、それらモーターダンパ76A〜76Dの空気流路が閉鎖されると、各給気ユニット65A〜65Hにつながる給気ダクト73,74が閉鎖され、空気が給気ダクト73,74および風量調節ダンパ77A,77Bを通ってバイパスユニット66A,66Bに流入する。
図8は、空調システム50A(空調方法)における空気の給気開始と給気停止との制御を説明する図であり、図9は、図8から続く空気の給気開始と給気停止との制御を説明する図である。図10は、図9から続く空気の給気開始と給気停止との制御を説明する図であり、図11は、図10から続く空気の給気開始と給気停止との制御を説明する図である。図12は、図11から続く空気の給気開始と給気停止との制御を説明する図である。図8〜図12では、手術台58や無影灯60、照明器具61、コントローラ69の図示を省略し、透視装置59や走行レール62Aを点線で示す。
手術室51の手術台58に患者が横臥した状態で手術が行われる場合、透視装置59の走行器63および天井走行アーム64が走行レール62A,62Bに沿って前後方向へ移動し、患者の透視や血管撮影が行われる。手術室51においてシステム50AをONにすると、第1〜第4空調装置67A〜67Dや第1〜第8近接センサ68A〜68H、第1〜第4モーターダンパ76A〜76D、コントローラ69が起動し、空調装置67A〜67Dから給気ダクト73,74に空気が供給される。
なお、コントローラ69のメモリには、第1〜第4モーターダンパ76A〜76Dのダンパ識別コードおよび第1〜第8近接センサ68A〜68Hのセンサ識別コードが記憶され、各ダンパ識別コードと各センサ識別コードとの対応関係が記憶されている。コントローラ69は、ダンパ識別コードとセンサ識別コードとの対応関係によって、第1および第2センサ68A,68Bからの各信号によって開閉する第1モーターダンパ76Aを特定し、第3および第4センサ68C,68Dからの各信号によって開閉する第2モーターダンパ76Bを特定する。さらに、第5および第6センサ68E,68Fからの各信号によって開閉する第3モーターダンパ76Cを特定し、第7および第8センサ68G,68Hからの各信号によって開閉する第4モーターダンパ76Dを特定する。
図8に示すように、透視装置59の走行器63および天井走行アーム64が手術室51の前壁54の側に位置し、透視装置59による透視・血管撮影が行われる前であって、走行器63および天井走行アーム64が後壁55に向かって移動を開始する前では、走行器63の前端部が第1近接センサ68Aに近接せず、走行器63が第1近接センサ68Aの検出範囲外にある。さらに、走行器63が第2〜第8近接センサ68B〜68Hに近接せず、走行器63が第2〜第8近接センサ68B〜68Hの検出範囲外にある。それら近接センサ68A〜68Hは、離間信号をコントローラ69に出力する。
コントローラ69は、それら近接センサ68A〜68Hからの離間信号によって走行器63がそれら近接センサ68A〜68Hの検出範囲外にあると認識する。コントローラ69は、第1〜第4モーターダンパ76A〜76Dの制御部に開信号を出力し、第1〜第8給気ユニット65A〜65Hからの空気の給気を開始させる(給気第1開始手段、給気第1開始工程)。コントローラ69から開信号を受信したそれらモーターダンパ76A〜76Dの制御部は、空気流路が閉鎖されている場合、旋回羽根を旋回させ、空気流路を全開にして空気流路を開放し、または、空気流路がすでに開放されている場合、旋回羽根の全開を維持する。
第1および第2空調装置67A,67Bから供給された温調空気は、第1給気ダクト73と第1および第2モーターダンパ76A,76Bとを通り、第5および第6給気ユニット65E,65Fと第1および第2給気ユニット65A,65Bとに流入した後、それら給気ユニット65A,65B,65E,65FのHEPAフィルタ23A,23Bとスクリーンメッシュ25A,25Bとを通過して微細な塵埃が除去される。さらに、空調装置67A,67Bから供給された空気は、第1給気ダクト73と第1風量調節ダンパ77Aとを通り、第1バイパスユニット66Aに流入した後、バイパスユニット66AのHEPAフィルタ23A,23Bとスクリーンメッシュ25A,25Bとを通過して微細な塵埃が除去される。なお、LED照明24A,24Bから光が照射され、スクリーンメッシュ25A,25B全域から手術台58およびその近傍に光が照射されている。
それら給気ユニット65A,65B,65E,65Fによって塵埃が除去された清浄なかつ温調された空気は、図8に矢印M1で示すように、それら給気ユニット65A,65B,65E,65Fの開口18から手術室51の床53(手術室51の天井52から手術台58全域およびその近傍)に向かって給気される。バイパスユニット66Aによって塵埃が除去された清浄な温調空気は、図8に矢印M2で示すように、それらバイパスユニット65Aの開口18から手術室51の床53に向かって給気される。
第3および第4空調装置67C,67Dから供給された温調空気は、第2給気ダクト74と第3および第4モーターダンパ76C,76Dとを通り、第7および第8給気ユニット65G,65Hと第3および第4給気ユニット65C,65Dとに流入した後、それら給気ユニット65C,65D,65G,65HのHEPAフィルタ23A,23Bとスクリーンメッシュ25A,25Bとを通過して微細な塵埃が除去される。さらに、空調装置67C,67Dから供給された空気は、第2給気ダクト74と第2風量調節ダンパ77Bとを通り、第2バイパスユニット66Bに流入した後、バイパスユニット66BのHEPAフィルタ23A,23Bとスクリーンメッシュ25A,25Bとを通過して微細な塵埃が除去される。
それら給気ユニット65C,65D,65G,65Hによって塵埃が除去された清浄な温調空気は、図8に矢印M1で示すように、それら給気ユニット65C,65D,65G,65Hの開口18から手術室51の床53(手術室51の天井52から手術台58全域およびその近傍)に向かって給気される。バイパスユニット66Bによって塵埃が除去された清浄な空気は、図8に矢印M2で示すように、それらバイパスユニット65Bの開口18から手術室51の床53に向かって給気される。
透視装置59による透視・血管撮影を行うため、図9に矢印L1で示すように、透視装置59の走行器63および天井走行アーム64が走行レール62A,62Bを前方へ移動すると、走行器63の前端部が第1近接センサ68Aに近接し(走行器63の一部が給気ユニット65A,65Eの前端部に位置し)、走行器63が第1近接センサ68Aの検出範囲内に入る。なお、図9では、走行器63が第2〜第8近接センサ68B〜68Hに近接せず、走行器63が第2〜第8近接センサ68B〜68Hの検出範囲外にある。
走行器63が第1近接センサ68Aの検出範囲内に入ると、第1近接センサ68Aは、近接信号をコントローラ69に出力する。近接センサ68Aから近接信号を受信したコントローラ69は、走行器63が第1近接センサ68Aの検出範囲内にあると認識する。コントローラ69は、第1モーターダンパ76Aの制御部に閉信号を出力し、第1および第5給気ユニット65A,65Eからの空気の給気を停止させる(給気第1停止手段、給気第1停止工程)。
コントローラ69から閉信号を受信したモーターダンパ76Aの制御部は、旋回羽根を旋回させ、空気流路を全閉にして空気流路を閉鎖する。モーターダンパ76Aの空気流路が閉鎖されることで、第1および第5給気ユニット65A,65Eにつながる給気ダクト73が閉鎖され、給気ユニット65A,65Eからの空気の給気が停止する。なお、給気ユニット65A,65Eにおける空気の給気が停止した場合、給気ユニット65A,65Eから給気されるべき空気がバイパスユニット66Aを通って手術室51内に給気される(給気バイパス手段、給気バイパス工程)。
図9の状態から走行器63および天井走行アーム64が走行レール62A,62Bをさらに前方へ移動すると、図10に矢印L2で示すように、走行器63が第1および第2近接センサ68A,68Bの検出範囲内から検出範囲外へ移動し、走行器63の前端部が第4近接センサ68Dに近接するとともに、走行器63の後端部が第3近接センサ68Cに近接し(走行器63が給気ユニット65B,65Fに位置し)、走行器63が第3および第4近接センサ68C,68Dの検出範囲内に入る。なお、図10では、走行器63が第5〜第8近接センサ68E〜68Hに近接せず、走行器63が第5〜第8近接センサ68E〜68Hの検出範囲外にある。
走行器63が第1および第2近接センサ68A,68Bの検出範囲外へ移動(走行器63が第1および第5給気ユニット65A,65Eから離間)すると、第1および第2近接センサ68A,68Bは、離間信号をコントローラ69に出力する。近接センサ68A,68Bから離間信号を受信したコントローラ69は、走行器63が第1および第2近接センサ68A,68Bの検出範囲外にあると認識する。コントローラ69は、第1モーターダンパ76Aの制御部に開信号を出力し、第1および第5給気ユニット65A,65Eからの空気の給気を開始させる(給気第1開始手段、給気第1開始工程)。
コントローラ69から開信号を受信した第1モーターダンパ76Aの制御部は、旋回羽根を旋回させ、空気流路を全開にして空気流路を開放する。第1モーターダンパ76Aの空気流路が開放されることで、第1および第5給気ユニット65A,65Eにつながる給気ダクト73が開放され、それら給気ユニット65A,65Eからの空気の給気が再開する。
走行器63が第3および第4近接センサ68C,68Dの検出範囲内に入ると、第3および第4近接センサ68C,68Dは、近接信号をコントローラ69に出力する。近接センサ68C,68Dから近接信号を受信したコントローラ69は、走行器63が第3および第4近接センサ68C,68Dの検出範囲内にあると認識する。コントローラ69は、第2モーターダンパ76Bの制御部に閉信号を出力し、第2および第6給気ユニット65B,65Fからの空気の給気を停止させる(給気第1停止手段、給気第1停止工程)。
コントローラ69から閉信号を受信したモーターダンパ76Bの制御部は、旋回羽根を旋回させ、空気流路を全閉にして空気流路を閉鎖する。モーターダンパ76Bの空気流路が閉鎖されることで、第2および第6給気ユニット65B,65Fにつながる給気ダクト73が閉鎖され、給気ユニット65B,65Fからの空気の給気が停止する。なお、給気ユニット65B,65Fにおける空気の給気が停止した場合、給気ユニット65B,65Fから給気されるべき空気がバイパスユニット66Aを通って手術室51内に給気される(給気バイパス手段、給気バイパス工程)。
図10の状態から走行器63および天井走行アーム64が走行レール62A,62Bをさらに前方へ移動すると、図11に矢印L3で示すように、走行器63が第3および第4近接センサ68C,68Dの検出範囲内から検出範囲外へ移動し、走行器63の前端部が第7近接センサ68Gに近接するとともに、走行器63の後端部が第6近接センサ68Fに近接し(走行器63の一部が給気ユニット65D,65Hの前端部に位置するとともに、走行器63の一部が給気ユニット65C,65Gの前端部に位置し)、走行器63が第6および第7近接センサ68F,68Gの検出範囲内に入る。なお、図11では、走行器63が第1〜第5近接センサ68A〜68Eから離間し、走行器63が第1〜第5近接センサ68A〜68Eの検出範囲外にある。
走行器63が第3および第4近接センサ68C,68Dの検出範囲外へ移動(走行器63が第2および第6給気ユニット65B,65Fから離間)すると、第3および第4近接センサ68C,68Dは、離間信号をコントローラ69に出力する。近接センサ68C,68Dから離間信号を受信したコントローラ69は、走行器63が第3および第4近接センサ68C,68Dの検出範囲外にあると認識する。コントローラ69は、第2モーターダンパ76Bの制御部に開信号を出力し、第2および第6給気ユニット65B,65Fからの空気の給気を開始させる(給気第1開始手段、給気第1開始工程)。
コントローラ69から開信号を受信した第2モーターダンパ76Bの制御部は、旋回羽根を旋回させ、空気流路を全開にして空気流路を開放する。第2モーターダンパ76Bの空気流路が開放されることで、第2および第6給気ユニット65B,65Fにつながる給気ダクト73が開放され、それら給気ユニット65B,65Fからの空気の給気が再開する。
走行器63が第6および第7近接センサ68F,68Gの検出範囲内に入ると、第6および第7近接センサ68F,68Gは、近接信号をコントローラ69に出力する。近接センサ68F,68Gから近接信号を受信したコントローラ69は、走行器63が第6および第7近接センサ68F,68Gの検出範囲内にあると認識する。コントローラ69は、第3および第4モーターダンパ76C,76Dの制御部に閉信号を出力し、第3および第4給気ユニット65C,65Dと第7および第8給気ユニット65G,65Hとからの空気の給気を停止させる(給気第1停止手段、給気第1停止工程)。
コントローラ69から閉信号を受信したモーターダンパ76C,76Dの制御部は、旋回羽根を旋回させ、空気流路を全閉にして空気流路を閉鎖する。モーターダンパ76C,76Dの空気流路が閉鎖されることで、第3および第4給気ユニット65C,65Dと第7および第8給気ユニット65G,65Hとにつながる給気ダクト73が閉鎖され、それら給気ユニット65C,65D,65G,65Hからの空気の給気が停止する。なお、給気ユニット65C,65D,65G,65Hにおける空気の給気が停止した場合、給気ユニット65C,65D,65G,65Hから給気されるべき空気がバイパスユニット66Bを通って手術室51内に給気される(給気バイパス手段、給気バイパス工程)。
図11の状態から走行器63および天井走行アーム64が走行レール62A,62Bをさらに前方へ移動すると、図12に矢印L4で示すように、走行器63が第6および第7近接センサ68F,68Gの検出範囲内から検出範囲外へ移動するとともに、走行器63が第8近接センサ68Hの検出範囲内から検出範囲外へ移動する。
走行器63が第6〜第8近接センサ68F〜68Hの検出範囲外へ移動(走行器63が第3および第4給気ユニット65C,65Dと第7および第8給気ユニット65G,65Hとから離間)すると、第6〜第8近接センサ68F〜68Hは、離間信号をコントローラ69に出力する。近接センサ68F〜68Hから離間信号を受信したコントローラ69は、走行器63が第6〜第8近接センサ68F〜68Hの検出範囲外にあると認識する。コントローラ69は、第3および第4モーターダンパ76C,76Dの制御部に開信号を出力し、第3および第4給気ユニット65C,65Dと第7および第8給気ユニット65G,65Hとからの空気の給気を開始させる(給気第1開始手段、給気第1開始工程)。
コントローラ69から開信号を受信した第3および第4モーターダンパ76C,76Dの制御部は、旋回羽根を旋回させ、空気流路を全開にして空気流路を開放する。第3および第4モーターダンパ76C,76Dの空気流路が開放されることで、第3および第4給気ユニット65C,65Dと第7および第8給気ユニット65G,65Hとにつながる給気ダクト74が開放され、それら給気ユニット65C,65D,65G,65Hからの空気の給気が再開する。
空調システム50A(空調方法)は、第1〜第8近接センサ68A〜68Hからの近接信号によって第1〜第8給気ユニット65A〜65Hのうちの走行器63が近接した給気ユニット65A〜65Hからの空気の給気を停止することで、給気を停止した給気ユニット65A〜65Hからの空気が走行器63に衝突することはなく、空気が走行器63に衝突することによる気流の乱れを防ぐことができ、手術室51の天井52から流速が略一定の規則的な流れの清浄かつ温調された空気を給気することができる。
空調システム50A(空調方法)は、手術室51の天井52に敷設された走行レール62A,62Bを走行器63が往復移動しているときに、その走行器63が離間した給気ユニット65A〜65Hのすべてから空気が給気されるから、走行器63の移動経路の直下に清浄かつ温調された空気を給気することができ、手術台58およびその近傍全域に清浄な温調空気を継続して給気することができる。
空調システム50A(空調方法)は、走行器63が近接した給気ユニット65A〜65Hからの空気の給気を停止するが、その給気ユニット65A〜65Hから給気されるべき空気がバイパスユニット66A,66Bを通って手術室51に給気されるから、給気中における手術室51全体の総空調空気循環量が増減することはなく、手術室51の天井52から流速が略一定の規則的な流れの空気を給気することができ、温調された空気の高い清浄度を保持することが可能な垂直層流型空調を実現することができる。
図13,14は、他の一例として示す空調システム50B(空調方法)の構成図である。図13では、手術室51(ハイブリッド手術室)を上方(天井52の側)から示し、図14は、手術室51を前方(前壁54の側)から示す。図13,14では、手術台58や透視装置59(X線アンギオグラフィー)、無影灯60(図14に図示)、照明器具61を点線で示す。図14では、第2バイパスユニット66Bの図示を省略している。図13,14では、前後方向(長さ方向)を矢印A(図13のみ)、横方向(幅方向)を矢印Bで示し、上下方向を矢印C(図14のみ)で示す。
空調システム50B(空調方法)は、第1〜第8給気ユニット65A〜65H(第1〜第n給気ユニット)と、第1〜第2バイパスユニット66A,66B(第1〜第n給気バイパスユニット)と、第1〜第4空調装置67A〜67D(第1〜第n空調装置)と、第1〜第8近接センサ68A〜68H(第1〜第n近接センサ)と、コントローラ69(制御装置)とから形成されている。第1〜第8給気ユニット65A〜65Hや第1〜第2バイパスユニット66A,66Bには、図1〜図3に示す給気ユニット10が使用されている。
なお、図13,14に示すシステム50Bが図6,7に示すそれと異なるところは、第1バイパスユニット66Aにつながる第1給気ダクト73に、風量調節ダンパ(VD)ではなく第5モーターダンパ78A(MD)が設置され、第2バイパスユニット66Bにつながる第2給気ダクト74に、風量調節ダンパではなく第6モーターダンパ78Bが設置されている点にある。図13,14の空調システム50Bを構成するその他の機器は図6,7の空調システム50Aのそれらと同一であるから、図6,7と同一の符号を付すとともに、図6,7の説明を援用することで、それらの説明は省略する。
第1バイパスユニット66Aにつながる第1給気ダクト73には、第5モーターダンパ78Aが設置され、モーターダンパ78Aの旋回羽根の旋回による空気流路の開閉によってユニット66Aにつながる給気ダクト73が開閉される。モーターダンパ78Aの旋回羽根が全開となって給気ダクト73が開放されると、空気が給気ダクト73からバイパスユニット66Aに流入し、バイパスユニット66Aから清浄な空気が手術室51の天井52から床53に向かって給気される。モーターダンパ78Aの旋回羽根が全閉となって給気ダクト73が閉鎖されると、空気のバイパスユニット66Aへの流入が遮断される。
第2バイパスユニット66Bにつながる第2給気ダクト74には、第6モーターダンパ78Bが設置され、モーターダンパ78Bの旋回羽根の旋回による空気流路の開閉によってユニット66Bにつながる給気ダクト74が開閉される。モーターダンパ78Bの旋回羽根が全開となって給気ダクト74が開放されると、空気が給気ダクト74からバイパスユニット66Bに流入し、バイパスユニット66Bから清浄な空気が手術室51の天井52から床53に向かって給気される。モーターダンパ78Bの旋回羽根が全閉となって給気ダクト74が閉鎖されると、空気のバイパスユニット66Bへの流入が遮断される。
図15は、空調システム50B(空調方法)における空気の給気開始と給気停止との制御を説明する図であり、図16は、図15から続く空気の給気開始と給気停止との制御を説明する図である。図17は、図16から続く空気の給気開始と給気停止との制御を説明する図であり、図18は、図17から続く空気の給気開始と給気停止との制御を説明する図である。図19は、図18から続く空気の給気開始と給気停止との制御を説明する図である。図15〜図19では、手術台58や無影灯60、照明器具61、コントローラ69の図示を省略し、透視装置59や走行レール62Aを点線で示す。
図13,14のシステム50Bを設置した手術室51において可視化手術(ハイブリッド手術)が行われる場合、透視装置59の走行器63および天井走行アーム64が走行レール62A,62Bに沿って前後方向へ移動し、患者の透視や血管撮影が行われる。手術室51においてシステム50BをONにすると、第1〜第4空調装置67A〜67Dや第1〜第8近接センサ68A〜68H、第1〜第4モーターダンパ76A〜76D、第5および第6モーターダンパ78A,78B、コントローラ69が起動し、空調装置67A〜67Dから給気ダクト73,74に空気が供給される。
コントローラ69のメモリには、第1〜第4モーターダンパ76A〜76Dのダンパ識別コード、第5および第6モーターダンパ78A,78Bのダンパ識別コード、第1〜第8近接センサ68A〜68Hのセンサ識別コードが記憶され、各ダンパ識別コードとセンサ識別コードとの対応関係が記憶されている。
コントローラ69は、各ダンパ識別コードとセンサ識別コードとの対応関係によって、第1および第2センサ68A,68Bからの各信号によって開閉する第1モーターダンパ76Aを特定し、第3および第4センサ68C,68Dからの各信号によって開閉する第2モーターダンパ76Bを特定する。さらに、第5および第6センサ68E,68Fからの各信号によって開閉する第3モーターダンパ76Cを特定し、第7および第8センサ68G,68Hからの各信号によって開閉する第4モーターダンパ76Dを特定する。コントローラ69は、第1〜第4センサ68A〜68Dからの各信号によって開閉する第5モーターダンパ78Aを特定し、第5〜第8センサ68E〜68Hからの各信号によって開閉する第6モーターダンパ78Bを特定する。
図15に示すように、透視装置59の走行器63および天井走行アーム64が手術室51の前壁54の側に位置し、透視装置59による透視・血管撮影が行われる前であって、走行器63および天井走行アーム64が後壁55に向かって移動を開始する前では、走行器63の前端部が第1近接センサ68Aに近接せず、走行器63が第1近接センサ68Aの検出範囲外にある。さらに、走行器63が第2〜第8近接センサ68B〜68Hに近接せず、走行器63が第2〜第8近接センサ68B〜68Hの検出範囲外にある。それら近接センサ68A〜68Hは、離間信号をコントローラ69に出力する。
コントローラ69は、それら近接センサ68A〜68Hからの離間信号によって走行器63がそれら近接センサ68A〜68Hの検出範囲外にあると認識する。コントローラ69は、第1〜第4モーターダンパ76A〜76Dの制御部に開信号を出力し、第1〜第8給気ユニット65A〜65Hからの空気の給気を開始させるとともに(給気第1開始手段、給気第1開始工程)、第5および第6モーターダンパ78A,78Bの制御部に閉信号を出力し、第1および第2バイパスユニット66A,66Bからの空気の給気を停止させる(給気第2停止手段、給気第2停止工程)。
コントローラ69から開信号を受信したそれらモーターダンパ76A〜76Dの制御部は、空気流路が閉鎖されている場合、旋回羽根を旋回させ、空気流路を全開にして空気流路を開放し、または、空気流路がすでに開放されている場合、旋回羽根の全開を維持する。コントローラ69から閉信号を受信したそれらモーターダンパ78A,78Bの制御部は、空気流路が開放されている場合、旋回羽根を旋回させ、空気流路を全閉にして空気流路を閉鎖し、または、空気流路がすでに閉鎖されている場合、旋回羽根の全閉を維持する。
第1および第2空調装置67A,67Bから供給された空気は、第1給気ダクト73と第1および第2モーターダンパ76A,76Bとを通り、第5および第6給気ユニット65E,65Fと第1および第2給気ユニット65A,65Bとに流入した後、それら給気ユニット65A,65B,65E,65Fのスクリーンメッシュ25A,25Bを通過して微細な塵埃が除去される。なお、モーターダンパ78Aの旋回羽根が全閉となって第1バイパスユニット66Aにつながる給気ダクト73が閉鎖され、空気のバイパスユニット66Aへの流入が遮断されている。
それら給気ユニット65A,65B,65E,65Fによって塵埃が除去された清浄な空気は、図8に矢印M1で示すように、それら給気ユニット65A,65B,65E,65Fの開口18から手術室51の床53(手術室51の天井52から手術台58全域およびその近傍)に向かって給気される。
第3および第4空調装置67C,67Dから供給された空気は、第2給気ダクト74と第3および第4モーターダンパ76C,76Dとを通り、第7および第8給気ユニット65G,65Hと第3および第4給気ユニット65C,65Dとに流入した後、それら給気ユニット65C,65D,65G,65Hのスクリーンメッシュ25A,25Bを通過して微細な塵埃が除去される。なお、モーターダンパ78Bの旋回羽根が全閉となって第2バイパスユニット66Bにつながる給気ダクト74が閉鎖され、空気のバイパスユニット66Bへの流入が遮断されている。
それら給気ユニット65C,65D,65G,65Hによって塵埃が除去された清浄な空気は、図8に矢印M1で示すように、それら給気ユニット65C,65D,65G,65Hの開口18から手術室51の床53(手術室51の天井52から手術台58全域およびその近傍)に向かって給気される。なお、LED照明24A,24Bから光が照射され、スクリーンメッシュ25A,25B全域から手術台58およびその近傍に光が照射されている。
透視装置59による透視・血管撮影を行うため、図16に矢印L1で示すように、透視装置59の走行器63および天井走行アーム64が走行レール62A,62Bを前方へ移動すると、走行器63の前端部が第1近接センサ68Aに近接し(走行器63の一部が給気ユニット65A,65Eの前端部に位置し)、走行器63が第1近接センサ68Aの検出範囲内に入る。なお、図16では、走行器63が第2〜第8近接センサ68B〜68Hに近接せず、走行器63が第2〜第8近接センサ68B〜68Hの検出範囲外にある。
走行器63が第1近接センサ68Aの検出範囲内に入ると、第1近接センサ68Aは、近接信号をコントローラ69に出力する。近接センサ68Aから近接信号を受信したコントローラ69は、走行器63が第1近接センサ68Aの検出範囲内にあると認識する。コントローラ69は、第1モーターダンパ76Aの制御部に閉信号を出力し、第1および第5給気ユニット65A,65Eからの空気の給気を停止させるとともに(給気第1停止手段、給気第1停止工程)、第5モーターダンパ78Aの制御部に開信号を出力し、第1バイパスユニット66Aからの空気の給気を開始させる(給気第2開始止手段、給気第2開始止工程)。
コントローラ69から閉信号を受信したモーターダンパ76Aの制御部は、旋回羽根を旋回させ、空気流路を全閉にして空気流路を閉鎖する。モーターダンパ76Aの空気流路が閉鎖されることで、第1および第5給気ユニット65A,65Eにつながる給気ダクト73が閉鎖され、給気ユニット65A,65Eからの空気の給気が停止する。コントローラ69から開信号を受信したモーターダンパ78Aの制御部は、旋回羽根を旋回させ、空気流路を全開にして空気流路を開放する。モーターダンパ78Aの空気流路が開放されることで、給気ユニット65A,65Eから給気されるべき空気がバイパスユニット66Aを通って手術室51内に給気される(給気バイパス手段、給気バイパス工程)。
図16の状態から走行器63および天井走行アーム64が走行レール62A,62Bをさらに前方へ移動すると、図17に矢印L2で示すように、走行器63が第1および第2近接センサ68A,68Bの検出範囲内から検出範囲外へ移動し、走行器63の前端部が第4近接センサ68Dに近接するとともに、走行器63の後端部が第3近接センサ68Cに近接し(走行器63が給気ユニット65B,65Fに位置し)、走行器63が第3および第4近接センサ68C,68Dの検出範囲内に入る。なお、図17では、走行器63が第5〜第8近接センサ68E〜68Hに近接せず、走行器63が第5〜第8近接センサ68E〜68Hの検出範囲外にある。
走行器63が第1および第2近接センサ68A,68Bの検出範囲外へ移動(走行器63が第1および第5給気ユニット65A,65Eから離間)すると、第1および第2近接センサ68A,68Bは、離間信号をコントローラ69に出力する。近接センサ68A,68Bから離間信号を受信したコントローラ69は、走行器63が第1および第2近接センサ68A,68Bの検出範囲外にあると認識する。コントローラ69は、第1モーターダンパ76Aの制御部に開信号を出力し、第1および第5給気ユニット65A,65Eからの空気の給気を開始させる(給気第1開始手段、給気第1開始工程)。コントローラ69から開信号を受信した第1モーターダンパ76Aの制御部は、旋回羽根を旋回させ、空気流路を全開にして空気流路を開放する。
走行器63が第3および第4近接センサ68C,68Dの検出範囲内に入ると、第3および第4近接センサ68C,68Dは、近接信号をコントローラ69に出力する。近接センサ68C,68Dから近接信号を受信したコントローラ69は、走行器63が第3および第4近接センサ68C,68Dの検出範囲内にあると認識する。コントローラ69は、第2モーターダンパ76Bの制御部に閉信号を出力し、第2および第6給気ユニット65B,65Fからの空気の給気を停止させる(給気第1停止手段、給気第1停止工程)。コントローラ69から閉信号を受信したモーターダンパ76Bの制御部は、旋回羽根を旋回させ、空気流路を全閉にして空気流路を閉鎖する。
なお、第5モーターダンパ78Aの制御部にはコントローラ69から開信号が出力されており、モーターダンパ78Aの空気流路の全開状態が維持される。モーターダンパ78Aの空気流路の開放状態が維持されることで、給気ユニット65B,65Fから給気されるべき空気がバイパスユニット66Aを通って手術室51内に給気される(給気バイパス手段、給気バイパス工程)。
図17の状態から走行器63および天井走行アーム64が走行レール62A,62Bをさらに前方へ移動すると、図18に矢印L3で示すように、走行器63が第3および第4近接センサ68C,68Dの検出範囲内から検出範囲外へ移動し、走行器63の前端部が第7近接センサ68Gに近接するとともに、走行器63の後端部が第6近接センサ68Fに近接し(走行器63の一部が給気ユニット65D,65Hの前端部に位置するとともに、走行器63の一部が給気ユニット65C,65Gの前端部に位置し)、走行器63が第6および第7近接センサ68F,68Gの検出範囲内に入る。なお、図18では、走行器63が第1〜第5近接センサ68A〜68Eから離間し、走行器63が第1〜第5近接センサ68A〜68Eの検出範囲外にある。
走行器63が第3および第4近接センサ68C,68Dの検出範囲外へ移動(走行器63が第2および第6給気ユニット65B,65Fから離間)すると、第3および第4近接センサ68C,68Dは、離間信号をコントローラ69に出力する。近接センサ68C,68Dから離間信号を受信したコントローラ69は、走行器63が第3および第4近接センサ68C,68Dの検出範囲外にあると認識する。
コントローラ69は、第2モーターダンパ76Bの制御部に開信号を出力し、第2および第6給気ユニット65B,65Fからの空気の給気を開始させるとともに(給気第1開始手段、給気第1開始工程)、第5モーターダンパ78Aの制御部に閉信号を出力し、第1バイパスユニット66Aからの空気の給気を停止させる(給気第2停止手段、給気第2停止工程)。コントローラ69から開信号を受信した第2モーターダンパ76Bの制御部は、旋回羽根を旋回させ、空気流路を全開にして空気流路を開放する。コントローラ69から閉信号を受信した第5モーターダンパ78Aの制御部は、旋回羽根を旋回させ、空気流路を全閉にして空気流路を閉鎖する。モーターダンパ78Aの旋回羽根が全閉となって第1バイパスユニット66Aにつながる給気ダクト73が閉鎖され、空気のバイパスユニット66Aへの流入が遮断される。
走行器63が第6および第7近接センサ68F,68Gの検出範囲内に入ると、第6および第7近接センサ68F,68Gは、近接信号をコントローラ69に出力する。近接センサ68F,68Gから近接信号を受信したコントローラ69は、走行器63が第6および第7近接センサ68F,68Gの検出範囲内にあると認識する。
コントローラ69は、第3および第4モーターダンパ76C,76Dの制御部に閉信号を出力し、第3および第4給気ユニット65C,65Dと第7および第8給気ユニット65G,65Hとからの空気の給気を停止させるとともに(給気第1停止手段、給気第1停止工程)、第6モーターダンパ78Bの制御部に開信号を出力し、第2バイパスユニット66Bからの空気の給気を開始させる(給気第2開始止手段、給気第2開始工程)。
コントローラ69から閉信号を受信した第3および第4モーターダンパ76C,76Dの制御部は、旋回羽根を旋回させ、空気流路を全閉にして空気流路を閉鎖する。モーターダンパ76C,76Dの空気流路が閉鎖されることで、第3および第7給気ユニット65C,65Gと第4および第8給気ユニット65D,65Hとにつながる給気ダクト74が閉鎖され、それら給気ユニット65C,65G,65D,65Hからの空気の給気が停止する。
コントローラ69から開信号を受信した第6モーターダンパ78Bの制御部は、旋回羽根を旋回させ、空気流路を全開にして空気流路を開放する。モーターダンパ78Aの空気流路が開放されることで、給気ユニット65C,65G,65D,65Hから給気されるべき空気がバイパスユニット66Bを通って手術室51内に給気される(給気バイパス手段、給気バイパス工程)。
図18の状態から走行器63および天井走行アーム64が走行レール62A,62Bをさらに前方へ移動すると、図19に矢印L4で示すように、走行器63が第6および第7近接センサ68F,68Gの検出範囲内から検出範囲外へ移動するとともに、走行器63が第8近接センサ68Hの検出範囲内から検出範囲外へ移動する。
走行器63が第6〜第8近接センサ68F〜68Hの検出範囲外へ移動(走行器63が第3および第4給気ユニット65C,65Dと第7および第8給気ユニット65G,65Hとから離間)すると、第6〜第8近接センサ68F〜68Hは、離間信号をコントローラ69に出力する。近接センサ68F〜68Hから離間信号を受信したコントローラ69は、走行器63が第6〜第8近接センサ68F〜68Hの検出範囲外にあると認識する。コントローラ69は、第3および第4モーターダンパ76C,76Dの制御部に開信号を出力し、第3および第4給気ユニット65C,65Dと第7および第8給気ユニット65G,65Hとからの空気の給気を開始させるとともに(給気第1開始手段、給気第1開始工程)、第6モーターダンパ78Bの制御部に閉信号を出力し、第2バイパスユニット66Bからの空気の給気を停止させる(給気第2停止手段、給気第2停止工程)。
コントローラ69から開信号を受信した第3および第4モーターダンパ76C,76Dの制御部は、旋回羽根を旋回させ、空気流路を全開にして空気流路を開放する。コントローラ69から閉信号を受信したモーターダンパ78Bの制御部は、旋回羽根を旋回させ、空気流路を全閉にして空気流路を閉鎖する。
空調システム50B(空調方法)は、第1〜第8近接センサ68A〜68Hからの近接信号によって第1〜第8給気ユニット65A〜65Hのうちの走行器63が近接した給気ユニット65A〜65Hからの空気の給気を停止することで、給気を停止した給気ユニット65A〜65Hからの空気が走行器63に衝突することはなく、空気が走行器63に衝突することによる気流の乱れを防ぐことができ、手術室51の天井52から流速が略一定の規則的な流れの清浄なかつ温調された空気を給気することができる。
空調システム50B(空調方法)は、手術室51の天井52に敷設された走行レール62A,62Bを走行器63が往復移動しているときに、その走行器63が離間した給気ユニット65A〜65Hのすべてから空気が給気されるから、走行器63の移動経路の直下に清浄かつ温調された空気を給気することができ、手術台58およびその近傍全域に清浄な温調空気を継続して給気することができる。
空調システム50B(空調方法)は、それら第1〜第8給気ユニット65A〜65Hのうちの少なくとも1台の給気ユニット65A〜65Hからの空気の給気を停止させた場合、その給気ユニット65A〜65Hから給気される空気が第1および第2バイパスユニット66A,66Bを通って手術室51に給気されるから、手術室51における空調空気量の増加を防ぐことができる。空調システム50B(空調方法)は、第1〜第8給気ユニット65A〜65Hのすべてからの空気の給気が開始された場合、第1および第2バイパスユニット66A,66Bからの空気の給気を停止させるから、手術室51における空調空気量の減少を防ぐことができる。空調システム50B(空調方法)は、給気中における手術室51全体の総空調空気循環量が増減することはなく、手術室51の天井52から流速が略一定の規則的な流れの空気を給気することができ、温調された空気の高い清浄度を保持することが可能な垂直層流型空調を確実に実現することができる。