JP3616719B2 - 積層フィルターの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は積層フィルターの製造方法に関し、特に超ファインメッシュ用のフィルターに適する積層フィルターの製造方法に関する。
【0002】
従来、メッシュタイプのフィルターは、主として次の2通りの方法により製造されていた。
(1)メッシュの網目の大きさに適した太さの線材を、1″当たりに必要な本数ずつオサに通して設定された幅の平行な線材群を形成する。次に、これらの線材群と直交する方向に、同じ太さの線材を1″当たりに同じ本数だけ1本ずつ織物の緯糸を編み込む要領で編み込むことにより、設定された幅と長さの平面的なフィルターが作られていた。
そして、この平面的なフィルターから、使用目的に適した形状と大きさのフィルターが打ち抜かれ、使用に供されていた。
(2)メッシュの網目の大きさに適した太さの線材を、1″当たりに必要な本数ずつ平行に配列して所要幅の線材群を形成し、この線材群の上側に交互に向きを90°異にする複数層の平行な線材群を重ね合わせて立体的な網目を形成したのち、これら各線材群の接触部分を焼結により一体に結合してフィルターが作られていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の前記(1)の方法による場合には、設定された幅の平行な線材群を形成しようとするとき、オサに通すべき線材の本数は、網目が小さくなるにつれて著しく多くなる。
このオサ通し作業は、作業の性質上熟練した技術者によって行われるが、熟練した技術者をもってしてもメッシュのこまかなフィルターを作る場合の作業能率は著しく低下するため、製作コストが割高となっていた。
その上、フィルターの構成が平面的であるため、フィルターの強度が弱くなるだけでなく、濾過面積も少なくなって目詰まりによるフィルターの取り替え周期が短くなる不都合があった。
また、前記(2)の方法による場合には、積層により形成される網目は、いずれもほぼ同じ大きさであるため、濾過すべき一定大きさ以上の不純物は、主として最初のフィルター面で捕捉されることになり、その後側に形成されている立体的な多数の網目は、不純物を除去するのに有効に利用されていなかった。
このため、フィルターを立体的に形成して網目を多くし濾過面積を広くした割には、フィルターの目詰まりによる取り替え周期を効果的に長くすることができなかった。
【0004】
本発明はこれらの事情に鑑みてなされたもので、製造コストが割安で、十分な強度を付与し易い上に、目詰まりによるフィルターの取り替え周期を長くすることができる超ファインメッシュ用に適した積層フィルターの製造方法の提供を目的としたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成すべくなされたもので、仕上げメッシュのピッチより大きなピッチで第1層の線材を耐熱性プレートに平行に巻き付け、その上側に交互に向きを変えて巻き付けた複数層の線材群によりそれぞれ仕上げメッシュより大きな網目を立体的に形成し、積層される線材のピッチを下層側から上層側に適宜小さくなるようにするとともに、上側4層の線材群のピッチをそれぞれ仕上げメッシュのピッチの2倍に設定し、最上層の網目を形成する各線材を、そのすぐ下側で網目を形成している各線材のピッチ中央部に位置するように配列し、積層された線材群の各接触部分を還元ガスの雰囲気中で焼結により結合したのち、耐熱性プレートの両面に形成されたフィルターを切断により分離したことを特徴とする積層フィルターの製造方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施例を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施例を示す縦断面図で、図2は図1のII−II断面図である。図3から図8は本発明の製造方法の各ステップを示した図面で、図9は使用時における流体の流れを示した縦断面図である。
【0008】
図1において、1は積層フィルターAを構成する第1層目の線材で、この線材1は仕上げメッシュのピッチPより大きなピッチP1 で平行に配列されている。第1層目の線材1の上側には、これと直交する方向に第2層目の線材2が第1層目の線材1と同じピッチP1 で平行に配列されており、その下側の線材1とともに、第1層目の網目a(図1,4参照)を形成している。
第2層目の網目bは、第2層目の線材2の上側で前記ピッチP1 より幾分小さく、かつ仕上げピッチPより大きなピッチP2 で、第2層目の線材2と直交する方向に配列される第3層目の線材3と、この線材3の上側でこれと直交する方向にピッチP2 で配列される第4層目の線材4とにより形成される。
【0009】
第3層目(一般的には上側から第2層目)の網目cは、同じ太さの線材5,6をそのすぐ下側の線材4,5とそれぞれ直交する方向に、仕上げメッシュのピッチPの2倍のピッチ2Pで配列することにより形成される。
そして、最後の第4層目(一般的には上側から第1層目)の網目dは、2層下側の線材5,5の丁度中央部に位置するようピッチ2Pで配列される線材7と、この線材7の上側で、同じく2層下側の線材6,6の丁度中央部に位置するようピッチ2Pで配列される線材8とにより形成される。
このため、上側2層の網目よって形成される網目は、それぞれの網目が仕上げピッチPの2倍のピッチ2Pであるにもかかわらず、仕上げピッチPと同じ大きさの網目となる(図3参照)。
立体的なフィルターを構成する各線材1〜8は、それぞれの接触部分を焼結により一体に結合されて積層フィルターAの強度を強くしている。
【0010】
積層フィルターAを構成する各線材1〜8には、耐熱性を有し、かつ焼結可能な金属材料、例えばステンレス、鉄、銅、白金、金、ニッケル等が用いられる。使用される線材1〜8の太さは、例えば1mmから伸線し得る超極細さの広範囲にわたるものまで使用可能である。
【0011】
なお、前記実施例では、上側から第1層目と第2層目の網目の下側に、4層の線材1〜4が正方形の網目を形成する場合について説明したが、この部分に重合される線材の層数は、使用目的や用途に応じて4層以外の層数に適宜変化させてもよいし、網目の形状にしても正方形だけに限定されるものではなく、長方形やその他の形状に形成してもよい。
【0012】
次に、本発明の積層フィルターAの製造手順を8層の線材を積層する場合について説明する(図4〜図8参照)。
(1)方形の耐熱性プレートBの一方向に第1層目の線材1を仕上げメッシュのピッチPより大きなピッチP1 で巻き付け、その上側にそれと直角をなす方向に同じピッチP1 で第2層目の線材2を巻き付けて第1層目の網目aを形成する(図4,図5)。
CはプレートBの側面全体に形成された凹溝である。
(2)第2層目の線材2の上側に、第1層目の網目aを形成したのと同じ積層方法によりピッチP1 より幾分小さなピッチP2 で第3層目と第4層目の線材3,4を直角をなす方向に巻き付けて第2層目の網目bを形成する(図6)。
(3)第4層目の線材4の上側に、同じようにして仕上げピッチPの2倍のピッチ2Pで第5層目と第6層目の線材5,6を直角をなす方向に巻き付けて第3層目(一般的には上側から第2層目)の網目cを形成する(図7)。
(4)第6層目の線材6の上側に、線材7を2層下側の線材5のピッチ中央部に位置するようにピッチ2Pで巻き付け、その上側に同じくピッチ2Pで2層下側の線材6のピッチ中央部に位置するように線材8を巻き付けて第4層目(一般的には上側から第1層目)の網目dを形成する(図7)。
(5)耐熱性の容器D内に、他のプレートの線材と接触しないように(または焼結された場合にも固着しないように処理を施された)所要個数のプレートBを収納して密閉し、次いで、容器D内に水素ガスを導内または発生させた状態で高温に加熱し、各プレートBに巻き付けられた線材の各接触部を焼結により固着する(図8)。
(6)容器Dから耐熱性のプレートBを取り出し、プレートBの両面に形成された積層フィルターA,Aを、プレートBの厚さ方向の側面中央部に形成されている凹溝Cの部分で切断して2つに分離する(図7)。
使用時の積層フィルターは、この分離された積層フィルターAから用途に適した形状と大きさを備えたものを打ち抜くことにより作られる。
【0013】
上記製造方法において各線材の巻き付けは主として機械を用いて行われる。例えば、プレートBを一定回転数で回転し、この状態で線材をプレートBの回転軸に沿った方向に設定された速度で自動送りすることにより行われる。
この場合、各線材の巻き付け時のピッチは、各線材を回転軸に沿った方向に移動させる移動量を調節することにより変更することができる。
【0014】
次に、積層フィルターA使用時の濾過作用について説明する。
積層フィルターAは、図9に示すように、網目の大きな側を濾過する流体の前面側に位置するように取り付けられる。
積層フィルターA内には、ピッチが適宜減少する線材が積層されているため、仕上げメッシュより大きな網目とピッチの違いからできる小さな網目とが形成される。
【0015】
このうち、大きな網目部分を通過する流体は、実線で示すように、順次小さくなっていく網目によって大きな不純物から小さな不純物が順次除去される。
このため、流体の濾過作用において、積層フィルターA内に形成された各種大きさの多くの網目部分を有効に利用して濾過作用を行うことができる。
また、仕上げメッシュより小さな網目部分では、流体中に含まれている仕上げメッシュより小さな不純物が、その一部を除去される。
【0016】
【発明の効果】
本発明によれば、次に記載するすぐれた効果が得られる。
【0017】
本発明による積層フィルターにおいては、一番ピッチが小さい上側4層の線材群はそれぞれ仕上げメッシュの2倍のピッチで平行に配列され、かつ一番上側2層の各線材群はそのすぐ下側で網目を形成する各線材群のピッチ中央部に位置決めされているため、仕上げメッシュの2倍のピッチで配列された線材群により仕上げメッシュのフィルターを製造することができる。
このため、製造できる超ファインメッシュ用のフィルターの範囲を拡げることができるだけでなく、その製造コストを大幅に引き下げることができる。
また、積層により形成される網目は、下層側から上層側に適宜小さくなるように形成されているため、フィルター内に形成される仕上げメッシュより大きな網目と小さな網目とで分担して各種大きさの不純物を効果的に除去できるだけでなく、フィルター前面にかかる負担を軽くして目詰まりによるフィルターの取り替え周期を長くすることができる。
その上、フィルターの構造は立体的で、各線材は焼結により一体に結合されているため、超ファインメッシュのフィルターに対しても十分な強度を付与することができる。
【0018】
また本発明による積層フィルターにおいては、上側の4層を除く線材群は、正方形や長方形、またはそれらを組み合わせた網目を形成しているため、用途に適した性能を容易にフィルターに付与することができる。
【0019】
さらに本発明による積層フィルターの製造方法においては、フィルターの製造は、耐熱性のプレートに交互に向きを異にする各線材を巻き付けることにより行われる上、1つのプレートから2つの積層フィルターを同時に作ることができるため、緯方向の線材を編み込む場合に比べてフィルター製造時の作業能率を著しく向上することができる。
また、上側4層の各線材は仕上げメッシュの2倍のピッチで巻き付けられているにもかかわらず仕上げメッシュと同じピッチの網目を形成するため、従来製造が困難とされていた超ファインメッシュのフィルターをも製造可能にして割安に提供することができる。
その上、積層される各線材は還元ガスの雰囲気中で焼結により一体に結合されているため、網目の細かなメッシュタイプのフィルターに対しても、必要とされる十分な強度を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す縦断面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】仕上げメッシュの2倍のピッチの線材により仕上げメッシュの網目が形成される状態を示した平面図である。
【図4】製造方法の第1ステップを示すもので、プレートへの巻き付けにより最初の網目が形成された状態の斜視図である。
【図5】図4の縦断面図である。
【図6】最初の網目の上側に次の網目を形成する線材の配列状態を示した縦断面図である。
【図7】線材の巻き付けが終了した状態を示す縦断面図である。
【図8】焼結を行う場合の一実施例を示した縦断面図である。
【図9】使用時における流体の濾過作用を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 第1層目の線材
2 第2層目の線材
3 第3層目の線材
4 第4層目の線材
5,6 上側から第2層目の網目を形成する線材
7,8 上側から第1層目の網目を形成する線材
A 積層フィルター
a 下側から第1層目の網目
b 下側から第2層目の網目
c 上側から第2層目の網目
d 上側から第1層目の網目
B 耐熱性プレート
P 仕上げメッシュのピッチ
P1 下側から第1層目の網目を形成する各線材のピッチ
P2 下側から第2層目の網目を形成する各線材のピッチ
2P 上側から第1層目と第2層目の網目を形成する各線材のピッチ
Claims (1)
- 仕上げメッシュのピッチより大きなピッチで第1層の線材を耐熱性プレートに平行に巻き付け、
その上側に交互に向きを変えて巻き付けた複数層の線材群によりそれぞれ仕上げメッシュより大きな網目を立体的に形成し、
積層される線材のピッチを下層側から上層側に適宜小さくなるようにするとともに、上側4層の線材群のピッチをそれぞれ仕上げメッシュのピッチの2倍に設定し、
最上層の網目を形成する各線材を、そのすぐ下側で網目を形成している各線材のピッチ中央部に位置するように配列し、
積層された線材群の各接触部分を還元ガスの雰囲気中で焼結により結合したのち、耐熱性プレートの両面に形成されたフィルターを切断により分離したことを特徴とする積層フィルターの製造方法。
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