JP6278213B2 - エンジンシステム - Google Patents

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Description

本発明は、気筒と、前記気筒で生成された排気が流通する排気流通部と、当該排気流通部に設けられて前記排気を浄化する浄化装置とを備えるエンジンシステムに関する。
従来、エンジンシステムにおいて、燃費性能を高めること等を目的として、気筒内に水を噴射することが行われている。すなわち、気筒内に水を噴射すれば燃焼ガスに加えてこの水を作動ガスとしてこの水に膨張仕事を行わせることができるため、燃焼ガス量ひいては気筒内に供給する燃料量を少なく抑えることができる。
例えば、特許文献1には、排気通路のうち浄化装置よりも下流側の部分に、上流側から順に熱交換器と凝縮器とを設け、排気通路内の排気に含まれる水を凝縮器において凝縮させるとともに、熱交換器においてこの水を排気のエネルギーによって昇温させた後、気筒内に噴射させるよう構成されたエンジンシステムが開示されている。このエンジンシステムでは、排気のエネルギーを利用して水を昇温させて、これを気筒内に噴射しているため、システム全体のエネルギー効率を高めることができる。
特許第5045569号公報
ここで、エンジンシステムにおいては、燃費性能の向上に加えて排気性能を向上することが求められており、排気通路に設けられた浄化装置の浄化性能を高く維持することが求められている。これに対して、特許文献1のエンジンシステムでは、排気通路のうち浄化装置よりも下流側の部分に熱交換器が設けられており、浄化装置には、エンジン本体から排出された排気がそのまま流入し、浄化装置を通過した後にはじめて熱交換器において排気の温度が低下する。そのため、エンジン本体から高温の排気が排出された場合には、この高温の排気によって浄化装置が劣化等してその浄化性能が低下するおそれがある。
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、エンジンシステム全体としてのエネルギー効率を高めつつ浄化装置の浄化性能を高く維持することのできるエンジンシステムを提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明は、気筒と、前記気筒で生成された排気が流通する排気流通部と、当該排気流通部に設けられて前記排気を浄化する浄化装置とを備えるエンジンシステムであって、前記気筒内に超臨界水または亜臨界水を噴射する水噴射装置と、前記水噴射装置に接続されて当該水噴射装置に水を供給する水供給通路と、前記排気流通部内の排気のエネルギーによって前記水供給通路内の水をそれぞれ昇温させる第1昇温装置および第2昇温装置とを備え、前記第1昇温装置は、前記排気流通部のうち当該第1昇温装置が配置された部分を流通する排気が基準温度以上の場合に前記水供給通路内の水を昇温させ、前記第2昇温装置は、前記排気流通部のうち当該第2昇温装置が配置された部分を流通する排気が前記水供給通路のうち当該第2昇温装置が配置された部分を流通する水の温度よりも高い場合に当該水を昇温させ、前記第1昇温装置は、前記排気流通部のうち前記浄化装置および前記第2昇温装置よりも前記気筒に近い位置に配置されていることを特徴とするエンジンシステムを提供する(請求項1)。
本発明によれば、エンジンシステム全体のエネルギー効率を高めつつ、気筒内に噴射される水を安定して昇温させることができるとともに浄化装置の浄化性能を高く維持することができる。
具体的には、本発明では、第1昇温装置と第2昇温装置とによって排気流通部内の排気のエネルギーを利用して水供給装置内の水を昇温し、超臨界水または亜臨界水を生成して、これを気筒内に噴射している。そのため、水を介して排気のエネルギーをエンジン本体の出力に変換することができ、エンジンシステム全体のエネルギー効率を高めることができる。
そして、本発明では、第1昇温装置が、当該第1昇温装置が配置された部分の排気が基準温度以上の高温の場合に水を昇温させるよう構成され、第2昇温装置が、当該第2昇温装置が配置された部分の排気の温度が第2水通路部内の水の温度よりも高い場合に水を昇温させるように構成されている。そのため、第2昇温装置によって水供給通路内の水をほぼ常時昇温させることができるとともに、第1昇温装置によって基準温度以上の排気を利用して水供給通路内の水を効果的に昇温することができる。
しかも、本発明では、第1昇温装置が、排気流通部のうち浄化装置および第2昇温装置よりも気筒に近い位置に配置されている。そのため、気筒から基準温度以上の排気が排出されたときには、第1昇温装置において、高い排気エネルギーによって前記水を効果的に昇温させつつ浄化装置に向かう排気の温度を適切に低下させることができ、かつ、気筒から基準温度未満の排気が排出されたときには、第1昇温装置において排気の温度を低下させることなく浄化装置側に排気を流下させることができる。従って、浄化装置に向かう排気の温度をより確実に適切な範囲に維持することができその浄化性能を高く維持することができる。
前記構成において、前記第1昇温装置は、沸点が前記基準温度付近の温度である媒体が内側に収容されたヒートパイプであり、当該媒体を介して前記排気流通部内の排気のエネルギーにより前記水供給通路の水を昇温させるのが好ましい(請求項2)。
このようにすれば、ヒートパイプを用いるという簡単な構成で、水供給通路内の水を効果的に昇温させることができるとともに、排気流通部の下流側を流通する排気の温度を適切な温度に維持することができる。
前記基準温度としては、例えば、600K以上が挙げられる(請求項3)。
また、前記構成において、前記水供給通路のうち前記第2昇温装置よりも下流側の部分に設けられて、当該部分を通過する水を圧送するポンプを備えるのが好ましい(請求項4)。
このようにすれば、ポンプにより加圧することで水供給通路内の水をより確実に超臨界水または亜臨界水にすることができる。しかも、第2昇温装置よりも下流側であって気筒により近い位置にポンプが設けられているため、高圧の超臨界水または亜臨界水を気筒に送り込むための高圧用の配管の長さを短くすることができる。
また、前記構成において、前記排気流通部に設けられて当該排気流通部内の排気に含まれる水を凝縮させる凝縮器を備え、前記水供給通路は前記凝縮器で生成された水を前記水噴射装置に供給し、前記凝縮器は、前記排気流通部において前記第2昇温装置よりも下流側に設けられているのが好ましい(請求項5)。
この構成では、気筒内に噴射される水に排気流通部内の水が利用されるため、噴射用の水を別途準備する必要がなく、利便性を高めることができる。さらに、この構成では、凝縮器が排気流通部において第2昇温装置よりも下流側に設けられており、凝縮器には、少なくとも第2昇温装置によって低温化された排気が流入する。そのため、凝縮器において効率よく水を凝縮させることができる。
また、前記構成において、前記水供給通路のうち前記第2昇温装置と前記凝縮器との間に設けられて、前記凝縮器で生成された水を貯留する凝縮水タンクと、前記水供給通路のうち前記凝縮水タンクと前記第2昇温装置との間に設けられて前記凝縮水タンク内の水を前記第2昇温装置に圧送する低圧ポンプを有するのが好ましい(請求項6)。
このようにすれば、凝縮水タンク内に水を貯留しておきこれを低圧ポンプによって適宜水噴射装置側へ送ることができ、適切な量の水をより確実に気筒内に噴射することができる。
また、前記構成において、前記浄化装置は、前記排気流通部のうち前記第2昇温装置の上流側にこれと隣接して配置されており、前記浄化装置は、蓄熱材で覆われているのが好ましい(請求項7)。
このようにすれば、第2昇温装置で冷却される前の排気を浄化装置に流入させることができ、浄化装置の温度を適切に高く維持することができるとともに、浄化装置での排気の浄化時等に生じる熱エネルギーを第2昇温装置に効果的に供給することができ第2昇温装置において水を効果的に昇温することができる。特に、浄化装置が蓄熱材で覆われているため、浄化装置の温度をより確実に適切な温度に維持できるとともに、第2昇温装置に流入する熱エネルギーを高くして水をより適切に昇温することができる。
以上説明したように、エンジンシステム全体としてのエネルギー効率を高めつつ浄化装置の浄化性能を高く維持することができる。
本発明の一実施形態にかかるエンジンシステムの構成を示した図である。 エンジン本体の概略断面図である。 超臨界水を説明するための水の状態図である。 亜臨界水を説明するための水の状態図である。 ヒートパイプの動作を説明するための概略断面図である。
図1は、本発明の一実施形態にかかるエンジンシステムの構成を示す図である。本実施形態のエンジンシステムは、4ストロークのエンジン本体1と、エンジン本体1に燃焼用の空気を導入するための吸気通路30と、エンジン本体1で生成された排気を排出するための排気通路40と、水循環装置60とを備える。
エンジン本体1は、例えば、4つの気筒2を有する4気筒エンジンである。本実施形態では、エンジン本体1は、ガソリンを含む燃料の供給を受けて駆動される。本実施形態のエンジンシステムは車両に搭載され、エンジン本体1は車両の駆動源として利用される。
(1)エンジン本体
図2は、エンジン本体1の概略断面図である。
エンジン本体1は、気筒2が内部に形成されたシリンダブロック3と、シリンダブロック3の上面に設けられたシリンダヘッド4と、気筒2に往復動(上下動)可能に嵌装されたピストン5とを有している。
ピストン5の上方には燃焼室6が形成されている。燃焼室6はいわゆるペントルーフ型であり、燃焼室6の天井面(シリンダヘッド4の下面)は吸気側および排気側の2つの傾斜面からなる三角屋根状をなしている。
ピストン5の冠面5aには、その中心部を含む領域をシリンダヘッド4とは反対側(下方)に凹ませたキャビティ10が形成されている。このキャビティ10は、ピストン5が上死点まで上昇したときの燃焼室6の大部分を占める容積を有するように形成されている。
シリンダヘッド4には、吸気通路30から供給される空気を気筒2(燃焼室6)内に導入するための吸気ポート16と、気筒2内で生成された排気を排気通路40に導出するための排気ポート17とが形成されている。これら吸気ポート16と排気ポート17とは、気筒2毎にそれぞれ2つずつ形成されている。また、シリンダヘッド4には、各吸気ポート16の気筒2側の開口をそれぞれ開閉する吸気弁18と、各排気ポート17の気筒2側の開口をそれぞれ開閉する排気弁19とが設けられている。
ここで、請求項における排気流通部であって気筒2で生成された排気が流通する排気流通部は、この排気ポート17と排気通路40とを含む。
各排気ポート17には、それぞれヒートパイプ(第1昇温装置)70が取り付けられている。本実施形態では、1つの排気ポート17にそれぞれ1つのヒートパイプ70が取り付けられており、1つの気筒2に2つのヒートパイプ70が配置されている。ヒートパイプ70は、水循環装置60の一部を構成する部品である。ヒートパイプ70の詳細については後述する。
シリンダヘッド4には、気筒2内に燃料を噴射する燃料噴射装置21が設けられている。燃料噴射装置21は、その先端が気筒2の中心軸付近に位置してピストン5の冠面のほぼ中央を臨むように配置されている。
燃料噴射装置21は、図外の燃料ポンプにより圧送された燃料を気筒2内に噴射する。本実施形態では、全運転領域において燃料と空気との混合気を予め混合させて、この混合気を圧縮上死点(TDC)付近で自着火させる予混合圧縮自着火燃焼が実施されるよう構成されている。これに伴い、図2に示した例では、エンジン本体1に気筒2内のガスに点火するための点火プラグが設けられていないが、冷間始動時等において混合気の適正な燃焼のために点火が必要な場合等には、適宜エンジン本体1に点火プラグを設けてもよい。
燃料噴射装置21からは、エンジン本体1の運転状態に応じたタイミングでこの運転状態に応じた量の燃料が気筒2内に噴射される。例えば、エンジン負荷が比較的低い領域では、圧縮上死点前に一括して燃料が噴射され、エンジン負荷が比較的高い領域では、圧縮上死点前において3段に分割されて燃料が気筒2内に噴射される。
シリンダヘッド4には、さらに、気筒2内に超臨界水または亜臨界水を噴射する水噴射装置22が設けられている。図2に示すように、水噴射装置22は、サイド噴射方式で水を燃焼室6内に噴射するようにシリンダヘッド4に取り付けられており、その先端が燃焼室6の内周面から燃焼室6内を臨むように配置されている。
また、水噴射装置22は、排気ポート17に隣接して配置されている。本実施形態では、排気ポート17のすぐ下方に水噴射装置22が配置されている。水噴射装置22としては、例えば、従来のエンジンに用いられる、燃料を気筒2内に噴射するための装置を適用することができ、その詳細な構造の説明は省略する。なお、水噴射装置22は、例えば、20MPa程度で気筒2内に超臨界水を噴射する。
超臨界水または亜臨界水を気筒2内に噴射するのはエンジン性能を高めるためである。
具体的には、気筒2内に水を噴射すれば、この水を作動ガスとしてこの水に膨張仕事を行わせることができる。従って、水を気筒2内に噴射すれば、仕事量すなわちエンジン出力を同じとしながら気筒2内に供給する燃料の量を少なくすることができ、燃費性能を高めることができる。また、気筒2内に水を噴射すれば、燃焼に寄与しない物質を気筒2内により多く存在させることができるため、着火遅れ時間を長くすることができる。従って、より適切な予混合圧縮自着火燃焼を実現して、熱効率や排気性能を良好にすることができる。超臨界水または亜臨界水の気筒2内への噴射は、例えば、エンジン本体1の中負荷から高負荷運転領域において実施される。また、排気温度が低い低負荷運転領域において、気筒2内にEGRガスを供給し、負荷の上昇とともにEGRガス量を減少させつつ超臨界水または亜臨界水の噴射量を増加するように制御しても良い。
水として超臨界水または亜臨界水を気筒2内に噴射するのは、エンジン本体1の熱効率および燃費性能をより確実に高くするためである。すなわち、通常の気体の水(水蒸気)よりも密度の高い超臨界水または亜臨界水を気筒内に噴射していることで、気体の水を噴射する場合に比べて多量の水を効率よく気筒内に導入することができる。そのため、気筒内に存在して仕事を行うガスの量ひいてはエンジン本体の出力を効率よく増大させることができる。また、潜熱を必要としないまたは潜熱が小さい超臨界水または亜臨界水を気筒2内に噴射していることで、通常の液体の水を噴射する場合に比べてこの潜熱に伴う気筒内の大幅な温度低下および熱効率の悪化を回避することができる。そのため、熱効率を高くすることができる。
図3を用いて具体的に説明する。図3は、横軸をエンタルピーとし、縦軸を圧力としたときの水の状態図を示したものである。この図3において、領域Z2は液体の領域、領域Z3は気体の領域、領域Z4は液体と気体が共存する領域である。実線で示したラインLT350、LT400・・・LT1000は、それぞれ同じ温度となる点をつないだ等温度線であって、それぞれ数字が温度(K)を示している。例えば、LT350は350Kの等温度線であり、LT1000は1000Kの等温度線である。そして、点X1が臨界点、領域Z1が臨界点X1よりも温度および圧力が高い領域であり、超臨界水はこの領域Z1に含まれる水である。具体的には、水の臨界点が、温度:647.3K,圧力:22.12MPaの点であるのに対して、超臨界水は温度圧力がこれら以上すなわち温度が647.3K以上かつ圧力が22.12MPa以上の水である。
図3において、破線で示したラインLR0.01、LR0.1・・・、LR500は、それぞれ同じ密度となる点をつないだ等密度線であって、それぞれ数字が密度(kg/m)を示している。例えば、LR0.01は密度が0.01kg/mの等密度線であり、LR1000は密度が500kg/mの等密度線である。
この等密度線LRと領域Z1,Z3との比較から明らかなように、領域Z1に含まれる水すなわち超臨界水の密度は50kg/mから500kg/m程度と液体の水に近い値であって気体の密度よりも非常に高い値となっている。
従って、この密度の高い超臨界水を気筒2内に噴射すれば、気体の水を噴射する場合に比べて多量の水を効率よく気筒内に導入することができる。
なお、エンジンシステムにて生成して気筒2内に噴射する超臨界水としては、密度が250kg/m以上の超臨界水を用いるのが好ましい。
また、図3において矢印Y1で示すように、通常の液体の水は気体に変化するために大きなエンタルピーを必要とする。すなわち、通常の液体の水は気体に変化するのに比較的大きな潜熱を必要とする。これに対して、矢印Y2で示すように、超臨界水では、通常の気体の水に変化するのにほとんどエンタルピーすなわち潜熱を必要としない。
従って、潜熱を必要としない超臨界水を気筒2内に噴射すれば、通常の液体の水を噴射する場合に比べてこの潜熱に伴う気筒内の大幅な温度低下および熱効率の悪化を回避することができる。
ここで、図3から明らかなように、領域Z1に近い領域に含まれる水は、密度も高く気体に変化するための潜熱も小さく、超臨界水に近い性状を有する。従って、本実施形態では、前記のように超臨界水を気筒2内に噴射するが、超臨界水に代えて領域Z1に近い領域に含まれる水である亜臨界水を生成および気筒2内に噴射してもよい。例えば、図4に示す領域Z10であって、温度が600K以上、密度が250kg/m以上の領域Z10に含まれる亜臨界水を生成および噴射してもよい。
(2)吸気通路
吸気通路30には、上流側から順に、エアクリーナ31と、スロットルバルブ32とが設けられており、エアクリーナ31およびスロットルバルブ32を通過した後の空気がエンジン本体1に導入される。
スロットルバルブ32は、吸気通路30を開閉するものである。ただし、本実施形態では、エンジンの運転中、スロットルバルブ32は基本的に全開もしくはこれに近い開度に維持されており、エンジンの停止時等の限られた運転条件のときにのみ閉弁されて吸気通路30を遮断する。
(3)排気通路
排気通路40には、上流側から順に、排気を浄化するための浄化装置41、熱交換器42(第2昇温装置)、コンデンサー(凝縮器)43、排気シャッターバルブ44が設けられている。熱交換器42およびコンデンサー43は、水循環装置60の一部を構成するものである。浄化装置41は、例えば、三元触媒41からなる。
本実施形態では、図1等に示すように、浄化装置41と熱交換器42とは、これらを保温するための蓄熱用ケース49の内側に収容されている。蓄熱用ケース49は、二重管構造を有しており、その外周壁の内側には、空間49aが形成されている。この空間49aには蓄熱材が充填されており、この蓄熱材により、浄化装置41および熱交換器42は保温される。すなわち、蓄熱用ケース49の内側に位置する浄化装置41等に高温の排気が流入すると、この排気により空間41c内の蓄熱材は暖められ、この蓄熱材によって浄化装置41および熱交換器42は保温される。蓄熱材としては、例えば、エルスルトール等のように加熱されることで溶融してこれにより熱エネルギーを蓄熱する潜熱蓄熱材や、塩化カルシウム等のように加熱されることで化学反応してこれにより熱エネルギーを蓄熱する化学蓄熱材等が挙げられる。
排気シャッターバルブ44は、EGRガスの吸気通路30への還流を促進するためのものである。
すなわち、本実施形態のエンジンシステムでは、吸気通路30のうちスロットルバルブ32よりも下流側の部分と、排気通路40のうち触媒装置41よりも上流側の部分とを連通するEGR通路51が設けられており、排気の一部がEGRガスとして吸気通路30に還流される。排気シャッターバルブ44は、排気通路40を開閉可能なバルブであり、EGRを実施する場合であって排気通路40の圧力が低い場合に閉弁側に操作されることでEGR通路51の上流側の部分の圧力を高めてEGRガスの還流を促進する。
EGR通路51には、これを開閉するEGRバルブ52が設けられており、EGRバルブ52の開弁量によって吸気通路30に還流されるEGRガスの量が調整される。また、本実施形態では、EGR通路51に、これを通過するEGRガスを冷却するためのEGRクーラ53が設けられており、EGRガスはEGRクーラ53にて冷却された後吸気通路30に還流される。
EGRバルブ52は、例えば、エンジン負荷が比較的低い領域において開弁され、この領域においてEGRガスが気筒2内に導入される。
(4)水循環装置
水循環装置60は、排気の熱エネルギーを利用して超臨界水を生成するためのものである。
水循環装置60は、ヒートパイプ70、熱交換器42およびコンデンサー43に加えて、水噴射装置22とコンデンサー43とを接続する水供給通路61と、水タンク(凝縮水タンク)62と、低圧ポンプ63と、高圧ポンプ(ポンプ)64とを備えている。
コンデンサー43は、排気通路40を通過する排気中の水(水蒸気)を凝縮するためのものであり、コンデンサー43で凝縮した水が水噴射装置22に供給される。このように、本実施形態では、排気中の水が気筒2内に噴射される水として利用される。水タンク62は、内側に凝縮水を貯留するものである。コンデンサー43で生成された凝縮水は、水供給通路61を介して水タンク62に導入され水タンク62内で貯留される。
低圧ポンプ63は、水タンク62内の凝縮水を熱交換器42に送り込むためのポンプであり、水供給通路61のうち水タンク62と熱交換器42との間に配置されている。水タンク62内の凝縮水は、低圧ポンプ63によって熱交換器42に送り込まれる。
熱交換器42は、低圧ポンプ63から圧送された凝縮水と、排気通路40を通過する排気との間で熱交換を行わせるためのものである。熱交換器42は、排気通路40のうち浄化装置41の下流側の部分に、浄化装置41に隣接して配置されている。
本実施形態では、水供給通路61の一部61aが排気通路40の内側に挿通されて、これらが接触することで熱交換器42が形成されている。以下では、適宜、水供給通路61のうち排気通路40に挿入されている部分を熱交換通路61aという。
熱交換通路61aは、排気通路40のうち浄化装置41のすぐ下流側の部分の内側に挿通されている。詳細には、熱交換通路61aは、蓄熱用ケース49の内側に位置する排気通路40に挿通されている。そして、前記のように、本実施形態では、蓄熱用ケース49により浄化装置41に加えて熱交換器42および熱交換通路61aも保温されている。
熱交換通路61a内の凝縮水は、排気通路40のうち熱交換通路61aが挿通された部分を通過する排気により昇温される。具体的には、この排気通路40のうち熱交換通路61aが挿通された部分を通過する排気の温度が熱交換通路61a内の凝縮水の温度よりも高いと、排気から凝縮水に熱エネルギーが付与されて、凝縮水が昇温される。ただし、エンジン本体1から排出される排気の温度は常に少なくとも100度以上あり、液体の水である凝縮水の温度よりも排気の温度の方が常に高い。従って、熱交換通路61a内の凝縮水は、常に排気により昇温される。
本実施形態では、前記のように浄化装置41のすぐ下流側に熱交換通路61aが配置されていることで、熱交換通路61a内の凝縮水には、浄化装置41での反応熱も付与されるため、凝縮水は効果的に昇温される。また、熱交換通路61aおよび熱交換通路61aが蓄熱用ケース49により保温されていることによっても凝縮水は効果的に昇温される。
高圧ポンプ64は、熱交換器42から水噴射装置22に向けて凝縮水を圧送するためのポンプである。高圧ポンプ64は、水供給通路61のうち熱交換器42すなわち熱交換通路61aとヒートパイプ70との間に配置されている。この高圧ポンプ64は、熱交換器42で昇温された凝縮水を加圧して超臨界水としながら水噴射装置22に送り込む。
ここで、水供給通路61のうち高圧ポンプ64よりも下流側の部分は、高圧ポンプ64で加圧された後の高圧の超臨界水が流通する。そのため、この部分には、高圧用の配管が用いられる。
このように、本実施形態では、基本的には、熱交換器42と高圧ポンプ64とによって凝縮水が昇温昇圧されて超臨界水が生成され、水噴射装置22に供給される。
ただし、気筒2から排出された排気の温度が比較的高い場合には、ヒートパイプ70を介してこの高温の排気によって水供給通路61内の水が昇温されるようになっている。
すなわち、ヒートパイプ70は、高圧ポンプ64から圧送された水と、排気通路40を通過する排気との間で熱交換を行わせるためのものであるが、ヒートパイプ70は、排気の温度が基準温度以上のときにのみ凝縮水を昇温させる。
本実施形態では、ヒートパイプ70は、所定の方向に延びる略円柱状の外形を有する。図5は、ヒートパイプ70の動作を説明するための概略断面図である。この図5および図2に示すように、ヒートパイプ70は、その長手方向の一方側の端部71が排気ポート17の内側に挿入されて排気と接触するように配置され、他方の端部72が水供給通路61の内側に挿入されて水供給通路61内の水と接触するように配置されている。
図1および図2に示すように、また前記のように、本実施形態では、各排気ポート17にそれぞれヒートパイプ70が挿通されている。具体的には、水供給通路61には、その下流側端付近において、気筒2の配列方向に延びる蓄圧部65が設けられているとともに、この蓄圧部65から各水噴射装置22に向けてそれぞれ独立通路61bが延びている。そして、各排気ポート17にそれぞれ1本ずつヒートパイプ70が設けられており、ヒートパイプ70の各端部71,72がそれぞれ各排気ポート17と蓄圧部65とに挿通されている。
本実施形態では、図2に示すように、蓄圧部65はシリンダヘッド4に近接して配置されており、ヒートパイプ70はシリンダヘッド4に内蔵されている。具体的には、蓄圧部65は、排気ポート17よりも上方に位置し、ヒートパイプ70は、排気ポート17の内側空間から上方に延びて蓄圧部65に挿入されている。本実施形態では、ヒートパイプ70の排気ポート17側の端部71に、金属製の板状部材が上下方向に重ね合わされることで構成されたスタックフィン73が設けられており、この端部71に排気ポート17内の排気の熱がより多く伝えられるようになっている。
図5に示すように、ヒートパイプ70は、熱伝導性の高い材料(例えば金属)で形成されたパイプ部材であり、その内側には、真空にされた状態で作動媒体(媒体)Sが液体状態で封入されている。ヒートパイプ70の内壁には、多孔質部材70a(例えば金属製の網)が設けられており、いわゆるウィックとよばれる毛細管構造が形成されている。
このヒートパイプ70では、排気ポート17に挿入された一方の端部(以下、適宜、受熱側端部という)71が排気により温められ、その温度が所定の温度以上になると、作動媒体Sが蒸発し、図5の矢印Y10に示すように、水供給通路61に挿入された他方の端部(以下、適宜、放熱側端部という)72に向かって拡散していく。このとき、排気ポート17内の排気の温度は、その熱エネルギーをヒートパイプ70すなわち作動媒体Sに付与することで低下する。そして、前記作動媒体Sの蒸気は、放熱側端部72において水供給通路61に放熱して凝縮し、再び液体に戻る。このとき、水供給通路61内の水は作動媒体Sから熱エネルギーを受けて昇温される。再び液体に戻った作動媒体Sは、前記多孔質部材70aにおける毛細管現象により、図5の矢印Y20に示すように、受熱側端部71に戻り、再度排気から熱エネルギーを奪うことで再び蒸気となり、この熱エネルギーを水供給通路61内の水に付与する。
このように、本実施形態では、ヒートパイプ70によって、排気の温度が所定温度以上の高温になり作動媒体Sの温度が沸点以上になると、排気ポート17内の排気の熱エネルギーが水供給通路61に付与されて水供給通路61内の水が昇温される。
本実施形態では、この熱の移動が生じる排気の温度(基準温度)が650K程度に設定されており、これに対応する作動媒体Sがヒートパイプ70に封入されている。例えば、作動媒体Sとしてセシウムが用いられる。
(5)作用等
以上のように、本実施形態に係るエンジンシステムでは、熱交換器42とヒートパイプ70とによって排気のエネルギーを利用して水供給通路61内の水を昇温し、超臨界水を生成して、これを気筒2内に噴射している。そのため、水を介して排気のエネルギーをエンジン本体1の出力に変換することができ、エンジンシステム全体のエネルギー効率を高めることができる。
特に、このエンジンシステムでは、熱交換器42によって水供給通路61内の水が排気によってほぼ常時昇温されるようになっているため、排気のエネルギーを安定して水に付与することができ、エネルギー効率をより確実に高めることができる。また、熱交換器42が、浄化装置41のすぐ下流側に配置されているため、浄化装置41での反応熱を水供給通路61内の水に効果的に付与することができる。さらに、熱交換器42および浄化装置41が蓄熱用ケース49に収容された蓄熱材により保温されている。そのため、これによっても、水を効果的に昇温することができるとともに、浄化装置41の温度変動を抑制することができる。
また、このエンジンシステムでは、排気の温度が基準温度以上の場合にのみ排気と水との間で熱交換を行わせるヒートパイプ70が、浄化装置41および熱交換器42よりも気筒2に近い排気ポート17であって排気の温度がより高温の部分に配置されている。そのため、気筒2から基準温度以上の高温の排気が排出されたときには、ヒートパイプ70によって、この排気の高い熱エネルギーを利用して水供給通路61内の水を効果的に昇温させることができる。しかも、このように気筒2から比較的高温の排気が排出されたときには、排気の熱エネルギーを水供給通路61内の水に付与することで排気ポート17において排気の温度を低下させることができるため、浄化装置41に高温の排気が流入するのを抑制することができる。一方で、気筒2から排出された排気の温度が比較的低いときには、ヒートパイプ70での熱交換は停止されて排気の降温は停止される。そのため、浄化装置41に流入する排気の温度が、過剰に低温になることも抑制することができる。従って、このエンジンシステムでは、排気のエネルギーを効果的に利用して水供給通路61内の水を昇温させつつ、浄化装置41の温度を適切な範囲に維持することができる。
特に、このエンジンシステムでは、ヒートパイプ70による熱交換が開始される排気の温度が650K程度に設定されている。そのため、浄化装置41の温度低下を適切に抑制しつつ、水供給通路61内の水をより確実に超臨界水にすることができる。
また、このエンジンシステムでは、水供給通路61内の水を加圧する高圧ポンプ64が設けられている。そのため、熱交換器42と高圧ポンプ64とによって超臨界水を生成することができる。しかも、高圧ポンプ64が熱交換器42よりも下流側であって気筒2により近い位置に設けられている。そのため、高圧の超臨界水が流通する高圧用の配管の長さを短くすることができ、コスト面で有利となる。
また、このエンジンシステムでは、排気通路40にコンデンサー43が設けられて、排気中の水をコンデンサー43で凝縮させて水噴射装置22に供給している。すなわち、排気中の水が水噴射装置22によって気筒2内に噴射される水として利用されている。そのため、噴射用の水を別途準備する必要がなく、利便性を高めることができる。
また、このエンジンシステムでは、コンデンサー43が排気通路40のうち熱交換器42よりも下流側に設けられており、コンデンサー43には、熱交換器42において熱エネルギーが水に付与されて低温化した排気が流入する。そのため、コンデンサー43において効率よく水を凝縮させることができる。
また、このエンジンシステムでは、コンデンサー43で凝縮した凝縮水を水タンク62内に水を貯留しておき、これを低圧ポンプ63によって水噴射装置22側に送っている。そのため、水タンク62から適宜、水噴射装置22側へ水を送ることができ、適切な量の水をより確実に気筒2内に噴射することができる。また、この際、熱交換器42で昇温する水の飽和蒸気圧以上に圧力を高めることで、水中でキャビテーションが生じるのを抑制することができる。
(6)変形例
前記実施形態では、気筒2内に水として超臨界水が噴射される場合について説明したが、前述したように、亜臨界水であって超臨界水に近い性状を有する水を超臨界水の代わりに気筒2内に噴射してもよい。この場合であっても、密度が通常の水よりも高く潜熱が非常に小さいことから着火遅れ時間を長くすることができる。
また、ヒートパイプ70の具体的構造は前記に限らない。
また、ヒートパイプ70の作動媒体Sはセシウムに限らない。また、ヒートパイプ70において排気と水との間で熱交換を開始させる温度は650Kに限らない。ただし、この温度を600K以上、例えば600K〜700Kの範囲に設定すれば、超臨界水をより確実に生成することができるとともに、浄化装置41をより適切な温度に維持することができる。
また、前記実施形態では、二重管構造を有する蓄熱用ケース49を設け、この蓄熱用ケース49の外周壁に蓄熱材を収容し、蓄熱用ケース49の内側に浄化装置41を配置した場合について説明したが、蓄熱材を直接浄化装置41で覆うように構成してもよい。
1 エンジン本体
2 気筒
17 排気ポート(排気流通部)
21 燃料噴射装置
22 水噴射装置
40 排気通路(排気流通部)
41 浄化装置
42 熱交換器(第2昇温装置)
43 コンデンサー(凝縮器)
61 水供給通路
63 低圧ポンプ
64 高圧ポンプ(ポンプ)
70 ヒートパイプ(第1昇温装置)
S 作動媒体(媒体)

Claims (7)

  1. 気筒と、前記気筒で生成された排気が流通する排気流通部と、当該排気流通部に設けられて前記排気を浄化する浄化装置とを備えるエンジンシステムであって、
    前記気筒内に超臨界水または亜臨界水を噴射する水噴射装置と、
    前記水噴射装置に接続されて当該水噴射装置に水を供給する水供給通路と、
    前記排気流通部内の排気のエネルギーによって前記水供給通路内の水をそれぞれ昇温させる第1昇温装置および第2昇温装置とを備え、
    前記第1昇温装置は、前記排気流通部のうち当該第1昇温装置が配置された部分を流通する排気が基準温度以上の場合に前記水供給通路内の水を昇温させ、
    前記第2昇温装置は、前記排気流通部のうち当該第2昇温装置が配置された部分を流通する排気が前記水供給通路のうち当該第2昇温装置が配置された部分を流通する水の温度よりも高い場合に当該水を昇温させ、
    前記第1昇温装置は、前記排気流通部のうち前記浄化装置および前記第2昇温装置よりも前記気筒に近い位置に配置されていることを特徴とするエンジンシステム。
  2. 請求項1に記載のエンジンシステムにおいて、
    前記第1昇温装置は、沸点が前記基準温度付近の温度である媒体が内側に収容されたヒートパイプであり、当該媒体を介して前記排気流通部内の排気のエネルギーにより前記水供給通路の水を昇温させることを特徴とするエンジンシステム。
  3. 請求項1または2に記載のエンジンシステムにおいて、
    前記基準温度は、600K以上の温度であることを特徴とするエンジンシステム。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のエンジンシステムにおいて、
    前記水供給通路のうち前記第2昇温装置よりも下流側の部分に設けられて、当該部分を通過する水を圧送するポンプを備えることを特徴とするエンジンシステム。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のエンジンシステムにおいて、
    前記排気流通部に設けられて当該排気流通部内の排気に含まれる水を凝縮させる凝縮器を備え、
    前記水供給通路は前記凝縮器で生成された水を前記水噴射装置に供給し、
    前記凝縮器は、前記排気流通部において前記第2昇温装置よりも下流側に設けられていることを特徴とするエンジンシステム。
  6. 請求項5に記載のエンジンシステムにおいて、
    前記水供給通路のうち前記第2昇温装置と前記凝縮器との間に設けられて、前記凝縮器で生成された水を貯留する凝縮水タンクと、
    前記水供給通路のうち前記凝縮水タンクと前記第2昇温装置との間に設けられて前記凝縮水タンク内の水を前記第2昇温装置に圧送する低圧ポンプを有することを特徴とするエンジンシステム。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のエンジンシステムにおいて、
    前記浄化装置は、前記排気流通部のうち前記第2昇温装置の上流側にこれと隣接して配置されており、
    前記浄化装置は、蓄熱材で覆われていることを特徴とするエンジンシステム。
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