この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明の一実施形態にかかるエンジンシステムの構成を示す図である。本実施形態のエンジンシステムは、4ストロークのエンジン本体1と、エンジン本体1に燃焼用の空気を導入するための吸気通路30と、エンジン本体1で生成された排気を排出するための排気通路35と、水循環装置40と、排熱回収装置50とを備える。
エンジン本体1は、例えば、4つの気筒2を有する4気筒エンジンである。本実施形態では、エンジン本体1は、ガソリンを含む燃料の供給を受けて駆動される。本実施形態のエンジンシステムは車両に搭載され、エンジン本体1は車両の駆動源として利用される。
(1)エンジン本体
図2は、エンジン本体1の概略断面図である。
エンジン本体1は、気筒2が内部に形成されたシリンダブロック3と、シリンダブロック3の上面に設けられたシリンダヘッド4と、気筒2に往復動(上下動)可能に嵌装されたピストン5とを有している。
ピストン5の上方には燃焼室6が形成されている。燃焼室6はいわゆるペントルーフ型であり、燃焼室6の天井面(シリンダヘッド4の下面)は吸気側および排気側の2つの傾斜面からなる三角屋根状をなしている。
ピストン5の冠面には、その中心部を含む領域をシリンダヘッド4とは反対側(下方)に凹ませたキャビティ10が形成されている。このキャビティ10は、ピストン5が上死点まで上昇したときの燃焼室6の大部分を占める容積を有するように形成されている。
シリンダヘッド4には、吸気通路30から供給される空気を気筒2(燃焼室6)内に導入するための吸気ポート16と、気筒2内で生成された排気を排気通路35に導出するための排気ポート17とが形成されている。
吸気ポート16は、気筒2毎にそれぞれ2つずつ形成されており、気筒2毎に形成された2つの吸気ポート16は途中で結合することなく気筒2側の開口まで延びている。
一方、排気ポート17は、排気通路35の浄化装置36(触媒)よりも上流側に設けられており、気筒2毎に2つずつ形成された上流側流路17Sa,17Saと、その下流側においてこれら2つの上流側流路が合流するコモン部17Sb(「合流部17Sb」ともいう。)と、コモン部17Sbより下流側に形成された1つの下流側流路17Scとで平面視略Y字状に形成されている。また、シリンダヘッド4には、各吸気ポート16の気筒2側の開口をそれぞれ開閉する吸気弁18と、各排気ポート17の気筒2側の開口をそれぞれ開閉する排気弁19とが設けられている。
シリンダヘッド4には、気筒2内に燃料を噴射する燃料噴射装置21が設けられている。燃料噴射装置21は、その先端が気筒2の中心軸付近に位置してピストン5の冠面のほぼ中央を臨むように配置されている。
燃料噴射装置21は、図外の燃料ポンプにより圧送された燃料を気筒2内に噴射する。本実施形態では、全運転領域において燃料と空気との混合気を予め混合させて、この混合気を圧縮上死点(TDC)付近で自着火させる予混合圧縮自着火燃焼が実施されるよう構成されている。これに伴い、図2に示した例では、エンジン本体1に気筒2内のガスに点火するための点火プラグが設けられていないが、冷間始動時等において混合気の適正な燃焼のために点火が必要な場合等には、適宜エンジン本体1に点火プラグを設けてもよい。
燃料噴射装置21からは、エンジン本体1の運転状態に応じたタイミングでこの運転状態に応じた量の燃料が気筒2内に噴射される。例えば、エンジン負荷が比較的低い領域では、圧縮上死点前に一括して燃料が噴射され、エンジン負荷が比較的高い領域では、圧縮上死点前において3段に分割されて燃料が気筒2内に噴射される。
シリンダヘッド4には、さらに、気筒2内に超臨界水または亜臨界水を噴射する水噴射装置22が設けられている。図2に示すように、水噴射装置22は、サイド噴射方式で水を燃焼室6内に噴射するようにシリンダヘッド4に取り付けられており、その先端が燃焼室6の内周面から燃焼室6内を臨むように配置されている。
また、水噴射装置22は、排気ポート17に隣接して配置されている。本実施形態では、排気ポート17の下方に水噴射装置22が配置されている。水噴射装置22としては、例えば、従来のエンジンに用いられる、燃料を気筒2内に噴射するための装置を適用することができ、その詳細な構造の説明は省略する。なお、水噴射装置22は、例えば、20MPa程度で気筒2内に超臨界水を噴射する。
超臨界水または亜臨界水を気筒2内に噴射するのはエンジン性能を高めるためである。
具体的には、気筒2内に水を噴射すれば、この水を作動ガスとしてこの水に膨張仕事を行わせることができる。従って、水を気筒2内に噴射すれば、仕事量すなわちエンジン出力を同じとしながら気筒2内に供給する燃料の量を少なくすることができ、燃費性能を高めることができる。また、気筒2内に水を噴射することでノッキング防止に寄与することができる。このようにノッキングを防ぐことで点火のタイミングを早めてピストン5を押し下げるベストなタイミングでの燃焼を実現できるため、トルクを高めることができる。
水として超臨界水または亜臨界水を気筒2内に噴射するのは、エンジン本体1の熱効率および燃費性能をより確実に高くするためである。すなわち、通常の気体の水(水蒸気)よりも密度の高い超臨界水または亜臨界水を気筒内に噴射していることで、気体の水を噴射する場合に比べて多量の水を効率よく気筒内に導入することができる。そのため、気筒内に存在して仕事を行うガスの量ひいてはエンジン本体の出力を効率よく増大させることができる。また、潜熱(エンタルピー)を必要としないまたは潜熱が小さい超臨界水または亜臨界水を気筒2内に噴射していることで、通常の液体の水を噴射する場合に比べてこの潜熱に伴う気筒内の大幅な温度低下および熱効率の悪化を回避することができる。そのため、熱効率を高くすることができる。
具体的には、水の臨界点が、温度:647.3K,圧力:22.12MPaの点であるのに対して、超臨界水は温度圧力がこれら以上すなわち温度が647.3K以上かつ圧力が22.12MPa以上の水である。
さらに超臨界水の密度は50kg/m3から500kg/m3程度と液体の水に近い値であって気体の密度よりも非常に高い値となっている。
従って、この密度の高い超臨界水を気筒2内に噴射すれば、気体の水を噴射する場合に比べて多量の水を効率よく気筒2内に導入することができる。
なお、エンジンシステムにて生成して気筒2内に噴射する超臨界水としては、密度が250kg/m3以上の超臨界水を用いるのが好ましい。
ここで本実施形態では、前記のように超臨界水を気筒2内に噴射するが、超臨界水に代えて温度が600K以上、密度が250kg/m3以上の亜臨界水を生成および気筒2内に噴射してもよい。
(2)吸気通路
吸気通路30には、上流側から順に、エアクリーナ31と、スロットルバルブ32とが設けられており、エアクリーナ31およびスロットルバルブ32を通過した後の空気がエンジン本体1に導入される。
スロットルバルブ32は、吸気通路30を開閉するものである。ただし、本実施形態では、エンジンの運転中、スロットルバルブ32は基本的に全開もしくはこれに近い開度に維持されており、エンジンの停止時等の限られた運転条件のときにのみ閉弁されて吸気通路30を遮断する。
(3)排気通路
排気通路35には、上流側から順に、排気を浄化するための浄化装置36、熱交換器37、コンデンサー(凝縮器)38、排気シャッターバルブ39が設けられている。熱交換器37およびコンデンサー38は、水循環装置40の一部を構成するものである。浄化装置36は、例えば、三元触媒からなる。
排気シャッターバルブ39は、EGRガスの吸気通路30への還流を促進するためのものである。
すなわち、本実施形態のエンジンシステムでは、吸気通路30のうちスロットルバルブ32よりも下流側の部分と、排気通路35のうち浄化装置36よりも上流側の部分とを連通するEGR通路7が設けられており、排気の一部がEGRガスとして吸気通路30に還流される。排気シャッターバルブ39は、排気通路35を開閉可能なバルブであり、EGRを実施する場合であって排気通路35の圧力が低い場合に閉弁側に操作されることでEGR通路7の上流側の部分の圧力を高めてEGRガスの還流を促進する。
EGR通路7には、これを開閉するEGRバルブ8が設けられており、EGRバルブ8の開弁量によって吸気通路30に還流されるEGRガスの量が調整される。また、本実施形態では、EGR通路7に、これを通過するEGRガスを冷却するためのEGRクーラ9が設けられており、EGRガスはEGRクーラ9にて冷却された後吸気通路30に還流される。
EGRバルブ8は、例えば、エンジン負荷が比較的低い領域において開弁され、この領域においてEGRガスが気筒2内に導入される。
(4)水循環装置
水循環装置40は、排気の熱エネルギーを利用して後述する排熱回収装置50と協働して超臨界水を生成するものである。
水循環装置40は、熱交換器37およびコンデンサー38に加えて、水噴射装置22とコンデンサー38とを接続する水供給通路41と、上流側水タンク(受熱水タンク)42と、低圧ポンプ43と、高圧ポンプ44と下流側水タンク45とを備えている。
コンデンサー38は、排気通路35を通過する排気ガス中の水(水蒸気)を凝縮するためのものであり、コンデンサー38で凝縮した水は、熱交換器37や下流側水タンク45を通過することにより受熱され昇温された状態で水噴射装置22に供給される。このように、本実施形態では、排気ガス中の水が気筒2内に噴射される水(受熱水W)として利用される。コンデンサー38で生成された水は、水供給通路41を介して上流側水タンク42に導入され上流側水タンク42内で貯留される。
低圧ポンプ43は、上流側水タンク42内の水を熱交換器37に送り込むためのポンプであり、水供給通路41のうち上流側水タンク42と熱交換器37との間に配置されている。
熱交換器37は、低圧ポンプ43から圧送された水と、排気通路35を通過する排気ガスとの間で熱交換を行わせるためのものであり、水供給通路41のうち熱交換器37を通過する水は、排気通路35を通過する排気ガスにより昇温される。熱交換器37は、排気通路35のうち浄化装置36の下流側の部分に配置されている。なお、水供給通路41は、熱交換器37において排気通路35の内側に挿通され、該排気通路35の内側から抜出すまでの間部分に熱交換通路37aを有している。
熱交換器37によって排気ガスから受熱した水は、高圧ポンプ44によって水噴射装置22に向けて圧送される。この高圧ポンプ44は、熱交換器37で昇温された水を加圧して超臨界水としながら水噴射装置22に送り込む。高圧ポンプ44は、水供給通路41のうち熱交換器37と下流側水タンク45との間に配置されている。
このように、本実施形態では、基本的には、熱交換器37と高圧ポンプ44とによって水供給通路41内の水が昇温昇圧され、この後で説明する排熱回収装置50によってさらに昇温されて超臨界水が生成され、水噴射装置22に供給される。
そのため、水供給通路41のうち高圧ポンプ44よりも下流側の高圧の超臨界水が流通する部分には、高圧用の配管が用いられる。
(5)第1実施形態の熱回収装置
図2に示すように、第1実施形態の排熱回収装置50は、排気ポート17と、受熱水W(水)が流通する下流側水タンク45と、内部に媒体Sが封入されたヒートパイプ51(51H,51L)と、排気ポート17内においてヒートパイプ51を支持する支持部材25(25a,25b,25c)を備え、水噴射装置22に水供給前に、排気通路35を通過する排気ガスの熱を、ヒートパイプ51を介して高圧ポンプ44から圧送された受熱水Wにより回収して該受熱水Wをさらに昇温する装置である。
ヒートパイプ51は、ストレート状に形成されるとともに、排気ポート17と下流側水タンク45とに跨ぐように配置されている。
ヒートパイプ51は、排気ポート17の排気流路17S(内部空間17S)におけるコモン部17Sbよりも下流側に設けられた下流側流路17Scに取り付けられており、本実施形態では、1つの排気ポート17にそれぞれ1つのヒートパイプ51が取り付けられており、1つの気筒2に1つのヒートパイプ51が配置されている。
本実施形態では、ヒートパイプ51は、所定の方向に延びる略円柱状の外形を有する。図3は、ヒートパイプ51の動作を説明するための概略断面図である。この図3および図2に示すように、ヒートパイプ51は、熱伝導性の高い材料(例えば金属)で形成されたパイプ部材であり、その内側は真空にされた状態で媒体S(Sh,Sl)が液体状態で封入されている。ヒートパイプ51の内壁には、多孔質部材51a(例えば金属製の網)が設けられており、いわゆるウィックとよばれる毛細管構造が形成されている。
ヒートパイプ51は、その長手方向の一端が排気ポート17に挿通されて、該排気ポート17の排気流路17Sに突き出すとともに、他端が下流側水タンク45に挿通されて、下流側水タンク45内の水流通路48で突出すように配置されている。これにより、ヒートパイプ51は、その長手方向の一端が排気ポート17の排気流路17Sの排気ガスと接触するように配置され、他端が下流側水タンク45内の受熱水Wと接触するように配置されている。
ここでヒートパイプ51の長手方向の一端側、すなわち排気ポート17への挿通部分を受熱側端部52(52h,52l)に設定するとともに、ヒートパイプ51の長手方向の他端側、すなわち下流側水タンク45への挿通部分を放熱側端部53(53h,53l)に設定する。
このヒートパイプ51では、受熱側端部52が排気ガスの熱により温められ、その温度が所定の温度以上になると、媒体Sが蒸発し、図3の矢印Y1に示すように、放熱側端部53に向かって拡散していく。そして、媒体Sの蒸気は、放熱側端部53において下流側水タンク45内の水流通路48に放熱して凝縮し、再び液体に戻る。このとき、下流側水タンク45内の水流通路48を流れる受熱水Wは媒体Sから熱エネルギーを受けて昇温される。再び液体に戻った媒体Sは、直線状のヒートパイプ51のヒートパイプ毛細管現象により、図3の矢印Y2に示すように、受熱側端部52に戻り、再度排気ガスから熱エネルギーを奪うことで再び蒸気となり、この熱エネルギーを下流側水タンク45内の水流通路48を流れる受熱水Wに付与する。
このように、本実施形態では、ヒートパイプ51によって、排気ガスの温度が所定温度以上の高温になり媒体Sの温度が沸点以上になると、排気ポート17の排気流路17Sの排気ガスの熱エネルギーが下流側水タンク45内の水流通路48を流れる受熱水Wに付与されて該水が昇温される。
ヒートパイプ51は、高温域で作動する高温域媒体Shとしてのナトリウム(作動温度域:600℃〜1200℃)が封入された高温域作動ヒートパイプ51Hと、低温域で作動する低温域媒体Slとしての水(作動温度域:30℃〜250℃)が封入された低温域作動ヒートパイプ51Lとの2本を備えている。
ここで、本実施例の排熱回収装置50は、作動温度域が異なる2種類の媒体Sh,Slを組み合わせた構成としたが、例えば水の代わりにナフタレン(作動温度域:150℃〜400℃)とする、或いはナトリウムの代わりにセシウム(作動温度域:450℃〜900℃)とするなど、作動温度域の違いに応じて媒体Sh,Slの組み合わせを設定することができる。また、作動温度域が異なる2種類の媒体Sh,Slに対応して2本のヒートパイプ51L,51Hを備えた構成に限定せず、作動温度域が異なる3種類以上の媒体Sに対応して3本以上のヒートパイプ51を備えた構成としてもよい。
これら高温域作動ヒートパイプ51Hと低温域作動ヒートパイプ51Lとは、互いに平行に配置されるとともに、上述したように、共に排気ポート17と下流側水タンク45とに跨ぐように配置されている。
排気ポート17の排気流路17Sにおいては、高温域作動ヒートパイプ51Hの受熱側端部52hを、排気方向Dg上流側に設置するとともに、低温域作動ヒートパイプ51Lの受熱側端部52lを、高温域作動ヒートパイプ51Hの受熱側端部52hよりも相対的に排気方向Dg下流側に設置している。
具体的に、高温域作動ヒートパイプ51Hと低温域作動ヒートパイプ51Lとは、共に受熱側端部52h,52lが排気方向Dgと略平行になるように配置されている。そして高温域作動ヒートパイプ51Hの受熱側端部52hは、低温域作動ヒートパイプ51Lの受熱側端部52lよりも排気方向Dg上流側端部が、排気方向Dg上流側に位置するように排気ポート17の排気流路17Sに延びており、これにより、低温域作動ヒートパイプ51Lの受熱側端部52lを、高温域作動ヒートパイプ51Hの受熱側端部52hの少なくとも上流側端よりも相対的に排気方向Dg下流側に設置している。
また、排気ポート17の排気流路17Sには、ヒートパイプ51を支持する支持部材25(25a,25b,25c)が設けられており、高温域作動ヒートパイプ51Hと低温域作動ヒートパイプ51Lとは、共に上記のような配置になるように排気ポート17の排気流路17Sにおいて支持部材25によって支持されている。
支持部材25は、金属製であり、熱伝導性を有するとともに排気ガスから受熱する多孔質状(ポーラス状)の受熱部26を備えている。本実施例における支持部材25は、その略全体が間隙空間を有した金属製の網によりで略円筒状に形成されている。すなわち支持部材25は、その略全体が受熱部26として形成されている。
図2、図3に示すように、支持部材25は、高温域作動ヒートパイプ51Hと低温域作動ヒートパイプ51Lとを支持可能に3つ備えている。具体的には、排気方向Dg上流側に配置された高温域作動ヒートパイプ51Hを支持する上流側支持部材25aと、相対的に排気方向Dg下流側に配置された高温域作動ヒートパイプ51Hおよび低温域作動ヒートパイプ51Lを支持する下流側支持部材25cと、さらに排気方向Dgにおいて上流側支持部材25aと下流側支持部材25cとの間に位置し、高温域作動ヒートパイプ51Hを支持する中間支持部材25bと、を備えている。
支持部材25は、略円筒状に形成され、その外壁部と排気ポート17の内壁部とが互いに密着した状態となるように排気ポート17の内壁部に嵌着される。すなわち、支持部材25は、排気ポート17の排気方向Dgにおける嵌着部位において、排気ポート17の排気流路17Sの排気方向Dgの直交断面形状と略同じ直交断面形状で形成されており、排気ポート17の排気流路17Sを該支持部材25によって塞ぐように設置され、支持部材25の外周面が排気ポート17の内壁に接合固定されている。
支持部材25には、高温域作動ヒートパイプ51Hと低温域作動ヒートパイプ51Lとを挿通可能に排気方向Dgに貫通するパイプ挿通孔27(27h,27l)が夫々形成され、該パイプ挿通孔27には、ヒートパイプ51が挿通され、ヒートパイプ51は、パイプ挿通孔27に挿通された状態で該パイプ挿通孔27の内壁部とヒートパイプ51の外壁部とが接合固定されている。これにより、ヒートパイプ51の受熱側端部52は、支持部材25によって支持されている。
上流側支持部材25a、中間支持部材25b、下流側支持部材25cは、何れも高温域作動ヒートパイプ51Hを挿通するパイプ挿通孔27として高温域作動側パイプ挿通孔27hが1つずつ形成されている。下流側支持部材25cは、高温域作動側パイプ挿通孔27hに加えて低温域作動ヒートパイプ51Lを支持する低温域作動側パイプ挿通孔27lが1つ形成されており、合計2つのパイプ挿通孔27h,27lが形成されている。
支持部材25は、排気方向Dg上流側の方が、排気方向Dg下流側よりも受熱部26の間隙空間が大きく形成されている。具体的には、上流側支持部材25aは中間支持部材25bよりも受熱部26が「粗」に形成されるとともに下流側支持部材25cは中間支持部材25bよりも受熱部26が「密」に形成され、これにより、上流側支持部材25aと中間支持部材25bと下流側支持部材25cとは、この順に受熱部26の間隙空間が大きく形成されている。
また、図1、図2に示すように、下流側水タンク45は、水供給通路41の途中に介在して配置され、水循環装置40の一部としても構成されている。下流側水タンク45は、水流方向Dwの一端側の壁部に、水入口部46が形成されるとともに、該下流側水タンク45の水流方向Dwの他端側の壁部に、水出口部47が形成されている。さらに下流側水タンク45の内部には、水入口部46と水出口部47との間において水供給通路41と連通する水流通路48が形成されている。すなわち、水流通路48は水供給通路41の一部を構成している。
水入口部46は、高圧ポンプ44により圧送された受熱水Wが水流通路48に流入する流入部であり、水出口部47は、水噴射装置22へ供給される受熱水Wが水流通路48から流出する流出部である。すなわち、水入口部46は水流通路48の上流側端に形成されるとともに、水出口部47は水流通路48の下流側端に形成されている。
この水流通路48は、途中で他の流通路と結合したり分岐部したりせずに延びる1本路で形成されている。
水入口部46と水出口部47とは共に、互いに平行に延びる一組のヒートパイプ51の長手方向に直交する方向に向けた開口方向となるように設置されており、さらにヒートパイプ51の長手方向において互いにずらして設置されている。
水流通路48は、図3に示すように、上流側に有する上流側水流通路部48aと、下流側に有する下流側水流通路部48cと、これらを連結する連結水流通路部48bとを備え、水入口部46から水出口部47に向けて上流側水流通路部48a、連結水流通路部48b、下流側水流通路部48cとをこの順に直列に設けている。
本実施形態では、水流通路48は、上流側水流通路部48aから下流側水流通路部48cへ連結水流通路部48bを介してヒートパイプ51の長手方向に迂回する経路で形成されている。
高温域作動ヒートパイプ51Hの放熱側端部53hは、下流側水タンク45の排気ポート17側の側壁から挿通され、水流通路48における下流側水流通路部48cにおいて突き出した状態で配置される。これにより、下流側水流通路部48cは、高温域作動ヒートパイプ51Hの配置領域としている。そして、高温域作動ヒートパイプ51Hの放熱側端部53hは、その長手方向が下流側水流通路部48cの水流方向Dwに直交する方向となるように配置されている。
一方、低温域作動ヒートパイプ51Lの放熱側端部53lは、下流側水タンク45の排気ポート17側の側壁から挿通され、水流通路48における上流側水流通路部48aにおいて突き出した状態で配置される。これにより、上流側水流通路部48aは、低温域作動ヒートパイプ51Lの配置領域としている。そして、低温域作動ヒートパイプ51Lの放熱側端部53lは、その長手方向が上流側水流通路部48aの流水方向に直交する方向となるように配置されている。
これにより、水流通路48を流れる受熱水Wを低温域作動ヒートパイプ51L側から高温域作動ヒートパイプ51H側へ流す構成としている。
(6)第1実施形態の熱回収装置の作用等
上述した本実施例のエンジンの排熱回収装置50は、エンジン本体1の気筒2内で生成された排気ガスが流通する排気ポート17と、受熱水Wが流通する下流側水タンク45内の水流通路48(図3参照)と、これら排気ポート17と水流通路48とに跨ぐように配置され、内部に媒体Sが封入されたヒートパイプ51を備え、排気ポート17の排気流路17Sの排気ガスの熱をヒートパイプ51を介して水流通路48を流通する受熱水Wにより受熱して熱回収するエンジンの排熱回収装置であって(図1参照)、ヒートパイプ51は、媒体Sの作動温度域の違いに応じて複数備え、排気ポート17においては、高温域で作動する高温域媒体Shとしてのとしてのナトリウムが封入された高温域作動ヒートパイプ51Hの放熱側端部53hを、排気方向Dg上流側に設置するとともに、高温域媒体Shよりも相対的に低温域で作動する低温域媒体Slとしての水が封入された低温域作動ヒートパイプ51Lの放熱側端部53lを、高温域作動ヒートパイプ51Hよりも相対的に排気方向Dg下流側に設置し、さらに水流通路48においては、高温域作動ヒートパイプ51Hの受熱側端部52hを水流方向Dw下流側に設置するとともに、低温域作動ヒートパイプ51Lの受熱側端部52lを水流方向Dw上流側に設置する構成としたものである(図2、図3参照)。
上記構成によれば、エンジンの低負荷から高負荷までの運転状態によって幅広い排気温度域で排出される排気ガスの熱を効率的に回収することができる。
具体的には、エンジンは低負荷領域から高負荷領域までの運転が求められることから例えば、約200℃から約800℃までの幅広い排気温度域となる。このため、従来の排熱回収装置のように1種類の媒体の温度域作動により排熱回収しようとしても、この幅広い排気温度域をカバーしきれず、詳しくは媒体の作動温度域外の排気温度を有する排気熱を回収しきれず、効率的な熱回収を行う点で改善の余地があった。
これに対して本実施形態の排熱回収装置50は、高温域作動ヒートパイプ51Hを排気方向Dg上流側に設置するとともに、低温域作動ヒートパイプ51Lを相対的に排気方向Dg下流側に設置することにより、エンジンの気筒2内から排出された高温の排気熱を高温域作動ヒートパイプ51Hによって回収することができ、その後、高温域作動ヒートパイプ51Hによって熱回収しきれなかったが相対的に低温化した排気熱を、その温度帯域に適した低温域作動ヒートパイプ51Lによって極力取りこぼすことなく回収することができる。
一方、下流側タンク内の水流通路48においては、該水流通路48を流れる受熱水Wは、低温域作動ヒートパイプ51L側から高温域作動ヒートパイプ51H側へ流通させることができることにより、受熱水Wによって効率よく熱回収することができる。
以上より、本実施形態の排熱回収装置50は、エンジンの低負荷運転領域から高負荷運転領域までの広範囲の運転状態に伴って排気温度域が幅広くなるが、このような幅広い排気温度域の排気熱を高温域と低温域との夫々の温度帯域に見合ったヒートパイプ51H,51Lにより幅広い温度状態で排気熱を効率的に回収することが可能となる。
この発明の態様として、排気ポート17の排気流路17Sに、ヒートパイプ51を支持する支持部材25が設けられ、支持部材25は、熱伝導性を有して排気ガスから受熱する受熱部26を備えたものである(図3、図4参照)。
上記構成によれば、支持部材25に備えた受熱部26によって排気ガスから受熱することができるため、支持部材25自体が熱回収に寄与することができる。
さらに、排気ポート17の排気流路17Sにおいて支持部材25によってヒートパイプ51を支持することにより、ヒートパイプ51を圧力損失の増大を抑える姿勢に保つことができる。
この発明の態様として、支持部材25は金属製としたものである。
上記構成によれば、熱伝導性に優れた金属製の支持部材25によってヒートパイプ51を支持することで、支持部材25を通過する排気ガスの熱を、該支持部材25を介してヒートパイプ51へより効率的に回収することができる。
さらに耐熱性、強度に優れた金属製の支持部材25により、しっかりとヒートパイプ51を支持することができる。
この発明の態様として、支持部材25は、排気方向Dgの上流側の方が下流側よりも受熱部26の間隙空間が大きく形成されたものである。すなわち、上流側支持部材25a、中間支持部材25b、下流側支持部材25cは、この順に受熱部26の間隙空間が大きく形成されたものである(図3、図4参照)。
上記構成によれば、排気方向Dgに応じて受熱部26の間隙空間の大きさ(間隙の度合い)を変化させることができるため、排気ガスからの高効率な受熱によるヒートパイプ51への熱輸送を可能とし、かつ、不要な圧力損失の増加を抑制することができる。
詳しくは、排気ガスは、高温になる程低密度になり、さらに低密度になる程流速が速くなる特性を有する。すなわち、排気ガスは高温になる程熱伝達率が高くなる特性を有する。
換言すると、排気ガスは、低温になる程高密度になり、さらに高密度になる程流速が遅くなる特性を有する。すなわち、排気ガスは低温になる程熱伝達率が低くなる特性を有する。
このような排気ガスの特性より、温度が相対的に高い排気方向Dgの上流側では、排気ガスの流速、熱伝達率が相対的に高く(速く)なるとともに、温度が相対的に低い排気方向Dgの下流側では、排気ガスの流速、熱伝達率が相対的に低く(遅く)なる。
ここで、熱交換量、圧力損失は次式により概略計算することができる。
・(熱交換量)=(熱伝達率)×(伝達面積)×((排ガス温度)−(受熱部26壁温度))
・(圧力損失)∝(密度)×(流速)2
以上により、支持部材25は、排気方向Dgの上流側の方が下流側よりも受熱部26の間隙空間を大きくする(「粗」にする)ことで、例えば上流側支持部材25aを流速が速い排気方向Dg上流側に配置しても圧力損失増加を抑制することができつつ、上流側支持部材25aの間隙空間が大きくても排気ポート17の排気流路17Sにおける排気ガス温度が高いが故に大きな熱交換量を確保することができる。一方、支持部材25は、排気方向Dgの下流側の方が上流側よりも受熱部26の間隙空間を小さくする(「密」にする)ことで、例えば下流側支持部材25cの伝達面積を確保して受熱量を増やし、熱交換量を増やすことができる。
また本実施形態のヒートパイプ51は、その長手方向の一端に受熱側端部52(52h,52l)を備えるとともに、ヒートパイプ51の長手方向の他端に放熱側端部53(53h,53l)を備えたストレート状に形成したものである(図3、図4参照)。
上記構成によれば、毛細管現象を利用して排気ポート17の排気流路17Sと下流側タンク内の水流通路48との間で媒体Sを循環させることができるため、媒体Sを介して排気熱を受熱水Wによって熱回収することができる。また、排気ガスの排気方向Dgと極力平行になるように配置し易くなるため、圧力損失の増加の抑制を図ることができる。
(7)第2実施形態の熱回収装置
図5は、第2実施形態の熱回収装置の模式図を示している。以下、この第2実施形態の排熱回収装置50Aについて説明するが、上述した第1の実施形態の排熱回収装置50と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
下流側水タンク45Aは、排気ポート17の周辺部分であって排気ポート17の上部に設けられており、下流側水タンク45Aの水流通路48には排気ポート17の延びる方向に沿って形成されている。すなわち、本実形態では、下流側水タンク45Aは、排気ポート17の延びる方向と略平行に配設されている。
このような下流側水タンク45Aには、排気ポート17の排気方向Dgの下流側端に対応する部位に水入口部46が設けられるとともに、排気ポート17の排気方向Dgの上流側端に対応する部位に水出口部47が設けられている。
すなわち、本実施形態では、下流側水タンク45Aの水流通路48においては、排気ガスの排気方向Dgと逆方向(対向方向)に受熱水Wを流す構成としたものである。
また、本実施形態のヒートパイプ51Aについても、ナトリウムが封入された高温域作動ヒートパイプ51AHと、水が封入された低温域作動ヒートパイプ51ALとの2種類を備えており、共に略矩形状の枠状、すなわちループ状に形成され、互いに同形状および同サイズに形成されている。なお、これらヒートパイプ51Aの内壁には、上述したストレート状のヒートパイプ51のような毛細管構造が形成されていない。
これらヒートパイプ51Aは、上述したストレート状のヒートパイプ51と同様に、排気ポート17と下流側水タンク45Aとに跨ぐように配置されている。
但し、ループ状のヒートパイプ51Aは、その周方向の略下側部分が排気ポート17の排気流路17Sに突き出して該排気流路17Sの排気ガスと接触するように配置されているとともに、その周方向の略上側部分が下流側水タンク45Aの水流通路48に突き出して水流通路48の受熱水Wと接触するように配置されている。
ここで、ヒートパイプ51Aの周方向の略下側部分、すなわち排気ガスとの接触部分を受熱側部52A(52Ah,52Al)に設定するとともに、ヒートパイプ51Aの周方向の略上側部分、すなわち受熱水Wとの接触部分を放熱側部53A(53Ah,53Al)に設定する。
さらに、受熱側部52Aのうち、略矩形をしたループ状のヒートパイプ51Aの下側長辺部に相当する部位を、該受熱側部52Aの主要部を成す受熱側長辺部54(54h,54l)に設定するとともに、放熱側部53Aのうち、略矩形をしたループ状の上側長辺部に相当する部位を、該放熱側部53Aの主要部を成す放熱側長辺部55(55h,55l)に設定する。
ヒートパイプ51Aは、受熱側長辺部54と放熱側長辺部55との一端部同士と、他端同士とが夫々短辺部56a,56bを介して一体に連結されている。
ヒートパイプ51Aの短辺部56a,56bの中間部は、排気ポート17と下流側水タンク45Aとの間部分、すなわち、排気ポート17の上側部位および下流側水タンク45Aの下側部位に挿通されている。この挿通部位における、排気ポート17および下流側水タンク45Aの各内周部と、ヒートパイプ51Aの短辺部56a,56bの外周部とが接合固定されている。
受熱側長辺部54と、短辺部56a,56bの挿通部位よりも下側部分とで受熱側部52Aが構成され、放熱側長辺部55と、短辺部56a,56bの挿通部位よりも上側部分とで放熱側部53Aが構成されている。
受熱側長辺部54は略直線状に形成され、排気ポート17の排気流路17Sにおいて排気方向Dgと略平行に配置されている。放熱側長辺部55は略直線状に形成され、下流側水タンク45Aの水流通路48において水流方向Dwと略平行に配置されている。
また上記構成により、本実施形態のヒートパイプ51Aは、放熱側長辺部55が受熱側長辺部54よりも上側に配置された位置関係となる。
低温域作動ヒートパイプ51ALは、高温域作動ヒートパイプ51AHよりも排気ポート17の排気流路17Sにおいて受熱側部52Aが排気方向Dg下流側に配置されている。換言すると、低温域作動ヒートパイプ51ALは、高温域作動ヒートパイプ51AHよりも下流側水タンク45Aの水流通路48において放熱側部53Aが流水方向上流側に配置されている。
これにより、排気ポート17の排気流路17Sを流れる排気ガスは、高温域作動ヒートパイプ51AH側から低温域作動ヒートパイプ51AL側へ流れる一方で、下流側水タンク45Aの水流通路48を流れる受熱水Wは低温域作動ヒートパイプ51AL側から高温域作動ヒートパイプ51AH側へ流れる構成としている。
本実施形態においては、高温域作動ヒートパイプ51AHと低温域作動ヒートパイプ51ALとは排気流路17Sの排気方向Dgおよび水流通路48の水流方向Dwにおいて互いにオーバーラップせずに離間して配設されている。高温域作動ヒートパイプ51AHと低温域作動ヒートパイプ51ALとは、中間支持部材25bを跨ぐように該中間支持部材25bに対して排気流路17Sの排気方向Dgの上流側と下流側とに配設されている。
また、上流側支持部材25aには、受熱側長辺部54hを挿通する1つの高温域作動側パイプ挿通孔27hのみが形成され、下流側支持部材25cには、受熱側長辺部54lを挿通する1つの低温域作動側パイプ挿通孔27lのみが形成され、中間支持部材25bには、パイプ挿通孔27(27h,27l)が形成されていない。
これにより、高温域作動ヒートパイプ51AHは、排気ポート17の排気流路17Sにおいて受熱側長辺部54lが上流側支持部材25aによってのみ支持されるとともに、低温域作動ヒートパイプ51ALは、排気ポート17の排気流路17Sにおいて受熱側長辺部54lが下流側支持部材25cによってのみ支持されている。
(8)第2実施形態の熱回収装置の作用等
上記構成によれば、本実施形態の排熱回収装置50Aは、作動温度帯域が異なる媒体sh,slに応じた2種類のストレート状のヒートパイプ51H,51Lを備えた第1実施形態の排熱回収装置50と同様に、エンジンの低負荷運転領域から高負荷運転領域までの広範囲の運転状態に伴って排気温度域が幅広くなるが、このような幅広い排気温度域の排気熱を高温域と低温域との夫々の温度帯域に見合ったヒートパイプ51AH,51ALにより幅広い温度状態で排気熱を効率的に回収することが可能となるという効果を奏することができる。
さらに本実施形態において下流側水タンク45Aは、排気ポート17の上部に設けられている。さらにループ状のヒートパイプ51Aは、放熱側長辺部55が受熱側長辺部54よりも上側に位置する関係となるように配置されたたものである。これにより、受熱側部52Aにおいて排気ガスの熱を受熱して蒸発した媒体Sの上昇気流を利用して、該媒体Sを上方に有する放熱側部53Aへ拡散させることができるため、ヒートパイプ51Aの内部においてよりY1方向の循環を促進することができる。
さらに、第2実施形態のヒートパイプ51Aは、排気ポート17の排気流路17Sを媒体Sが流れる受熱側長辺部54と、下流側水タンク45Aの水流通路48を媒体Sが流れる放熱側長辺部55と、受熱側長辺部54と放熱側長辺部55との一端部同士と、他端同士とを一体に連結する短辺部56a,56bとでループ状に形成されたものである(図5参照)。
上記構成によれば、ヒートパイプ51をループ状に形成することで媒体Sがヒートパイプ51内において一方向(Y1方向)(図5に示す断面視で時計と反対回り)に循環させることができるため、例えば、受熱側長辺部54を受熱路(移送路)として、放熱側長辺部55を放熱路(還流路)として適用し易くなる。すなわち、ループ状のヒートパイプ51の内部において媒体Sを時計と反対回りに循環させることにより、受熱側部52Aにおいて排気ガスの排気方向Dgと逆方向へ媒体Sを流動させることができるとともに、排気方向Dgと逆方向である受熱水Wの水流方向Dwと逆方向へ放熱側部53Aにおいて媒体Sを流動させることができるため、受熱水Wは、媒体Sを介して排気ガスの熱を効率よく回収することができる。
また、本実施形態のヒートパイプ51Aは、受熱側長辺部54が、排気ポート17の排気流路17Sにおいて排気方向Dgに平行に延びているため、排気ガスの圧力損失の増加を抑制することができる。
(9)第3実施形態の熱回収装置
図6は、第3実施形態の熱回収装置の模式図を示している。以下、この第3実施形態の排熱回収装置50Bについて説明するが、上述した第1、第2の実施形態の排熱回収装置50,50Aと同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施形態では、ヒートパイプ51Bに接触するように受熱水Wを流す構造として、下流側水タンク45,45Aの代わりにシリンダヘッド内部に形成されたウォータジャケット45B(45BU,45BD)を適用している。
ウォータジャケット45Bは、排気ポート17周辺部分に排気ポート17の延びる方向に沿って配設されており、下流側水タンク45,45Aと同様に、その内部に水入口46から水出口47まで受熱水Wが流れる水流通路48が形成されている。
ここで、 本実施形態の排熱回収装置50Bに備えたウォータジャケット45Bは、排気ポート17よりも車両上側部位に設けられた上側ウォータジャケット45BUと、排気ポート17よりも車両下側部位に設けられた下側ウォータジャケット45BDとを備えている。
水供給通路41は、シリンダヘッド4内部に形成されたウォータジャケット45BDの水流通路48と連通するように、シリンダヘッド4の内部においても形成されている。水供給通路41の途中には、上側ウォータジャケット45BUと下側ウォータジャケット45BDの各水流通路48がこの順に介在している。
具体的には、上流側水タンク42と上側ウォータジャケット45BUの水入口部46との間、上側ウォータジャケット45BUの水出口部47と下側ウォータジャケット45BDの水入口部46との間、下側ウォータジャケット45BDの水出口部47と水噴射装置22との間は、何れも水供給通路41を介して互いに連通している。
このうち、上側ウォータジャケット45BUの水出口部47と下側ウォータジャケット45BDの水入口部46との間を連通する水供給通路41は、シリンダヘッド4内部において、排気ポート17のポート軸方向視で排気ポート17よりも径外側(図6の紙面に対して直交方向)へ迂回しながら排気ポート17の上方に位置する上側ウォータジャケット45BUから排気ポート17の下方に位置する下側ウォータジャケット45BDまで延びている。
また、低温域作動ヒートパイプ51BLは、排気ポート17と上側ウォータジャケット45BUとに跨ぐように配置されている。
低温域作動ヒートパイプ51BLは、ループ状に形成されたその周方向の略下側部分が排気ポート17内に突き出して排気ポート17内の排気ガスと接触するように配置されるとともに、その周方向の略上側部分が上側ウォータジャケット45BU内の水流通路48に突き出して該水流通路48の受熱水Wと接触するように配置されている。
低温域作動ヒートパイプ51BLの周方向の略下側部分を受熱側部52Blに設定するとともに、ヒートパイプ51Bの周方向の略上側部分を放熱側部53Blに設定する。
高温域作動ヒートパイプ51BHは、排気ポート17と下側ウォータジャケット45BDとに跨ぐように配置されている。
高温域作動ヒートパイプ51BHは、ループ状に形成されたその周方向の略上側部分が排気ポート17内に突き出して排気ポート17内の排気ガスと接触するように配置されるとともに、その周方向の略下側部分が下側ウォータジャケット45BD内の水流通路48に突き出して該水流通路48の受熱水Wと接触するように配置されている。
高温域作動ヒートパイプ51BHの周方向の略下側部分を受熱側部52Bhに設定するとともに、ヒートパイプ51Bの周方向の略上側部分を放熱側部53Bhに設定する。
上述した高温域作動ヒートパイプ51BHの受熱側部52Bhは、低温域作動ヒートパイプ51BLの受熱側部52Blよりも排気方向Dgの上流側に配置されている。
また、上側ウォータジャケット45BUと下側ウォータジャケット45BDは、夫々の水流通路48を流れる受熱水Wが共に、ヒートパイプ51BH,51BLの放熱側部53Bh,53Bl内の媒体Sの流動方向Y1,Y2と逆方向に流れる構成としている(図6中の矢印Dw参照)。すなわち、水流通路48を流れる受熱水Wは、放熱側部53Bh,53Blの低い温度の媒体Sが存在する媒体流動方向Y1,Y2の下流側から高い温度の媒体Sが存在する媒体流動方向Y1,Y2の上流側へ流れる構成としている。なお図6に示すヒートパイプ51B内部の符号Lが示すラインは、全ての媒体Sが蒸発前の液体の状態で存在する場合におけるその液面を示す。
上記構成によれば、受熱水Wが水噴射装置22へ供給される過程において、上側ウォータジャケット45BUと下側ウォータジャケット45BDの各水流通路48,48を通過することで、夫々のヒートパイプ51BH,51BL内の媒体Sから受熱することで昇温されるため、より効率的に排気熱を回収して超臨界水を生成することが可能となる。
なお、本実施形態の排気ポート17内には、ヒートパイプ51Bを支持する支持部材25を備えていないが、上述した実施形態と同様に支持部材25を備えてもよい。
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、水噴射装置22は、上述した実施形態のようにサイド噴射方式に限らず、燃料噴射装置21の側方に並べる等して配設したセンター噴射方式の水噴射装置を採用してもよい。この場合には、例えば、図6に示した第2実施形態の排熱回収装置50Aのように、水タンク45Aの水出口部47と水噴射装置22との間で連通する水供給通路41を、排気ポート17を迂回するように設ける必要がなく、水噴射装置22まで最短経路で繋げることができる。すなわち、水供給通路41のレイアウト性を高めることができる。
また、本実施形態の水流通路48を流通することで昇温させた受熱水Wは、気筒2内に噴射する超臨界水又は亜臨界水として用いるものであるが、それ以外にもエンジン本体1の気筒2や浄化装置36(触媒)の暖機に用いてもよく、さらにはエアコンのヒータパーツの暖機のために用いてもよい。
さらにまた、ヒートパイプ51の受熱側端部52、ヒートパイプ51A,51Bの各受熱側端部52には、適宜伝熱面積を増やすために不図示のスタックフィン等のフィンを設けてもよい。